精神医療に関する条文・審議(その76)

前回(id:kokekokko:20051020)のつづき。初回は2004/10/28。
平成5年改正の新旧条文をまとめてみました
 
さて今回は、平成5年改正精神保健法が施行される際の厚生労働省の通達をみてみます。法改正のポイントがわかりやすくまとめられているのと同時に、厚生労働省の立場があらわれています。

精神保健法等の一部を改正する法律の施行について(平成6年3月14日厚生省発健医第51号)(各都道府県知事あて厚生事務次官通知)
精神保健法等の一部を改正する法律」は、平成五年六月一八日法律第七四号をもって公布され、これに伴い、厚生省組織令及び老人保健法施行令の一部を改正する政令(平成五年一二月二七日政令第四〇〇号)、精神保健法施行規則等の一部を改正する省令(平成六年三月一四日厚生省令第九号)等が公布されたところであるが、今回の改正の基本的な考え方及びその内容は、左記のとおりであるので、十分に御了知の上、改正の趣旨を踏まえ、貴管下市町村を含め関係団体、関係機関等に対しその周知徹底を図るとともに、適正な指導を行い、その実施に遺憾なきを期されたく、命により通知する。
 
 記
第一 改正の基本的な考え方
精神保健対策については、昭和六二年の精神衛生法の改正後、様々な改善が見られるところであるが、今日なお、精神障害者の社会復帰の一層の促進を図るとともに、精神障害者の人権に配意しつつその適正な医療及び保護を実施することが重要な課題となっている。
今回の改正は、こうした諸状況を踏まえ、精神障害者の社会復帰の一層の促進を図るとともに、精神障害者の人権に配意しつつその適正な医療及び保護を実施するため、精神障害者地域生活援助事業、精神障害者社会復帰促進センター等に関する事項、仮入院に関する事項その他の事項に関して精神保健法その他の関係法律を見直し、所要の措置を講ずるものである。
 
第二 主要な改正事項の内容等
1 国及び地方公共団体の義務等に関する事項
 (1) 国及び地方公共団体の義務に、3(1)の地域生活援助事業を充実することによって精神障害者等が地域生活に適応できることができるよう努力することを加えたこと。
 (2) 医療施設若しくは社会復帰施設の設置者又は地域生活援助事業を行う者は、その施設を運営し、又はその事業を行うに当たっては、精神障害者等の社会復帰の促進を図るため、地域に即した創意と工夫を行い、及び地域住民等の理解と協力を得るように努めなければならないこととしたこと。
 (3) 国、地方公共団体、医療施設又は社会復帰施設の設置者及び地域生活援助事業を行う者は、精神障害者等の社会復帰の促進を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならないこととしたこと。
 
2 精神障害者の定義に関する事項
精神保健法の対象者である精神障害者の範囲の明確化及び用語の適正化を図るため、精神障害者の定義を「精神分裂病、中毒性精神病、精神薄弱、精神病質その他の精神疾患を有する者」としたこと。なお、改正の前後で精神障害者の範囲には、何ら変更はないこと。
 
3 精神障害者地域生活援助事業に関する事項
(1) 精神障害者の社会復帰の促進を図るため、都道府県、市町村、社会福祉法人、医療法人等は、精神障害者地域生活援助事業(地域において共同生活を営むのに支障のない精神障害者につき、これらの者が共同生活を営むべき住居において食事の提供、相談その他の日常生活上の援助を行う事業をいう。以下同じ。)を行うことができることとしたこと。
なお、事業の実施については、都道府県を除き、社会福祉事業法(昭和二八年法律第四五号)の定めるところによるものとされたこと。
(2) 精神障害者地域生活援助事業の普及を図るため、国、都道府県は、その事業に要する費用に関して補助することができることとしたこと。
 
4 地方精神保健審議会に関する事項
地方精神保健審議会の委員及び臨時委員に都道府県知事が任命することができる者として、精神障害者の社会復帰の促進を図るための事業に従事する者を加えることとしたこと。
 
5 保護者に関する事項
(1) 保護義務者の名称を「保護者」に改めたこと。
(2) 保護者は、入院措置の解除された精神障害者を引き取るに当たり必要があるときは、当該精神病院若しくは指定病院の管理者又は当該精神病院若しくは指定病院と関連する精神障害者社会復帰施設の長に対し、当該精神障害者の社会復帰の促進に関し、相談し、及び必要な援助を求めることができることとしたこと。
(3) 保健所長は、入院措置の解除された精神障害者と同居する保護者等については、必要に応じ、精神保健に関する業務に従事する職員又は都道府県知事若しくは保健所を設置する市の長が指定した医師をして、精神保健に関する相談に応じさせ、及びこれらの者を訪問し精神保健に関する適当な指導をさせなければならないこととしたこと。
 
6 医療施設における相談・援助に関する事項
精神病院その他の精神障害の医療を提供する施設の管理者は、当該施設において医療を受ける精神障害者の社会復帰の促進を図るため、その者の相談に応じ、その者に必要な援助を行い、及びその保護者等との連絡調整を行うように努めなければならないこととしたこと。
 
7 精神障害者社会福祉促進センターに関する事項
(1) 厚生大臣は、次の業務を適正かつ確実に行うことができると認められる民法(明治二九年法律第八九号)第三四条の法人を、全国を通じて一個に限り、精神障害者社会復帰促進センター(以下「センター」という。)として指定することができることとしたこと。
ア 精神障害者の社会復帰の促進に資するための啓発活動及び広報活動を行うこと。
イ 精神障害者の社会復帰の実例に即して、精神障害者の社会復帰の促進を図るための訓練及び指導等に関する研究開発を行うこと。
ウ イに掲げるもののほか、精神障害者の社会復帰の促進に関する研究を行うこと。
エ 精神障害者の社会復帰の促進を図るため、イの研究開発の成果又はウの研究の成果を、定期的に又は時宜に応じて提供すること。
オ 精神障害者の社会復帰の促進を図るための事業の業務に関し、当該事業に従事する者及び当該事業に従事しようとする者に対して研修を行うこと。
カ その他精神障害者の社会復帰を促進するために必要な業務を行うこと。
(2) 精神病院その他の精神障害の医療を提供する施設の設置者、精神障害者社会復帰施設の設置者及び精神障害者地域生活援助事業を行う者は、センターの求めに応じ、センターが(1)のイ及びウの業務を行うために必要な限度において、センターに対し、精神障害者の社会復帰の促進を図るための相談並びに訓練及び指導に関する情報又は資料等を提供することができることとしたこと。
(3) センターは、(1)のイ及びウの業務に係る情報及び資料の管理並びに使用に関する規程を作成し、厚生大臣の認可を受けなければならないこととしたこと。
(4) センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、(1)のイ及びウの業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならないこととしたこと。
 
8 仮入院等に関する事項
(1) 仮入院の期間の限度を一週間としたこと。
(2) 精神障害者は、精神病院又は精神保健法若しくは他の法律により精神障害者を収容することのできる施設以外の場所に収容してはならないとする規定を削除したこと。
 
9 大都市の特例に関する事項
精神保健法において、都道府県が処理することとされている事務又は都道府県知事その他の都道府県の機関若しくは職員の権限に属するものとされている事務で政令で定めるものは、地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二五二条の一九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)においては、政令の定めるところにより、指定都市が処理し、又は指定都市の長その他の機関若しくは職員が行うものとしたこと。
 
10 罰則
センターの役員等に係る秘密保持義務の違反等に関し罰則規定を設けたこと。
 
11 関係法律の改正
(1) 社会福祉事業法の改正
社会福祉法人等が適切に精神障害者地域生活援助事業を実施できるよう、精神障害者地域生活援助事業を、新たに第二種社会福祉事業としたこと。
(2) 医療法の改正
医療法人が精神障害者地域生活援助事業を実施できるよう、医療法人の附帯業務に精神障害者地域生活援助事業の実施を加えたこと。
(3) 栄養士法等の改正
精神障害者の社会復帰の一層の促進を図る観点から、精神障害者であることを絶対的欠格事由としている栄養士、診療放射線技師、調理師、製菓衛生師等の免許及びけしの栽培の許可について、相対的欠格事由としたこと。
 
12 施行期日等
(1) 施行期日
精神保健法等の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)は、平成六年四月一日から施行すること。
ただし、9の大都市の特例については、平成八年四月一日から施行すること。
(2) 経過措置
改正法の施行に伴う経過措置として、改正法の施行の際現に精神障害者地域生活援助事業を行っている国及び都道府県以外の者については、平成六年六月三〇日までに事業経営地の都道府県知事に届け出なければならないこととしたこと。

精神保健法等の一部を改正する法律の施行について(平成6年3月14日健医発第281号)(各都道府県知事あて厚生省保健医療局長通知)
精神保健法等の一部を改正する法律(平成五年法律第七四号。以下「改正法」という。)の施行については、別途本日付け厚生省発健医第五一号をもって厚生事務次官より通達されたところであるが、改正法の施行に当たっては、特に左記に掲げる事項に十分留意の上、関係制度の円滑な実施につき遺憾なきを期されるとともに、貴管下市町村を含め関係者、関係団体に対する周知方につき配慮されたい。
 
 記
第一 精神障害者の定義に関する事項
精神保健法においては、従来、精神障害者の定義を「精神病者(中毒性精神病者を含む。)、精神薄弱者及び精神病質者」と規定し、精神に障害のある者を包括的に捉えて同法の施策の対象とされてきたところであるが、今日、精神医学上の用語法においては、現行定義規定では精神に障害のある者を包括的に表現するものとして適当でないことに鑑み、今般、同法における精神障害者の定義規定が見直され、「精神分裂病、中毒性精神病、精神薄弱、精神病質その他の精神疾患を有する者」とされたこと。
なお、今般の定義規定の改正は、現行の定義規定を精神医学上の用語に合わせて見直すものであり、従来の定義規定による対象範囲と変わるものではないこと。
 
第二 精神障害者地域生活援助事業に関する事項
精神障害者地域生活援助事業は、地域において共同生活を営むのに支障のない精神障害者につき、これらの者が共同生活を営むべき住居において食事の提供、相談その他の日常生活上の援助を行うものであり、今後における精神障害者の社会復帰の一層の促進を図る上で重要な事業であること。このため、今後、精神障害者地域生活援助事業の積極的な普及を図ることが必要であり、同事業の実施は、地域においてきめ細かく推進することが必要であることから、社会福祉法人、医療法人等の民間が主体となって事業を実施するよう積極的に働きかけを行う必要があること。これにより、改正後直ちに地方公共団体自らが事業を実施するものではないこと。特に、市町村については、行政需要及び財政状況等を勘案の上、自主的な判断に基づき精神障害者地域生活援助事業を実施できるものであり、画一的に事業の実施を求めるものではないこと。一方、民間における取組みが不十分である地方公共団体においては、これを補完する取組みが必要であること。
なお、国は、従来どおり、精神障害者地域生活援助事業を実施できるものであること。
 
第三 地方精神保健審議会に関する事項
今般、地方精神保健審議会において、精神障害者の社会復帰の促進を図るための事業の実情等を踏まえた調査審議を可能とするため、新たに、同審議会の委員及び臨時委員に「精神障害者の社会復帰の促進を図るための事業に従事する者」が追加されたが、「精神障害者の社会復帰の促進を図るための事業に従事する者」については、精神障害者社会復帰施設、精神障害者地域生活援助事業を行う施設等において訓練、指導等の業務に従事する者であること。
 
第四 保護者に関する事項
「保護義務者」は、精神障害者の身近にあって、適切な医療及び保護の機会を確保し、きめ細かく精神障害者の権利・利益を擁護するためのものであるが、今般、他の保健医療制度等における名称との均衡に配慮し、その名称が「保護者」とされたこと。なお、今般の改正によって、改正前の保護義務者の機能に変更はないものであること。
また、保護者に対し、保健・医療・福祉の各分野における支援を促進するため、今般、保護者に関し、入院措置の解除された精神障害者を引き取るに当たり必要があるときは、当該精神病院若しくは指定病院の管理者又は当該精神病院若しくは指定病院と関連する精神障害者社会復帰施設の長に対し、当該精神障害者の社会復帰の促進に関し、相談し、及び必要な援助を求めることができることとされたこと。
さらに、保健所長は、入院措置の解除された精神障害者と同居する保護者等については、必要に応じ、精神保健に関する業務に従事する職員又は都道府県知事若しくは保健所を設置する市の長が指定した医師をして、精神保健に関する相談に応じさせ、及びこれらの者を訪問し精神保健に関する適当な指導をさせなければならないこととされたこと。
 
第五 医療施設における相談・援助に関する事項
今般、精神障害者の社会復帰の一層の促進を図る観点から、精神病院その他の精神障害の医療を提供する施設の管理者は、当該施設において医療を受ける精神障害者の社会復帰の促進を図るため、その者の相談に応じ、その者に必要な援助を行い、及び保護者等との連絡調整を行うよう努めなければならないこととされたが、「精神障害の医療を提供する施設」には、精神病院のほか、精神科を標榜する診療所が含まれるものであること。
 
第六 精神障害者社会復帰促進センターに関する事項
精神障害者の社会復帰の一層の促進を図るため、厚生大臣の指定法人として、精神障害者社会復帰促進センター(以下「センター」という。)が設けられたこと。
今般の改正においては、センターの業務の円滑な運営を確保するため、精神病院その他の精神障害の医療を提供する施設の設置者、精神障害者社会復帰施設の設置者及び精神障害者地域生活援助事業を行う者は、センターの求めに応じ、センターが精神障害者の社会復帰の促進を図るための訓練及び指導等に関する研究開発等の業務を行うために必要な限度において、センターに対し、精神障害者の社会復帰の促進を図るための訓練及び指導に関する情報又は資料で厚生省令で定めるものを提供することができることとされたが、「精神障害の医療を提供する施設」には、精神病院のほか、精神科を標榜する診療所が含まれるものであること。また、精神障害の医療を提供する施設の設置者、精神障害者社会復帰施設の設置者及び精神障害者地域生活援助事業を行う者がセンターの求めに応じて行う資料又は情報の提供は、法令に基づく守秘義務の範囲内において行われるものであること。このため、厚生省令で定める情報又は資料は、精神障害者の社会復帰の促進を図るための相談並びに訓練及び指導に関する情報又は資料、並びにこれらの相談並びに訓練及び指導を受けた精神障害者の性別、生年月日及び家族構成並びに状態像の経過に関する情報又は資料(個人を識別できるものを除く。)に限られるものであること。
 
第七 仮入院に関する事項
今般、精神障害者等の人権を擁護する観点から、近年における精神科の診断技術の向上を踏まえ、仮入院の期間の限度が三週間から一週間に改められたこと。
このため、改正法の施行後においては、仮入院による診断を一週間以内に実施し、その後は、当該者の退院又は他の入院形態への移行を円滑に実施するよう徹底を図られたいこと。
 
第八 法定施設外収容禁止規定に関する事項
精神保健法第四八条の法定施設外収容禁止規定は、旧精神病者監護法(明治三三年法律第三八号)における私宅監置制度及び旧精神衛生法における保護拘束制度の廃止に伴い、その趣旨を入念的に明らかにするために規定されてきたところであるが、今日においては、本規定は当初の目的を達成したものであり、一方で、本規定が誤解されて運用されていることが指摘されていることから、今般、削除されたものであること。
なお、精神障害者の不当な拘束については、今後とも、刑法(明治四〇年法律第四五号)の監禁罪の適用がありうるものであること。
また、病院等の管理者は、臨時応急の場合を除いて、精神障害者を精神病室でない病室に収容しないこととする医療法施行規則(昭和二三年厚生省令第五〇号)第一〇条の取扱いには変更はないものであること。
 
第九 大都市の特例に関する事項
大都市の特例については、平成八年四月一日から実施されることとされたところであるが、事務委譲の範囲等を定める政令については、追って、各都市の実情等を踏まえながら、制定する予定であること。
 
第一〇 精神障害者の資格制限の緩和に関する事項
今般、精神障害者であることを絶対的欠格事由としている栄養士の資格等について、精神科における治療技術の向上、医薬品の開発の進展等を踏まえ、精神障害者の社会復帰の一層の促進を図る観点から、相対的欠格事由とされたこと。
都道府県及び市町村においては、今般の法改正の趣旨を踏まえ、精神障害者に係る資格制限及び利用制限に関しては、必要最小限とするべく、関係条例、規則等の見直しを行うよう、特段の配慮をされたいこと。
 
第一一 その他
これまで通知している本職通知のうち、「保護義務者」とあるのは、改正法の施行日(平成六年四月一日)より、「保護者」と読み替えるものであること。

精神保健法に係る運用上の留意事項について(平成6年3月14日健医発第283号)(各都道府県知事あて厚生省保健医療局長通知)
精神保健法(昭和二五年法律第一二三号。以下「法」という。)については、平成五年三月における公衆衛生審議会の意見等を踏まえ、今般、精神保健法等の一部を改正する法律(平成五年法律第七四号。以下「改正法」という。)により、所要の改正が行われ、本年四月一日から施行されることとされたところであるが、改正法に係る事項以外の左記事項に関しても、同審議会の意見等を踏まえ、本年四月一日から運用上の取扱いを左記のとおりとすることとしたので、通知する。
なお、左記事項については、貴管下市町村を含め関係者、関係団体に対する周知方につき配慮されたい。
 
 記
第一 精神医療審査会に関する事項
精神医療審査会の運営に当たっては、以下の事項に配慮すること。
(1) 同一人から提出された二回目以降の退院の請求又は処遇の改善の請求については、既に審査を行った合議体とは別の合議体において順次審査を行うこととすること。
(2) 一回の合議体における事務処理が増大している精神医療審査会においては、合議体の開催回数の調整を行うこと等により事務処理の効率化を推進し、適切な審査を行うことのできる体制を確保すること。
(3) 精神医療審査会における審査においては、今後とも、患者の代理人である弁護士についても意見聴取の対象となることができること並びに患者本人及びその代理人である弁護士についても意見陳述に参加することができることを周知徹底すること。
(4) 退院の請求に係る審査結果には、必ず理由の要旨を付記するとともに、可能な限り参考意見を付記するよう努めること。
(5) 処遇の改善の請求に係る審査結果には、可能な限り参考意見を付記するよう努めること。
(6) 概ね一年半以上の長期にわたって入院している患者に関しては、精神医療審査会における審査を入念に実施するとともに、実地審査においても、一層入念に入院の必要性等を審査すること。
 
第二 精神保健指定医に関する事項
今般、精神保健指定医の資質の向上を図るとともに、精神障害者の社会復帰の一層の促進を図る等の観点から、精神保健法施行規則(昭和二五年厚生省令第三一号)の一部改正が行われ、精神保健指定医に係る研修について、入退院に係る診断技術に関する事項及び精神障害者の社会復帰に関する事項が明確化されたところであり、当該研修内容の変更について、関係者への周知徹底を図ること。
また、精神保健指定医の研修は、指定医の資格取得後、五年ごとに受講することが法において義務付けられていることから、研修受講の周知徹底を図ること。
 
第三 任意入院制度の運用に関する事項
任意入院制度は、精神障害者本人の同意に基づく入院を推進し、精神障害者の人権に配意した適切な精神医療の機会を確保する等の観点から、設けられたものであるが、未だ、当該者をいわゆる「自由入院」等として、法に基づかない入院形態により入院させる事例が見られることから、精神障害者が自らの意思によって精神病院に入院する場合には、法定の入院形態である任意入院とするよう制度の徹底を図ること。
また、任意入院によって入院する患者については、自らの同意による入院であることに鑑み、その症状に応じて、できるだけ開放的な環境で処遇するよう周知徹底すること。
 
第四 入院時の告知に係る書面の提示に関する事項
法に基づく入院時の告知に係る書面の提示については、精神障害者本人に対して行うこととしているところであるが、告知内容の精神障害者本人及び保護者等に対する周知徹底を図る等の観点から、必要に応じ、当該書面の写しを精神障害者の保護者等に対しても提示に努めるよう周知を図られたいこと。
 
第五 指定医の診察に係る患者の搬送に関する事項
法第二七条第一項の規定により、申請等に基づく精神保健指定医の診察を行うに際し、当該者を搬送させることとする場合には、当該搬送業務を都道府県知事の業務として適切に実施するようその徹底を図ること。
 
第六 応急入院に係る指定病院の指定に関する事項
応急入院は、地域における精神科救急において重要な役割を果たすものであるが、未だ、応急入院に係る指定病院の指定が進展していないことから、各都道府県においては、指定の促進について特段の配慮を行うこと。

精神保健法等の一部を改正する法律による改正後の精神保健法の運用上の留意事項について(平成6年3月14日健医精発第11号)(各都道府県精神保健担当部(局)長あて厚生省保健医療局精神保健課長通知)
精神保健法等の一部を改正する法律(平成五年法律第七四号。以下「改正法」という。)の施行については、本日付け厚生省発健医第五一号をもって厚生事務次官通知及び健医発第二八一号厚生省保健医療局長通知によりそれぞれ通知されたところであり、また、精神保健法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成五年政令第三九九号)により、改正法の施行期日が本年四月一日とされたところである。改正法による改正後の精神保健法(昭和二五年法律第一二三号。以下「法」という。)の運用に当たっては、特に左記に掲げる事項に十分留意の上、関係制度の円滑、かつ、適正な実施につき遺憾なきを期されるとともに、貴管下市町村を含め、関係者、関係団体に対する周知徹底方につき配慮されたい。
 
 記
第一 精神障害者の定義に関する事項
今般の精神障害者の定義規定の改正は、現行の定義規定を精神医学上の用語に合わせて見直すものであり、従来の定義規定による対象範囲と変化はないものであること。このため、法の対象となる精神障害者は、従来どおり、精神分裂病圏、躁うつ病圏、中毒性精神障害、症状性若しくは器質性精神障害心因性精神障害、精神薄弱又は精神病質の者であること。また、法第三二条の規定による通院医療費の公費負担の対象についても、従前と変更はないものであること。
 
第二 精神障害者地域生活援助事業に関する事項
精神障害者地域生活援助事業に関しては、平成四年七月二七日付け健医発第九〇二号厚生省保健医療局長通知により通知されているところであるが、精神障害者地域生活援助事業の対象となる精神障害者については、自傷他害のおそれのない者であり、また、同事業の実施に当たっては、急性期における医療機関との連絡、通常時における服薬指導等を適切に行うよう徹底を図られたいこと。
 
第三 地方精神保健審議会に関する事項
今般、地方精神保健審議会の委員及び臨時委員に都道府県知事が任命することができる者として、「精神障害者の社会復帰の促進を図るための事業に従事する者」が追加されたが、既存の委員及び臨時委員の任期が改正法の施行日以降である場合においては、当該任期の終了後において、「精神障害者の社会復帰の促進を図るための事業に従事する者」の任命について検討されたいこと。
 
第四 保護者に関する事項
保護者の名称の変更に関し、条例、規則等の改正が必要となる都道府県及び市町村においては、改正法の施行に合わせて、所要の改正等を行うよう準備をされたいこと。

第五 その他
これまで通知している本職通知のうち、「保護義務者」とあるのは、改正法の施行日(平成六年四月一日)より、「保護者」と読み替えるものであること。