精神医療に関する条文・審議(その32)

前回(id:kokekokko:20050517)のつづき。初回は2004/10/28。
精神衛生法に関する国会の議論。

地方行政委員会会議録第18号(51参昭和41年4月12日)
○鈴木寿君 銃砲刀剣の取り扱いで、私非常に心配なのは、一つは、こういうものが暴力団等によっていろいろ犯罪の用に供せられたり、 事故を起こしたりなんかする、そういうこと。それから一つは、精神障害者がこういうものを持っていろんな問題を起こすという、こうい うことだと思うんであります。いまのこの銃砲刀剣の法律の中に、精神病者等は銃砲刀剣を持てないことになって、所持の許可をしてはな らぬということになっておるんでありますが、なかなかこれはまた精神障害者、異常者というものの診断といいますか、判断といいますか 、むずかしい問題もあると思うんであります。医師の診断書、証明書等をもって異常者でないということが、許可を受ける場合に一つの条 件になるわけなんでありますけれども、なかなかこれはいまの日本のこういう状態の中では、効果的なことができないんじゃないだろうか と思うのでありますが、それはともかくとして、現在の精神障害者あるいは異常者といわれるような者、そういう者が非常にたくさん日本 にはおるんじゃないか。しかも、それがほとんど野放し状態に置かれてあるんだろうと思うんでありますが、こういうところに大きな問題 が私あると思うんであります。
 そこで、現在の日本における精神異常者、精神障害者、こういうものの現況といいますか、こういうものをひとつお話を聞き、さらにこ れに対してどういう対策を現在とりつつあるのか、また将来どう対策を講じていくおつもりなのか、そういうことを最初にまず概括的にお 聞きしたいと思います。

○政府委員(中原龍之助君) 精神障害者の概略についてお答え申し上げたいと思います。
 精神障害者と申しますのは、精神衛生法によりますと、精神病者、それから精神薄弱者及び精神病質者、この三者をいっております。で 、こういうようないわゆる精神傷害者というものが、では日本にどれだけいるのであろうかということにつきましては、実態調査をいたし たことがございます。これは昭和三十八年に最近ではいたしております。この実態調査は、サンプル調査をいたしまして、それをもとにい たしまして全国的に推計をいたしたわけでございまするので、全部が全部この患者数をつかんでおるというわけではございません。この推 計によりますと、大体この精神障害者というものが全国推計で百二十四万人おるであろうというような推計になっております。で、その中 で精神病は五十七万人、それから精神薄弱、これは白痴、痴愚だけでございますが、これが四十万人、その他が二十七万人、こういうふう に推計をしております。そしてこれの治療とかいう方面につきましては、収容して治療を要する者というのは約三十五万人、それから外来 治療、指導、そういう者が四十八万人、それからその他の、まあ指導といいますのが四十一万人というふうに区別されておりますが、その 中で、収容治療を要する者の三十五万人について見ますと、精神病院に収容を要する者というのが二十八万人と推計されております。それ から精神病院以外の施設に収容を要する者というものが七万人、で、精神病院に入院を要する者の二十八万人に対しまして、さらにこれを 区分いたしますと、精神病で二十一万人、精神薄弱で三万人、その他で四万人と、こういうような状況になっております。
 それで、これに対する精神障害者の対策といたしまして現在とられておる状況、それから将来の方向につきまして概略的に御説明申し上 げますと、精神障害者の対策といたしましては、主として精神衛生法に基づきまして、精神障害者をできるだけ把握し、そして自傷他害の おそれのある者――自分も傷つけ、あるいは他人を害するというようなおそれのある者につきましては、特にこれは措置入院という措置を とっておりまして、この措置入院等によりまして病院に収容し、そうして医療保護を加えていく。このほかに、昨年法律が改正されまして 、保健所におきまして、精神衛生相談をやるというほかに、訪問指導といろものを行ないまして、精神障害者の発生予防と、それからおも に医療を通じての一極のアフターケアーといいますか、そういう措置を講じておるわけでございます。で、費用のほうにつきましても、昨 年の六月の精神衛生法の一部改正によりまして、従来は通院者の、措置入院者につきまして公費の負担というものが認められておりますけ れども、適正な医療を普及して、そうして通院をしても、なおし得るというようなことから、この通院医療に対する公費負担制度というも のを創設にいたしました。それから、先ほど申しました保健所等のいわゆる訪問指導体制の整備のほかに、昨年度から精神衛生センターと いうものを各府県に設置していこう。そしてそれが訪問指導、その他のいろいろ中心の指導的の機関として全体のレベルアップをはかって いこうということでございます。これは主といたしまして、精神衛生センターは、保健所とそれから一般医師との連絡をとりまして、いわ ゆる在宅の精神障害者対策の充実を期するという趣旨から行なわれているのでございます。しかし全体から見ますと、精神障害者を収容す べき精神病床、及びアフターケアーのための施策というものについては、もちろん十分ではございません。今後とも精神病床の増床を計画 的に促進するとともに、医療保護制度の拡充、在宅精神障害者に対する指導の強化、それから社会復帰のための施設の整備等につきまして 、逐次対策を進めていきたい、こう考えているわけでございます。
 なお参考までに、現在この精神病床というものがどれだけあるかということにつきまして御説明を申し上げますと、大体ベットは最近非 常に伸びておりまして、年間一万数千から、昨年は約一万九千床と、年間の伸びを示しております。それで四十年の十二月末には約十七万 二千八百床くらいになっております。措置入院患者数はしかし現在ともなお若干超過収容という形になっております。
 以上でございます。

○鈴木寿君 入院を必要とする者三十五万とおっしゃった……。

○政府委員(中原龍之助君) 収容を要する者といたしまして、この三十五万と申し上げました。そのうち精神病院に入れる者というもの が二十八万人でございます。

○鈴木寿君 精神病院に入れる者は二十八万人、それに対して全国のベッド数が十七万二千八百くらい、これは昨年の調査でございますね 。

○政府委員(中原龍之助君) はい、十二月です。

○鈴木寿君 今後ふやしていくというお話でありますし、また、だんだんふえつつあるという状況のようでありますが、収容しなければな らない者が、なおもう十万くらいはベッドが足りないということになりますでしょうか。そこら辺そういうふうに考えてよろしいですか。

○政府委員(中原龍之助君) 数字の上では確かにそのようになると思います。そうして先ほど申し上げましたとおり、この推定数は、一 つのサンプル調査をもとにいたしまして推計をいたしております。全部が全部この二十八万人の患者を現在つかんでいるわけではございま せん。つかんであるものにつきましては、逐次心要な者は収容していくというたてまえをとっております。

○鈴木寿君 これはなかなか実態調査といっても、個々の一人一人まで実際にされるということについては、なかなかむずかしい問題だと 思うのですが、それでサンプル調査の結果、いまお話しのように、二十八万人を病院に入れなければならない。これがあるのにもかかわら ず、しかし実際のベット数は十七万くらいだと、こういうところに、いまの日本の精神障害者に対する対策の非常に手おくれな点があると 思うのですが、それからもう一つ、いわゆる精神病を専門とする精神病関係のお医者さんですね。これは全国にどのくらいあるというふう にあなた方はつかんでおりますか。

○政府委員(中原龍之助君) この精神科のお医者さんのつかみ方でございまして、これがなかなかつかみ方によりまして、多少の差異が 出てくるのでありますけれども、現在単独の精神病院等でいろいろ精神病の治療に従事しているお医者さん等の数字を医療施設調査等でと ってみますと、三十九年でこの従事者が、常勤、非常勤を合わせて三千六百五十名ということでございます。

○鈴木寿君 このあれですか、精神科のお医者さんですね。三千六百五十名、三十九年の調査でそういうふうになっておるということであ りますが、日本各地の状況、配置といってもこちらで指図するわけではないが、いずれそれぞれのところにおると思うのでありますが、こ れはどういう状況になっているか。たとえば東京とか、大都会のところとか、あるいは中小の都市、農村について配置、分布――分布でも ないでしょうが、これはちょっとことばが適当なことばが見つかりませんが、そういうようなところを調べたら、どういうような状況です か、これは。

○政府委員(中原龍之助君) まことに申しわけございませんですけれども、いまそこまでの資料を持ち合わせてはございませんですけれ ども、概括して言いますと、やはり医師一般のあれとしましては、都会地のほうに集中をしておるという状況で、辺地のほうに行けば行く ほど医師がやはり充足していないということが言えると思います。

○鈴木寿君 とにかく精神科のお医者さんが足りないということだけは確かですね、いまの日本のそれからいって。

○政府委員(中原龍之助君) 私も、この精神科の医師の数につきましては、不足であるというふうに考えております。

○鈴木寿君 一方に病院等に収容して治療をしなけりゃならぬというものが三十万近く、二十八万人もおる。ところが、ベットが足りなく て収容し切れない。したがって家庭等におって、あるいは病院に通ったりなんかもするんでしょうが、いずれ十分な目が届かないところに たくさんの精神障害者がおるという、こういう状況ですね、端的に言って。三十八年の調査のときには、推定――もちろん推定でしょうが 、家庭で治療しなきゃならぬというようなものが五十数万人あるんじゃないかと、こういう数字が出ておったはずなんでございますが、そ れが今度家庭において治療し、あるいはいろんな方法でやっても、担当するお医者さんがいない、単に家族の者や周囲の者がそれを見てお るというような状態であるように、こういうお医者さんの数等からいって思われるわけなんですね。さっき私、野放しの状態だと、こう申 し上げたのも、一つの根拠としてはそういうことから言えるんじゃないかと思うんですがんね。
 そこで、私心配なのは、銃砲刀剣のこの法律によって、精神障害者、精神異常の者は持っちゃいかぬ、お医者さんに見てもらって証明書 を持ってこなきゃだめだと、こういう法律になっておるのでありますが、一体だれがそういうものを見て的確に診断するのか、証明するの か、まことにたよりないと思うんですね。一々銃砲刀剣を所持しようとする者が、許可を受けようとする者が、まあこれはことばは少し悪 いんですが、そこら辺の普通の内科とか何とかというお医者さんのところへ行って、専門医でない方から証明書を、あるいは診断書をもら っていくというかっこうがいまの実態ではないかと思うんですね。そこら辺、私非常に心配なんですがね。実際これは、あれですか、警察 のほうにお聞きしますが、精神異常、障害者というようなものを、所持の許可を与える場合に的確につかんで、該当者は許可しないんだと 、あるいは持ってくる証明書というものはもう間違いないんだというような自信がおありですか。

○政府委員(今竹義一君) 前に名古屋市の某という精神病の患者に猟銃の許可があったことがございますが、その際に、その某を診断し ました三重県立大学の医学部教授、黒沢という先生の話を聞いたのでございますが、先生のことばによりますと、「私は精神神経科の医師 として患者を診察もし、または大学教授として絶えず研究もしておりますが、某のような患者について毎日診察しているのでありますが、 一度診察しただけで直ちに病名を確定することのできない場合があります。ましてや、常人が一見したり、少し話をしたぐらいでちょっと 変わっているというようなことであれば、これが精神病者であることがわかるようなことはほとんどないと思います。」こうおっしゃって 、さらに語を継いで、「今後法改正によって精神科医師が診断書を書かなければならないというようなことがあれば、これは非常に困難な ことで、私は一度ぐらいの診察だけではなく、むしろその人物を絶えず見ている医師が書くことのほうがよくわかると思います」、こうい うふうに専門家の立場からおっしゃっております。
 私どももこの御意見を参考にいたしまして、一度ぐらいではなかなかむずかしかろうと、むしろもよりの、その人に常時接している一般 の人のほうがよくわかるのではないか、かように考えたわけでございます。

○鈴木寿君 中原局長、あれですか、いまのお話があったわけなんでありますが、さっき私が申し上げたようなこと、精神障害者等に対す る銃砲刀剣の所持の許可あるいは不許可というような問題が、心配なく処理されているというふうにお考えになりますか。

○政府委員(中原龍之助君) 銃砲刀剣についての、その問題としていまお答えを申し上げるとしますと、突然でございますので、ちょっ と判断に迷うのでございますけれども、精神障害者の、いわゆる障害者であるという診断を下すということにつきましては、先ほど保安局 長から申し上げたのは、やはりケース、ケースによりましては穏当であろうといろふうに考えております。と申しますのは、精神障害者に つきましても、相当症状のはっきりしている者は、これは一回でもわかるかもしれません。そうでない者につきましては、何回か診察をし 、経過を見て初めてそこで診断を下すというふうになるのがやはり普通であろうかというふうに考えております。

○鈴木寿君 この精神障害の医師の診断とか証明とかという問題、これは銃砲刀剣の施行規則の中に規定がありますね。証明書を持って来 なければならぬということですね。ですから、そういう意味では、法のたてまえからすればそれでいいと思うんですが、実際持ってくる証 明書そのものについて、これはさっきも言ったように、失礼なことを言うようだが、ほんとうであるのかどうかというような心配、さらに 、むしろこれは、法律にはそういうふうになっておっても、実際にはこれは行なわれていないんじゃないだろうかと思うのですが、そこら 辺どうですか、警察のほうでは。

○政府委員(今竹義一君) 精神病者であることを許可あるいは免許の欠格事由としております法律の例は、私どもの銃砲刀剣類所持等取 締法のほかに、調理師法、理容師法、美容師法、栄養士法、麻薬取締法、毒物及び劇物取締法、あへん法、医師法歯科医師法、歯科衛生 士法、歯科技工法、あん摩マッサージ指圧師等に関する法律、薬事法、その他厚生省関係の獣医師法とか、いろいろあるわけでございます 。それらはいずれも医師の診断書を添えるということを義務づけておりまして、精神衛生鑑定医というふうになっていないのでございます 。そういうことも考えまして、医師の診断書と、こういうふうにいたしたわけでございます。この規定は順守されておると考えます。

○鈴木寿君 私、法律そのものがけしからんとか、診断書を持ってくるようにという、そういう規定がいかんとかいうことでなくて、それ はまあそれでなきゃいかんと思いますが、実際、じゃどうなのか、こういう点について私ども非常に心配なわけですね。

○政府委員(今竹義一君) 精神病者であるかどうかという最終の判断は、許可をいたします公安委員会にあるわけでございますが、私ど もはやはりそういう意味ではしろうとでございます。念には念を入れるという意味において医師の診断書を添えるほうが適切である、かよ うに考えております。

○鈴木寿君 銃砲等による事故が精神障害者の手によって引き起こされているというような事例がたくさんあるわけですね、銃砲だけでも ございませんけれども。たとえば去年――おととしですか、ライシャワー事件なんかもたしか精神異常者といいますか、障害者といいます か、そういうものであったと思うのですね。これは一つの例でありますが、そういうものがあちこちにあると思うのです。ですから医師の 診断書、証明書を持ってこなきゃならんということを私否定しているのじゃなくて、なかなか現在の日本の精神科のお医者さんの数からい っても、いまの対策、いろんなことを考え合わせてみても、手の届かないところにたくさんの精神障害者、異常者があって、なかなか法律 にはきめてあるけれども、きちっとそれで全部をとらまえることができるかというと、そうじゃないということを私心配するわけなんです 。そういうことについてどうお考えになっておられるのかと、こういうことなんです、私お聞きしたいことはですね。法律に、医師の診断 書を持たなきゃならんからという、それについていいとか悪いとかじゃなくて、それは当然でしょうから、それはかりに精神科の専門医師 でなくとも、いまの日本の状態であればこれはやむを得ないと思います。ですから、それはそれとして、私問題だということでなしに、実 態として法律のいろんな規定なりというものがあっても、的確に精神障害者精神病者というものを、いま言ったようなことの所持の許可 を与える場合にはじき出して持たせないということもできないし、というんじゃないだろうかという、私のそこら辺で何か考えるところは ないかと、こういうことなんであります。

○政府委員(新井裕君) 鈴木委員のおっしゃるとおりでございまして、私どもとして一〇〇%これを防止するということは、目下の医学 水準かどうか知りませんが、与えられる条件のもとでは不可能だと思っておりますけれども、こういう制度をとることによりまして、九割 五分以上の確率は保てるというふうに思います。さっきお医者さんのことばを引用いたしましたけれども、専門医になればなるほど、ほん とうに鑑定しようと思えば一カ月や二カ月の日にちを要する問題もあるようでございまして、短期間にそういうような繁雑な手続をすると いうこともできかねますので、実行可能で、しかも最も確率の高い方法をとるというのがわれわれの立場でございまして、そういう意味で 、先ほど来御質問のありました精神障害者に対する銃等の所持許可に対しての取り扱いを去年から変えたわけでございます。したがいまし て、こういうような制度で一〇〇%ということはできかねるということを正直に申し上げたほうが誤解がないと思いますけれども、相当部 分はこれによって防止できると思います。
 なお、お尋ねの中にはございませんでしたけれども、私どももいま引例されましたライシャワーさんの事件以来、いろいろしろうとなり に研究をして、お医者さんの意見も聞いておりまして、精神障害者と言われるうちの精神病者というものについて、いま議論をなされまし たけれども、それ以外の、その他とあります二十七万人のうち、どれくらいになるかわかりませんが、精神病質者――われわれが俗語で変 質者と言っております者、これはどのお医者さんに聞きましても、なかなか診断はむずかしいと、何かそういう変わったことをして初めて そういう者であるという認定ができるということでございまして、そこいら考えますと、たいへんまあわれわれとしても亡羊の嘆にたえな いところがございますけれども、最も実行可能で、最も確率の高い方法をとるということが必要なのじゃなかろうかということで考えてお るわけであります。実はこの問題よりももっと大きな問題は、運転免許にございまして、この銃等の所持許可は、数から申しましても、運 転免許に比べるとずっと少ないわけであります。運転免許についても、われわれとしては、ほんとうに真剣に考えなければならない問題が 現にございまして、何とか比較的簡単で確実な判定方法がないものかというのがわれわれとしても大きく希望しておるところでございます 。たいへんよけいなことを申し上げて申しわけございませんが、一応お答えをいたしたいと思います。

○鈴木寿君 いわゆる精神異常者と正常者、これはなかなか簡単には区別もできないと思いますし、精神障害者と言われる者の中でもまあ いろいろな様相があって、これ自体でもちょっと見たところだけではつかめないという、こういう性質のものだろうと思います。ですから 、どうもこの問題に対する対策というものは、いままで手おくれで、まあわれわれ自身の周囲を考えてみましても、もっとこういうことに 本格的に取り組まなければならぬと思うような事例が幾つもあるわけなんでありますが、いま長官のおっしゃるように、私きょうは、この 法律の改正案について主として銃砲刀剣の問題からお尋ねをしておるわけなんでありますが、お話のように、自動車の運転者等、こういう ものの事故を起こす者の中に精神障害、精神異常の者がたくさんあるということも最近の統計でわかっておりますから、それはまあ非常に いまの日本の社会にとっても大きな問題だと思うわけですね。それに対して的確な対策を立てられなければならぬし、十分な措置がされな ければならないと私は思うのですね。そういうことを前提にしながら、法律でさっきも言ったように、たとえば銃砲刀剣の所持の許可を受 けようとする者は医師の診断書、証明書を必要とするんだと、証明書を。精神障害者じゃないという証明書がなければいけないということ なんでありますが、実態はしかしなかなか効果が私あげ得られないんじゃないだろうか。長官は相当な効果があがると言っておりますが、 私はこれだけのことで、そしていまの日本の精神障害者の数、あるいはお医者さんの数、こういう状況の中では、なかなか効果があがると いうようなことにはいかないんじゃないだろうかという心配を、私依然として持ちますがね。もっとこれはほんとうに、気違いに刃物とい うことばが昔からあるわけなんでありますが、刃物どころでない。たま飛び出してとんでもないというようなことになる、そういう銃砲を も含めて、いま考えていかなければいけないところなんですから、それほどこれに対しては慎重に扱わないと、まあぼくらもこわくてしよ うがないというような感じしますね。やっぱりいまのままであれですか、銃砲刃剣の所持の許可の場合に、施行規則のその中にあるような そういうことでおやりになりますか。もっと私申し上げたいことは、その証明書も、単にそこら辺の知り合いのお医者さんに行って、そう であるとか、そうでないとかいう程度でなしに、もうちょっと専門医なり、専門のそういう精神障害者の治療機関等からしっかりしたもの を取ってもらうというようなことにまでいかなけりゃいけないんじゃないかと思うんですが、その点いかがでございますか。

○政府委員(新井裕君) 実は、鈴木委員と同じ希望を私ら自身も持っておりまして、精神病の判定というものが、いまの医学の水準、あ るいはお医者さんの分布等勘案した上で、もう少し的確な方法がないものかというふうに私自身も待望いたしております。これに満足する ことなく、そういうことができれば直ちにそれも取り入れるにやぶさかではございませんけれども、私は、やはりお医者さんとして証明書 を書く以上、お医者さんとしても精神的な義務というものを感ずるわけでございますから、自信がないものをだれでもむやみに書くという ふうには私ども必ずしも想像いたしません。したがいまして、その限度におきましては、相当良心的な証明書が相当の程度発行されるとい うことを想定をしてやっております。まだ始めたばかりでございますから、どの程度実効があがりますか、判定はいたしがたいのでありま すけれども、ことに今度銃刀法の改正案の御審議を願いまして、もしこれをお認めいただくといたしますと、五年ごとに許可を更新いたし ますので、その際にまたわれわれとしてもチェックするチャンスもあると思いますので、そういうものと相まっていけば、いまわれわれの 許された条件のもとでは、最も確実な方法で排除できるんじゃないかという一種の希望的な気持ちもありますが、そういうふうに考えてお ります。

○鈴木寿君 私これはあとでお聞きしようと思っておったんですがね。銃砲を所持しておる者、許可をされて持っておる者、銃砲の数及び 人員、まあ猟銃についていえばですね、それぞれ相当な大きな数になっておるんでありますが、実際は狩猟等をやって免許を受けておる者 の数とだいぶ違いますね、だいぶ数が違うんです。これは別の角度から私はあとでお聞きしたいと思っておったのですが、何のために銃砲 の所持の許可を得たのかわからぬ、いまになってみればわからぬというようなものが相当数あるという、こういうことから私ちょっと心配 になったのは、さっきからのお話で、こういうものの中にその精神障害者なんかがかなりおってですね、いつどこでどういうふうな使い方 をされるかわからぬというような心配なきにしもあらずと思ったわけですね。これはあとで許可のことについてお聞きしますが、いま言っ たようなことからいっても、何とかやっぱりこれに対して、精神障害者なり異常といわれる人たちに対する対策というものを、全般的な立 場から講ずるとともに、さらにこの銃砲刀剣の所持なり、あるいは長官がお話しの逆転看のそういう人たちのチェックなりというものを的 確にやらないと、非常に繰り返して申し上げますが、われわれ心配なわけなんですね。正常な人が狩猟のために持っておる、あるいは何ら かの口的のために所持しておるという、これは何も心配する必要はないと思いますけれども、何をしでかすかわからぬというような人が、 もしかりにそういうものを持っておるというようなことになると、これはまあたいへんなことだと思うので、そこら辺で何かやっぱりもう 少しきちっとチェックできるようなそういうことを考えていかなければならないのじゃないだろうか、こういうふうに思うのです。
 たとえば、さっき厚生省の局長さんから、今後、施設に収容されない精神異常、精神障害者の対策としてセンターをつくるとか、あるい は保健所に精神科のお医者さんをどうするとかいうようなお話があったと思いますが、いまの状態からしますとですね、それはまあいつか はそういうふうになるかもしれませんけれども、現状はまだまだわれわれが安心できるような状態でなくて、さっきも言いましたように野 放しの者が五、六十万も六、七十万もおるのだと、こういうことでありますからね、依然として心配は絶えないわけなんですね。警察庁の 長官ね、あなたも何か的確な方法がないかというふうに心配しておられるということなんですが、こうあってほしいというような何かこう お考え等ございませんか、チェックのしかたについて。

○政府委員(新井裕君) ただいま申し上げましたとおり、私どももしろうとなりにいろいろ研究をいたしまして、一番ほんとうの問題は 、ほんとうは精神病質者の問題でございますが、これはいまの医学的ないかなる方法を用いても、事前に判定することはたいへんむずかし いということでございます。そこで問題は精神病者にしぼられるわけでありまして、これにつきましては厚生省にも強くお願いをいたしま して、できるだけ精神病者というものを的確に把握をしていただきまして、それをわれわれのほうに必要があった場合には教えていただけ る方法、全部をこっちへ通報するということは、患者の秘密の問題もありますからできがたいようでございますが、必要がある場合にそれ をチェックして教えてもらえる方法がないものかということでお願いをしておりますが、これはお医者さんに非常に強い反対があるのでご ざいます。反対の点ももっともな点がございますので、われわれとしてもやや漸進的にやっていかなければならないと思っております。た だいまいろいろ御意見のありましたことは、われわれとしても将来の研究課題として十分にこれから検討を続けてまいりたいと思っており ます。

○鈴木寿君 局長さん、市町村なり県の段階で、あるいは保健所等において、その地域等における精神病者はもちろん、精神障害、こうい う人たちのまあリストと言っちゃおかしいが、何か実態をつかんでおるというようなことございますか。

○政府委員(中原龍之助君) その全部の実態と申しますと、先ほど長官から申し上げましたとおりで、この精神障害者を警察のほうに通 報するという問題につきましては、いろいろ論議がございまして、現在精神衛生轡議会で検討中の課題になっておるのです。これは外国の 制度その他をいま全部取り寄せて検討中でございます。ある程度の精神病院に入院した愚者につきましては、たとえば措置入院者であれば 、これは全部衛生関係でつかんでおります。同意の場合におきましても、入院をした場合についてはそれは届け出るようになっておりまし て、ある程度のものはつかんでおります。

○鈴木寿君 保健所等でその区域の、これは一人一人全部というとあるいはむずかしいかもしれませんが、どこそこの何某というものはこ うこういう程度のものだというようなこともまだつかんでいないわけなんですか。まあ警察に知らせるとか知らせないとかということは別 にしてですね。

○政府委員(中原龍之助君) 結局その問題でございますけれども、そういう問題につきましては、たとえば病院等と連絡をとりまして、 退院者につきましては、その退院後、保健所が訪問指導したりなんかするような形で、いろいろ連絡を密にするというような形はとりつつ ございます。

○鈴木寿君 これはなかなかむずかしい問題だし、またデリケートな点も出てくるわけなんでありますが、まあ入院等の、いわゆる治療施 設のそういうところに入っている者、あるいはそこから出たというような者、これはすぐつかめるわけなんですけれども、その他の者につ いて何か実態をつかむようなことがぜひ必要だと思うんですがね。これはさっきお話の何とか審議会というようなことで、いまそういうこ とを検討しているわけなんですか、もう一度。

○政府委員(中原龍之助君) 先ほど、警察等の通報の問題につきましては、検討をいたしていると……。

○鈴木寿君 これはもちろんその家族の人たちの責任もありますし、したがって家族の人たち、あるいは親戚とか、そういう人たちととも に、これはまあ日常の生活をともにしておる者というような意味で、専門的なことはともかく、かなり正しい見方ができるんじゃないかと 思うんですがね。まあそういうふうな人あるいはお医者さん、保健所、それから警察官の方々、こういうふうな総合的な点でお互いに十分 連絡をしながら、やはり地域におけるこういうものを的確につかむ、そうして把握しておく。その入院させるとか、するとかということの 前に、まずそういうようなことが必要だというふうに思うんですが、いま検討しておるその中には、私がいま申し上げたような事柄につい ての検討はありますか、どうですか。

○政府委員(中原龍之助君) いま先生の言われたそのものずばりというものになりますと、現在はまだございませんが、その地域の精神 障害者をできるだけつかんでいくということにつきましては、保健所を中心にしていろいろ努力をしております。

○鈴木寿君 これはその保健所等の努力というのは、これはいま始めたばかりですか、これからやっていくというのですか、あるいはいま までやって、こういうふうにつかんでおるというような何か実績等がございますか。

○政府委員(中原龍之助君) これが、保健所が積極的にそういうようなことにつきまして踏み切りましたのは、昨年法律を改正してから でございます。それまでというものは、事実上保健所というものは地域の保健全般についていろいろやるということでやってはおりました けれども、実際上力を入れてほんとうに始めたのは昨年の法律改正からでございます。

○鈴木寿君 松澤先生何か……。

○松澤兼人君 関連してちょっと聞きたい。いま鈴木委員からいろいろとまあ精神異常者といいますか、精神病者といいますか、そういう 者と銃砲刀剣等による事故、その危険性ということについてお話があったのです。お話を聞いておりまして、ちょっとふしぎに思いますこ とは、まあ警察に御質問申し上げたいのですが、合法的に所持の許可を得ている者が、まあ精神異常者といいますか、あるいは精神病者で あって事故を起こしたものの件数、それからその所持者は正常であるけれども、家族に精神異常者、精神病者があって、それがおやじか兄 貴か知らないけれども、正常な所持者の銃砲刀剣を持ち出してまあ殺傷したと、事故を起こしたというもの、そうしてさらに、全く他人で ある者が、適法に所持を認められた者の銃砲刀剣を持ち出して事故を起こした。事故のほうから考えて、逆にこうルートを伝わっていきま すと、まあ所持している人は正常な人であるけれども、まあ精神的な関係から事故が起こったという場合が考えられるのじゃないかと思う んです。そうすると、所持をする人に対して、あるいは講習会を受けさすとか、あるいは精神の証明書を持ってこさせるとかいうことだけ でも、銃砲刀剣の事故というものを、完全にとはもちろん言えませんけれども、事故を防止するということが、非常にむずかしいのじゃな いかと思いますけれども、そういう事故の、いま申しましたような内容的な調査というものはあるのですか。

○政府委員(今竹義一君) まず第一に、適法に銃砲刀剣類を持っておりまして、それが精神病者であるということが後になってわかった というものでございますが、これは昭和三十九年中に七件、昭和四十年の上半期中に三件でございます。それから、適法に持っておる者の 家族が精神病患者であって、それで事故を起こした。あるいは適法に持っておる者と何ら関係のない第三者が精神病患者であって、それで 事故を起こしたという数につきましては、ただいまのところ精神病者の数はキャッチいたしておりませんが、一般的に精神病以外の形で申 し上げますと、まず、犯罪に供与されたもの、この供与犯罪の種別は、殺人、強盗殺人、強盗強姦、強盗傷害、強姦傷害、恐喝、これだけ に限定いたしておりますが、昭和三十九年の場合七十四件でございまして、これは猟銃の数で申しますと、七十四件でございまして、無許 可のものが二十一件、許可本人――所持許可を受けておる本人が犯罪しましたのが三十三件、家族、友人等は十一件、全くの第三者は九件 となっておりますが、この十一件及び第三者の九件のうち、何人が精神病者であるかということはキャッチいたしておりません。それから 、事故を起こしたもの、こういう犯罪に供与したものでなくて、事故を起こしたものでございますが、これも猟銃で申しますと、昭和三十 九年の場合百八十三件、無許可のものが七件ございまして、許可本人のものが百三十九件、家族、友人が十六件、その他の第三者が二十一 件でございまして、これも家族、友人のうち、及び第三者のうち何人が精神病患者であるかということは確認いたしておりません。

○松澤兼人君 一々それを、内容を分析して統計をつくるということはむずかしいことかもしれませんけれども、しかし、大きな事件でし たら大体わかるのじゃないですか。たとえば渋谷の事件、あるいは京都の、警官から拳銃を奪ったとかいったようなことはわかるわけでし ょう。そういうものは許可を受けて正当に所持しているものであっても、やはり犯罪を起こした直接の人たちは、どちらかというと正常者 じゃない、あるいは精神興常といったようなことだと思うのですが、そういう大きな犯罪というようなものに見られる所持の何といいます か、性格、あるいは正当な所持をしておるものかどうかということはわかるのじゃないですか。

○政府委員(今竹義一君) 私の聞いております範囲では、いままで精神病患者で持っておって、事故あるいは事件を起こしたというのは 全部所持許可本人でございます。精神病患者がその家族のもの、あるいは第三者のものを持ち出して、最近事件、事故を起こしたという例 は聞いておりません。すべて所持許可本人の場合でございます。

○松澤兼人君 京都の場合なんかはどうなんですか、少年であったと思うのですけれども、精神鑑定のほうからいえば、多少常人ではない というふうには考えられないですか。

○政府委員(今竹義一君) 京都の場合は、精神病質の少年であったと思いますが、これは警察官の挙銃を奪ってやったという例でござい まして、当時の医師の診断によりますと、病名は精神病質爆発性抑鬱症、こういうことになっておりまして、いわゆる精神病者ではないと いうことでございます。

○松澤兼人君 やはり問題を煮詰めていきますと、精神病者あるいは精神異常者あるいは家族にそういう人がいるかどうかということの実 情を的確に把握するということが第一番じゃないかと思うのです。許可を申請している本人は正常でありましても、家族にやはりそういう 危険な人がある場合においては、よほど銃砲刀剣の所持保管ということを厳重にしなければ、いつどういう事故が起こるかもしれないとい うことで、今度は保管の義務等につきましても改正が行なわれているようでありますけれども、五年目に一ぺんの更新の時期ももちろんチ ェックする一つの方法でありましょうけれども、そういう危険を犯す心配のある銃砲刀剣をある家庭に許可するということは、よほどその 周囲を考えて許可しないといけないのじゃないかと思うのです。これはもちろん結論的にいって、だれが精神病者であるか、あるいはまた 、その血統に精神病者があるかどうかということは、これは現在の医学ではとうてい困難なことかと思いますけれども、そういうところま で突き詰めていかなければ、先ほどお話のありましたやはり運伝免許の問題も同様ですし、要は、これは警察の問題ではなくて、やはり厚 生省の問題といいますか、そういう精神衛生の面における国の施策の貧弱というところからくるものだろうと思うのです。鈴木君の質問を 途中あれしましたので、私は、ただもう少し、先ほどお聞きしました正当な所持者、そして家族の中の精神異常者と申しますか、そういう ものの関係、あるいは盗まれた関係、そういうものに対して、もう少し詳しい資料をお願いいたしたいと思います。

○政府委員(今竹義一君) 精神病者が所持許可を受けておりまして、事件、事故を起こしました例は、昭和三十九年及び四十年上半期の 分はございます。あとで差し上げたいと思います。なお、家族等につきましては、具体的の事件をもう一度調査しないと、ちょっと時間が かかると思いますので、後ほどまた申し上げたいと思います。

○鈴木寿君 厚生省のほうへお伺いしますが、さっきからいろいろお話もありましたし、お尋ねもしましたが、いまの日本で精神障害者等 に対する対策として、いわゆる精神病者、特に施設に収容して加療しなければならぬと、そういう必要とする者の対策が一つと、それから そうでない、いわば施設に収容されない者に対する対策と、おおまかに二つに分けて対策を立てなきゃならぬと思います。もう一つは医師 の対策ですね、精神科専門の医師の対策、こういうものをやはり早急に手を打ってやっていかないと、単に、いまぼくらが審議しておるこ の銃砲刀剣等の所持の問題だけでなしに、社会生活をやっていく上で、われわれがどうしてもそういうものの必要を力説したいわけなんで すがね。そこで、たとえばベッド数をふやすというようなこと、これは国としてどういう対策を持っておられるのか。あるいは精神科のお 医者さん、専門医を養成をし、あるいは各地に配置をするというような、こういうことについても国として何かやっぱりそれがなければな らぬじゃないだろうか。単にお医者さんになる人の個人の自由な選択にまかしておくということ以外に、国としてこういうふうにしなけれ ばならぬというようなものがあってしかるべきだと思うのですがね。そこら辺について何かお考えがあっておやりになっていらっしゃるの ですか、どうですか。

○政府委員(中原龍之助君) 精神衛生対策につきまして、結局施設に収容するのと、それから施設以外においていろいろの手を加えてい くのと、そういう面二つがあるのじゃないかという仰せごもっともだと思います。私どもそういうふうに考えて施策をやっておるわけでご ざいます。ベッドの問題につきましては、先ほども私申しましたけれども、現在なお超過収容の状態でありますし、ベッドがほしいという ことはわかっておりますので、そのベッドの増床対策といたしましては、補助といたしましては、いわゆる公的病院の補助というようなベ ッドに対する補助ということ。それから次に、公的以外のものにつきましては医療金融公庫を通じまして融資をして、ベッド増設をはかっ ていくというような対策を講じているわけでございます。そのほかに、いわゆる施設以外におきましては、最近、精神病の治療法というも のが進歩してまいりまして、非常に昔ほどではなく、わりあいになおるというようなことになってまいりました。したがいまして、施設に 全部収容するまでもなく、そういう外来でもなおるものは外来、通院医療をすると、そして治療を加えていく、保護観察を加えていくとい う制度がそこにとられたわけでございます。この制度を伸ばすために、そういう通院医療費については公費負担というものが法律の上でと られたわけでございます。そのほかにいろいろアフターケアの施設というものにつきまして、いろいろの方がいろいろのプランを持ってお られるようでございますけれども、これの実現につきましては、どういうような方法がいいか、種々検討をして、できるものから実現をし ていきたいという考え方でおります。
 それから精神科の医師につきましては、これは最近はわりあいに医師が精神科のほうに――医学部の学生が精神科を志望する者がわりあ いに多くなってきております。これは私ども学生の時代のように、精神科の医局員、せいぜい入って二、三人という状態ではなくて、一つ の学年で相当数が入っていくというような状態になっておりますので、見込みとしては従来よりも明るい見込みを持っておる。しかしなが ら、これを配置する場合に、どういうふうな具体的な配置ができるかという問題になりますと、これは医師全般の問題といたしまして、精 神病ばかりでなくてほかの医師も、いわゆる都市に集中してくるという傾向がございますので、これをいかにして、いわゆる適正な配置を するかということで、そういう全体の一環として、いろいろ努力しているわけでございますけれども、強制的にというわけにもなかなかま いらない面もございます。結局やはり、いわゆる辺地といいますか、あるいはいなかといいますか、そういう面においても勉強ができるよ うにというような面、あるいはまたそういうところの待遇の問題、いろいろの問題がからんで、むしろ強制的にやるということではなくて 、そういう面からいろいろやはり考慮していかなければならないというような状態でございます。これは医師のほうのいわゆる全体の問題 といたしまして、医務局とも相談をいたしましていろいろ考えておるところでございます。

○鈴木寿君 いまの精神障害者精神病者の公立の施設の状況と、それから今後そういうものを国の手で、単にベットの補助をしてやると かあるいは融資のあっせんをやるとかいうことでなしに、国の施設としてこういうものの施設をつくっていくという、これからの計画なん かございますか。

○政府委員(中原龍之助君) 現在全体の精神病院のベット数から比べますと、確かに国の施設、都道府県立、市町村立という公的のもの は少のうございまして、やはりそういう公的なものが十分にない県もございます。したがいまして、そういう県には優先的にひとつ補助し ていこうということで、大体年間二千三百床、去年が二千五百床――二千三百ないし二千五百床ずつ、まあ建設していくという状態でござ います。

○鈴木寿君 いまの二千三百ないし二千五百というのは、国の施設としてですか、それともあるいは公的の、県とかどこかの施設、あるい はそういうものに対する補助としてなのか、私お聞きしたいのは、国の施設としてやっていくという計画があるのかないのかと、こういう ことをお聞きしたがったんですがね。

○政府委員(中原龍之助君) これはいま私申しましたのは補助でございますから、これは都道府県立、市町村立、こういう公的なもので ございます。国の施設といたしましては、これは現在国立の療養所あるいは病院というものがございまして、一般のベッドも、徐々に国立 としてもふえつつあるのでございますし、あるいは病院等で、一部転換を要するものはそういう精神障害者の病床に転換をしていくという ような措置もとられつつございます。

○鈴木寿君 国の施設の中にあるベッド数、どのくらいですか、現在。

○政府委員(中原龍之助君) これは四十年十二月末はわからないですが、四十年の六月末で、このときの総ベッド数が十六万三千九百十 床、その中で国立のものは五千百九十三床、それから都道府県立が一万三千八百三十六床、その他市町村立、それから公的機関というもの を入れますと、こういう公的のものは全体で二万七千七百六十床という状態になっております。

○鈴木寿君 国の施設としてのこれの増強策をいま考えていらっしゃいませんか。

○政府委員(中原龍之助君) これは私のほうの所管と申しましては、どうも申しわけないのでございますが、所管でございませんで、医 務局が国というものについてのあれは、国立の療養所として精神床を所管していて、その面でいろいろ考えております。

○鈴木寿君 これは直接の所管で――私は、実はこれは所管が違うので、そのあなたに対して何のかの言うのは少しぐあいが悪いのですが 、政府として、直接担当している厚生省として、何かこういうことについて一つの方針なり対策をお持ちになっておるのじゃないかという ふうに思って聞いたんですがね。しかし、あれですね、いまお聞きしますと、四十年の六月の段階で十六万余あるベットのうち国立のもの は五千百九十三と、きわめて少ないというように思うのですがね。もっとこれの拡充策というものはおありだと思うので、それでこれから どういうふうにやっていくのかということをお聞きしたんです。そのことは、そうしますと医務局のほうでないとはっきりしませんか。

○政府委員(中原龍之助君) 結局この問題は医務局の、現在いろいろ療養所あたりで空穴があるというような問題があるわけであります 。したがって、こいうものをどういうふうにして一体利用していくかというような問題にかかっていくわけであります。で、一部におきま しては、もちろんこれは精神ベッドに転換をしていくということを考えておるわけでございます。

○鈴木寿君 ちょっと心細いですが、空床があるからこれをどうしたらいいかという観点に立って転換をも考えていくというようなお話で すが、直接の担当者でないから、私これ以上申し上げませんが、こういうものの対策を立てていく上に、これぐらいのベッドをふやさなけ ればいかぬとか、これぐらいに施設を拡充していきたいという、そういうものがあって、その中で考えていく場合に、いま、からになって いるベッドをどうするかということを考えていくのか、いわゆるこういうものに対する対策として考える場合には筋だと思うのですがね。 どこかにあいているベッドがあるから、これを何とかしようじゃないか、これを精神のほうに回そうじゃないかというようなことでは対策 として、(小林武治君「ある、ある」と述ぶ)それはあるでしょう。あるでしょうが、しかしあるというところを、たとえば国立のものは 五千しかないのだ、いま。これを将来一万にする、一万五千にするというような計画でもあるのか、ないのかということを私はお聞きした がったわけです。聞いてみるとどうもそういうものはありそうにない。(小林武治君「ある、ある」と述ぶ)小林前大臣から直接お答えを いただきましたから……。きょう私、何もあなた方を責める意味じゃございませんが、もっと私この問題に対して、国としては、単に銃砲 刀剣に関係するだけじゃないのだから、大きな問題ですよ。私取り上げて積極的な対策を樹立されんことを望む立場からやはりいま聞いて いるんですよ、だから何かそういうものがおありだったら、こういうふうにやっていきたいというふうに考えているとか、あるいは四十一 年度の予算にはこういうふうになっているというものが具体的にあれば聞かしてもらいたいと思っているのです。(小林武治君「あとで出 せ、あるんだから」と述ぶ)

○政府委員(中原龍之助君) このベッドの問題でございますけれども、これは一応そこに、先ほどあげました急を要するもの二十八万と いう数字は出してあります。その数字が全部つかめているかというとつかめていない。結局問題は、実施率を実際に把握して、それを収容 できるのがどのくらいあるかという問題のつかみ方に実際はなってくるわけでございます。当初は四十五年を目途といたしまして、全病床 数として二十一万五千床を目標にして現在まで進んできておるのです。その後の問題についてどうするかにつきましては、これはまああら ためて研究をしなければならない問題でございます。それがベッドの数になりますと、最近は一万五千から、去年は一万九千床もふえた、 そうすると、現在十七万床くらい、そうしますと、四十五年までにはその目標はあるいは達成し得るのではないかということももちろん考 えられておるわけです。そのほかに、いわゆる公的な病院、療養所と、それから公的以外のものをどうするかという問題がございます。公 的なものにつきましては、一応それを国立でいくか、あるいは都道府県立でいくか、そういう問題はいろいろございますけれども、いずれ にいたしましても、公的の病院はある程度やはり設置する、それが私立の病院でできないような分野は、やはり公的の病院でもってやると いうことが私は必要であろうということで、精神病院を持ってないような、あるいは公的なものが不足であるようなところに補助をしてや っていくという形をとっておるのでございます。
 国立のものにつきましては、実際にこれは空床があると申しましたのは、これは精神病床に空床があるわけではなくて、問題は、いま現 在結核の療養所というものが相当に空床があるわけです。それを空床なら空床のままとしておくかという問題がありますので、そういうと ころでいわゆる転換の条件がいろいろ種々整っていくという場合におきましては、これを精神病の療養所に転換をしていこうというような 考え方をとっているわけでございます。それでまあ大体昭和四十一年度では六百床程度が転換できるのではないだろうかというようなこと で、いわゆる国立の精神療養所として考えていく、これは種々の条件が整わなければなりませんので、そういう面から詰めていくというこ とでございます。

○鈴木寿君 まだわからないな、私ね、国として一体これ以上そういう施設を持つのか、持たないのか、おそらく持つだろうと思うから、 何かないかとお聞きしているのですよ。公的のことじゃなくて、国として持つものは公的のものと関係がありますから、あるいは場合によ っては私的なものと関係がありますから、そういうものを全体の上で国として一体どうするのか、現在の五千幾らというものをそのままに しておくのか、あるいは今度結核病棟のほうで空床ができたものを転換するものおよそ六百というふうに見当つけておられるようでありま すが、そういうもので事足れりとするのか、国として一体どうなんだ、これです、端的にお聞きしているのは、あるのかないのかという、 小林前大臣からするとあるような話ですから、あなたの話を聞くとさっぱりあるようでもないのですよ。

○政府委員(中原龍之助君) まことにあれですけれども、先生の言われるように、国として一体何ベッドつくるかということになります と、これは現在のところ何ベッドという数はないとお答え申し上げたほうが私は正直であろうと思います。しかし、国として現在の、いわ ゆる療養所なり、そういうもののあり方から考えて、現在、将来とも必要になるというものに、こういうものをもしも転換する条件が整う ならば転換をしていくということは、当然考えていいことであろうということで進んでいるわけでございまして、根本はやはり、私の病院 ばかりでなくて、公的な病院をつくっていくということで、国が何ベッド、それから都道府県が何ベッド、そこまではきめてない状態でご ざいます。

○鈴木寿君 このことに対して、私、端的にもう一度お聞きするのだが、国自身が公的とか、都道府県にやらせるとかいうことでなしに、 国としてやるという将来の計画というのはないということですね。私はそれではおかしいのじゃないかと思うのです。それ以上は私の議論 になりますからやめますが、私は、もっとこういうことに対して、都道府県とか、あるいは私的なそういう施設にまかせておかないで、国 としても、たとえば最近、重症の身体障害者に対する施設をあちこちつくる、こういうことをやっていると同じように、精神病者に対して もそういう施設をもっと拡充する必要があると私は思うので、そういう気持ちから何べんも繰り返して申し上げますが、何かこれからの拡 充対策というものをお持ちであろうというわけです。ベッドの転換とか、そういう程度しか考えておらぬということですね。どうなんです か、もう一度。

○政府委員(中原龍之助君) 現在のところ転換できるベッドを転換をしていくという状態でございます。

○鈴木寿君 私その問題については――厚生省どうもありがとうございました。これで終わりにします。

市川房枝君 時間がだいぶ進んでおりますので、簡単にお伺いしたいと思います。
 今度の銃刀法の改正の一つとして、銃砲の所持の許可の年令を二十歳にお引き上げになっておりますけれども、それの理由ですね。それ について、どの程度の効果を期待しておられるのか、まず伺いたい。

○政府委員(今竹義一君) 昨年来、神奈川県及び東京都の渋谷でライフル乱射事件という事件が発生いたしました。その被疑者の少年は 満十八歳になったばかりで、猟銃を二丁許可を得て所持をしているという事件が発生したわけであります。その事件にかんがみまして、そ ういう心身の未熟な少年に猟銃というような強力なものを持たせることはいかがであろうかということを検討いたしまして、狩猟免許も二 十歳というもとになっておりますので、それとの関連を考えて、二十歳ということにいたしたわけでございます。
 その効果がどうであるかということでございますが、端的に申しまして、それによってもうだいじょうぶだということにはならないかと 思いますが、少なくとも、二十歳未満というような少年の者に持さないというだけでも効果があろうかと、かように考えております。

市川房枝君 引き上げたことは私はいいと思うのですけれども、ただ未成年者で猟銃を持っているのが、全体で約五十万丁くらい持って いる人がいますね、その中でわずかに三百二十九丁にすぎない、それだけの人の禁止をするわけですね。それだけで一体効果があるかどう かといいますか、あのときの青年は精神異常者ではなかったということになりますか、あれは。

○政府委員(今竹義一君) 精神異常者ではございません。

市川房枝君 精神異常者でないということになりますと、私は、やはり火薬が自由に手に入るというか、ほかのケース、ほかの場合を考 えると、これは先ほどから問題になっておりました精神異常者というものを何とか考えなければいけない。この二つの問題については、今 度の改正では何も触れていないわけですね。その二つの点についてはどうお考えになっておりますか。

○政府委員(今竹義一君) 火薬の点につきましては、今度の改正ではその許可の仕事を知事部局から公安委員会のほうに移管を受けまし て、銃砲等を一元的に管理するように改正する案になってございます。もう一つの点はちょっと聞き取れなかったのですが。

市川房枝君 精神異常者に対しての銃刀法としてこれは何ら触れておいでにならない点。

○政府委員(今竹義一君) 精神異常者のうち、いわゆる精神病者につきましては、現在の法律におきまして所持許可をしてはならないと 、こういうことになっておるのでございます。それから精神障害者のうち、いわゆる精神薄弱者というのがございますが、これはこの法律 の第五条第一項、第二号に、「心神耗弱者」というのがございまして、精神薄弱者についてはそれで措置をする。精神障害者のうち第三番 目の概念として、精神病質者というのがあるのでございますが、これはいまさつき長官からも説明しましたように、たいへんにわかりにく い病気でございまして、起こってからわかるというようなものでございまして、他の法令でも精神病者というように規定してございますの で、この点については現行法のままでいいのではないか、こういうふうに考えたわけでございます。

市川房枝君 現行法でそういう人が許可を受けようとするときには、そういう精神病者でないという健康診断書をつけて出すのだという ことが、規定があるようですけれども、しかし申請する人が、自分が精神病者だというようなものをつけて出すはずがないのでありまして 、これは一応法文としては整っていても、実際的にはこれは私はあまり役に立っていないのではないかという心配をするわけですが、【略】