デジタル放送の録画(その2・完)

前回(id:kokekokko:20041011)のつづき。「初心者〜中級者向け」とは言ったものの、そうなっているかどうか、はなはだ不安。

(3)映像信号とその伝送・接続
ここで、信号について簡単に説明してみます。ややこしいなと感じられたら、この項目は読み飛ばしてもだいじょうぶです。
 
○アナログ映像信号・接続の種類
アナログ映像信号のうち、明るさや輪郭を表すための信号が輝度信号(Y)です。Yだけだと白黒画面になります。また、アナログ映像信号のうち、色を表すための信号が、色信号またはクロマ信号(C)です。これらのほかに、映像信号には同期信号*1という調整信号があります。
 
「コンポジット」は、これらの映像信号をまぜて一つの信号にしたものです。ですから、1本のケーブルだけで接続することができます。たいてい、黄色いピンコードでつなぎます。ゲーム機やビデオデッキからTVにつなぐ黄色いピンコードは、この信号です。
コンポーネント」は、これらの映像信号を別々にして接続するものです。どのように別々にするのかによって、いくつかの種類があります。たとえばY/Cb/Crです。
ピンコード(RCAアンバランスケーブル)を使ってコンポーネント接続をしようとすると、ケーブルが多数必要になります。なのでこれらをまとめて1本にしたケーブル方式があります。その例が「S端子」(S1とS2があります)と「D端子」(D1からD5まであります)です。
 
○デジタル映像信号・接続の種類
デジタル信号では、上で書いたアナログ信号をデジタル変換するわけですが、普通にデジタル変換する(信号をパルス符合にするPCMなどがこれにあたります)だけでなく信号を圧縮することがあります。代表的な圧縮方式としてはMPEGがあります。
 
この信号をどう伝えるか(デジタルインターフェイス)についても、いくつかの規格があります。たとえば、SPDIF(コアキシャル、オプティカルに分かれます)、XLR(AES/EBU)、i.LINKIEEE1394)です。またPC用途出身のDVI-DやそのAV機器版であるHDMIもあります。いずれも1本のケーブルで全ての信号をまかなえるというメリットがあります*2

(4)機器の選択と接続
ここでは、いままでの流れをふまえて、実際の接続を考えてみます。おさらいとして、もういちどデジタル録画の信号の流れを書いてみます。
 
アンテナ  →  チューナー → 録画装置
     (デジタル電波) (デジタル映像信号)
 
ディスプレイと録画機器(レコーダ)のどちらかにデジタルチューナーが内蔵されている場合と、そのいずれにもデジタルチューナーが内蔵されていない場合があるので、その両方の場合を想定してみます。
ところで、こういう想定・検証はよくAV機器雑誌がやっています。Hiviなんかもすごく参考になります。実際に新製品を用意して検証するというのは私にはできないので、そういう検証のためには雑誌を一度読んでみるといいかと思います。ですが基本的に、Hiviのような商業誌は、商品の欠点や不具合について少々歯切れが悪いという傾向があります。なので、そのあたりは差し引いて読むといいでしょう。
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ここではTOSHIBAの製品を例にとって説明してみます。基本的な性能についてのメーカーによる差はほとんどないので、他社製品についても同じような話がだいたい当てはまると思います。
新しいディスプレイとしては32L400V(32インチ液晶)、デジタルチューナーは地上・衛星ともにこれに内蔵されています。音声・映像信号のデジタル出力も可能です。
いっぽう従来タイプのディスプレイ(新製品なのですが)としては32ZP58(32インチブラウン管)、こっちではチューナーはアナログのみ内蔵です。なお、デジタル信号は入出力ともできません。
次に、録画用機器(レコーダ)をみてみます。ただ、前回書いたように、デジタルチューナー内蔵の録画機器はほとんどありません。東芝もそれを製造していないので、ここではソニーブルーレイディスクBlu-ray)レコーダBDZ-S77で考えてみます。
いっぽうの従来型DVDレコーダはTOSHIBARD-X4を想定しました。ここで、新機種のRD-X5にはDVD VRモードが用意されています。これはDVD-Rでコピーワンス放送を録画できるというのが売りです。ですが、再生用機種との互換性や他社機種との互換性に不満が残るので、ここではRD-X4を選んでみました。
 
○ディスプレイにデジタルチューナーが内蔵されている場合
アンテナ → ディスプレイ → レコーダ
 
これが最も一般的なパターンでしょう。液晶TV(32L400V)とDVDレコーダ(RD-X4)の組み合わせです。注意すべきは、チューナーがディスプレイ側にあるということは、たとえば予約録画をしたいときにはTVの電源も入れなければならないということです。
デジタル放送を録画するときにはDVD-RAMを使います。なお、ハイビジョンのままの録画はできません。
接続は、まず、デジタルアンテナからのケーブルをTVに接続します。そしてTVの背中の端子からi.LINKあたりでDVDレコーダに接続すればOKです。なお、DVDレコーダで再生する場合に、レコーダ側のD/Aコンバータを使うこともできます。そのときは、レコーダの出力端子から、コンポーネントで接続します。
 
○レコーダにデジタルチューナーが内蔵されている場合
アンテナ → レコーダー → ディスプレイ
 
ブラウン管TV(32ZP58)とブルーレイの組み合わせです。録画の手間がかからない方法です。ハイビジョンのままの録画も可能です。
接続は、まず、デジタルアンテナからのケーブルをレコーダに接続します。そしてレコーダからTVにアナログ接続します。映像はD4で大丈夫なのですが、音声のほうはやや貧弱で、アンバランスピン(ピンコード)しかありません。それと、アンテナ出力の線もつないでおくと、アナログ放送を観る場合にわざわざブルーレイレコーダを使う必要がなくなります。
 
○デジタルチューナーが内蔵されていない場合
レコーダ ← チューナー → ディスプレイ
 
ブラウン管TV(32ZP58)とDVDレコーダ(RD-X4)の組み合わせです。どちらにもデジタルチューナーが内蔵されていません。というわけで外付けのチューナーを考えます。しかし、東芝はデジタルチューナーを単独では発売していないようです。というわけで、ビクターのチューナーTU-MDS50を考えます。ただですね、できるならばチューナーとDVDレコーダは同一メーカーで揃えるのがいいです。そもそもチューナーと録画機器とがセパレートになっているなんて不便なのですが、それに加えて、予約の場合には両方の機器を操作する必要があります。レコーダの側で操作すると自動的にチューナーも作動するという仕組みがありますが、これもいまいち期待できません。というわけであまりすすめられない組み合わせです。
 
接続は、まず、デジタルアンテナからのケーブルをチューナーに接続します。そしてチューナーからTVにアナログ接続します。ところがここで、上の組み合わせと同様に、映像はD4、音声はピンコードで接続すると多少不具合があります。そのあとでチューナーからレコーダにもi.LINKでデジタル接続して完了、といきたいのですが*3、このままですと、レコーダでDVDを再生するときにチューナーを通すことになってしまいます。しかもチューナーにD/Aコンバータの役目をさせることになります。それを避けるためには、レコーダの出力からもTVにアナログ接続する必要があります。
そもそも、この組み合わせでは3つ機械があるのですが、録画の際にはTVは不要で、再生の際にはチューナーが不要で、さらに放送視聴の際にはレコーダーが不要である、というわけで、3つ全部使うという場面はあまりないのです。いっぽう映像信号はアンテナ信号と異なり、電源が入っていない機器を通過しません。なので、使わない機器にも電源を入れて信号を通すことになってしまうわけです。
 
(5)まとめ
というわけで、デジタル放送の録画、とくにハイビジョン放送の録画はいろいろ悩ましい問題があります。やっぱりレコーダ側の規格の問題が大きくて、放送規格の変化に録画メディアが対応しきれていない点が大きいと思います。地上アナログの場合、チューナーがTVとビデオデッキの両方についているのが当然で、ユーザーも不便を感じることなく、接続もシンプルなもので充分でした。ですが、デジタルがそのような便利なものになるには、あと少し時間が必要です。
また、AVセンターやアンプ、プロジェクタも含めた接続も考えたいところです。それは、またいつか。

*1:水平同期信号と垂直同期信号、その合成信号である複合同期信号、さらに色同期信号(カラーバースト信号)があります。

*2:先日(9/23)書いたエソリンクは、デジタル伝送にもかかわらずチャンネルごとに1本ずつのケーブルを必要とします。このあたりに、ティアックの音質重視の姿勢を垣間見ることができるわけです。ところで、初心者向け文章にあるまじき余談ですが、ティアックの社長の大間知氏は小泉総理に似ていると巷ではいわれていますが、私には大竹まことに見えてしまいます。

*3:Hiviでもこの方法が紹介されていました。