精神医療に関する条文・審議(その87)

前回(id:kokekokko:20051031)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。法案などはid:kokekokko:20051026にあります。

第145回参議院 国民福祉委員会会議録第9号(平成11年4月20日
【前回のつづき】
渡辺孝男君 公明党渡辺孝男でございます。
 きょうは貴重な御意見どうもありがとうございました。時間も短いので早速御意見を伺いたいと思います。
 谷中輝雄参考人にお伺いしたいのですけれども、現在いろんな事情で社会環境が伴っていないということで数十万人の方が入院されている。条件が整えば数万人の入院患者さんは社会復帰施設あるいは在宅医療に移れるというようなことが言われております。障害者プランは、先ほどある程度満足できるようなお話がありましたけれども、この数万人を社会復帰させる、あるいは在宅医療に持っていくためには、障害者プランの目標を現在よりももう少し大きくして実施を早くすべきではないかなというように考えているわけでありますが、谷中参考人の御意見をお伺いできればと思います。
参考人(谷中輝雄君) 私の実践のことを一つ例に挙げますと、最近、入院期間が二十年から三十年の方々を私どものところにお迎えしております。そして、この方々が地域で暮らしていくためにどうするかというときに、従来の中間施設的な生活指導とか生活訓練ということがもはや十分効果を発揮しなくなりました。
 すなわち、夕食のお弁当を届けてあげますよ、だから食事をつくることをしなくても暮らしていけますよ。さらには、買い物はどなたか職員なりお仲間が一緒に行くから大丈夫ですよ。日常の生活のもろもろのこと、まさに生活支援です。そういうサポーターが周りにいることによって、それは患者さん同士の助け合いであったり、あるいは近隣の方々の御協力であったり、ホームヘルパーの方々のお力であったり、こういうシステムを地域に持っていれば、これは長いこと入院している方々も地域で暮らすことは可能です。
 先ほどの障害者プランのことに関して言うならば、平成十四年まではまず設備を何とか整えましょう。余り好きな言葉じゃありませんが、受け皿づくりということで今現在進めておりますが、さらにここにそういう生活のサポーターを、地域の中にいろいろな方々にサポーターとして登場していただくというマンパワーのことを同時に盛り込むことによって、先ほどお話ししたように地域で暮らすことは可能である、こんなふうに思っております。
渡辺孝男君 どうも貴重な御意見ありがとうございました。
 続きまして、池原毅和参考人にお伺いしたいのですけれども、やはり地域に社会復帰するためには地域住民あるいは国民のそういう精神障害者に対する理解というものが非常に大事だということでありますが、その理解を深めるために国はどういう啓蒙活動をしていったらいいのか、その点に関しまして御意見をお伺いできればと思います。
参考人(池原毅和君) 私たち全家連で差別、偏見の解消についての実態調査といいますか、アンケート調査をしたことがございます。
 この中で、差別とか偏見が発生しやすいのは、実際に精神障害の人とか、あるいは別の種類の障害でもそうなんですけれども、そういう方々と接触した体験のない方の方がむしろ差別とか偏見が強いという、そういう調査結果が出ているんです。
 そういう意味では、これは精神障害の方がもっといろいろなところで社会に参加できる機会を与えられて、そして一般の市民の方と接触する機会をつくっていただく、そうすることで大多数の、ほとんど圧倒的多数の精神障害の方が非常に心の優しいむしろ尊敬できるすばらしい方々だということを御理解いただけるだろうと思います。
 これはそれ以外の障害の方についても同様でございまして、やはりある種の障害とか病気を持った人を社会の片隅に寄せ集めてしまうということではなくて、それを社会の中にむしろ広げて、いろんな場面で接触する機会をつくっていただくことが結局は一番障害に対する理解を深めていくことになると思っています。
渡辺孝男君 同じ観点からの質問になると思いますが、谷中輝雄参考人にお伺いしたいんです。
 先ほどもお述べになりましたけれども、社会復帰施設建設の場合に地域住民の反対運動も起きやすいということでありまして、そういう住民との意見交換とか、そういう反対運動等が起こらないようにするために今後どういうものが必要なのか、参考に御意見をお伺いできればと思います。
参考人(谷中輝雄君) 偏見というとすごく強く聞こえますが、今、池原さんが言われたように、どうも先入観がおありなのです。
 私が聞くところによると、精神障害に対する先入観の一は、何をされるかわからない、危険である、不気味であるということ、それから何を考えているかわからない、このあたりが大変強いものですので、住民をいろいろと啓発するとか啓蒙するとか今までやってきたのですが、これはどうも余りうまくいきませんでした。先ほどの話でいきますと、私どもは住民との間のイベントを通じた交流を盛んに起こして、そしてその先入観をともかく改めていただくと。
 ですから、これはいろんなキャンペーンもイギリスあたりではされたようですが、これも有効だと思いますが、例えば私どもの実践の方からいくと、精神障害の方々と地域住民の交流を頻繁に繰り返すことによって地域住民の方々の理解を得るということ、これが一番功を奏してきたのではなかろうかというふうに思います。
 もう一つの問題は、実際には費用の問題もありまして、我々が施設をつくるときに地域住民の方々の理解と協力を得るということがいま一つ進まない。これは裏側に行政、例えば市町村の支援等もいただきたいというふうに思っております。これが民間だけの活力だけではなかなか発動しないときもございますので、むしろ市町村が何らかの役割、すなわち公営の社会復帰施設を設置するあるいは建設するというところに市町村の絶大な支援をいただきたいというのはそのことでございます。
渡辺孝男君 続きまして、池原参考人にお伺いしたいのですけれども、先ほど御意見を伺いまして、「残された課題」というところがございました。その一番目に、保護者の同意にかわる適切な権利擁護システムをつくる必要があるということが述べられておりますけれども、具体的にどういう形でそのシステムをつくっていったらいいのか、そのことに関しまして御意見をお伺いできればと思います。
参考人(池原毅和君) 諸外国の強制入院のシステムを参考にしますと、国際的な水準でいえば、基本的には裁判所のような第三者機関が入院の必要性があるのかどうか、あるいは本人に判断能力が失われているのかどうかということを判定するのが最も厳格で人権保障という点ではすぐれている方法だと思います。
 ただ、我が国の場合に、裁判所が現実にそこまでの機能を果たせるかということになりますと、現実的にはなかなか難しい問題もございます。当面考えておりますのは、例えば十分に訓練を積まれた指定医の方二名の判定によってその要件を判定していただく、そのかわりに事後的に精神医療審査会の機能をもう少し強化して、必ずその入院についての適否をチェックできるようにするというような方法が日本の場合は現実的なのではないかというふうに思っております。
渡辺孝男君 次に、河崎茂参考人にお伺いしたいのですけれども、やはり現実問題として、新聞紙上等では触法障害者による残念な事件もごくまれでございますけれども起こるということでございます。先生の場合は、そういう触法障害者の処遇をやはり日本としてもきちんとしていくべきである、適切な医療を提供するような体制をきちんと組んでいくべきであるというようなお考えのようでございます。これを国としてやっていくべきだというような御意見のようでございますけれども、その点に関しまして何かつけ加えられることがございましたら御意見をお伺いしたいと思います。
参考人(河崎茂君) 触法精神障害者、そのうち職場で我々自身が問題にするのは、特に重大な犯罪、傷害事件とかあるいは殺人とかそういうような犯罪を犯した方の受け入れというのは、現在民間病院が数が多いから民間病院がほとんど受けておって、公的病院数は少ないから当然公的に行っている方が少ないのですけれども、決してこれは公的病院だけの責任というよりも、やはり公民なしにちゃんとやって、最終的には民間でどうにもできないような大変な患者さんもおるわけなので、そのような場合はやはり国立なり公的に後ろの控えとしてお願いしたい。
 そして、日本の現在の状況では、不起訴のまま精神病院に入院して三月たって、そこは退院して社会生活して、また同じような犯罪を起こす方もやはり例としては数多くあるわけです。その辺を、触法患者の対応というのを厚生省だけではなしに法務省も一緒になって基本的に根本的に対応策を検討していただく時期に来ておるのではないかというような希望を持っております。
渡辺孝男君 数が多いかどうかというのはちょっとわからないのですけれども、その場合に何か被害者に対しましては国家賠償制度みたいなものをつくったらいいのではないかというような、被害者国家救済制度を確立した方がいいというような御意見も河崎参考人の方の文書ではあるのですけれども、これはどのような観点で、どのような形でつくっていったらいいのか、何か参考になる御意見があればお伺いしたいと思います。
参考人(河崎茂君) 我々としては、自分が先ほど申し上げたようなところが現在の考え方なのですけれども。
渡辺孝男君 被害者の救済に関しまして責任を問えないわけでございますから、加害者に関しましてはそういう意識、病識がないわけでございますので、被害者の救済制度というのもやはりきちんとしていくべきであるというふうに考えるのですけれども、その点に関しまして日本精神病院協会の方では何か被害者国家救済制度をやはりつくるべきだというようなお考えを示していると思いましたので、その点に関して何か御意見があればと思ってちょっとお伺いしたわけでございます。
参考人(河崎茂君) またよく検討しまして、お話しさせていただきます。
渡辺孝男君 最後になりましたけれども、一言山本深雪参考人にお伺いしたいのですけれども、今回指定医の役割というのが強化されることになっております。これに関しまして不十分だとか、これでよろしいというような何か御意見があれば、ちょっと時間が短くなりましたので簡潔にお答えいただければと思います。
参考人(山本深雪君) 指定医の権限で隔離、拘束等されていくわけですから、そのことをきちっと病院長等に報告しなければいけないというふうに書き込まれたのは安心できるのかなと思う反面、そのことを報告してもし病院の管理者に盾突くような意見を指定医として進言しなければいけないような場合が病棟の看護との関係で発生します。そういうときにきちんとした指定医としての本来の仕事を全うしようと思ったらかなりの覚悟が要るようになってくる、そういう現場が予測されるので、本当に有効性があるのかなというところは、ちょっと首をかしげています。
渡辺孝男君 ありがとうございました。
○井上美代君 私は、日本共産党の井上美代でございます。
 四人の参考人の方々のお話を伺いまして、本当にその熱意、これまで御苦労を重ねてこられたというふうに思いますけれども、短い時間でありましたがそのことを非常に強く感じました。また、深刻な状況についても今後の精神障害者福祉の施策に非常に深い示唆になるものをいただきまして、生かしていかなければいけないというふうに思いました。
 きょうは時間が限られておりまして、私は社会復帰施設関連について特にお聞きしたいというふうに思っておりますので、池原参考人と谷中参考人になるかなと思ったりしているんですけれども、よろしくお願いしたいと思います。
 私も精神障害者がふえてきているということについて大変心配をしております。今日の社会が非常に複雑に動いておりますので、そういう点も関連するかなというふうに思っておりますけれども、特に先ほどから参考人のお話でも出ておりますように、二百十七万人ということで、これは大変な数であるということを感じております。特に、知的障害者についてもかなり社会的には言われているんですけれども、三十九万人というふうに聞いておりますので、相当上回るなというふうに思っております。
 私は、先ほどからいろいろ出てきております社会的入院の問題、この問題を数字的にも明らかにして、そしてやはり抜本的に減らしていくということが大事だというふうに考えております。障害者の人たちが、暮らしだとか、そしてまた働くということ、人間として生きる地域の社会復帰施設がそういう意味でもまだまだ不十分です。総合的にそういうものができるようになっておりませんので、そういうものを含んだ社会復帰施設がつくられることが大事だというふうに一つ思っております。
 それからもう一つは、これも先ほどから出ているんですけれども、私は一九九三年に障害者基本法の二条できちんと精神障害者が位置づけられたということを大変喜んでおります。そこから始まっているというふうに思いますし、三条のところでは、人権が尊重されなければいけない、個人の尊厳がなければいけないということがるる書いてあります。これがやはり一日も早く現実のものとなるということが大事なのじゃないだろうか。
 そのときに、障害者プラン、この七カ年計画、これがどうしても現実に本当に定着していくということが大事だというふうに思っているんですけれども、数字は挙がっているんです。そして、もう既に三年、四年目を迎えているわけなんです。これが、予算上の数字ははっきりしているんですけれども、では一体どういうふうにできているのかというのがはっきりしていないんです、数字が。だから、そういう点についてもはっきりさせて、そして現実にそれができていっているというのを我々自身が確かめられるようにしていかなければいけないんじゃないだろうかというふうに思っております。
 もう一つは、オランダの例で計算をしてみたんですが、人口が二十万から二十五万人を一つの単位としてオランダではやっているということなんですが、例えば日本に援護寮があるんですけれども、オランダには共同住宅というのがあって、我々の援護寮と似ているわけです。それを計算してみますと、全国で六万三千人分ぐらいになるんです。そうなるとこれは相当の数だというふうに思うんですけれども、小規模作業所等についてもそういう計算ができるというふうに思いまして全部を計算してみたんです。もう時間がありませんのでそれは出せませんけれども、相当数が多いんです、もう圧倒的に多いんです。そして、運営費も一〇〇%国から支給されているというのがあります。だから、そういう点で、国もお金がなかなかないから、財源の問題も先ほど出ておりましたけれども、私はやはりそういうものを諸外国から学ぶということが大事じゃないかなと。
 そういう上に立ちまして、私は四つの質問をしたいというふうに思っております。
 一つは、都の調査で入院患者の三割が社会的入院だというふうにされているんですけれども、この数を一体どのぐらいだというふうに先生方は見ておられるのかということと、その原因がどこにあるのかということ。そこについてぜひお聞かせ願いたい。これがやはり地域に受け皿をつくるという点で重要なんじゃないかというふうに思いますので、それを聞かせていただきたい。
 二つ目は、障害者プランの目標なんですけれども、これが予算上の数字だということで、私は達成できるかということを非常に心配しております。達成させていかなければいけないというふうに思いますので、それについての評価、そしてまた見直しということについて先ほども谷中先生から非常に貴重な提言をいただきましたけれども、それについてどういうふうに評価されているか。
 それから質問の三として、今度の法改正があるわけですけれども、その中にホームヘルパーとかショートステイというのが入って、初めて法定事業というふうになって試行的にやられるということなんですけれども、このあり方についてこうした方がいいよというような提言があるんじゃないかというふうに思うんです。だから、ぜひそれを聞きたいということ。
 四つ目には、身体や知的障害者ではやられているデイサービスが精神障害者の場合にはないんです。それで、医療中心のデイケアだけでは居場所がないということがあります。小規模作業所では、働くことや、それから食事、レクリエーションなどを今やっているわけなんです。私も何カ所か訪れましたけれども、そこで食事を自分たちでつくりながらコミュニケーションをしておられたんです。ああいうのは治療の点からも、そして自立して暮らしていく点からも非常にすばらしいというふうに思ってきたんですけれども、そういうものをつくって、やはり精神障害者の方々にも内容豊かな自立に効果があるようなそういうデイサービスが保障されなければいけないんじゃないだろうかというふうに思っております。それに対する意見をぜひ聞かせていただきたい。
 以上です。
○委員長(尾辻秀久君) 質問が多岐にわたりましたけれども、簡単にお答えいただきますようにお願いいたします。
参考人(谷中輝雄君) 四つについて私なりの考えを述べますが、重要なのは、家族的な機能を家族自体が高齢化現象でかなり失いつつありますので、池原さんにその辺も含めて補っていただくことにいたします。
 一番目の問題は、さまざまな調査が行われて、その調査の都度、社会的理由で入院している人の数は変わってまいりました。しかし、先ほどの御指摘のように三分の一、八万から十万は何らかのケアがあれば、すなわち家族にかわるようなケアがあれば病院にいなくとも地域の中で暮らすことの可能な数字ということが一般的に言われております。
 それから二番目の問題ですが、御指摘のとおり、社会復帰施設は数はかなり達成されて、先ほど私も、平成十四年にはいい線にいく、こう申しましたが、その内実ですね、どれだけ利用されているのかとか、どれだけの人が精神病院から地域に出ていったのかということについてはまだ十分に機能していない点がございます。
 ただ、これは社会復帰施設の充実ということが手おくれになっているということだけではなくて、現に生活保護の方々は社会復帰施設に出ますと利用料が必要になってくる、むしろ入院をしていた方が費用がかからない、こういうもろもろのことも含めまして社会復帰施設が効率よく利用されていないということは御指摘にあった一つの問題だと思います。ですから、数だけでなくてこの見直しのところでは社会復帰施設をいかに効率よく使っていくかというようなこと。
 それから、先ほど池原委員も言われましたが、絶対的な量が不足しております。それから、地域にばらつきが目立ちます。重要なことは、こういうことを全国的に、例えば人口十五万にこの社会復帰施設をともかく配置するとか、そういう適正な整備が必要かと思っております。
 それから三番目は、これは私はすごく重要な点だと思いますが、精神障害者の居宅生活支援の中でホームヘルパーの活用、それからグループホーム、それからショートステイ。既にホームヘルパー制度は仙台市ではもはや先行しております。そして、数は多くはございませんが、いろいろな心配もあったんですが、かなり有効であると私は見ております。
 これに加えて、例えば病院に診察に行くときに一緒に行ってあげるよという移送サービスであるとか、お弁当を運んであげるとか二十四時間の電話の相談、もろもろの在宅支援の事業がここに盛り込まれていくことによって私は生活をする際のサポートになるかというふうに思いますので、この辺の在宅者へのサービスメニューをもっと盛り込むべきだというふうに思っております。
 最後の四番目のデイサービスに関しましては、私どもの今やっているところでは小規模作業場がそのような役割を少し担っております。それから生活支援センターは、どちらかというとたまり場あるいは憩いの場的な形で利用しようと思えばできますので、一部そういうふうな機能は持っておりますが、ここで重要なのは小規模作業場をもっと補助金をきちっとして法内施設に位置づけるなり、今の小規模作業場が法人格を持つことができるように社会福祉事業法の規制を緩めるなり、こういう形でこの小規模作業場がもっときちっと位置づけされなければならないかと思います。もしこの位置づけがきちっとされれば、先ほど申されましたようにデイサービス等がこの小規模作業場の中で十分に行っていけるというふうに私は思っております。
参考人(池原毅和君) 重複する部分があると思いますので、多少違っているというかつけ加えたいことだけを申し上げたいと思います。
 まず一つは、社会的入院の比率の問題ですけれども、これはやはり確定した数値というのはなかなかありませんで、十万、十数万、三分の一とか少し多目に見ると六割くらいいると言う方もおられるようです。ただ、このときに私が思いますのは、それは退院可能な状態のイメージをどう考えるかということによっても違うと思います。
 例えば、離れた例ですけれども、町の中に段差があれば車いすの人は外に出られません。しかし段差がなくなれば外に出られます。それと同じように、精神障害の方を受け入れてくださる社会のシステムがどうなっているかによって退院が可能である場合もあれば不可能である場合もあるということになります。
 ですから、自炊ができなければ退院は不可能だと考えればその人は社会的入院ではありませんが、ホームヘルプサービスがついて食事の世話はやってもらえるんだ、だから食事の支度ができなくても生活はできるよということになれば、それはある意味では社会的入院者としてカウントされる側に入っていくことになるという意味で、この数値というのは、どのような社会・地域生活観を持つかによってかなり違っていくんだろうと思います。
 つまり、今までは精神障害の方が病気を治して社会に出る、こういうイメージだったかもしれませんが、病気や障害が残っていてもそれを補うものが社会にあれば十分社会で生活できるんだ、社会がもう少し優しく姿を変えていかなければいけないんだというふうに考えれば、これは相当の数の社会的入院者ということがあるということになると思います。
 それから、障害者プランの目標達成については特につけ加えることはございませんが、もちろん達成していただかなければ困りますし、達成してなおまだ不足が多いということを申し上げておきたいと思います。
 三番目のホームヘルプサービスについては、精神障害の方の生活障害と呼ばれますけれども、障害の特色というのがなかなか理解されにくいというところがあります。身体障害の方はどういう部分に障害があるのかということをイメージしやすいけれども、精神障害の方についてはそれがなかなかわかってもらいにくい。したがって、ホームヘルプサービスがどういう部分でかみ合っていくと障害を補って生活ができるようになるのかということがなかなかわかりにくい部分があります。
 私は、いろんな部分があると思いますけれども、精神障害の方が特に長期の入院で社会生活の経験が乏しかったり、あるいは精神障害に基づく障害があると、自分で生活を組み立てて管理していくということが下手だなと思われる方が多い、多いとは申し上げませんけれども、そういう方がいらっしゃると思うんです。ホームヘルプサービスは、先ほど谷中参考人の方からもおっしゃられていましたけれども、いわばそういう自分の生活全体をうまくマネージしていくというか安定した生活を組み立てていくというか、そういうところに、つまり単純に御飯をつくってあげるということだけが必要なのではなくて、一日の生活の中に食事というのがどういうふうに組み込まれて生活のリズムができ上がっていくのかを配慮したホームヘルプサービスがありませんと、ただ御飯があればいいということではないというあたりがちょっと特色かなというふうに思っております。
 それから、最後にデイサービスの関係ですが、これは大変大事な御指摘だと思います。これは精神障害の人だけに独特のことではありませんけれども、やはり社会経験といいますか、地域の社会の人とか、あるいは患者の仲間同士と触れ合って日中を過ごすという、そういう経験の場というのが精神障害の方には非常に乏しいわけです。それは、今、小規模作業所が先ほど話も出ましたようにそういう役割を一部担っているところもあります。
 アメリカなどではドロップインセンターなどといって、別に仕事をするわけでもない、何をするわけでもないけれども、そこに集まると仲間がいるよ、仲間といろんな話ができるよという、そういう場所と時間を提供する施設といいますか、そういう場所があります。ソーシャリゼーションを高めるというんですか、そういうものがだんだんでき上がっていって、しかもそこに精神障害の人だけではなくて地域の人も気軽に出入りする、お年寄りもいらっしゃるし子供さんもいらっしゃるし奥さんもいらっしゃる、そういうものができていきますと、精神障害の方の地域での人間関係というのが広がって、先ほどの偏見というのも徐々に減っていくというようなことも期待できるので、ぜひそういうものが今後広まっていくとよいのではないかというふうに思っております。
○井上美代君 ありがとうございました。終わります。
清水澄子君 社民党清水澄子です。
 四人の皆様方、さまざまな立場からの御意見、本当にありがとうございました。
 まず私は、谷中参考人にお聞きしたいと思います。
 谷中さん自身がやどかりの里という精神障害者の地域施設の非常に草分け的な活動をしてこられたということに本当に敬意を表したいと思います。
 谷中さんからごらんになって、今回のこの法改正案、先ほどのお話では非常に評価されておりますが、実際にこの改正案で現実に生活する患者さんのニーズに対応できるかどうかというのが私どもはちょっと不安なところがあるんです。そういう点について率直な、これだけは今回はきちんと具体化してほしいと思うところがおありになればお話ししていただきたいと思います。
 もう既にどうあるべきかということでは、地域での福祉というのを非常にたくさんいろいろお話しいただいて、そういうものがぜひ実現されていくように私どもも努力したいと思いますけれども、地域施設の質の保障で最も大切なことという点で御意見を伺わせてください。
 そしてもう一つ続けて、今度の改正案では精神障害者の社会復帰施設等の利用とか相談、助言、あっせんの業務を市町村が行うということになっているわけです。市町村は今度は地域生活支援センターに委託できる。今度、都道府県はこのあっせんに関して保健所による技術的協力等を行うとされているんですが、市町村がそこまでのいろいろな業務とか実際に精神障害者にかかわる問題をまだ余り扱っていないというところで非常に心配なんですね。それと、保健所がどういう機能を果たせるか、それから何が問題かということがおわかりになれば、ぜひその辺をお聞かせいただきたいと思います。
参考人(谷中輝雄君) 言いたいことを言わせていただく機会を与えてくださいましてありがとうございます。
 私は、これから精神障害者が地域で暮らすことの第一歩ですと申し上げました。それは、こういうメニュー、サービスそして仕組み、こういう方向性が定まったというところを評価したわけですが、では現にそれが来年、ことしから精神障害者の手にすぐ入るかというと、ちょっと違うんですね。
 例えば、先ほど申しました精神障害者居宅生活支援事業の開始は平成十四年というふうにずれております。それから、御指摘のとおり、市町村でやるといっても、市町村のやる意欲とか体制とかマンパワーとかは整っていますかと言われると、まだ保健所と市町村との役割をどうしましょうかというレベルでありますから、かなり遠い話のことであります。
 加えて、私は社会復帰施設のメニューはほぼそろったというふうに思っておりますが、内容が貧弱です。一番貧弱なのは、これは日本の福祉の制度がそうであったんですが、箱をつくって人を配置する、この人の配置がとても少ないんです。
 これからの精神保健、老人も同じですが、マンパワーの配置とそのマンパワーの専門性の質の高さ並びにもっと一般的な先ほど申しました生活支援のサポーターまで含めますと、いろいろな方々がこの事業あるいは精神障害者を支えるという仕組みをつくるまでにはかなりの時間がかかってくる。そして、建物すなわち箱物にではなくて人に何らかの補助金をきちっと保障するということが、地域のケアシステムを充実させていくことだというふうに思っておりますので、今回の法改正はそこがまだ盛り込まれていない。これはむしろ予算的な措置だというふうに思いますが、そういう意味では、まだまだ先ほど申しました十万の方々を地域にどうぞというわけにはいかないと思います。
 ただ、流れとしましては、この対人サービスは保健所から市町村に、そして保健所は今度はこの市町村のさまざまな支援システムを後方から指導したり応援したり、それから先ほど来から出ていますが住民の、市民の方々の啓発、そしてさらには、ここは私は重要だと思うんですが、サポートするときの保健所の支援、すなわちもっと環境とか生活の条件とか、こういうことを整えていただくための保健所の役割というのは大変大きいと思いますので、市町村がこのことをしっかり受けとめていただくということと同時に、保健所の役割、機能がもっと幅の広い心の健康ということでチェンジする、そういう時代をどうやら迎えているのではないか。
 しかし、先は見えてきているんですが、まだ精神障害者のニーズがこれらのサービスによって今すぐ手に入るというふうには私には思えないものです。これは、でも先が見えてきたので、これから手厚く一つ一つのサービスメニューのところに予算を盛り込んでいくべきだというふうな考えで、正直言ってこれで精神障害者が地域で暮らしていけるよというふうにはとても申し上げることはできません。でも、形ができ、先が見え、そしてシステム立ったものがこれでいけるということになりましたので、もうそろそろ社会的な理由で入院されている方々を町に迎え入れるときが来つつあるのではないか、そんな率直な感想です。
清水澄子君 ありがとうございました。
 次に、山本参考人に質問させていただきます。
 精神医療審査会の構成員は医者が三人とか決まっていますね。構成員は私は患者の立場に立って人権問題に取り組んでいる人の数をもっとふやすべきじゃないかということを先日の委員会でも質問したわけでありますけれども、山本参考人は、現状のこの精神医療審査会の問題点というのは何かということについてお考えがあれば述べていただきたい。そして、改善すべき点、こういうことを改善すべきだということがあれば教えていただきたいと思います。
 もう一つは、患者さんの立場をサポートする病院から独立した何かがないと、本当の意味で患者の人権をフォローしていけないんじゃないかと思うんですけれども、そういう場合には審査会だけではカバーできないんじゃないかと思うんですね。そういう点ではどのようなシステムが必要だとお考えでしょうか。この二点をお願いいたします。
参考人(山本深雪君) 今のシステムの中で気になっていることは、医療上の判断をメーンにして医師の裁量権で決定されているように思います。合議体五人のうちの三人までが医療委員イコール医師という構成になっていると思いますが、私はそこを入院患者の人権を守るためのシステムであるというふうに考えていくのであれば、医療委員という枠の中に生活支援を一緒に考えていただけるはずのPSWの方々にぜひ入っていただきたいというふうに思います。
 そして、医療委員が五分の三という比率自身もやはり長期的には見直しをしていっていただく必要があるだろうと思います。その方が、帰る場所がない場合でも、本人がここをもう出たいんだと、医療上ここにいても変わりはないですよというときに、これは一例ですが、私たちであれば、住む場所を探してきて、契約する準備をして退院というふうなサポートをしていくわけですね。そういうふうな気持ちでもってきちんとサポートしていける、そういう委員を審議会の下に専門委員会があるような形の二重のあり方で考えていくことの方がはるかに実効性があるのではないかというふうに思います。
 そう思ったときに一つの参考になったのは、九七年にカリフォルニア州の方に研修に行ったんですけれども、そこにはPAIMIというアメリ精神障害者権利擁護法という法律があって、そこに規定されて働いている公益法律事務所というのがありました。患者の権利を守る事務所なんですけれども、そこで働いていたのは、法律家は一名そこの事務所で雇用されていましたけれども、あと三名が精神医療のユーザー体験者が働いていました。それぞれに任務分担をうまくやって連係プレーを持ちながら、必要に応じて適宜御本人の話を聞きに行く、そして家族関係の調整をしたり、住む場を探したりというふうな、そうしたフォローも含めて、審査会の委員といいますかとしてやってはりました。あれはとても有効だなというふうに思いましたので、日本においてもぜひそういう、実際に機動力のある患者にとって有効な制度にしていく必要があるだろうというふうに思います。
 それと、独立性の問題で言われたんですね。確かに都道府県の精神保健課というのは措置入院の窓口にもなっているわけですから、そういう強制執行している窓口とイコール権利擁護を担う窓口の電話先が同じであるというのは、かける側の患者からして、こんなのでいいのかなという非常に不安感があります。本庁の中に置くのではなくて、せめてセンターの方に移していただきたいというふうにとりあえず思います。それでなければ本当に信頼できないよというのが気持ちとしては患者サイドではあります。
 あともう一点は、これまでの歴史的なあり方、大和川病院のときもそうでしたが、現状を私たちよりももっと御存じのはずかなと思っていた業界の方は事前には批判しなかったですね。審査会の中にドクター委員が五分の三いらっしゃいますけれども、余り批判をやはりされませんね。
 それは、医師法の倫理規定か何かに、そういう他人の見立てについてはほかの医者は批判してはいけないというふうな倫理規定があるそうなんですけれども、私たちはむしろ本人が出たいと言って審査請求されたのであれば、出ていいのかどうかという医療上の判断は入ることは認めますけれども、出たときの生活のサポートの方がはるかにウエートが高いというふうに思いますので、今の五分の三の見直しを含めて生活面のサポートをしていく委員をもっとふやしていく、そしてさらに、学識経験者だけではなくて、退院患者も含めて本当に生活をサポートしていく仕事に取り組んでいる人たち、そういう人たちが委員になっていけるような制度というのが実際に一番実効性が高いというふうに思います。
清水澄子君 ありがとうございました。
 時間がもう来てしまいましたので、池原参考人、河崎参考人には失礼しました。ちょっと質問を持っていたんですが、これで終わります。
○入澤肇君 四人の方、大変貴重な御意見をありがとうございました。
 最初に池原参考人にお伺いしますけれども、この法律は累次にわたって改正されているわけですね。今回、ある意味では人権と社会復帰ということをテーマにして法律の改正がなされたわけでございますけれども、本当のところを言ってもう少し高いレベルまで改正してもらいたかった、しかし我が国の精神医学界あるいはこの状況からしてやむを得ないレベルであるというふうにお考えになるのかどうか。どの点が不足していて、さらにこの次はどういう点を改善してもらいたいかということについて率直な御意見をお聞かせ願いたいんです。
参考人(池原毅和君) 私は、先ほど最初にお話しいたしましたように、これは第一歩としての歴史的意義のある法改正であるというふうに思っておりまして、その第一歩を踏み出したという点は十分に評価しているわけです。ただ、もちろんこれですべてが解決できるわけではないということは、ほかの参考人の方の御意見からも既にあるところであります。
 私どもがまず一つ大きく求めているのは保護者制度です。これ自体が今のところは今回残っているということでありまして、これは精神障害の方の自己決定を尊重していくという方向性にかなり問題を生じさせる、あるいは家族自体の負担がやはり解消されないという部分は残ってしまうと思います。ですから、理想を言えば、将来的には家族を支えとする保護者制度は廃止をして、もう少し公的な地域の医療、地域の福祉という形で精神障害の方を支えていくというシステムへの転換が必要だと思うんです。
 それから、医療の分野でもう一つ大事なのは、山本参考人からも出ておりますけれども、精神障害の方がこの医療や福祉の本来主人公であって、自分の病気を治すために治療を受け、自分が生活をするために福祉サービスを利用するわけですから、やはりこの方々が本来法の中心に据えられなきゃいけない。だから、本来理想として言えば彼らの自己決定権というものをまず高らかに法の中にうたっていただきたい、そして本人の判断と決定に基づいていろいろなことが動いていくんだという法のあり方にしていただきたいと思うんです。
 そういう意味では、私ども、資料の中に全家連のパンフレットを入れてございますけれども、これはできれば政治的に将来御判断いただきたいことかと思いますが、この精神保健福祉法というのは、一般の精神障害の方が一回読んでなるほどこうかというのがわかるようには規定されておりません。非常にわかりにくい。自分が入院させられたときに、一体何が言えて何が言えないのかということが一読してはとてもわからないわけです。
 それでは権利を守る法律としては不十分であって、やはりもっとわかりやすく精神障害者の人はという、むしろ主語が精神障害者で始まって、権利主体なんですから、そしてこういうときにはこういうことができる、こういうときにはこういうことはできない、そういう規定ぶりに将来的には変わっていくことが、それはいわば患者の権利法という形に近づいていくのかもしれませんけれども、そういう姿になっていくことが望ましいと私たちは考えております。
○入澤肇君 今のようなお話はその第一歩だというふうに評価されるんですが、この法律改正は不十分である、おくれている、今までいろんな要望をしているんだけれども、なかなか取り入れられないというふうにお考えなのか。また、そういうふうにお考えであれば何がその理由なのか、原因なのかについて御意見ございますか。
参考人(池原毅和君) 法改正自体がストレートに進まない要因という御質問ですね。
 これは、社会復帰の側面、社会福祉的な側面について言えば、今まで再三出ておりますように予算の問題というものもあると思います。あるいは時間的に見て、精神障害という方々が障害者として認められてまだ十年とたっていない、一番最後に障害者のグループに入った障害者であるという、そのおくれという問題があります。
 しかし、医療の側面で言いますと、私たちも家族あるいは患者さんとお医者さん、こういう三者でいろいろお話し合いをすることがございますけれども、そういう中で、日本の医療、特に精神医療において家族がどういう役割を果たすべきなのかということについて、医療側の方々と家族の立場と患者さん本人の立場でなかなか合意点が得られないという部分があるんですね。
 そして、河崎参考人からももしかしたら御意見があるかもしれませんけれども、河崎参考人の御意見の中にも、家族の協力なしには精神障害の治療はできないんだという御意見がございます。私たちはそれは必ずしも間違いではないと思っているんです。
 ただ問題なのは、心臓の疾患であれ肝臓の疾患であれ、病気はいろんな種類があります。しかし、家族の中に病人がいたときに、その病人のことを法律上の義務として何かしろと書いてあるのは精神保健福祉法だけなんです。つまり、家族はある意味ではそういう法律の規定があろうとなかろうと、本来の家族としての気持ちに基づいていろいろなかかわりを持つということは一般医療では十分成立しているわけです。
 ですから、私たちは家族が何もしないとか、やっちゃいけないということを申し上げているんではなくて、一般の医療あるいは一般の精神障害者福祉と同じような形で家族がかかわりを持たせてほしい。今まで百年間にわたって家族は精神障害者を何とか最後まで見ていきなさいと、こういう法的義務を課されてきた、それはもう終わりにしていただくときが来ているんじゃないかというふうに私たちは考えています。
○入澤肇君 次に、河崎参考人にちょっとお伺いしたいんですけれども、例えば精神科特例の問題とか精神科の診療報酬、こういうものが他の医療のレベルに比べて非常に問題、制約があるというふうなことを我々も聞いているんですが、そういうことに対する考え方。それから、社会を含めて本格的にもっと真剣にこの問題に取り組むのであれば、精神障害についての研究、官産学全部含めての研究体制。あるいは薬品の開発についても、外国ではかなり認可されているものも日本では認可されていないとか、いろんな問題が指摘されています。
 精神科特例の改善の問題、精神科の診療報酬の改善の問題、それから研究開発等について専門家の立場から御意見をお伺いしたいと思います。
参考人(河崎茂君) 御質問ありがとうございます。
 我々の率直な気持ちは、やはり終戦までの日本の一つの考え方というのか国の考え方、それが精神障害者対策に影響しておったんではないか。五十年たった今もいまだにそのこと自身が尾を引いておるんではないか。五年以上長期に入院しておる方々が五〇%、それともう一つは、格子を入れて社会から隔離して、医療というよりも隔離というようなことで来た、そのこと自身がやはりいまだに尾を引いておる。
 抜本的に直さなければいけないのは、人権尊重という言葉で今あらわれておりますけれども、精神障害者の方々の治療と予防、精神障害になった方々に対してというよりも、もう一歩、予防にもっとお金を入れて研究体制を確立していって、再びこのようなことがないようにしなければいけないんです。
 我々医療を行う医者としては、長期在院の方々をいかにして社会に復帰していただくかということと、もっとあらゆる法を見直さなければいけないんじゃないか。例えば、十六歳未満の人は監獄及び精神病院に勤務してはいかぬというような法がいまだに生きておるんです。監獄と刑務所と精神病院を同じ並列にして、そこで働いてはいかぬというような法がいまだに残っておるんです。
 精神障害者の方々に対していかに国が隔離だけを主にして来たものかということなので、今ようようここ十年の間に、国の力もあり、また我々医療従事者あるいは障害者自身の方あるいは家族の方々みんなの力を結集して、そして一般医療と同じ体制に持っていかなければいけないという出発点にようよう来たような感じがしております。
 もっと抜本的な面から精神保健福祉法を見直して、そして明るい体制を組み上げなければ、その責任は我々自身も、再三申し上げました九〇%を担っている日本精神病院協会、いわゆる民間病院自身がよくなって初めて日本の精神科医療がよくなるんだというようなことは、何も我々自身を先によくしろとかじゃなしに、日本を代表する精神科医療を我々はやっておるんだという一つの自覚と責任、また反省もし、そして将来に対しての体制も我々は組まなければいけないという覚悟でおります。
○入澤肇君 ありがとうございました。
 次に、谷中参考人に一つお伺いしますけれども、非自発的入院患者のための施設の基準、これについて大変な問題が指摘されていますけれども、現状では何が欠けていて、最も緊急に対応すべきものは何かということについて御意見がありましたらお伺いします。非自発的入院患者のための施設です、任意じゃなくて。施設の改善について、例えばさっきから開放系があるとか閉鎖系だとか言われていますね。何が今一番大事か、改善するのに。
参考人(谷中輝雄君) 施設の側ですか。
○入澤肇君 施設です。
参考人(谷中輝雄君) 先ほどの質問にちょっと答えながら今のことに触れてよろしいですか。
 私は、今度の改正が評価できるということを申し上げたのは、これからの方向性の第一歩が見えてきたということ、その裏には知的障害や身体障害の方々と一緒に三障害の総合、統合、ある面ではこれは仕方がないと思いますが、そこの足並みがそろわないと進まなかったんです。したがって、理念型になって、具体的にメニューをというとやはり三障害の整合性を図らなければいけなかった。これは足かせとは思いませんが、私は将来的に統合、総合を目指すべきだと思っておりまして、むしろ医療とは別枠の福祉の総合化を目指すべきだと思っていますから、今のところこれはやむを得ないと思っています。
 それから、もう一つ非常に残念なのは、やっぱり精神医療改革が全く進んでいないということであります。この精神医療改革が進まないこと、先ほど来申し上げています社会復帰施設が十分に活用されないこと、そして地域における支援システムがなかなかできないことが私は連動していると思います。
 その意味でいろいろな問題はございました。医療費の問題や精神科特例を外そうというふうなことも現行の中では非常に厳しいということもわかりました。急性期と慢性期とを区分して云々とかいろいろ議論はありましたが、残念ながら精神医療改革は全く手つかず。私はこの点が大変残念です。
 何度もその点を申し上げますが、これは病院と地域とを分離して考えるべきではないんです。一体化して考えるべきなんです。この点で今後さらに進めなきゃいけないのは、これは河崎先生のおっしゃるとおりです。病院が収容施設であったところを、今度、病院は治療施設としての形態を整えて、収容すべき人は地域の中に分散して、中間施設も要らないように思います。分散して、皆さんが普通の生活ができるようにそれを支援する仕組みです。
 こんなことで私は、社会復帰施設のことに関しましてももっと欲しいという気持ちが半分ありながらも、本来的には施設、いわば収容施設の時代ではない、在宅ケアの時代だというふうに思いますので、この社会復帰施設をいっぱいつくるよりは、生活支援センターや作業所や先ほど出ましたグループホーム、居住するそういうプログラムをいっぱい用意して町に迎え入れるのが今後の日本の精神保健活動を進めていく際の得策だというふうに思っております。
○入澤肇君 終わります。
堂本暁子君 きょうは本当に日々一番大変なお仕事を担っていらっしゃる方々にお越しいただきまして、御意見も大変うれしく伺いましたけれども、日常のお仕事にも敬意とそれから御努力に本当に御苦労さまと申し上げたいというふうに思っております。
 今までの御質問の中で、日本の精神医療、それから社会福祉と申しますか、そういったことの本質が何か随分見えたような気がいたします。河崎先生が、隔離という伝統がいまだに続いているというふうにおっしゃった、それが事の本質で、やはり接触がないと差別を始めるという、日本の精神医療のそういったあり方が差別をつくっていて、また社会への復帰を妨げているという悪循環を、きょう改めて地域でやっていらっしゃる谷中先生とお二人のお話を伺いながら思ったところです。
 十五年ぐらい前に私はやどかりの里へお邪魔したことがございますけれども、あの当時、ちょうど精神衛生法から精神保健法に変わるときで、多分十年たてばやどかりの里が日本じゅうに何百とできるのではないかと思ったりもしたものですが、どうもそうもいきませんでした。
 最初に、きょう参考人でお越しいただいて伺いたいことは、私も今でももう全く疑わずに思っていることはマンパワーだと。どんなに箱物を、中間施設だろうがデイケアセンターの建物だろうがつくってもだめで、いかに地域でサポートするマンパワー、それは専門性が高い方も必要でしょうし、それからボランティアの方がいらしてもいいと思うのですが、今どういうマンパワーが必要だというふうにお考えか、具体的に伺えれば伺いたいと思います。
参考人(谷中輝雄君) 私は、今度の精神保健福祉士の誕生に大変期待をしております。今、地域の面から考えますと、何といっても重要なのが、市町村にさまざまなサービスメニューがもしあったとすると、老人や身体・知的障害の方も含めてそのサービスを有効に使えるように患者さんのニーズと引き合わせる、こういうケアマネジャーの役割が重要です。精神保健におきましても、このケアマネージの導入を図りつつ専門性の高い方を配置すべきだと思います。それを精神保健福祉士に期待するところです。
 さらに、先ほど山本さんのお話の中にありました人権センター、地域における患者さんの人権ということもこれからはさまざまな問題が出てくるかと思います。社会復帰施設の処遇の問題も含めまして患者さんの人権を擁護するということは、私たち社会復帰を進めている、すなわちケアを持っている人間と同一にすることはかなり問題があろうかと思いますので、むしろ人権センターなり、そういう役割のところにきちっとした人的な配置をすべきです。
 さらに、成年後見人制度で出てきています金銭管理であるとか財産上の問題とか、これまた私たち実際に身柄を引き受ける人が金銭管理を同時に兼ねるということは大変な危険がございますので、しかるべきマンパワー、私はここに精神保健福祉士を配置してもよろしいのではないかというふうに思っております。
 それから、専門性が高い方ばかりがサポーターではございません。私は、ホームヘルパーは十分有効なサポーターになっていただけるというふうに信じておりますし、一番私が頼りにしているのは患者さん同士の助け合いなんです。患者会活動とかそこに支援する、そういうお金や場所、そういうものがまだ今回の法改正の中には見えてきておりません。
 私が一番重要視するこの生活サポーターは、病気をした当事者が御自分の病気を経験に、すなわち病気に関してや回復過程の専門家だと私は見ているんですね。ですから、御自分の経験を生かして友達を助ける、こういうような仕組みを今後のソーシャル・サポート・ネットワークの中に入れていかなければいけないというふうに思いますので、私はここの力をもっと十分に引っ張り出せるような何らかの支援対策というのが必要ではないかというふうに思っております。
 そして、今のことで思い出したんですが、堂本先生がやどかりの里に来られたときに、御自分の実名を出してテレビに出られる人を紹介してくれと。私は、正直あのときちょっと大丈夫かなと思ったんですが、横式さん初め何人かの方が出てくださいました。この十年の変化は、私ども社会復帰施設が幾つできたかということよりも、当事者である患者さんたちが堂々と発言し始めたということに私はすばらしい力を感じておりますので、なおのこと、人権擁護あるいは生活サポーターに当事者のマンパワーをどんどん活用するような施策も今後検討していかなければいけないというふうに思っております。
堂本暁子君 ありがとうございました。
 山本参考人に伺いますけれども、先ほどこの資料の五十七ページで、まだ十分にここでいろいろ問題になったことが表に出ていないというふうにおっしゃったんですが、実際に裁判所や何かではきちっと言われていながら、厚生省の出張旅費を財団予算から負担していたことがわかったというようなことだと思いますけれども、まだきちっと調べてやらなければいけないことがあるんでしょうか。
参考人(山本深雪君) あると思います。病院側の職員の話によれば、厚生省の側がこの出張旅費等も含めて要請してきたというふうに言っています。形式的には出張費は公費で賄われた上で財団側から厚生省に要請したという形をとっているということですが、実態はそれとは違うという内部告発の話は、全員朝礼の場でいろいろ話がされているために、多くの方からの調書等がとられているようです。
 ですから、刑事事件の方が確定すれば、その確定判決に基づいて証拠書類等が全部明るみに出るはずですので、そこで実態はどうであったのかということが明らかになる日が訪れるだろうと思います。今、最高裁に上告されました。ただ、その時間を待つのかなというところで、私は少し厚生省の自浄能力というところでクエスチョンを感じます。
堂本暁子君 委員長にぜひお願いをしたいんですけれども、精神病院の中で患者さんたちはなかなか自分から外に訴えることができないわけです。アメリカなんかですと、電話のところに、どこへ電話しなさいと。さっきのように五百円しかなくて電話がかけられない、あるいは電話がナースステーションのそばにあって全部看護婦さんに聞こえてしまうというような電話の置き方が結構日本の病院に多いと私の見た限りではあるんです。
 こういう問題がもしまだ残存しているのだとすれば、私はやはり委員会できちっと調査をしていただきたいと思いますので、この際、お願いをしておきたいというふうに思います。何らかの形で何かこういうあいまいさが残るということは、精神病院の場合にはよくないというふうに思いますので、きちっと調べてほしいというふうに思います。
 次に、もう一つ質問をしたいんですけれども、さっき山本参考人が、第三者が病院の中に入っていくことが大変大事だというふうにおっしゃいました。それは、もう山本さんは十分おわかりになっていることだと思うんですが、私も当時記者の時代に日精協の病院にもうかけまくったんですね。名簿をいただきまして、別に複雑に見るのではない、カメラを持っていくわけでもない、ただ院長にお目にかかったり病院のことを伺いたいという電話をかけまくりましたけれども、ほとんど九九・九%お断りをいただいた。そういう意味で、やはり日本の精神病院は非常に透明性に欠けると思っております。
 日精協の方で、例えばもう少しオープンに第三者が病院の中を、よほど悪いことをしていない限り、普通に治療さえしていたら病院の中に入って、病室にしても実際に見せていただいて、病気の特徴とか、それから患者さんにお会いしたりして、私たちはむしろ得るものの方が多くて、批判的に入っていくことよりははるかに、見せていただいた病院は特にいい病院でしたから、いろんなことを学びました。
 そういう意味で、もっと病院を開放していただきたいというふうに思うんです。先ほど山本参考人がおっしゃったように、第三者が病院に入っていくことをぜひ進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
参考人(河崎茂君) 今おっしゃったこと、全くそのとおりだと思いますし、今でも各ブロック、支部を通じてそういう教育はしておるわけですけれども、今後より一層ちゃんとやるように、もう一回改めて各支部を通じて会員に教育をしていきたいと思います。ここでお誓いいたします。
堂本暁子君 私、それではまたあちこちの病院にぜひ見せてくださいとお願いをして、万一行かれないときは会長のところにお願いに参りますので、よろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。
西川きよし君 本日は御苦労さまでございます。よろしくお願い申し上げます。
 まず、山本参考人に冒頭お伺いしたいんですけれども、昨年の十月に大阪府がこの問題に対する報告書を出されました。平成五年当時ですけれども、大阪の精神医療人権センターなどからお訴えがございまして、医療監視を実施したけれども結果として虚偽の報告が発見できなかったと。これに対して改めてどう思われるか、お伺いしたいと思います。
参考人(山本深雪君) 私は、そのことについては非常に不思議に思っています。今でもそうです。
 裁判の過程で、平成元年から五年度までの医療監視のときに職員一覧表が病院側から行政に提出されました。私たちは、それをもとに働いていたか働いていなかったか等を調べましたところ、死亡していた方のお名前、それから旧姓と新姓で同一人物がダブっていたり、それから八十三歳の方が安田病院では週四十時間勤務し大和川で週三十二時間勤務するというふうに、素人の私たちがチェックしただけでもすぐにわかるおかしさが何点かありました。
 本当にきちんとやる気が医療対策課の方にあったのであれば、私はあれは放置されなかったのではないかというふうに思います。看護婦さんの免許証番号というのがございますが、あれでチェックをかければわかったはずです。一人二人でもそういう妙なことが書面上あるということをこちらが具体的に提起していましたので、であれば、もっと真剣に調査し直す必要性があると、もっと早期に動けたというふうに思います。ですから非常に不思議です。
西川きよし君 次に、河崎参考人に医療監視体制についてお伺いしたいんですけれども、大阪府の報告書の中で、例えば医療法人、適正を欠く疑いのある病院に対しては事前に通知を行うことなく抜き打ちで医療監視を行う、こういう改善を行う一方では、医療法については、医療従事者に対する報告の徴収権限について医療法に明記すること、そしていわゆる抜き打ち検査においても必要書類が閲覧できるよう医療監視に必要な書類の保存、常備等についての法、そして施行令及び施行規則に詳細に規定すること、このように要望を出しているわけです。
 先週、私も厚生省のお考えをお伺いしました。そういたしますと、このような権限の強化については、安田病院事件のようなケースに的確な対処をするためには有効であるが、しかし行政庁の権限強化になるというところで、これは大変慎重な検討が必要であるというふうに御答弁をいただいたんですけれども、この医療監視体制について河崎参考人の方からぜひお伺いしておきたいと思います。
参考人(河崎茂君) 医療監視は厳密にやらなければいけないし、我々はやはり受けるべきだという考え方を持っております。
 ただ、その前に、お互いに同僚審査というものを全国各支部で実施しております。ということは、この安田病院の場合に、前にある不祥事件がありまして、日本精神病院協会の会員を脱会していただきました。その後、大阪の精神病院協会を通じて入会をということで当該病院からの何回かの申し出があったんですけれども、大阪の精神病院協会としては、日本精神病院協会に入っていただくにはもっともっとよくなっていかなければというようなことで入会を拒否したわけなんです。
 逆に、入会を拒否したから会員ではない、会員でないところに我々自身がどのように指導していくのかということも我々の中で議論がありまして、少し悪いことをするとすぐ脱会さす、脱会させてトカゲのしっぽを切って、あといいものだけ残っておるんだったら一体どうなのか、指導できないじゃないかというようなことも我々としては議論をしております。
 もう一つ、大阪は当該病院の院長を役員会に呼んで、そしてこの問題が発生してから清く正しくやはり医療監視で行政の指導を受けなければいけないんじゃないかということを二時間にわたって本人に話をしたいきさつがあります。でも、本人自身が、うちは正しいんだということで突っぱねました。それ以上協会としてはどうもできなかったというようなこともあります。
 我々としては、行政の手を煩わすまでも我々内部でやり、そしてその後、やはり行政の指導はどの病院でも年に何回か受けておりますから、それはやはりちゃんと受けるべきだというように思っております。
西川きよし君 短い時間ですので、いろいろお伺いしたいと思うんですけれども、改めて山本さんにお伺いしたいと思うんです。
 今も御意見が出ましたが、この医療監視を行政の特権として隠している現状に終わらせるのではなく、市民の目で医療を監視することができるシステムづくりを出す以外に市民の不信感はぬぐえないというふうに山本さんはおっしゃっておられますけれども、改めて。
参考人(山本深雪君) 私は、医療監視の仕事を本来の趣旨に基づいてするのであれば、今回みたいににせものの書類を提出することができないようなシステム、それはイコール現場に働いておられる看護婦さんたち、スタッフの方々も見ることができるような従業員名簿の公開の仕方があってもいいのではないかというふうに思います。それが最もうそをつきにくいと思います。
 今、とりあえずドクターの名前については曜日ごとに掲示がされていますが、看護婦さんに関しては掲示も何もありませんし、名札をつけていない病院もあります。国家資格に基づいてお仕事をしておられるわけですから、最低限名札をつけていただくことと、現場で働いている常勤の看護婦さんに対しては従業員の中で従業員名簿を見ることができるという情報公開をしていただければ、行政の手を煩わせることもなく不正はできないシステムになると思います。
 二点目は、患者として、利用者としてその医療機関を利用したときに、見たいときに、現在では職員充足率のパーセンテージも含めて黒塗りでつぶされて出てきます。最低限そういうことがないように、医療サービスは特権ではないということを今の時代はきちんと確認していけば、そういう黒塗りの情報公開を市民にするということがなくなっていくのではないか、そういうふうな関係づくりこそが大切なのではないかというふうに思います。
西川きよし君 考慮させていただきます。
 もう五分ほどしか時間がなくなってしまいました、いろんなことをお伺いしたいんですけれども。
 山本さんはヘルパーさんの研修のことも提言されておりますけれども、精神障害者を入れていくということのヘルパーさんのメニュー、どういうことを日ごろ研修していけばこういうお仕事に従事できる人がふえてくるかというようなこともお伺いしておきたいと思うんです。
参考人(山本深雪君) 私は、精神障害を持って地域で暮らしている人の具体的にお話を聞く機会、交流する機会をヘルパー研修の重要な部分としてつくっていただくことだと思います。そうしたら、その方の中にあった精神障害者へのゆがみのようなものがさあっと崩れていって、ああそうかという形で、一人の方としてどうサポートすればいいのかということはその方自身からお話を聞けばいいんだなというふうに身をもってわかっていただけると思います。
 ですから、ヘルパー研修や保健所のスタッフ研修、それから地域の方々のボランティア養成講座の中にぜひ精神障害を持つ方御本人の、会の方にお願いしていただいて、そこの方々との交流の場を十分持っていくプログラムをつくっていただくことが、今後のボランティア養成プログラムにおいても、ヘルパー養成プログラムにおいても、それから地域生活支援センターの運営プログラムにおいてもとても重要な部分がそこにあると思っています。
西川きよし君 私もこちらへ寄せていただいて十三年になるんですが、法律の改正というようなことも大切なことですけれども、日々の暮らしの中での生活というんですか、うちも三人の年寄りがおるんですけれども、そういう意味では、こういった生活をいかに地域の中で支え合うかというようなことも本当に大切なことだと思います。
 せんだってもお便りをいただいて、ぜひ池原さんと河崎参考人にお伺いしたいんですけれども、高次脳機能障害で福祉事務所や保健所、ありとあらゆるところに相談に出かけたというお便りをいただいたんですけれども、相談、援助が全く得られなかったと。この委員会で厚生省にも質問をいたしました。厚生省といたしましても実態がよく把握できていないので、これからは実態の把握、福祉施策のあり方について現在は研究中であるということでございました。
 ぜひきょうお伺いしておきたいと思いますけれども、医療と福祉の谷間というんでしょうか、高次脳機能障害に対する御意見をぜひお伺いしておきたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
参考人(池原毅和君) 必ずしも適切なお答えにならないかと思いますが、ただ、そういう、はざま障害者などというふうにも呼ばれますけれども、我が国の障害者福祉の法制度というのがそれぞれの、身体の障害、あるいは知的障害、精神障害というふうな縦割りのシステムになっておりますので、そのどれにも該当しないという障害をお持ちの方が結局何の福祉的な施策も受けられない、あるいは医療的な手当ても受けられないというような現象が起こってきているということは、私たちの弁護士としての仕事の中でも時々御相談になられる方がおられます。
 ですから、こういう問題というのは、恐らく長期的には、長期的な解決を個々の方に申し上げるのは大変ある意味では無責任で酷なんですけれども、国の政策として考えるときには、先ほど谷中参考人の方からもお話が出ましたように、むしろ総合的な福祉法といいますか、つまり障害種別で縦割りにしてしまわない、すべての障害を、あるいは障害という枠も場合によれば取り払って、慢性的な疾患であるとか、障害であるとか、あるいは難病であるとか、そういうものを広く包み得るような総合的なケアシステムというものがやはり構築されませんと、必ずどこかで制度から漏れてしまう方が出てくるんだろうというふうに思います。
参考人(河崎茂君) 厚生省の障害保健福祉部が約三年前ですか、できましたね。自分たちの考えでは、その障害保健福祉部で全部網羅するんじゃないかという感じがしておるんですけれども、だめですか。障害保健福祉部という部で全部の障害が、身体、知的、精神だけではなしに、そのほか先生がおっしゃっておったそういう分野も全部網がかぶっているような気がするんですけれども。
西川きよし君 今、そういうふうに御意見をいただいたようなことを日々本当にお願いを申し上げているんですけれども、なかなか難しい内容でございます。
 時間が来ましたのでこれで終わりたいと思いますけれども、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
 御苦労さまでございました。
○委員長(尾辻秀久君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。