精神医療に関する条文・審議(その55)

前回(id:kokekokko:20050714)のつづき。初回は2004/10/28。
平成5年改正の審議のつづき。

第126回衆議院 厚生委員会会議録第14号(平成5年6月2日)
○浦野委員長 次に、内閣提出、精神保健法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。衛藤晟一君。
○衛藤(晟)委員 精神保健法について質問させていただきたいと思います。
 精神保健対策は、精神障害者の社会復帰の促進に関する社会復帰対策と、医療を必要とする精神障害者に対して人権に配慮した適正な精神医療を提供するという医療対策、この二点から構成されておりますが、両者は精神保健対策を支える車の両輪として極めて重要なものであります。
 そこで、以下、精神障害者の社会復帰対策及び医療対策について質問申し上げたいと思います。
 まず、社会復帰対策について質問をさせていただきます。
 精神障害者の社会復帰対策は、五年前の昭和六十三年七月の法改正において、初めて精神障害者の社会復帰施設が精神衛生法から保健法に盛り込まれました。その意味で、前回の法改正にかかわったところの昭和六十三年というのは、精神障害者の社会復帰対策元年とも言うべき記念すべき年であったというぐあいに思います。
 しかし、その間、五年がたったわけでありますけれども、精神病院においてもいろいろなことがありました。過去においては宇都宮病院事件等の人権上の問題等もありましたし、今後の精神医療というのは、精神障害者の人権に配慮した適切な医療が望まれているというぐあいに思っております。
 そこで、この人権に配慮した適正な精神医療を確保するためには、入院を必要とする精神障害者に対して、しっかりと入院による適正な医療の機会を提供するということが必要でありますとともに、既に入院医療を終了して退院することが可能となった精神障害者については、速やかに退院をさせて適正な社会生活を営ませていくという、この基本的な考え方が重要ではなかろうかというぐあいに思っております。
 過去、厚生省が五十八年に行った精神衛生の実態調査によりますと、精神病院において入院中の精神障害者について、条件が整えば退院の可能性があるという回答をなされたものは全体の二二%というぐあいに聞いております。現在の精神病院における入院患者数、おおむね三十五万人でありますから、そうすると七万七千人の精神障害者の方が条件が整えば退院の可能性があるということになるわけであります。
 精神障害者の社会復帰施設は、精神病院において入院医療が終了した精神障害者が一日も早く社会生活に適応することができるように、日常生活上の訓練や指導などのサービスをきめ細かく提供するものでありまして、精神障害者の社会復帰の促進を図り、そして、精神保健法の目的を達成するためにもどうしても不可欠の施設であります。今後とも一層その整備を促進していくことは必要であるというぐあいに考えています。
 精神保健法の施行から見ますと、今年で丸五年を迎えるわけでありますけれども、これまでにおける精神障害者の社会復帰施設、精神障害者援護寮、精神障害者福祉ホーム、精神障害者授産施設等の整備状況というものを見ますと、援護寮は、昭和六十三年には施設五カ所、定員百名というのが、四年後には施設が四十六カ所、定員九百というぐあいになっております。それから福祉ホームの方は、六十三年には三十一カ所の施設、総定員が三百十名であったものが、四年後には施設数で六十四カ所、定員数で六百四十というぐあいになっております。それから授産施設の方は、六十三年には十二カ所、二百四十人、それが四年後には五十一カ所、一千名となっております。
 そうすると、これで全体措置できる方々というのは二千五百四十名というぐあいになるわけでありまして、条件が整えば退院の可能性があると見込まれる方々が七万七千人いらっしゃるということになると、このギャップは余りにもひどいわけであります。五年間たった今も、昨年を見ましてもこういう状況でありまして、ことしも大分この施策というのは進もうとしているところでありますが、飛躍的にふえているというような状況ではないわけであります。
 これだけ社会復帰施設というものに五年間力を入れて努力をしてまいりましたけれども、そういうところは評価するのでありますが、いまだ大変な不足を来しているというのが実情ではなかろうかと思います。今後とも積極的に整備を促進していく必要があるというぐあいに思うところであります。
 しかし、先ほどから申し上げますように、数値で見ると、七万七千の対象者と現在措置している二千五百四十名というのでは余りにも差があり過ぎる。進展が遅々として進んでいないとも言えるわけでありますので、その原因は何であるというように考えるのか。また、今後とも精神障害者の社会復帰の促進を図るために、積極的に施策を展開していかなければいかぬと思うわけでありますけれども、これにつきまして厚生省の御見解を承りたいと思います。
○谷政府委員 精神障害者の社会復帰施設の重要性につきまして、ただいま先生からるるお話がございました。
 前回の法改正において、初めて精神障害者についての社会復帰施設を法律に規定をしたところでございますが、私どももその整備促進というのは非常に重要なことだというふうに認識をしております。ただ、今お話ございましたように、確かに他の障害者の施設等に比べますと、まだ非常におくれているということでございます。
 その原因でございますが、その一つには、これらの施設の運営費に係る設置者負担というのが今まであったということがあるのではないか。それから、一般的と申しますか、全般的に精神障害者に対する国民の理解というのが現場においては十分でないというようなことで、施設がなかなかできないというようなこともあって、必ずしも整備が十分進んでいないのではないかというふうに考えられるわけでございます。
 この設置者負担の問題につきましては、平成五年度から運営費の設置者負担が地方交付税の手当てによりまして解消されるということでございますので、これによりまして社会復帰施設の経営の改善というものが図られ、また今後整備が促進をされるというふうに期待をいたしております。
 また、今回の法改正におきましては、精神障害者の社会復帰の促進に関連いたしまして、いわゆるグループホームというものを法定化をいたしまして、前回の改正のときには精神医療施設から社会復帰施設へという一つの流れのもとに改正をさせていただいたわけでございますが、さらに社会復帰施設から地域社会へという流れをつくっていきたいというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、精神障害者の社会復帰の促進ということにつきましては、今後とも国民の皆様の御理解を得ながら進めていきたいというふうに考えております。
○衛藤(晟)委員 平成五年に運営費の設置者負担というのが解消されたということで、私も大変よかったなというぐあいに思っています。これでぜひ一気に施設整備が加速されてもらいたいものだと思っております。
 ただ、私どもの県では前からこれと全く同じ状態になっていまして、精神薄弱者の適所授産施設、これなんかは父兄がお金を出したり、あるいは民間の方がお金を出して社会福祉法人をつくって、県下に十七カ所ぐらい一気に整備されたのです。そういう整備の勢いが精神薄弱者の適所授産施設のときにはあったのですけれども、精神障害者のこのような施設につきましては、まだまだ整備していこうという勢いみたいなものがないような気がして、どうももっと何か考えなければいけないのかなという気がいたしております。私どもも一生懸命これを考えてまいりたいと思いますが、ぜひいま一度お考えいただきたいなと思っています。
 また、このような社会復帰対策が円滑に進展しない原因の一つに、残念ながら国民の精神障害者に対する社会的な偏見がまだまだ残っているなという感じがするのであります。もちろん先ほど言いました精神薄弱者につきましても相当ありましたけれども、それはもう非常になくなってまいりました。そういう中でやはり施設も整備されてきたのだろうと思うのですね。ですから、ぜひともこのような社会的偏見をなくすという方向をもうちょっと検討しなければいけないのじゃないかなという感じがいたしております。
 国連の障害者の十年を経ましたし、新たな十年間に向かって私どもも頑張らなければいけないという年になったわけであります。その最初の年でありますし、障害者対策のあり方に対しましても、去る一月には中央心身障害者対策協議会の方から総理に提出されました「「国連・障害者の十年」以降の障害者対策の在り方について」と題する意見書においては
障害者対策については、今後とも行政が中心となって取り組んでいくべきことは言うまでもないが、住民、企業、団体等社会の全ての構成員が、障害者を取り巻く諸問題を理解し、主体的に取り組むことが必要であり、特に市民が全員参加により取り組んで行かなければならない。
とされています。今後における精神障害者の社会復帰対策を推進する上においても、この意見書に示されたごとく、国民のすべてが精神障害者の社会復帰に対して理解を示し、協力をしていくということはやはり非常に重要だなと、先ほどから申し上げましたように私は考えているところであります。
 厚生省においても、今後とも積極的に啓発広報活動を推進していくべきであると考えますけれども、それにつきまして見解をお伺いしたいと思います。
○谷政府委員 精神障害者の社会復帰を促進していく上で、国民の理解あるいは御協力をいただくということは不可欠なことだと考えております。
 精神障害者の社会復帰に関するいわゆる広報活動と申しますか啓発活動につきましては、従来から精神保健普及運動の実施ですとかあるいは全国大会の開催、あるいは保健所、精神保健センターにおきます知識の普及等を行ってきたわけでございまして、これらについては引き続き力を入れていきたいと思っております。
 また、ことしの八月でございますが、我が国において初めて世界精神保健連盟の世界会議が開催をされることになっておりまして、私ども厚生省におきましても、その開催に対しまして予算措置をいたしまして支援をしていくことになっております。こういうことを機会にさらに国民の理解が深まることを期待をいたしております。
 また、今回の法律の改正におきましても、精神障害者の社会復帰に関連して、啓発広報等を行う民法法人を精神障害者社会復帰促進センターとして厚生大臣が指定できるというようなことにいたしているところでございまして、これらの施策を通じて国民の理解を一層深めてまいりたいと思っております。
 また、今回御提案させていただいておりますこの法案の中でも、いわゆる資格制限の問題に関連いたしまして、従来絶対的な欠格事由でございました、先ほどもここでお話のございました調理師とかあるいは栄養士等につきまして、相対的な欠格事由にするというような内容も盛り込ませていただいておりますので、そういうようなことも含めて、精神障害者に対する差別とか偏見とかいうものをできるだけ少なくしていくように努力をしてまいりたいと思っております。
○衛藤(晟)委員 この医療対策の中において、精神障害者という言葉の中に精神薄弱者も入っている。これはもともと議論されているところでありますけれども、この精神薄弱者という呼び名、精神障害者という呼び名、これは私どもこの前精神薄弱者の運賃の問題をやりましたときにも、各方面でも結構よく把握してないというか誤解というか、そういうものが出たところであります。
 この精神薄弱者、それから精神障害者という呼び方についても、今いろいろな議論がされておるようでありますが、余り誤解を招かないような、もっとわかりやすいいい呼び名はないものかなというように思っておりますから、厚生省においてもぜひ御検討いただきたいなというぐあいに思っております。
 今、精神障害者の範疇の中に、医療という面、精神病院という面の中では精神薄弱者も入っておりますので、それをひっくるめた扱いというようなことになっています。もちろん医療面からだろうと思いますけれども、そういうこともひっくるめて、どうも精神薄弱者、精神障害者、体の方は身体障害者と言うわけであります。ところが、IQが低い人たちは、精神障害者と言わなくて精神薄弱者と言う。そういうところで呼び名にも、いろいろな問題があるようでありますから、ぜひこれは将来に向けて呼び名の検討をしていただきたいというように思っております。
 それから、ちょっと外れますけれども、精神薄弱者について質問をさせていただきたいと思います。
 精神薄弱者につきましては、相当いろいろな面で施策も進んできたというぐあいに思っております。そんな中で今一番困っていますのが心身障害者の早期発見、それから早期療育であります。
 お母さん方が子供さんをどうもおかしいなと思う。それでお医者さんとかいろいろなところへ行くと、障害者ですよ、あるいは知恵おくれの子供さんですよという話を聞く。そこで、おろおろして、一応保健所だとかいろいろなところはあるのでありますが、総合的に指導したり療育したりする施設が非常に乏しいのですね。全国的にも療育施設の充足率というのは極めて低いわけでありまして、十カ所か十一カ所、そういう感じだったと思いますけれども、そういう整備なんですね。
 そういう状況の中で、私は、心身障害者の早期発見、早期療育というものを早くすることによって、障害の程度を軽減できるというとあれですけれども、ある程度機能回復することはできるというぐあいに思うのですね。それはそうできておるわけでございますから、ぜひ医療機能を備えた総合的な療育施設の整備を促進しなければいけないというように思っているのです。そういう制度は一応あるのだけれども、なかなか整備が進んでいかない。
 あとの面では、精神薄弱者の施設は、学校から、あるいは卒業していきますと適所の授産所からグループホームから福祉ホームから、あるいはいろいろな収容施設、更生施設を入れて相当整備もされ、就労面では若干おくれているかもしれませんけれども、大分進んできたと思うのですが、非常な立ちおくれはこの早期発見、早期療育の医療機能を備えた総合的な療育施設の整備だと思っておるのです。これについてどうお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
○清水(康)政府委員 お答えをいたします。
 心身障害の早期発見、早期療育というのは御指摘のとおり大変重要な問題であると考えておりまして、福祉と医療の連携というふうな意味からも、特に医療機能を備えて、心身障害の診断、検査、判定ということを行うとともに適切な療育訓練を行う、そういう施設が必要だということで、実は昭和五十四年度からでございますが、心身障害児総合通園センターというふうな事業を行っているわけでございます。
 ただ、御指摘のとおり、現在このセンターは全国に十一カ所程度ということでございますが、設置基準がやや厳しかった点もあるのではないかというふうなことから、ことしの三月に基準を若干緩和いたしました。例えば規模ですと、人口規模でそれまでおおむね三十万以上の市ということだったのですが、おおむね二十万程度の市でもいいというふうなこと、あるいは、それまでは肢体不自由児通園施設、精神薄弱児通園施設及び難聴幼児通園施設、この三つを全部備えること、三つが必置だ、こういうふうなことであったわけでございますが、今回からこれらのうち二種類以上でいい、そういうふうな緩和もいたしております。
 いずれにしましても、心身障害児総合通園センターというものの必要性なり重要性というものは十分理解をしているつもりでございますので、その整備について一層努力してまいりたい、そう考えております。
 一部、民間でそういう動きがあって、自治体の設置しか認められないのはおかしいではないかという御意見がございますが、実は相談、検査部門はいわば診療所という位置づけになっておるものですから、診療報酬で賄うという原則になっております。しかし、その部分はどうしても運営面からいいますとやや赤字になりがちだというふうなこともございまして、経営、運営の安定ということから自治体設置ということを基本にしているわけでございますが、仮に民間でいろいろ御協力をいただければ、例えば自治体が設置したものを、いわゆる公設民営といいますか、運営を民間にお任せする、お願いするというふうなやり方もあるかと思います。いろいろ研究して、ぜひ整備を進めてまいりたいと思います。
 それからなお、最初に用語の問題の御指摘がございましたが、確かに親の方々から、精神薄弱、精神が薄いとか弱いとか何だ、少しいい名前がないかというような御指摘、御意見はいろいろいただいております。最近、外国でも用語が、例えば英国ではインテレクチュアル・ハンディキャップ、知的障害というふうな言葉を使ったり、アメリカの方でもディベロプメンタル・ディスアビリティーというのですか、発達障害という言葉にかえたり、いろいろそういう動きがございますが、これがいいという最終的に一致した御意見というのはまだないものですから、これからも引き続き適切な用語をどうすればいいかということについてはぜひ研究をしてまいりたい、そう思います。
○衛藤(晟)委員 よくわかりました。ことしは基準の緩和をしてくれたところでありますし、そういう意味で私ども期待をいたしておりますけれども、十四年間で十一カ所の整備というのは、これは私は本当に考えなければいけないと思うのですね。
 設置主体が都道府県あるいは政令指定都市、あるいはことしからまた三十万というのを二十万以上の市ということにして、そこに補助ができるということにしておりますが、先ほど言いましたように診療所部門は相当な赤字が見込まれる。これをバックアップする一つの方法として、公設民営も進めてみようというお話が今ありましたが、そういうのも確かに一つのすばらしい方法だと思います。しかし、もっと何らかの形で促進できるようなことをぜひ考えていただきたい。
 あと、精薄で特に残っていますのは療育部門です。早期のころからちゃんとしたお医者さんの診断や検査や判定、それから御指導をいただきながら、お医者さんの指示のもとにちゃんとした療育訓練を行っていく、これは明らかに残った分野だというぐあいに思います。これは医療と福祉の両方にかかわる難しい部分もあろうかと思いますけれども、地方自治体の方は医療と福祉は別に分かれていますが、国の方は厚生省一本であります。これをちゃんと進めていただけるのはやはり厚生省しかないというふうに思っておりますので、ぜひもっともっと積極的に整備できるようにお願い申し上げたいと、要望申し上げる次第でございます。
 さて、精神障害者の問題に返りたいと思います。
 保護義務者制度につきまして、議論の末にその名称を保護者とするようになったわけでありますけれども、私もこれについては大変な評価をいたしているところでございます。保護義務者は、精神障害者の身近にあって精神障害者に対して適切な医療や保護の機会を提供するものでありまして、代替制度が存在しない現状においては、精神障害者の利益を擁護する重要なものである以上、存続せざるを得ないであろうというぐあいに考えております。
 しかし、現実にその保護者となっている方々の御苦労を見ておりましても、本当に大変なものであります。以前、全家連全国精神障害者家族会連合会という精神障害者を抱える御家族の方の団体が生活実態等の調査を行いまして、日本の精神障害者と家族の生活実態白書というのを取りまとめていましたけれども、これによると、精神障害者に対して主としてお世話をしているのはその御両親や御兄弟でありまして、全体の七割以上を占めているということがわかりました。特にお母様、母親の方がお世話をしている場合が全体の過半数を占めているという状態にあります。
 また、精神障害者を抱える家族の世帯の年収を見ますと、三百万円未満の世帯が全体の約半数というぐあいになっています。また、御両親の年齢を見ると、五十歳以上の方々が全体の九割を占めているということになっているわけであります。
 これは、私も精薄の問題をずっとやらせていただきまして、精薄の問題と精神障害者の問題は、施設整備がやはり抜本的に違うところじゃないかと思うのですね。精薄の方々の親は若い、そして所得も平均するともっとありますね。そういう中で、思い切って社会福祉施設に対して皆でお金を出してでもつくりましょうという機運がありますけれども、精神障害者については、親の実態からいってもちょっと難しいのですね。そういうぐあいになっています。
 まあ話はそれましたけれども、このように、精神障害者を抱える家族においては大変多くの御苦労があることがわかるわけであります。厚生省におきましても、これを支援するための施策の充実が必要じゃなかろうかなと思っております。
 今回の法改正において、保護者の支援及び負担の軽減に関しましてどのように配慮したのか、また、その該当内容を明確に示していただきたいと思います。そして、今後とも保護者制度というのは家族の状況等を十分に踏まえつつ検討していくべきではないかと思いますが、それについてお答えをいただきたいと思います。
○谷政府委員 今回の改正におきましては、保護義務者という名称を保護者に変えるということを一つお願いをしているわけでございますが、具体的な保護者に対する負担軽減の問題ということに関しましては、入院措置が解除された精神障害者を引き取る保護者に対する支援を充実するという観点から、新たに精神病院あるいは社会復帰施設に対しまして保護者の方が相談や援助を求められるよう、保護者のいわゆる権利規定というものを設けたわけでございます。また、精神障害者と同居する保護者の方を保健所の訪問指導等の対象として明確化を図ったところでございます。
 なお、この保護者制度あるいは従来の保護義務者制度につきましては、ただいま申しましたような精神障害者を抱える家族の負担を軽減するということから、当面支援策を充実をしていくということが重要だというふうに考えているわけでございますが、今回の法案の作成をする際のもとになりました公衆衛生審議会の意見書におきましても、この保護義務者制度のあり方については、やはり検討を行っていくことが必要であるということが言われているわけでございまして、今後私ども、関係の団体の御意見等も伺いながら、どういうような改善の方法があるのか、研究を進めてまいりたいというふうに考えております。
○衛藤(晟)委員 精神病院において、積極的によりよい環境において質の高い医療を提供していくということは非常に重要なことだと思っております。
 そこで、適切な精神医療をきめ細かく提供していくためには、医師、看護職員、作業療法士等が相互に連携を図って医療に当たるチーム医療を確立する必要があるというふうに考えていますが、それについてお答えをいただきたいと思います。
 また、そのためには、臨床心理技術者等の国家資格制度を創設し、その資質の向上を図る必要があると考えていますが、それについて御質問を申し上げます。
○谷政府委員 まず、チーム医療についてでございますけれども、特に精神医療におきますチーム医療の推進ということは、適切なあるいはきめ細かな精神医療を提供するということから大変重要だと考えておりまして、今後、職種の役割とか連携の方法等を明確にしていくといったような具体的な検討なり研究を行っていきたいと思っております。
 また、臨床心理技術者等の資格の問題でございますが、これの国家資格化につきましては、特に臨床心理技術者につきましては、現在検討会を設けて検討を行っております。また、当事者間の理解を得るということが必要でありまして、当事者間の内部の調整を行っておりまして、その結果が得られますれば適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
○衛藤(晟)委員 最後に、適切な精神医療を確保するためには、何よりも精神病院等における経営の安定を図るということが重要でありますが、先日精神病院の協会の方からお聞きしますと、経営が大変厳しくなっているというお話をお聞きしたところであります。このためにも精神病院に対する適切な診療報酬を確保するということが重要だと考えますけれども、それについてどう考えますか、御質問申し上げます。
○古川政府委員 適正な精神医療を確保するために、この精神病院等におきますところの経営の安定を図るということが大変重要であるということは、私ども御指摘のとおりであろうと思っておるわけでございます。
 それで、昨年四月の診療報酬の改定におきましては、精神医療関係におきましては、適切な医学的判断のもとで患者さんの病状に応じまして早期の退院あるいは社会復帰を促進し、患者さんの福祉の向上を図る、こういう観点から、通院患者またはその家族の方々に対しまして継続的に指導助言を行うというようないわゆる通院精神療法とか、あるいは精神科デイケアなど精神医療の専門性を評価したほかに、看護料を初めとして入院関連の診療報酬の引き上げを図ったところでございます。
 こういった病院の経営安定の確保については、こういうようなことで診療報酬の改定等を通じて対応を図っているところでございますけれども、今後とも患者の早期の退院や社会復帰を促進するという観点を踏まえまして、これは今月、六月に実施中でございますけれども、医療経済実態調査の結果等を見きわめながら対応し、全体として医業経営の安定の確保が図られるように私ども大いに努力をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
○浦野委員長 網岡雄君。
○網岡委員 今度、精神保健法の改正が提案されているわけでございます。前回の精神保健法の改正は、任意入院制度の導入と社会復帰施設の規定などを新しく設けることにより、精神障害者の人権擁護と社会復帰の促進への端緒をしるすものでありましたが、その際、国会修正として、五年後を目途に法の施行状況を検討し、必要な措置を講ずるとの見直し規定が設けられたところであります。私ども立法府といたしましても、ことしはその責任を果たさなければならない重要な年だというふうに認識をいたしているところでございます。
 しかし、残念ながら、この五年間の法の施行状況を見ますと、社会復帰施設の整備が低調であることに端的にあらわれていますように、精神障害者の人権擁護と社会復帰の促進という前回改正の趣旨からすれば、全く不十分であると言わざるを得ません。地域ケアの飛躍的な充実、総合的な福祉サービスの強化、さらには精神保健医療及び福祉に係る公的補助の増額などを見直しの基本的な立脚点とすべきであると考えます。
 この観点に立って、見直しの重要項目として、一つは社会復帰施設の抜本的な充実整備、二つ目には適切な精神障害者の定義、家族に過剰な負担を強いる保護義務者制度の洗い直し、精神医療審査会の改革、大都市特例の実現などが含まれる改正を、私ども社会党も検討小委員会をつくりまして、政府、厚生省に求めてきたところでございます。
 その視点に立って、以下若干の御質問を申し上げたいと思います。
 まず、先ほども質問がございましたが、今回の改正において、精神障害者の定義に国際疾病分類にない前回と同じ精神薄弱、精神病質を明記された理由は一体何か。
 三月十七日に公衆衛生審議会が答申をしておるわけでございますが、この項につきましては、「精神病者、精神薄弱者及び精神病質者」との規定は「国際的な疾病分類や用語の慣行と照らして適切でなく、また、疾患・病態の範囲が不明確となったり、誤解を招いたりするおそれがある」との指摘がありまして、さらに加えて「例えば、「精神疾患を有する者」とすること」を検討すべきであるといたしておるのでございます。
 そのことからいきますと、先ほども申しましたように、前回と同じような精神薄弱及び精神病質が今度もまた明記されているというのは一体いかなる理由に基づくものか。公衆衛生審議会の答申の内容から見ますと、私ども若干の疑義を挟むものでございますが、この点について厚生省の見解を問います。
○谷政府委員 今回御提案をさせていただいております法改正案の中では、精神障害者の定義につきましては、第三条の定義を「精神疾患を有する者」ということに変更するということをお願いしているわけでございます。
 この考え方につきましては、医学上の用語に合わせてより適切な表現とする、あるいは対象範囲を明確化するということを目的といたしまして、また、公衆衛生審議会の答申にもございますような国際疾病分類との整合性をとるという考え方から、「精神疾患を有する者」としたわけでございますが、ただ、この趣旨を広く一般の国民の方に理解をしていただき、また、従来の定義と範囲が変わったのではないかというような誤解を生ずることがないように、従来から定義規定にありました中毒性精神病、精神薄弱、精神病質という疾患名を例示として残したものでございます。
 この趣旨を周知徹底するために、本法案の成立後、施行までの間に十分関係方面に周知徹底をしていきたいというふうに考えております。
 ただいま先生が御引用になられました公衆衛生審議会の意見書の中でも、今私が申しましたような趣旨で、「精神疾患を有する者」というふうに定義を変えることが適当ではないかという意見が述べられているというふうに理解をしております。
○網岡委員 簡単に再度お尋ねをいたしますけれども、やはり公衆衛生審議会の一番ポイントのところは、「例えば」という表現でございます。「精神疾患を有する者」とすることについて検討せよと改めて明言をしているところでございます。先ほども御質問がございましたように、今回はこれとして、一般社会での認識というものが一応のレベルに達したというような段階にこれから入っていくと思うのでございますが、そういうこともあわせ考えてこの定義について適当な時期に見直しをする、こういうようなお考えはありますか。
○谷政府委員 今回の改正につきましては、医学界で使われている言葉、それから国際疾病分類との整合性というようなことで「精神疾患を有する者」といたしましたが、ただ、従来から使われている言葉を例示として残したということでございます。今後このような新しい言葉が定着してくることをもちろん私どもは期待をしておりますし、またそのために十分周知徹底を図っていくつもりでございます。
 今後の医学界なり関係方面の御理解、あるいは精神障害者対策、精神保健対策の進展の状況というものを勘案しながら、この問題には対応していきたいと考えております。
○網岡委員 適切な対応を望んでおきます。
 次に、保護義務者の自傷他害の防止の役割が家族にとって非常に大きな負担になっているのは御案内のとおりでございますが、この項を削除するという考えはございませんか。
 精神障害者の家族というのは一般的に言ってかなり高齢者の方が多いわけでございますが、こういうことからいきますと、自傷他害の監督義務を負っていくということは至難と言っても決して過言でない状況にあるというふうに思います。そういうことからいえば、この自傷他害の防止という義務が課せられていることは家族にとってかなり過酷であるというふうに思うわけでございますが、この点について改めて厚生省のお考えをお聞きいたします。
○谷政府委員 精神障害者は、その疾病の特殊性ということから、本人の病識を欠き、医療の機会を逸するというようなおそれがあるわけでございまして、そういうことから、精神障害者の利益を擁護するということのためには、身近にあって適切な医療あるいは保護の機会を確保する役割を果たしていただく方がどうしても必要なわけでございます。
 特に、自傷他害のおそれのある精神障害者に対しましては、速やかに身近な保護者あるいは保護義務者が適切な医療、保護の機会を確保する必要があるということから、現在直ちに保護者に与えられましたこの自傷他害防止の役割規定を削除することは困難であるというふうに考えているわけでございます。この保護義務者制度全体の問題につきましては、かねてよりいろいろな機会に議論をさせていただいているわけでございますが、現時点で今お話しのような保護者の役割の削除というのは、非常に難しいというふうに私どもは認識をしております。
 ただ、保護者の負担を軽減をするということから、社会復帰施設の整備を促進をするとか、また今回法案の中に提案をさせていただいておりますが、入院措置が解除された精神障害者を引き取る保護者につきましては、社会復帰施設あるいは医療施設に対して相談をする、あるいは必要な援助を求めるといったような規定を設けているところでございますし、また同様に、入院措置が解除されました精神障害者と同居する保護者の方につきまして、保健所が行います訪問指導の対象として規定をさせていただいたところでございます。
○網岡委員 それでは、同じような内容でございますので、次の質問に移ります。
 先ほどもございましたけれども、確認をする意味でお尋ねいたします。今回、保護義務者を保護者と改める意味についてお伺いをいたしたいと思います。
 そして、これに関連をしまして申し上げたいのでございますが、同じく公衆衛生審議会は、この保護義務者の荷が非常に重いということを考えてだとは思うのでございますが、次のようなことを示唆いたしておるわけでございます。「家族等に代わる公的保護義務者である市区町村長の役割を重視することが必要であり、当面、担当職員の資質向上」云々と、こういうふうにあります。つまり、公的保護者として市区町村長がやはり担うべきである、こういう方向の内容を公衆衛生審議会は答申の内容として付しておるわけでございます。
 こういう意味からいって、この保護義務者の義務が抜けたということは、こういう公衆衛生審議会の答申の内容も踏まえながら、将来保護義務者についてのあり方を答申の内容に沿った形で見直しをする、こういう気持ちが厚生省の中にあるのかどうか、この辺についてもお答えをいただきたいと思います。
○谷政府委員 今回、保護義務者の名称を保護者と改めたわけでございますが、現実に振り返ってみますと、現在の保護義務者制度につきましては、いわゆる行政上の命令ですとかあるいは罰則規定があるわけではございませんので、今日の時点であえて義務ということを名称の中に強調をする必要はないのではないかということから、保護者というふうに改めることにしたわけでございます。
 一方、今お話がございましたように、現在の精神保健法におきましては、保護義務者になるべき者が存在しない場合、あるいは存在してもその役割が果たせない場合につきましては、市町村長が保護義務者となることとなっているわけでございますが、先ほどお触れになりました公衆衛生審議会の意見書の中でも、そういう実態を踏まえて、担当職員の資質を向上するべきだというような御意見がありますので、私どもとしては、今後そういう研修の機会というものをふやして、その機能の充実をしていきたいというふうに考えております。
 ただ、今お話がございましたように、今後の方向としてどうするのかということでございます。保護義務者制度につきましては、今後必要な検討というものをやっていかなければいけないというふうに思っておりますが、それは市町村長にするという前提ではなくて、保護義務者制度についてどういうふうに今後考えるのかということを、幅広く関係者の御意見も伺いながら研究をしてまいりたいということでございます。
○網岡委員 ちょっと局長の答弁ですが、言葉としては非常にスマートですけれども、一体どういうふうに中身がこれから変わってくるかということについては、私ども質問者には全然わかってこないわけでございます。
 しかし、もう次の時間がありますから、この程度にとどめますが、再度申し上げたい点は、公衆衛生審議会での答申というのは、先ほども局長から御答弁もございましたように、やはり検討していくという方向のものが書かれておるわけでございます。高齢化に向かっていく親の場合というのは、特に単身の場合もあるし、場合によれば老人ホームに入っている人たちなどもあるわけでございます。そういうことを全体的に眺めた場合には、公的保護義務者というものを思い切って前向きに考えていく時期に来ているのではないかというふうに思いますが、そういう方向で検討をさらに図られたいということを申し上げておきます。
 次に、大都市特例についてお尋ねをいたしますが、今回の大都市特例というのは、私どもに提案されました精神保健法の改正の中では、これは最も目に見える内容の改正点であるというような評価を実はいたしております。
 しかし、これは前回改正の積み残しになった嫌いもあるところでございますから、そういうかかわりを持った大都市特例というものを一たんやると踏み切った以上は、法律では平成八年の四月一日と、こういうふうに実施のスタートが規定されているわけでございますが、前からの問題でもあるわけでございますので、大都市特例のスタートをもう少し早める、こういうようなお考えがないかどうか、お尋ねをいたします。
○谷政府委員 今回の指定都市への権限の委譲ということにつきましては、各指定都市あるいは関係県に対しましてあらかじめ意見を求めたわけでございますが、いろいろな施行の準備等の関係から、おおむね平成八年度なら実施が可能だということが地方自治体の方からのお話でございました。そういうようなことから、施行期日を平成八年四月一日というふうにしたわけでございます。
 なお、最近、同様にこの大都市特例を導入いたしました精神薄弱者の福祉に関する事務につきましても、たしか二年半程度の経過措置が設けられているのではないかというふうに承知をしております。
○網岡委員 期日は決まっておりますが、早いことは幾ら早くなってもいいわけですから、ぜひひとつ全力を尽くして体制整備に向かっていただきたい、対応していただきたいということを重ねて要望しておきます。
 次に、精神障害者の社会復帰、そして社会参加を促進させるために、今回各種の資格制限等の見直しをすることになっているのでありますが、今回見直しを取りやめたものにどのようなものがあるのか、そしてまたその理由と、今後関係方面への働きかけを進めて、この資格制限というものを外すような努力を一体厚生省はどういうプログラムを持ちながらやろうとしているのか、この際お尋ねをいたします。
○谷政府委員 この資格制限の見直しにつきましては、やはり関係者の方の御理解というのがどうしても欠かせないものでございます。今回提案させていただきますものについては、関係方面との調整がついたというものからお願いをしたわけでございまして、栄養士、調理師等五つの職種でございます。
 今のお話ですと、見直しを取りやめたものにどういうものがあったかというようなお尋ねだったと思いますが、率直に申し上げまして、厚生省の関係では、理容師法及び美容師法につきまして改正を見送ることにいたしました。これらにつきましては、なかなか今回の改正までには関係者の間の御理解を得ることができなかったということでございまして、今後これらにつきましては、関係者の意見を十分にお聞きしながら、引き続き検討していく課題だというふうに考えております。
 以上でございます。
○網岡委員 ぜひこれは答申の内容からいきましても、床屋さんとパーマネント屋さんというところが見直しの取りやめということになったようでございますが、しかし、これからは、社会復帰を経て、そしてさらに幾つかの段階を経て社会に出ていくという、精神障害者の治療と社会復帰の施設についてのいろいろな段階をこれからつくっていくように本法案にも定められているわけです。
 したがって、それが本当に稼働していくことになりましたならば、そう心配をしなくてもいいような状態になる時期はかなり早いのではないか。そして、試験制度のあり方についても、やはりその辺は厳格にしていけばいいわけでございますので、その両面をあわせ考えながら、今言った理容師、美容師の点についてはできるだけ早い時期に、もちろん条件の整備が必要でございますが、そういうことを含めて、早くやってもらうように厚生省としては善処をしていただきたいということを要望いたしておきます。
 それから次に、厚生大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
 公衆衛生審議会において、臨床心理技術者、ソーシャルワーカー等の資格制度化について検討することとしているのでございますが、前回の改正時の附帯決議にも入っているにもかかわらず今回行われなかったのは一体なぜか、そしてまた、今後この問題についてどういうふうに対処していかれるのか、これらの点についてその見通しを明確に厚生大臣の所信としてお答えいただきたいと思います。
○丹羽国務大臣 まず、精神医療のあり方でございますが、御案内のように、チーム医療というものが大変重要なウエートを占めておるわけでございます。
 そういう中において御指摘の臨床心理技術者、さらにソーシャルワーカー等の資格化というものが要求されておるわけでございますけれども、これらの資格の国家資格化につきましては、当然のことながら当事者の理解を得る必要があるわけでございます。
 具体的に申し上げますと、臨床心理技術者につきましては、医師との関係のかかわりというものが実は問題になっておるわけでございます。それからソーシャルワーカーにつきましては、これが医療の職種であるかあるいは福祉の職種であるか、こういったような問題がなお調整として残されておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、公衆衛生審議会の中においてこの問題について触れられておられますし、また、前回の改正時において附帯決議でこの問題について取り上げていただいておるわけでございますので、ひとつできるだけ当事者間の意見の調整を行って、そしてその結果を踏まえまして、まとまり次第具体的な国家制度のあり方について検討を行っていく考えに立つものでございます。
○網岡委員 大臣の答弁にありましたように、それぞれの問題になっている条件をぜひ速やかに解消していただきまして、御答弁のありました方向で積極的にやっていただきたいということを申し上げておきます。
 そこで次に、社会復帰施設についてお尋ねをいたしたいと思います。
 前回の法律改正に当たりましては、宇都宮病院の例の事件を契機にいたしまして、精神病院から社会復帰施設へということの課題が出されたのでございます。しかし、このせっかくの社会復帰施設へということを提示しておきながら、社会復帰施設の五年間の進捗状況というものを見ますと、例えば県の段階で見ました場合に、全国で十の県が一つも社会復帰施設がない、こういう状況でございます。
 特に大県と言われる、経済的にも非常に恵まれた県とも言われている京都、そして、残念なことですけれども、私の出身である愛知などもこの十の中に入っておるわけでございます。このことが一つです。
 それからまた二次医療圏、精神障害の対策を考えていく場合には、やはり二次医療圏という一つの地域を踏まえながら整備していくということが主体だと思うのでございますが、たしか三百四十五の二次医療圏の中で、実に驚くことに四分の三の二次医療圏はいまだに社会復帰施設が未整備の状況でございます。辛うじて社会復帰施設が置かれたのは三百四十五のうちの四分の一しかない。しかも経過は五年たっている。
 こういう状況でございますが、この非常に少ないと思われる社会復帰施設の整備の状況は一体どういう原因に基づくものなのか。そして、五年前、精神病院から社会復帰施設へという課題を改正に当たって目標に掲げたのでございますから、その法律を推進していく立場にある厚生省の責任は極めて重いと私は思うのでございますが、この点についてどういう反省と認識を持っておみえなのか、お尋ねをいたします。
○谷政府委員 精神障害者の社会復帰施設につきましては、前回の改正によりまして初めて法律に規定され、その整備の促進を図るということでスタートしたわけでございますが、確かに今先生お触れになりましたように、その整備についてはまだ必ずしも十分でないということは十分に認識をしております。
 幾つかの理由があると思いますが、やはり一つは、従来この社会復帰施設につきましては、運営費に係る設置者負担というものがあったということがございます。それからもう一つは、全体として精神障害者に対する理解、そういうものが十分ではないという面があって、実際につくろうと思っても、現場でなかなかうまくいかない面があるというようなことがあったのだというふうに思っております。
 設置者負担の問題につきましては、平成五年度におきまして、地方交付税をもってその解消を図るという措置をいたしました。少なくともこの点に関しましては、設置者負担がなくなったということによって、今後大いに促進をされるというふうに期待をしております。
 ただ、先ほどお触れになりましたように、都道府県単位でもってまだないところがあるということは、私ども今後この法改正を契機といたしまして、改めて各県に強力に指導をしてまいりたいと思いますし、二次医療圏の問題につきましてもお触れになりました。これは二次医療圏ごとに作成をいたします地域保健医療計画というものの中で、これは任意記載事項でございますけれども、社会復帰施設についても盛り込むということを指導しているわけでございます。
 そういうことも含めまして、地域においての社会復帰施設の充実ということについて都道府県を指導してまいりたいというふうに考えております。
○網岡委員 それでは、次のところに移ります。
 小規模作業所デイケアというところですが、小規模作業所は、社会復帰施設から比較をいたしますと、やや数においても前進をしているということは率直に認めます。しかし、国全体の分布の状況からいきますとまだまだ不十分だということは、率直に言って私ども指摘をせざるを得ないと思うのでございますが、この原因は一体何かということをお尋ねいたします。
 そして、さきの質問も同じでございますが、今後やはり厚生省が一定の方針を持ちながら、整備促進に関する年次計画を立てていく必要があるのではないか、こういうふうに思うわけでございますが、この点について厚生省はどういうようにお考えになっているか、その対応についてもお答えいただきたいと思います。
○谷政府委員 小規模作業所につきましては、本年度二百九十四カ所の作業所に対する補助を行うことにいたしております。また、精神科通院医療の一環として精神科デイケアというものがございますが、現在二百四十六カ所の病院等でこの精神科デイケアを実施いたしております。
 この小規模作業所につきましては、今後とも家族会を通じまして必要な運営費の補助というものを行うことによって、その充実に努めてまいりたいというふうに考えておりますし、デイケア等につきましても、これらの事業の充実に努力をしてまいりたいというふうに考えております。
 ただ、先ほどもお触れになりました社会復帰施設あるいは小規模作業所、やはり今後ともふやすよう努力をしていかなければいけないというふうに考えております。具体的にその整備計画をつくるかどうか、あるいは年次計画をつくるかどうかということでございますが、これにつきましては今後都道府県など地方公共団体の意見も伺いながら検討させていただきたい、一つの検討課題というふうにさせていただきたいと考えております。
【次回へつづく】