精神医療に関する条文・審議(その19)

前回(id:kokekokko:20050121)のつづき。初回は10/28。
昭和38年法律第108号での改正です。「麻薬取締法等の一部を改正する法律」によって、麻薬中毒者に対しては麻薬取締法による処置をすることになりました。これにより、麻薬中毒者は精神衛生法の対象から外れることになり、それに伴って精神衛生法も一部改正されることになりました。
また、精神衛生鑑定医が麻薬中毒者の診察などを行うことになる規定も、新設されています。
今回も、麻薬取締法自体についての審議は省略し、精神衛生法の改正部分についての議論に絞りました。

麻薬取締法等の一部を改正する法律案
 附則
 (施行期日)
1 この法律は、昭和三十八年四月一日から施行する。
 (経過規定)
2 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
 【略】
 (精神衛生法の一部改正)
6 精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
  第五十一条の見出し中「覚せい剤等」を「覚せい剤」に改め、同条中「、麻薬若しくはあへん」を削り、「慢性中毒」を「覚せい剤の慢性中毒」に、「「慢性中毒者」」を「「覚せい剤の慢性中毒者」」に改める。
 
 理由
 最近における麻薬中毒者の増加及び麻薬犯罪の悪質化の傾向にかんがみ、麻薬中毒者の医療に関する規定を整備するとともに、麻薬犯罪に対する罰則を強化する等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

社会労働委員会会議録第14号(43衆昭和38年2月27日)
○秋田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の国民健康保険法等の一部を改正する法律案、麻薬取締法等の一部を改正する法律案、老人福祉法案及び大原亨君外十六名提出、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を改正する法律案、以上四案を一括議題とし、審査を進めます。
○秋田委員長 提案理由の説明を聴取いたします。西村厚生大臣
○西村国務大臣 【略】
 次に、ただいま議題となりました麻薬取締法等の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 この法律案は、最近における麻薬犯罪の悪質化及び麻薬中毒者の増加が、保健衛生上及び治安上重大な問題を提起している現状にかんがみ、麻薬の取り締まり及び罰則を強化するとともに、麻薬中毒者に対する入院措置を講ずる等、麻薬対策を強化に推進するため、麻薬取締法の一部を改正し、あわせて、大麻取締法及びあへん法の一部を改正するものであります。
 まず第一に、麻薬取締法の一部改正について御説明申し上げます。
 【略】
 改正の第二点は、麻薬、大麻またはアヘンの慢性中毒者の入院措置に関する規定を設けることであります。麻薬中毒者等の入院措置といたしまして、現在、自傷他害のおそれのある者については、精神衛生法によって精神障害者に準ずる措置がとれることになっておりますが、麻薬中毒者対策としましては、この措置のみによることは必ずしも十分と申せない実情にありますので、新たに麻薬取締法自体において、麻薬中毒者等の通報、診察、入院、入院中の措置、退院等について、実態に即した規定を設けようとするものであります。
 なお、麻薬中毒者等の入院措置は、麻薬中毒者等の身体の拘束を伴うものでありますので、人権保護の見地から入院期間が三十日をこえる措置をとる場合には、麻薬中毒審査会の審査に基づいてこれを行なうこととし、また入院期間は六カ月をこえることができないこととする等の規定を設けております。
 【略】
 以上がこの法律案を提出いたしました理由及び改正の主要点であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
【略】

社会労働委員会会議録第26号(43衆昭和38年5月8日)
○秋田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の麻薬取締法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 【略】
 
○中野委員 【略】
 そこで、今度の麻薬中毒者対策の強化の面でありますが、従来麻薬中毒者は精神衛生法の五十一条によって取り扱ってきておりますが、今回特に麻薬取締法に麻薬中毒者の医療の面を取り入れて、別個の法律によらなかった理由はどういうところにありますか。

○牛丸政府委員 麻薬の患者が、従来精神衛生法によって取り扱われていたことはそのとおりでございますが、これを麻薬取締法の中に取り入れまして、従来の精神衛生法による措置入院とは別個にいたしました理由は、麻薬中毒者の特殊性と申しますか、従来の精神衛生法によりますと、その精神衛生法の規定によりまして、みずからを傷つけたり、あるいは他人を害したりする、そういう自傷他害のおそれのある場合にしか措置入院ができないというような規定になっておるわけであります。これは精神病者に対してそういう規定がございまして、それを麻薬中毒者にも準用している、こういうのが精神衛生法のたてまえでございます。そうしますと、麻薬中毒者のいわば禁断症状を起こしている、そういう非常に危険があるというときだけしか措置入院ができない。それがおさまってしまったら当然退院をさせなければならぬというようなことに法律の規定によってなるわけでございますので、これは麻薬中毒者の中毒症状を治療する立場から見ると、きわめて不十分でございます。むしろそういう禁断症状を起こして、そのあと一定の期間治療を継続して、そうして麻薬に対する本人の依存性というものを脱却する、そういうふうな治療法というものが麻薬治療の一つの中心になるわけでございますので、そういう麻薬中毒者の特殊性から、精神衛生法の規定からむしろはずして、麻薬取締法の中に特別な規定を設けた方がよろしいではないかという趣旨でございます。

○中野委員 関連して聞いておきたいのですが、中毒者の多くは、大体麻薬犯罪を犯した犯罪者であると思うのです。これらの者についての措置入院と、それから刑事手続との関係はどうなっておるか。

○牛丸政府委員 これはもちろん刑事手続の方が優先するわけでございまして、犯罪者は刑法によって処断される、刑事処分によって優先されるわけでございます。

○中野委員 そこで、中毒者の措置入院について人権問題がからんでくると思うのです。それについてどういう考慮が払われておるか、具体的に示してもらいたい。

○牛丸政府委員 今度の法律の改正の重点は、中毒者の対策の点でございまして、ただいま御指摘になりました中毒者の対策が強制入院をたてまえとしている以上は、その中毒者の人権の尊重ということも当然考えていかなければならないわけでございます。そういう趣旨から、この条文の五十八条の中にそういう規定があるわけでございますが、五十八条の十三のところに、麻薬中毒審査会という条文がございます。これは審査会の構成をここにうたっているわけでございますが、要するに麻薬の中毒者というものは、警察なり、その他麻薬中毒者を発見した各関係の官庁なり、あるいは医師その他の麻薬の担当者から通報がございます。あるいは直接そういう者が報告して発見した場合には、これを入院させる強制入院の措置がこの条文によって規定されておるわけでございますが、その場合に、中毒症状を起こしたり、そういうふうな者はいわば観察入院と申しますか、とりあえずの問題としては、ある一定の期間病院に入院さす。しかし、これをいよいよほんとうに強制入院をさせるというふうにするためには、ただいま申し上げました審査会の意見を聞いて、そうして知事が強制の入院命令を出す、そういうふうな措置をとる。それからその期間も最長六カ月をこさない。これは六カ月あれば中毒者の治療には十分であるという判断のもとに、いつまでも強制入院をさしておくということも、これは人権問題として問題がございますので期間を制限する、そういう二点において中毒者の人権を考慮して、そういうふうに規定にうたったわけでございます。

○中野委員 時間もありますから、そこで鑑定医の問題をちょっと聞きたいのですが、精神衛生鑑定医によって麻薬中毒者の診察に当たらしめることになっているが、その基準は一体どういうものを考えておるか。それからその鑑定医の数、それから全国に配置する状況はどうなっているか、この点をひとつ。

○牛丸政府委員 精神衛生鑑定医というのは、これは精神衛生法によって定められたものでございまして、麻薬中毒者の実際の治療を行なう先生方はほとんど精神衛生関係のお医者さんでございますので、特別に麻薬中毒のための鑑定医制を設けないでも十分じゃないかという趣旨で、精神衛生鑑定医の方々にそういう鑑定医の仕事をお願いするという趣旨でできたわけでございます。しかしこれは全国的にいろいろと散在されておるわけでございますので、一定の基準を設けて、麻薬中毒者の中で入院を要する者の鑑定をする必要がある、そういう者のために五十八条の六の第二項で「精神衛生鑑定医は、政令で定める方法及び基準により、当該受診者につき、麻薬中毒の有無及び」云々というふうに、麻薬中毒の有無と措置入院を要するかどうかという判断は、政令に定める方法と基準ということになるわけでございます。そしてその政令はどういうことを考えておるかといいますと、一定の検査法というものを政令できめて、麻薬中毒者であると思われる者を、一定の試験なり診断の結果そこで判定するわけでございますが、その判定、診断の方法、それからどういう検査をするかというようなことをこの政令できめていく。それでそこに一定の中毒の度合いとか、そういうものの一つの基準を設けまして、その基準に従って判断をしていく。この基準は、現在精神衛生審議会というのが厚生大臣の諮問機関として設置されております。それへ麻薬の小委員会をつくっていただきまして、現在審議をしていただいて大体案はできたわけでございます。これは全く純粋に医学的な問題でございまして、そういうものに従ってやりたいと考えております。
 それから精神衛生法による鑑定医の数でございますが、これは全体で千九百二十二名全国に指定されております。特に濃厚地区の東京、神奈川、福岡、愛知、大阪等におきましては、その合計六百七十人の鑑定医が現在すでに指定をされておるわけでございまして、これは麻薬中毒者の発見なり、そういう診断には十分であろうというふうに私どもは考えておるわけでございます。

社会労働委員会会議録第29号(43衆昭和38年5月15日)
○河野(正)委員 さらに入院処置に関しまする事項について、若干お尋ねを申し上げたいと思います。
 御承知のように、わが国の重症麻薬中毒者で、しかもリストに載っております数というものは約六千五百というふうにいわれております。しかも現在中毒者用のベッドが五百、それから三十八年度に国立の収容施設が二百ベッド、それから都道府県関係が二百ベッド、そういたしますと、大体概算して麻薬中毒者関係のベッド数というものが九百ベッド、こういうことになろうかと思います。ところが、実際リストに載っております数が六千五百といわれておるけれども、そのうち直ちに強制入院さして治療しなければならぬ患者というものが一体どれくらいおるのか、それといま申し上げますように、ベッド数というものが九百ベッドというような関係についてどういうふうに御判断願っておりますか、その辺の事情をお聞かせいただきたい。

○牛丸政府委員 私どもが名前までわかっている患者は、ただいま御指摘のように大体六、七千名という数でございます。しかし、これはなお現実にはもっと確認をする必要があるわけでございます。それにベッドは今年度一ぱいで九百に――現在は約五百でございますから、いまの時点からいいますと、五百しか麻薬中毒患者専門のベッドがないということでございまして、麻薬中毒患者専用の病院ではとても収容し切れないわけでございまして、今度の法律でも、厚生省令で定める精神病院には収容するというたてまえをとっておるわけでございます。しかしこれは、だんだんそういう専門の病院をふやしていく考えではございますけれども、とりあえずは麻薬の専門の病院、それにプラス各府県に現在ございます国立なり公立あるいは法人立等の精神病院に委託いたしまして、そして現実の中毒患者を収容していきたい、かように考えておるわけでございます。現実にどの程度あるかということは、現在各府県別に調査をやっておるわけでございますが、地域的には、たとえば東京とか横浜のほうは精神病院も相当ございますので、大体私どもがいま見通しを立てている分では、とりあえずの収容能力はあるのじゃないか。しかし大都市は、隠れた中毒患者がどの程度かということが的確につかめませんので、その辺は実際にこの法律が運用されましたらどういう事態が起こるかわかりませんが、ただいまの見通しでは、各府県に散在しているであろう中毒患者と現在の麻薬の専門の病院プラス精神病院というものの利用ということによって、やっていけるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。

○河野(正)委員 この法律をうかがってまいりますと、入院措置の対象というものは厚生省令で定める病院、麻薬中毒者医療施設というように明記されておりますが、この麻薬中毒者医療施設というものは、一般の精神病院――法人、個人も通じてでございますが、そういう場合も省令で定める基準に合えば指定をされるというふうに理解していいのですか。

○牛丸政府委員 ただいまの御指摘のとおりでございまして、省令で定める病院として厚生省でつくっているもの、あるいは都道府県でつくっている麻薬の専門の病院、これは初めから専門のほうでございますから問題はございません。そのほかには、国または都道府県が設置した精神病院、それから精神衛生法の第五条の規定によって都道府県知事が指定した病院がございますが、そういうものにもとりあえずは収容をお願いしたい、かように考えております。

社会労働委員会会議録第30号(43衆昭和38年5月16日)
○五島委員 もう一つは、五十九条の四の入院措置の費用問題についてであります。ここでは金のある人、財産のある人は、費用の全部または一部を徴収する、こういうことになっておるわけです。人権の問題にも論及されたほどの今度の強制入院措置の問題について、これは国民的な問題として政府自体も取っ組まれたことであるし、したがって、強制入院の措置が必要であるかどうかということは知事がきめるわけですから、そうすると、そういうような場合については、強制入院の措置をした人たちは、十分の八は国が負担し、地方が十分の二を負担をして、すべて公費においてこれをまかなうというようなことで明らかにしてやってみたらどうか。もちろん金持ちから金を取るなという思想ではなくて、麻薬を追放するために、人権を一部無視し、制限しながら強制的に入院させた、こういうようなことについてどうあるべきか。あるいは金持ちのくせに、患者になって苦しめばただで国が療養措置をしてくれるのだからといって、金持ちが金があっても金は出さなくてもいいんだから、まあ好んで麻薬患者になろうなんて、そういうような気持ちはないだろう。しかし、安易な気持ちを持たせるわけにはいきませんけれども、強制的に入院をさせるのならば、国費あるいは公費で一〇〇%これをまかなっていいんじゃなかろうかという逆論が成り立つけれども、これについてあなたたちはどうお思いになるかということであります。
 それから、時間がございませんからあわせて質問いたしておきますが、この全額あるいは一部を徴収するという場合、どこを限度として取ろうと考えておられるのか。生活のどこを限度としてやるのかということです。たとえば、家族がちょっとばかり給料を取っている、弟が同一家族にあって、弟が中毒患者になった、そうしたら兄貴がこれを見てやらなければならないのかどうか、こういうようなことも、ここで明らかにしておいてもらわなければ安心して入院もできない、通報もできない、申告もできない、連絡もできない、こういうようなことが生じてきはしないかと思いますので、この点もあわせて伺っておきたい。

○牛丸政府委員 【略】
 それから、ただいまの公費負担の問題でございますが、これは原則として全額公費負担でございますから、府県が二割、国が十分の八という割合で公費によって入院費をまかなうというたてまえをとっております。ただ収入のある者に対しては、これは大体地方税を基準にして考えておるわけでございます。いまの精神衛生法措置入院なりあるいは結核予防法の命令入院等の公衆衛生一般の法規におきましても、原則として公費負担制度というものは結局援護率ということで、実際はそのうちの一部は、収入のある者については自己負担をさせる。それを私どもは、大体百人のうちに八五%は無料、全額公費負担、あとの一五%についてそういう徴収をするということで、その徴収の基準は、精神衛生法なり結核予防法と同じ基準でやっていきたいと思います。
 それから最後の、どういう基準でどこの点にあれをやるかということは、これは世帯単位でございまして、大体患者とその配偶者及び患者と生計を一にしている絶対的な扶養義務者がおった場合、親とか子とか、そういうような場合にはそういう世帯を一つの単位としている、こういうことでございます。

社会労働委員会会議録第33号(43衆昭和38年5月23日)
○井村委員長代理 ただいま委員長の手元に、小沢辰男君、河野正君、及び本島百合子君より、麻薬取締法等の一部を改正する法律案に対する修正案が提出されております。

○井村委員長代理 修正案の趣旨の説明を聴取いたします。小沢辰男君。

○小沢(辰)委員 麻薬取締法等の一部を改正する法律案につきまして、その施行期日が今年四月一日と規定してございますが、これは当然、公布の日から起算して二十一を経過した日に改める必要がございます。

 以上が本修正案を提案する理由でございますが、何とぞ御賛同を得たいと思います。
○井村委員長代理 修正案についての御発言はありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○井村委員長代理 ないと認めます。

○井村委員長代理 次に麻薬取締法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○井村委員長代理 御異議なしと認めます。そのように決しました。
 これより内閣提出の麻薬取締法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決に入ります。
 まず、小沢辰男君、河野正君及び本島百合子君提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕

○井村委員長代理 起立総員。よって、本修正案は可決されました。

○井村委員長代理 次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕

○井村委員長代理 起立総員。よって、内閣提出の麻薬取締法等の一部を改正する法律案は修正議決すべきものと決しました。

○井村委員長代理 この際、小沢辰男君、八木一男君及び本島百合子君より、麻薬取締法等の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めます。八木一男君。

○八木(一)委員 ただいま提出をいたしました麻薬取締法等の一部を改正する法律案についての附帯決議案について、提案の内容並びに理由を御説明申し上げたいと思います。
 まず、最初に附帯決議の案を朗読いたします。
  麻薬取締法等の一部を改正する法律案(内閣提出)に対する附帯決議(案)
  政府は、麻薬禍の早期撲滅を期するため、左記事項について速かに対策を講ずるよう努むべきである。
 一、麻薬禍防止には国際的連けいを保つことが重要である点にかんがみ、速かに千九百六十一年の麻薬に関する単一条約を批准すること。
 二、国は今後麻薬取締りに関し国庫支出の増額を考慮し一層其の施策の充実を図るとともに、都道府県知事並びに関係市町村と強力な協力を得るよう連絡を密にすること。
 三、麻薬中毒者対策は、患者が退院後再び中毒に陥らざるよう措置することが重要である点にかんがみ、その社会復帰について十分なる施策を講ずること。
 四、麻薬取締法別表に規定する麻薬の指定等については、迅速適確な措置をし、更に麻薬以外の薬品であって麻薬類似の害悪があるもの(睡眠薬等)の対策につき万全を期すること。
 五、特に強迫、監禁、暴行等によって強制施用するが如き悪質事犯に対し、厳罰をもって処断すると共に、政府は更に刑罰の強化を考慮すること。
これが案の内容であります。
【略】

○井村委員長代理 本動議について採決いたします。
 木動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  〔賛成者起立〕

○井村委員長代理 起立総員。よって、本案については小沢辰男君、八木一男君及び本島百合子君提出のごとく附帯決議を付することに決しました。
 この際、西村厚生大臣より発言を求められております。これを許します。西村厚生大臣

○西村国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨に対しましては、政府といたしましては十分考慮してまいりたいと存じます。

本会議会議録第26号(43衆昭和38年5月24日)
○井村重雄君 ただいま議題となりました麻薬取締法等の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 まず、麻薬取締法でありますが、
 改正の第一点は、正規のルートの麻薬の取り扱い及び監督を強化することで、麻薬取締員を増員するほか、新たに犯罪鑑識用麻薬の制度を設けること等であります。
 第二点は、新たに麻薬中毒者に対する措置として麻薬中毒者の通報、診察、入院中の措置、退院等について規定を設けております。なお、麻薬中毒者の入院措置については、人権擁護の立場から入院期間が三十日をこえる場合には、麻薬中毒審査会の審査に基づいて行なうこととし、六カ月を限度としております。
 第三点は、罰則の強化でありまして、現行の最高刑一年以上十年以下の懲役及び五十万円以下の罰金を無期または三年以上の懲役及び五百万円以下の罰金に改めるほか、それぞれの違反行為の段階に応じて罰則を強化しておるのであります。また、麻薬の密輸出入及び密造については、その予備を罰することとし、麻薬の密輸出入及び密造に要する資金、建物等の提供及び麻薬の不正取引を独立罪として罰することとしております。これらの麻薬取締法の罰則の強化に伴って、大麻取締法及びあへん法の違反行為についても、それぞれの段階に応じて罰則の強化をはかっておるのであります。
 本法案は、去る二月十八日本委員会に付託となり、昨日の委員会において質疑を終了したのでありますが、自民、社会、民社の三党共同の施行期日についての修正案が提出せられ、採決の結果、全会一致をもって本法案は修正議決され、なお、本法案について五項目にわたる附帯決議を付することに決しました。詳細は会議録について御承知いただきたいと存じます。
 以上、御報告を申し上げます。(拍手)

  〔参照〕
 麻薬取締法等の一部を改正する法律案に対する修正案(委員会修正)
 麻薬取締法等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
 附則第一項中「昭和三十八年四月一日」を「公布の日から起算して二十日を経過した日」に改める。

○副議長(原健三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議はございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。

【20050715:参議院審議は、にわとりショコラへ移転しました。】

麻薬取締法等の一部を改正する法律(昭和38年6月21日法律第108号)
 附則
 (施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。
 (経過規定)
2 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
 【略】
 (精神衛生法の一部改正)
6 精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
  第五十一条の見出し中「覚せい剤等」を「覚せい剤」に改め、同条中「、麻薬若しくはあへん」を削り、「慢性中毒」を「覚せい剤の慢性中毒」に、「「慢性中毒者」」を「「覚せい剤の慢性中毒者」」に改める。
 
 内閣総理大臣 池田勇人
 法務大臣 中垣国男
 大蔵大臣 田中角栄
 厚生大臣 西村英一
 運輸大臣 綾部健太郎
 自治大臣 篠田弘作