ゲームの目標(8)

前回にひきつづいてドラクエです。障害を設けて目標への努力を促すために、そしてクリアアイテムのかわりとして、ドラクエ1では、プレイヤーに経験値を貯めることを要求しました。なので、経験値が一定に達することが、ゲームの小目標になっています。
同様に、アイテムの存在があります。クリアアイテム、つまり、それがないと先に進めないというようなアイテムが、たいていのゲームには置かれています。このクリアアイテムを発見することも、ドラクエ1では小目標の一つです。
そしてドラクエ1では、これら小目標はすべて、ラストシーンへの到達という目標のためのステップでした。

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ところが、ドラクエの続編では、すこし事情が違ってきます。
経験値については、2つの変化があります。ひとつめは、意識的・作為的な経験値かせぎをしなくても、迷宮などを探索していれば必要な経験値が自然にたまるように設計されるようになりました。
もうひとつは、目標のために必要とされるレベルをはるかに上回る値まで、キャラクタのレベルを上げることができるようになりました。こうなると、レベルアップはもはや目標達成のためのステップとは言えなくなります。
また、アイテムについても、クリアのために必要なアイテム以外のアイテムがいろいろと登場しました。その代表が「小さなメダル」です。「小さなメダル」は、あたかもそれを集めることが目標であるかのように、ゲームの世界に散らばって隠されています。

このような、「ラストシーンへの到達という目標のためのステップ」ではないような要素は、「集める楽しさ」「成長させる楽しさ」、あるいは「完全にする楽しさ」を狙ったものであるといえます。「コンプリート」「やりこみ」という表現は、通常、目標達成以外のためのアイテム収拾などに使われます。
さて、そうなると、コンプリートの性質が変化します。コンプリートそれ自体が、ゲームの目標となるわけです。そこでは、最終敵を打破してラストシーンへたどり着くことは「終了条件」であって「目標」ではありません。こうして、ドラクエなどにおいては、シリーズが進むにつれて、ラストシーンの意味が希薄になってきます。ラストシーンへ到達したときに感じるのが、達成感ではなく、単なる終了感になるのです。
これでは困ったことになります。このままでは、「先へ進む楽しさ」がありません。なので、途中に見せ場をいくつか作ることになります。ですから、ラストシーンの地位が低下するのと反比例するように、中盤の盛り上がりが強くなります。

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そうすると、中盤が楽しくなりますから、物語全体が充実した良いゲームになりそうです。
ですが、なかなかそうもいきません。
なぜなら、プレイヤーの意識では、あいかわらず最終クリアを「目標」としているからです。

続きは次回。