オール・アバウト・マイ・マザー/メメント

○ オール・アバウト・マイ・マザー
女の幸不幸を作り出しながら物語は進んでいきます。いろいろ悩みながらも、人生はやっぱり面白い。
世の中にはたくさんの人がいるけれど、みんな、いっしょうけんめい生きているんだ、って思いました。

物語の鍵のひとつは「エステバン」という男です。主人公マヌエラの一人息子として登場する少年エステバン。シスターのロサが自らの命を差し出しても産もうとしたエステバン。そして、もう一人のエステバン。
男、仕事、病、というようにいろいろなカベにぶつかりながら、しかし特別な能力とかそういうものではなく、ありふれた一人の女として立ち向かっていく(「立ち向かう」などというように肩に力を入れたりはしないんですけどね)。
人間の面白さが描かれている楽しい作品でした。

○ メメント
私はすごく好きなんですよ、記憶系ドラマ。しかも、主人公が記憶を失うまでのかったるい過程は一切なし。序盤から観せてくれます。しかも目を離させない仕掛けがさすがです。
ガイ・ピアースがまたも魅力的です。この人はやっぱり、こういうまっすぐな役が似合いますね。L.A.コンフィデンシャルもそうでした。

主人公の記憶(おそらく短期記憶)が10分しかもたないので、彼は大事なことは写真に撮り、メモし、体に刺青します。
そして、脇役もたまりません。
おおよそ主人公視点で描かれているので、観てる側も、キャリー・アン・モスジョー・パントリアーノを信じきれないんです。謎が一枚ずつ解決に向かっていき、彼らの正体が少しずつ明らかになります。その流れもよく出来ています。また、登場人物の一人は最初に死ぬのですが、そこでは、逆に種明かしから話をはじめています。彼は死にました、ではなぜ彼は死ぬことになったのでしょうか、みたいな流れ。いいですね。

写真、メモ、刺青は非常に重要な小道具です。記憶が途切れながらも時間は進むこの作品のような物語では、これらの「記憶をとどめる小道具」は欠かせません。そして小道具はストーリーの進展に伴って変化していきます。このあたりの伏線も見事でした。

ただ、時間の進み方が単調なため、後半、とくにクライマックスの部分で飽きてしまって中だるみを起こしてしまっているのはちょっと残念でした。ラストに向けての部分は、あと少々スピード感が欲しかったところです。