精神医療に関する条文・審議(その89)

前回(id:kokekokko:20051103)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。法案などはid:kokekokko:20051026にあります。

第145回参議院 国民福祉委員会会議録第10号(平成11年4月22日)
【前回のつづき】
沢たまき君 よろしくお願いいたします。
 私は、精神障害者に対する精神科疾病以外の内科とか外科とか歯科等、一般科の医療体制のあり方についてお伺いしたいと思っております。
 本年二月、三重県の多度精神病院でインフルエンザ様疾患が集団発生し、十九名の死亡者が出るという痛ましい事故があったわけでございますが、三月二十五日に三重県が提出した最終の調査報告によりますと、県は二月八日にマスコミ関係者から情報提供を受けてこのことを知ったと。最初の患者が亡くなって一カ月以上もたっているわけですが、厚生省がその事態を知ったのは二月十一日となっています。これだけの重大な事態を県の方へは一カ月以上たって、しかもマスコミからの通知で知ったということはどういうことなのかと思っております。
 このような事態になっても、病院側は県とか国とかに報告する義務はないんでしょうか。もっと早く県に報告していればこんなに多くの死亡者の出現が防げたのではないかと思うんですが、厚生省は国とか県への病院の報告体制をどのように整備していらっしゃるんでしょうか、まずお伺いさせていただきます。
○説明員(今田寛睦君) 現在、インフルエンザのような疾患で入院した患者さんが亡くなられた場合に、これを制度的に報告するという仕組みにはなっておりません。
 今回の多度病院の事例でございますけれども、病院の管理者の意見を聞いてみますと、今まで報告する決まりがなかったとか、報告したところで期待ができないとか、あるいは広まるのが余りにも急激だったので対応し切れなかったといったような御意見が出されているわけでございます。
 病院が事態を危機的と認識したのは既にもうピークを過ぎた後で、それから対応をとり始めたという意味では後手を引いているという点もございました。危機管理意識がもし十分に備わっておれば、例えば県に報告するなど、今回のような事態に対して適切な対応がとられたのではないかというふうに私どもは理解をしております。
 それともう一つは、病院から死亡者が出る場合には、医療保護入院につきましては退院届が出されることになっております。そういたしますと、医療保護入院に係ります退院届で死亡者の数がある程度わかるわけでございますが、そのことを県の機関として必ずしも十分に把握できていなかったという県の体制の問題としての認識もございます。
 したがいまして、今回の事例というのは、もちろん病院のこともありますし、また県の対応もあります。重大な事態が予想されるような場合には早期に都道府県に対して連絡するなどの必要な指導を行いながら、関係者の危機管理意識の高揚に努めていきたいと考えております。
沢たまき君 危機管理の意識が薄かったのではないかとおっしゃいましたけれども、ここは単科の精神病院で、週二回非常勤の内科の先生がいらっしゃるんですが、本格的な内科の診療はほかの病院に依頼するしかないわけですね。
 ところが、死亡者十九名中四名しか転院させていなくて、残りの十五名を転院させていなかったんですが、この理由と、精神病院の入院患者の転院がままならない理由になかなか受け入れてくれないという理由があるらしいんですが、そういうところを厚生省としてはどのように認識していらっしゃるでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 三重県が多度病院に対しまして、転院の措置に対してどういう考え方であったかということについて確認をいたしております。
 当初は、転院が必要な者が確認できなかったということでありますけれども、ピークを過ぎた時点あたり、日付を申し上げてもわかりにくいかと思いますが、一月の中旬になるわけですけれども、この時期に亡くなった患者さんは急に亡くなられたということから転院などの措置を講じる間もなかったという当初のいきさつもございます。その後、肺炎などの患者が見られたわけでありますが、動かすことが困難な患者であったため自分の病院で診療を続ける方針にした。
 また、その後、転院を検討したケースもございましたが、近隣の病院、大桑病院というのが近くにあるようですが、その病院あるいは桑名市民病院も満床で受け入れられなかった、こういったことも影響しているというふうに言っております。三重県の報告によりましても、確かにこの時期、桑名市周辺ではインフルエンザ様の疾患が急激に増加していることは地元の医師会の報告、情報からも確認をいたしております。
 いずれにしても、個々の患者の状態にもよると思いますけれども、しかし近隣の病院が満床で受け入れられなかったということは、それは小さな区域で見ているからそういうことなんで、県全体あるいはもっと広域的に見れば、ちゃんと必要があれば行けたのではないかという意味において、今後、広域的な連携体制は当然必要になるのではないか、このように思っております。
沢たまき君 次に、医療法施行規則の第十条三号において「精神病患者又は伝染病患者をそれぞれ精神病室又は伝染病室でない病室に収容しないこと。」、ただし、本文において「臨時応急のため収容するときはこの限りでない。」と規定されていますが、その趣旨及び理由を伺いたいのと、また臨時応急のときとはいかなる状態なんでしょうか。
 この規定からいけば、多度病院の場合、一般病院が受け入れるべきだった。今、満員だったとおっしゃいましたが、この県の報告を見ると一月六日から二月四日までで、十五日、十七日、いっぱい発病した日が休日に当たったからなかなか当直がいなかったとかとこの県の報告にあるんですけれども、一般病院が受け入れるべきだったと思うし、私は全員転院させるのがベターだったと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(小林秀資君) まず、医療法施行規則第十条第三号の規定は、入院患者の処遇に当たりましてそれぞれの病状に適した病室において入院治療を行うことが適切である、そういう考え方に立ちまして、原則として精神病患者は精神病室において、また感染症患者は感染症病室において処遇すべきことを定めているものでございます。
 また、同条に「臨時応急のため収容するとき」といって、そのときは特別な扱いができることを規定しております。例えば、精神病患者に関していえば、精神病室を有しない病院等において緊急に入院を必要とする精神病患者をやむを得ず入院させる場合、例えばインフルエンザの患者さんが精神障害者の場合は、一般病院へ行ったときには、医療法の今の第十条第三号の規定によると精神病室に入れなさいと言っているんだけれども、それを外してやむを得ず一般病床に入れて構わないということを言っているわけであります。また、合併症等により精神病室において処遇することが不適当なため一般病床等へ収容する場合等を念頭に置いているものでありまして、具体的には医師が判断することになるものと考えております。
 ですから、合併症というのも、精神障害者の方ががんになる、ところが実際に精神病院でがんの手術とか治療はなかなかできません。そういう場合には一般病院の一般病床に入るということは緊急やむを得ない、応急時の対応ができると、こういうことを規定したものでございます。
 なお、多度病院についてどうであったかの判断は私からは申し上げられませんので、部長の方からしていただきます。
○説明員(今田寛睦君) 先ほども背景を若干触れさせていただきましたが、この病院でインフルエンザになられた方が全体で九十九人いらっしゃる、亡くなられた方はもちろん少ないわけですけれども。この九十九人に対して、インフルエンザであるからといってそのすべてを転院させるべきかどうか。これは個々のケースで判断せざるを得ないと思いますが、やはり死に至ってしまうような重症な状況になったときに適切に紹介できるような仕組みが必要だということについては、十分そういったことを踏まえた形で対応すべきだと思います。
沢たまき君 私は、こんなにいっぱい死亡者が出たというその原因は、局長が最初におっしゃったように、第一点は多度病院自体の危機管理の認識の欠如。休日があったとこの県の報告には書いてあるんですが、休日であろうと何であろうと、病気は休日だから引っ込むということはありません。第二点は、精神障害者の合併症に対する一般科医療協力体制の不備。それから第三点が、精神障害者に対する医療機関の根強い偏見だと思うんです。
 今回のように、全員が閉鎖病棟での患者で、しかも感染症という状況の中で、単科病院ではとても対応できるものではないと思います。地域の医療機関の協力なしでは不可能なんです。その意味では、結果としてこのような事態を招いたのは、直接的とは言いませんが、県とか国の対応にもその責任の一端はあるのではないかと思います。
 御近所に大桑病院がある。七十一床しかない。よく連携がとれていたといってもこの大桑病院だけでは対応ができなかったので、なぜもっと、今、局長がおっしゃったように、広域で協力体制を組むような制度を、日ごろから連絡をとり合うとか、そういう体制をつくることはできなかったんでしょうか。いかがでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) そばにあります大桑病院、それから桑名市民病院が満床であったということで、受け入れられない状況があったというふうな報告も聞いております。
 要は、そういう小地域における医療機関の連携だけでは、非常に大きな流行をするようなたぐいのものなどについては対応し切れないというようなこともありまして、三重県も広域的な医療支援体制が必要な場合にはそれに応じられるような体制をとっていきたいということを申しております。このような考え方は当然三重県に限った話ではございませんので、各県におきましてもこのような観点から指導をしてまいりたいと思います。
沢たまき君 精神病院の中における精神障害者の合併症に対する危機管理と医療体制について、障害者が差別なく十分な一般科の医療が受けられるように厚生省としては対策を講じていただきたいと思います。
 我が国の精神科専門の病院数千五十五のうち八割程度が単科病院だと伺っております。対策の一つとして一般科病床を設置した精神病院の拡大を図っていただきたいと思っておりますが、大臣、いかがでございましょうか。
国務大臣宮下創平君) 精神障害者の中には身体疾患をあわせ持つ患者がおられるということで、精神障害と身体疾患を並行して治療する必要があるのは御指摘のとおりでございます。
 そのために、平成八年度から、これらの身体合併症の治療体制の整備の実態等を調査いたしましたが、それらに基づきまして、一般医療体制の具体的なあり方についてさらに検討を深めることが必要であるということで、昨年から精神障害者身体合併症治療体制整備事業というのを開始いたしまして、身体合併症治療が可能な医療機関を指定するとか、あるいは常時空床二床を確保しながら患者受け入れ可能な病院を指定するとか、総合病院精神科や精神病院の一般医療等医療体制のあり方を検討するためのデータ収集を行う等の事業を今実施しております。
 今後、これらの事業の結果を踏まえまして、精神病院が備えるべき一般病床のあり方を含めまして、身体合併症を有する精神障害者に対する適切な医療の確保に十分努めてまいるべく検討を進めてまいりたい、このように思います。
沢たまき君 よろしくお願いいたします。
 先ほど施行規則の第十条三号に触れさせていただきましたけれども、この医療法施行規則の精神病患者と伝染病患者を同号の規定にすることがどうも私は偏見あるいは誤解が生じるもとになると思います。乱暴なくくり方だなという気がいたしましたが、修正をしていただけないでしょうかという思いがあります。
 また、精神病院では、この規定は閉鎖病棟、任意入院の開放病棟にも適用されているわけですが、任意入院患者さんについてはもっと開放的な処遇を推進してもいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府委員(小林秀資君) まず、医療法施行規則第十条第三号の規定は精神病患者と感染症患者、今、伝染病患者と言いませんで感染症患者と申しております、これについての規定をしておるところですが、同一号のところで両方並んでいる形でございます。これは、立法技術上の整理からこういうふうにしてありまして特に他意があるわけではございませんが、先生の御意見があったことだけは承知をさせていただきます。
○説明員(今田寛睦君) 精神病院におきましては、御指摘のように任意入院患者については開放処遇を推進すべきだ、このように考えております。ただ、任意入院患者についても、一時的に病状が悪化するなど一時的に閉鎖的処遇が必要な場合もあるとは思います。
 この閉鎖処遇の扱いにつきましては、審議会の意見を踏まえまして、隔離とか拘束とかというものと同様に行動の制限の一つとして位置づけまして、一定の要件、手続を明確にすることによって不適切な閉鎖処遇がなされないようにやっていきたいと思います。
沢たまき君 よろしくお願いいたします。
 私の同級生にも知的障害を抱えて、精神ではありませんが、ダウン症を抱えた同級生とか四級ぐらいの知的障害を持っている私の同級生たちが、もうそろそろ自分が年なので、この改正法とかなんとかをしますが、とにかく障害者に対する社会的な偏見がとても根強いと訴えます。
 障害者を抱えたその家族にとってこれほどつらいものはないわけでございまして、どんな障害の方であっても御家族にとっては我が子、どうやってその子が障害があっても生きる喜びを与えられるか、あるいは自己の生活を犠牲にしても必死で育てられているわけなんですが、逆に社会全体の中にそのような御家族の方を賛嘆してあげられるような社会にしていくべきだなと思っております。
 そのためには、まず国立病院だとか公立病院は精神障害者の合併症患者をもっと積極的に受け入れていただきたいと思います。そのための対策を進めていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
国務大臣宮下創平君) 精神障害者に対する偏見というのは歴史的にやはりあったと思いますが、現在の状況におきましてこれを解消していくというのは、人権問題として大変重要なことだと思います。
 その一例として、今、委員の指摘は、国立病院等で精神病患者を受け入れて合併症その他の治療を率先して行うべきではないかという御意見かと思いますが、これは今、国立病院等につきまして再編成とかあるいは合理化をやっております。しかし、その際にも公衆衛生審議会等からは、精神科救急への対応とか薬物依存症や合併症を有する患者への対応に重点を置くべきであるということが明記されております。
 したがって、今までの状況を見ますと国立病院等が精神病患者を受け入れるウエートが非常に少なかったように思われますので、今後は各国立病院・療養所におきまして、それぞれの機能に応じまして、合併症を有する精神障害者に十分対応できるように、しかも国立病院は民間病院のモデルとなる先駆的な医療に取り組んでいるわけでございますから、精神障害者の合併症に対する治療体制の充実に努めていくことは当然でございますから、今まで民間に頼り過ぎた精神障害者へのあり方を国立病院でもウエートを高めていく必要があるというように考えております。
沢たまき君 よろしくお願いいたします。
 伺うところによると、本当にそういう公の病院がとても嫌うと伺っておりましたので、率先して受け入れて、大臣おっしゃったようにモデルを示していただきたいと思っております。
 関連して伺いますが、精神障害者を初め知的障害者あるいは身体障害者の方々に医療処置を講じる場合、大きなネックが自己表現力の低さということでございます。病気になっても訴えるすべを知らない、したがってさまざまな権利侵害を受けやすく、障害者の合併症においても同じで、障害者が自己表現が困難なことから十分な医療が受けられない事態が生じます。せんだって私も、知り合いの歯医者さんが障害者のところで治療をしているので大変だと伺っておりました。ゆえに障害者の治療をするお医者さんの方にも特殊な技術が要求されます。
 したがって、これら障害を持った方々に対して、厚生省として障害者全体、身体障害者知的障害者精神障害者に対する内科、外科、歯科の医師の研修も含めた一般科医療のあり方について御検討いただき、医療機関への患者さんのアクセスも含めて総合的な医療体制を講じていくべきだと私は思うんですが、厚生大臣のお考えを伺って最後にしたいと思います。
○委員長(尾辻秀久君) 既に時間が経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。
国務大臣宮下創平君) 一般診療科医療へのアクセスの問題ですが、これは当然身障者、知的障害者精神障害者についてもあとう限り努力しなければなりません。
 したがって、例えば手話通訳をやるとか、また障害者の通院介助を行うホームヘルパーガイドヘルパーの派遣、養成が必要であるとか、あるいは駅その他バリアフリーをさらに進めていくとか、歯科医についても特に問題が多いようでございますから特別な加算制度等もあるようでございます。
 それからまた、今議論されました身体合併症を有する方々に対する試行事業もやっておりますから、先ほど申したとおりこれも進めていきたいし、今後とも全体として障害者にとって必要な医療が提供できますように、これは専門病院のみならず一般的な医療にも十分アクセスができるように総合的にやってまいりたいと思います。
沢たまき君 ありがとうございました。
○井上美代君 日本共産党を代表して質問いたします。
 今回の精神保健福祉法改正は、精神福祉の充実を図り、地域支援を促進するものとされておりますけれども、前回の改正の際に精神障害者の「社会復帰施設等の積極的な整備に努力すること。」というのと、また「小規模作業所の制度的位置付けに向けて検討を進める」という附帯決議がついております。これを重視する立場から質問をしたいというふうに思います。
 現在、精神障害者の社会復帰施設の設置状況についてですけれども、どのような実態になっているのか、まずそこをお聞きしたいと思います。入院患者に対してその受け入れ可能性の数と、それから可能率がどういうふうになっているのかということを部長にお聞きしたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 障害者プランによります精神障害者社会復帰施設の整備状況につきましては、平成九年度までの累計整備量ということになりますが、精神障害者生活訓練施設が二千九百八十人分、精神障害者福祉ホームが九百九十人分、授産施設が三千八十人分、それから福祉工場が二百四十人分、このようになっております。
 受け入れ可能数というお問いでございますが、要はどのぐらい利用されて、どれぐらいあきがあるかというふうな理解でよろしければ、利用率でお答えをさせていただきたいと思いますが、精神障害者生活訓練施設の利用率が大体六七%、福祉ホームが七四%、授産施設は九〇%、福祉工場は六五%、このような状況になっております。
○井上美代君 可能率については、入院患者が三十三万五千三人ですね。その三・一三%ですから一万五百二人だというふうに思います。
 私がお聞きしたいのは、今ここに共同作業所全国連絡会が作成しました資料があるんですけれども、それによりますと、三千二百五十五の自治体のうちで何らかの法定の精神障害者の復帰施設がある自治体、これは二百三十四自治体なんですね。これをパーセンテージにしますと七・二%になるわけです。自治体の七・二%しか復帰施設がないという非常に貧困な状況があります。九三%の市町村には精神障害者の施設が全くないということになるわけです。これでは、入院している方が地域に復帰したいというふうに思いましても、それは戻れないという現状があるわけです。
 先日、参考人のお話でも、地域に社会復帰施設などがあれば八万から十万の人が退院できるという御指摘がありまして、やはり社会復帰施設が充実するということ、その数がふえるということが非常に今強く、しかも緊急に求められているというふうに思うんです。
 世界でも進んでいるというふうに言われておりますオランダの水準で計算しますと、日本では二十六万人規模の社会復帰施設やケア施設が必要だということになるわけなんです。だから、そういう点でも、大変苦労が多いんですけれども頑張らなければいけない現状があるというふうに思います。
 日本精神神経学会の調査をベースに専門家が必要としているグループホームを試算したものがありますが、そこには外来の治療中の患者も含めて三万九千五十一人分のグループホームが必要だという計算が出ているわけなんです。そして、九五年十二月に発表されました総務庁の行政監察局の調査があります。この調査は、精神障害者を地域に戻せる数として七万人という数を挙げているわけなんです。
 政府自身は、地域に受け皿があればどれほどの人が病院から地域へ戻ることができるというふうに考えておられるのか。また、この総務庁の行政監察局の調査についてどういうふうに考えておられるのか。検討会もやって分析もされているというふうに聞いておりますので、ぜひ数字で具体的にお答えしていただけたらというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 社会復帰の重要性、それから社会復帰施設を使うべき、あるいは使って活用すべき人がどのぐらいいるのかということだと思います。
 厚生省の方では、一年半以上の長期入院患者について、症状が安定していて社会復帰対策の対象となるべき者として三万人を試算してプランへと反映させております。一方で、今御指摘の総務庁の方の調査でありますが、これは十年以上入院している人で二十歳から四十歳の間の者を抽出した形で二一・五%と、こういうふうに言っていらっしゃいます。
 したがって、これは二十歳から四十歳以上、なおかつ十年以上ということで見れば、七万人ということじゃなくてまた違った数字としても理解することは可能なのではないかと思いますが、その客体、方法が若干違いますものですから、そういった意味で多少の誤差があることは御承知いただきたいと思います。
 いずれにいたしましても、現在、それを十分達成しただけの社会復帰施設があるというふうに認識しているわけではございません。プランの実現に引き続き努力をしていきたいと考えております。
○井上美代君 この二〇・一%といいますと大体七万人近くなるんですね。参考人のこの間のお話でも八万から十万という数が出ておりますので、そういう意味でもここはやはりしっかり見ていかなければいけないのではないかというふうに思っております。
 それで、三つ目の質問、大臣にお願いしたいんですけれども、二〇〇二年までの障害者プランの精神障害施策の達成状況というのを見せていただいております。九年度の実績を見ておりますと、これは予算に対して、例えば授産施設は入所、通所合わせて三千八百人分のところを実際には、平成九年ですけれども、三千八十を達成しているんですね。ということは、予算上の数字がかなりはっきり出ているんですけれども、実際にやられている数は平成九年で八割程度なんです。
 だから、そういう点でも、今後、達成するということではかなりの努力が要るなというふうに思いますけれども、地域生活の支援事業で見ると百八十二カ所、これが九十七カ所しか達成しておりませんので、これは五割なんですね、達成率が。そういう点で、平成五年のときに入院患者のうちで三万人を迎えるということで受け皿づくりをしておりますので、本当に先ほどの十万などという数が出てきたら、いよいよ本当にこの目標を絶対に達成していくということが大変重要であるというふうに思っております。
 それで、入院していらっしゃらない数で、これは参考人のときに二百十七万人という数字が出ましたけれども、こうした中でも地域の施設をいろいろ利用されるわけですから、そういう点でも今後の目標達成ということが非常に重要だというふうに思っております。
 そういう点で、特にこの精神障害者の部分というのは大変おくれております。だから、そういう意味で、私はほかの心身のところや知的のところと違って、特に精神障害者の分野では単独に緊急プランを持って二十一世紀につないでいくんだということが大事ではないかというふうに思っております。これは政治的な判断も要ると思いますので、ぜひ大臣にお答えいただきたいと思います。
国務大臣宮下創平君) 社会復帰施設の整備状況等でございますが、これは委員の御指摘のように、法律改正によりまして法定はされておりますが、しかし整備数は非常に少ない。特に九年度の予算と実績の御指摘が今ございましたが、確かに実績の方がかなり下回っております。
 これはどういう原因かということも考えてみなければなりませんが、この社会復帰施設につきましては社会福祉法人等が主体になってやっておられると存じますが、恐らくそういった自主的な計画なり申し出が少ないのではないか、つまり地域でそれだけそういった施設に対する理解と需要が足りないのではないかなという感じをちょっと持たせていただきました。
 しかし、いずれにいたしましても、先ほど来議論のあります長期入院とか社会的入院の問題が指摘されておりますし、社会復帰するということは極めて重要なことでございますので、これからもその充実には努めてまいりたいと思います。
 ことしは、従来のグループホームのほかに、在宅精神障害者へのサービスとしてはホームヘルプとショートステイ施設を法定いたしました。そしてまた、社会復帰施設対策として地域生活支援センターを先ほど来御議論のありますように位置づけまして、きめ細かな市町村主体のこういった復帰施設の整備を図りたいと考えておりますので、そういった方向でよく周知徹底を図ってそれに対応してまいりたいと思います。
 なお、障害者プランの中で、精神障害者だけ取り出して単独プランをどうかということでございますが、これはもちろん身障者あるいは知的障害者精神障害者それぞれに応じてそれらを積み上げ、予測し、計画を立てるべきものでございますから、単独の計画にするかしないかは別問題として、精神障害者の施策が多少劣後しているんじゃないかという御議論がありますし、私もそんな感じもいたしますので、今後、そういったことで全体としての障害者プランの充実、補整を図ってまいりたいというように考えております。
○井上美代君 私は、精神障害者の全体の数が二百十七万人おられるという、ここのところを常に私たちが自覚をしながらやっていくということが大事だというふうに思います。今、緊急プランについても積極的に御答弁くださいましたけれども、やはり国民の間にも人権尊重志向が非常に強くなっておりますので、そういう緊急プランをつくってくださることによって、さらに啓発にもなるというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 今、大臣からお話がありましたホームヘルパーの派遣の問題、これは非常に重要な中身だというふうに思っております。これを提起していただいておりますけれども、既に八十の自治体で精神障害者についてのヘルパー派遣が行われておりまして、やはり非常に効果を上げております。
 今年度八千六百万円の予算で精神障害者へのホームヘルパーの試行事業がやられることになっておりますけれども、法施行によってどれぐらいの規模のホームヘルパーを行うことができるのかということですね。そしてまた、この法施行は三年後なんです。もう本当に待ち遠しい思いなんですけれども、そういう意味で予算措置は前倒しして進めてほしい、現状から見てそのように思っておりますけれども、いかがでしょうか。
国務大臣宮下創平君) このホームヘルプ事業につきましては、法定はいたしましたが実施は十四年からと、これは介護保険その他の事情等もございましてそうなっておりますが、今試行的な事業をやっております。これは、今は箇所数が限定されておりますけれども、それらの実効性を見ながら、十四年になって一気にやるということでなしに、できれば前倒しした方向で対応していくべきものだと考えますから、今後検討はさせていただきます。
○井上美代君 やはり階段を上がって一つずつよくしていくというのは大事だと思うんですが、その階段の高さも高くして上っていくというのも特に精神障害者のところは重要であるというふうに思っております。
 それで、知的それから身体障害者のところでは行われている給食サービスのデイサービス事業ですけれども、これへの補助が精神障害者の場合にはやられていないんですね。だから、小規模作業所などでレクリエーションや食事サービスなどデイサービスの一部を担っているところが実際にはあるんです。私も何カ所か見に行きまして、そして特に食事のサービスについては非常に考えさせられてきたわけなんです。夕食会だとか昼食会だとか一緒にして、そして自分たちで調理をしている場面も見てまいりましたけれども、治療の面でも、それから障害を持った方の自立やコミュニケーションの面からも本当にすばらしいというふうに思いました。
 自治体から補助が出ているところもかなりあるんです。東京都の調査では、要生活支援比率が一番高いのは男女とも食事なんです。そして、二十歳から三十五歳までの男性では三七%が必要としておりますし、女性も二六%が必要としているわけなんです。ホームヘルパーの派遣だけでは対応できないものでありますし、地域で行う食事サービスなどを地域支援事業に位置づけて、そして補助の対象にするべきだというふうに私は思っております。自立して生きるという点からも食事が大事ですので、ぜひ御答弁をお願いしたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 給食につきまして、特に精神障害者の社会復帰との関連についてその効果を御指摘いただいたわけでございますけれども、日常生活の一環としてグループホームにおきましては食事の提供を行っておりますし、今回の改正案に盛り込んでおりますホームヘルプ事業についても食事の手助けを行うということも当然やっていただくことになろうかと思います。
 ただ、身体障害でありますとか知的障害のように、食事をつくることそのものができなくて介助する、あるいは食べることが非常に難しくて介助するという意味合いの部分と、精神障害者の場合、自分でつくっていくこと、その行為そのものを見守っていく、あるいはそれを側面的に支えていくという意味ではかかわり方にも多少差があるのではないか。そういったノウハウはもちろん今から各市町村の皆さん方に御協力いただくわけでありますけれども、そういう意味で、食事そのものを身体とか知的と同じような意味で精神障害者に適用することが即つながるのかという点については十分考えて、実態に合ったものとしてこれを組み立てていく必要があるというふうに思っております。
○井上美代君 ぜひ私の意見も酌み入れて御検討を願いたいというふうに思います。
 時間ももう迫ってまいりましたので、私は最後に大臣に御質問いたします。
 これは小規模作業所のことです。法定施設の建設が進んでいる中で、小規模作業所が大変全国的に多くて、たくさんふえております。四千八百四十七カ所ですけれども、九四年では法定施設数の合計を上回って急増をしておりまして、ただできているというだけではなくて、法定施設の補完というよりも代替施設になっているという現実があります。そういう現実の中で、大臣はこの小規模作業所をどうお考えになっているのかということをひとつお聞きしたいというふうに思います。
 同時に、この小規模作業所への自治体の単独事業としての補助もかなりやられているんです。国では一カ所当たり助成制度で百十万円出されておりますけれども、これは平成八年から四年間ずっと据え置かれたままなんですね。全国の四千八百四十七の作業所で助成対象となっているのは五四%なんですけれども、六百万円を超えた単独の補助事業がやられております。
 そういう意味からも補助金の高いところほど作業所の数もふえているんです。そして、地域福祉を支えておりますので、私は、国からの助成を大幅に拡大していただいて、全国水準を引き上げていただくということが全体を引き上げていくことでもあるというふうに思っておりますので、ぜひ前向きに御検討をお願いしたいと思います。
国務大臣宮下創平君) 法定施設でございます通所の授産施設、これは一定の要件がございますが、それに該当しない小規模の、しかも地域できめ細かにやっておる小規模事業所、この持つ意味は大きいと私は思っております。
 ただし、現在の法制度のもとにおきましては、法定施設でございませんので、今、委員のおっしゃられたように百十万円というような補助金とか、あるいは地方交付税措置等も講じておりますが、本格的な対応だとはあるいは言えないのかもわかりません。
 したがって、私ども、今後、社会福祉事業法の改正等を通じまして予定したいと思っておりますが、社会福祉法人としての要件緩和等を図って、そして、今、社会福祉法人でございますと二十人以上というようなことでありますが、例えば十五人であっても、場合によればそれを下回ることであっても、ある一定の規模は持たなくてはいけませんが、しかも精神障害者ばかりではなくて知的障害者あるいは身障者を含めて一緒になってやられるような小規模作業所を私も承知しております。そういった複合的な地域に密着した、しかもきめ細かな対応ができる、そういう小規模作業所というのは今後の中で大変重要な位置を占めると存じます。そんな観点から今後検討させていただきたいと思っております。
○井上美代君 どうもありがとうございました。
 終わります。
清水澄子君 社民党の清水です。
 十五分しかありませんので、ぜひお答えもポイントよろしくお願いいたします。
 障害者プランでは、精神障害者の保健・医療・福祉施策の充実の一環として、自立を目指した訓練と雇用施策の連携を図るとなっているわけです。しかし、現実には精神障害者を欠格者としている法律というのは非常に多く残っていると思います。厚生省関係も非常に多いわけです。欠格条項問題は、これは総理府がやっていますという形ではなくて、厚生省は他の省庁に率先をして欠格条項を見直していく、そして他の省庁に範を示すという、そういう行動をおとりになることを私は提起したいんですが、大臣、どう御決意されますでしょうか。
国務大臣宮下創平君) 障害者の欠格条項は、今、委員の御指摘のように私も多少多過ぎるかなという感じです。政府全体で七十九くらいありますが、そのうち厚生省の所管として四十三が免許取得等を制限する事由、欠格条項に該当しております。しかし、職種によっては障害者がなかなか適さないという点もございますから一概にこれを全面的解除というわけにはまいりませんけれども、今、総理府を中心にいたしまして欠格条項の見直しを政府全体として取り組んでおります。それらを踏まえながら私どもとしても欠格条項の見直しについて、厚生省も障害者の保健福祉政策を担当する責任省でございますから、できる限りの努力をして、その緩和、そして平等な参加ができるようにしたいという考えは持っております。
清水澄子君 次に、一昨日の参考人の御意見でも、小規模作業所が事実上のデイサービス機能を代替している、そしてこの役割をもっと強化していくことが地域福祉にとって非常に重要なんだというお話がありました。そして、今も発言がありましたけれども、この小規模作業所については平成七年の附帯決議のときにもやはりこの制度的な位置づけに向けて検討を進めることとなっていたんですが、今回の改正案でも法定化に至らなかった理由というのは一体何なのか。
 そして、今、大臣はいろいろ社会福祉事業法の改正の中でという、その分はお聞きしていますので、それらが実現するまでの間、現在一作業所当たりの国の助成額は年間百十万ですから非常に少ないと思うんです。ですから、小規模作業所が公的な社会復帰施設の不足を肩がわりしているという現実を重視してくださって、助成費については大幅な増額にぜひ努力していただきたい。これをひとつお答えください。
国務大臣宮下創平君) 先ほど井上委員にもお答えした小規模作業所の問題でございますけれども、多少繰り返しになりますけれども、こうした地域に非常にきめ細かく対応できる、しかも私の知っている限りでは精神障害者ばかりではありませんで、身障者の方、知的障害者の方、そういった方々を、非常にボランタリーな形でスタートしておりますけれども、非常に好意的にそういうものを運営されようとする動きがあることも承知しております。したがって、余り法定授産施設ということにとらわれないでこういう小規模作業所は育成していきたいなと思っております。要件も、先ほど申しましたように、二十人の緩和措置等も考えていきたい。
 それから同時に、そうなりますと、助成のあり方もどうしたらいいかということになると存じますから、それらを含めて検討させていただきたいと思います。今、百十万円というのは確かに国庫負担としては小さいようですけれども、しかし小人数の規模でありますから、どの程度に可能かどうか、それは今後検討させていただきたいと思います。
清水澄子君 次に、精神障害を重度化させないためにも早期の専門的な精神療法を受診するということは非常に効果的であると考えるわけです。しかし、現状の通院精神療法の診療報酬点数というのは非常に低いわけです。このことが大都市以外の精神診療所の開設の難しさとか、薬物主体の治療の先行といった現象につながっていると言われているわけですが、私はやっぱり一般医療と精神医療の診療報酬に差があるのは問題だと思います。
 今、厚生省では診療報酬の見直しを行っておられるわけですし、その審議の中では医療にあらわれない医療の技術料を評価すべきとの意見が非常に多く出ているわけですので、この機会に私は診療所への通院治療を不可能にしている精神病床外への収容禁止規定などをなくすとか、それから精神療法の点数を引き上げるとか、そういうことをぜひ努力していただきたいと思いますが、いかがですか。
○政府委員(羽毛田信吾君) 今、先生御指摘ございましたように、精神療法の領域におきます技術の分野は大変大事なものだというふうに私ども考えております。特に、外来におきますカウンセリングでございますとか、そういった精神科療法に対しましての診療報酬上の扱いでございますが、現在は心身医学療法、いわゆる心身症の患者に対する療法、あるいは通院の精神療法、あるいは標準型精神分析療法といったような、いわゆる外来における診療報酬上も評価をし、またそれも段階的に改定をしまして診療報酬点数を上げてはきておるわけであります。
 ただ、先生今おっしゃったように、今後さらにそれを充実するようにという御指摘でございます。診療報酬におきます技術料の評価のあり方ということについては、診療報酬の改革問題の大変大きな柱として今取り組んでおりますので、そういった中におきまして、精神療法につきましてもそういった技術面での評価、特に外来面での技術面の評価といった点については、中医協を中心とした具体的な論議の中でできるだけそういった方向を考えていきたいというふうに考えております。
清水澄子君 次に、強制的な入院が伴い、または今の精神病院の状況から見て拘禁的な状況が存在する、そういうときにはやはり上告とか審査とか監視というのは、国際的な人権基準では必ず備えていなければならないセーフガードであると思うんです。その意味では、精神医療審査会は審査機関に該当するものだと思います。
 現在の精神保健福祉法は、人権擁護を重視するとして何回も法改正を行ってきたわけですけれども、実際には精神病院における人権侵害事件というのは後を絶たないわけです。その理由には、やはり精神障害者に対する偏見とか隔離主義とか、そういう根強い差別的なものがあると思いますが、同時に、上告制度もなく、これ自体が国際基準から大きくかけ離れているというところにも大きな問題があると思います。さきの委員会のときにも、審査会の構成メンバーに当事者の意見を反映させる人を加えるべきだということを求めましたけれども、それは審査会の機能のみでは限界があると思います。
 そこで、厚生省は、地方自治体が行う医療監視とは別に、厚生省直轄で任命するチームをつくって病院の抜き打ち検査や指導とか処分について厳しい監督機能を持つべきではないか、それを実行すべきではないかと考えます。同時に、拘禁されている患者さんのプライバシーを保障した上で、入院から通院、生活全般に及ぶ状況に関して患者の人権を擁護する、聞き取る、そういう監視制度の新たな設置が必要になってきている、そういうものをぜひつくっていくべきだということを私は提案したいと思うんです。
 それは、今後、痴呆性老人がふえていくとか、または老人病院がふえていく、そういうような状況の中で、もっと民主的なといいますか、そういう監視制度というのは非常に大事な制度になってくると思うんですが、こういう点について、大臣、ぜひ受けとめていただきたいと思うんですが、よろしくお願いします。
○説明員(今田寛睦君) 制度の実態を御説明させていただきますが、精神病院に対します監査につきましては、原則的に所在地の都道府県知事あるいは指定都市の市長が毎年一回立入検査をする、このようになっております。立入検査に際しましては、入院患者の診察あるいは人権の保護に関します聞き取り調査もあわせて実施するように指導いたしております。
 さらに、都道府県や指定都市の枠を超えた問題でありますとか重大な問題については、私ども行政の責任者たる厚生省として、独自の立場から報告徴収、立入検査を行うこととしております。例えば、大和川病院もしかり、栗田病院もしかりでございました。
 それとともに、都道府県で年に一回やっていただいておるわけでありますが、その指導の内容、水準をきちっとしたものにするという観点から、本年度から国立精神・神経センター武蔵病院、国府台病院の指定医の協力を得て、各県に一カ所、厚生省が監査を実施いたしまして、それぞれの都道府県がやっております検査の実情を見、適切な指導が行われるよう努めることといたしております。
清水澄子君 ぜひ実態に合った新しい制度も考えていくということを御検討いただきたいと思います。
 次に、この精神障害者福祉法というのは、第二条で「国及び地方公共団体の義務」として、その中に、精神障害者の社会復帰と自立と社会経済活動への参加への努力というのが両方の義務として横並びにあるわけです。この中では国がどういう役割を担うのかというのがはっきりわからないんですが、そういう状況の上で、今回は市町村に精神障害者の地域福祉の役割のほとんどを負わせていくわけですけれども、この場合もここにある地方公共団体の中に入るんだという御説明なんですけれども、非常に市町村は大変だろうと思うんです。
 そこで、ぜひお伺いしたいんですけれども、この法律の三年後には、精神障害者の自立と社会復帰のニーズに沿った福祉的な支援が地域でどのようなサービス支援のシステムになっているのか、特に精神障害者介護支援事業、ケアマネジメント等の配置等とか、そういう具体的なイメージ、それを大臣ちょっと説明していただきたいと思うんです。それに対して国はどういう役割を果たし、都道府県の役割と市町村の役割はこうなるんだということについて、私たちにわかるような、また安心できるような、そういうことを描いてお答えいただきたいと思います。
国務大臣宮下創平君) 現在の精神保健福祉施策は、御承知のように基本的に都道府県と保健所でやることになっておりますが、今回の改正におきましては、市町村を主体にして、実施主体は市町村がやるということで、これを十四年度から実施する予定にいたしております。
 そこで、では国としては何をするかということですが、全国的あるいは総合的な見地からの制度の企画立案等、これは当然国が先導的にやらなくてはいけません。それから、都道府県におきましても、措置入院とか精神医療審査会など保健、医療に関する事項を中心として専門性のあるもの、あるいは広域的な見地から立案したり指導しなければならないこと及び市町村の支援、これは県にもっとやっていただくということで、市町村におきましては今申しましたようにもっと身近な地方公共団体として在宅福祉サービスの提供などの地域生活支援を扱っていただく、こういうことになっております。
 そのほか、地域生活支援センターを法定化いたしましてこれを設けるとか、あるいはいろいろ議論をいただきましたように居宅介護事業、ホームヘルプサービス、あるいは短期の入所施設、ショートステイ施設等を法定化するというようなことなども行いまして、また市町村に相談、助言等もやっていただくようになっております。
 そうした意味では、市町村の事務がある程度従来よりも責任が重くなるという点はございますが、これらにつきましては、いろいろの点で交付税あるいは財政措置等をできるだけ講じて、こういった施設が形式的なものに終わらないようにやっていきたい。
 一方、介護との関係につきましては、介護保険を来年四月から実施するわけですが、これは介護の問題とこうした精神障害者等の高齢者と重なり合う面がございますから、これらはよく整理をいたしまして、保険でございますから、介護でやる部分と、それから医療で対応する部分とはっきりした区分け等がなされる必要があろうかと思います。
 したがって、そういった点を含めて検討して、いやしくも精神障害者等の問題が医療面と介護の福祉の面でエアポケットが出ないように、しかも余り重複しないように、そういう調整を図りながら制度を構築していきたいと思っております。いずれにいたしましても、市町村にかなり御迷惑をおかけする話でございますので、十分連絡をして指導して適正に運営できるようにひとつ努めていきたい。
 したがって、実施は十四年を主体にしておりますのは、介護保険のスタートが来年の十二年でありますから、それらも勘案いたしまして、今申しましたようなことをその間にきちっと調整していきたいというように思っております。
清水澄子君 一つだけ。このマンパワーの養成がまず緊急ですし、それをどう配置していくか。それから、財政支援についてはぜひ前倒しで予算をきちっと組んでいただくことを要望いたしまして終わります。
○入澤肇君 先日の参考人の質疑を聞いておりまして一つ疑問に思ったんですけれども、これだけ累次にわたって法律改正がなされてきた精神障害者対策につきまして、今なお一般医療に対する対応策とかなりのギャップがある。例えば、精神科特例の問題にいたしましても、診療報酬の点数の問題にいたしましても、あるいは地域医療のシステムにいたしましても、それから社会復帰施設の整備の問題にいたしましても非常にギャップがあるということを痛感しております。
 一方で、日本人の百人に一人は精神分裂病を患っているというふうなことが言われていますけれども、このギャップを法律の改正によって埋めるための基本的なスタートとして認識していいのかどうか。参考人の方々は、これがスタートであって、これから厚生省がいろいろと施策を拡充強化してくれるのではないかということを期待しておりますけれども、この法律を契機といたしまして、一般医療に対する対応システム並みに精神障害者対策を強化することについて本気で考えているのかどうか、大臣の御決意を最初にお聞きしたいと思います。
国務大臣宮下創平君) 御指摘のとおりでありまして、今、医療保険の改革その他広範な抜本的な改革を考えておりますが、こうした中で精神障害者との調整あるいはその施策が行き届くように対応していくことは、これは当然の配慮が必要であると思っています。今回、精神障害者についての保健福祉法を提出いたしましたゆえんも、人権を尊重しながら、これからの精神障害者の福祉施策を医療面と保健でどのように充実していくかということの観点に立って幾つかの御提案を申し上げているわけです。
 したがって、今後とも引き続き、精神障害者等障害者福祉の問題と、それから一般的な医療の問題初め福祉の問題との調和はどうしても図って総合的にやっていかなきゃいかぬというように思っております。
 抽象的な答えで恐縮ですが、そのように思っております。
○入澤肇君 この対策が一般医療とかなり差があるということの一つに、厚生省における組織のあり方が問題になったことはないのでしょうか。
 例えば、官房に部がありますね、障害保健福祉部長がいらっしゃいます。局の下にあるわけじゃなくて、官房長が統括するといっても独立した部の部長さんがやっているわけです。要するに、プラスの面では官房で総合調整する機関、局の一つとして重要な地位を占めると位置づけられているというふうに見えて一括してやるからいいのじゃないかというふうに言われるかもしれませんけれども、健康政策局ですか、そういう局の下に置いて、そしてもっと他の医療制度とか何かとバランスをとりながら総合的に進めるというふうな組織上の問題点は痛感しておりませんか。
○説明員(今田寛睦君) 組織のあり方でございますけれども、御指摘のように三年前に障害保健福祉部をつくったわけです。それまでは現在の企画課、身体障害を所管しているのは社会局にあったわけです。社会局で身体障害者の対策を組んでいた。それから、知的障害あるいは障害児の問題は児童家庭局で見ていたわけです。そこで児童福祉の観点から運用されていた。それから、精神につきましては保健医療局の中で運用していた。
 それはそれでまた意味があったのだろうと思いますけれども、一方でそれぞれの福祉がばらばらで横にらみもできずに機能するということに対する反省、それから障害者年などを契機といたしまして、障害者対策として一まとめに物を見た上で進めるということで、これが一本化されたというふうに理解をしております。
 私自身そういう部に属しておりますけれども、かつて私が精神保健課の職員をしていたときから見て、やはり福祉というものとうまく連携できる仕組みを一緒に目にすることができるという意味において評価すべき点は多々あるように思います。
 いずれにいたしましても、官房に今所属していることにつきまして私がちょっとコメントできませんけれども、そういう三障害が合同でやっていくことのよさというものは、私の日常的な活動の中で意義あるものというふうに認識をいたしております。
○入澤肇君 それはそれなりに理解できないわけじゃないんですけれども、ここまで累次の法律改正がありましてこれから政策をさらに強化しなくちゃいけないとなりますと、果たして官房に置いてやるのがいいのかどうかについてはもう一回検討に値するのじゃないかと私は思います。
 次に、精神障害者の福祉対策の充実につきまして、保健福祉手帳というのがございますね。先ほどからお話に出ていますように二百十七万人も精神障害者がいるという中で、資料をいただきましたら、十二万五千人きりこの福祉手帳を持っていないということなんですけれども、どうしてこのようにメリットがあると思われる手帳を持っていないのか、これについてお聞きしたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 一つはこの手帳の普及率の御指摘でありますけれども、障害者のすべてが手帳の交付対象として適切であるのかどうかという問題もございます。例えば神経症精神障害でありますし、その他の制度で適用しているものもたくさんあるだろうと思います。
 いずれにしても、この制度がせっかくあるわけでありますから、より多くの方にこの手帳の意義を理解いただき、この手帳によって得られる優遇措置というものが幅広く使われるということについては引き続いて私ども努力をしなければならない課題だというふうに思います。
○入澤肇君 この手帳を持っていますと、例えば通院医療費の公費負担があるとか、あるいは所得税とか住民税の障害者控除、それから預貯金の利子所得の非課税とかいろいろな税制上の優遇措置もございます。さらに生活保護の障害者加算、こういうものも受けられるようになっていると言われますし、生活福祉資金の貸し付けもある。さらにNTTの無料番号案内まで使えるんだということなんですけれども、こういう優遇措置を与えていながら、なおかつ関係団体からはこれらの措置をさらに強化してくれというふうな要望が出ております。
 現状の優遇措置と、現に福祉手帳を持っている方々が利用している立場に立ってどんなギャップがあるのか、当局として把握しているか、どんな認識があるかについてお聞かせ願いたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 手帳を持っているということでのメリットにつきましては、今、委員御指摘の点がやはり主要なものだというふうに思います。そのような状況の中で、なおかつ障害者手帳を持っていらっしゃる方々の非常に大きな期待というのは、一番大きいのがJRの割引適用が非常に強くうたわれているように私どもは理解をいたしております。
 障害者団体からの要望に対しましては、運輸省への協力依頼でありますとか関係事業者に対して説明会などもやっているわけでございますが、現在まだそれを実現させるに至っていないという状況でありますけれども、引き続いて運輸省とも協力しながら、あるいは御要望を申し上げながら運賃割引については努力をしていきたいと思います。なお、昨年の二月に運輸省との間で検討会を設置しているという現状もございます。
 いずれにしても、このような優遇措置があるわけですので、この手帳が有効に活用されるように、あるいは周知されるように努力はしていきたいというふうに思います。
○入澤肇君 次に、精神障害者は二百十七万人いらっしゃる。どういう原因で障害を受けているのか、それから重度なのか軽度なのか、そういうふうな調査、あるいはその原因についての国立の研究機関における研究の現状、これらについてはどうなっているか、お聞かせ願いたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 精神疾患全般で二百十七万人がいるということでありますが、それぞれの疾病あるいはそれぞれの疾病の原因というものには大変難しい学問的な背景があって、今ここで御説明するのも、資料を持ち合わせていない点もございますので申しわけございませんが、少なくともここ最近ふえている、これはもう明らかな事実でありますし、そのふえている内容がここ五年から八年の三年間で六十万人もふえていると。これにつきましては、私どもの研究機関からいただいた資料によりますと、やはり一番多いのはうつ病の患者、そして精神分裂病の患者、しかもいずれも外来患者、これが非常にふえているというふうに言われております。
 このことについて、なぜこうなんだろうかという点で申し上げますとすれば、一つは、これまで入院治療が中心でありました精神分裂病がどんどん地域へ出ていくようになってきた。確かに長期間入院している方もいらっしゃいますけれども、そうじゃなくて、最近入院された方々はどんどん回転している。つまり、地域で精神分裂病の皆さんをケアできる体制が少しずつでも普及してきたのじゃないか、これが一点あります。そういう意味では、ふえたということそのものが悪いということじゃなくて、それだけ地域的な支えができたというふうな理解も可能なのではないか。
 一方で、社会環境が変化しあるいは経済環境が変化したためにストレスが多い、こんなところがうつ病のような疾患の増加にかかわるということも聞いております。そういう点からいいますと、高齢化も関係するのかもしれませんが、うつ病などの増加というのはある意味で憂うべき増加として認識すべきではないか、このように思います。また、それだけなのか。もっと言えば、精神科の診療所が非常にふえてきたということで、かかりやすくなったという点もあるのかもしれません。
 いずれにしても、そういった見方からして、私どもは、一つは精神分裂病患者さんを中心としての地域ケアの推進でありますとか、あるいはストレスとの関係でいえば、心の健康づくりといったものに目を向けて今後事業を展開する必要があるのではないか、このように思っております。
○入澤肇君 最後に。後で民主党の先生からも法案の修正の話が出ると思うんですけれども、そもそも政府提案の一番最後の附則六条に、こういうふうに第六条で何かものすごい条文の列記がございまして、十年をめどに見直すなんという規定が入ったというので私は驚いているんですけれども、聞くところによりますと、規制措置を規定したということについては十年をめどに見直せという総務庁の指示があったからということなんですけれども、ほかの省の提案されている条文を読んでもそういうことは附則に書いてありません。一律じゃないんですね。
 この条文の中で、例えばいろんな法律に違反したような問題の施設の事業運営について知事の事業停止命令をかけるとか、それから精神病院に対する改善計画の作成命令だとか入院医療制限命令、これなども十年したら見直せなんというふうに書いてあるんですけれども、こういう規定が必要なのかどうか。何か機械的に規制強化につながるような条文は全部ピックアップして附則にぶち込んだというふうな感じがするんですけれども、いかがですか。
○説明員(今田寛睦君) 総務庁との関係で申しますと、やはり規制緩和の流れの中で新たな規制を設けるということは、それを安易にあるいは無条件に容認するということにはいかないという総体的な御判断から、私どもも総務庁との折衝の中で、こういった新たな規制についてはそういう十年後の見直し規定というものを置くということでそれぞれに了解をさせていただいたわけであります。
 かといって、例えば今御指摘のありましたように、取り消し、使用停止の命令でありますとかそういったものは、十年後にそれを見直すということを前提に私どもこの法案をつくっているつもりではございません。必要なものは営々とやっていただかなければならないと思います。
 ただ、そういう法案を作成する間での一つの規制緩和の流れのあらわれがこういった形であらわれたというふうに私どもは理解をしつつ、総務庁ともそういう理解で今回こういう規定を入れさせていただいたということでございます。
○入澤肇君 質問を終わりますけれども、何か機械的に規制の規定があれば全部ぶち込むような、そういう考え方は、このようなせっかく抜本的に障害者対策を強化しようという法案の改正にあって、私はいかにも、軽率と言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、問題があるなというふうなことを申し上げて質問を終わります。
【次回へつづく】