精神医療に関する条文・審議(その90)

前回(id:kokekokko:20051104)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。法案などはid:kokekokko:20051026にあります。

第145回参議院 国民福祉委員会会議録第10号(平成11年4月22日)
【前回のつづき】
堂本暁子君 先日、参考人の四人の方々にいろいろ現場からのお話を伺いまして、改めて精神医療の現場の御苦労を感じた次第でございます。特に日本の場合は、宇都宮病院という病院の中で殺人が起こり、そこで大変人権が侵害されたということが国連の人権委員会でも問題になった。それから十数年の歳月がたったわけですけれども、参考人の御発言を伺っていて、改めてまだ難しい問題がいっぱいあるんだなということを思いました。
 非常に私が大事だと思いましたことは、谷中参考人がおっしゃったことで、ぜひとも病院の中へ第三者が立ち入ることができるようなことが大変大事であるというふうにおっしゃいました。私も実は、国の内外の精神病院をずっと記者の時代に取材して歩いて、なかなか病院の中に、ほとんどと言っていいと思いますが、ほとんどの病院の中に入ることができませんでした。やはりそれが病院の中でそういった人権侵害を起こしているんだというふうに当時も痛感したわけですけれども、ちょうど日本精神病院協会の河崎会長がおられたので、今後は私どもが中に入りたい、それからいろんな第三者が中に入りたいというときは門戸を開いてほしいということをお願いしたところ、それは必ずやります、これからもう一回通知を出してもいいというところまでおっしゃいました。私は、大変それはうれしく伺ったんですけれども、厚生省としてもそのことを担保していただくことがこれからのそういった人権を守るという視点からとても大事だと思います。
 これは大臣にぜひお願いを申し上げたいんですけれども、これから精神病院の中、とてもだめなところもあるかもしれませんけれども、原則論として、精神病院の中に例えば地元の審査会の方ですとか、それから弁護士さんですとか、そういった人、あるいはいろんな人がいると思いますが、病院の中に入っていくことをぜひとも担保していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣宮下創平君) 精神障害者の方々は判断能力がないとかいろいろそういう特殊な条件がありますから、精神病院等におきまして通常の病院と異なる規制をやっている、これはある意味で私は合理的だと思っています。ただ、今、委員の御指摘のように、無用に閉鎖的な、何か暗いイメージで中を見せないというようなことがあってはいけないと思います。そういう意味で、必要な方々が病院を訪ねたときには、それ相応の情報開示といいますか情報を提供し、ごらんいただくというくらいの公平なオープンな形がないと、人権擁護といっても実効性が担保されないかもしれません。
 そういう意味で、基本的に私は考え方はよくわかりますし、そういう方向であるべきかなと思いますが、その判断はやはり医学的な、あるいは入院されている精神障害者の方々の医者がどう判断するかという点もございますから、その病院長なり管理責任者の合意のもとにやる必要があると思います。しかし、余り制限的、閉鎖的に門前払いをするというようなことがもしもあるとすれば、これは是正するように指導していかなければならぬと思っております。
堂本暁子君 ぜひともよろしくお願いいたします。
 やはり、ドクターの判断がすべてであるということが人権侵害につながっていくということがありまして、メディカルモデルが強過ぎる。やっぱりそこにもう少しリーガルモデルと申しますか、そういった領域が担保されませんと、なかなか人権問題は進歩しない。
 例えば、だれだって人間ですから好き嫌いがあるわけで、ドクターやナースからにらまれることが一番怖いと言った患者さんもおられました。そういったことが拘束につながったりするわけで、やはりそこに第三者の公正で公平な目が私は必要だというふうに思っております。
 次の質問に移らせていただきます。
 例えば、権利擁護のための機関として今精神医療審査会がありますけれども、そういった精神医療審査会だけではなくて、東京都の場合は第三セクターとして「すてっぷ」というのができたそうですが、国のレベルでそういったような人権センターをおつくりいただくことはできないでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 障害者の皆さん方が判断能力の問題あるいは自分の意思を必ずしもうまく伝えられないといったようなこと、このようなことから本人の意思に反した処遇が行われるようなことがあって権利の侵害となるおそれも多分にあるわけでありますので、そのためにこそ権利擁護の制度は大変に重要だろうと思います。
 今御指摘の現在の制度におきましては、精神医療審査会における対応が一つの大きな軸となっております。さらに、社会復帰施設等の皆さん方あるいは地域の皆さん方には、現在、障害者一一〇番事業でありますとか、あるいは地域生活支援事業などにおいての苦情相談、こういったところで取り組んでいるところであります。
 今回の改正におきまして、審査会の強化でありますとか、あるいは地域生活支援事業を法定化してその促進を図るとか、こういったことを盛り込んでおるわけでございますけれども、そのような公的な、あるいは行政としての権利擁護のための取り組みについて、御指摘の「すてっぷ」の活動などは大変参考になると思います。
 そういった面も十分に参考にさせていただきながら、引き続いて権利擁護のための取り組みに力を注いでいきたいと思います。
堂本暁子君 次に、やはり今まで同僚議員からたくさん出た質問ですけれども、身体障害者の施設に比べて精神障害者の施設への補助金というのは大変少ない、大体半額から六〇%と言われております。それを何とかふやしていただきたいというお願いをぜひしたいと思います。
 それから、他の障害施設と違うことは、民間の給与改善費といったものが施設が開設されてから年数ごとに加算されないというふうに聞いています。これもきちっと加算しないと、大変差が出てきてしまう。
 それからもう一つは、大変長い入院が多いんですが、北海道の場合なんかは、冬になると入院の患者さんがふえるとこの前伺ったときにおっしゃっていました。暖房費なども加算されない。細かいところですけれども、そういったところへの加算が大事だというふうに思います。
 それから、作業療法士もなかなか採用されない。いろいろ病院の中でも作業されておりますので、そこへの補助金の加算はいかがなものでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 精神障害者のための社会復帰施設について、身体障害者等と比べておくれをとっているというか少ないんじゃないかという御指摘がございます。
 もちろん、これらを積算する上では施設当たりの職員数等を勘案するわけでありますが、現在は比較的自立度の高い精神障害者に御利用いただくものとして職員数を積算している関係もあって、結果としてその施設当たりの補助金が低くなっているということは事実でございます。そうは言いながらも、若干ではございますが十一年度予算では宿日直手当の計上等も努力はしているわけでありますが、今後もそういった意味での予算の確保は努力したいと思います。
 特に、長期入院患者の社会復帰という観点から、今私どもが設けている施設基準、人的基準よりももっと多い職員を配置したような施設体系、そういったものについても必要ではないかという意見がございます。そういった観点から、今後、長期在院患者の対応も含めて社会復帰施設のあり方を議論する中で検討していきたいと思います。
堂本暁子君 一見すると、御自分で歩いたりなされる、車いすには乗っていない、外から見たらそうです。でも、私はいろんなところで直接御本人たちから言われたことですけれども、もっと人間らしく生きたいと。人間にそう言われたときにどれだけこちらがショックを受けたかということは、今もはっきりその感覚を覚えていますけれども、やはり人間が人間扱いをされていないということなんですね。それはまたそのメンバーの方たちの言葉で表現させていただけば、もっと人が私たちを面倒見てくださればあの格子は要らないんですというふうにおっしゃっていました。人がいないから格子で私たちを縛っていると。
 事によったら拘束着などを着せられて動けなくしたり、実際に縛られている方も私は見ましたけれども、そういった拘束すら行われていた。今、実際にそういう着る物での拘束がなされているかどうかは存じませんけれども、急性期の非常に激しいときならいざ知らず、ああいった処罰のような拘束などというのはやっぱり絶対に人間にしてはいけないことだと思います。
 一人の方がおっしゃったのは、お互いに患者さん同士が旅をしている途中で大変ぐあいが悪くなってしまったときに、周りの病気の仲間がみんなで押さえてくれたと。もし、これが病院にいたら私は保護室に入ったのだけれども、たまたま外だったから人間の温かさでその時期を通り過ごすことができたということをおっしゃいました。
 おととい、参考人の中でも谷中参考人が、一番適しているのは同病者が面倒を見ることだ、社会復帰にとってもそれが一番いいということをおっしゃって、私も現場で非常にそれを強く感じたりもいたしました。しかし、その場合にも、健常者という言葉がいいのかどうか、一緒にそこで生活したり食事をしたりする方たちの役目は非常に大事だというふうに思っています。そういった意味でPSWが制度化されたということは大変歓迎したいというふうに思っております。
 やはり一番大事なのは、ただいま部長がおっしゃったように、自立できるからということですが、でも心は車いすに乗っているというふうに私は思います。外見で判断されてこういう薄い補助金というのはやはり大変な不公平があるというふうに私は認識していますので、そのことを申し上げたい。
 それで、PSWができて大変よかったと思います。第一回の国家試験で四千三百八十八人の方が合格され、これからますます社会復帰のためにも精神保健福祉士の制度は大事だと思いますが、本来受験資格のない方たち、または主たる業務としていないような方たちが、施設長の証明だけで受験資格を得られるということが今問題になっているそうです。
 やはり、大変大事な仕事ですので、資格のための資格というようなことではなくて、厚生省は各団体や都道府県に法の趣旨をしっかり徹底して、きちっと資格のある方たち、今そこで仕事をしている方やそういう資格のある方たちが試験を受けるようにということをぜひ徹底していただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) このたび、合格者を初めて出したということで関係者も大変喜んでいただいているわけでありますが、その受験資格につきましては、できるだけこの制度ができたことによって離職することなくそれまで培った資質の向上が図れるというようなことで特例措置を設けているわけでございます。平成十四年度までは、現任者講習会の受講者に受験資格を与えることとしております。
 御指摘のように、その場合に、一つは法施行の際、つまり十年四月一日でありますが、厚生省令で定める施設において相談援助事業に従事していたこと、相談援助事業の実務経験数が延べ五年を満たしていること、この二つが要件となっております。
 この要件の把握でありますけれども、実務経験の証明はそれぞれの所属長の証明書が必要でありますし、その審査については講習会を実施している団体で厳重に行われておりまして、必要に応じて厚生省とも連絡をとるという仕組みにはなっております。万一、実務経験の証明が不正な事実で行われていたということになれば、当然その資格の取り消しを行うなどの厳正な措置は講じるつもりでございます。
堂本暁子君 盛んに判断能力がないというような御答弁が出るんですけれども、二百十七万人の方の中で一時的にはそういう時期があったり、それから大変重篤な方もおられますけれども、多くの方はやはり社会で生活できる方なので、できるだけ私たちと同じような生活ができるようにぜひとも政策を立てていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
西川きよし君 私の方からは、本日は老人性の痴呆疾患対策についてお伺いをいたします。
 先日も、集中審議の際ですけれども質問をさせていただきました。いかに初期の対応が大切であるか、私も介護をする一人の子供として、そしてまた家族として本当に大切だなと。
 そこで、相談窓口の強化に今後も一層力を入れていただきたいなと、こういうふうに思うわけですけれども、平成元年から行われております老人性痴呆疾患センターについて、まずお伺いを申し上げます。
 このセンターの趣旨、そして現在の整備状況などをお伺いできればと思います。
○説明員(今田寛睦君) 老人性痴呆疾患センターにつきましては、老人性の痴呆患者の皆さん方に関しまして保健医療、福祉サービスの向上を図るという目的におきまして、まず老人性痴呆疾患患者の医療的な相談を行う、それから一床以上の空床の確保をお願いしておりまして、いざというときの痴呆疾患患者の救急対応にも資する、それから関係機関との連携あるいは福祉関係者との連携を行う、あるいはそれらに対する技術援助、こういったことを目的として設置しましたのがこのセンターでございます。
 平成元年度から、精神科を有する総合病院などの中から指定をしておりまして、十年度末で四十六都道府県百四十二施設となっております。
西川きよし君 昼夜を問わず二十四時間体制ということで皆さん助かっておるわけですけれども、実は日精協の雑誌で、ことしの三月号ですけれども、この中で千葉先生という方がこういうふうに書いていらっしゃるわけです。
 各地の老人性痴呆疾患センターが、本来期待された機能を果たしていない。地域に密着した身近な痴呆診断と治療の初期対応施設および痴呆疾患に対する諸々の支援を行う、いわば「痴呆疾患の最前線であり駆け込み寺」であることの役割を担ってスタートした老人性痴呆疾患センターが、見渡せばほとんど有名無実となっている。一方では、高齢化に伴い痴呆の問題はより顕在化し増大し続け、精神科医療の現場でも老人保健施設などでも痴呆疾患を取り扱う状況は日増しに増えていくばかりである。全体需要は確実に増えているにもかかわらず、老人性痴呆疾患センターの実績が上がらないのは何故だろうか。構造的な問題はないのか あるいは運用上の問題なのか。
 こういうふうにこの先生は記されておるわけですけれども、センターの現在の例えば問題点がありましたら、そしてまた課題がございましたら、ぜひ御答弁いただきたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) 老人性痴呆疾患センターの活用の実態に対しまして一部御批判があるというように理解をさせていただくわけですが、センターといたしましては、民間の精神病院から大きな大学の附属病院までさまざまなところがこのセンターの指定を受けているわけでございます。
 そのこともあわせまして、一つはセンターの重要性というものが関係者あるいは地域の皆さん方に十分認識されていない、理解されていないんじゃないかというような御指摘。それから、いわゆる地域に密着した活動をしている民間病院の先生がやっていらっしゃる痴呆疾患センターの運営の仕方と大学病院のようなところで運営していらっしゃるのとでは多少中身が違うのではないか、もっと役割をきちっと分ける方がいいんじゃないか、こういうような指摘もお聞きしているわけです。
 いずれにしても、このセンターの目的は痴呆疾患患者である本人、その御家族、あるいは関係者のために利用されてこそ意味があるわけでございますので、その趣旨にかんがみまして、こういった批判がいみじくも出ないようにこれからも有効な活用のための努力はしていきたいと思います。
西川きよし君 ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 こんなすばらしいところがあるにもかかわらず、本当に今おっしゃいましたように、地域の方々は知らない。お伺いいたしましても、知らない方々が余りにも多いようですから、またPR等々にも努めていただければと思います。
 このセンター、そして同じく痴呆の方の相談機関として在宅介護支援センターの整備も進められているわけですけれども、両機関それぞれの役割というんでしょうか、この在宅介護支援センターとの役割の関係を御説明いただけたらと思います。
○説明員(今田寛睦君) 老人性痴呆疾患センターは、今申し上げたように、どちらかというと医療機関にこれを置いて、医療的なことを中心に、あるいは保健という目で痴呆をとらまえた形で福祉の方々と協力をして推進していこう、こういう位置づけであります。
 一方で、在宅介護支援センターにつきましては、各中学校区に一カ所を目標として設置が進められております。痴呆であるかどうかということじゃなくて、在宅での介護が必要な高齢者という方々を対象に身近な課題についていろんな相談あるいはサービスの調整に応じる、こういう目的になっております。
 したがって、当然痴呆の方々もそういう介護等の相談の一つとしてあり得るわけでありますけれども、痴呆の方がただ介護だけで完結する、あるいは福祉だけで完結する場合にはその人たちとの連携をとるでありましょうし、一方で医療というものとのかかわりということになると、この支援センターは疾患センターの方とも連携をとらなければならないという意味で、それぞれ福祉的な部分と医療的な部分という、大ざっぱに言えばそういう分け方の中で協調して痴呆性の方々に当たろうということで、連絡調整などを行うことといたしております。
西川きよし君 この二つが連携すれば、双方とも二十四時間体制ということで本当におうちの方々は助かると思います。我が家もみんな時間割りをつくってそれぞれお世話するわけですけれども、この二つの連携がうまくいけば地域の皆さんは本当に喜ばれると思います。
 数字的に見ましても、在宅介護支援センターにつきましては今年度で目標値の一万カ所が整備される。それから、痴呆疾患センターについては今年度の予算で百三十四カ所。毎日の生活の中ではどうしても在宅介護支援センターの方が身近に感じてしまいますし、もちろん古い歴史もあるわけですけれども、相談機関になってくると思います。その場合にやはり大切なことは、この両機関の今もおっしゃいました連携、島と島とに大きなすばらしい橋がかかるようなそんな思いでやっていただければと思います。
 この点について厚生省ではどういうふうに考えて対応されるのか、また今後どういうふうにされていかれるのか、一点だけお伺いしたいと思うんです。
 老人性痴呆疾患センターについては、精神保健福祉の管轄から老人保健の管轄に移管させることが検討されているということをお伺いしたんですけれども、この点について一言お伺いしておきたいと思います。
○説明員(今田寛睦君) まずは在宅介護支援センターと老人性痴呆疾患センターがこれまで以上に連携をとって適切なサービスが提供できる、あるいは適切な相談ができるようにすべきだという観点に立って、この連携の強化には努めていきたいと思います。
 それから、当然それぞれの分野で努力をしておりますし、今後ともこうした連携を強化するということを推し進める覚悟でございますので、その所管について何らそういうことを考えてはおりません。
西川きよし君 では、移管させるというような検討は結果的にはございませんということですか。
○説明員(今田寛睦君) そういうことは全く検討いたしておりません。
西川きよし君 かしこまりました。
 では、次に移らせていただきます。
 今度は、重度の痴呆疾患デイケア介護保険の取り扱いについてお伺いしたいと思います。
 介護保険の検討の中で、精神科デイケア、そして精神科訪問看護など、精神科専門療法については基本的に医療保険に残す、ただしこの重度痴呆デイケアについては介護保険の認定を受けた者に関して介護保険の対象とするかどうかという検討をされているということです。この点については支給限度額の問題等々もあると思います。ぜひ御答弁いただきたいと思います。
○政府委員(近藤純五郎君) 重度の痴呆患者デイケアの関係でございますけれども、これは診療報酬上に設けられた概念でございまして、精神症状と行動異常が著しい痴呆患者の心身機能の回復とか維持を図るために、精神科を標榜いたします保険医療機関におきまして診療報酬の点数が算定できる、こういうものでございます。
 これは非常に専門性それから密度が高い医学管理を必要とするということにかんがみまして、この実施医療機関になりますためには精神科を標榜している病院の中で一定の人員とか施設設備を持っているところ、こういったところが実施機関になれるわけでございます。
 したがいまして、高い医学管理を必要とするということでございますので、介護保険施行後におきましても医療保険によります給付の対象とする方向で検討いたしているところでございまして、まだ決定はされておりませんけれども、介護保険の一応外だ、こういうふうに私どもは理解して検討を進めている、こういうことでございます。
西川きよし君 あと三分しかございませんので、次に精神障害者に対するホームヘルプサービスについてお伺いいたします。
 その中でホームヘルプの講習が九時間となっておりますけれども、この九時間は二級のヘルパーさんなのか、一級のヘルパーさんなのか、それともベテランのヘルパーさんを想定されておられますのか。
 それから、続けて御答弁いただきたいんですけれども、二級のテキストの中に高齢者と精神障害者の娘さんの事例も載っておるわけですが、精神障害者に対するヘルパーの研修、そういう専門的な研修の内容等もあわせてお答えいただければと思います。
○説明員(今田寛睦君) 現在、一般の高齢者あるいは障害者に対します派遣に係りますホームヘルパーに対して、ヘルパーにはいろいろ等級があるわけでありますが、それらは必ずしも限定をして派遣されているということにはなっておりませんし、精神障害者へのホームヘルパーの導入に当たっても、特段そういう級の問題として差をつけた対応をとるということは考えておりません。
 ただ、問題なのは、精神障害者に対するホームヘルパーの役割が、一般の身体障害、知的障害のような方へのアプローチと比べ、これまで経験したことがないという分野において特殊であることから、そういう面でヘルパーの皆さん方に保健所を通して、どういう接し方をし、どういうサービスをすることがサービスを受ける方に最も満足いただけるかという研修をしっかりしていただいて、その上でヘルパーの皆さん方を現実に派遣するように、十四年まで大いに努力をしていきたいと考えております。
西川きよし君 そこで、高齢者に対するヘルプサービスの中に、介助者への支援として実際に精神障害者へのサービスが行われているわけですが、この点について、専門家の間でも二級のヘルパーの対応では難しいのではないかと。二級のヘルパーが能力を身につける必要がある、このような検討内容も紹介をされておるわけですけれども、これを最後の質問とさせていただきますが、一般ヘルパーの研修の中にももっと組み込む必要があるのではないかと思うんです。いかがでしょうか。
○説明員(今田寛睦君) 今の二級のままのヘルパーの方々が即精神障害者への対応にうまくフィットするかどうか、これは内容を見てみるなり評価する必要がありますが、少なくとも新たにかかわっていただくわけでありますので、従来の研修に加えて精神障害に関する専門研修を実施する必要がある、このように考えております。
西川きよし君 ありがとうございました。
○委員長(尾辻秀久君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。

第145回参議院 国民福祉委員会会議録第11号(平成11年4月27日)
○委員長(尾辻秀久君) 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の修正について清水嘉与子君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。清水嘉与子君。
○清水嘉与子君 私は、ただいま議題となっております精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党民主党・新緑風会公明党日本共産党社会民主党・護憲連合、自由党参議院の会及び二院クラブ自由連合を代表いたしまして、修正の動議を提出いたします。その内容は、お手元に配付されている案文のとおりでございます。
 これより、その趣旨について御説明申し上げます。
 本法律案は、適正な精神医療の確保を図るとともに、精神障害者の社会復帰の促進のために所要の措置を講じようとするものでありますが、本案に対する本委員会での審議等を踏まえ、本修正案を提出するものであります。
 修正の要旨は、第一に、保護者の義務に関する事項については、任意入院者及び通院医療を継続して受けている精神障害者の保護者の義務の範囲を明確化すること。
 第二に、検討条項に関する事項については、政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。
 その他所要の規定の整理を行うこと。
 以上であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同を賜りますよう、お願い申し上げます。
○委員長(尾辻秀久君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案について採決に入ります。
 まず、清水嘉与子君提出の修正案の採決を行います。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(尾辻秀久君) 全会一致と認めます。よって、清水嘉与子君提出の修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部の採決を行います。
 修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(尾辻秀久君) 全会一致と認めます。よって、修正部分を除いた原案は可決されました。
 以上の結果、本案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
 この際、朝日君から発言を求められておりますので、これを許します。朝日俊弘君。
○朝日俊弘君 私は、ただいま可決されました精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党民主党・新緑風会公明党日本共産党社会民主党・護憲連合、自由党参議院の会及び二院クラブ自由連合の各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
 
   精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。
 一、今後の精神保健福祉施策を進めるに当たっては、他の障害者施策との均衡や雇用施策との連携に留意しつつ、障害者プランの着実な推進を図ること。
 二、医療保護入院については、国連原則等の国際的な規定に照らし、その適切な運用に努めること。
 三、医療保護入院等のための移送の実施に当たっては、適正な運用が確保されるよう必要な措置を講ずるとともに、都道府県の責任において適切な入院治療が提供できるよう二次医療圏を勘案し、その体制を整備すること。
 四、市町村を中心とする在宅福祉サービスの充実が図られるよう、財政的な支援を行うとともに、専門的・技術的な支援を行うこと。また、市町村障害者計画の策定について市町村が主体的に取り組むことができるよう、積極的に支援すること。
 五、精神病床に係る人員配置基準、医療計画その他の精神医療提供体制及び長期入院患者の療養の在り方について、早急に検討を行うこと。
 六、チーム医療及び精神保健福祉サービスの一層の推進を図るため、人材の育成・確保に努めること。また、現在検討中の臨床心理技術者の国家資格制度の創設については、速やかに結論を得ること。
 七、重大な犯罪を犯した精神障害者の処遇の在り方については、幅広い観点から検討を行うこと。
 八、精神医療審査会がより適正な機能を発揮し、独立性と実効性を確保できるよう努めるとともに、合議体の構成についても検討すること。
 九、成年後見制度及び社会福祉事業法等の見直しの動向を踏まえ、保護者制度及び精神障害者の権利擁護制度の在り方について、引き続き検討を進めること。
 十、小規模作業所については、社会福祉事業法の見直しの中で、通所授産施設の要件緩和が検討されていることから、その検討結果を踏まえ、通所授産施設への移行を促進すること。
 十一、精神病院における不祥事件の多発にかんがみ、適切な医療を確保するとともに、医療機関等の情報公開の推進と精神病院の指導監督の徹底を図ること。
 十二、精神障害者に関する各種資格制限の緩和と撤廃について検討し、その結果に基づいて、速やかに必要な措置を講ずること。
 
  右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(尾辻秀久君) ただいま朝日君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(尾辻秀久君) 全会一致と認めます。よって、朝日君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、宮下厚生大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。宮下厚生大臣
国務大臣宮下創平君) ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたします。

第145回参議院 本会議会議録第17号(平成11年4月28日)
○議長(斎藤十朗君) 日程第四 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。国民福祉委員長尾辻秀久君。
   〔尾辻秀久君登壇、拍手〕
尾辻秀久君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国民福祉委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 本法律案は、精神障害者の人権に配慮した適正な精神医療の確保と精神障害者の社会復帰の一層の促進を図るため、精神医療審査会の機能強化、精神保健指定医の職務の適正化、医療保護入院の要件の明確化、在宅福祉事業の中心的実施主体を市町村とする体制の整備など、所要の措置を講じようとするものであります。
 委員会におきましては、精神医療審査会の人権擁護機能の強化、適切な医療を確保するための情報公開の推進、保護者制度のあり方、福祉水準の引き上げと市町村に対する支援の必要性等の諸問題について質疑を行うとともに、参考人からの意見聴取を行いましたが、その詳細は会議録によって御承知を願います。
 質疑を終局した後、自由民主党民主党・新緑風会公明党日本共産党社会民主党・護憲連合、自由党参議院の会及び二院クラブ自由連合を代表して自由民主党の清水理事より、保護者の義務の範囲を明確化すること、本法の施行後五年を目途として検討を行うこと等を内容とする修正案が提出されました。
 次いで、採決の結果、本法律案は全会一致をもって修正議決すべきものと決定いたしました。
 なお、本法律案に対して、附帯決議が付されております。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ─────────────
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
 本案の委員長報告は修正議決報告でございます。
 本案を委員長報告のとおり修正議決することの賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
○議長(斎藤十朗君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
○議長(斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百三十二  
  賛成           二百三十二  
  反対               〇  
 よって、本案は全会一致をもって委員長報告のとおり修正議決されました。(拍手)

第145回衆議院 厚生委員会会議録第8号(平成11年5月7日)
○木村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案は、参議院で修正議決の上送付されたものでありますので、まず政府から趣旨の説明を聴取し、引き続き参議院における修正部分の趣旨について説明を聴取いたします。宮下厚生大臣
○宮下国務大臣 ただいま議題となりました精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 精神保健福祉対策につきましては、昭和六十二年の精神衛生法の改正並びに平成五年及び平成七年の精神保健法の改正等により、これまでもさまざまな改善が行われてきたところでありますが、最近においても、精神障害者の人権に配意した適正な精神医療の確保や、精神障害者の社会復帰の一層の推進を図ることが求められております。
 このような状況を踏まえ、今般、より適正な精神医療の確保を図るための所要の措置を講ずるとともに、精神障害者の居宅における生活の支援等の福祉施策の充実を図ることとし、この法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。
 第一に、精神障害者の人権に配慮した適正な医療の確保であります。まず、精神医療審査会の審査機能を強化するため、その委員数の規制を撤廃するとともに、関係者に対する報告徴収権限を付与することとしております。また、精神保健指定医については、その診療録記載義務の拡充や職務停止処分の創設等の所要の見直しを行うこととしております。さらに、医療保護入院の対象者については、この入院が本人の意思によらない強制入院であることにかんがみ、その対象者が精神障害のため本人の同意に基づいた入院を行う状態にない者であることを明確にすることとしております。
 第二に、緊急に入院が必要となる精神障害者に係る移送の法定化であります。緊急に入院が必要であるにもかかわらず、精神障害のため本人の同意に基づいた入院を行う状態にないと精神保健指定医が判定した精神障害者を、都道府県知事が応急入院指定病院に移送する制度を創設することとしております。
 第三に、保護者に関する事項であります。保護者について、その自傷他害防止監督義務の規定を削除するとともに、任意入院者等みずからの意思で医療を受けている精神障害者の保護者については、本人に治療を受けさせる義務等を免除することとしております。
 第四に、精神障害者の保健福祉施策の充実に関する事項であります。精神保健福祉センターについては、通院医療費の公費負担や精神障害者保健福祉手帳の申請に係る判定及び精神医療審査会の事務を一元的に行わせること等により、その機能を拡充することとしております。また、在宅の精神障害者の相談、助言等を行う精神障害者地域生活支援センターを社会復帰施設として法定化するとともに、精神障害者居宅生活支援事業として精神障害者居宅介護等事業及び精神障害者短期入所事業を創設し、在宅の精神障害者に対する福祉施策の拡充を図ることとしております。さらに、より住民に身近な地域で在宅福祉サービスが利用できるよう、精神障害者居宅生活支援事業の実施主体を市町村とするとともに、福祉施策の相談、助言等についても、保健所による技術的支援のもとで、市町村において実施することとしております。
 このほか、仮入院制度の廃止等今般の見直しに伴う所要の措置を講ずるとともに、関係法律についても、所要の規定の整備を行うこととしております。
 最後に、法律の施行期日は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日としておりますが、在宅福祉事業の追加等の事項については、平成十四年四月一日からとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要でありますが、この法律案につきましては参議院において修正が行われたところであります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○木村委員長 次に、参議院国民福祉委員長尾辻秀久君。
○尾辻参議院議員 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案に対する参議院の修正部分につきまして、その内容を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、第一に、任意入院者の保護者及び通院医療を継続して受けている精神障害者の保護者の義務の範囲を明確化すること。
 第二に、附則第六条の検討条項について、政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすると改めること。
 その他所要の規定の整理を行うこと。
 以上であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
○木村委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
○木村委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。