日記

論文を読む

■大庭沙織「刑法上の故意と強制医療の対象行為該当性要件としての故意」(刑事法ジャーナル41号79ページ) <概要> ・刑法上の故意について、規範化説は不合理な認識を持った行為者の故意について妥当な結論を得ようと試みるものである。行為者が有した…

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■伊東研祐「故意と行為意思の犯罪論体系的内実規定」(川端古稀269ページ) <概要> ・最決平成16・3・22(クロロホルム吸引事件)では、被害者を昏倒させた(第1行為)うえ2キロ離れた場所で自動車ごと海中に転落させた(第2行為)が、被害者は…

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■城下裕二「医療観察法における対象行為の主観的要件について」(岩井古稀99ページ) <概要> ・「医療観察法と故意」の問題。立案担当者によれば対象行為は「構成要件に該当し違法ではあるが責任の有無は問わない」とされる。しかし法の目的に照らして、…

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■箭野章五郎「精神の障害にもとづく錯誤の場合の医療観察法における「対象行為該当性」判断」(刑事法ジャーナル41号70ページ) <概要> ・精神の障害に基づく錯誤において、故意が欠けると判断されれば、医療観察法の対象行為該当性も欠けることになり…

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■青木陽介「自動改札機を利用したキセル乗車の場合の電子計算機使用詐欺罪の成否」(上智法学論集58巻3・4号55ページ) <概要> ・東京地判の事案は、上野駅(又は鶯谷駅)で「130円切符」を購入して自動改札機で入場して宇都宮駅まで乗車して、あ…

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■岡上雅美「終身刑についての規範的考察」(川端古稀879ページ) <概要> ・わが国の「無期懲役」は、仮釈放運用が厳しく、平均在所期間は長期化傾向にある。施設内で死亡した無期刑受刑者も多く、文字通りの終身刑となっている。 ・しかし現行無期刑は…

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■高山佳奈子「違法性と責任の区別について」(川端古稀47ページ) <概要> ・大阪地判平成24.3.16では、「急迫不正の侵害を受けている認識」と「逃げる意思」を有していた行為者につき、過失を認めながら正当防衛を成立させた。しかし防衛の意思が…

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■三田菜穂「明治三十八年「刑ノ執行猶予ニ関スル法律」(法律第七十号)について」(成蹊法学81号1ページ) <概要> ・国際監獄会議の第4回会議(1890(明治23)サンクトペテルブルク)にて、刑の執行猶予(当時は「条件付判決」)が議題として上…

論文を読む

きのうにひきつづき。 <読んで>の記述は、当該文献に対する言及だけでなく、かかる見解を敷衍するとこうなるかもしれないというものも含む。 ■松原芳博「刑法と哲学」(法と哲学1号57ページ) <概要> ・刑罰の正当化根拠のうちの応報刑論としては、(…

論文を読むことにしました。

最近読んでないな、と思って。 週5日、毎日1本のペースで1か月間を目標にしてみます。 ■鎌田隆志「危険ドラッグ事犯における故意に関する捜査とその立証」(警察学論集68巻3号42ページ) <概要> ・危険ドラッグには定義がなく、「規制薬物」(覚せ…

薬剤師の業務範囲の見直し検討へ - 医療介護CBニュース - キャリアブレイン

washitaさんの経由(http://d.hatena.ne.jp/washita/20120615) 薬剤師の業務範囲の見直し検討へ - 医療介護CBニュース - キャリアブレイン 現行法で歯科衛生士は、歯科医師の「直接の指導」の下、予防処置として歯石の除去などを行う「女子」と定められてお…

240条と241条 (6)若干の検討(承前)

(4)重畳適用説 この立場は、(3)説では重い結果やその故意について評価されていない、として、傷害罪や殺人罪を重畳的に適用する。以下のような例となる。 傷害結果 死亡結果 なし 240条前 240条後 傷意 240条前+204条 240条後+? 殺…

240条と241条 (5)若干の検討(承前)

4.学説の再検討(3)刑法典のなかでも法定刑が重い240条について、結果的加重犯よりもむしろ故意犯についての規定とみるべきであるという見解がある*1。傷害や殺害についての故意がない強盗致死傷の規定としては、240条の法定刑は重過ぎるというの…

240条と241条 (4)若干の検討

1.学説の再検討(1)結果的加重犯は重い結果の故意犯を徹底して含まない、とする見解は、強盗が傷害の故意を持って行為して死亡結果が発生した、いわゆる強盗傷害致死の場合についてはどのように考えるのであろうか。 強盗傷人罪について236条(強盗)…

240条と241条 (3)山本説(重畳適用説)の検討

これらの問題について、近時、結果的加重犯に故意ある場合を含めつつさらに重い結果についての故意犯を重畳適用する説(山本光英説)がある。 まず強盗殺人罪につき*1、240条は死亡結果について故意ある場合を含めるという通説を認めながら、この場合には…

240条と241条 (2)強盗強姦致死傷の擬律

1.問題の所在(1)強盗犯人が強姦して(強盗強姦)、致傷結果を発生させた場合には、どのように処断されるのか。刑法241条には、強盗強姦致死についての規定があるが、致傷の場合については規定されていない。 (強盗強姦及び同致死)第241条 強盗…

240条と241条 (1)強盗致死傷の擬律

1.問題の所在(1)強盗が致死傷結果を引き起こしたが、その致死傷結果について故意があった場合には、どのように処断されるのか。 刑法第240条は、強盗致死傷について規定している。 (強盗致死傷) 第240条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は…

法務

■死刑の在り方についての勉強会 法務省の検討会である死刑の在り方についての勉強会では、法案を公表しています。以前より出ているものと同じで、死刑と無期懲役との間に重無期刑をつくるものです。 法案では、これによる法改正も行っていて、ほかの法律で「…

俺は偉いんだと、こんな自分たちの内々の決まり事を知っているんだということ

非訟法改正のようすを見ようと思って会議録を読むと、またも民主党の先生が活躍されているようです。 第177回国会 参議院法務委員会第8号(平成23年4月26日) ○前川清成君 家事事件手続法の四十一条一項ですが、「当事者となる資格を有する者」、この「…

非訟事件手続法

きのうのつづき。法務省の対照表が若干わかりづらい(改め文から機械的に作成しているからか)ので、こちらでみてみました。今改正は、基本的には内容の変更がない改正です。新法第1条: 現行法1条と同旨。現行法には「裁判所ノ管轄ニ属スル非訟事件ニ付テ…

非訟事件手続法案

非訟事件手続法・家事審判法の改正案が、法務省サイトにアップされました(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00085.html)。両案は今国会に提出されています。これらの法案については法制審議会での議論があり中間報告もされているのですが、ひとつの問題…

刑事法ノート 1水難救護法

水難救護法では、31条以下で罰則が定められています。古い法律なのでいくつか疑問点もあるので、ここで考えてみます。 まず、遭難船舶を認知したときには、市町村長が現場に急行し救護を行います(3条)。その際には、人の招集、物件の徴用、私有地の使用…

逓信省管理局

返信の割には引用部が長くなったので、ここに書いてみます 郵便年金・簡易保険は、厚生省への一部移管のようですね。昭和13年の厚生省発足の際に保険院に業務移管されましたが、事務は依然として逓信省管理局の所掌でした。 簡易保険に関しては、逓信省簡易…

勲章褫奪令

政令ネタが続いているところで、小ネタを一つ。 勲章褫奪令(明治41年勅令第291号)では、いまでも「責付」(旧刑訴第118条)の語があります。 第3条 勲章ヲ有スル者法令ニ因リ拘禁セラレ又ハ労役場ニ留置セラレタルトキハ其ノ期間勲章ヲ佩用シ又ハ之ニ属ス…

引揚輸送

みうらさんのサイトで、集団的引揚輸送について言及されています。 ところで、航海命令の損失補償は、どうなっているのでしょうか。 海外からの日本国民の集団的引揚輸送のための航海命令に関する法律(昭和27年法律第35号) (損失補償) 第2条2項 前項の損…

譲渡制限

株式の譲渡制限について、いろいろ気になったこと。 日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律(昭和26年法律第212号)(制定時は別名)では、「その株式会社の事業に関係のある者」に限るという株式譲渡制限が可能である、と…

:「日本の島ではない」明記した日本国内法令を発見

独島:「日本の島ではない」明記した日本国内法令を発見 http://www.chosunonline.com/article/20090103000020 独島(日本名:竹島)を自国領と主張している日本が、1951年に公布した法令で独島を「日本の付属の島」から除外していた事実が明らかになった。 …

施行規則

みうらさんのサイトの12/31付記事に、救急救命士受験(http://ameblo.jp/xxxxxxx1234567/entry-10185687333.html)についてありました。救急救命士試験の受験資格として「学校教育法(昭和22年法律第26号)第90条第1項の規定により大学に入学することができ…

法律効力(5・完)

前回(id:kokekokko:20081010#p1、id:kokekokko:20080910#p1、id:kokekokko:20080908#p2、id:kokekokko:20080906#p1)のつづき。 「法律としての効力」について、形式面と内容面があることは前回書きました。では、これら両者の関係については、どのように考…

法律効力(4)

「法律効力」という概念には、形式面と内容面の2種類があります。まず、形式のうえでの法律効力は、その改廃が法律によるべきかどうかというものです。のちに法律で効力を付与されたポツダム命令や、太政官布告の大部分が、形式のうえでの法律効力を認めら…