精神医療に関する条文・審議(その91)

前回(id:kokekokko:20051105)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。法案などはid:kokekokko:20051026にあります。

第145回衆議院 厚生委員会会議録第10号(平成11年5月19日)
○木村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。能勢和子さん。
○能勢委員 能勢でございます。おはようございます。
 大臣も御案内のとおり、皆様も御案内のとおり、精神保健福祉法が生まれました昭和六十二年、この精神保健福祉法の一番のねらいは、精神障害者に対する人権、そして私たち国民に対する精神保健の向上、あわせて地域のそうした精神障害者を支えるネットワークといいますか、地域も支えていこう、大きな柱がその三つだったと思います。殊に、当時さまざまな問題があって、精神保健福祉法ができました当時は、国際舞台で日本の精神医療をたたいてきたということがあるわけでありますが、特に人権問題について大きく話題を呼んだところであります。最もそれが焦点であったわけであります。
 今、その精神保健のねらいを考えますときに、医療法では、現在、精神、結核特例という形で、医師初め医療従事者の数が一般に対して低い形で定められているのが現状であります。私は、特に精神医療の現場にいた人間といたしまして、ハード面よりもソフトといいますか、まさに精神医療の治療の中心は人であります。その人の質と数、量、これがまさしく精神科医療の中での最も重要な部分だと思います。極端に表現するならば、保護室なんという数だって、治療する側の質と数を保障すれば随分少なくて済むというふうに思っているわけであります。殊に精神科の場合は、医師を初めとしますさまざまな医療スタッフの質と数が要るわけでありますが、現在の医療法に定められております数を見ますときに、一般科より少なくていい。
 我々常に、精神医療がメジャーになりたいというふうに思っていたわけです。精神医療が一般科と同じくメジャーになりたい、そのためには当然、診療報酬等々の問題もかかわってくると思います。そういうような考えを持ちますものから、今の精神医療に対します一般医療との格差についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
○今田説明員 御指摘のように、精神科の病院におきます人員配置につきましては、医療法の特例によりまして、医師につきましては、入院患者四十八人に一人、これは一般病床では十六人に一人になっております。それから看護婦につきましては、入院患者六人に一人、これは一般病床では四人に一人ということで、特例によって規定されているわけであります。この特例は昭和三十三年にできたわけでありますけれども、当時、精神病床の整備を急速に進める必要があったという点、そのためにはスタッフの確保が非常に困難だったという状況がございました。また、精神疾患が一般的に慢性疾患であるという疾病特性といったものも背景にあったのではないかと考えております。
 今現在を見てみますと、病床の整備もある意味では非常に進んでまいりました。それから、精神疾患の中でも、非常に集中的な治療を行うべき人たち、患者層がいるということなどもありまして、今の特例を見直すべきではないかという委員の御意見が他にも多々あることは承知をいたしております。
 今、医療法の見直しを議論されておりまして、一般病床の病床区分のあり方だとかあるいはその人員配置のあり方といったものも含めて検討されておりますけれども、これらの審議に合わせまして、公衆衛生審議会におきましても精神病床のあり方について今議論が行われているところでございます。この議論を踏まえながら必要な人的あり方というものについて検討をしていきたいと考えております。
○能勢委員 ありがとうございます。
 今、障害保健部長もおっしゃいましたように、看護も、一般が四対一に対して六対一でいいという数が出ておりますが、本当に精神医療で日本一いい病院を展開しようという取り組みにしますと、新看護体系の中でとても六対一の数ではできません。それで、今私たちにかかわります調査をしましても、三対一、二・五対一と、看護の数、いわゆる量、そして質も、最近私も教育の大切さを考えますときに、私の地元でも、広島大学も去年から博士課程もできました。修士、博士課程を出た看護婦さんたちが非常に患者さんとのかかわりがうまくいくために、興奮していた患者さんたちもそのかかわりを通して安定する、いわゆる人間関係のコミュニケーションができる技術とかいうのをどんどんと持ってくるようになってきました。そう考えますときに、本当に精神科医療の質がどんなに治療に直結するかということを私たちも身をもって体験しているわけであります。
 ただ、六対一がまだ現在生きていますと、六対一でもやっている病院の底上げをするためには医療法が改正されなきゃいけない、特例が解除されなきゃいけない、そしてそれに値する評価もしなきゃならないというふうに考えていますので、これからもよろしくお願いしたいと思います。
 次に、精神保健福祉法の三十六条の三項に、患者の隔離その他の行動の制限はいわゆる精神保健指定医が必要と。現在の法律でありますと、保護室への隔離とかあるいは抑制、いわゆる患者さんの人権にかかわる部分である抑制等々については精神保健指定医でなければならないという法律となっています。
 そんなやさきに、あちこちの病院での不祥事も確かに起こりました。やはり非常に人権を重んずるがために精神保健指定医のみでなければならないということの意味合いはわかりますけれども、実際に医療の現場で二十四時間通して看護をします者が、本当に質が保障されるならばその判断ができないはずがないわけなんです。本当に今保護室に入っていただく患者さんなのか、あるいはもう少しかかわることによってといいますか、きちっとした看護面談といいますか、そうしたかかわりを通して落ちつく方、あるいは、今はそんな時期でない、とにかく一人で静かに保護室を使う方が患者さんにとっていいんだという判断は、まさしくきちっとした精神科看護婦であれば看護診断ができるわけであります。
 今の法律であると、とにかく精神保健指定医のみということになっているわけですが、それでは、今、勉強いたしまして、精神科専門看護士というのがどんどん出てきております。修士を出た方たちあるいは博士課程を取った看護婦さんたち、そういう専門領域の人が出てきていますけれども、いわゆる精神保健指定医と同じく、看護婦もそうした臨床経験と理論武装がきちっとできる看護婦が出てきた場合に、精神科を目指してやろうという意欲のある人たちに道が全く閉ざされていると思うのです。
 というのは、最初から申しますように、質はもちろん必要でありますが、この法律は、特に患者さんの人権を重んじてやった精神保健指定医でありますけれども、果たしてこのままでいいのか。将来、そうした道が開けて優良な医師、優良な看護婦にそうした判断ができないとお考えなんでしょうか。私はそれはたくさんの臨床の中でできるというふうに思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
○今田説明員 精神病院の特性といたしまして隔離など行動の制限を行わざるを得ないということからいたしまして、病院の職員の皆さん方、医師、看護婦をも含めて職員の皆さん方が人権擁護の観点から専門的な配慮が必要だという点につきましては、御指摘のとおりだと思います。
 現状を申し上げますと、そのための行動制限の判定については、精神保健指定医の制度を設けまして指定医の判断でこれを行う、つまり、一般の医師では行えないというような形で適正な処遇の確保を図ろう、このようにしているわけでございます。したがって、このような中で、一定の資格を有することを条件として行動の制限の判定を行う職種、これを医師以外に拡大していくということについては、何はともあれ十分な人権擁護の確保の観点からこれを考慮する必要があるという意味では、慎重な検討が必要ではないかと思っております。
 精神科につきましては、高度な専門性を持つ看護婦さんだとか看護士さんについて精神医療の業務に当たっていただくということは大変大事だと思いますし、現在、精神科専門の看護資格制度の創設ということについて関係の皆さん方がいろいろ検討していらっしゃるということでもございます。したがって、これらの専門性というものについての一つのありようについて、検討の状況を眺めながら、精神科の看護の水準につきましてその向上には努めていかなければならない、このように思っております。
○能勢委員 ありがとうございました。
 先ほど部長からも、今、医師の数、四十八人に対して一人ですか、二十四時間通してそういう数で患者さんを診ていく。今現在、看護婦は法的に六対一となっていますが、実際問題、三対一ということで、二十四時間通して患者さんの変化あるいは心の動きというのを見ていく中で、医師に、これは抑制が必要でないかということだって報告します。その報告します判断も、やはりここで看護婦が診るわけでありますから、間違った報告をすれば当然間違った判断をする材料を与えてしまう。だから、そこの看護の質が大変求められてきます。
 そして、中には、いわゆる看護婦免許を持った看護婦のレベルと、そして本当に精神科をきわめていく中で患者の行動が判断できる能力というのはだんだん高まってまいりますし、それは常に研修もしなきゃいけませんし、あるいは、きちっとまとまった長期の、看護婦免許プラス修士に行く人もいますし、また、それに物足らず博士課程まで行く看護婦さんがどんどん出てきました。広島県におきましても、広島大学修士、博士課程ができた関係で大変精神科を目指して入ってくるんです。
 なぜならば、まさに自分の存在そのものが治療にかかわれる。看護は、常に側面的な看護といいましても、自分の存在、そこにいることが、患者と看護婦の関係、患者と医師の関係も同じですが、治療者と患者の関係というのは、まさに存在する、そこに立っている姿そのものが全人格と全人格とのかかわりであるわけですから、治療効果をプラスにもマイナスにもしていくという意味で非常にやりがいがあるということもあるわけでしょうし、そういう意味で、そうした専門看護士を目指す方がだんだんと若い人たちにふえてくるわけですね。
 その人たちも、自分の専門領域、あるいは責任を持った行動、責任を持った判断、ぎりぎりの刃の上に立つときにどう看護診断するかということによってその一人の患者さんをよくも悪くもすると思います。そういう意味で大変大事な分野でありますし、ぜひとも検討課題に上げていただきたいと思っています。
 そして、今出ました、精神科はかつて受診行動がおくれたときには慢性という形のイメージを与えていますけれども、今は、それが本当に分裂病なのかあるいは境界例かとさまざまな診断がある中で、むしろ、早期発見、早期治療が先手を決めるというほどに、大変大事なのは短期入院、社会復帰といいますか、本当にそういうことが可能になってきている。
 それは、今問題になっているように、薬物が非常に進歩したといいますか、向精神薬の出現とその進歩によって、かつて長期慢性化といった患者さんたちが、そうでなくて、私たちの病院におきましても、国家公務員としてきちっと勤めている方、日常の受診を通して全く再発もなくて何年も来た方、さまざまな症例に出会っているわけです。
 そのためにもぜひともお願いしたいのは、慢性期の病気というイメージから、必ず急性期でよくなる患者さんの群がいるんだということ、どうしても慢性期経過をたどる人もいるんだということの二つ。必ずしもみんなよくなるとは限りません。慢性期経過をたどる方もいらっしゃるし、急性期でよくなる方もいらっしゃる。初期の治療がよければ、当然ずっと外来治療だけで昔の考えでいけば定年まできちっと勤務できる方だっていらっしゃるわけでありますので、まさしく人が治療の中心になることを加えて申し上げて、医療法の改正なりあるいはそれに対する保障といいますか、それに必要な人材と診療報酬での評価も要るでしょう。そしてまた、看護がそうした形で大いにそうした方たちのために働ける、そうした責任と権限も与えられることが今後の精神医療に大きな効果をもたらすと確信いたしておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 ありがとうございました。
○木村委員長 武山百合子さん。
○武山委員 自由党武山百合子でございます。
 早速質問に入りたいと思います。
 まず、精神障害者の実態についてですけれども、厚生省では国際的な比較を行っているのかどうか、世界的視野で精神障害者の実態について、日本と外国、特に先進諸国ですけれども、そういう意味で比較を行っているのかどうか、まず一点お伺いしたいと思います。それから、諸外国と比べて我が国特有の状況というのが指摘できるのかどうか、その辺の状況。そして三つ目ですけれども、一挙に三つお願いしたいと思いますが、歴史的に見て我が国の精神障害にどのような傾向が認められるのか。この三点についてお聞きしたいと思います。
○今田説明員 諸外国の状況の中で多くの指標で比較できる資料が、それぞれの国の状況も違いまして、持っているには限界があるわけでありますが、まず精神病床数につきましては、例えば人口千人当たりで見ますと、アメリカが〇・六床、ドイツが一・三床、フランスが一・三床でありますけれども、我が国は二・九床ということで、他国に比べましては精神病床は多いということが言えようかと思います。
 これらにつきましては、外国で、ケネディ政権の当時に一つ象徴されるわけでありますけれども、脱病院化ということで、地域医療を進めようという観点から比較的早く地域精神医療への取り組みが進んだというふうに思います。そのことによって、ある意味では精神病院の入院期間というのが短縮され、あるいは精神病床そのものが縮小されてきております。
 一方で、そうはいっても一定のケアが必要だということから、アメリカでは、イギリスにもありますけれどもナーシングホーム、あるいはデイホスピタル、あるいは福祉ホームといったような在宅におけるケアを行う施設が非常に充実してきているというのが諸外国の現状ではないかと思います。
 翻って我が国においてどうかという御指摘でありますけれども、社会復帰施設の取り組みそのものがある意味ではおくれたということは否めないことかと思います。
 と申しますのも、精神衛生法精神保健福祉法へと今日に至る過程の中での歴史といいますと、他の福祉施策と比べれば明らかにおくれてスタートしてきているという点は十分認識しなければならないと思います。そういうことで、アメリカに比べますと依然として入院医療が中心となっておるということ。それから、社会の受け入れ態勢ということで、社会復帰施設がなお一万人程度のボリュームしかないという点で必ずしも十分ではないこと。また、地域におけるケアシステムという点についても十分に整備されているわけではない、あるいは、それらに対して国民の理解が十分であるかどうかという点についてもなお解決しなければならない課題がある。このように認識をいたしております。
○武山委員 どうもありがとうございます。
 それで、日本は今精神障害者の数が大変多くなってきているんですね。ふえつつあるんですね。なぜそういう数値が全国的に非常にふえてきているかという実態、原因、そういうところも把握していますでしょうか。
○今田説明員 我が国の患者調査によります精神障害者の数というのが非常にふえている、六十万人ぐらいふえているんじゃないかという数字がございます。
 それはなぜかという点でありますけれども、ベッド数はむしろ減少ぎみでありますから、入院患者そのものがふえているわけではない、ほとんどが外来患者であるということがまず第一点。その中には、大きく分けて精神分裂病が非常にふえているということ、第二点がうつ病のような感情障害が非常にふえてきている、こういった点が特徴でございます。
 その理由でありますけれども、精神分裂病がふえているというのは、精神分裂病そのものは比較的人種に関係なく一定に発生すると言われておりますので、そういう点から見ますと、地域医療が非常に進んできた、つまり、外来で精神分裂病がケアできるようになったという意味において、必ずしもネガティブな評価をする必要はないのではないか。もう一つは、うつ病のような感情障害がふえているという点でありますが、これは、高齢化でありますとかあるいは社会の変化といったものが何らかの形で影響しているのではないかというふうに私どもは考えております。
 いずれにしても、診療所も非常にふえてきてかかりやすくなっている点もありますので、外来患者が増加している理由というのはそのあたりを私どもとして認識しながら対策を考えなければならない、このように考えております。
○武山委員 今の今田部長さんのお話を総合して厚生大臣にお伺いしたいと思いますけれども、そのような問題意識が今回の法律改正にどのように生かされているのかが一点。
 それから、まず精神障害者に対する偏見を取り除く、心のバリアフリーなんという言葉を何か厚生省がおっしゃっておりましたけれども、確かにその偏見を取り除くということが不可欠だと思いますけれども、そのための具体的な方策というか対策、その辺についてお聞きしたいと思います。
○宮下国務大臣 今回の改正でございますが、私どもの問題意識は、今お話のございましたように、社会復帰の促進を図るために地域で精神障害者を支える体制を大きく整備することが精神保健福祉施策の大きな課題となっておるものと認識しております。
 この点につきまして、精神障害者の社会復帰とか自立の促進を図るためには、今障害者プランというのがございますが、そのプランに沿いまして社会復帰施設の整備等により、その量的充実を図ることといたしておるところでございます。
 同時に、今回の改正におきまして特に特徴的な点は、市町村を中心として実施する在宅福祉施策を充実すること、つまり、ホームヘルプとかショートステイの施設を法定化することにいたしておりますし、それから、精神障害者の福祉サービスの利用に関する助言等を市町村で実施することができるように、より身近なところで相談、助言、あっせん、調整ができるようにしたこと。それからまた、精神障害者地域生活支援センターというものを法定化いたしまして、地域で生活する精神障害者の日常生活の支援、日常的な相談への対応等々、障害者の自立と社会参加の促進を図るようにいたしました。
 また、地域社会におきまして精神障害者を支えていくために、御指摘のような、精神障害者に対する国民一人一人の理解と認識を深めていくということも極めて重要でございまして、その普及啓発等も重要なものと考えております。さまざまな機会を通じまして啓発、広報等を展開いたしまして、府県及び市町村を中心に普及啓発活動を行っておるところでございます。
 心のバリアフリーというお言葉もありましたが、ボランティア活動等を通じました障害者との交流とかさまざまな機会を通じた広報の展開等によりまして障害及び障害者に対する国民の理解の増進を図っていきたい、そして精神障害者についての社会的な誤解や偏見を是正していきたいというように考えておりまして、こうした視点で今回の改正も一つの大きな柱として考えておるわけでございます。
 今後とも、これらの精神障害に関します普及啓発を通じまして、精神障害者の自立と社会参加ということの目的のために、一層その推進のために努力をしていきたい、このように思っております。
○武山委員 やはり、地域が支えるということによっていわゆる偏見というのが少しずつ取り除かれていくんだろうと思います。子供たちへの教育も学校教育の中で必要かと思いますので、心のバリアフリーというものは必要なことなわけですから、いろいろな角度から行っていただきたいと思います。
 それから、設備を整えるという意味では、公共事業ということで予算をつけて施設をつくっていくことですけれども、いわゆる人的なもの、相談員というかケースワーカーというかそういうものも、片肺だけではなくて両肺になる、両方の部分でやっていかなければいけないんだと思うんですけれども、その人材育成についてはどうでしょうか。
○今田説明員 精神障害者の自立支援に対応していただける人材といたしましては、現在であれば、保健所におきます精神衛生相談員を含めた保健婦さんでありますとかあるいは各病院にいらっしゃる職員の方々は、一つの大きな力として私は認識しておりますが、なお一層、精神病院と社会復帰施設というものをうまく連携させるように、社会復帰に関して相談、援助ができるものとして、このたび精神保健福祉士という国家資格を創設いたしました。三月には第一回目の国家試験の合格者が発表されたところでありますが、このような新しい職種も、そういった意味ではこれからの社会復帰の貴重な人材として活用していく必要があるというふうに思っております。
○武山委員 ぜひ、予算をつけていただいて、人材を多く育成していただいて対応していただきたいと思います。
 それから、地域支援についてお伺いしたいと思います。
 今回の法律改正において、在宅福祉を市町村を中心に進めていくということですけれども、精神障害者を地域で支える体制の整備を少し細かく、方向性としてどのように進めていくのか、お聞きしたいと思います。
○今田説明員 精神障害者の社会復帰のためには、やはり地域で、身近なところできめ細かな支援ができる体制が必要だということから、今回の法改正におきましては、少なくとも在宅福祉サービスについては市町村を中心として実施する、つまり、ホームヘルプサービスでありますとかショートステイサービスについては市町村において実施していただくように法定化させていただいております。
 同時に、市町村は今まで精神障害者の社会復帰に対して十分な過去の経験がないということもございますので、広域的な調整については保健所を通じて支援いただくとともに、担当される方の研修等も保健所等を通して研修をしていきたいと考えております。
 いずれにいたしましても、当面の目標は、やはり在宅福祉は市町村でやっていこう、しかし、将来的にどうかという点につきましては、今後、そういう体制の整備というものをにらみながら、できるだけ身近なところでケアが受けられるような方向というものを目指したいというふうには思っております。
○武山委員 どうもありがとうございました。
 持ち時間が十五分なものですから、時間が来てしまいました。精神障害者の数が大変ふえておるわけですから、きめ細やかなサービス、また医療体制をぜひしていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
○木村委員長 土肥隆一君。
○土肥委員 民主党土肥隆一でございます。
 昭和六十二年に精神保健法の改正があって、それから五年ごとに法律を見直してまいりまして、これからまた五年、精神保健福祉の分野でまだまだ立ちおくれている精神病の患者さんに対する医療、福祉、それを充実していかなければならない。そういう意味では、五年ごとのピッチを上げてきたということは大変よかったと私は思っております。このピッチを緩めてはならない。したがって、あと十年ぐらい、五年刻みでこの精神保健福祉法の充実に向けて頑張らなければならないと思っております。
 それは、日本の精神病の世界が、あるいは精神病医療の世界が非常に不幸な出発をいたしまして、日本人の独特の偏見とか精神病に対する無理解から、医療の現場におきましても、あるいは病院におきましても、あるいは市民感情からいたしましても、大変たくさんの無理解や誤解、そして偏見に満ちた日本の社会における精神病の患者さんのケアを今後どうするかということは、まだまだたくさんの宿題が残っているというふうに考えるわけであります。
 一方、行政の方も、私の勝手な言い方をさせていただければ、精神医療の世界を民間病院にゆだねまして、ほぼ民間に任せて、国、地方も含めて多くの関与をしなかった。そのことがまた逆に民間病院を生き残らせ、そしてまた入院患者も、社会的入院などと言われますけれども、病院の経営上、ベッド数を満たすような意味においても民間優先でやってきた。そして、民間優先はいいんだけれども、民間に大幅に、九〇%、九五%以上依存していますから、はっきりした物の言い方が行政の側からもできない。医療監督にいたしましても、さまざまな指導におきましても、まことに腰の引けた行政ではなかったかというふうに私は思うわけであります。そして、病院は自分の病院のベッドさえ埋まれば経営は成り立つわけでありますから、そうした動き、傾向がずっと続いてまいりました。
 しかしながら、さすが今日に至りまして、患者さんの人権とかあるいは長期社会的入院をどう解消するかというときになりますと、やはり環境整備として、この福祉、長期入院の患者を受け入れることのできる地域、そして社会復帰施設などの必要が叫ばれるようになりまして、今日では、特に今回の改正法案ではかなりの部分見通しが立ってきた、めどがついてきた。だけれども、仕事をするのはこれからだということを痛切に思うわけでございます。
    〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
 私は、大阪にありました安田系病院、精神病院でございますけれども、大和川病院の問題についてこの五、六年かかわってまいりました。そして今日では、この法人が持っております三つの病院が一気に崩壊していく、あるいは私の言い方を許していただければ、行政による強制的撤去といいましょうか撤退といいましょうか、そういう一種の荒療治、荒仕事をやってきたというふうに思う次第でございます。その辺は、今回質問をするに当たりまして詰めさせていただきます。
 この大和川病院につきましては、実は私、平成五年にこの厚生委員会で大和川病院の問題を取り上げました。大和川病院に参りましてその余りのひどさにあきれ返りまして、約一時間にわたって厚生省に対して質問をいたしました。これが平成五年の六月の二日でございました。そして、今日、平成十年になりましてやっと、大和川病院を初めとする三病院の余りのひどさに厚生省も腰を上げまして、大阪府と協力して病院の閉鎖に及ぶわけでございます。その三病院が完全に閉鎖いたしましたのが平成十年の七月でございます。八月の五日には三病院の入院患者が転退院を完了しております。ですから、五年から十年まで、正式に言いますと約五年です。くしくもこの平成五年に精神保健法の改正があって、今回また再改正をやろうとしている。
 実は、五年間、私はこの大和川病院の問題について訴え続け、何とかしなければいけないということを繰り返し申してまいりましたけれども、腰が上がりませんでした。例えば、平成五年には二回、四月と七月に実地指導をいたしました。平成六年は一回、平成七年も一回、平成八年も一回、平成九年になりまして急に動きが活発になりまして、立て続けに指導をいたしまして、八月にはこの病院を閉鎖するということでございました。
 私はその間、実はこの病院から告発を受けておりました。この病院を私は訪問いたしました。それが平成五年の五月の八日のことでございました。そして、そこで院長に会いまして、もう少し患者さんを大事にするような病院にしてほしい、その年二月にこの大和川病院の入院患者が死亡いたしまして、その件について、どういうことだったのですかということを聞きに行ったわけであります。院長の部屋でまことに平穏な対談をいたしました。
 ところが、それが建造物不法侵入、威力業務妨害名誉毀損ということで、大阪地検に私は告発されたわけであります。裁判の用意もしておりました。それのみならず、ここの弁護士は、特定はできないのですけれども、私の選挙区に無署名の手紙をばらまきまして、自称衆議院議員土肥隆一というのがいるようですが、というふうに始まっているわけです。そして、こんな大阪地検に告発されているような人間が議員をしていいのでしょうかというような話で、県会議員でありますとか市会議員でありますとか、私の地元の神戸にばらまいたわけでございます。それも証拠書類として法廷闘争に用意しておったのでありますけれども、その間に病院はつぶれてしまったということでございます。
 今回の大きな法改正は、言うまでもなく、病院の管理体制をきっちりしよう、精神病院に対する指導監督を強化しようということでございます。しかし、法律を変えまして何かいきなり強化しようというような、いかにも振りかざしたような法案になっておりまして、その辺の実態をはっきり理解し、問題点の一番行き着くところをしっかり吟味しないと、幾ら法律で縛っても、三十万からいる精神病院の患者さんの幸せはもたらされない、このように思うわけであります。
 そうした中で、まず、指定医についてお尋ねしたいと思います。
 指定医に関して、指定医の精神病院の管理者への報告というのがございます。三十七の二でございます。これを見ますと、指定医が非常に重要だということが繰り返し強調されております。なるほど、そうでございます。精神病院は、指定医によってよくも悪くも決定すると私は思っております。
 ところが、指定医の仕事は、三十七条の二でございますけれども、指定医は、その勤務する精神病院に入院中の者の処遇が三十六条の規定に違反しているときは、当該精神病院の管理者にその旨を報告すること等により、当該管理者において当該精神病院に入院中の者の処遇の改善のために必要な措置がとられるよう努めなければならない、こうなっております。
 大和川病院の例を言いますと、指定医がいるんです。だけれども、これは雇われ指定医でございます。当然、院長は指定医じゃございません、三つの病院を経営していますから。そして、この院長というか理事長が、現場にいないにもかかわらず、一々細かに指示するわけです。ですから、この次はどうしましょうかと電話で問い合わせして、私が訪問している間もそうでしたけれども、もう理事長、院長の言うままなんですね。
 それで、どんなに良心的な指定医であっても、患者さんが不当な扱いを受けている、規定に違反しているから精神病院の管理者にその旨を報告して、そして管理者が入院中の者の処遇の改善のために必要な措置がとられるように努力しなさい、努めなさい、こうなっておるわけですが、こういうことが果たして実現可能なのか。何をもってこのような法案が出てきたのか。実態はそうじゃないんじゃないか。報告とはいかにも腰が引けた表現ではないでしょうか。私の表現を言わせていただければ、指摘して説得せねばならないぐらいの文言にすべきだと思うのであります。
 この指定医の今回の大きな責任追加といいましょうか、今までの入院や治療やその他と違いまして、管理者に物を言わなきゃならないという法案でございますが、この背景、そしてこれが本当に実効性の伴うものであると判断するのかどうか、まずお聞きしたいと思います。
○今田説明員 三十七条の二の規定でございますけれども、これまでの指定医の責務につきましては、主に、自分の担当する患者さんに対してどういう行為を行ったか、身体的拘束を行ったか、それらを適切に行うという患者さんを対象とした中での規定であったわけでありますが、今回は、指定医が自分の担当する患者のことだけじゃなくて、病院全体の処遇の確保について適切なものとするよう努力義務を課したという点において、体制にも指定医としての役割を演じていただきたいというのが大きなねらいの一つでございます。
 それで、その手段、方法といたしまして、報告するべく努力義務を課しているわけでありますが、これにつきましては、当然、指定医というものは、病院の中で信頼関係を前提に入院中の患者の処遇を確保するというお立場にあるわけでありますので、病院の管理者への報告に努めていただくことによって、その病院における処遇が、指定医であるという一つのお立場の中で必ずや有効に機能していただけるのではないか、このように私どもは考えております。
○土肥委員 そうは思わないですよ。
 もう少し詰めていきたいんですけれども、要するに、指定医という非常に重要な、精神病あるいは精神医療の世界で大事なドクター、その資格の付与あるいはその位置づけが何か社会的に余り重んじられていないんじゃないか。
 もし指定医の役割を管理者への報告というのならば、むしろもう一条つけ加えて、管理者はしたがって指定医の報告に基づいて必要な措置をとらなければならないというくらい書かないと、どこにこんな勇気のある指定医がいるでしょうか。自分の首をかけて管理者に、いろいろな管理者がいますから、大和川病院の場合は即刻首でしょう。指定医が足りなければ、また、なかなか指定医が探せなければ置いておくかもしれませんけれども、ほとんど現場の統治能力がないわけです。そういう病院もあるだろう、また過去にあった。そうしたときにこんな腰の引けた表現でいいんですか。
 今、指定医というのは一万人ぐらいいらっしゃるそうであります。参議院で行われました参考人招致で、日本精神病院協会の会長の河崎先生が、日精協に入っているのが千二百五病院で三十万ベッドを抱えている、指定医は四千人だ、こうおっしゃっています。設置基準や配置基準がありますから、それぞれ四千人の人が三十万ベッドを見ているわけです。しかし、指定医の地位について、その社会的な地位の向上についてはどこもうたっていないんですね。
 ですから、やはり、指定医にこれだけの仕事をさせるならば、この仕事の裏打ちをしてあげなきゃいけない。そうしない限り、指定医は、本当の意味で自分の医者としての良心に従って病院の取り仕切りをしないだろう、このように思います。
 したがって、どうでしょうか、この指定医の仕事を、管理者に対してこれだけの仕事をさせるぐらいならば、その裏打ちができるような条文を追加すべきだと思いますが、部長の御意見をお聞かせください。
○今田説明員 三十七条の二に規定いたします指定医の報告の中で、当然、適当でない状況というものをもって報告することになるわけでありますが、その中身は、三十六条、つまり行動の制限に係ります規定に違反するような場合だとか、それから三十七条の第一項、これは処遇の基準でありますが、面会、通信の自由などのことに対しての侵害があったような場合、こういった場合に報告するというお立場をお願いしているわけであります。
 この義務は、当然管理者は、指定医だからと申し上げておりますが、指定医じゃなくても、管理者そのものがこれを守らなきゃならないという義務は法定されているわけでありますので、ある意味では、指定医というお立場で管理者が果たすべき義務というものに対して一定の役割を演じていただきたいという観点から、今回の規定の整備をしたつもりでございます。
 そうはいいながら、非常に重要な役割を演じていただいております指定医に対する一つの法的な裏づけというふうな御指摘でありますが、指定医につきましては、二つの面を持っております。
 一つは、自分が勤めております病院の中で、あるいはその施設の中で、患者さんに対してどう役割を演じるかということにおける役割、それから、例えば措置入院の患者さんのために措置入院が適切かどうかということを判断したり、あるいは病院の中に指導に行くときに一緒に行っていただいて、その病院が適切な医療保護入院をやっていただけているか、そういう公的な役割、二つを演じることになっております。
 少なくとも公的な役割につきましては、これは公務員としての一つの位置づけとして公的な役割を制度的には担保しているつもりでありますが、病院内における指定医としての役割についてどのような裏づけが適切であるかにつきましては、その病院の処遇の話にもかかわりますので、今後どうやるべきかについては考えてみたいと思います。
 今回の制度では、そういう病院の中の体制に対して一定の役割を指定医も演じていただくんだという意味で、ある種の努力義務ではありますけれども、拡大をさせていただいたということで一定の評価をしているつもりでございます。
    〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
○土肥委員 ですから、公務員としての役割も持っていると、ますます責任は大きいわけでございまして、多面的な働きをしていただかなければならない。
 大和川病院の例がすべてではございません、最もあしき例だと思いますけれども、しかし、これが私が取り上げてから五年間放置されたということも含めて、あるいはその前からさまざまな問題があって、それも含めてないがしろにされてきた。指定医はほとんど機能していない。
 これは大阪府がつくった報告書でございます。「安田系病院問題に対する大阪府の取り組み」、平成十年十一月、大阪府が発行したものでありまして、私が読む限り、かなりの改善とか、あるいは自分たちの仕事が不十分であったということを認めておりまして、大変正直には書かれているのですけれども、同時に、今度は患者さんサイドの裏づけをしなければならない、あるいは人権問題などを扱っている市民団体の意見も聞かなければいけないわけであります。
 大和川病院の報告書だけでも、例えば、診察回数は月一回だったというのが三一・八%あるのです。月一回もなかったという人が四・六%いるのです。これは、大阪府が転退院をした後の患者さんのお一人お一人に会ってアンケート調査をしたのです。二百八十一例でございます。調査不能が六十四となっております。
 お医者さんはきちんと診察してくれましたかというだけで、いいえというのが四五・二%もあるのです。薬の説明はしない、退院までずっと同じ薬を飲んでいたという人もいるわけですね。看護婦さんの態度は、何を言っても聞いてくれない、余り姿を見なかったとも出ております。
 それから、冷暖房はない、ロビーのみ冷暖房があったとか。あるいは電話の使用。もう本当に精神病院の一番基本的に許されている電話をかけるという自由すら、詰所の中と外に移動できるようになっておりまして、一日に一、二時間だけ許可いたしまして、その後は全部詰所の中に入れてしまうわけであります。そして、全体で一回五百円分の十円玉しか用意しなくて、患者さんたちはその五百円分の十円玉の中で一枚、二枚と使っていく。ですから、電話の自由というのが許されていない。
 それから、手紙も制限されている、検閲すらする。面会などは、日曜、祭日はだめだと表に堂々と張り紙がしてありまして、面会時間は十分から十五分程度で終わってください、そのように書いてあるわけですね。外出はもう本当に許されない状況であります。暴力や暴言があったり、あるいはやくざまがいの人が入院患者におってその人が取り仕切っていたり、とにかく、この病院は一体何なんだ、どうしてこういうことになったんだということを考えるときに、私はもう本当に途方に暮れてしまう思いがいたします。
 そこで、指定医がこういう状況を見て、本当にこれは何とかしなきゃいけないと思ったのかどうかわかりません。それくらいの感じがいたします。先ほども言いましたように、すっかり病院管理者に牛耳られているということでございます。
 ですから、この法案、三十七条の二ができたわけでありますから、今度はしっかりと調査をしていただきまして、本当にこの項が生きてくるのかどうか。そして、指定医の身分上あるいは地位上の保全もしてあげなきゃいけないし、公務員的な働きもするわけでありますから、処遇面というか、給料についてもやはり相当いいものを用意する。そのことによって初めて良心的な精神科医が生まれるであろうし、また大勢のお医者さんたちが精神科医を目指すということもあろうか、私はこう思うわけであります。
 そういう現状とこの法文の、例えば大和川病院における例を挙げましたけれども、到底これは不可能な話だというふうに感じております。今回この法案でこれ以上のことを言っても仕方がないわけでありまして、ぜひともこれは今後の五年で検証させていただきたい、このように思う次第であります。
 次に、私は、きょうは病院の関係の微妙な点だけを質問させていただいているわけでありますが、例えば、今度は患者さんの場合ですけれども、退院等の請求が三十八条の四に出てまいります。法文を読みますと、「精神病院に入院中の者又はその保護者は、厚生省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、当該入院中の者を退院させ、又は精神病院の管理者に対し、その者を退院させることを命じ、若しくはその者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じることを求めることができる。」と。これは大変な条文ですね。この一点だけで、退院を希望する患者さんがこんなにも自分の立場が認められているのかと思えば、それはもう喜ぶだろうと思うのです。だけれども、これも現実的に行われているのかどうか、行われるのかどうか、それを私は大変疑うわけであります。
 法文上は大変立派です。だけれども、一たん入院しますともう出てこられないのじゃないか。任意入院は医療入院に切りかえられ、そして面会は許されず、外出も許されず、そのうちに社会的な適応が無理になってきますと病院にいるしかないというふうな患者さんが何万人といると私は感じます。
 この条文は一体具体的にはどういうところに使われるのでしょうか、お答えいただきたいと思います。
○今田説明員 精神病院に入院していらっしゃる患者さんが退院請求をすることについての手続につきましては規則の方で決めておりますけれども、入院中の者あるいはその保護者が患者の住所、氏名等を都道府県知事に申し立てる、あるいは入院中の患者さんの病院の名前を言うということでこれがスタートするわけでありますが、その結果、精神医療審査会でこれを判断いたしまして、先ほどおっしゃっていただきました一定の退院命令等の措置を行う、こういう流れになっております。
 一つは、退院を請求する患者さんがそれにアクセスできるかどうかという点がございます。これについては、まず入院時の告知でありますとか、今御指摘がありました公衆電話の設置、あるいはどこに連絡するかという電話番号を表示するといったことについては、制度的にこれを義務づけているわけでございます。
 もう一つは、それを受けて実際に退院命令なり処遇改善命令というものを実行しているのかどうかという点につきましては、平成九年度のデータでございますけれども、退院請求が九百六十八件、それから処遇改善請求が五十件という実績はございます。
○土肥委員 まさに今部長がおっしゃったそのデータ、入院していらっしゃる三十万人以上の患者さんの中で、最近は任意入院が多いわけでありますけれども、年間でたった九百六十八人しか退院請求がなかったということ、そのうち不適当と認めたのが五十九人、それから待遇改善請求ではたった五十件しか請求がなくて、そのうち三件を不適当と認めたということがこの調査室がつくったデータに出ております。
 これは何かやはり秘密が隠されている。患者さんたちはうめき声を上げながら暮らしているのに、ここまで、つまり都道府県なり審査会なりにアクセスできてないんじゃないでしょうか。あるいは逆に、病院がこれを抑えているんじゃないでしょうか、余り自分のうちの病院のことをがたがた言われると困ると。そういうことじゃないかと思わざるを得ないのであります。
 細かいデータを挙げれば大和川病院でも出てまいりますけれども、私は、こういうデータを見ますときに、医療保護入院だけでも八万人からの人を審査している精神医療審査会の審査状況を見ますと、いかにも少ない。そうしたら、三十数万いらっしゃる精神病院の患者さんは、そのうちの千人だけ除いてあとはみんなハッピーで、退院もしたくない、あるいは一切の処遇改善の苦情もない、もうこれだったら日本の精神医療の世界は何の心配もないんじゃないかと思うくらいであります。そういう見方は誤っているんでしょうか、お答えいただきたいと思います。
    〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
○今田説明員 現在の退院請求あるいは処遇改善請求が非常に少ないのではないかという御指摘でありますが、私どもも、必ずしもこれで十分問題が救われているというふうに言い切ることはできないかと思います。特にその制度が有効に活用されているのかどうか、この辺を検証する必要があろうかと思います、都道府県格差もその中にあるわけでありますが。
 私どもとしては、都道府県に対しまして、患者からの訴えというものを正しく審査会にちゃんとつなぎなさい、それから、府県も精神病院に対しまして、そういった権利があるんだということを確実に告知してほしいといったような形での指導はしているところでございます。
 したがいまして、この制度を入院されている患者さんあるいは保護者等の方々が十分承知していないという点については、十分そういう権利があるんだということが当事者も含めて伝わるような、もう少しそういうことについての努力をしなければということで、今がすべて百点満点の百点なのかという御指摘に対してのお答えにかえさせていただきたいと思います。
○土肥委員 きょうはもうこれで終わりますけれども、私は、意見を申させていただくならば、公的な機関、特に都道府県の精神病院の設置、そして政令指定都市も設置義務にして、もっと公的な病院が日本の精神医療の世界でリーダーにならなきゃいけない。せんだって国立病院でも事故が起きましたけれども、事故が皆無であるというような施設は一つもないわけであります。それは社会福祉施設から何から全部そうでありますけれども、やはり、公的な病院がもっとリーダーとなって精神保健の世界を引っ張っていただかなきゃならない、そういうことだろうというふうに思うのであります。
 今、都道府県設置の精神病院は、四十七都道府県に全部設置されているんでしょうか。そして、その入院患者数は今、公立病院としては何名引き受けていらっしゃるんですか。最後にお聞きしまして、私の質問を終わります。
○今田説明員 一つは、県立病院、法十九条の七で規定をしておりますけれども、都道府県の設置義務に対しましてこれを設置していない県は、鳥取県佐賀県大分県の三県だということでございます。また、都道府県の病床につきましては、一万七千三百九十二名というのが平成九年の病院報告等から得ているデータでございます。
○土肥委員 ありがとうございました。
 入院患者数が三十三万九千人のうち、一万七千三百九十二人が公立であるということから見るときに、精神病院というものは非常に開設がしにくい、そして地域の理解を得るのは難しい。もっと行政が積極的に精神医療の世界にも乗り出していって、医療のみならず、社会復帰施設、福祉の部分でももっと公立が担わないと、民間の病院だけに依存しているのでは日本の精神医療の世界はよくならないということをあえて申し上げさせていただきまして、終わります。ありがとうございました。
    〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
○木村委員長 山本孝史君。
○山本(孝)委員 民主党山本孝史でございます。
 今回の法律は参議院で先に審議がされておりまして、論点もかなり明確になっている部分があるかと思います。したがって、私の質問は、参議院での審議内容を踏まえて質問をさせていただきたいと思います。
 今回の法律改正におきまして、厚生省としては、精神科の救急医療システムの整備を図っていきたい。それは、移送というものを法定化して、さらにはその移送先の病院の指定基準を見直しするというお考えのように承っておりますが、結果から申し上げて、今回のこの法律改正によって、例えば、今出ておりました大和川病院のような病院に救急患者が運び込まれることはなくなる、あるいは大和川病院のような病院が今回なくなるというふうに理解してよろしいのでしょうか。
○今田説明員 当然、応急入院指定病院の基準には一定のレベルが必要であるというふうに考えておりますので、そのレベルに至らない医療機関が対象となることはないというふうに考えております。
○山本(孝)委員 応急入院の指定病院の指定基準を今度見直すとおっしゃっていますね。見直すということは、きつくするのか緩くするのかという話で、二次医療圏ごとに整備をしていこうというと、これは緩くしないと整備が進まないのだろう。
 私が今聞きましたのは、応急入院の指定病院というか、一定の精神病院の基準というものを、搬送先の病院という形であるけれども今回つくる、そうすると、つくったときに、その病院の医療のレベルあるいは処遇のレベルというものは、今回指定をしていかれる中で、たとえそれが搬送先になろうがなるまいが、今申し上げている病院の処遇のレベルを厚生省としては全病院を対象に全面的に見直すということになるのでしょうか。
○今田説明員 現在の応急入院指定病院につきましては、一つは、この制度そのものは、保護者の同意が得られない場合に応急に入院させることができる施設としてつくられた仕組みであります。したがって、結果的に非常に人数が少なかったという点、だから、それに対してそういう施設に手を挙げていただく医療機関が少なかったという点がございます。
 実際にこれから新しくつくります移送制度につきましても、これは保護者の同意が当然前提となっておりますから、ということは、言いかえれば、保護者がいてもいなくても緊急入院が必要だという場合には当然医療機関へ搬送していくという視点に立つという観点からこの応急入院指定病院を利用しよう、つまりそれを活用していこうということで仕組みをつくらせていただきました。
 したがいまして、この改正によりまして応急入院で受け入れる患者の数が増加をいたしますし、それに対しての処遇につきましては、当然、患者の状態でありますとか地域バランスを考慮する必要がありますが、例えば、基準から著しく逸脱している病院しかないような医療圏の場合に、そこをあえて指定するのかというようなことにならないように、そういう意味では、一定の圏域というものも考慮しながら、医療水準の今持っているレベルというものをできるだけ守れるような、そういう形でこの基準を変えるという視点に立って関係者の御意見をお聞きした上で対応したい、このように考えております。
○山本(孝)委員 今田部長、今いみじくも御答弁されたように、一定の処遇レベルに達していない、あるいは処遇レベルが非常に劣悪である病院があるという認識をお持ちになって今そういう御答弁をされていると思うのですね。若干私の質問に対しての答えがずれていると思うのですけれども。
 応急入院の指定病院は、保護者の同意云々の部分があって、それは応急入院だという範疇はあることはわかっておりますが、今回は移送する先の病院をふやそうというお考えでおられますよね。そうすると、その折に、要は移送される先の病院のレベルをどの程度に見るのか。とすると、今いみじくもおっしゃったように、移送してはいけないような病院は移送先にしないんだ。でも、移送してはいけないような病院があること自体が実は問題なんでしょう。
 だからそこで、本当は全部の病院が移送先の指定病院になれるようなレベルでないといけない。それですら、応急入院の指定病院のレベルを低くして見直しをしていこうということなんだから、そこのところが、空きベッドを持っている持っていない、あるいは常に二十四時間オンコールでおられるかどうかというのは緊急の対応の問題としてはありますけれども、緊急であろうがなかろうが、搬送された先の病院が非常に劣悪な処遇をしているという認識をお持ちなのであれば、今回のこの指定制度を実際に運用していかれる上で、参議院での議論を聞いておりましても指定基準がいまいち明確にはされておられない。これから政省令の中で指定基準を考えていかれるんだと思いますが、その折に、その指定基準というのは、いわば日本の精神病院の最低レベルはここなんだという指定基準をお考えになるということでないと今回やっておられる意味がない。だから、ここは、そういう意味合いで指定基準をしっかりつくっていただくんだという大臣の御見解をいただきたいと思います。
○宮下国務大臣 指定病院の数が非常に乏しいということで参議院でも議論がございました。やはり、指定病院の数をふやすということも必要でございますが、今委員のおっしゃられるように、精神科治療の病院としての水準を満たしておることも必要でございます。
 したがって、私ども、指定病院はただ数さえふやせばいいという問題ではございませんで、基本的には、今おっしゃったように必ずしも一定の基準に該当しない病院もあろうかと存じますので、基準を定めて、そしてその水準に近づけるように努力させていただいて数をふやしていこうというように思います。
○山本(孝)委員 全国で三百五十五の二次医療圏があって、参議院では二次医療圏ごとに一つないし二つの病院を指定していきたいという御答弁をされておられるのですね。三百五十五の医療圏の中で、一つも精神病院がない医療圏が二十あります。一つしかないというのが五十五あります。両方合わせて七十五、大体二割のところは一つないし一つもないという二次医療圏になっている。
 そうしますと、今のお考えでいきますと、やはりどこかを指定しなければいけないということになってしまう。余り選択の余地はないのです。そういう意味で指定はなかなか難しいだろうと思いますし、それから、私も質問主意書を出させていただきましたけれども、国立療養所の犀潟病院のようないわば国の管理しておられる精神病院の中で、本人への十分な説明もなく拘束されておられるというような、大変にあってはならないような処遇をしておられる。したがって、単に搬送先の病院の指定基準というだけではなくて、病院全体の処遇レベルをどう考えるのか、そこをしっかりとつくっていただきたい、したがって、政省令をおつくりになる過程を国民にわかりやすいように説明をしていただきたいと思います。
 それから、今回の御答弁の中で、医療保護入院と任意入院の明確な区分をしていきたいとおっしゃっておられる。これは今の問題と結局同じなんですけれども、そう考えておられる中で、今後基準があってもよいのではと考えるという御答弁がありましたので、それは一定のガイドラインをお示しになると理解してよろしいのでしょうか。
○今田説明員 今回の改正は、医療保護入院そのものが本人の同意に基づかない強制入院の一形態だということから考えまして、その要件の明確化ということから、任意入院を行う状態にないと指定医が判定したことを要件といたしました。この改正によりまして、患者さんの同意能力の有無、こういったことが任意入院との間の一つの区別の要件になるというふうに考えております。
 したがって、同意能力の有無につきまして御判断いただくわけでありますが、患者さんの状態の多様性ということから、客観的で一律な基準を設けることについては技術的に困難ではないかと考えておりますが、運用上の一つのありようというものについては検討しなければならないと考えております。
○山本(孝)委員 運用上のあり方ということになるとガイドラインになりますので、運用指針として、例えばこういう場合は任意入院である、こういう場合は医療保護入院であるといういろいろな例示ができると思うのですけれども、そういう例示を含めたガイドラインをおつくりになる考えがあるかということです。
○今田説明員 それも含めて、どのような形で整理すればいいかについても検討していきたいと考えております。
【次回へつづく】