精神医療に関する条文・審議(その88)

前回(id:kokekokko:20051101)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。法案などはid:kokekokko:20051026にあります。

第145回参議院 国民福祉委員会会議録第10号(平成11年4月22日)
○委員長(尾辻秀久君) ただいまから国民福祉委員会を開会いたします。
 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○清水嘉与子君 既にこの法案につきましては先週同僚議員の方から総括的な質問が随分出されておりますので、なるたけ重ならないように三十分の時間を使わせていただきたいと思っております。
 まず初めに、この精神障害者の定義のところでございますけれども、このたびの改正によりまして「中毒性精神病」という表現が「精神作用物質による急性中毒又はその依存症」というふうに改められました。この改正の趣旨等をぜひお伺いしたいということと、この精神作用物質による問題、薬物あるいはアルコール、こういった中毒あるいは依存症の動向についてもあわせてお伺いしたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 今回の改正で、第五条の定義規定におきまして、今御指摘のように「精神作用物質による急性中毒又はその依存症」と、このように明記をすることとしたわけであります。これは、一つは、現在、第四十四条で覚せい剤の依存者に関する準用規定がございますが、この準用規定を削除することによりまして逆に覚せい剤等の依存症者が法から外れるのではないかということがございまして、このような誤解を招かないよう、覚せい剤を含む精神作用物質の依存症を例示として明確化したものでございます。
 それから、中毒性精神障害、特に薬物依存症の患者の実態につきましては、平成九年の時点で入院患者が六百九十七人でございましたが、平成五年のときには五百八十八人ということで、確かに増加しているのではないかというふうに思います。
○清水嘉与子君 この薬物中毒依存症、これは非常に犯罪につながるケースも多いというふうに伺っておりますし、なかなか医療だけでは徹底して治療ができないという問題もあると思いますけれども、やはり専門的に治療をしなきゃいけない問題だというふうに思っております。
 ところが、これを拝見いたしますと、いわゆる専門病院として、専門病床でしょうか、埼玉県に四十床というのがありますが、これで対応できるのかどうか。ことし一月の公衆衛生審議会の「今後の精神保健福祉施策について」という報告書によりますと、国立病院・療養所でこういった薬物依存だとか合併症への対応を重点的に行うべきだという指摘もございますけれども、この辺どうなっておりますか、伺いたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 確かに、薬物依存症に対する専門病床につきましては必ずしも十分とは思いませんが、国といたしましては、国立精神・神経センターの精神保健研究所が国府台にございますが、ここにおきまして薬物依存症についての研究、それから研修を行っております。それから、国立療養所下総病院、ここでもこういった薬物依存の患者の受け入れを行っているところでございます。
 先ほど御指摘の審議会からいただいた意見書でも、国立病院・療養所の再編合理化の中でこういった薬物依存などの患者に重点を置いて対応すべきではないかという御指摘がございました。これを踏まえながら、国立病院・療養所におきまして、各施設の機能に応じて薬物依存症を有する精神障害者への対応に重点を置いて、民間病院のモデルとなるような先駆的な医療に取り組んで、治療体制の充実に向けて努力をしていきたいと考えております。
○清水嘉与子君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 それから、あわせてアルコール中毒・依存症の問題なんですけれども、精神障害者二百十七万と言われているわけですが、いわゆる治療を必要とするアルコール依存症が二百二十万くらいいるんじゃないかというふうに言われております。この中で本当に専門的な治療を受けている人というのはほんの数%だそうでございまして、余り治療も受けていない。つまり、それだけ自分でそういう症状というか自覚がないからだと思いますけれども、ほうりっ放しになっているという状況でしょうか。
 あるいは、行くにしても内科に行く人が非常に多い。内科に行きますと、臓器が、例えば肝臓が悪くなった、腎臓が悪くなったというようなことで、そこは治してもらう。治してもらうとまたお酒が飲める状態になるというようなことで、何度も繰り返し治療を受けているというようなことで、なかなかこれが根絶できないというような問題がございます。
 ある看護婦が言っているんですが、自分たちは看護をするのに自分が健康ないい状態でなければいい看護はできない。そうすると、かなり一生懸命自分たちの健康管理をよくして職場に行く。ところが、職場に来てみたら、患者さんは何度も繰り返して、自分の健康管理ができない人がどんどん来るというようなことで大変矛盾を感ずる。第一こういうところに医療費が使われていることもおかしいんじゃないか、何とかなりませんかと、こういう話なんです。
 確かにそうだと思うんですね。精神科に行きましてもなかなか医療だけでは治らないで、社会的にも心のケアもしなきゃいけないというようなことで、やっぱり退院するまでに少なくとも三年くらいはかかると言うんです。それでも意志の強い人でなければなかなか治っていかないというようなことを聞いております。
 仮に内科に受診いたしましても、反復受診を避けられるような治療をしなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、そういう方向にぜひ進めていただきたいというふうにも思います。また、こうした簡単に反復受診しているような人たちに医療費の面でもペナルティーを与えるようなことも考えたらいいんじゃないかというふうに思うんですけれども、これは部長のところの所管じゃないのかもしれませんが、厚生省全体で医療費をいかに適正に使うかということをやっているわけですからぜひお考えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) アルコール依存症はかなりの方がいらっしゃると思いますが、精神病院に入院している患者としては一万七千六百人程度いらっしゃいます。
 今御指摘のように、お酒が飲めるように治しに病院に入るという批判というか、皮肉をおっしゃる方もいらっしゃるわけでありますが、結局はアルコールというのがいつでもどこでも手に入れられるということ、それからアルコールに対する社会的認識の問題、こういったものが深くかかわるものだと思います。
 そういった観点から申し上げましても、今精神保健福祉センターでありますとか保健所の保健婦さんの活動の中で、家族のそういう相談を受ける窓口としての機能もさることながら、断酒会などの自助努力のグループがございます。こういったところを育成して、とにかく自分が飲まないという意思をいかに継続するかということのためのグループづくりということで大変御尽力をいただいておりますし、一般の社会に対しても、いわゆる適正飲酒ということで、飲酒文化そのものに対しても関心を向けていただくというようなことの御努力をいただいているところであります。と同時に、医師や看護婦、保健婦あるいはPSWを対象といたしまして、国立久里浜病院がアルコール依存症臨床医等研修事業を行って、その質的な向上も図ってきております。
 アルコールは、今申し上げましたようにいつでもどこでもだれでも手に入ることのできる依存物質でございますので、やはり社会全体の理解と協力というものをバックにしながら、今申し上げました関係機関こぞってこれらに取り組んでいく必要があるのかなと、このように考えております。
○清水嘉与子君 アルコール依存症は特に女性だとか若い人たちがどんどんふえているそうでございますので、ぜひこういったところについても気を配っていただきたいというふうに思います。
 次に、精神病院の長期入院の問題なんですが、これはもうこの前の委員会でも随分皆様から御指摘をいただいたところでございます。今国会の法改正が精神障害者の人権擁護ということを前面に出した改正でございますから、当然のことながら、長期に人間としての自由を拘束していることこそ最も問題じゃないかというような認識でございまして、これはぜひ何とか是正したいという気持ちを私は持っております。
 先進諸国が既にもう精神病院の壁を取り払うことに努力してかなり成功しているということを知りながら、しかもそれは随分日本でもこれをしなきゃいけないということを言われながらちっとも改善していかない、これは何なんだろうかというふうに思うわけでございます。
 しかし、もう今やそんなに待っていられないんじゃないかというふうに思います。といいますのは、今三十三万人の入院患者のうち三分の一はもう六十五歳以上の高齢者になっております。そうすると、現場ではおむつを使ったりなんかして介護が必要な人が大分ふえているという実態がございます。そういたしますと、来年から始まります介護保険法で当然介護の認定を受ければ介護保険法の対象として施設サービスも受けられる人も出てくるかもしれない。しかし、現実問題としてそういう人たちが環境の整った介護施設に入れるか、なかなか難しいと思います。そうなりますと、当然のことながら精神病院の体系の中でこれをやはり変えていかなきゃいけない問題が出てくると思います。
 今、一般のところでも老人の社会的入院を改善しようということで療養型病床群に変えたり、あるいは中間施設をつくったりというような施設の変更がどんどん行われているわけでございますけれども、一体これを精神科の領域でどうするのかというような問題が出てきております。
 幸いなことに、その受け皿であります在宅福祉サービスはこれから充足しようということでございまして、これはぜひやっていただきたいわけでございます。今回の改正におきましても、施設に関しては何ら新しい提言がないわけでございまして、これは一体どうするのかということが心配でございます。今多いと言われている精神病院からの転換計画、これをぜひ早急につくるべきじゃないかというふうに考えますけれども、これはいかがでございましょうか。大臣、どうぞよろしくお願いします。
国務大臣宮下創平君) 今回の改正の特色は、地域対策といたしまして、在宅精神障害者へのサービスにつきましては、ホームヘルプサービスとかショートステイ施設等を法定いたしました。そしてまた、社会福祉施設対策として、従来あるものに加えまして地域生活支援センターというようなことで充実をしております。
 今、委員の御指摘は、精神病院の長期入院の是正と、それから介護保険導入に伴ってその領域をどうするのかという問題だろうと思うんです。こうした長期入院患者の療養関係の整備につきましては、先日、公衆衛生審議会から意見書が出されておりまして、これによりましてもリハビリテーションとか介護サービスのニーズが高い者の処遇について検討を行うべきであるという指摘もございます。
 したがって、現在検討会を設けまして、長期入院患者の療養のあり方について検討を重ねております。この中には、医療法における医療提供体制の一つとして病床機能の見直しの論議も現在行われておりますので、そういったことも背景に見据えながら、御指摘の精神病床を転換する長期入院にかわる新たな施設をどうやったらいいかということを検討することを含めまして検討会で今やっておりますので、それらを踏まえまして御趣旨のような施設のあり方について模索し、実施を図るべく努力してみたいと思っております。
○清水嘉与子君 既に一般の病院の方ではその転換がどんどん進められているわけでございまして、少しゆっくりし過ぎるんじゃないかという感じもいたします。なぜなら、入院している患者さんたちも介護保険に関しては保険料を払うわけです。被保険者になるわけでございまして、やっぱり当然サービスを受ける権利はあるんだろうと思います。そういう点で、そういう整備されていない方々をどうするのか、行く先がないというようなことになりますといろいろ問題が出てくるのではないかと思いますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。
 それから次に、精神科特例の廃止のことを、これもたくさんの委員の方から出ておりますけれども、私の方からも一言お願いをしたいと思います。
 最近、精神病院に絡んだ、看護婦が絡んだ事件が幾つか出ておりまして、大変心を痛めているわけでございます。しかし、これは看護婦が足りないというだけでは済まない問題だというふうに意識をしております。しかし、早期に治療して病状を抑え、そして早く退院していただくとすれば、やっぱり必要な職員はそろえなきゃいけないということだと思います。そういう意味では、精神科特例の早期廃止は望ましいというふうに私も思っているところでございます。
 ところが、実際見ますと、特例さえ守れないところが結構あるということでございます。精神科のその他看護に3種なんというのは、1種もそうですね、一応六対一はいるけれども、ほとんどが准看護婦であるというところだとか、あるいはもう六人も満たしていないというところが平気で病院として仕事をしているということ、こんなことはやっぱりおかしいんじゃないかというふうに思うんですけれども、これはまず改善するべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(小林秀資君) 今、先生から、精神科特例というものにも問題があるが、その特例さえ守っていない病院があるのではないかということで厳しく御指摘をいただいたところでございます。
 厚生省の方では、医療法に定める人員配置基準に関しましては、都道府県が毎年度実施する医療監視に当たりまして特に重要としているところの点でございまして、その遵守の徹底を図っているところでございますし、今後とも厳しく指導をしてまいりたい、このように思っています。
 特に、精神病院につきましては、毎年度実施する実地指導とも緊密な連携を図ることで患者の処遇について総合的な点検、指導を行うよう各都道府県に対し指導を徹底しているところでございまして、今後とも基準の遵守の徹底を図ってまいりたい、このように思っております。
○清水嘉与子君 行政指導で直っているんだったらもうとっくに直っているんだろうと思います。しかし、ずっと長いことこのままで来ているということがやっぱりおかしいんじゃないかというふうに思うんです。確かに、患者さんの方からいえばサービスを受けていないということを訴えることもできない。サービスを受けていて、これが普通なのかどうかということがわからないというような状態の中で行われている。確かに、今までは余り手をかけなくても、ただ生活しているだけで、かぎをかけてしまえばよかったのかもしれませんけれども、それではいろいろな問題が出てくるんだろうと思います。ぜひその点についてはよろしくお願いをしたいと思います。
 一般的に精神科というのは看護婦が集まりにくい領域であることは事実なんです。看護の世界でも多少偏見があるのかもしれませんけれども、なかなか集まりにくい。したがって、准看護婦の比率も高いというようなことでございまして、これをもう少し魅力のある職場にしていくということも大事なことだと思います。
 外国では精神分野の専門家というのがかなり出ておりまして、いい仕事をしているわけなんです。日本でもやっと日本看護協会が専門看護婦の制度をつくって、その中の一つの領域として精神科の看護を選んでいるわけなんです。そういう意味では、こういう人たちが本当に現場に入って仕事ができるような体制をぜひつくらなきゃいけない。
 これは前回のいろんな参考人の意見にも出てまいりましたけれども、やっぱり処遇の、診療報酬の手当てやなんかも必要だと思います。そういった面で精神科そのものを、何か人が足りない中でも平気で行われる医療じゃなくて、きちんとした専門家によって行われる質の高い医療、看護が行われる場としてぜひやっていただきたいというふうに思います。
 それから、今、局長の方からは医療監視等々おっしゃいましたけれども、なかなか全体に見渡せないのが事実でございます。
 そこで、一般の病院なんかではかなりこのごろ第三者機能、病院の機能を第三者が評価するというような役割を随分取り入れているというふうに思います。そして、そういった結果を公表しているというようなことによってお互いに病院のサービスの質がオープンにされるというようなことになっているわけですが、精神科の領域でもこの前、河崎先生は少しそういうことも始めているとおっしゃいましたけれども、もう少しオープンにやるということが必要なんじゃないか。
 どうも精神科というのがなかなか一般の人がお見舞いにも行きにくいし、なかなか普通の人は入りにくいところだというふうに思います。そういう面で透明性といいましょうか、そういうものをもう少し明らかにするためにも、なかなか国が制度化することは難しいのかもしれませんけれども、専門団体によって、自分たち自身でこういったことをもう少し前進させる方向に進めるべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 医療機関に対します第三者機関による機能評価につきましては、既に財団法人の日本医療機能評価機構におきまして、特に一般病院を先行して着実にその実績を上げていらっしゃる、このように聞いております。
 これにつきましては、一般病院の評価に加えて精神病院も対象にするということから、保護とか、あるいは隔離の問題も評価の対象に入れながら精神病院についても機能評価を行うという仕組みが設けられております。ただ、ことし三月現在で八病院が認定を受けただけでございます。
 しかし、この機能評価事業というものが、今御指摘のように、医療の内容の透明性あるいは質の確保に非常に有用な仕組みであるということにつきましても精神病院関係者にもよく御理解いただきたいと思いますし、この事業が精神科の医療機関に広く活用されることが望ましいというふうに考えております。
○清水嘉与子君 ぜひそういう方向でよろしくお願いしたいと思います。
 次に、精神障害者の就労・雇用支援の問題でございます。労働省、よろしくお願いします。
 精神障害者の中で六〇%以上を占めているのが精神分裂病、かつては本当に治らない病気というふうに私たちも習っておりました。しかし、今日では薬物療法あるいはリハビリテーション、こういったきめ細かい治療をすれば社会的に自立できる可能性が四〇から六〇%、仕事ができる可能性というのは七〇から八〇%程度、これは水島先生が監修された「今日の治療と看護」にございましたけれども、そういうふうな大変高い率で復帰も可能だということでございます。
 これは、精神分裂症に限らず、適正な治療とかリハビリテーションを受けて症状が安定している精神障害者すべてに言えることでございますけれども、やっぱり何らかの就労・雇用支援、こういったシステムが動けば相当社会復帰だとか社会参加ができる人がいるんですね、いるはずです。
 そこで、これも御指摘が随分あるようですけれども、身体障害者あるいは知的障害者並みに法定雇用率にカウントするというようなことができないだろうか。そういうことによって雇用の機会が拡大するということになると思いますけれども、そういった検討がもう少し前向きにできないだろうかということをお伺いしたいと思います。
○政府委員(渡邊信君) 精神障害者に関します雇用対策としましては、現在は精神障害者の方を採用した事業主に対して賃金助成を行いますとか、あるいは精神障害者の就業援助ということで職場に援助者を配置したときのこれに対する援助、こういったことを行っております。また、今年度からは、公共職業安定機関の職員が医療機関に赴きまして精神障害者に対しまして就業に関するガイダンスを行う、こういった事業を行うことにしておりますが、まだこれを法定雇用率の対象とするというところには至っておりません。
 今、先生御指摘のように、ようやく昨年から知的障害者が法定雇用率の基準に算入をされたという段階でございまして、遺憾ながらこの精神障害者に対する雇用対策というのは大変おくれているのが実情かというふうに思っております。
 精神障害者の方を雇用率の対象とすることにつきましては、どのような範囲の方が雇用・就業能力があるのか、あるいは職場における適正な雇用管理のあり方というものはどういったものか、あるいは個人個人のプライバシーの保護、こういった問題についていろいろと検討する課題があるというふうに思っております。
 労働省では、今年度から、できるだけ早い時期に研究会を立ち上げまして、三カ年を目途にいたしまして精神障害者の法定雇用率制度における位置づけというものを明確にしていきたいというふうに考えております。
○清水嘉与子君 ぜひ研究を進めていただきたいと思います。
 最後の質問になると思いますけれども、先日の参考人の意見を伺っておりますと、今度の改正を皆さん前向きに、非常に喜んでいらっしゃるという感じでございます。やはり地域に在宅で生活ができる障害者がふえるということに対しては大変喜んでいるわけでございます。
 しかし、そうはいいましても、市町村が責任をだんだんに負ってくるようになるわけでございます。実際問題として、障害者計画にいたしましてもまだまだ三分の一程度しかできていないというような実態もございます。そしてまた、母子だとか老人の問題、あるいは介護保険法というようなことで、どんどん事業が市町村に流れていく。確かに身近なところで仕事が流れるというのは大変いいことではありますけれども、一体それを受けとめる体制ができているのだろうか。人の問題が特に大きいと思います。そんなことで皆さんも大変その辺の御心配があったわけでございまして、その辺の対応を伺いたいわけなんです。
 特に、精神障害者地域生活支援センター、これが新たに社会復帰施設として位置づけられたわけでございますけれども、これに対する皆さんの期待も物すごく大きいんです。私も厚生省から話を聞いていた以上に大変皆さんが地域における相談、助言の最先端の専門機関であるということで、当然のことながらここが精神保健福祉士なりなんなりのそういう専門家がコミュニティーケアを進める拠点になるというようなイメージを非常に膨らませて期待をしていらっしゃるのを伺いまして、私もそうなったら本当にいいなというふうに思うわけでございますけれども、一体それをどういうふうに進めていくのか。
 今まで精神障害者の問題は、保健所の保健婦さんたちがまたさらに勉強して精神保健福祉相談員の資格を取ったりしてかなりきめ細かい対応をしてきております。市町村の保健婦でもそういう資格を持っている者もかなり出てきておりますけれども、やはり専門的な対応というのはどうしても欠かせない問題だというふうに思うんです。そういう市町村の受けとめをどう充足させるのかという点についてお話を伺いたい。
 あわせて、保健所の保健婦たちが、一体保健所から市町村にそういう仕事が移っていったときに自分たちはどうするのかということで非常に問題意識を持っているわけでございます。私は、やはり保健所も今以上にもっと力を出さなければいけないんじゃないかというふうに思っているわけでございます。
 その辺について、市町村の事業の充実と、それから保健所の役割について改めてお伺いしたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 今回の法改正におきまして、地域で生活をされます精神障害者を支援するということで、身近な市町村で在宅福祉サービスを実施するということ、それからそれに対応して、それらのサービスの利用に関する相談、助言を市町村にも行っていただく、このような仕組みにすることにしております。
 在宅の精神障害者の支援に対しまして、今御指摘の地域生活支援センターには大変期待が多いわけでございますし、これも障害者プランの中で整備計画を立てて充実を図ることとしております。今回の法改正でもこれを法定化するということでその位置づけを明確にすることといたしております。
 この期待を受けておりますセンターでありますが、市町村での相談を受ける場ということでもありますので、そこで働かれる皆さん方の精神保健福祉に係るノウハウ、こういったものについては当然十分な質を確保する必要がある、このように思います。
 もちろん市町村も同様でありますけれども、こういった地域における精神障害者に対するいろんなサービスのためのノウハウというものは、保健所が今まで一番歴史を持って培ってきている分野でもあろうかと思います。そういう意味で、保健所との十分な連携を図ることは大変重要なことだというふうに認識しておりますし、当然これから市町村に精神保健福祉の部分での事業が付与されるわけでありますので、市町村も保健所の保健婦の皆さんから技術的あるいは専門的支援をどうしても受けなければならない。と同時に、本来業務であります医療、保健の分野は依然として県すなわち保健所に残っておるわけでありますので、むしろ今回の改正によって保健所は今まで以上に市町村に対しても重要な役割を担っていただくということで、その御協力をお願いしていきたいと考えております。
○朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日でございます。
 先週の質疑、それから今週前半の参考人からの意見聴取、そしてきょう第二ラウンドの質疑ということで、かなり検討が深められてきているというふうに思いますが、この機会にぜひ確認的に幾つか質問をさせていただいて、この改正案をより有効なものにしていくための一つの素材としていきたい、こんな気持ちで幾つか質問をさせていただきます。
 まず、この間、精神保健福祉のサービスをより充実させていく、あるいはより量的にも拡大していく、このためにはぜひとも人材の育成確保という点が大変重要であるというのはもう多くの委員からも御指摘がございました。そういう意味では、これというふうに特定するわけにはいかない、むしろ全体的に、精神保健福祉サービスを担うマンパワー、人材を育成確保していかなければいけない、こういうふうに当然思うわけです。しかし、そうは言いながらも、この間繰り返し、臨床心理技術者の国家資格の問題について、国会でも附帯決議もされておりますし、強い要望が各団体から出されております。
 そこで、精神保健福祉サービスを担う多くの人材の中の重要な一つの職種として、臨床心理技術者の国家資格をでき得る限り早急に創設すべきではないかと思います。
 もう改めてあれこれ申し上げませんが、一昨年、精神保健福祉士、PSWの資格が成立をいたしまして、大変これは多くの皆さんにも評価をいただいているし、一歩前進だと私も高く評価をしているわけですが、その法律を審議したときの附帯決議に、つまり平成九年十二月、参議院の厚生委員会では「臨床心理技術者の国家資格制度の創設について検討を進め、速やかに結論を得ること。」と、念には念を入れてこういう表現での附帯決議がされております。
 こういう経緯を踏まえて、改めてこの機会に私からも、この臨床心理技術者の国家資格制度を早期に実現するべく厚生省としてもさらに一層の御努力をいただきたい、このことをお願いし、お考えをお聞きしたいと思います。
 この点についてはぜひ大臣の方からお考えをお聞かせください。
国務大臣宮下創平君) 臨床心理技術者の国家資格制度の創設という問題につきましては、今御指摘のように、平成五年の精神保健法の改正以来、数次にわたりまして衆参両院の厚生委員会におきまして附帯決議が行われまして、その検討の必要性が指摘されてまいりました。
 確かに、人材養成という観点から重要な視点だと存じますけれども、厚生省としましては、平成六年度以降その資格のあり方について研究を続けてまいりましたが、いろいろ問題がないわけではない。つまり、臨床心理技術者の心理業務と医師の行う医療行為との関係とか、それから臨床心理技術者の対象とすべき業務の対象分野をどうするかとか、あるいは受験資格のあり方等、基本的な問題につきまして関係者間の合意が得られない状況で来ております。
 そんなことで、いろいろの問題点がございましてなかなか意見の調整がつかないというのが実情でございましたので、現在、平成九年度からでございますが、臨床心理技術者の資格のあり方に関する研究班というのを設置いたしまして有識者による検討を進めておりますが、最大の問題は、今申しましたように、臨床心理技術者の行う心理業務と医療行為または診療の補助行為との関係について問題がございますので、集中的に現在検討させていただいております。
 今後、関係者の意見の調整を図りつつ、これは六回にわたる附帯決議等もございますので、ひとつその結果を踏まえて前向きに検討したいと思っております。
○朝日俊弘君 ありがとうございました。
 確かにかなり難しい調整をすべき課題があることは重々承知の上で、ぜひとも前向きの検討をお願いしたいと思います。
 それでは、二つ目の問題として、今回の改正で、法第二十二条の保護者の義務規定のところについて大幅な改正がされました。このことは、かねてより家族会の皆さんが強く要望されていたところでもありますし、また、精神障害者自身の自己決定を尊重するという観点からも、大変評価すべき改正が行われたというふうに私も理解をしております。
 そこで、改正された第二十二条を読んでみますと、前半は、保護者が精神障害者に治療を受けさせる、こういうことは何とか引き続き保護者の義務として残しておきたい、それから後段は、精神障害者の財産上の利益を保護する、これも一定程度保護者の義務として残しておきたい、こういうふうに書かれているわけですが、どうも読み方によっては、あるいは表現ぶりがどうも適切ではないのではないか。むしろ、括弧書きの中に書いてありますように、患者さん自身がみずから納得して、あるいは同意をして入院している場合とか、あるいは一定程度の病識をちゃんと持ってみずから通院している場合とかいう場合には、必ずしも、保護者が治療を受けさせなきゃいけないとか、あるいは保護者が財産上の利益を保護しなきゃいけないとかいう規定をあえてする必要はないのではないか。むしろこの部分は、患者さんの、あるいは精神障害者の自己決定を尊重する、こういうふうにきちっと書いた方がいいのではないかと思うんです。
 そういう観点から見ると、この二十二条の書きぶりがいささか不適切ではないかと私は思うんですが、もう少し適切に表現した方がよいのではないかと思うんですが、この点についてのお考えがあれば聞かせてください。
○説明員(今田寛睦君) 今回の改正案におきましては、保護者の過重な負担を軽減するという観点から、自傷他害防止監督義務の規定の削除を図りましたとともに、任意入院患者等みずからの意思によって継続的に必要な医療を受けている者の保護につきましては、御指摘のとおり、治療を受けさせる義務や財産上の利益を保護する義務等を免除することにより、精神障害者の自己決定を尊重する観点に立って保護義務の軽減を図る、こういうことでございます。
○朝日俊弘君 そういうお考えでしたら、これはまた後で委員の皆さんにもお諮りをして、もし必要であれば、しかるべく表現を改めるということを私の方から御提案をさせていただきたいと思っています。
 次に、三つ目の問題でございますが、いわゆる医療保護入院の要件に関連して若干幾つかお尋ねしたい。
 確かに、医療保護入院、つまり本人自身の同意あるいは納得によって入院ができない場合に、保護者等の同意に基づいて入院をしていただくという、その要件をどういうふうに定めるかというのは大変難しい問題であることは承知をしております。事実、たしか公衆衛生審議会からの改正要綱が答申されたときの表現は、医療保護入院及び応急入院の対象者の要件として、精神障害により入院の必要性が理解できないと判定されたものという書きぶりでありました。しかし、いろいろ御議論があったんでしょう。今回提出されている中身では、医療保護入院及び応急入院の対象者の要件として、精神障害により本人の同意に基づいた入院が行われる状態にないと判定されたものというふうに表現が変わっているわけです。
 ここの辺の変わった理由とも関係すると思うんですが、医療保護入院については、決して安易に行われることがないようその要件をできる限り条文にも明確に書いてほしいし、条文で書きづらいところがあれば、それ以外の方法でもってきちんと要件を明確にしていくという作業がぜひとも必要だというふうに私は考えています。
 それは、改めて申し上げるまでもないかもしれませんが、国連がもうかれこれ十年ほど前に、一九九一年でしたか、精神障害者のための原則を決議しておりまして、そこの原則の中に一項目、精神障害者の非自発的入院についてこんなふうに書いてあるんです。
 要するに、どうしても非自発的に入院させなければいけない状態がある、しかしそれは非常に本人にとってもそれから他人にとっても差し迫ってこのまま放置していたのではぐあいが悪いという状態があって、しかもその人を入院させなければさらにその状態が悪くなるだろうということが見込まれて、しかもほかにとるべき手段がないという場合に限って非自発的入院をというふうに、かなりくどくどとというか、きっちりとその要件を書いているわけです。そういう国連の原則と照らし合わせてみると、今回の精神障害により本人の同意に基づいた入院が行われる状態にないと判定されたものという規定ぶりだけでは、どうも範囲が拡大されていく、あるいは安易に広げられていく危惧なしとしない。
 ですから、申し上げたいことは、国連の原則をきちっと念頭に置いて、可能な限り法律の中に、あるいはその運用のための政省令や通知の中にこの趣旨をきちっと盛り込んで、医療保護入院の適正な運用を図るようにすべきだというふうに思いますが、この点について、これは大変重要な点ですのであえて大臣にお尋ねしたいと思います。
国務大臣宮下創平君) 保護入院制度につきまして、今回、本人の判断能力その他を勘案して、本人の同意によることが期待できない状況の場合に、これは強制的な措置になりますが、同意がなくても医療を確保するために、患者本人の利益のためにこのような措置を設けることとしたわけでございます。
 この要件につきましては、今おっしゃられるように、個人の人権、それから患者の医療と保健の確保という見地から十分な配慮が必要だと存じます。
 なお、これにつきましては、医療保険の資格者、これにつきまして保護入院をされるときには、診断を要するとかあるいは保護者の同意を要するとかいうような条件のもとでこれを認めることになっておりますが、なお詳細な条件等が場合場合で必要なことがあろうかとも存じますが、できるだけ保護入院の対象者の人権に配慮した、しかもこれが強制措置であるということを考えながら対応すべきものだと思っております。
○朝日俊弘君 できるだけ配慮してというお答えなんですが、私はもう少し強い気持ちというか考え方で臨んでいただく必要があるのではないか。
 繰り返し答弁は求めませんが、医療保護入院が安易に適用、運用されることがないように、可能な限り国連原則を念頭に置きつつ、その運用について、明確かつ適正な運用を可能とするようにきちんと対応をしていただきたい。このことは強く求めておきたいと思いますが、どうでしょうか。
国務大臣宮下創平君) 今御答弁したことを補足させていただきますけれども、こうした保護入院の重要性にかんがみまして、精神障害者の人権に配慮した適切な医療を確保するという点で基準を明確に、要件等を明確にいたしまして、この改正の趣旨を医療現場に十分徹底させるように配慮してまいりたいと思います。
○朝日俊弘君 よろしくお願いします。
 それでは次に、今お尋ねした医療保護入院の問題と関連して、任意入院の要件のことについてどうしてもお尋ねしなければいけません。
 といいますのは、今お話があったように、簡単に言えば、医療保護入院というのは、任意入院できない人について、しかも医療が必要である人について医療保護入院してもらうんだ、こういうことになりますから、そうすると、では任意入院とは一体何なのかということになります。
 任意入院については、もう改めて申し上げるまでもなく、本人自身が一定の説明を受けて同意し、あるいは納得してみずから入院治療を了解する、そういう方について入院していただく、こういうことでありまして、これは可能な限り任意入院による入院形態を多くするようにということでいろいろ取り組みをされているというふうに思うんです。
 ただ、気になりますのは、本人の同意ということについて、昭和六十三年五月付の通知によりますと、本人の同意とは「自らの入院について積極的に拒んではいない状態をいう」と。だから、積極的に拒んでいなければ同意というふうにとるのは、いいのか悪いのか、両面どうしてもあると思うんです。例えば、極めて理解力が低下していて、お医者さんから説明を受けても、そのことを必ずしも十分受けとめられなくて、返答に困って黙っているような場合とかも、いや、これは積極的に拒んでいないんだから同意いただいたと、これはやや無理があるのではないかと。
 今回、医療保護入院の要件を明確化するその書きぶりの中に、本人の同意が得られない場合についてというふうに任意入院の要件を持ってきたものですから、これはセットで要件を検討し直す必要があるのではないかというふうに私は思うんです。趣旨としては、任意入院の要件についても、あわせて、その概念というか、定義というか、考え方についてもう少し厳密に、しかも明らかにしていく必要があるのではないかと思うんですが、いかがですか。
○説明員(今田寛睦君) 御指摘の昭和六十三年の通知でございますけれども、この通知の意図するところは、任意入院に当たっての同意が、民法上の法律行為としての同意とは異なるということを趣旨として言っているわけでありますが、このような記述については、ある意味では、積極的に拒んでいない場合もすべからく任意入院にすべきという解釈も成り立つというような御指摘があるのも承知いたしております。
 今回の改正におきまして、医療保護入院の要件の規定ぶりを変えたわけでありますが、このことは、医療保護入院と任意入院を同意能力の有無といったところによって区別することになると思います。したがって、六十三年の通知にございます「患者が自らの入院について積極的に拒んではいない状態をいうものであること。」というその趣旨は、今回、法改正によって見直しをしなければならない、こういうことになりますし、当然、御指摘のように、この改正の趣旨に沿って同意能力のある者を任意入院として適用するようその趣旨を明確化した上でまた周知していきたい、このように考えております。
○朝日俊弘君 確かに難しい問題であることは承知しながらも、しかし今の法体系の中で、医療及び保護のために入院するという規定がありますね。随所に出てくるんですが、この規定ぶりが入院をさせる方向にどうも働いているんじゃないか。入院というのは、非常に厳密な状態で入院というのを考える。入院させた場合にはきちんと治療が提供される。当たり前のことなんですが、それがなかなか当たり前じゃないからあえて強調しているわけです。
 そういうふうに少し法律の中身を変えていく必要があるので、とりあえず今回の法改正に伴ってきちっと表現すべきところはできる限り表現をしていっていただきたい、そして運用について誤りなきようにしていただきたい、こんなことをお願いしておきます。
 それでは、あとの時間の関係もあって、用意した質問を幾つかすっ飛ばしてやりますので、よろしくお願いします。
 次にお尋ねしたいのは、前回の質疑のときにも若干議論がありました患者さんの移送の問題と関連して、応急入院の指定病院についてその整備を進めていきたい、こういう御答弁がありました。
 そのことは確かに必要なことで、積極的に応急入院の指定病院を計画的にあるいは地域的に整備していく、このことは私からも強くお願いしたいんです。ただ、気になりましたのは、そのときに指定基準を見直していきたいということをおっしゃったんです。
 これはジレンマだと思うんですが、確かにたくさん確保しようと思えば、指定基準を甘くすれば指定病院の対象はどんどんふえる。しかし、医療保護入院でなかなか病院にも連れていけない患者さんを入院してきちっと治療してもらうということを想定した病院なわけですから、そこそこのレベルというか水準が確保されている病院でないと、かえって何か、どこでも連れていけるようにすればいいのかということにもなりかねません。
 そういうふうに考えますと、現実に相当地域的に精神病院が偏在していて、ある地域では、そういう一定の水準を持っていて、しかも応急入院としての機能を果たしていただける病院というのがなかなか選定できないところがかなり出てくるんじゃないかと私は一方で心配しているわけです。
 ですから、繰り返しますが、ぜひとも今回の法改正に伴ってそれに対応できる体制づくりはしてほしい。してほしいが、同時にそれはある程度の質、レベルの担保された状況でないと逆の心配が出てきますよということを強調したいわけで、この点についてはどうお考えでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 応急入院指定病院につきましては、そもそもは保護者の同意を得ることができない場合を想定して、その体制を整えた施設として要件が定められておりますけれども、今回の改正法案によりまして、移送先についてこの指定病院を活用するという考え方になっておるわけでございますが、当然、移送先の医療機関につきましては、精神保健指定医あるいは看護婦あるいは看護士さんが常時診療可能な体制にあることなどが指定の要件になるのは言うまでもないことだと思います。
 ただ、移送の対象となる者がこの制度によって多くなるということが予測されますし、また、三百六十五日、昼夜を問わず診療応需の体制を確保するということからすると、地域内の複数の病院が連携し、あるいは輪番制なども考慮しながら対応するという意味で、現在の応急指定病院の指定基準を見直すべきだという意見が出されております。地域による格差もございますので、御指摘のように複数の二次医療圏を一つのブロックとして、そのブロックの協力を得ながらそういった病院を確保するという方法も考えていく必要がある、このように思います。
 いずれにいたしましても、この見直しに当たりまして、医療レベルが低下しないようにということについては、十分配慮した上でこの基準の見直しを考えていきたいと思います。
○朝日俊弘君 ぜひバランスよく整備を進めていただきたいと思います。
 一言つけ加えれば、残念ながら日本の精神病院は地域的に必ずしも適正に配置されていないところが多い。逆に言うと、精神医療機関の偏在というのが厳然たる事実としてあるので、それを全くホワイトボードの上に全部並べ直すということになかなかなりませんから、そこは一定の現実的な対応も求められていると思いますが、ぜひ質と量をうまくかみ合わせて体制整備を進めていただきたいと思います。
 それでは、次の問題に移ります。
 きょうは実は自治省からもおいでいただいています。大変お忙しいところ、申しわけございません。
 先ほど清水委員からもお話がありましたように、今回、精神障害者の福祉サービスの窓口を市町村に受けていただこう、こういう改正がなされました。ある意味で、この間の一連の精神保健法の改正の中で、前回ようやく精神保健福祉法というふうに名前が変わったわけですけれども、率直に言って、まだまだ本当の意味で福祉法になっていなかった面がある。今回、そこを一歩踏み込んで、市町村にもきちっとその精神障害者の福祉を受けとめてもらおうということについては賛成なんです。そういう意味で、ぜひそういう体制づくりに向けて市町村も頑張っていただけるような、そういう支援を自治省と厚生省と両方相まってぜひ協力してやっていただきたい、こういう思いであります。
 三年間の準備期間が設けられました。ただ、これよくありますのは、三年間準備期間をつくりますと、最初の一、二年は余り何もしなくて、最後の一年でどたばたするというのが結構多いんですね。しかも、今、市町村は介護保険の来年春からの実施でもうてんやわんやでして、多分この国会でこの法律が成立して、さあ三年後には市町村で精神障害者の福祉をやっていただきますよと言っても、全然ぴんとこないところが結構あるんじゃないかと思うんですね。
 そういうことからすると、よほどさまざまな形で御理解をいただく努力をしなきゃいけませんし、御理解をいただくだけじゃなくて、はっきり申し上げて、財政的にも、それから人材的にもちゃんと支援をするという体制が必要だと思います。
 そこで、この施策の中心は当然厚生省になると思うわけですが、一方で自治省としてもさまざまな御配慮をいただかないと市町村としても大変困ってしまうと思います。自治省としてどんなふうに受けとめておられて、どんな考え方で支援をしていこうとされているのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(二橋正弘君) 今お話にございましたように、精神障害者の福祉サービスの利用相談等につきましては現在保健所で行われておりますが、今回の法改正が行われますと十四年度から市町村が行うということになるわけでございます。これに伴いまして、都道府県は、保健所によります技術的な事項についての協力、その他必要な援助、それから市町村相互間の連絡調整を行うといったバックアップをするということになっております。自治省といたしましても、市町村におきます準備が円滑に進みますように厚生省の方ともよく連携しながら適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
 また、今回の法改正によりまして、精神障害者の方に対しますホームヘルプ、ショートステイが居宅生活支援事業として法定化をされるということになります。これに伴いまして、市町村がこの事業に要する費用の補助をするということになるわけでございまして、これに伴います都道府県、市町村の財政負担につきましても、適切な地方財政措置を講じてまいりたいと考えております。
○朝日俊弘君 一つだけちょっと追加の質問をしたいと思うんですけれども、参考までに聞かせてください。
 これは当然、この事務は自治事務に整理されるんでしょうかね。今ちょうど地方分権推進一括法案がこれから審議されようとしていて、私の理解するところでは、都道府県知事による措置入院については法定受託事務になるけれども、そのほかは基本的には自治事務に位置づけられるというふうに理解をしているんですが、それで間違いないですかね、念のため。
○政府委員(二橋正弘君) 私どももそのように理解いたしております。
○朝日俊弘君 ありがとうございました。
 それで大臣、今、自治省の方からもお答えがあったわけですが、もうあれこれ申し上げるまでもなく、市町村が大変な状況にあるということは御存じだと思います。これは三年先にどうこうという話になるんですけれども、実は、障害者計画をつくってくださいということを既にお願いしているんですよね。当然、国は障害者基本計画をつくる、都道府県にもつくっていただく、そして同時に市町村にもつくっていただく。ただし、高齢者保健福祉計画とは違って、この障害者計画については努力義務ということでお願いをしているという形で、その障害者計画の中には、身体障害と知的障害とそして精神障害、三障害を含めて計画をつくってくださいというふうにお願いをしている。
 先ほど清水先生からもありましたけれども、しかし残念ながら市町村のレベルで、都道府県は大体つくっているんですけれども、障害者計画をつくっているところはよく見て半分、三分の一ぐらいという。しかも、中身を見てみますと、全部見たわけじゃありませんが、精神障害のところが入っていない計画がこれまた結構あるんですね、三割ぐらい。
 つまり、何が申し上げたいかというと、三年後にもちろんいろいろと市町村としては引き受けていただく体制づくりをしていただくんだけれども、もう現在既に一方で障害者計画をつくってくださいというお願いをしているわけですから、これからその障害者計画を市町村で主体的におつくりいただけるような、支援も含めて厚生省としてはさまざまな、財政的にもそれから人的にも支援や助言や指導や、そして場合によったら都道府県による補完も必要になってくるのではないかというふうに私は思うんですが、この点についての大臣のお考えをぜひお聞かせください。
国務大臣宮下創平君) 基本的には、今、委員の御指摘のとおりだと思います。
 国としては、三年後の実施を、介護保険の実施等と重ならないとか、いろいろな条件を設定して施行日を定めておりますが、それまでに十分な福祉施策ができるように、例えばホームヘルプ、あるいはショートステイ施設、あるいはグループホームの整備、あるいは地域生活支援センターの整備等についても、あとう限り充実したものになるように今から準備をしてまいりたい。また、現にやっておる施策もございますので、それらを財政的にも、またいろいろ指導面でも手を打ってまいりたい。それから、新しく法定された例えばホームヘルプサービスにつきましても、モデル事業等を実施するというようなことで、今後の拡充に備える、あるいは市町村職員の研修等の推進に当たるというようなことどもを通じまして、今、委員のおっしゃられたような厚生省として多面的な施設整備の援助もしてまいりたい、このように思っております。
○朝日俊弘君 ぜひとも可能な限りきめ細かな支援をぜひお願いしたいと思います。
 最後に、今回の法改正は、十二年前に精神衛生法から精神保健法に改正されて以降の流れをさらに一歩発展させる、あるいは前進させるという意味で一定の評価をしたいと思っているのですが、ただ今後検討しておかなければいけない、あるいは留意しておかなければいけない点が二つほどあると思います。この点について大臣のお考えをお伺いして終わりたいと思います。
 その一つは、精神保健福祉法という形で、精神障害に関しては保健と医療と福祉の一部あるいは大半、精神障害というところで一くくりの法律になっているわけですね。ところが、保健は、基本的な枠組みは地域保健法である、医療は医療法である、福祉は社会福祉事業法である。それぞれの保健、医療、福祉の枠組みを定める法律が改正されるときに、ややもすると精神保健の分野が置き去りというか、別扱いということがしばしばあったし、うっかりするとあるんですね。
 例えば、これから医療法で医療機関の機能分化をさらに進めていこうという議論がされているときに、うっかりすると、精神のところはちょっといろいろと難しいから置いておこうとか、なかなか意見がまとまらないから置いておきましょうとかいうことにしばしばなりかねない。
 それから、これから恐らく社会福祉事業法等の改正案が出されてくるだろう。そのときに、さまざまな形で精神障害者福祉と絡む部分が絶対出てくるわけですね。例えば、小規模作業所をどうするか。そういうときに、えてして保健や医療や福祉の枠組みを定める法律の改正のときに、精神保健福祉が独自の法体系をつくっているためにややもすれば取り残されてしまう心配がある。こういうことのないようにぜひしていただきたいというのが一つ。
 もう一つは、これは少し将来的な展望になるのかもしれませんが、せっかく障害者基本法ができて、身体障害、知的障害そして精神障害、三障害を同じ障害者として見ていこうという体制になってきて、今その途中にあると思うんですが、一定程度将来的には身体障害、知的障害、精神障害を総合的にくくった障害者福祉体系をつくっていく、展望する必要があるのではないかということも少し先の課題として私は考えているんですが、この二点について大臣のお考えをお伺いして、終わりたいと思います。
国務大臣宮下創平君) 今御指摘をいただきました点は大変重要な点でございまして、今、医療制度あるいは福祉制度その他全体を総合的に見直すということが非常に多いわけでございますが、それらは保健、医療も福祉も相互に関連をしております。したがって、そういう相互的な関連を重視しながらいろいろな諸改革をやる場合に、精神障害者の病気だからといって劣後しないように、正当な位置づけのもとでバランスのとれた総合的な施策を検討してまいりたいと思います。これから医療法の改正その他もございますが、御指摘の点はごもっともだと存じます。
 それから、小規模作業所等につきまして御指摘もありましたが、これらは社会福祉事業法等の改正によってもうちょっと小規模でも、あるいは条件が緩和してでもできるようにしていきたいというような考え方を今持っております。
 なお、三点目の、知的障害者身体障害者精神障害者、それぞれ特色がありまして、それぞれの体系で今まで来ていると存じます。これはこれとして、それぞれの歴史的な、あるいはその病症に応じた、あるいは障害の程度、性質を異にしておりますから、それぞれ必要な領域でそれぞれの対策は講ずべきだと思いますが、しかし今言われましたように施策を総合化して見るということは極めて重要だと思います。
 したがって、中期的な課題としては、そういった知的障害者精神障害者あるいは身体障害者、これを含めて総合的に一つの体系の中で考えていく。地域社会におきましてそういうことの方がより効果的に実施できる体制ができるかと思いますので、これはちょっと中期的な課題として取り組んでまいりたいというように思っております。
○朝日俊弘君 ありがとうございました。
【次回へつづく】