精神医療に関する条文・審議(その31)

前回(id:kokekokko:20050516)のつづき。初回は2004/10/28。
法改正議論のほかにも、精神衛生法に関して国会で議論がされていますので、それについてアップしてみます。

決算委員会会議録第7号(51参昭和41年2月16日)
○石本茂君 
 続きまして質問でございますが、これは本月の十三日の夕方でございましたか、たまたま京都で精神病者でありますところの少年が、警 官から短銃を奪いまして、そうして人を殺し、傷害を起こしたという事件でございます。このようなことは、かってライシャワー米大使が やはりこのようなケースで刺傷されまして、そのときに厚生当局におかれましては特段の配慮をされたと思うのです。というのは、当時こ の精神衛生法等につきましても非常な騒ぎがありまして、一部改正があったのでございますが、この改正後二年を経過しておりますが、具 体的の行政の面でどのようなことが実現されて、どのように効果をあげておりますのか、まずそのことをひとつお伺いしたいと思うのです が、お願いいたします。

○政府委員(中原龍之助君) 精神衛生対策につきましては、従来とも精神障害者の発生の予防等につきまして、その医療保護というもの を通じ、特に社会復帰に至るまで、という一貫した方針をとるということを目的にいたしまして、いろいろやっておるわけでございまして 、ライシャワー事件後いろいろ問題が起こりまして、精神衛生の問題対策をどうするかということが論議が行なわれたのでありますけれど も、各界の意見を徴しまして、昨年の六月には精神衛生法の一部改正を行なう段取りになったのでございまして、その一部改正によりまし て、特に精神障害者の早期発見を行なうということを目的といたしまして、申請、通報制度というものを整備をするということが行なわれ てきたわけでございます。それから精神障害者の適正医療の普及というばかりでなく、早期の治療及びアフターケアというものを目的とい たしまして、通院医療費の公費負担制度というものが新たに設けられたわけでございます。そのほかに保健所に精神障害者に対する相談及 び訪問指導体制の整備ということを目的といたしまして、相談員の配置並びにそのほかに保健所には専門の医者はおりませんので、嘱託医 をひとつ設けるというような制度をとりまして、精神衛生対策の実は総合的推進をはかるというふうにつとめてきたのであります。ことに アフターケアにつきましては、きわめて重要であるということでありますので、さしあたりリハビリテーションというような施設につきま しては、公立の病院の中に作業療法設備の新設のため病床整備費の補助金のワク内で補助を行ないまして、治療訓練の充実をはかるという ようなことを行なっております。それから訪問指導の一そうの強化、それから通院医療費公費負担制度の拡充、精神衛生センターの整備、 この整備につきましても、予算的にはすでに四十年度に六カ所、現在動いておりますのは四カ所動いております。この中には従来からあり ましたものが二カ所、それから四十年度の予算によってつくりましたのが二カ所、あと四カ所ばかりは現在建設中である。来年度におきま してもやはり六カ所予算を計上しておりまして、そしてこの精神衛生センターを整備しまして、保健所の相談と相まちまして、このアフタ ーケア並びに早期発見等につきまして指導を行なっていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。

○石本茂君 いま局長さんのお話を聞いておりますと、まあなるほどごもっともと思うことばかり並べていらっしゃるのですが、私のお尋 ねしましたのは、そういうような措置をなさった結果、どのような具体面において効果があがりましたかということを聞いてみたわけです が、私がむしろ、もう一つ重ねてお伺いすることになりますが、もういまさら私が言いませんでも、厚生省当局が昭和三十八年に調査の結 果お示しになっております数字を追ってみますと、施設に入りまして治療を要しますところの精神病者等がもう五十七万人おると、それか ら要入院患者は二十八万人おると、しかるに入院可能のベッドが十六万であるということになりますと、単にこれはもう精神障害という段 階じゃなくて病人でございます。いわゆる精神病者でありますから、そのほかにさらに精神病質者でございますとか、あるいは精神薄弱者 でございますとかいうものが、数学を追ってみますと百二十五万、これはもうたいへんな数字だと思うのですが、そういうものが十六万、 あるいはアフターケアの中にどれだけ現在入っているか知りませんが、そうしたものを除いたのが全部野放しである。いろいろ保護措置も している、保健所でも指導に十分力を入れているとおっしゃるのですが、そういうことを完全に行なうことは困難だと思いますけれども、 ある程度効果をあげておりますものならば、なぜ今回のように、昨年の十二月に病院を出てきて再び入院させなければならないような状態 にあった子供がそういうことを起こしたわけですが、この間にその子供に対してどのような具体的な措置がとられていたであろうか、保健 所の実態一つを見たり聞いたりいたしましても、精神病医が少のうございますために、嘱託医がなるほどおられます。おられますけれども 、実際に真にどのような効果をあげていらっしゃるのか、それから保健婦等がやはり出先の中におりまして、指導に当たっている向きもご ざいますが、はたしてどのように活動できる状態がつくられているでございましょうか。法律規則がどのようにすばらしくできましても、 それが実際現場の活動の中で役立つような、効果的に活動できるような仕組みがない限りは、幾ら美辞麗句を並べられましても、実際そう いう人たちは守られませんし、また医療の段階に持っていくことも困難であろう。早期発見けっこうでございますが、もっとおそろしいの は、入院を要する、治療を要する人がそれだけ野放しになっている。しかも今回のごときは先ほど申しましたように、最も危険な状態にあ った者がそのような犯罪を犯しているわけでございますが、そのような場合にどのような具体的な措置が保健所との間、あるいは警察当局 との間、あるいはかつて収容しておりました精神病院との間にあったものかどうか。また、現在とりつつありますものかどうか。それを具 体的にひとつ時間もありませんので簡単に、――具体的に簡単にということは矛盾いたしますけれども、お聞かせいただきたいと思います 。

○政府委員(渥美節夫君) 実は施設につきましてただいま申し上げましたけれども、数字的に申し上げますと、先ほどのセンターとか、 あるいは精神衛生相談員の設置、精神衛生相談員の設置につきましては、現在本年度予算におきましては二百十八名の定員をもらいまして その充足に努力しております。なお、来年度におきましては六十一名ばかり増員計上されております。そのほかに精神病のベッドにつきま しては、現在大体昨年の十一月末ごろで約十七万ベッドに大体なってきております。そうしますと、ベッドの最近の増加の傾向は、ここ数 年一万五千ベッドから二万ベッド近くの年々の増加ということに大体なってきております。もちろん現在の要入院、実態調査によるところ の入院を要する患者、入院を要する患者の中には措置入院の対象もありますし、そうじゃない対象ももちろん含まれております。そういう ものに対して現在は十七万幾らのベッドしかないということになりますと、まことに足りないのはごもっともでございます。大体いまのと ころまだ病院は若干超過収容でございまして、実際上は十八万近くが入院をして治療を受けているわけでございます。そうしますと、二十 八万に対しまして大体六〇%の割合で現在は入院、治療ができている。あとのものが結局いわゆる治療を受けてないということになってお りますが、二十八万人はこれは実態調査の結果、一つのサンプル調査をもとにいたしまして、それから算出した推定計数でございまして、 実際は二十八万人を全部つかんでいるわけではございません。したがいまして、それをつかむための一つのやり方としまして、申請、通報 制度がいろいろありまして、それから具体的な数字がつかまれてくるわけでございます。その数字にいたしますと、三万数千件の報告から 大体二万人近くの入院患者が見つかりまして、もちろんその報告の中には精神障害者でない人もおります。そういうものをいわゆる入院を さしているという形になっております。
 今回の問題につきましては、これはまあ京都府の衛生部を通しまして聞いた範囲内におきまして、その患者の状態につきましては大体に おいて新聞に出ているのとほぼ違いがございませんけれども、十七歳の少年でございまして、この者は入院いたしましたのが四十年の三月 二十日で、そうして退院をいたしましたのが十一月三十日でございます。したがいまして半年ばかり入っていたわけでございますけれども 、入院前におきましての所見といたしましては、本人はどちらかというとやはり抑うつ性の傾向がありまして、ときどき爆発的な傾向があ るというようなことを家人が言っておったわけでございます。そうして入院の前には睡眠薬の服用をしたり、自殺をはかったというような ことがあるものですから、これは病院に入れましたところが、病院で診断をしてみますと、病院内に入りましてからは非常におとなしく、 むしろ抑うつ的なような傾向がありまして、不眠を訴えておる。不眠症の点がありまして、その面を治療してまいりまして、非常によくな りまして、そして社会的な緩解ということで十一月の三十日に心配がないということで退院をいたしたのであります。病名は、カルテの名 前は精神病質でございます。そうしてこの者は、引き続きお医者さんのところへ通いまして、医者から薬をもらったり診察を受けたりする ことになっておりましたけれども、最初二週間分の投薬を受け、それから院長から病院へ通院するようにと言われておりましたけれども、 通院しないうちに現在に至ったという形でございます。二月の五日ごろから少し様子がおかしくなったというので、これを家人が十日に入 院させようというふうにいろいろしておった。どうもそれが本人にわかったのかどうか、二月十三日の午後五時二十分ごろ夕食後外出して 事件を起こしたというかっこうになっているのでありまして、入院時の所見、入院しておる間の所見、退院するときの所見そのものからい いますと、これほどまでのことをするということまではちょっと想像ができなかったような状態であったように思っております。しかし、 このような事態が起こったということは、はなはだ遺憾なことでございまして、こういうためにやはりこの者は一応通院医療を受けながら やっていくたてまえでございまして、家人も一応承知はしておったのでありますけれども、それが少し厳格を欠いたといううらみがあるん じゃないかと思っております。通院医療の制度はアフターケアとしては非常に重要で、また効果のある制度でございます。これがうまくい かなかったということで、これを否定するわけにもいきませんし、依然としてこの制度は伸ばしていきたい。大体以上のような状態でござ います。

○委員長(藤原道子君) 答弁はもう少し要領よくやってください。

○石本茂君 ありがとうございました。大方の承知しておりますことばかりをお知らせいただいたのでございますが、私が聞きたいと思っ たことは、要領よく言っていただけませんでしたので、いずれまた次の機会にお聞きしたいと思いますが、せっかくよい法律ができまして 、保護ないしは取り扱い方が明記されておりますにもかかわらず、通院を認められて行くべく手当てされていたものが行かなかった、その 間に偶発的にああいうことが起きたという経過はわかりますが、ひとりこの少年にとどまりませず、そういう精神病者に対しまして、ある いはその法律の定めるところの範疇にあります者に対して、もう少し行政当局におかれまして、二年前にあのような大騒ぎをし、その後に おきましても再々新聞紙上をにぎわしておりますのが、少年にとどまらず、おとなでありますところの精神病者が非常に多く事例としてあ がっているのですから、単に法律がそうなっております、予算はそう取ってあります、ああでございます、こうでございますではございま せんで、もう少し国民の不安をなくするという意味におきましても、実際行政面の中で当局が監督あるいは督励、あるいはまた実際にその ことについて国家の運営する、あるいは国家の設立するそういう施設もあるのでございますから、このような者についてもう少し力を入れ ていただけたらどんなによかったかしら。将来ともそういうことも含めてお尋ねしたかったのですが、そのことについてはけっこうでござ いますが、ここで関連でございますけれども、このような人方が野放しになっていて、施設がないから、設備がないからというお話もござ いましたが、聞くところによりますと、結核の療養所、こういう国立の施設などが相当程度この精神病者のために転換されようとしている ことを聞いております。聞いておりますが、ただ単に建物がありまして精神病者を入れるだけの設備ができたとしましても、この人方を見 る医師、この人方のために身の世話をし、そして医療の効果があがるような、あるいは保護の効果があがるようにしていくための医療従事 者につきまして、どのような考慮が払われておりますのか。これは公衆衛生局長じゃないかもわかりませんが、担当の局長さんにお伺いし てみたいのでございます。

○政府委員(渥美節夫君) 国立療養所の一部におきまして、精神衛生対策のために精神病床に転換させるということは、この数年来三百 床あるいは六百床の幅で行なっているところでございまして、その際の医療関係者、特に看護婦さんの転換病床のための職場の転換に伴い まする講習会、研修会というものは、二カ月ないし三カ月程度の期間行ないまして、精神病床転換のためにうまくいくように実施している というのが現状でございます。

○石本茂君 ありがとうございました。先ほどお尋ねいたしましたときにもそうでしたが、どんなすばらしい政策をお立てになりましても 、それらの根本的な要素でありますところの人づくりをしないで、ただ枝葉末節的なことだけを大きく取り上げられておりますところに私 は非常に不安を持つものであります。どうしようと思うとか、どうしなければならないということじゃなくて、厚生行政の中で、ほんとう にこういう面に力を入れていただかないと、ただ名目ばかりたくさんあげても、さっぱり実際に効果があがってこないということになると 、国民が厚生行政に対しましては、いまでも不安を抱いておりますが、ますますそういう気持を醸成していくことは、国家の大きな意味の 建設にとりまして、一番大きな問題をかもしていくのじゃないかと思うのであります。そういうことでお尋ねいたしたのでありますが、や はりなるほどという回答が得られませんので、十分今後とも実現方について御配慮をいただきたいと思います。
 さらに関連でございますが、これは児童福祉法の中で、児童につきましては担当程度いま保護もされ、あらゆる意味の措置が講ぜられて おりますのに、その児童の範疇に入ります精神病者につきまして、特段の配慮が現在のところ法律等にはございませんようでございますが 、この辺児童局長さんのお立場でどのようにお考えになっておられますか。児童福祉法の中ではちょっと触れている条項もございますが、 特段には触れておりませんが、いかようにお考えですか。お伺いいたします。

○政府委員(竹下精紀君) 児童の問題でございますので、児童局長からお答えいたしたいと思います。
 児童福祉法の中には精神障害児童につきまして特別の規定が設けられておりません。これは御指摘のとおりであります。児童福祉法で取 り上げておりますのは、要保護児童と申しますか、保護を要するという非常に広い範囲で取り上げているのであります。したがいまして、 特に精神衛生法の関係から申しますと、精神衛生法の中にも精神障害の範囲がきめてございますが、その中で精神薄弱児につきましては、 精神衛生法の対象であると同時に、児童福祉法あるいは精神薄弱者福祉法の範囲になってくるわけであります。そういう面で私どものほう では一般的に精神障害児につきましては、児童福祉法の対象になるということは、精神衛生法ができました当時の基本通達の中にもうたっ てあるわけであります。ただ医療を要するいままで出ました精神病質の子供、あるいは精神病の子供は、これは当然精神衛生法の対象であ ると、かように考えております。

○石本茂君 いま児童局長さんのおことばで話はわかるのでございますが、精神衛生法にいたしましても、精神病者のための保障制度にい たしましても、児童の問題が大きく取り上げられまして、特に十七才などという未成年で、精神的にも固まりが少ない者のために相当程度 社会もいろいろなことを要求し、当局におかれましても考えておられますことの保護の網の中では、一番大きな盲点になっているように思 いますので、この点児童局長さん、社会局長さん両方にまたがりますとともに、いまおっしゃったように医療の範疇にもまたがりますし、 公衆衛生のほうにもまたがりますので、どこかでだれかがするのだという複雑な制度にむしろ今日なっているのじゃないか。このことだけ でなくて、厚生行政万般にわたりまして、そういう気がするのでございますが、どうぞこういう機会に今後各局におかれましては、有機的 に総合的な判断のもとに一つの問題を十分に御検討いただきますことを私はお願いしたいと思います。
 以上簡単でございますが、時間も過ぎましたので、これで私の質問は終わります。ありがとうございました。

○岩間正男君 関連して。

○委員長(藤原道子君) 簡単に。

○岩間正男君 この京都の少年犯罪で厚生省は具体的にどういう処置をとったか、つまり現場に人を派遣し、それからこの問題を究明した と思うのですが、どういう措置をとったか、簡単でいいです、それをほんとうに二、三分でいいですから言ってもらいたい。簡単にやって ください。

○政府委員(中原龍之助君) こちらは、人は派遣いたしませんで、こちらのほうといたしましては、京都府の衛生部と連絡をとりながら 作業をいたしました。

○岩間正男君 報告をとっただけですか。

○政府委員(中原龍之助君) はい。

○岩間正男君 わかりました。

○委員長(藤原道子君) 私からちょっとお伺いしたいのです。石本委員から言われたように、ライシャワー大使のときには大騒ぎした。 法律を変えた。それで社会に向かっては、結核と精神病は国の力で駆逐するのだと声明した。もし公費負担が拡充されているならば、今度 の事件はあるいは起きなかったろう。入院料がかかるのですよ。それでやむを得ず、病院長の話によると、家庭から退院させたいといえば 、これはさせないわけにはいかない、こう言っていられる。出たあとのアフターケアも足りない。何回訪問指導していますか、そんなこと してないと思う。薬はわずか一週間分持って出たきりで、あとは野放しじゃありませんか。そして入院させなければならないと思っている 直前に起こった問題です。ライシャワーさんのときにも、その直前に起こった、同じ事件なんです。こういうことについてあまりにも私は 厚生省はいくじがないと思うのですよ。さっきの救急医療の問題にしても、精神衛生対策にしても、大蔵省だってこの事態がわからぬはず はないと思うのです。もっと強くなってほしい、これを私は心から要望しておきます。怒りを込めて要望いたします。
 それから、看護婦の不足の問題は目に余るけれども、幸い今年は非常に志望者が多くて、各高等看護学院では三十名の定員に二百名とか 三百名応募している。これだけ看護婦が足りないときに、みな三十名以上はとれない仕組みになっているようでございますが、看護婦の養 成を急ぐという立場に立って厚生省はどう考えるか、私は志望者が多いことを非常に喜んでいたところが、どこで聞いてもみな三十名しか とっていないから、落している。これは一体どうするのか。いまの看護婦の足りないのは、あなたがたが考えている以上に深刻ですよ。こ れについてどういうお考えを持っているか、ちょっと聞かしてください。これが一点。
 それから時間がございませんので、それで精神衛生の精神病者とか、特異体質とか、精薄とか、こういうことはばく然とは新聞発表で知 っていますが、私たち詳しく承知いたしておりません。正確な資料、それから施設の状況、これの資料をお願いしたい。それから公費負担 でどれだけの人が入院しているのか、それでそのあとアフターケアでどういう方法をとっているかというようなこともあわせて資料で御提 出お願いたい。
 【略】

○政府委員(渥美節夫君) 看護婦養成所におきまする入学の取り扱いの問題でございますが、御承知のように看護婦養成所は、その教科 課程あるいは職員の状況等におきまして定員はきめられてございます。しかしながら、お説のようにただいまのような看護婦が非常な不足 の状況であり、かつまた、たまたまこういうふうな入学志願者が多い時代でございますので、院長がお話のように定員を厳守するというふ うなことでなしに、教育効果が妨げられない程度におきまして多少の超過を認めて入学を許すように、いろいろな会議におきまして通達、 通知を、連絡をするということでやっております。

法務委員会会議録第7号(51参昭和41年2月17日)
○委員長(和泉覚君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 本日は、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題とし、精神障害者の犯罪に関する件について調査を行ないます。稲葉君。

○稲葉誠一君 精神障害者全体の犯罪の問題については、別な機会に、これはおそらく予算委員会になると思いますが、少しく詳しくやり たいと思うので、きょうはざっとしたことをお聞きいたします。
 厚生省のほうにお尋ねするのですが、精神障害者というものの定義というか、その内容と、それから具体的にどういうふうに分かれてお って、どの程度いるかというのを、これを統計的にちょっと御説明を願いたいのですが。

○政府委員(中原龍之助君) 御説明申し上げます。
 精神障害者についてでございますけれども、精神衛生法における精神障害者と申しますのは、精神病者――これは中毒性精神病者を含み ます、それから精神薄弱者及び精神病質者、この三者を言いまして、これが精神衛生法の第三条に記載されております。
 それで、私ども、精神障害書の数というものにつきましては、昭和三十八年に精神障害者の実態調査を行ないました。この実態調査は、 サンプリング調査によりまして日本全国にいる障害者はどれだけいるだろうかということを推計するような調査でございます。その調査に よりますと、全国で約百二十四万人精神障害者がおり、そのうち精神病院に入院を要する者は約二十八万人と推定をきれております。また 、現に入院している精神障害者は昭和四十年の十一月現在で約十八万人でございます。そのうち、約六万五千人は、いわゆる法律によりま すところの措置入院患者でございます。
 精神衛生施策といたしまして、主として精神衛生法に基づきまして、精神障害者の把握、それから措置入院等による医療保護、それから 保健所による相談及び訪問指導を中心といたしまして、精神障害者の発生の予防それから治療を通じ社会復帰に至る一連の施策をとること にいたしております。昨年の六月には精神衛生法の一部改正が行なわれまして、通院医療費の公費負担制度の創設、それから訪問指導体制 の整備、精神衛生センターの設置等を行ないまして、在宅精神障害者対策に一そうの充実を期しているところでございます。しかしながら 現在、精神障害者を収容すべき精神病院の病床は約十七万床ばかりでございます。したがいまして、二十八万人という入院に対しましては まだ不足でございます。今後精神病院の増床を計画的に促進いたしますとともに、医療保護制度の拡充、それから在宅精神障害者に対する 指導の強化、それから社会復帰のための施設、これを整備いたしまして逐次対策を進めていきたいと、こういうふうに考えております。

○稲葉誠一君 しろうとだとよくわからないのは、精神病者と精神病質者の区別ですね。薄弱はわかったようなあれですけれども、その三 つの、何といいますか、内容というか、それをちょっと御説明を願いたいんですが。

○政府委員(中原龍之助君) これは、ほんとうの専門的になりまして、実際はなかなかむずかしいのでございますけれども、普通、精神 病者と言いますと、いわゆる分裂病とか、あるいは躁欝病とか、あるいはてんかんによるような精神病、それからいわゆる中毒性のいろい ろの精神病、こういうのが言われるのでありますけれども、精神病質と言いますと、症状がむしろそういうようないわゆる定型的な症状が あるのでなくて、結局、平たくいうと、まあそれまでに至らないところの、そして性格の異常といいますかというようなところがあるとい うようなものでございまして、精神病質ということにつきましてはなかなかどこからどこまでの範疇であるかと言うことが非常にむずかし いものでございます。

○稲葉誠一君 その百二十四万の実態調査、昭和三十八年七月一日ですか、これはサンプリングのやり方が、一万世帯ですかやったので、 相当大きくやったのでしょうけれども、この百二十四万というのの内訳はどうなんですか。

○政府委員(中原龍之助君) 百二十四万人のうち、内訳といたしまして、精神病として五十七万人、この精神病の中で精神分裂病として 二十二万人、躁欝病二万人、てんかん十万人、脳器質性の精神障害二十一万人、その他の精神病二万人、精神薄弱が四十万人、その他とい たしまして二十七万人であります。このその他の二十七万人は、中毒性の精神障害と精神病質、それから神経症、その他、こういうもので その他二十七万人ということでございます。

○稲葉誠一君 入院しなければならない者の二十八万人というのは、これはどういうものなんです。

○政府委員(中原龍之助君) 精神病院に入院を要する者が二十八万人、その二十八万人のうち、二十一万人が精神病でございまして、精 神薄弱が三万人、その他として四万人、計二十八万人ということになっております。

○稲葉誠一君 そうすると、よく世間で言われているのは、二十八万入らなければならないのに入院は十八万だと、だからあとの十万人は 野放しになっているとよく世間で言うわけですね。野放しという言葉は妥当かどうかちょっと問題だと思いますが、現実にあとの十万はど ういうふうになっているわけですか。

○政府委員(中原龍之助君) 結局、二十八万人のうち現在十八万人としますと、約六〇%近くが入院をしているというかっこうになりま す。あとの十万人がいわゆる野放しと、こういうことになるわけでありますけれども、この二十八万人は一つの推定の数でありまして、実 際はその二十八万全部を一人一人こちらで残念ながらつかむことができないわけであります。そうすると、そのつかみ方といたしまして実 際にやる方法は、具体的に出てまいりますのは申請、通報の制度がございまして、それによりまして患者というものがそこに浮かび上がっ てくる。そうすると、それをいわゆる診断をいたしまして、その中にはもちろん病人でない者もございますし、それから病人の者もござい ますが、それから病人の中で入院を要する者もあれば入院を要しない者もあるというかっこうで分類されていきます。そうすると、三十九 年度ですか、大体三万数千人そういう者が出てまいりまして、約二万人ぐらいが入院の対象になりまして、それを収容しているというかっ こうになっております。

○稲葉誠一君 そういう点についての詳しいことはまた別の機会にお尋ねしますが、そこで、精神病質者というのは、風体的にはどういう ふうにしてわかるわけですか。わかることについての万全な策というのはあるわけなんですか。やっているわけなんですか。あまり激しく やると人権の侵害問題も起きてくるし、そこの点はどういうふうなんですかね。

○政府委員(中原龍之助君) これはほんとうの専門家に聞いてみませんとなかなかむずかしいのでありまして、結局、精神病者であるか ないかということにつきましては、専門医の診断に待たないとはっきりしたものが出てまいりません。俗称おかしいからといってすぐ性格 異常者だとなかなか申せませんし、その点ははっきりやはり専門の医師に診断してもらうと、これしか私どもは手がないと思います。

○稲葉誠一君 別なことになるんですが、そうすると、京都で起きた事件で少年がおりますが、この少年は一体何ですか。どういうふうな あれなんですか。

○政府委員(中原龍之助君) 京都で今度の事件が起きましたのは、新聞に出ておりましたように十七歳の少年でございますけれども、こ の患者は、私どもいわゆる向こうの京都府の衛生部のほうと連絡をとりまして調べたその情報でございまして、こちらで直接行って調べた 結果ではございませんが、そうすると、この少年は、病院に入っておりましたところの病名はいわゆる精神病質者でございます。

【略】

○稲葉誠一君 ピストルを持っていて、これは不可抗力にせよ奪われて、それによって事件が起きて、一般の人が殺傷されたり、警察官が 殺傷されたりした。これはいままでにも七件あったわけですが、それらのものを全体を含めて十分反省をし、また、捜査の点についても本 件についていま言ったような点を中心にして検討をして、再びこういうような事件が起きないように、これは警察庁全体として十分注意し てやってほしいと、こういうことを要望しておきます。それに対して答えがあれば、答えていただいて、私の、質疑を終わります。

予算委員会会議録第18号(51衆昭和41年2月19日)
○永末委員 私は、最初に、この十二日に京都で起こりました精神異常少年の殺人傷害事件についてお伺いいたしたいと存じます。
 この事件は、十三日の午後六時半、精神異常の少年が警官を刺傷いたしましてピストルを奪い、奪ったピストルで一名を殺し、一名に傷 をつけた事件でございまして、一昨年ライシャワー大使に対する同様の事件がございまして、精神異常者につきます措置については、精神 衛生法の改正等、いろいろの措置が行なわれました。しかしながら、現状におきましては、いまだに、入院加療を必要とする者について、 十一万余も、厚生省の調査によりましてもなおこれを入院せしめることができない、このような状態に放置をされております。しかも、犯 罪が起こりました場合、その犯罪の中で精神異常の者が起こす犯罪の比率は〇・七%程度でございます。ところが、その行なっておる犯罪 の内容は、たとえば殺人は六・七%、放火は一七・八%という、凶悪犯が多いのであります。したがって、いわば凶悪犯を犯す状態を潜在 的に持っておるこういう人々については、重要な関心を持たなければならないと私どもは考えます。
 国家公安委員長に伺いますが、こういう状況について国家公安委員長はどういう措置が必要だと考えておられるか、お伺いいたしたい。

○永山国務大臣 精神障害者の医療保護がまず第一十分行なわれますように関係当局へ強く要請をする必要があると思うのでございます。
 本件に関しましては、最初青年が病院におったのでございますが、その際も警察では入院させるように助言をいたしておるのでございま す。そうして、京都府内の城南病院精神科に同意入院をいたしましたが、その後経過がよろしいようなので、母親のほうから通院しつつ就 職をさせたいという要望がありましたので、診断に基づいて一応退院をせしめたようなことでございますが、十分まだ加療ができていなか ったように考えられますので、今後ともこの療養、保護に対して格段の注意をしてやるように関係機関へ強く要請する必要があると考えて おります。

○永末委員 いまの公安委員長の御答弁はまことに通り一ぺんであって、問題は、そういういわば潜在的な、犯罪を起こすとはきまってお りませんが、起こすかもしれない人々に対して、警察がカバーし得る範囲は一体どの程度なのだ、厚生省方面で措置をしなくちゃならぬ範 囲はどうなのだ、こういうところをはっきりと見きわめなければ、警察で全部できるわけでもございません。
 この最初警察官が刺傷されました場所は私の事務所の近所でございまして、私が事務所へ通うときには毎日通勤をいたしておる場所であ ります。あの近所はいわば私の周辺地区で、この事件のために二十四時間付近住民が感じました恐怖感というのは非常なものでございまし て、したがって、政府が通り一ぺんの答弁で、関係方面と連絡してというだけでよいものではございません。その内容は、これからはっき りいたしますから、公安委員長はひとつ聞いておいていただきたい。
【略】

○永末委員 【略】
 あなたにばかりかかずらわっておりますと、時間が過ぎますので、厚生大臣、精神異常者というのは個人の病気であります。しかし、こ の精神異常者を異常ならしめておる要因は、非常に社会的な要因が多いと私は考えます。したがって、この精神異常者は、病気である限り においてはなおるものだという確信を、精神異常者の保護者、親族等がやはり持ち、社会もまたそのように持たしていく、これが一番重要 な点ではないか。現在、自分の家庭に精神異常者がおるということを公にすることをやはりいやがる、そういう風潮があるのである。した がって、この点は多分に社会的な取り扱いということを考えなくてはならぬと思いますが、まず第一に伺いたいのは、社会的な病気だと考 えて、この種の人々の社会復帰をはかるためには国に大きな責任があるとあなたはお考えかどうか、お答えを願いたい。

○鈴木国務大臣 精神病者精神障害者の保護の問題につきましては、医療方面の行き届いた措置が必要でありますと同時に、御指摘のよ うに、社会全般がこのような患者に対しまして十分あたたかい目をもってこれを保護していくということが必要であると、このように考え ておりまして、昨年六月の精神衛生法の改正におきましても、そういう観点で、在宅の療養の指導でありますとか、あるいは通報体制の整 備でございますとか、あるいはまた通院にあたっての公費負担制度を創設する等、できるだけあたたかい配慮をもってこういう精神障害者 の保護に当たるべきであるということでやっておる次第であります。

○永末委員 精神衛生法二十九条によるいわゆる措置患者、この措置患者は一昨年から昨年は五千人あなたのほうで予算が増加いたしまし た。ことしは三千人分しか増加をしていない。予算額はふえました。内容の判定を大蔵省は変えたからです。私が伺いたいのは、予算人員 を各府県に割り当てた場合、各府県知事が、自傷他害のおそれありとしてこれらの患者を入院せしめる場合に、予算が満配になったからも うできないのだ、こういうことで入院せしめなかったら重大問題が起こると思う。そこで、毎年のことでありますけれども、これを上回っ た場合には、厚生大臣としては、その年度内に必ず補正予算を組んで大蔵省に要求する、こういう御意思があるかどうか伺いたい。

○鈴木国務大臣 現在、病院に入院させる必要のあります精神障害者の数は大体二十八万人程度と考えられております。そのうち、現在入 院しております者が十八万人でございまして、十万人程度の者が現在病床が不足のために在宅で療養しておるという状況でございますが、 政府におきましても、この精神病床の増床につきましては特に力を入れて努力をしておりまして、国の補助によるもの、また医療金融公庫 からの融資によるもの、そういうような対策を進めまして、昭和四十一年度におきましては、おおむね一万五千床程度増加する見込みでご ざいまして、大体今後三年程度で二十二万程度の病床が確保できる。そういたしますと、大体現在入院治療を要するという患者の要請にこ たえ得るものと考えておる次第であります。
 そこで、御質問の点でございますが、病床がそういうことで少ないために、十七万人収容するところに十八万人入っておるという現況で ございますので、措置入院の予算につきましても、施設の数と見合ってこれを予算に計上せざるを得ないという状況にございますが、不足 を告げました場合には、財政当局ともよくはかりまして、補正予算等の措置を講じて万全を期したいと考えております。

○永末委員 同意患者と称せられるものがございます。これは、それぞれが自費でやるわけでございますが、たとえこれは健康保険関係の 法律が適用されましても、実態は月に約二、三万円程度の持ち出しを家族としてはしなくちゃならぬ。そこで、完全に治癒していないこと はわかりながら、その二、三万円程度の出費に耐えかねて退院をしていく例があるのでございまして、今回の事例も、あるいはそれに該当 するかもしれない。といたしますと、現在政府は、同意患者につきましては、法律上根拠がないということで一切の補助を考えておりませ んけれども、もし、当初私が申し上げましたように国の責任であるとするならば、この点について、やはり国庫補助をつけていく方針をお とりになるのがあたりまえだと思います。あなたはどうお考えになりますか。

○鈴木国務大臣 御指摘のとおり、現在精神病者あるいは精神障害者に対しましては、措置入院に対しましては公費でやっておるわけであ ります。また、通院患者につきましても、先ほど申し上げましたように、昨年の法改正によりまして半額公費負担を実施しております。こ れは、いまお話しになりました退院後のアフターケアを十分にやるということで通院を助成する、助長するという意味で設けた制度でござ います。ただ、任意で入院いたしました患者に対しましては、医療保険でありますとか、あるいは生活がお困りになっている方に対しまし ては生活保護でありますとか、そういう面の医療扶助をやっておるということでございますが、今後検討していきたいと考えております。

○永末委員 厚生大臣、私の申し上げたいところは、医療扶助や生活保護は通常の病気でもかかるわけだ。しかし、これについては、対社 会的に害を及ぼすおそれのある人であるから、その意味合いで社会的な病であると国が考えるなら、やはり特別の措置をしていくのが当然 ではないか。その人のためのみならず、社会のためですよ。だから、あなたはそれをしっかりやってください。それから通院補助も、付き 添いがみなついていくわけだ。二分の一の補助では少ないですね。
 もう一つの問題は、これらを判定する精神科医の数が非常に少ない。これは、普通のお医者さんと比べまして、きわめて少ない比率にな っておる。社会がだんだん忙しくなりますと、異常心理の持ち主がふえてくるのでありまして、うようよしておるかもしれませんね。した がって、精神科医というものをふやしていく必要があると思うが、厚生省は、そういう方針をお持ちかどうか、簡単に答えてください。

○鈴木国務大臣 ただいま御指摘になりましたような御趣旨に沿いますために、昨年の六月の法律の改正で、保健所に精神衛生の相談員を 配置いたしましたり、また精神衛生のための嘱託医を配置をするという制度を強化してまいったのでありますが、御指摘のように、なかな かそういう専門医等の確保が困難でございます。したがって、今後精神病関係の医者の確保につきましては、特に力を入れていきたいと考 えております。

○永末委員 あと一つ注文をつけておきますから、一括して答えてください。
 あなたの言うことを聞いておりますと、やっておるということになっておるわけだ。ところが、実際はそうなっていない。たとえば保健 所に置くべき相談員にいたしましても、全国で保健所の数は八百五十、今回少し増員をいたしましたけれども、二百程度である。そうする と、一保健所一相談員もない。その相談員については、精神衛生法では、大学の社会福祉の教科を卒業した者、なかなかいい規定がありま す。私も同志社大学社会福祉科でケースワーカーになるべき彼らを教えておりましたが、それならば、そういう人々は自今どういう身分 保障があるか、これはないわけである。また、一般の病院でもケースワーカーが必要だと思うけれども、ケースワーカーとしてずっと長年 やっていく上については、きわめて身分保障がないというに等しい状態である。こういう点をはっきりしてもらわなければ、意図はありま しても、実現ができないという問題。
 さらにまた、もう一つは、精神病院等においては、看護人の不足に非常に困っておる。無資格者を入れてやっておる。しかもあばれます から、女だけではだめだ。男の看護人がほしい。その男の看護人につきましては、いま制度がございませんので、これは全然無資格でやっ ておる。やはりこの制度を開いてほしい。たとえばわが党が主張しておりますような、中年者雇用の促進という点にも、一つは私は関係の ある問題だと思います。
 もう一つの問題は、病院で入院加療いたしましても、いよいよ社会復帰になる、その間が全然施設もなく、指導体制もないというのが現 状である。一つの案としましては、同じ病気に苦しんでおる人々の家族、こういう人々は同病相あわれんで、ポイントをついたいろいろな ことを考えてくるわけである。こういう人々の集まりができておるわけでして、こういうところにも政府としては指導していく、こういう ことが必要だと私は考えます。
 以上の諸点について、簡単に所見を伺いたい。

○鈴木国務大臣 保健所の医師や、あるいは保健婦等の確保、あるいは相談員の設置、この問題は、御指摘がありましたように、従来待遇 が他に比べまして非常に見劣りするものがございました。これも一つの大きな原因でございますので、この待遇の、処遇の改善ということ につきましては、四十一年度の予算におきまして、保健所の医師及び看護要員等につきましては特段の配慮をいたしましたことは、先般御 説明申し上げたところでございます。
 なお、第二の精神病の看護にあたっての男の看護要員の確保が必要であるという問題につきましては、これは前向きで検討していきたい と存じます。
 第三の点は、社会復帰の問題でございますが、これは身体障害者、あるいは精神薄弱者、あるいは精神障害者等、社会復帰の問題が非常 に重視されてまいりました。残された能力、残存能力を社会のために生かしながら、保護を加えつつ生活をさしていくということが特に大 切になってまいりましたので、この点につきましても努力を払いたいと考えております。

予算委員会会議録第7号(51参昭和41年2月22日)
山高しげり君 【略】
 次に、厚生大臣に伺いたいと思います。先ほどの京都のピストル少年事件でございますが、あれは十七歳の少年ということで、社会はが く然としたようでございますが、だんだんわかってみますれば、彼は精神病者であった。結局は精神病対策の中で考えられなければならな いことがたくさんあるようでございますが、最近厚生省は、この精神衛生法の改正が昨年の六月に行なわれ、続いて保健所法の改正もござ いました結果、在宅の精神障害者の指導体制強化をなさるということで何か通牒等をお出しになったようでございますが、そのことで伺い たいと思います。

国務大臣鈴木善幸君) 京都で起こりました井川少年のピストル事件、これはまことに遺憾な事件であったのでありますが、井川少年 は、昨年の三月に病気のために入院をいたしました。昨年の十一月に緩解したということで退院をいたしたのでありますが、その退院中に 起こった事件でございます。政府は、従来この精神衛生対策につきましては、発生の予防、それから治療、さらに社会復帰という一貫した 精神病対策を進めてまいったのでありますが、昨年の六月に、御指摘になりましたように、精神衛生法の一部改正をいたしまして、申請通 報体制の整備でありますとか、あるいは作宅の保護指導の体制を強化する、あるいは通院に対して公費負担をやるとか、そういう精神衛生 対策の強化をいたしたのでございます。現在保健所等に対しまして嘱託医を増員するとか、あるいは相談員を配置するとか、そして在宅の 患者の指導に、特に予後の対策を強化するという面につきまして力を入れておるところでございます。今後も、精神衛生対策はますます社 会情勢の変化に伴いまして、私ども強化してまいらなければならない、かように考えておる次第であります。

山高しげり君 まあ予算のことなどは、また別な機会に伺いますけれども、たとえばお医者さんをふやす、あるいは精神衛生相談員とい うような、こういう人が、末端といいますか、第一線に働いていただいてこそ、予防とか、いろいろアフターケアとかいうものができるか と思うのでございますが、まあこれ一つに限りませんけれども、いま厚生行政、あるいは、そのほかの行政におきましても、末端にそうい った相談員のような制度は非常にたくさんできているようでございますけれど、現状においてはいささかなり手がなくなってきているんじ ゃございませんですか。その意味におきまして、たとえば精神衛生相談員がすでに置かれていた、そうすると、あの少年は退院をしたけれ ども、ほんとうになおっていないのですから、こういう相談員がお世話をする対象ではないのでございますか。彼は相談員とはどんな関係 にございましたでしょうか。

国務大臣鈴木善幸君) 先ほど申し上げましたように、井川少年は、十一月に退院をいたします際には、精神病で言います緩解、なお ったということで退院をいたしまして、その後職場にもついて働いたようでございますが、この春になりまして急にまた状態が悪くなって 、そうして再度入院させようという、そういう段階において起こった遺憾な事件でございます。で、昨年の六月の精神衛生法の改正も、こ ういうアフターケアを十分にやるというところにも重点が置かれておりまして、そういう意味合いからいって、保健所等に精神相談員、あ るいは嘱託医の増員等を考えているのでありますが、御指摘になりましたように、なかなか待遇の問題や、いろいろの面で十分確保されて おりません。四十一年度の予算におきましては、さような点を考えまして、保健所の職員の待遇改善を大幅に実施するようにいたしている 次第であります。

山高しげり君 結局、いろいろの施策というものが立てられますけれども、その施策の伸展に対して、関係職員に周知徹底をさして、そ うして、その仲展に万全を期せというような通牒はよく出るのでございますけれども、末端のことに対して、国民はやはり不信でございま す。不安を感じております。【略】