ゲームの目標(1)

結局、元旦も受験記録をアップしました。毎日やるというリズムを崩したくないからです。
普通の日記は予定どおり月曜・火曜・金曜に書きます。

さて今月は、明確なマイブームが2つあって、そのうちの一つは責任能力の判断基準、および医療観察法案と保安処分との関係についての整理なんですが、もう一つはゲームの目標です。つまり、「ゲームの目標」って何だ? ということです。
われながら、悲惨なマイブームです。それはさておき。

 ***

前提として、いくつかのサイトをあげておきます。いずれも古典的(ネット基準ですが)かつ著名なサイトであり、私が数年前に読んで影響を受けたところです。私の文章でも適宜引用しますが、一度は原典にあたることをすすめます。
・ コスティキャンのゲーム論(馬場秀和さま) ・・・「おお、インタラクティブだ。しかし、これが面白いかね。」というキャッチコピーは多くの人に多くの示唆を与えました。
・ ゲームの部屋(本館)(野安さま)・・・非常に読み応えのあるコラムが数多くあります。

さて、将棋の目標は「相手の王を取る」ことです*1。つまり将棋における全ての行動は、相手の王を取るために行います。
野球の目標は「相手に勝つ」ことです。勝つということはどういうことかといえば、試合終了の時点で相手よりも多くの点数を取っている時です(試合放棄はその時点で試合が終了となり、0-9になりますから、この定義にあてはまります)。つまり、野球における全ての行動は、点数の獲得と失点の防止のために行われます。

 ***

では最初の整理点、「ゲームは、目標を達成すると終了する」のでしょうか?
将棋は、目標を達成すると終了です。ですが、野球は、目標を達成した時に終了するのではなく、終了時に目的が達成されているかの判定があるわけです。サッカーやマラソンや麻雀もそうですよね。終了時の基準(一定数のアウトカウント、または一定時間の経過、または一定の距離の走破、または一定の親の巡回)は、目標とは別に決められていますし、9イニングや90分や2巡をこなすことはそれ自体目標ではないのです。
ここで「延長戦」はどうなのか、という疑問も出そうです。延長戦の場合は、なるほど「目標達成とともに終了」ですね。しかし、これも細かく見ていく必要があります。
野球では「それ以後どうやっても論理的に目標が達成される場合には、ゲームを打ち切る」というきまりがあります。9回表終了の時点で後攻チームのほうが点数が多い時は、このきまりによってゲームは打ち切られます。いわゆるエックス勝ちです。いっぽう、いわゆるサヨナラ勝ちのときもこれに該当します。9回、あるいは10回以後においては、そのイニングの終了時点で勝敗の判断、またはさらなる延長の判断が下されます。そのときに、後攻チームのほうが点数が多くなれば、その時点で、さっきの「打ち切り」のきまりが適用されるというわけです。つまり、「目標達成とともにゲーム終了」のように見えて、実は微妙にケースが異なるのです。
ではサッカーの延長戦はどうでしょうか。このときの試合終了の基準は、「点数が入った時に、ゲームを打ち切る。そして、点数を入れた側を勝者とする」というものです。この場合は、「目標達成とともに終了」です。

 ***

でも、本来、ゲームとは目標を達成するものです(ゲームにとって目標の存在が必須である、という点は、コスティキャンを参照)。
ならば、目標が達成されればゲームは終了するはずです。というわけでその点をふまえて、目標を定義します。「目標とは、ゲームを終了させる条件である」(A)と。そして、「それ以後どうやっても論理的に目標が達成される場合には、ゲームを打ち切る」(B)と。
このように定義された目標を、各ゲームについて考えてみます。
1.将棋の場合は、(A)相手の王を取ること、(B)詰み(回避不可能な王手)、または必至(回避不可能な詰めよ*2)。ただし、詰まれても手を打つ権利はある(つまり相手のミスに期待する)というのが多数説ですから*3、厳密な目標は(A)になります。
2.野球の場合は、(A)9回終了時点、あるいは(降雨コールドなど)試合打ち切り時点で相手よりも高い点数を取る、(B)後攻チームの場合は、サヨナラ勝ち。
3.サッカーの場合は、(A)90分終了時点、あるいは試合打ち切り時点で相手よりも高い点数を取る。
4.麻雀の場合は、(A)南4局終了時点、あるいは西以後4局終了時点、(あるいはルールによってはプレイヤーの所持点数の喪失)で相手よりも高い点数を取る。

 ***

しかし、いつゲームが終わるかと問われれば「目標達成時」と答え、いつ目標達成かと問われれば「終了時に条件が備わっている時」と答えるのは、やや同義反復っぽいですね。そこで、ここでは、「ゲーム終了の条件が目標達成以外にある」ゲームと「ゲーム終了の条件は目標の達成のみである」ゲームとに分類できるとし、前者を「持ち点制」、後者を「サドンデス制」と名づけます。持ち点制とは、目標やトークン(駒など)やリソース(所持金など)以外にプレイヤーが所持する量(持ち点)があって、それが一定に達しないとゲームが終了しない、というものです。あるいは、変動するリソースが一定量(通常はゼロ)になるとゲームが終了する、というものです。
そうなると、将棋はサドンデス制、野球は持ち点制(イニングが持ち点となる)、サッカーは最初は持ち点制(時間が持ち点となる)でそののちサドンデス制へと移り、PK戦は再び持ち点制(回数が持ち点となる)、そして麻雀の場合は持ち点制(巡目と点数が持ち点となる)ですね。
ここで練習問題です。マインスイーパはどうでしょうか。目標は全地雷原の特定です。そして全ての地雷原が特定された時点でゲームが終わり、特定されないとゲームが終わりません*4。というわけで、「ゲーム終了の条件は目標の達成のみである」ゲームなので「サドンデス制」です。
えー、マインスイーパがサドンデス? と驚く方もいるかもしれません。なにせ、いま打っている私も驚いているのですから。でもまあ、ミッションコンプリート型のゲームは、大半がサドンデス制に入るんですよね。
最後に、整理します。
「相手よりも多くの何かを獲得する」ゲームは、通常、持ち点制になります。
「ある出来事の発生を目標とする」ゲームは、通常、サドンデス制になります。

*1:正確に言えばそれだけではなく、相手の反則負けや投了を引き起こすことも目標となりえますが、「反則負け」や「ゲーム放棄」は以後考察の外におきます

*2:次の手で王を取る可能性がある手が「王手」、次の手で詰みになる可能性がある手が「詰めよ」

*3:実はこの点はちゃんとは調べていません、次までに調べておきます

*4:地雷原のクリック、時間超過などの「ゲームオーバー」もありえますが、それは次回以後の検討材料にして、今回は「達成」だけを考えます