[精神医療と法]精神医療に関する条文・審議(その26)

前回(id:kokekokko:20050425)のつづき。初回は2004/10/28。
精神衛生法改正の審議です。

社会労働委員会会議録第33号(48衆昭和40年5月17日)
【前回のつづき】
○河野(正)委員 私ども、いろいろ書物や発表された論文を承ってまいりますと、やはり黒い部分、いわゆる精神障害者、それから白い部分は一般の健康者、そういう白い部分と黒い部分との中間に存在するようないわゆる灰色の部分、これがいま秋元先生のおっしゃいます拡大の部分でもあろうかと思いますが、やはり今日の社会悪と申しますか、社会的に起こってまいりましたいろいろな事件というものを私どもが振り返って検討いたしてまいりますと、やはりその辺に非常に大きな問題があるというような印象も強く持ってまいるわけでございます。そういう意味で秋元先生の率直な御意見を承ったわけでございます。
 その点と多少関連をいたしますが、もう一つは、先ほど浅田参考人からも御指摘がございました医療法との関連の問題もございます。医療法の第七条では、医者でない者が病院をやる場合には許可制になっておりますけれども、それも医者の管理者を置けばそれぞれ病院の経営というものが可能である。そこでいろんな弊害等も出てまいっておるわけでございまして、われわれはやはりこの医療法についても、この際再検討を加える時期というものが招来されておるのではなかろうか、こういう印象も持ってまいっておるわけでございます。その点と、特に先ほどいろいろ委員会の中で御指摘のございました精神鑑定医、あるいはまた審議会の精神衛生法との関連も出てまいるわけでございますけれども、私どもはやはり将来この医療法のあり方についてもやはり再検討を加える時期がきておるのではなかろうか、こういう感じを持ってまいっておるわけでございますが、この点についてはいかがお考え願っておりますか、秋元先生と、現場でございます阿部参考人からひとつ率直な御意見をお聞かせいただきたい、かように考えます。

○秋元参考人 これまでの精神衛生審議会の審議の過程でも、常にこの精神衛生法を改正するためには、さまざまな障害のうちで医療法に抵触するというようなことがあることのために改正案に乗らなかった点が多々あります。私も医療法は時代の進展にかなりおくれていると思います。
 これはちょっと話が変わりますが、診療科名などについても、現在の医学の進歩に応じられないような点が多々ありますが、この応じられないというのは、やはりこの診療科名をきめる手続規定が現在の医療法では非常に不完全であるというふうなこともございます。そこで私は、この精神衛生法の改正を私どもが念願しておりますような、また皆さんもそういうことをお考えになっていらっしゃるということが本日わかりましたが、そのようなことをするためには、やはりそれを制約しているところの医療法を改正することが、どうしても必要な段階になってきたのではないかということを私自身も感じております。

○阿部参考人 ただいまの河野先生の御質問でございますが、医療法の改正、これはまことにごもっともでございまして、私も先生と同じように、医療法の改正はぜひやるべきであるというふうに考えておりますが、さらにこの医療法と関連いたしまして医師法、それから医療の裏づけとなります健康保険法、これはやはり三者関連のもとに抜本的に改正をすべき段階にきている、こういうふうに考えております。

○河野(正)委員 そこで、いま秋元先生ないし阿部先生からいろいろ医療法について再検討を加える段階がきているというようなお答えをいただきました。なお阿部先生からは、医師法、健康保険法等についても検討する時期がきておるのではなかろうかというような御意見の御披瀝もあったようでございます。そこで私どもも、いろいろな制度の改善をはかります場合にしばしば感ずる点でございますけれども、今度の精神衛生法の改正におきましても、審議会では十六項目の答申が出ておりますけれども、十分尊重されなかったという経緯がございます。なおまた、この精神衛生法の改正要綱について、社会保障制度審議会におきましても諮問が行なわれましたけれども、これまた諮問が終了いたします以前において、厚生省は精神衛生法の改正成る、こういう新聞発表をいたしたという経緯もございます。このように審議会の存在価値というものが非常に軽視されておる、これは全くそのとおりでございます。そこでそのようなことでは、審議会においてはそれぞれ各界の権威者にお集まり願って真摯な御検討を願っておるわけでございますけれども、その真摯な御検討を願ったにもかかわらず、その意見が十分尊重されないということになりますと、審議会の存在価値にも影響を与えますし、またし審議会に参加されております権威者の方々、そういう方々に対しましても意欲を喪失せしめるという結果になってまいろうかと考えております。特に私どもしみじみ感じますことは、一九六三年ケネディが実はケネディ教書を議会に提案をした。これらの点につきましては長年各界の権威者を集めてその意見を尊重して、ケネディが一九六三年に精神障害者及び精薄に関する教書という形で議会に提案をした。また先ほど秋元先生の御意見にもございましたように、欧米先進諸国では精神衛生というものが非常に進歩しておる。進歩しておりますけれども、欧米におきましても進歩した上に、いま申し上げますように、大統領が教書を議会に提案する、こういうように非常に熱意を示しておるという実例があるわけでございますけれども、日本の場合には、まことに残念でございますけれども、審議会の答申というものが非常に軽視される。したがって、私は今後の審議会のあり方、これはもう精神衛生審議会そのものでもけっこうでございますけれども、そういうあり方について再検討する時期がきておるのではなかろうか、そういう気持ちも持つわけでございますので、この際、この点については秋元先生さらには浅田参考人からひとつ率直な御意見をお聞かせいただきたい、かように考えます。

○秋元参考人 精神衛生審議会としては、この種の審議会としてはかつてないような熱心さでもって一年近く審議をしたわけでございます。その結果が、先ほどお話に出ましたようなことで、いろいろそこに理由はあるにいたしましても、この答申が、結果的にはそれに至る長い努力が報われなかったというようなことになっていることは非常に遺憾に思いまして、会長名で厚生大臣にこのことをすでに申し上げてございます。私どもとしましては、やはり審議会が飾りものであっては何にもなりませんので、この審議会の意見をぜひ政府のほうで具現化するように、これが一度でできません場合には、審議会をしてこれを続いて審議せしめ、その結果を逐次実現されるように努力願いたい、そういうふうにお願いしたいと思います。

○浅田参考人 私も全く同感でございまして、審議会は飾りものないし隠れみのであってはならないと思います。さっき河野議員がおっしゃったケネディ教書でございますが、その中でケネディは、たしか私の記憶に誤りがなかったら、こういうことを言っておったと思います。減税をあえて見送っても精神障害対策の充実に力を入れる、こういうふうに言っておった。私はそれが妙に記憶に残っておるのですが、専門委員会の答申を受けた大統領がこういった受け取り方をしてくれれば、ほんとうに審議、検討する側も意欲が高まってくるということにもなると思います。したがって今後審議会のあり方につきましては十分お考えくださるようにお願い申し上げたい、こういうふうに考えます。

○河野(正)委員 精神鑑定医で一つお尋ねをしておきたいと思いますが、精神障害者を収容いたしますと、行動の自由というものを制限するとか、人権を尊重するというたてまえが、やはりこの審議の中でもいろいろ論議をされておるわけですが、いずれにいたしましても人権を制限する、そういうふうな特殊事情があるわけですから、やはり精神病院の管理者というものは質的に高度のものが求められなければならぬというようなことは、私どもも十分理解する点でございます。ただその際に、資格制限であるとかあるいは専門医制度に通ずるというような議論等も日本医師会のほうにあって、なかなかその間の調整ができないというのが、今日の現況であるかのように承っております。しかしながら、阿部先先も先ほどお答えになっておりましたように、その気持ちはわかるというようなお答えもあったようでございます。私どももやはり、これは人権の問題が伴いますし、この問題をこのまま放置するわけにはまいらぬと思います。そこですみやかにこの問題の解決をはかるべく努力が行なわれることが至当だと考えます。鑑定医の問題――審議会では精神衛生医でございますけれども、この問題の解決がなかなかむずかしいということであるとするならば、しからば、その人権問題、行動の制限問題について、どういう形でこの問題を解決するという代案というか、対策があるのかというようなことを考えるわけでございますが、その点について阿部先生のほうから適切な御見解があればこの際承っておきたい、かように考えます。

○阿部参考人 ただいまの河野先生の御質問でございますが、鑑定医制度の問題につきましては、先ほど申し上げたのでございますが、審議の過程におきましては、鑑定医は前からございましたのでそのままでございました。ただ、精神衛生医につきましては五年以上ということがつきましたが、当時は優生保護審査会という形をとり、またその指定も、厚生大臣とかあるいは県知事とかじゃなしに、医師会が独自の立場で自主性を持って指定する、こういうことならばわれわれ賛成するということを申し上げておきました。そのとき、専門医制度のお話も出たのでございますが、これは引っ込めていただいたわけでございます。ただ、先ほど専門医との関連で出てまいりましたので、私もああいう発言をあえてしたわけでございます。ただいまの御質問のような形をもちましてどういうふうに解決していくか。解決の問題といたしましては、現行法を一応見送って、資格の問題というのじゃなしに、どこまでも鑑定医、こういうわけでございますので、資格としての行動の制限というものにつきましては、これは精神科の医師の独自性にまつ、これでいいわけでございますし、またいままでそういう形をもってやっていただいているのじゃないか、こう思っておりますので、いまのところは先に見送って現行法の解釈のままで進みたい、こういう気持ちでいるわけでございます。それでおわかりいただけましたかどうか……。

○河野(正)委員 約束の瞬間がぼちぼち近づいてまいりましたので、はしょってお尋ね申し上げようと思いますが、この精神衛生法は、先ほども私が御指摘を申し上げましたように、第一条に目的がしるされておるわけですけれども、この法の真の目的を達成するためには、いままでいろいろ御意見が出てまいりましたように、早期発見、予防からリハビリテーション、アフターケア、これまでの一貫性というものが貫かれなければならぬというふうにわれわれは考えるわけでございます。この点については先ほどから松沢病院長の江副先生からいろいろ御見解の御開陳がございました。私はいま日本に一番欠けております点は、もちろんいま医療の面におきましてもいろいろ参考人から意見が出てまいりますように欠けておる面がございますが、やはりアフターケア、リハビリテーションの問題であろうかと考えます。そこでわれわれは、この精神衛生法の使命を完全に達成するためには、早期発見からリハビリテーション、社会復帰までということが一貫した方策でなければならぬ、そういう意味で今後私どももやはりアフターケア、リハビリテーションという問題について、特に力点を置いて施策の立案というものをはかっていかなければならぬ、こういう考えでおるわけでございますので、もしいろいろと当面してすぐこういう点をやったらどうだろうかというような具体的な試案等がございますればひとつお聞かせをいただきたい。

○江副参考人 このリハビリテーション及びアフターケア、特にリハビリテーション施設については、正式なものができないから、何かそのかわりにといったようなことはできないのじゃないかと思います。やはり私どもが精神衛生審議会で、このリハビリテーション施設の重要性を特に強調したにもかかわらずこれが実現しなかったのは、何かこういうことは医療法に抵触するとか、そういうふうなことでございましたが、先ほどの医療法改正の必要性はそういうところにもあると思います。ですから、一つの政策をきめるときに、そう簡単な代案というものはないと思います。このアフターケアにつきましては保健所等の要員、精神医学的なソシアルワークをやる要員の制度、それから精神病院等においてもアフターケアをやるべきであるというふうな規定でもございましたら、当然その要員が確保されるようになりますから、これもやはり医療の問題であるということになってまいりまして、すべて医療がわれわれの前に立ちはだかった大きな壁になっておりまして、どうしてもわれわれの意思が貫けない、そういうふうに感じます。

○松澤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 委員長として一言ごあいさつ申し上げます。
 参考人各位にはまことに長時間にわたり有意義な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。(拍手)

社会労働委員会会議録第34号(48衆昭和40年5月18日)
○松澤委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の精神衛生法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。

○滝井委員 精神衛生法の一部を改正する法律案について、精神衛生審議会等の答申を見ましても、精神障害のある者について早期発見をして、早期治療をし、同時に、リハビリテーションを十分に、しかも体系的にやるという一貫した治療体系というものをつくらなければならぬということが、非常に強調をされておるわけです。
 そこで、早期発見、早期治療をやるために、精神衛生センターというものはどういう活動をすることになるのか、それから同時に、その場合、現在ある保健所の活動というのはどういうことになるのか、これをひとつ簡単に御説明願いたい。

○若松政府委員 従来、保健所に精神衛生相談所というものを置くことができるようになっておりまして、各県が一、二カ所程度設置しております。この精神衛生センターは、患者の訪問指導等を行ない、早期発見、早期治療に資するというたてまえでございますけれども、現に府県に一カ所程度、しかも専任の職員のいるところ、単に兼任職員だけのところがございまして、決して十分ではございません。そこで、今度の法律改正では、保健所の任務として精神衛生の仕事をはっきり打ち出しまして、保健所の固有の業務として精神障害に対する指導を行なう、そのために保健所に専任の職員を置いてやっていく、そういう構想で、保健所が本来の活動として早期発見、早期治療あるいは患者の家庭訪問指導等を行なうようにやるわけでございます。
 それに伴いまして、精神衛生対策は、保健所等に職員を配置いたしましても新しい仕事でございますので、なかなか技術的な指導、援助等ができない。そこで、一県に一カ所精神衛生センターというものを設けまして、これが技術の中心になる。したがって、センターにおきましては、その地方における精神衛生の実態の把握、調査、研究等を行ないますと同時に、保健所における職員の指導、援助等を行ない、保健所での職員をもってしてはできないようなむずかしいケースはセンターが引き受けてやるというような、二段がまえの構想になってまいったわけでございます。

○滝井委員 そうしますと、第一線の中心は依然として保健所にある、こういうわけですね。
 現在、御存じのとおり、保健所には精神衛生に関する専門の医者なんというものはいはしないわけです。それから、この法律をごらんになっても、訪問指導というものの中には、特別の専門家かあるいは医師以外は、保健婦もできる法律的な規定を与えられていないわけです。医者もいない、それから保健婦もこういう精神病患者について家庭訪問をやる法的な資格はないということになれば、末端は空白ですよ。いわば幽霊みたいな状態で精神衛生センターというものが県に一カ所できたって、これはナンセンスなんです。しかも精神衛生センターは必置のものでないわけです。義務制ではないわけです。置くことができるわけです。したがって、その予算の裏づけその他も非常に不完全で、ことしの予算をごらんになっても、精神衛生センター人件費及び事業費、四十六カ所、補助三分の一、千五百八十五万四千円しかないわけです。それで全国の百二十四万人の患者の相談に応ずることは、とても不可能に近い。だから、ナポレオン以上のことをやろうとしてもできることではないわけで、それこそ、これができるというなら精神病扱いにされることになる。
 だから、まずあなたのほうとしては、この精神衛生法の一部を改正する法律案に伴って保健所を第一線の機関とするということは、一体どういう具体的な予算の裏づけでそうしようとするのか。
 同時に、第二点は、第七条に書いてある精神衛生センターの機構、構成人員、予算というのを一体どういうようにやろうとするのか、その場合に、政令都市、六大都市、こういうようなものは、県知事というのが非常に前に出て、それらの政令都市との関係は一体どういうことになるのか、それをひとつ御説明願いたい。

○若松政府委員 訪問指導等を行ないますための保健所の整備につきましては、この資料に保健所運営費補助金というところがございますが、ここで原則として保健所に精神神経科の専門家の嘱託一名、それからケースワーカーを二名配置するということを目標にいたしまして、これはなかなか一挙に充実することは困難でございますので、さしあたって本年度の予算といたしましては、嘱託医を三百五十名、それから精神衛生のケースワーカーとして精神衛生相談員百二十二名、医療社会事業従事者九十六名、このほかに従来から医療社会事業に従事しておりますものが三百六十一名ございますので、これらの職員をもってさしあたりやっていく。これらの職員を置きますと、そこで都市型、あるいは都市型と農村型の中同型の大きな保健所にはすべて職員が配置されることになりまして、非常に小さな保健所、それから農村地域の小さな保健所にはまだ設置されないことになりますので、およそ三カ年計画くらいで全保健所にこの職員を配置いたしたいと存じます。
 なお、精神衛生センターにつきましては、ここに載っております予算はごくわずかでございますが、現在精神衛生センターとして、単独の施設として活躍しておりますのは数カ所ございまして、三十九年度に三カ所新設の建物をつくっております。四十年度には六カ所の設備費を計上しておりますので、これも四、五年の間には全県に設置するようにしたい。そういう意味で、さしあたり設置できないところがございますので、法律上義務設置としないで、さしあたり「できる。」という権限を与えただけでございます。

○滝井委員 精神衛生センターの機構、構成人員、予算等につきましては全く見通しがないわけですね。そういうお考えを持っておるならば、精神衛生対策五カ年計画というものをお立てになって、そうしてまず第一年度において何県と何県と何県をつくります、したがって君のところではその準備をしたまえ。第二年度は何県と何県と何県だ。精神病患者の分布の状態というものは、統計的に見れば一つの層をなしておるわけですから、これは大都市に多いにきまっている、精神病質、ノイローゼを入れれば。そうしますと、大都市から順次に、あなたの言うように、いま都市型の保健所から農村型の保健所に、順次年次計画でやっていけばできるわけです。こういう年次計画というものが、少しも社会保障にないところに問題があるわけですよ。だから、当然年次計画というものをつくるべきだと思うのです。それは中期経済計画に昭和三十八年から四十三年までの五カ年計画があるならば、それを受けてやはり精神衛生対策の五カ年計画をつくる、いまがチャンスじゃないですか。ライシャワーがやられるし、学校になたを持ってあばれ込むというような者があって、あるいはきのうもどこか東京付近の精神病院から、十二人とか十三人とか軽いのが逃げたというのがあるでしょう。まさに世論が成熟しておるのですよ。この成熟した世論のときにばっとそれにこたえる五ヵ年計画を発表して、そして各県にそのムードをつくっていくというのは、当然打たなければならぬ手だと私は思うのですよ。それを何もやらぬで――精神神経学会ですか、そういう学会なり専門家からしりをたたかれぬで済むのですよ。それはどうですか。政務次官、当然、私がいま言ったように、精神衛生センターも全然予算的に見通しがない、保健所もいま言ったように三百五十人の嘱託を集めます、ケースワーカーを相談所に百二十人置きます。医療社会事業の従事者を九十六人置きます。三カ年計画くらいでやりたいと思いますというくらいのことで、これは予算がなければ三カ年でできるかどうかわからない、だから、五カ年なら五カ年の計画をつくって、人的、物的体制を整えていくんだという形にならぬとうそだと思うのですが、どうですか、その意思があるのですか。

○徳永政府委員 もちろん年次計画を立てるべきだと思います。ただ、当面、中間の施設でございますとかリハビリテーションなんというものは立てにくい面がございまして、また詰めにくい面がございまして、さしあたりこういうような御審議をいただいておるわけでございます。当然年次計画というものは将来立ててまいらなければならぬ、かように考えております。

○滝井委員 当然将来立てるのでは間に合わないのであって、いま傷つけたりあばれたりするのがどんどん出てきているのですから、これは将来の見通しとしていまからやはりすぐ立てていく、こういうことでなければならぬと思うのですよ。今年はやむを得ないならば、来年度予算編成からは、もう七月、八月に始めるのですから、それからすぐ五カ年計画を立ててやります、このくらいの言明をしてもらわなければ話にならぬわけですよ。どうですか。

○徳永政府委員 さしあたりこの法案は、こういうような御審議をいただいておるわけでございます。年次計画を立てまして、推進いたしてまいりたいと思っております。

○滝井委員 ぜひひとついまの公約を実現していただきたいと思うのです。これは大蔵省をちょっと呼んでおかなければならぬのだが、主計官に来てもらいたい。意見を聞いておいてもらわぬと、から鉄砲では困るのです。
 それから政令市の問題です。これは一体どういうものになるのですか。県に精神衛生相談所のかわりに精神衛生センターができる、それから国立精神衛生研究所が中央の精神衛生センター的機能をやることになる。政令都市については、どういうことになるのです。

○若松政府委員 結核と精神がよく対比されますが、結核では、比較的人権というような問題が薄くて、結果的には福祉の面が強いために、これはすべての業務を保健所におろし、したがって政令市までおろしております。精神の問題は、人権問題が非常に厳重でございますので、そういう意味で従来から政令市におろすことをやめて、一切都道府県の段階にとどめております。したがって、六大都市にさえもおろしていない実情でございますので、そういう意味でこの問題、精神衛生センターであるとかその他すべて県の段階にとどめておるわけでございます。
 なお、六大都市あるいは政令市等に置くということになりますと、政令市は大体県庁所在地が多いものでございますから、県の福祉施設政令市の福祉施設が同じ市にダブって非常に偏在するというような結果にもなりますので、現段階では都道府県の設置するセンターをもって中心にして、技術指導をやっていく。保健所がこの末端の作業をいたしますので、政令市においては保健所をできるだけ充実してもらって、センターの指導のもとでやっていくという方針をとっていきたいと思っております。

○滝井委員 それならば、よほどしっかり末端の保健所の人的構成をやらないと、六大都市というのに精神病患者は相当多いわけです。それだけに手抜かりのないようにぜひやっていただきたいと思います。
 それから、四条の関係ですね。新旧対照表でずっとやっていきますから見てください。二一ページです。この四条で、いままでは「都道府県は、精神病院を設置しなければならない。但し、第五条の規定による指定病院がある場合においては、厚生大臣の承認を得て、その設置を延期することができる。」といって、厚生大臣というのが出てきておったのですが、これは厚生大臣の承認が要らなくなったわけですね。これはどういう理由ですか。

○若松政府委員 都道府県が病院を設置するのに一々厚生大臣の承認を得るということは、知事の自主性を阻害するのみか、いたずらに手続を煩瑣にするだけであるということで、行政管理庁の勧告も出ておりましたので、その趣旨に沿いまして手続を簡素化するという意味で知事にまかせたわけでございます。

○滝井委員 それは医療法の精神からいって、厚生省はいつも病院のことを知らないわけですよ。だから、日本の医療行政は混乱するわけです。やはり厚生大臣がきちっと握って、そうして児知事にやらせるという形のほうがいいのじゃないですか。各県でばらばらに精神病院をつくってやる、あるいは他の病院をつくるということでは困るのじゃないですか。やはり一元的にきちっと医務局長、厚生大臣が握っておる、これでなければならぬというので、医療法の改正をやったわけです。そうでないと、病院の運営の主体がばらばらで困るじゃないかということであったはずなんですがね。総務課長がいらっしゃっておるけれども、この関係はどうしてですか。厚生大臣がまた知事にかってにまかしてしまうということになれば、精神病の病院の配置その他というものは、各県によってばらばらで違ってくるのですよ。医療行政からいってもこれは問題です。医務局の見解を先に伺いたい。
  〔委員長退席、井村委員長代理着席〕

○渥美説明員 都道府県立の精神病院の義務設置の問題でございます。精神病院義務設置の規定につきましては、少なくとも一カ所を都道府県におきまして県立の精神病院として設置するという規定でございます。精神病院なりあるいは精神病床の全国的な配置、あるいはその病床の確保という問題につきましては、医療法の考え方に基づきまして、都道府県におきまして設置を奨励するとか、あるいはそれに対しまして国が援助をするということに相なっております。

○滝井委員 どうして厚生大臣の承認を排除したのかということなんです。やはり日本の医療行政全体を厚生大臣が達観的に握っておる、承認くらいもらいに来るぐらい何のことはないわけですから。この五条というのは、たぶん指定病院のことでしょう。だからこれは、その病院をそこにつくるかつくらぬかということを、都道府県の医療機関の整備審議会ですか、あれできちっときめてくるわけです。きめたら厚生大臣に、こうきめました、承認いただきたい、それだけのことなんです。そうすると、厚生省の医務局なり厚生大臣は、なるほど何県にはどういうふうに配置されておるということが一目りょう然にわかってくるわけです。一々資料をとらなくたって、わかってくるわけでしょう。だから、その関係は、これは削る必要はないじゃないか。そうして各県ばらばらでかってに知事にやらしておったら、ますますアンバランスになるのじゃないですか。何でこれをやるんです。いままでの医療行政のやり方を――われわれは、厚生大臣がやはり日本全体のものを握っておかなければいかぬということを言ってきておるわけですよ。

○若松政府委員 都道府県立精神病院といいますのは、この精神衛生法ができます前の精神病院法並びにその以前の精神病者監護法時代からの流れをくんできておる条文でありまして、私宅監置精神病患者を私宅監置をやめて精神病院に収容せよという思想がずっと昔から流れてきておりまして、その私宅監置をやめて精神病院に収容するというためには、どうしても都道府県の病院がなければならぬということで、この必置義務が出ておるわけでございます。しかし、現状におきましては、もう精神病院というものは単に私宅看護のかわりというよりは、精神病患者を治療する場所という性格が非常に強くなってきております。御承知のように、資料にもありますように、現在十六万床の中で都道府県立のベッドは一万三千床程度でございます。そういう意味で、この性格が昔の時代と多少違ってきているということは一つございますし、それに、現在におきましても、都道府県が病院を設置する場合には、通常私どもの持っております公立精神病院の補助金がございますので、補助金を受けて設置することになります。また、医療機関整備審議会の意見も聞かなければなりませんので、実態として、手続上どうしても医務局あるいは公衆衛生局の門をくぐらずには実際は実行できないわけでございます。したがって、私どもの厚生省でも十分その実態は把握できるわけでございます。したがって、形式的にあらためてまた承認をするということは、手続を重ねるだけでございまして、この点、臨時行政調査会におきまして手続の許可、認可の簡素化という問題にからみまして、この条文は、厚生大臣の承認を省略することが適当であるという意見も出ておりますので、それらの点もすべてかみ合わせまして、これらの措置をとったわけでございます。

○滝井委員 そうしますと、指定をするとぎの承認は、私は要らぬと思うのですよ。それは、五条の二項「都道府県知事は、前項の指定をしようとするときは、あらかじめ、省令の定めるところにより、厚生大臣の承認を受けなければならない。」、これは要らぬと思うのです。私は精神病院を建てますという設置の申請さえしておけば、もうそれから先は、前に精神病院ということで設置をしたのですから、指定は当然ですよ。ところが、設置についても、指定についても、両方とも厚生省ははずしてしまうということになれば、これは厚生省はわからぬわけです。わからぬでしょう。だから、設置だけはやらぬことには、これは医療行政は混乱してしまうですよ。そういう点で私は、やはり四条の「厚生大臣」は残すべきだ。五条はよろしい。これはいままでの医務行政と違うのですよ。そういうことになれば、保険医療機関だって何だって、全部知事にさしてしまって、厚生大臣は関係ないようにしなければいかぬですよ。全部県知事だけにしてしまって、もう厚生大臣は関知しない。この法律はそういう体系になっておるのですよ。厚生大臣というものはもうほとんどなくなって、全部知事が前面に出てしまっておるわけですね。今後医療行政をそういうことに改めるというなら、また別ですよ。いま厚生大臣は、医療のああいう小さいところまで干渉をしていっておるのですからね。だから、この点はいままでのあれとは違うのですよ。もう一ぺんよく相談してください。医療行政がいままでと違う方針で転換をするなら別です。これから政府として、医療行政は全部厚生大臣はタッチしない、知事の自由裁量に、結核も精神もまかしていくというならいい。こういう人権に関係するような施設、しかも鑑定医というものを非常に高くしてくださいというような段階になったとき、それを知事に全部まかせるというならそれでもいいです。それならそれで、全部他のものも知事にまかせるようにしてもらわぬといかぬです。この問題はひとつ留保しておきますから、意思統一をしてください。
 次は、精神衛生センターというものをどうして必置の義務にしないのですか。義務制にどうしてしないのですか。

○若松政府委員 精神衛生センターは、先ほど申しましたように五カ年計画くらいで設置をしたいということでございますので、いま必置の義務にいたしますと、最終の五カ年までの間に設置する県が、それぞれ法律違反の状態になるわけでございますので、そういう意味で任意設置にいたしまして、猶予を与えるという意味でやったのでございます。

○滝井委員 そうしますと、ある程度七割か八割方設置されれば、それからは義務制にしますね。

○若松政府委員 整備が終わりました段階で義務制にすることも考えられると思います。

○滝井委員 精神衛生対策がこれほど重要だと言い、しかも第一線の保健所を強化して、そうして各県のつかさの役割りを演ずる精神衛生センターがぜひ必要だと学者も言い、あなた方もそう思っておるのに、これが今度は義務制でないということになれば、財政の苦しい都道府県はつくらないですよ。それはやっぱり緊急のものから先にいって、いま言ったように、気が狂って生産にたいして貢献してない人のために金を出すということはやらぬです。それほど県は豊かでない。地方財政は豊かでない。ほとんどの県が、ここ一、二年赤字に転落しつつあるじゃないですか。やっぱりこういうものは義務設置にして、国がある程度裏打ちをするという体制にしないとできないですよ。こういう点をもう少しあなた方ががんばって、やっぱり竜をかいたら眼だけは入れることを忘れぬようにしておかぬと、眼を忘れておったら竜は天にのぼらぬですよ。これはあなた方義務制にする意思あるのでしょう。それなら政務次官、局長のほうは頭を振って義務制にする意思があると言っておるのですが、これは予算が認められないからいまはできないということですが、私はいまとは言いません。少なくとも六割か七割方前後の県ができたら、その残りのものについては、その段階になったら義務制に変えて、どうしてもつくれないところは、国が相当大幅な財政措置をしてやるということでなければいかぬと思うのですよ。それでいいでしょう。私はいまとは言っておらぬ。

○徳永政府委員 お説のとおりだと思います。また、局長の申し上げておるのも、いま義務制で全部網をかけてしまうと、いろいろ法律的なめんどうなことも起こるから、もう少したった時点でそういうことを考えたいという答弁でございまして、私どももそういう方向に持っていくつもりでございます。

○滝井委員 そうしますと、八条では、義務制にさえすれば、国は必然的に経費の二分の一、運営費の三分の一の金を出さなければならぬことになるわけですね。そうでしょう。これは当然、前を義務制にさえすれば、あとは必ず予算がつくことになるでしょう。この条文で三分の一を補助するということは、補助しなければならないということと同じでしょう。

○若松政府委員 おっしゃるとおり、補助の義務ができます。

○滝井委員 そうすれば、七条の条文をそういう形に書きかえさえすれば、国は必ず予算措置ができる、こういうことになりますね。
 次は、十一条の指定病院の取り消しです。この指定病院の運営方法がその目的遂行のために不適当であると認めるときは、指定を取り消しますね。これは一体具体的にはどういう場合ですか。

○若松政府委員 運営が不適当ということは、本来の目的である精神障害者の医療保護に欠けるような運営をしている場合には、その指定を取り消すという趣旨でございます。

○滝井委員 いや、具体的にどういう場合ですか。最近精神病院で、きのうの参考人の方も言われましたが、たとえば知事が解除したい病院の管理者の意見を求めたら、いや解除する必要はないのだということを言う場合があるわけですね。それから生活保護その他で、相当、最近福祉事務所の職員と結託をして、変なことがあったというようなことが精神病院に出てきているわけです。そういう場合は全部指定を取り消す、こういうことになるのですか。

○若松政府委員 一番具体的に考えております点は、やはり病院の運営がまずくて専門の医師が得られないとか、処遇が悪いとか、あるいはその能力がないとかいうようなことが一番具体的な問題だと思いますが、運営があまりに営利その他に走って、医療、看護が適切でないということも当然その中に入ってまいると思います。

○滝井委員 そうしますと、指定を取り消されたその病院というのは、普通の病院としては運営できるのですか。

○若松政府委員 指定病院を取り消された場合には、一般の精神病院として運営することになって、措置患者等を入れることがなくなります。

○滝井委員 一般の病院として運営をしてもいい、こういうことですね。そういうときは、おそらく保険のことも一緒に重なってくるでしょう。
 それから精神衛生診査協議会ですか、この精神衛生診査協議会というものが必要であるかどうかということです。私は、いまはもう結核の診査協議会なんというものは必要ではないのじゃないかと思う。パス、マイシスも安くなったし、レントゲンもそう高いものでもないし、健康保険でどんどんやってもいいと同じように、精神病についても精神衛生診査協議会をつくる金があったら、都道府県にすみやかに地方の精神衛生センターをつくらせてやったほうがいいのじゃないか。いままでこんなものがなくてもやってきておったのだから、どうしてこんなものをつくらなければならないか。われわれは、むしろ結核の診査協議会のようなものは要らないのじゃないかと思うのです。もうパス、マイシンも安くなったし、何なら結核予防法を全部健康保険でやらして、その分だけ国が健康保険の会計に入れてやって、事務の簡素化をはかるべき時期にきておる。それをいろいろなものでやるということはナンセンスだ。こんなものは支払い基金でやったらいい、こんなものは要らないのじゃないか。何か役所はたくさんの協議会とか審議会とかをつくるのが好きだけれども、必要なものはつくらずに、たいして要らないじゃまなものを喜んでつくるのですね。いままでの経験から言っても、こんな段階ではないでしょう。また、結核のあとを追ってつくらなくてもいいじゃないですか。あなたは結核の経験もあるのだから……。

○若松政府委員 結核の例が出てまいりましたが、結核では、結核予防法の改正のときに新しい化学療法を適正に普及するという趣旨で、その適正を維持するために診査協議会を設けたわけでありますが、現在においては、この結核の化学療法が非常に普遍化してまいりましたために、確かに診査を無条件でパスする例が多くなってまいりましたが、診査協議会が何年間か努力を続けてきたということが、一般の医師がそのように適正な医療を自動的に行ない得るようになった原因だと思っております。精神のほうも、向精神薬の開発が比較的新しい問題でありますので、やはり当初におきまして向精神薬の化学療法の普及を適正にやりますためには、診査協議会という機関を置いたほうがより適切にいくのではないかと考えております。

○滝井委員 結核で診査協議会が要らなくなった――御存じのように、結核ほど精神は多くないわけですし、医者も多くない。したがって、そこでやる精神科の医者というものは、相当専門医的な人が多いわけですね。だれでもというわけにはいかないでしょう。特殊のものを必要といたしますから、だから私はこういうものをつくる必要はない、屋上屋だ、審議会に診査の専門家を置いてやったらよい、こう思うのですが、専門家の松尾さんのほうはどうですか。あなたのほうでいままでやっておるのだから、精神病の診査は、わざわざその診査をやる前に、もう一回この精神病患者にこの薬をやることが適正であるかどうかをめんどうくさい書類で申請させて、許可をおろしてその抗生物質を使うなんというようなことをやらなくとも、あなたのほうできちんとできるわけですよ。それが適正でなかったら削除したらいいんです。そうでしょう。二段階に、こういうめんどうくさい制度を二つも三つもつくらなくともよい。そうでなくてさえ、医者は書類が多くてどうにもならないで困っておるわけです。その分だけ医者に勉強させて、治療を前進させたらいい。患者を親切に扱わせたらいい。いま医者をノイローゼにして精神病者を見させるよりも、もっと平静な気持ちで見させたらいい。そういう書類をつくっておったらノイローゼになってしまう。松尾さんのほうは、何か経験上いままで診査に支障がありましたか。

○松尾説明員 ただいま公衆衛生局長の言われましたような新しい分野の問題として十分に普及をさせていきたい、しかも事前にそういうふうな指導というものが実際的に行き渡る、こういう意味では、やはり存在価値はあり得ると考えております。保険の場合でありますとか、あとで査定をするという結果になる新しい分野でございますから、事前にそういう指導をいたすことは望ましいことではないか、かように考えております。

○滝井委員 これはしろうとならそれでいいけれども、しろうとではなくみんな専門家なんだから、診査員と同じレベルの人ですから、ほとんど必要ないのじゃないか。むしろ大蔵省はこういう予算は削らなければならない。船後さん、いま幸いにあなたが来てくれたから言うが、私はいまこの精神衛生法の一部を改正する法律案の精神衛生診査協議会のことを言っておるわけです。いままでも結核にもこういう協議会が各保健所ごとにあったわけですが、これはもうパス、マイシン等の薬も安くなったし必要でなくなったのに、またこの精神衛生診査協議会というものをつくって同じことをやろうとしておるわけです。歴史は繰り返すというが、いままではこういうよい薬を使っておっても、みんな審議会でちゃんと専門家がやっておるわけですよ。そうしてそれが間違っておったら削除しておるわけですよ。今度は、前もってまた精神病でいろいろ薬の新しいのができたからやろうというわけです。私はむしろこういう予算というものは認めるべきではないと思う。あなた方が認めなければならないのは、精神衛生診査協議会ではなくして、都道府県の精神衛生センター、地方精神衛生センターをむしろ必置義務として認めるべきであって、予算の削除のしかたが間違っているということを言っているわけです。あなたはいま来たからちょっとわからぬかもしれぬけれども、そんなものは松尾さんのほうで審査をやるのですから、精神の請求書が出たら、審査をやる、不適当なら切って落としたらいいのですよ。それからまた、こういう専門医は多くないでしょう。精神病をやっております医者は、全国で何人おります。少ないですよ。

○若松政府委員 精神科の専門を標榜しておる医者は約二千八百人でございます。

○滝井委員 御存じのとおり二千八百人ですよ。私たちの同級生で精神科になったのは一人もおらぬ。河野君が学校を卒業したときは河野君たった一人。このくらいしかいないのですから、しかもこれはみんな特別に勉強した人たちばかりですよ。そんな診査協会をつくって、専門的にやった人が出したものを目の色を変えて削らなければならぬほどのものではないですよ。いまの段階では、こういう非常に事務的に複雑なことをすべきではない。そんなものは二千八百人集めて講習をやったらいい、講習があるのですから。そして、それから先は請求書がきたら、あとは松尾さんのほうにまかして、松尾さんのほうにやってもらう、こういうことでいい。私はこれは削除すべきだと思う。こういうところで医師会のボスをつくる必要はないですよ。これは一人のボスになるのです、見てみて刷ったりする権限を持つのですから。こんなものをつくる必要はない。五人ずつですけれども、これは相当できることになるわけです。したがって、各県にこんなものをつくる必要はない。事務簡素化をして松尾さんのところでやるべきだ、こういう主張です。私の体験からいっても必要ないですよ、これは。医者の上にまた医者をつくる。人の上に人をつくらずと福沢諭吉さんが言った。あなたは、ちゃんと福沢さんの医学校を出ているからわかっているはずだ。人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず。同じ医学を受けた者が自分たちで出して、あとは経済的に見て正しかったかどうかということの審査を一回やればいい。二回も三回もやる必要はないということです。そうでしょう。そんな中間機関をつくる必要はない。これは私は削除すべきだと思う。だから、これは私のには掛け印がしてある。これは納得いくでしょう。

○若松政府委員 診査協議会の診査内容と保険の審査内容とは違っておりまして、私どもの診査協議会は、病状を見ながらその病状に適切妥当な医療内容を規定するのでございまして、保険の審査は、支払いの関係が適当に行なわれているかどうかということを、審査することでございますので、内容、目的が若干違っております。そういう意味で、この診査協議会の意味は十分あると存じております。結核についてはもう全く無用の長物ではないかとおっしゃいますが、結核でも、現在第二次向結核薬剤等の使用が非常にふえてまいりまして、パス、マイシンは安くなりましたけれども、第二次向結核薬剤は依然としてきわめて高価でありまして、そういう薬剤の適当な使用という意味でも、現在でも結核診査協議会は相当な意義を持っております。同じように、向精神薬におきましても、現在なお開発の段階でございまして、まだ次々に新しいものがどんどん出てまいりますし、現在出ておる薬にいたしましても、なお決定的な使用方法というものがない、実験的な段階にあるものもかなりございます。そういう意味で、専門家の中の専門家が適当な指導をしていくということは、現在の段階で十分意味のあることだと存じております。

○滝井委員 あなたは勘違いしているです。経済的な関係だけを松尾さんのところは見るのじゃない。その病状に適合した治療内容がやられておるかどうかということもし審査するのですよ。私も審査委員をやったことがある。そうでしょう、松尾さん。経済的な問題だけじゃない。

○松尾説明員 御指摘のように、保険の審査では、病名等を中心にしながら考えております。ただ、非常にこまかいところまで病状その他がわかるかということになりますと、それはおのずから制限がございます。

○滝井委員 それは、こまかいところは診査協議会だってわかりやしない。同じことなんです。むしろ、診査協議会は五人で見るけれども、こちらのほうは何十人で見るのですから、それだけ綿密ですよ、松尾さんのほうが。だから、松尾さん、あっさりこういうものは――屋上屋を架していたずらに医者をノイローゼになして、そして精神病者をノイローゼで見ると診断を間違うですよ。これはやらせないほうがいいのです。あなたはこだわっているけれども、役所は、こういうくだらぬものをつくるときは予算を一生懸命になってとるけれども、大事なものは落ちているわけだ。だから、まず先に船後さんと相談して、地方のほうが必置になったら、こんなものをつくりなさい。金があり余ったらこんなものをつくりなさい。足らぬときにこんなものをつくる必要はない、松尾さんのところに機関があるのだから。私はこれは絶対反対です。
 それから、医療の面ですが、措置入院をする場合に、他の保険と競合した場合には、これは八割を国が見てくれますね。そうすると、その残りの二割は、その老が被保険者である場合は全部保険で見ることになりますか。二割のうち、精神と結核は七割給付ですから、二割の七割を見ることになるのですか。どうなんです、その場合は。

○若松政府委員 措置入院の場合は、全額公費で負担いたします。したがって、保険の適用は全くございません。公費で負担いたしますが、相当の資産がある者につきましては、一部負担をさせることができます。その負担は現実には二%程度で、それが自己負担に回る。自己負担があった場合には、その負担に関する限りにおいて、保険の適用が始まる。したがって、保険の適用は、現実には措置入院患者の医療費の二%にしか適用しない。その公費で負担する分の八割を国が負担し、二割を都道府県が負担するという組織でございます。

○滝井委員 そうしますと、その二%の場合に、たとえば百円かかった。そうすると、三十円だけは負担能力があるから持ちなさいという、その残りの三十円について、その者が健康保険の被保険者である場合は、これは全部保険で見ますから無料ですね。ところが、これが家族あるいは国民健康保険の場合は、その三十円については、負担の割合というものはどうなるのですかというのです。

○若松政府委員 一般の公費負担医療の場合と同じでございますので、残りの自己負担分について、国民健康保険であれば国民健康保険の給付率をかけたもの、それから健康保険の家族でありますと、五割までの限度見れますから、事案上全額保険給付ということになります。

○滝井委員 精神は、国民健康保険においては七割をみますね。そうすると、いま国と県とでほんとうは全額見るのだけれども、負担能力があるというので三十円なら三十円を負担しなさい、こういうことになった場合に、その者が健康保険の被保険者であれば、何もやらなくてもいい。保険が全部見てくれる。それから家族であれば十五円を負担をして、十五円を保険が見ることになるのですか、どうですか。それはどういうことになりますか。

○若松政府委員 健康保険の本人は全額見ます。それから家族は、医療費の五割の限度内であれば全部見れるわけであります。したがって、中央上家族の場合も全額保険給付が行なわれる。国民健康保険の場合は、給付を受けるべき者について七割なら七割ですから、三千円の自己負担があればその七割ということになります。

○滝井委員 そうしますと、健康保険は家族であろうと本人であろうと全部無料だ、こうなるんですね。いまのあなたの御説明では、健康保険なら家族、本人無料、それから国民健康保険については、三十円負担ならば二十一円は見てくれるが、九円は自分が出さなければならぬ、こういう解釈でいいですね。

○若松政府委員 実態的にはそうなると思います。

○滝井委員 それから一般患者の場合は二分の一を負担しますね、そうしますと、残りの二分の一の負担のしかたです。一般患者に対する医療では、精神病で医療に必要な経費の二分の一を都道府県が負担をしてくれますね。そうして都道府県の負担をした二分の一のまた半分、四分の一は国が見てくれる、そういう形になっておるわけです。そうしますと、百円は国と県が見た。そうするとあと二百円だったら、あとの百円は一体どういう形になるかというと、いまと同じになりますね。そうすると、その百円は半分になるのだから、健康保険においては本人も家族も全部無料だ。そうすると、国民健康保険については三十円だけ自分が出せば七十円は保険が見る、こういう形でいいですか。

○若松政府委員 そのとおりでございます。

○滝井委員 次は、二十七条の2を見てください。「都道府県知事は、入院させなければ精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあることが明らかである者については、前六条の規定による申請、通報又は届出がない場合においても、精神衛生鑑定医をして診察をさせることができる。」こうなっておりますね。それでこの場合には「明らか」というのがついておるわけです。この改正案の条文を見てみると、「明らか」とついているのはこの場所が一カ所だけです。それでどうしてここだけ「明らか」というのをつけなければならなかったのかということが一つ。いま一つは、改正前において精神衛生鑑定医の診断は必ずさせなければならぬことになっておったわけです。ところが、今度は「診察をさせることができる。」ですから、させてもさせなくてもどちらでもいいのです。どうしてこういう変化をすることになったのか。この二点。

○若松政府委員 後段のほうから御説明申し上げるほうが順当でございます。
 現在の第二十七条第一項は、従来のとおりの「診察をさせなければならない。」という規定でございまして、これは措置入院の常道をいく場合の規定でございます。これに対して第二項が加わりましたのは、これは申請、通報に基づいて精神衛生鑑定医の鑑定を経て措置をするという常道が間に合わない場合の緊急の措置でございまして、たとえば現在も、あばれている者をどうにもならなくなって連れてきた、かつぎ込まれてきた、これはもうだれが見てもあばれているというようなことで明らかな状態でございます。そういう場合に申請、通報等がない、そういう場合に都道府県知事が鑑定をさせることができるという特例を、特殊な場合、緊急の場合を想定した条文でございます。

○滝井委員 なるほど、そういうように明白に言われるとよくわかりました。
 そうすると、それと関連をして二十九条の二ですね。いまの二十七条の二項は、「明らか」というのは、ばたばたあばれておるのだということの表現だった。そうすると、今度は二十九条の二で、「都道府県知事は、前条第一項の要件に該当すると認められる精神障害者又はその疑いのある者について、急速を要し、前三条の規定による手続をとることができない場合において、精神衛生鑑定医をして診察をさせた結果、その者が精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人を害するおそれが著しいと認めたときは、その者を前条第一項に規定する精神病院又は指定病院に入院させることができる。」今度は、「明らか」が「著しい」となったわけです。「明らかである者」、「著しいと認めたとき」、このニュアンスの違いというのはどうしてですか。「明らか」と「著しい」というのがついておるのはこの二カ所しかないのです。このところはどういう状態ですか。前はばたばたあばれておる、だから急速に入院させなければならぬ。この「害するおそれが著しいと認めたときは、」という、「著しい」というニュアンスはどういうことですか。

○若松政府委員 先ほどの鑑定の場合は、現実にあばれているというようなことが一見明らかな者を鑑定するという手続でございます。この二十九条の二は、緊急措置をするという段階でございますので、すでに診断もついた、ある程度の診察も終了してその状況が判断できたという、その判断に基づいて緊急措置をする場合でございます。したがって、その判断が明らかになっておりますので、ここでは医師が障害の程度を、軽度であるか疑わしいか著しいかという決定ができている段階でございますので、医師の診断をもとにした著しいという判断に限ったわけでございます。

○滝井委員 それならば当然、そういう者は入院させなければならない、こうしなければならぬが、それをさしていないわけですね。精神鑑定医が診断をして、明らかにこれはあばれておったし、そしてもう精神病者であることははっきりしている、自傷他害の顕著な症状があらわれている、顕著であるというならばこれを入院させなければならないとしなければならぬが、していないですね。それから同時に、その次の、二十九条の二の二項をごらんになると、「前項の措置をとったときは、すみやかに、その者につき、前条第一項の規定による入院措置をとるかどうかを決定しなければならない。」こういう形になっておるわけです。そうすると、知事よりか精神鑑定医のほうがむしろ重点が置かれなければならないのに、医者でない知事のほうに重点が置かれるのはおかしいわけですよ。ここにこの法律が医療立法であるよりか治安立法的な、公安立法的な陰影があらわれているわけです。むしろこれは逆じゃないかという感じがするのです。鑑定医が見た結果、明らかにこれは精神障害者である、この者は相当重いんだから自傷他害の顕著な様相があらわれておる、だからこれは入院させなければならぬ、こうしなければならぬのだが、「入院させることができる。」として、一にかかってその判断を知事にゆだねておるというのは、結局これは精神病といえども県の財政状態を考えずしてはだめだ、こういうことでしょう。そういうことに重点が貫かれておるのではないですか。医者の診断よりか知事の財政的な判断というものがここでは優先をしておるでしょう。そうしか読みとれぬでしょう。これは、あなた方はどう一体解釈しているのですか。

○若松政府委員 この第一項の「できる。」ということは、これは現実の具体的な行動として入院させることができるということでございまして、すぐにそういう身柄を病院に入れろ、入れることができるんだという意味でございまして、第二項の規定は行政処分の決定でございますので、そういう意味で知事にはっきりまかして、その決定をゆだねておるわけでございます。

○滝井委員 二十九条の二も主語は知事です。そうでしょう。二十九条の二の一項の主体も知事、二項の主体も知事なんです。知事は「その者を前条第一項に規定する精神病院又は指定病院に入院させることができる。」こういうことなんです。そうでしょう。その次に、入院指定を決定しなければならぬ、こういうことになっているのですから、ほんとうはこれは、鑑定医がもう診察の結果明らかに精神病者でございます。自傷他害の顕著な様相がある、入院させなきゃならぬ、こう言ったら、入院させなきゃならぬとどうして書けないのか、権威ある鑑定医が見たものを、今度はまた知事が入院させるかどうかを決定するんだということで、知事に決定権を与えるのはちょっとおかしくないかということなんです。

○若松政府委員 この法律の全体を流れております趣旨は、いわゆる通報、申請前置主義でございまして、措置を行なうためには必ず前提として申請あるいは通報がなければならぬという趣旨が貫かれておったのでございまして、必ず二十三条以降の申請、通報に基づいて二十七条の鑑定を行ない、その結果初めて措置ができるというたてまえをとっておりました。しかし、それでは緊急の場合にどうしても間に合わない点ができてまいりますので、新たに緊急の措置を加えたわけでございまして、この緊急措置はそういう申請、通報の前置を排除して、ほんとうの意味の緊急の場合に限ったわけでございますので、そういう場合はそういうこともできるんだということを知事に権限を付与したのでございまして、申請、通報に基づく通常の措置におきましては、必ず知事は措置しなければならないのでございますが、この緊急の場合は、人身拘束をする権限を緊急やむを得ない場合に限って知事に与えたということで、これが権能規定になっておるわけです。そういうふうにして人身拘束を緊急の場合した以上は、これを成規の手続にするかしれないかという問題を至急に決定しろというのが、第二項の、ねばならないという規定に返ってくるわけでございます。

○滝井委員 その次の二十九条の三をごらんになると、「入院措置をとる旨の通知がないときは、直ちに、その者を退院させなければならない。」わけですね。自傷他害のおそれがあると思っておったって、知事の判断でだめになるわけです。このときは、その費用は、全部やっぱり措置入院と同じ形で全額公費負担になるわけですか。

○若松政府委員 緊急の措置といえども措置に変わりはございませんので、公費負担の対象にするつもりでございます。

○滝井委員 この入院措置をとらないときには、当然これは精神鑑定医の意見は聞かないですね。ただ、病院の管理者の意見、指定病院あるいは都道府県の精神病院の管理者の意見を聞けばいいのであって、鑑定医の意見は聞かないですね。

○若松政府委員 緊急入院させた者は、成規の措置をとるかとらないかという場合には、当然鑑定医の意見を聞かなければならないことになります。

○滝井委員 その入院措置をとる旨の通知をしないときの鑑定医の意見を聞くという条項は、どこにありますか。

○若松政府委員 二十九条第一項の成規の措置に振りかわるわけでございますから、当然鑑定医の診察が一致しなければならないわけでございます。

○滝井委員 通知がないから退院させるわけでしょう。そのときに、一体鑑定医の診断はないじゃないか。それはあると言うから、あるならどの条文でやりますかと言っておるのです。

○若松政府委員 失礼いたしました。成規の措置に切りかえる場合のことを申し上げたわけでございまして、成規の措置がとられないとすれば、それは当然退院させなければならないわけでございまして、その場合には、鑑定医の結果がどうあろうと、措置をとらない以上は病院は退院させなければならないわけでございます。

○滝井委員 だからそういう場合は、退院させるのですから、鑑定医は見ないわけでしょう。ここは鑑定医が見る必要があるじゃないかということです。一ぺん鑑定医が見て、そして緊急に入れたところが、知事が措置をとらないためにこの者を出すと言えば、明らかにとか、著しく自傷他害の疑いがあるということで入れておったくせに、今度は措置をとらなかったからといってほっぽり出すのでは、底抜けになるじゃないかということです。だから、その場合には、もう一ぺん知事は鑑定医の意見を聞いて、とらない旨のむしろ通知をしてやらなければいかぬわけです。「通知がないときは、」という、知事は幽霊のように消えてしまうのはおかしい、こういうことなんです。それはそうでしょう。どうして退院させるときには何もしないのですか。

○若松政府委員 この「退院させなければならない。」という規定は、人権保護の規定でございまして、知事がぼやぼやしていて四十八時間も、あるいはもっと長い間、何も処置をしなかったというような行政当局の怠慢によって不当に拘束を続けるというようなことは適当でないので、もし行政当局が適正な判断をしない場合でも、四十八時間なり適当な法定の期間が過ぎました場合には、退院をさせなければならないというのは、もっぱら人権保護の規定でございます。

○滝井委員 自傷他害の疑いが非常に濃厚だということで、むしろ本人の人権より、今度は本人以外の第三者の人権というものが大事になってきておるわけでしょう。だから入院させたわけです。ところが、それを確認することもなくて、本人の人権と言って出すことはおかしいじゃないか。何かそこにもう一ぺん――本人の人権を守ってやると言っても、自害するかもしれないのだから。そうでしょう、自害するかもしれないのだから、もう一ぺん鑑定医が見てやる必要があるのじゃないかと言うのです。見て、これならだいじょうぶだというときには、それから知事はやはり通知しなければいかぬですよ。「通知がないときは、直ちに、その者を退院させなければならない。」という、こういうばかな条文はないと思うのです。知事から通知があったときに退院させる。人を入院させておいたけれども、わしは忘れておったというのじゃ、おかしいことだと思うんですよ。

○若松政府委員 そういう意味で、人権保護をするために二項の、前条の成規の手続をとるかどうかを早急に決定しなければならないということを知事に義務づけておるわけでございまして、知事がそういうような怠慢をすることはないというたてまえでそうなっておりまして、もし万一そんなようなことがあったとしたら、そういう場合には患者の人権を保護してやらなければならないという、念を入れた規定でございます。

○滝井委員 知事が忘れる場合もあるし、病院が今度忘れる場合もある。入院さしておる患者が多いのですから、待て待て、あの人の退院はきのうだった、しまったというので、三日たって退院さした場合もあるんですよ。知事よりもむしろ病院のほうが案外忘れるかもしれないんですよ。
 時間がきたそうですから、まだ半分ぐらいしかいかないけれどもやめますが、この法律は、実はやればやるほど非常に疑問が多いんですよ。いまちょうど二十何条しかいかぬのですが、これでやめますけれども、あとはあとの人にやってもらいますが、この精神衛生法は、今度はやむを得ませんけれども、きちっとした五カ年ぐらいの計画をして、そしてあまり治安立法でないようにして、おまわりさんやら何かをあまり入れずに、ひとつすっきりしたところで人権を守ろうとすれば、ほんとうの医療体制の確立の中で精神衛生法を確立してください。これは予防、治療、あと保護、リハビリテーション体系、きちっとしてもらわぬと、予防体系なんか全然ないのです。そういうことを要望して、私の質問を終わります。
  〔井村委員長代理退席、委員長着席〕

○松澤委員長 竹内黎一君。

○竹内委員 ごく簡単に二、三点お尋ねいたしますが、まず、議論の出発点として数字を確かめておきたいと思います。いわゆる三十八年の実態調査によれば、精神病院やあるいは精神薄弱児の施設、こういったものに収容を要する者は三十五万人というぐあいに伺っていますが、この三十五万人という数字でよろしいのでしょうか。

○若松政府委員 精神病患者で精神病院に入院させなければならないという者は二十八万、重度精薄その他でそういう施設に入れなければならない者は七万、合計三十五万という計算でございます。

○竹内委員 いわゆる、三十五万人の人たちが現在野放しにされているといって、いろいろジャーナリズムでも論議を呼んでいるわけです。そこで、厚生省当局としては、こういう野放し解消のためにどういうプランを用意しているのか、お聞かせ願いたいと思います。

○若松政府委員 精神病患者が二十八万入院しなければならないという数が出ておりますが、これが現実に世の中に適用される場合には、二十八万人が全部精神病院に入るということは予想できないわけでございます。たとえば結核患者で、結核実態調査で結核の要入院という者が四十八万ございますが、そのうち、結核のベッドは二十三万で、現在空床を続けておる状態でございます。病状だけでなしに、社会生活の都合がございまして、医学的な判断だけではとうてい規制できません。したがって、私どもといたしましては、現在の段階では、大体人口万単位二十床程度までいけば、およその需要を満足させるのではないかという想定をいたしまして、そのつもりで年次計画を立てて、病床の整備をはかっております。
 なお、精神病の治療につきましては、単に精神病院だけで行ない得るものではございませんで、向精神薬の発達等によりまして、外来治療で治療を行ない得る者が年々比率が増大いたしておりますし、また精神病院でなしに、むしろそれ以外の中間施設的な、社会復帰関係の施設をつくって、そこを利用することによって、従来の精神病床をそれほど大きく利用しなくてもいいという状態もございますので、それらのものを勘案いたしまして、将来計画を立てて推進してまいるつもりでございます。

○竹内委員 何か年次計画でもってベットの問題を考えているというお話でございますが、その年次計画の中には、いわゆる国立なり公立の精神病院の持つ比重をもっと高めるべきだ、こういう議論があるわけでございます。現在わが国の場合は、八〇%は個人の精神病院である。そういう意味で、たとえば諸外国、カナダを見ますと、全体の四分の三が国立、公立である。スウェーデンデンマークでも大体四分の三程度、こういうぐあいのところから、もっともっと国立なり公立の病院をふやせという議論がありますが、それに対してはどういうような用意をされておりますか。

○若松政府委員 精神病の治療というものも非常に進展が激しゅうございますし、いわゆるリハビリテーション作業療法というようないろいろなものをやる関係上、治療の内容が年々変化いたしております。そういうような変化を、学問の進歩についていきますためには、営利的な観点からあるいは一般の収支を度外視しない医療機関ではなかなか困難が伴いますので、ある程度収支にこだわらないでいけるような公立病院が、そういう先駆的な役割りをしてもらわなければ困る。そういう意味から、公的な医療機関をできるだけ推進したい。そういう意味で補助金あるいは融資等をやっておるわけでございますが、それ以上に現在民間の医療機関の伸びが早いということは事実でございまして、私ども、民間医療の機関の御援助も得たいのでございますが、公的医療機関の整備については、一そう公共機関の御努力をお願いしてまいりたいと思います。
【この日つづく】