ビッグ・フィッシュ

ティム・バートン監督はあいかわらずのフリークス趣味ですね。大男とか双生児とか魔女とか。
今回は「社交性が服を着たような」青年が主人公です。ティム・バートンといえば暗い影が差すような作品が多かったのですが、今回は、実に明るく楽しく冒険談が進みます。どこまでがホラ話で、どのホラ話に真実がこっそり織り込まれているのか、その境界は、主人公と同じく観客にもはっきりわかりません。そこがまた心地よいのです。
 
しかしこの作品の見せ場はやっぱり、「父と息子」でしょう。息子はジャーナリストだし、父親の真実を知りたい。そんな彼からすると、父親の態度は、逃げているというかはぐらかしているというか、スッキリしない。自分の出生の話だって、みんなが好むおとぎばなしのような父親のホラよりも、本当の話のほうを聞きたがります。
でも最後には、彼は父親のホラ話の中の真実に触れ、そして父親の作り出した世界の住人になって父の物語を語りだします。父の人生のファンタジーの最終章を、息子が紡ぐ。本当に素敵な「父と息子」です。
 
それと、個人的には、父親の青年時代を演じるユアン・マクレガーがよかったです。あこがれの女性が住んでいる家の前にある花畑で、まっすぐな笑顔で「結婚しよう」と言い出すあたりが、ほんとうに好青年っていう感じでした。