精神医療に関する条文・審議(その43)

前回(id:kokekokko:20050609)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、昭和62年での精神衛生法改正です。

社会労働委員会会議録第11号(109衆昭和62年9月10日)
【前回のつづき】
○堀内委員長 児玉健次君。
○児玉委員 日本におけるこれまでの精神障害者の対策は、精神障害者を長期にわたって社会から隔離するかそれとも放置しておく、こういった特徴を持っていたと思います。今回の改正案はいわば当然過ぎるほど当然の措置を何点か含んでいると私たちは考えております。
 そこで、もしこの改正案について十分な時間をかけ慎重に審議すれば、精神医療の今後の改善、向上に貴重な手がかりが得られるだろう、そう考えているだけに、このような短時間の審議については極めて遺憾である、それをまず冒頭に述べておきます。
 さて、時間もありませんから、私は手短に質問しますので、ぜひ御答弁も簡潔にお願いしたいと思います。
 本人の同意に基づく入院、これが今回の改正案の一つの重要なポイントでもあるだろう、こう考えます。患者の人権を擁護していく、閉鎖病棟に患者を隔離することで医師、看護婦等の不足をカバーするという現状を改めることが非常に重要になっていると思います。
 そこで、私は端的にお伺いしたいのですが、昭和三十三年十月二日事務次官通知「医師は他の診療科に比べて三分の一、看護婦等も少なくていい」この事務次官通知について、先ほど大臣の御答弁にもありましたが、精神保健をめぐる状況の変化、精神医学の進歩、それに伴って積極的な治療を行って患者の退院、社会復帰を促すことが可能になってきておりますから、この事務次官通知について見直すことが今必要になっているのではないか、こう考えますが、端的にお答えいただきたいと思います。
○竹中政府委員 精神病院の医師、看護婦等の配置基準でございますが、精神病の場合、慢性疾患であり、また病状の急変が少ないということから、従来一般病院より緩和をされていたところでございます。しかし、最近におきます精神医療をめぐる状況の変化あるいは現場におきます業務量、人員配置の実態等を十分踏まえまして、今後検討してまいりたいと考えております。
○児玉委員 ぜひ速やかに、今局長からお話があったような検討をしていただきたいと思います。
 そこで、今回の改正に触発されてより充実した高度な医療を進めたいと誠実に願っている精神病院、そういうところで、これまでの看護基準、特二、特一、一類から三類、これをこの際、医療活動の必要から、その基準が求めている要員配置を十分に行って、看護基準をグレードアップしようとする、そういう動きを私は現場で幾つかお聞きしました。こういった看護基準のグレードアップについて、厚生省としてはその要請に積極的に対応すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○下村政府委員 精神病棟にかかわる基準看護につきましては、精神医療の特殊性等にかんがみまして、特例的な取り扱いを行ってきているというのはお話しのとおりでございます。入院比率の高い基準看護、特二、一といったものにつきましては、患者の症状等によりまして、看護婦の配置を厚くする必要がある場合に限って認めることにしているわけでございます。これは精神病棟の置かれている状況から考えまして、特二のような手厚い体制をとる場合には、患者の症状に対応した医療のあり方というふうなものを考えて、それなりの必要性が前提になっているということでございますので、その取り扱いについては、個々の事例に応じて適切に対応していきたいと考えております。
○児玉委員 私は精神医療における診療報酬の問題に入りたいと思います。
 御承知のように、この分野では患者の話をじっくり聞く、非常に時間をかけて辛抱強い努力を行う、このことが求められております。
 そこで、まず、政管健保における入院一日当たりの平均点数、精神科とその他の診療科を比較した場合に何点になっているか、お聞きします。
○下村政府委員 昭和六十年度の政府管掌健康保険の数値でございますが、入院の一人一日当たり点数は、入院全体の平均で千三百十二・二点、精神病院の場合ですと、甲表をとりますと七百三十七・一点ということになっております。
○児玉委員 私が先日伺った総合病院の場合、その総合病院の内科の一日の平均点数が約千六百点、精神病棟が八百点ですから、その比率は大体二対一、非常に低く抑えられております。それが治療なき収容隔離の一つの原因になっているというふうに私は受けとめております。
 そこで、もう少し踏み込んでお伺いしたいのですが、医師の面接、カウンセリングはたしか二百二十点だと私は聞いております。それから通院患者に対する看護婦等の訪問指導料は二百点ということになっている。
 ちなみに伺いますが、理学療法士が四十分以上かけて行う治療は何点でしょうか。
○下村政府委員 運動療法の複雑なものについてお尋ねだと思いますが、三百三十点ということになっております。
○児玉委員 ちょっとそのままいてほしいのですが、エコーの検査ですね、最も高度の医療機械を使ってのエコーの検査は何点でしょうか。
○下村政府委員 八百点でございます。
○児玉委員 そこで、これは大臣にぜひ聞いていただきたいのですが、辛抱強く患者の話を聞いて、十分時間をかけて、高度の専門性を持つ医師が患者の治療に当たる、それが時間に関係なく二百二十点と抑えられている。理学療法士の四十分の治療が三百三十点。それは私は高いとは言いません。それはそれでさらに改善される必要があると思うのですが、こういった精神医療における診療報酬が必ずしも実態を反映していない。
 大臣、もう一つ言いますと、熱心な精神科のお医者さんや看護婦さんたちは、現在の診療報酬で通院患者に対する訪問指導料は二百点という形で位置づけられております。長期にわたって入院している患者がそろそろ退院が可能になる。そのとき、私が行きました病院の医師、看護婦等は退院前に必ずその受け皿になる患者の自宅を訪問して、どんな部屋でこの後暮らすことになるか、どういう家族の中で励まされながら社会生活を送ることになるか、そういう訪問指導をやっているのですが、この訪問指導について、現在の診療報酬ではどのような点数が準備されているか、この点お伺いします。
○下村政府委員 一時帰宅については認められておりません。
○児玉委員 だからこの点は大臣に私はあえて申し上げたいのですが、精神医療の診療報酬について、やはりこの改正を契機にしてかなり思い切った見直しを将来にわたって行うべきだと思うのですが、いかがでしょうか、大臣。
○斎藤国務大臣 近年におきます精神医療の向上を踏まえ、また今回の法改正の趣旨を実現いたしてまいりますためには、精神医療にかかわる診療報酬についても検討をいたしてまいらなければならないと考えております。今後、医療現場の実態等を踏まえ、また中医協を初め関係の皆様方とも十分御相談をいたしまして、その改善に努力をいたしたいと思います。
○児玉委員 次に、既にけさからの質疑の中で出されておりますが、精神保健指定医制度の問題について一、二お伺いします。
 まず最初に伺いたいのは、これまでの精神衛生鑑定医、これは法律によれば、その同意を得て指定するということになっております。だからお願いする立場だったと思うのですよ。今度はそこが変わってきていますね。厚生省令で定めるところによる研修とはどんな内容、何日ぐらいの日数でどのような実施場所で行うのかというのが第一の質問です。
 もう一つの質問は、「厚生大臣が定める精神障害につき厚生大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験」こういうふうに法の中にはありますけれども、厚生省が出されている精神病のカテゴリーといいますか範囲は、精神分裂症、躁うつ病からアルコール中毒覚せい剤中毒、その他の中毒などなど非常に広範多岐にわたっております。それらについてすべて過不足のない臨床経験がもし求められるとすれば、この後新しく大学を出て精神科に入局されるお医者さんたち、もちろん五年の経験が求められておりますが、そういう指定医を生み出していくことは困難になるのじゃないか。ここは言ってみればレアなケースについては、かなり実情に見合ったそういう考え方が必要ではないか、こう考えるのですが、今の二点についてお答えください。
○仲村政府委員 指定医の指定要件としての厚生大臣が行う研修の内容が第一点だと思いますが、患者本人の意思にかかわらない入院でございますとか、著しい行動制限にかかわる判断を行う指定医として必要な患者の人権に関する知識等を身につけることを目的とするものでございまして、具体的には精神保健法等関連の法律、制度等を勉強していただくということ、あるいは最近の精神医療の動向でございますとか、精神障害者、精神病院に関するいろいろな事件等最近の精神保健をめぐる問題でございますとかいういろいろなケーススタディーについて御勉強いただくということで考えておりまして、現在のところ集中的に三日間程度ということで考えております。
 それから、(児玉委員「実施場所」と呼ぶ)時に決めてございませんが、普通の講習のような形でやる予定に考えております。
 それから、実務経験のお尋ねでございますが、おっしゃるように、すべての疾患を五年で把握するというのは非常に難しいことだと思いますが、例えばある施設については精神障害のうちでも一部の患者さんしか扱っておらないところがあるわけでございまして、そういうところだけにおられた方が他の種類の病院に行かれたときは、そういう形で申し上げますと、実務経験が足りないということでございますので、例えば措置に該当するような患者さんを十分診るとか、いろいろな一定の実務経験ということで考えております。
 実際の内容につきましては、私ども公衆衛生審議会等の御意見をこの後お伺いするようにいたしまして、余り過大な要求にならないように、今の御指摘もございますので、御相談をさせていただきたいと思うわけでございます。
○児玉委員 次の問題に入りますが、保護義務者の問題です。私たちの調べたところによると、今精神障害者の保護義務者をどのくらいの数で把握するかというのは困難がありますけれども、一つの調査によれば、保護義務者が非常に高齢化している。六十歳以上の方が五七・一%に及んでいる。それからこれらの保護義務者の年間収入が、社会全体の中で、どちらかと言えば低収入の部分に集中している。年収二百万以下の人が四一・四%、こういう状態です。その中で保護義務者は精神障害者に対する監督義務、入院している患者の引き取り義務、その他負い切れない大きな責任を今担っています。今度の改正案の中で保護義務者の責任を軽減する具体的な改善措置が見送られたのはなぜでしょうか。
○仲村政府委員 保護義務者につきましては、実態的に今おっしゃられたようなこともあろうかと思うわけでございますし、この法案を作成するプロセスでいろいろの御意見があったわけでございまして、ただいま御指摘のような保護義務の内容の問題でございますとかあるいは市町村長が保護義務者になること等についていろいろ御意見があったわけでございます。公衆衛生審議会でも御意見が出たわけでございますけれども、今回は結論を得るに至らず、引き続き検討を要すべき問題であるということでお示しをいただいたわけでございますが、この保護義務者制度というのは、我が国におきます家族制度とも大いに関連する問題でもございますし、直ちに今ここで法律の改正に盛り込むのは、私どもとしても無理ではないかと判断したわけでございまして、今後引き続き検討する事項の一つに入っておるわけでございます。
○児玉委員 この点は、この後の重大な課題であるということを指摘しておいて、それで私は具体的に求めたいのですが、保護義務者に対する社会的援助、高齢化しているし、どちらかといえば低収入の層が多い、そういう中で、例えば在宅看護手当のようなもの、それから長期に入院されている方が退院されようとする、そういう場合に生活準備金的な制度、これをこの法の改正を一つの契機として厚生省としてはぜひとも御検討いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○仲村政府委員 精神障害者が社会復帰する場合のいろいろの要件の一つとして、経済的な問題が非常に大きいということは、御指摘のとおりだと思います。ただ、おっしゃられましたような手当なり準備金等を私どもが今直ちに制度化するということにはなかなかおこたえしにくいわけでございまして、社会復帰を促進するについて、施設整備と同時に、そういう経済的な側面も大事だということの御指摘だということで受け取らせていただきたいと思います。
○児玉委員 この点の重要性は厚生省としても御認識のようですから、私たちは真剣な検討を強く求めておきたいと思います。
 そこで、最後の問題ですが、社会復帰施設の問題です。これも今度の改正案の中の重要なポイントの一つだと私たちは考えています。都道府県、市町村。そこで、まずお伺いしたいのは、社会復帰施設の今後の整備計画について、厚生省としては全国的なスケールで大体どのようなお考えなのか、お伺いします。
○仲村政府委員 この数年間で何カ所ということでの整備計画は持っておらないわけでございますけれども、先ほどから繰り返し御答弁申し上げておりますように、地方公共団体の積極的な取り組みのほかに、社会福祉法人でございますとか医療法人等が社会復帰施設を設置できるということで、私どもとしては、補助金をできるだけ獲得をいたしまして、その施策を伸ばしていきたいと考えております。
○児玉委員 ここの問題は、今老人医療の大きな変化によって保健所の機能がかなり大きく変わっておりますが、在宅の精神障害者を社会的に大きく包み込んで、さらに治療を進めていくというとき、重要なポイントがこの社会復帰施設の拡充整備だと私たちは考えております。今のお話だと、多少大まかでもいいから全国的な整備計画をお持ちだと思ったのですが、どうもそれをお持ちでないようだ。
 そこで、私は重ねてお願いしたいのですが、今度の法の中で、都道府県、市町村が社会復帰施設を設置することができるという努力規定になっておりますが、これは設置しなければならないという義務規定に変えるべきではないか、そしてあわせて国の補助、援助も、「予算の範囲内において、費用の二部を補助することができる。」こういう及び腰が整備計画を今手につかんでないということにつながるのですから、国の補助についても義務規定に改めることが必要なのではないか、こう考えますが、お答えいただきます。
○仲村政府委員 精神障害者の社会復帰施設の設置を義務規定としなかったのはなぜかというお尋ねだと思いますけれども、もちろん社会復帰の促進のために、国のみならず地方公共団体が積極的にお取り組みをいただくということは不可欠だと考えておるわけでございまして、そういう観点で法律には明定させていただいたわけでございますけれども、義務規定としなかったわけでございます。これは地方公共団体につきましても、いろいろ行財政能力の観点あるいは利用者の効率的な利用が図られるかどうかというふうな点も含めまして、全国一律に義務とするのはいかがかという御意見もあったからでございますし、同時に社会福祉法人、医療法人等の民間によります復帰施設の活用ということで対応していったらどうかということで、このようなことにさせていただいたわけでございます。
 同時に、社会復帰施設に対する国庫補助でございますが、もう既に今年度からも法律改正に先駆けまして幾つかの施設について補助を図るようにしておりますので、私どもといたしましても、今後ともこの方向で努力をしてまいりたいと考えております。
○児玉委員 やはり及び腰だと言わざるを得ませんね。どちらかといえば予算を要しない部分についてはかなり皆さんとしては突っ込んだ検討をなさっているけれども、予算を必要とする部分については事実上余り手をつけていない。
 そこで、時間でもありますから、最後に大臣にお伺いしたいのですが、一般的なこの後に向けての大臣の決意表明というのではなく、先ほど私は看護基準の改善の問題、精神医療における診療報酬の見直し改善の問題、今の社会復帰施設の拡充強化の問題など、国として当然行うべきさまざまな具体的な課題、この点では幾つかのヨーロッパの先進的な経験もございます。それらに向けて大臣としてこの後どのように努力を強めようとなさっているのか、この点の御所見をお伺いして、終わりたいと思います。
○斎藤国務大臣 今回の改正は二十二年ぶりの言うならば大改正でありますし、それはすなわち人権の擁護を一層推進をいたしてまいる、そして社会復帰を推進をいたしてまいる、こういう二大目標といいましょうか、課題を実現しようという改正でございます。これらに魂を入れていくということは、これから必要なことであり、その実現を円滑にいたしてまいるためにも、それらの周辺の問題等の改善ということを一層心してやってまいらなければならない、こう考えておりますので、その気持ちに立って努力をいたしてまいります。
○児玉委員 具体的な条件整備という形で魂を入れていただきたいと強く述べて、私の質問を終わります。
○堀内委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。
○堀内委員長 この際、本案に対し、稲垣実男君及び田中美智子君外一名から、それぞれ修正案が提出されております。
 順次趣旨の説明を求めます。稲垣実男君。
 
 精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案
精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案の一部を次のように修正する。
 
第一条中第十条の次に次の一条を加える改正規定の次に次のように加える。
 第十一条後段を削り、同条に次の一項を加える。
 2 都道府県知事は、前項の規定によりその指定を取り消そうとするときは、あらかじめ、指定病院の設置者にその取消しの理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えるとともに、地方精神保健審議会の意見を聴かなければならない。
 
第一条のうち第三十三条の次に四条を加える改正規定中第三十三条の三を次のように改める。
 第三十三条の三 精神病院の管理者は、第三十三条第一項又は第二項の規定による措置を採る場合においては、当該精神障害者に対し、当該入院措置を採る旨、第三十八条の四の規定による退院等の請求に関することその他厚生省令で定める事項を書面で知らせなければならない。ただし、当該精神障害者の症状に照らし、その者の医療及び保護を図る上で支障があると認められる間においては、この限りでない。この場合において、精神病院の管理者は、遅滞なく、厚生省令で定める事項を診療録に記載しなければならない。
 
第一条のうち第三十三条の次に四条を加える改正規定のうち第三十三条の五中「第十一条後段」を「第十一条第二項」に改める。
 
第一条のうち第五章の次に一章を加える改正規定のうち第五十七条第一号中「第二十二条の三第一項、第三項後段」を「第二十二条の三第三項後段」に改め、同条中第三号及び第四号を削り、第五号を第三号とし、第六号を第四号とし、第七号を削り、第八号を第五号とする。
 
附則第十五条を附則第十六条とし、附則第十二条から附則第十四条までを一条ずつ繰り下げ、附則第十一条中第八号を削り、同条を附則第十二条とし、附則第十条を附則第十一条とし、附則第九条を附則第十条とし、附則第八条の次に次の一条を加える。
 (検討)
 第九条 政府は、この法律の施行後五年を目途として、新法の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
 
○稲垣委員 ただいま議題となりました精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、第一に、医療保護入院の際の告知については、患者の症状に照らして支障があると認められる場合は、その支障が解消したときに告知できるものとすること。この場合において、その旨を診療録に記載するものとすること。
 第二に、罰則のうち、医療保護入院、応急入院及び仮入院の入院時の告知義務違反、任意入院者の入院時の説明等義務違反、医療保護入院の退院時届け出義務違反及び一定の行動制限を行った場合の診療録記載義務違反に係る過料を削除するものとすること。
 第三に、都道府県知事による指定病院の指定の取り消しについては、地方精神保健審議会の意見を聞いてこれを行うものとすること。
 第四に、政府は、この法律の施行後五年を目途として、新法の規定の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○堀内委員長 田中美智子君。
 精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案
精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案の一部を次のように修正する。
 
第一条のうち第九条及び第十条の改正規定のうち第十条第二項及び第三項中「低額な料金」を「無料又は低額な料金」に改める。
 
第一条中第十条の次に次の一条を加える改正規定を次のように改める。
 第十条の次に次の三条を加える
 (精神障害者社会復帰施設の基準)
 第十条の二 厚生大臣は、公衆衛生審議会の意見を聴き、精神障害者社会復帰施設の設備及び運営について、基準を定めなければならない。
2市町村、社会福祉法人その他の者が設置する精神障害者社会復帰施設については、前項の規定による基準を社会復帰事業法第六十条第一項の規定による最低基準とみなして、同法第五十七条第四項、第六十条第二項及び第六十六条の規定を適用する。
 
 (精神障害者社会復帰施設整備計画)
 第十条の三 都道府県は、厚生大臣が公衆衛生審議会の意見を聴いて定める精神障害者社会復帰施設の整備に関する目標を達成するため、精神障害者社会復帰施設の整備に関する計画(以下「整備計画」という。)を定めなければならない。
 
 (国及び都道府県の補助)
 第十条の四 都道府県は、整備計画に基づいて精神障害者社会復帰施設を設置した市町村、社会福祉法人その他の者に対し、政令で定めるところにより、その設置に要する費用の四分の三を補助する。
2 国は、次の各号に掲げるものに対し、政令で定めるところにより、当該各号に掲げる費用を補助する。
 一 整備計画に基づいて精神障害者社会復帰施設を設置した都道府県 その設置に要する費用の十分の五
 二 整備計画に基づいて精神障害者社会復帰施設を設置した都道府県、市町村、社会福祉法人その他の者 その設置に要する費用の十分の八
 三 前項の規定により補助した都道府県 その補助に要する費用の三分の二
 
附則第十五条を附則第十六条とし、附則第十二条から附則第十四条までを一条ずつ繰り下げ、附則第十一条中第八号を削り、同条を附則第十二条とし、附則第七条からを第十条までに規定を一条ずつ繰り下げ、附則第六条中「附則第四条」を「附則第五条」に改め同条を附則第七条とする。
附則第五条を附則第六条とし、附則第四条を附則第五条とし、附則第三条を附則第四条とし、附則第二条の次に次の一条を加える。
 (精神病院の人員等についての配慮)
 第三条  厚生大臣は、精神障害者等の適切な医療を確保するため、精神病院及び新法第五条に規定する指定病院に置くべき医師、看護婦その他の従業員の員数の増員並びに新法第二十九条の六(新法第五十一条において準用する場合を含む。)に規定する医療に要する費用の額及び新法第三十二条第二項(新法第五十一条において準用する場合を含む。)に規定する医療に必要な額の改善が速やかに図られるよう特別の配慮をするものとする。
 
○田中(美)委員 日本共産党・革新共同を代表して、精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案について、趣旨説明をいたします。
 今回の政府提案の改正案は、精神障害者の入院形態見直しと、社会復帰促進を行おうとするものであり、内外から批判されていた現行の精神衛生法を基本的には改善するものです。
 しかし、内容を見ると、どうしても見過ごせない問題点を持っています。
 精神障害者が、進歩した、まともな医療が受けられるようにすることが何よりも患者の人権を守ることとなりますが、このための改善が明確でありません。閉鎖病棟に患者を閉じ込めることで看護職員の不足をカバーしている現実を解消すること、及び内科等に比べて入院中の診療報酬が平均二分の一と低水準に抑えられているため、治療なき収容となっている現状を改めることであります。このためには、看護職員の配置基準の改善、精神保医療の診療報酬の改善が必要でありますが、このための計画がありません。
 次に、社会復帰施設は、地方公共団体等が「設置することができる。」となっております。また、その設置及び運営に要する費用は、国及び都道府県が「一部を補助することができる。」となっており、設置及び補助が義務化されていません。精神障害者の社会復帰のためには、五千施設が必要だと言われています。これを実現するために、国及び地方自治体が責任を持って計画的に設置する必要があります。
 次に、修正案の概要を説明いたします。
 第一は、精神障害者が十分な医療が受けられるよう、精神病院における医師及び看護職員の配置基準及び診療報酬の改善が速やかに図られるよう特段の配慮をすることとしております。
 第二は、厚生大臣が定める社会復帰施設整備目標を達成するため、都道府県は整備のための計画を定めなければならないものとします。
 第三は、この計画に基づく精神障害者社会復帰施設に要する費用については、国及び都道府県が補助しなければならないこととしております。
 以上が本修正案を提出する理由と修正案の概要であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をいただくようお願いいたします。
○堀内委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 この際、田中美智子君外一名提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。斎藤厚生大臣
○斎藤国務大臣 田中美智子君外一名提出に係る精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきましては、政府としては反対であります。
○堀内委員長 これより本案及びただいま提出されました両修正案を一括して討論に付するのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 精神衛生法等の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決いたします。
 まず、田中美智子君外一名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○堀内委員長 起立少数。よって、田中美智子君外一名提出の修正案は否決いたしました。
 次に、稲垣実男君提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○堀内委員長 起立多数。よって、稲垣実男君提出の修正案は可決いたしました。
 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○堀内委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
○堀内委員長 この際、本案に対し、戸井田三郎君外四名から、自由民主党日本社会党・護憲共同、公明党国民会議民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同の五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。沼川洋一君。
○沼川委員 私は、自由民主党日本社会党・護憲共同、公明党国民会議民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同を代表いたしまして、本動議について御説明を申し上げます。
 案文を朗読して、説明にかえさせていただきます。
  精神衛生法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるよう配慮すべきである。
 一 任意入院、応急入院等が新設されたことにかんがみ、これら制度の円滑な実施に努めること。
 二 社会復帰施設の整備等社会復帰のための施策の一層の推進を図るとともに、地域精神保健医療の推進に努めること。
 三 精神科ソーシャル・ワーカー等の専門家の養成とその制度化などマンパワーの充実に努めること。
 四 今回の改正の趣旨、今後の精神医療のあり方を踏まえ、診療報酬の面等において適切な配慮を行っていくこと。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○堀内委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 戸井田三郎君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○堀内委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、斎藤厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。斎藤厚生大臣
○斎藤国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。

本会議会議録第18号(109衆昭和62年9月10日)
○議長(原健三郎君) 精神衛生法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。社会労働委員長堀内光雄君。
    〔堀内光雄君登壇〕
堀内光雄君 ただいま議題となりました精神衛生法等の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、近時の精神医療等をめぐる諸状況の変化を踏まえ、国民の精神保健の向上を図るとともに、精神障害者等の人権に配意しつつ適正な精神医療を確保し、かつ、その社会復帰の促進を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、
 第一に、法律の題名を精神保健法に改めるとともに、その目的や国及び地方公共団体並びに国民の義務として、精神的健康の保持及び増進その他の精神保健の向上に関する事項について改正措置を講ずること、
 第二に、従来の精神衛生鑑定医制度を見直して精神保健指定医制度を導入すること、
 第三に、本人の同意に基づく入院を推進する見地から、任意入院を新たに法律上規定するとともに、保護義務者の同意によるいわゆる同意入院については医療保護入院として位置づけ、入院及び措置入院の解除に当たっては精神保健指定医の診察を要件とするほか、精神科救急に対応するため応急入院を新設する等、入院制度に関して必要な整備を図ること、
 第四に、入院の際には必要な事項を患者本人に告知するとともに、都道府県に新たに精神医療審査会を設けること、また、入院患者に対する行動制限のうち特に人権上重要な一定のものについては、これを行うことができないこととすること、
 第五に、精神障害者の社会復帰の促進を図るため、都道府県、市町村、社会福祉法人等は、精神障害者社会復帰施設として生活訓練施設及び授産施設を設置することができること、
 第六に、その他罰則等について所要の規定の整備を行うこと等であります。
 本案は、第百八回国会から継続審査となり、去る七月十六日の本会議において趣旨説明が行われ、本日の委員会において斎藤厚生大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を終了いたしましたところ、自由民主党より、医療保護入院の際の告知及び罰則等について修正案が、また、日本共産党・革新共同より、精神病院における医師及び看護職員の配置基準等について修正案がそれぞれ提出され、採決の結果、日本共産党・革新共同提出の修正案は否決され、本案は自由民主党提出の修正案のとおり修正議決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(原健三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。