補足してみます。

先日(1/13)の、paranoimiaさんの日記への私の言及に対して、「主張の趣旨がよく解りませんが」と書かれているので、先日の自分の文章に補足してみます。
私個人の見解は、

たしかに、訴訟上の負担を被告に負わせる制度(たとえばこの例の土地管轄制度)は、私には少々性急な気がします。

と書いたとおりです。
ですが、制度が「申立人の住所等の管轄とする」とされた時点で、たとえば「申立人が遠隔地に避難している場合」などの問題点が出るのは、明らかです。
これについて、私は、先日書いたとおり、

私は、これは、純然たる民事紛争とDV紛争とを立て分けたという政策意思だと判断したのですが、どうでしょうか。

と判断しました。それに基づけば、上述の問題点も立法者は織込済みであり、よって「相手方の負担が大きい」と批判しても「それはわかっている、だけどDVは通常の民事訴訟とは同等に扱えないのだ。」と反論されてしまいます。

私が問題にしている(つまり、主張らしい主張)のは、その先であって、

冷静な議論が必要なのですけど、DVについてはなかなかうまくいかないです。

の部分です。つまり、「DVだから・・・」と「たとえDVでも・・・」との線引きを冷静にできない状況がある、ということです。

「純然たる民事紛争とDV紛争とを立て分け」ることを根拠づけるための、理論的に一貫した方針の一つは、「犯罪に付随する民事訴訟一般を、通常の民事訴訟とは立て分ける」というものです。これなら、DV紛争について、通常とは異なる訴訟過程を設けることへの理論的一貫性はあります。そして、この考え方だと附帯私訴に行きつきますよね、ということを書いたつもりです。

私は、これは、純然たる民事紛争とDV紛争とを立て分けたという政策意思だと判断したのですが、どうでしょうか。
でもそれなら、犯罪に付随する民事訴訟(原状回復請求、損害賠償など)一般もやっぱり純然たる民事紛争とたてわけるべきではないか、そしてゆくゆくは附帯私訴を認めるべきではないか、ということになりますよね。

ということです。
つまりは、「附帯私訴を認めるくらいに徹底するのなら、この政策意思は一貫している」と書いたつもりであって、誰かが附帯私訴の制定を要求しているとか、私が附帯私訴の制定を主張しているとか、そういうことを書いたつもりはありません。

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なお、paranoimiaさんの

そういう議論がされていない状況に疑問を感じていたので、あえて考えを煮詰めないまま提示したつもりです。

という点は私も同感であり、そしてもっと広くみんなに考えてほしい点であると思うので言及したわけです。
「被害者に配慮せよ」、「女性などの虐げられてきた立場に配慮せよ」というスローガン(それ自体は正しい)で思考停止してしまう状況が、論壇だけでなく学界や立法・行政にもみられるように思えます。たとえば、正当防衛成立の基準などで。