国内頒布目的の意義と内容

輸入権について私なりのまとめ(shiranuiさま)
shiranuiさんと小倉秀夫さんとのやりとりをふまえたまとめです。よくできていると思います。
私も基本的に同意です。

このような法律の適用は、洋楽の音楽CDの場合も同じであって、ジャケットに上述のような「The distribution and sale of this product in Japan is prohibited.」などの記載がある場合には、著作権の侵害となり得る。
しかし、ジャケットに記載がない場合には、「日本に輸入し販売してもよい」音楽CDと区別がつかないのであるから、「国外頒布目的商業用レコード」とは云えず、著作権侵害にはならないであろう。

法案の「専ら国外において頒布することを目的とするもの」という定義から考えて、確かに、対象CDには「日本(あるいは日本を含む地域、)での頒布を禁止する記述が必要になるはずです。「自国以外での販売を禁止する」などでもいいのですが、ともかく、国外頒布目的だと言い張るためには、その目的をどこかで明示することが要件になります。この点につき、shiranuiさんの5/30の記述では、

専ら国外において頒布するという意思が現れ出ていないと、他人はその意思を認識できません。この場合、他人は、意思がないものと理解するでしょう。
そのため、他人が国外頒布目的商業用レコードとして認識し得るだけの客観性が必要だと思っています。

とあります。

追記。
これについては、「裁判官がそのような解釈をするとは限らない」という批判がされることがあります*1。ですが、そんなことを言い出せば、判決文でなされる条文解釈以外の条文解釈にはすべて意味がない、ということになってしまいます。法律学は、個人や組織の意思決定(つまり判決)に関する単なる予測ではなく、規範の定立を目指すものです。
条文の文言から考えられるすべての状況を羅列するだけなら、誰にでも簡単にできるわけです。
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*1:現に5/17付のコメント欄では、「裁判になったとしてshiranuiさんの言い分が通るのでしょうか?」「「shiranuiさんの言うことを信じていたら、後ろに手が回った」ということが起こり得るのです。」という意見が書きこまれています