著作権法に関する雑考

割と面白い記事があったので紹介。
なお、以前に私が書いたCCCDと著作権法(技術的保護手段の回避)についてはこちら
 ***
JVA、DVDコピーソフトに関する法律的検討結果を公表
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/6138.html

市販のDVDは、CSS(Content Scrambling System)と呼ばれる技術を採用し、映像を暗号化して保存しているため、単純に複製を作っただけでは映像を再生することはできない。同協会ではCSS技術について、「著作権審議会マルチメディア小委員会ワーキング・グループにおいて『アクセスコントロール』と位置付けられたため、アクセス権が存在しない現行法では、CSSを解除したコピーも著作権法上の技術的保護手段を回避しない複製であり、著作権法上の刑事処罰の対象にはならない」とする説が有力であると紹介している。
 
同協会では有力説を踏まえた上で、「CSS著作権法上意味のある視聴可能な複製を防止する技術のため、法的評価としてはコピーコントロールであり、CSSを解除するソフトウェアは著作権法120条の2第1号の『技術的保護手段回避プログラム』に該当すると解すべき」とコメント。

私もその「有力説」の線で書きました。「CSSは複製を防止する技術ではなく視聴を防止する技術である」わけです。
では立法で技術的保護手段の定義を変えれば良いかというと、事はそう単純ではありません。
個人的には、CSSのような「複製制限を目的とした視聴制限」に限定して視聴制限を技術的保護手段として定義するのは、構わないと思います。おそらくJVAの立場もそうでしょう。しかし著作権法には複製権(21条)は存在しますが視聴権は存在しません。よって現状のままでは視聴制限を技術的保護手段とすることができません。
 
そこで考えられる方法は、(1)著作権のなかに視聴権を新設する方法、があります。ですが、だからといって安直に「著作者は、その著作物を視聴させる権利を専有する。」なんていう規定を盛り込むわけにはいきません。視聴権は所有権に当然付随するものだからです。あるいは、別の方法として(2)一定の視聴権を複製権とみなす方法があります。この場合は、どのような視聴権が複製権に準じるのかを明示する必要があります。ですが現行法上は、技術的保護手段に該当する技術は特定されていません。そのあたりから転換する必要が出てきます。
というわけで、この問題は、奥が深い問題です。おそらくJVAはそれほど深く考えていないでしょう。
 ***
ユーザー置き去りの著作権攻防戦
http://www.asahi.com/tech/apc/040729.html

私のほうでは、問題点を「テーマ2 次の著作権法改正のターゲットはパソコンやiPodへの新規課金か 」に絞って書いてみます。

 日本レコード協会JASRACの要望は2つ。まず「緊急の課題」(沼村宏一JASRAC録音部長)として、媒体価格比で決められている補償金額を、1枚当たりいくらの定額にすることだ。媒体価格が大幅に下落して、補償金の総額が減少しているためだ。「媒体の値段が下がっても、収録される音楽の価値は変わらないはず」と沼村さんは理由を説明する。
 
 2点目が課金対象の拡大だ。今の著作権法では、パソコンやデータ用CD-R/RW、iPodなど「音楽以外に使える汎用機器・媒体」には課金されない。レコード協会やJASRACは、法を改正して対象を拡大するよう求めている。

1点目の検討に対しては、「媒体価格が大幅に下落して、補償金の総額が減少している」のであれば、補償額の率を上げることを検討するのが先です。
そして2点目の検討に対しては、汎用機器を私的録音録画補償金制度の対象とすべきだという議論は、昔からありました。たとえばパソコンにチューナがついたときには「これはデジタル録画機器と本質が同じではないか」と言われました(たとえば高比良昭夫「私的録画補償金とデジタル録画機器について」コピライト2003年4月号26ページ)。しかし、私的録音録画補償金制度については問題点が多く、幸いにも補償金が小額であり対象機器が限定されているから大きく取り沙汰されていないだけという状況です。汎用機器を徴収対象にして補償額を上げた時に、「私的録画以外にしか使っていない証明をなぜユーザーがしなければならないのか、そしてどうやって証明するのか」という問題、あるいは「ソフトの側でコピープロテクトがかかっていて事実上複製できないのになぜ補償金を取られるのか」という問題を、どのようにJASRACやSARAHは解決するのでしょうか。