精神医療に関する条文・審議(その92)

前回(id:kokekokko:20051106)のつづき。初回は2004/10/28。
ひきつづき、平成11年の精神保健福祉法改正についてみてみます。法案などはid:kokekokko:20051026にあります。

第145回衆議院 厚生委員会会議録第10号(平成11年5月19日)
【前回のつづき】
○山本(孝)委員 本人の同意というところがこれまでの通達もあやふやになっている部分もありますし、今回きちっとしたガイドラインを示していただくことで患者の人権が守られる手だてになると思いますので、ガイドラインをおつくりいただきたいと思います。
 次の質問ですけれども、精神病質という用語が法律で使われております。第五条の「「精神障害者」とは、」という定義の中に精神病質というのがございます。いろいろな議論があることは承知しておりますけれども、大臣、精神病質というのは精神医学用語ではありませんので定義から削除するべきだと考えておりますけれども、このお考えをお聞かせください。
○今田説明員 精神病質につきましては、国際疾病分類、ICD10におきまして非社会性人格障害に含まれる概念ということで位置づけられているかと存じます。したがって、精神病質については医学概念ではないということから疑義を呈する御意見があるのも承知をいたしております。ただ、一方で、人格及び行動の障害としてそういったものは当然存在し、かつ、精神科医療の対象とすべきだという御意見もございます。
 したがって、これらの取り扱いにつきましては、今回、法改正議論の中でも、あるいは審議会の中でもいろいろと御議論がなされたわけでありますが、審議会の意見といたしましては十分なまとめの意見が出なかったということから、結果的に今回これに手をつけなかったという結論に至ったことは御承知のとおりかと思います。
 いずれにしても、この問題につきましては、現行法のまま、このあり方については引き続き検討すべきだという御指摘もいただいておりますので、私ども、これは先生御指摘のことも含めてきちっとした検討をすべきだというふうには認識いたしております。
○山本(孝)委員 部長の今の御答弁にありますように、国際疾病分類において精神病質というものはないわけですね。きのうコピーをいただいたばかりで原文に当たる時間がないので、これはもともとの原本に当たるべきだと思いますけれども、非社会性人格障害という国際疾病分類の区分の中に、非道徳的、反社会的、非社会的、精神病質は含むというふうに書いてある。
 ここの前後の説明を読んでおりましても、非社会性人格障害とは、「通常、行動と一般的な社会的規範との間の不一致のために注意を惹く人格障害であり、」と書いてありますので、一般的な社会的規範といった場合は、まさに社会、文化を反映しているものですから、これは病気ではないわけですね。
 その社会に住んでおられる平均的な人間の行動規範から著しく外れた場合には、これは問題があるだろう、人格障害として考えるというところはあるのでしょうけれども、非社会性人格障害の特徴として、以下によって特徴づけられるという特徴の一番最初は他人の感情への冷淡な無関心、二番目は社会的規範、規則、責務への著しい持続的な無責任と無視の態度とか、こういったもので非社会性人格障害、だからあなたは精神障害者なんだというこの仕組みはかなり危ういものを私は感じるのですね。その社会全体の考え方であなたは精神障害者だというふうにくくられてしまう。
 日本精神神経学会は、精神病質は医学概念でないという議決をしておられますし、日本弁護士連合会も、わがままで衝動を我慢できない人物、あるいは冷酷で罪の意識が持てない、悪いのは自分でない、周りだと考える人物は、精神病質、成人のパーソナリティー及び行動障害として非自発入院の対象とされ得るという判定をしておりますから、事例として適切かどうか知りませんけれども、今の和歌山のカレー毒事件等を見ておりますと、あの容疑者は恐らく非社会性人格障害精神障害者だという形に受け取られかねないという気がするのですね。
 そういう意味合いで、精神病質という言葉は、今検討していくという御答弁がありましたけれども、この国際疾病分類の書き方を見ても、カンマの打ち方がちょっと違いますので、これはちょっと、精神病質がここに書いてあるからという、これはどなたが訳されたかにもよりましょうけれども、もう一度原本を確認していただいて、私も確認してみますけれども、ここは検討していただきたい。部長、そういう形で検討していただけますか。
○今田説明員 一つは、このICD10の日本語に訳した中での私どもの認識が原文とどうかという点については、私どもも確認させていただきます。
 それから、いずれにしても、これについては非常に議論が多々あるということも十分に認識しておりますので、今後私どもも検討していきたいと思います。
○山本(孝)委員 全く余談になって恐縮なのですけれども、余りこの国際疾病分類を金科玉条のごとくにおっしゃいますと、私、いつもたばこの問題で御質問させていただいておりますけれども、国際疾病分類の中でたばこは特異的精神作用物質と書いてありまして、ここには薬物としてきっちり規定されております。そういう意味でいけば、国際疾病分類を前面に出して日本の基準をそこへ合わせていくとするならば、もっとたばこに対しても厳しい対応をしていただかないと、何かバランスを欠いているような気がします。余り国際疾病分類を盾にとられるのはいかがかなという気がいたします。
 次の質問ですけれども、精神保健福祉センターについてお尋ねをしたいと思います。
 私が個人的にお聞きしました中でも、精神保健福祉センターは規模や活動状況などにおいてかなりばらつきがあるということは、厚生省もお認めになっておられます。今回は精神医療審査会がこの精神保健福祉センターに設置をされるということになるわけですけれども、いかにしてこのセンターの活動を充実させていくのか、その充実の方策をどのようにお考えになっておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
○今田説明員 精神保健福祉センターは、各県で非常にばらつきがございます、活動の中にもばらつきがございます。これは、センターが制度として本来担わなければならない一つの義務的役割というものを今まで持っていなかったということも一つの原因ではないかと思いますが、今回、この精神保健福祉センターに対しまして、通院医療費の公費負担の判定でありますとか精神障害者の保健福祉手帳の判定、それから精神医療審査会の事務、こういったことを担っていただくことになります。したがって、当然、そのセンターにおける体制の充実は必要であるわけであります。
 私どもとしては、今、精神保健福祉センターの運営要領というものを持っておりますが、これにつきまして見直しを行って必要な体制の確保について指導を図りたい、このように考えております。
○山本(孝)委員 必要な体制の確保のために指導を行うというその指導の内容としては、あるいは厚生省としての支援の内容としては、どのようなものをお考えなのでしょうか。
○今田説明員 基本的には、少なくとも通院医療費の公費負担等の業務については都道府県の業務として行っていただくわけでありますので、そもそも県がそれに対して必要な体制整備のための努力をいただくという意味で指導を行うというふうな形になろうかと思います。
 精神保健福祉センターそのものの設置につきましては、都道府県の御判断による部分でありますので、その内容についてこういう要領でやってくれということを私ども申し上げるつもりでありますが、それに対して経済的に云々ということにつきましては都道府県の御判断にお任せせざるを得ないのではないかと思います。
○山本(孝)委員 例えば、法律の中で今回必置にされて今まだ設置されていない七つの指定都市についても整備を進めていく、こうおっしゃっておられるわけですけれども、必置にするのは当然必要なことだと思いますので必置規定を盛り込まれたのはいいことだと思うのですけれども、あとは都道府県にお任せしますというのでは、今ありますこの保健センターのそれぞれの規模あるいは活動状況のばらつきというものは是正をされずにそのままになってしまうのではないか。予算措置はとらないのだ、地方分権の流れの中で、後でも御質問しますけれども、保健所の問題にしても何でも地方にやっていただくのだ、国はあとは存じ上げませんでは、必置をされた側はなかなか対応が難しい。やはり、我々からすれば、どの都道府県に住んでいてもこの規模の、あるいはこの活動内容を持っている、水準を持っている精神保健福祉センターが必ずあるのだということでないと、必置した意味がないと思うのですね。
 そういう意味合いで、人口比等々によってもちろん違うと思いますけれども、最低、ばらつきを是正していく、このレベルまで精神保健福祉センターは上げていくのだということが具体的にわかるような、部署は運営要領で示しておられますけれども、こういった人員を配置するのだとかこういった活動をするのだとかということのお示しもあわせてないと、必置をした意味が余りないのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○今田説明員 最初に御指摘ございましたように、指定都市にも全部これはつくっていただくということで当然お願いをするわけでありますが、一つは、運営に係ります人件費につきましては、交付税措置等によりましてこれを裏打っていただくという意味において対応させていただいております。施設整備等につきましては、一定の補助というものもございますので、そういったものも活用して安定的な運営ができるように、私どもも最大限の努力をしていきたいと思います。
○山本(孝)委員 関連するので。質問の後の方に予定していました保健所の問題ですけれども、参議院での御答弁を見ておりましても、今後ともに精神保健福祉の推進には保健所が大きな役割を果たしていくのだということで、保健所にそういう役割を持たせるという御答弁をされておられます。
 例えて言えば、精神保健相談員というお仕事がありますけれども、この精神保健相談員は全国の保健所の中ですべてに配置しておられるのか、配置しておられない保健所があるとすればどの程度なのか、あるいは、おられても兼任、専任の体制があると思いますから、そこの実態はどうなっているのでしょうか、教えてください。
○今田説明員 精神保健福祉相談員につきましては、基本的に、各保健所にこれを置いてほしいということでお願いをしているわけでありますが、現在、千三百二十四人が配置されているという形になっております。この千三百二十四人につきましては、保健所ごとに精神保健福祉相談員として一定の任命行為等を行って配置しているという考え方に立っての数字でございます。そういった意味では、そういう任命行為を行った形で配置していない保健所については、大体四〇%がそういう状況にございます。
 ただ、その四〇%のすべてが一切、精神保健福祉相談の行為をしていないのかというとそうではございませんで、そういった任命行為は行われていないけれども、精神保健福祉相談員としての研修を受けた保健婦さんであるとかあるいはケースワーカーの方々などが配置されて事実上の相談業務が行われているという意味においては、一定の役割を演じていただいているというふうに私どもは理解をいたしております。
 なお、専任につきましては二五・九%、兼任については七四・一%という状況になっております。
○山本(孝)委員 精神保健相談員という肩書は持っておられないけれどもほかの方たちが役割を分担しておられるという御答弁ですけれども、外から訪問する人間にとってみれば、そこに精神保健相談員という専門の方がおられるという方が安心できるわけです。
 相談員がおられない保健所が四〇%ある。おられても専任の方は二五・九%しかいない。ほとんどの方が兼任で活動しておられる。そうしますと、必置したらどうかというふうに申し上げたら、地方分権の流れの中でそのようなことはいかがかと思うというのが御答弁でしたけれども、片一方で保健所が大きな機能を果たしていくように期待をしていると言いつつ、実態としてはそこに至るまでにも大分幅がある。
 しかも、今後ともにどういう形でそこをもっと機能を充実させていくかということについても、各都道府県にお任せしているのですという形が続きますと、先ほどの精神保健福祉センターもそうですけれども、保健所における精神保健相談員の活動を見ましても、患者ないし患者を抱えた家族からすれば、病院に行くか、精神保健福祉センターに行くか、あるいは家族会に行くか、あるいは保健所に行くかというときに、割と保健所での御相談は行きやすい部分がある。
 今後ともに、相談機能は地方分権の流れの中で児童相談等々も含めて一体化していこうという厚生省のお考えがあるわけですけれども、相談機能を充実させていく上でも、何でも地方でやりなさいという形では、私は、厚生省は何か責任を棚上げしているような感じがしてしまう。やはり、お金もつけます、少なくともこういう内容、基準でやってくださいというガイドラインをお示しをしていくという形で各都道府県を指導していかれるお仕事はどこまでも残るはずです。
 そういう意味で、財政的な措置も含めて、今後政省令をつくっていかれる中で、精神障害者ないしその家族の皆さんへの支援体制をしっかりつくっていくというお考えをぜひ大臣からお聞かせいただきたいと思います。
○宮下国務大臣 るる、この組織の運用のあり方について御質問をいただきました。
 私もお伺いしておりまして、必ずしも強制力あるいは罰則の裏づけがないとかいろいろの点がございまして、その実効性について、多少疑問なしとしない点もあるのかなという感想を持たせていただきました。
 精神保健福祉法等を通ずる行政は国の精神障害者に対する義務でもございますから、これが地方分権ということで、地方で勝手にやっていいというものではございません。基本は、国があくまで精神保健福祉法の精神にのっとって行われるということでなければならないと存じますから、そうした方向で制度の見直しその他もやっていく考えでありますし、また、必要な予算措置も、今現在も講ぜられておりますが、精神保健福祉法等の実効性を上げるための裏づけとして考えていくということは、地方分権の精神と相背馳するものではないというように思っております。
○山本(孝)委員 よろしくお取り組みをいただきたいと思います。
 近藤老人保健福祉局長、来ていただいておりますので、精神病院病床と介護保険との関係についてどのような整理をしておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
○近藤(純)政府委員 介護保険では施設サービスがあるわけでございますけれども、その施設サービスの一つといたしまして、介護療養型医療施設というものがあるわけでございます。これは、一般病床でございます療養型病床群のほかに、いわゆる老人病院の中で老人性痴呆疾患療養病棟というのがございまして、これにつきまして一定の条件といいますか、看護体制、介護体制、それから施設の基準、こういったものを設けまして、精神病床の中でも一定の条件が合うものにつきましては介護保険の方に取り込む、こういう形で整理をいたしてございます。
○山本(孝)委員 精神病床が今三十六万床程度あって、診療報酬上の痴呆性疾患療養病棟に該当するのは五千三百六十床という数字をいただきました。
 そうすると、これは平成十年七月一日時点の数字ですから変わっていくのかもしれませんが、この病床については介護保険の適用対象にしてくれということになれば、それはできるのだと。その折に、介護保険の施設での適用については病棟単位で考えるんだ、あるいは病棟の中でも病室をしっかり区切って介護保険の対象とするんだという御答弁が介護保険の審議の中であったと思いますけれども、それは精神病院についても同じお考えでおられるのかということ。
 それから、療養型病床群の数の多さが介護保険の保険料に反映をしてきているので、療養型病床群の二次医療圏ごとの数については、あるいは介護保険の事業計画上の数については一定の制限をするんだ、すべてを介護保険の対象に認めるわけではないという御答弁だったと思います。
 そうしますと、その折に、既に一般病院の療養型病床群については介護保険適用だということでどんどん転換が進んでいるわけですけれども、精神病院の痴呆性の疾患療養病棟が、実際、介護保険の適用になっていくというのでしょうか。今から数がさらにふえていく、その中で上限の枠がある、あるいは病院の側の皆さんのお気持ちもあるんでしょう。そういった動向等、今後の見通しはどんなふうに受けとめておられるんでしょうか。
○近藤(純)政府委員 老人性痴呆疾患療養病棟につきましては、恐らく病棟単位で移ってこられるんじゃないかと思っております。
 どの程度受け入れるかというのは地方によって当然異なると思いますけれども、一応十九万床という形で私ども一応想定をいたしておりますけれども、この中に一応この五千数百床につきましては入っているというふうに理解をしているわけでございます。基本的には、手を挙げれば受けられるであろうというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、地方の実情によって若干のあれはあろうかと思っております。
 基本的には、そういうふうな想定のもとで老人性痴呆疾患病棟については考えているわけでございます。
○山本(孝)委員 介護保険のときに、一般病院の療養型病床群については念頭に置いて議論をしていたと思うんですけれども、精神病院の療養施設については少し議論から外れていたと思うんですね。その後の施行令等をお考えになる中で入ってきたというか、はっきり見えてきた部分だと思いますので、きょうは余り時間がありませんので、実際のところの介護施設としての施設基準等々の問題を含めて、またお聞かせをいただきたいというふうに思います。
 時間がありませんので、最後にもう一問だけ大臣にぜひ御答弁をお願いしたいと思います。
 障害者基本法においては、すべての障害者を対象としております。今後、障害者総合福祉法というようなものが制定されていくときには、ノーマライゼーションの理念からもすべての障害者を対象とした法律をつくるべきだ、福祉法をつくるべきだと私は思っております。保健、医療、福祉を一体的に提供するということが必要なのは、精神障害者にとどまらずに、すべての障害者に同じことが言えると思いますので、今後、障害者基本法を踏まえての福祉法全体の見直し、あるいは新しい障害者福祉法がつくられる折には、精神障害者もしっかり対象として組み込んだ、三つの障害者を組み込んだ福祉法をぜひつくっていただきたいという考えを持っておりますけれども、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○宮下国務大臣 障害者の福祉政策につきましては、身体障害者あるいは知的障害者精神障害者という三つの障害種別の体系で施策が講ぜられておりますけれども、例えば生活支援施設一つとりましても、末端に行きますと、非常に総合化されていいのではないかと感ぜられるような点がございます。したがって、今御指摘のように、これは検討して、相互の連関をよく見ながら障害者福祉の充実を図ることが必要だと思います。
 ただ、今まで議論を聞いておりますと、検討すべき課題もありますし、総合法制の長所もあり、また短所もあるという点もございますので、当面は障害種別間で施策やサービスを充実して現行法体系のもとでこの充実を図っていくということで、中期的な課題として検討して、ひとつ体系化を検討してまいりたいというように考えております。
○山本(孝)委員 厚生省としては、平成八年に障害保健福祉部をつくられまして、知的、身体、精神障害者、三つの障害者の総合的な施策の推進をしてこられている。体制はそういう体制をつくられているわけですね。障害者プランをつくる折にも、各市町村、なかなか精神障害者を含めた障害者プランをおつくりになっていないところもありますけれども、しかしながら、基本的には、障害者プランをつくる折には精神も含めたプランをつくれということで指導してこられておる。
 したがって、今大臣もおっしゃいましたように、例えば地域生活支援センターのようなところ、あるいはいろいろな施設の中では、身体の人も知的の人も精神の人も一緒になって活動しておられる、それがお互いに非常にいい効果をもたらしているというお話も聞いておりますので、せっかく理念を持って体制もつくり、そういう施策も進めてきておられるわけですから、最後のところで、この障害者福祉法をつくる折に、精神障害者だけ違うんだ、医療が必要だから違うんだという形で枠の外に押し出されないようにぜひしていただきたいということを最後にお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。
○木村委員長 青山二三さん。
○青山(二)委員 公明党改革クラブの青山二三でございます。
 法案の質疑に入ります前に建設省さんにお聞きしたいことがございますので、よろしくお願いいたします。
 急速に高齢化が進展しております今日、年をとっても、また障害を持つ身となっても、生き生きと暮らしていける、バリアフリー化された社会の実現が求められております。近年は、国や地方自治体の施策も進んできておりまして、いろいろと頑張ってはいただいておりますけれども、欧米に比べますと、高齢者や障害者への対応はまだまだ立ちおくれている感が否めません。
 高齢者が住みなれた家で自立して暮らすには、危険な障害を取り除くバリアフリー化した建物が必要でございまして、これを早急に進めていく必要があると思います。既に、公営や公団住宅におきましては高齢化対策を進めていると伺っておりますが、それは公営住宅の中でも新築のものに限られているようでございます。
 そこで、問題となりますのが、既存の公営住宅の場合でございます。地方でも改築に至らない公営住宅がまだまだたくさんあるわけでございますが、高齢者や障害者にも少しでも使いやすいようにということで、一階の部分に住めるようにはやっていただいているわけでございます。しかしながら、既存の住宅には、一階部分であってもスロープがありませんので、ほんの数段しかない階段でありましても上りおりが大変だ、高齢者や障害者にとっては大変困っているという相談が今多く寄せられております。
 既存の公営住宅でまだ建てかえがされていないものにつきましては、応急処置といたしまして、せめて一階部分をスロープにすることはできないか、スロープにしてほしいというような要望がございますが、こうした要望に対しまして国としてはどのように対応しているのか、お伺いしたいのでございます。
○那珂政府委員 お答えいたします。
 ただいま先生御指摘の公営住宅バリアフリー化でございますが、先生も御指摘いただきましたように、新規のものについては、すべてのものについて一定の基準に基づいてバリアフリー化をした上で順次供給しているところでございますが、既設の公営住宅につきましても、エレベーターの設置も含めてバリアフリー化のための改善を積極的に推進しているところでございます。
 御指摘の玄関前の階段のスロープ化、その改善でございますけれども、実際問題、空間的な制約がある場合が多くて、通常の改善によってはなかなか困難な事例が多いと思います。そのような場合につきましては、スロープのある住戸への住みかえ、あるいは一階のバルコニーといいますか、ベランダ側にリフトを設けるとか、あるいはそちら側にスロープを設置するとか、そちら側から出入りをしていただくというような改善などが可能でございます。
 いずれにいたしましても、住戸改善でございますので、個別の事情を踏まえた的確な対応を工夫するよう、事業主体に積極的に指導してまいりたいと思います。
    〔委員長退席、佐藤(静)委員長代理着席〕
○青山(二)委員 それでは、そんなふうによろしくお願いをいたします。
 それでは、法案の質問に入らせていただきたいと思います。
 今回の法律改正の趣旨は社会復帰ということに重点が置かれていると思いますので、まずこの点から順次伺ってまいりたいと思います。
 昭和二十五年に精神障害者に対する適切な医療及び保護の提供とその発生予防を目的とする精神保健法が制定されまして以来、精神障害者に関する施策は、社会復帰の促進という観点から、数次にわたり法改正などの取り組みがなされてまいりました。
 精神保健法で位置づけられている施設に限って、障害者プランにおける進捗状況を見てみますと、平成九年度末現在で、生活訓練施設、いわゆる援護寮でございますけれども、これが四九・七%、福祉ホームが三三%、通所授産施設が四二・三%、入所授産施設が一八%、福祉工場が一三・六%でございまして、この数字からも、平成十四年度に目標数を達成することは困難であることが容易にわかります。このような状況から、同時に、社会復帰施策の進展のおくれも危惧されるところであります。
 精神障害者の社会復帰活動において極めて重要な役割を果たすことが期待されております社会復帰施設の整備がこのようにおくれているという現状についての御所見を伺いたいと思います。
○今田説明員 御指摘のように、現在の社会復帰施設に対する達成率が必ずしも十分でないという点でございますが、今回の障害者プランにつきましては、平成七年にこれをつくりまして十四年を目途に達成するという意味では、時期として今ちょうど真ん中に来ております。
 しかも、身体障害者あるいは知的障害者については、これまで長く整備した歴史の中から新たな目標値を設定して達成を目指しておりますけれども、いかんせん、精神障害者に対する社会復帰というのは、平成五年の改正あるいは七年の改正によってスタートを切ったという意味において、急速な整備を図らなければならない、それでもなおかつ御指摘のようなパーセンテージになっているということであります。
 いずれにしても、そのような背景の中で、非常に短い時間ではあるけれども、この達成はぜひやっていきたいというつもりで、今後も精いっぱいの努力をしていきたいと考えております。
○青山(二)委員 今、御決意をお聞きいたしましたけれども、この整備のおくれについて、その一因といたしましては、施設整備補助金あるいは運営補助金の補助水準が、身体障害者知的障害者に比べまして二分の一から三分の二と著しく低いということが指摘をされております。このために、施設の設置者には過重な負担がかかっておりますとともに、施設従事者には犠牲的な労働が強いられている、そういう実態があるとも聞いております。
 社会復帰施設を必要数確保するためには、運営を安定させるような財政的な支援が必要であると思っております。今回の法改正を機にいたしまして、国庫補助金の増額など、せめて同種の施設に対する補助額と同額に引き上げるべきであると思いますけれども、この点は大臣、いかがでしょうか。
○宮下国務大臣 おっしゃるとおり、施設の面それから運営費、職員配置その他の面を見ましても、いろいろの施設におきまして精神障害者の面が非常に劣後しておるというように見られます。
 いろいろ経過があったと存じますけれども、これからは、やはり精神障害者知的障害者身体障害者も同じようなレベルで物を考えていく必要があると存じますので、あとう限り努力をして、さっき一元化の話もございましたが、そうした方向で予算的な措置も努力してまいりたい、このように思います。
○青山(二)委員 大臣の御決意もお聞きいたしましたが、そんなふうによろしくお願いを申し上げます。
 また、精神障害者の社会復帰施設の建設の問題につきましても、地域住民の精神障害者に対する偏見には根深いものがございます。それが精神障害者の自立促進の大きな妨げにもなっているのでございます。実際に、社会復帰施設の建設に当たりまして、受け入れ地域の一部に反対運動が起こりまして建設を断念するケースが目立つという報道もございます。このような偏見や差別を撤廃する施策として、国民の啓発活動の促進をぜひ図るべきであると考えております。こうした問題につきましては厚生省はどのように対応しているのか、お伺いをいたします。
○今田説明員 精神障害者の社会復帰施設の整備が、反対運動によって、あるいは地域住民の理解が得られないことによって挫折してしまう場合があるという御指摘、このようなことが起こるというのは非常に残念なことだとまず思います。
 地域社会で精神障害者の社会復帰あるいは自立といったものを促進する上では、どうしても地域住民の皆さん方の理解と認識を深めるということが最大限必要なことだと思います。したがって、こういった視点に立って、障害者プランにおいても、社会的な誤解や偏見の是正を図るという方向性で努力するようにという御指摘もいただいております。
 ただ単に偏見というようなとらえ方もありましょうが、精神障害者の社会復帰施設で地域と本当にうまくやっていらっしゃる地域が現にあるわけですね。そういったところで本当に理解と協力を得ながら円滑に運営されている実績、その事例を通して、あるいはその事例を支えることそのものもいわば偏見の是正の一端だろうというふうに思っております。
 したがって、私ども、既存の成功例、うまくやっていらっしゃるところを大いに応援もしなければなりませんし、そういった事例をほかの地域でも紹介していただいて、そういった形でうまくやっているのだということを絵姿できちっと見ていただけるようなことも一つの手段になるのではないかと思います。
 いずれにしても、そういったものにつきましては、保健所あるいは精神保健福祉センターが一つの役割として偏見の除去等に対する努力もしていただくわけでありますので、そういったことも含めていろいろな情報を差し上げながら、あるいは各市町村が行っている障害者の明るいくらし促進事業の中でも同様の事業を行っておりますので、いろいろなデータを差し上げて、そのことを皆さんに理解いただけるというためにも、私どもも、そういった意味での努力は惜しまずにやらなければならないというふうに思っております。
○青山(二)委員 こうした問題はなかなか難しいと思いますけれども、これからも努力していっていただきたいと思います。
 それでは次に、長期入院患者の現状についてお伺いをしたいと思います。
 社会復帰施設の整備のおくれや地域における生活支援の整備のおくれなど、社会的な受け皿不足が長期入院が一向に減らない要因の一つとして挙げられております。長期入院者の病状はさまざまであると思いますけれども、入院者総数三十三万人の約半数以上は、病気はおさまっているけれども帰る場所がないために退院ができないといういわゆる社会的入院であるとも言われております。
 精神病院に入院している患者さんの平均在院日数を見てみますと、新しく入院される方は比較的短い期間で退院をされておりますけれども、五年以上という長期入院の場合は、昭和五十八年で四七・八%、平成八年で四六・五%と、ほぼ変わっておりません。こうした実態をどのように認識されているのでございますか。
○今田説明員 御指摘のように、特に長期の入院をされていらっしゃる患者さんの割合というのが余り変化をしていない。短期の方は比較的、どんどん入院期間が短くなっておりますけれども、長期の方々が、これだけ時代が推移したにもかかわらず、なぜそれだけいるのかという問題点でございますが、私たち、基本的には、現在の施設体系の中で病院から出ていくための社会復帰のための受け皿づくり、これがやはり必ずしも十分でなかったという点について意を配さなければならないというのが一つございます。
 もう一つは、例えば米国におきますナーシングホームのようなある種の生活的な部分も視野に入れた施設類型、あるいは医療と福祉がうまく相乗りしたいわば中間的な施設、あるいは急性期において非常に濃度の高い医療サービスを提供しなければならないそういった人たち、そういったものを精神病院、精神病床という一くくりの中でこれまで支えてきていただいているという点にやはり一つの解決策を見出さなければならないのではないかと思います。
 したがって、現在、今の精神病床における施設類型というものをもう少しきちっと見直して、適切なサービスと適切な人員、そういったものも含めて、ある程度その類型を見直した形で長期入院の問題を解決する必要がある。つまり、今二つ申し上げました、一つは受け皿の問題、一つは今の精神病院をどう考えていくかという問題、この二点について今後検討を進める必要があるというふうに認識をいたしております。
○青山(二)委員 それでは次に、精神障害者に関するホームヘルパーについてお伺いをしたいと思います。
 精神障害者の在宅施策の充実を図り、在宅で介護している精神障害者の家族の負担を軽減するためには、市町村を主体としたホームヘルプサービス事業が今回法定化されることになりまして、その効果によるサービスの普及が今大いに期待をされているところでございます。しかし、今後、介護保険が始まることによりましてヘルパーの数も相当数必要になってくることが考えられますけれども、この精神障害者に関するヘルパーの人数は必要なだけ確保されるのか、また、ホームヘルパーの養成はさまざまな養成研修機関で行われておりますけれども、ヘルパーの経験や熟練度は要求されないのか、また、精神障害者に関する研修等を特別に行う必要があるのではないか、いろいろ心配される点がございます。
 精神障害者に関するホームヘルパーの養成について、具体的な取り組み、どのように考えているのか、お伺いしたいと思います。
○今田説明員 新たに法定化をされますホームヘルプサービスについては、十四年度をもって施行するということになっております。したがって、この間、どのような形で今御指摘のような問題を解決していくかという御質問かと思います。
 まず一つは、ホームヘルパーの皆さん方がホームヘルプという事業の中で初めて精神障害の方々と接するわけでございます。しかも、一般の介護のように寝たきりの人に食事をつくってあげるとかおふろに入れてあげるということとは若干違った面があるという見方もあろうかと思います。つまり、どういうサービスをどのようにしていくかということも十分検証していかなきゃならないという観点に立ちまして、今年度から、精神障害者訪問介護試行的事業、いわゆるホームヘルパーの試行事業を行うことといたしております。
 その中で、今申し上げたホームヘルパーによります訪問のやり方あるいは回数の問題、幾つかのものを積み上げて、一定のルールといいますかありようというものを決めていく必要があろうかと思います。しかも、ホームヘルパーに対する講習というものもその中に盛り込んでございます。現在は九時間の講習を行うということでやっておりますが、これで十分かどうかは別といたしまして、そういったことを通しながら、どういうことが講習として適切な内容なのかということもその中から一つの答えを出していきたい。
 いずれにいたしましても、十四年の法施行までにはこういった具体的な検討を詰めておく必要があるということで、私どももそういった体制の整備に努力していきたいと考えております。
○青山(二)委員 介護保険が導入されるということで、ホームヘルパーさんの数も本当にたくさん必要になってくるわけでございますから、今からしっかりと体制をつくっていただきたいと思います。
 それでは次に、障害者プランの実現に向けてお話をお聞きしたいと思います。
 平成七年に障害者プランが出されまして、身体障害と知的障害に加えて、精神障害を対象とする福祉施策につきまして数値目標が設定され、ようやく三障害合わせた目標が定められました。この障害者プランは精神障害者社会復帰施設の整備計画が盛り込まれたものでございまして、平成八年度から十四年度までの七年間に、精神障害者について、約二千カ所、二万五千人の社会復帰施設等の整備目標が示されたわけでございまして、これは大変大きく期待をされております。
 しかし、社会復帰施設の整備は、地域の実情を考慮に入れても順調に進んでいるとは言いがたい厳しい状況がございます。今回の法整備に当たりましてその裏づけとなる重要な障害者プランでありますので、地域福祉の充実のためにも、今後の精神科医療において最も重要な課題の一つとして全力で取り組んでいただきたいと思っております。
 この夏の予算の概算要求に向けて準備もされていることと思いますけれども、福祉関係予算の十分な確保とともに、障害者プラン実現への御決意について、大臣にお伺いをしたいと思います。
    〔佐藤(静)委員長代理退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
○宮下国務大臣 障害者プランに基づきます社会復帰の施設対策でありますとか地域対策、社会復帰対策としては、生活訓練施設とか授産施設あるいは福祉ホーム、福祉工場等がございますが、今回生活支援センターも加えました。そして、地域対策としては、ホームヘルプサービスあるいはショートステイ等を従来ありますグループホームに加えまして整備することといたしております。
 こういったことで着々体制はできておりますが、この箇所数の増加等につきましては、先ほどもお話がございましたように、十四年に完全に完成できるかどうか、多少進度等問題がございますから、私どもとしては、この障害者の自立等支援をするために、あとう限り予算要求もしてまいり、実効性のある体制をつくっていきたいと思っています。
○青山(二)委員 大臣もいろいろと福祉関係では御苦労があると思いますけれども、しっかりこの点もお願いをいたします。
 それでは次に、改正案の趣旨の一つとなっております精神障害者の人権の配慮と適正な医療の促進についてお伺いをしてまいりたいと思います。
 現在、精神病院の任意入院患者は全国に二十三万人おりますけれども、その半数近くが法的手続なしに閉鎖病棟に入れられておりまして、治療上の必要性がない場合も含めて閉鎖処遇が行われているという実態があると伺っております。人権確保の観点からも、こうした事態は、自分の意思で入っているはずの任意入院患者の人権に配慮しているとはとても思えません。
 公衆衛生審議会の意見書におきましても、精神病院の任意入院患者の約半数近くが閉鎖処遇の実情にあるが、入院制度の趣旨を踏まえ、任意入院患者は開放処遇とすること、しかし、任意入院患者の病状が悪化したときなど、その治療上やむを得ない場合に限り、閉鎖処遇を行えることにすることとありますように、みずからの意思で入院した任意入院患者が意に反して拘束を受けることのないように、原則的には開放処遇を受けられるよう明確化する必要があるのではないでしょうか。任意入院患者の開放処遇について、明確な基準のもとに推進していくべきであると私は考えておりますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。
 さらに、精神病院における閉鎖処遇を第三十七条第一項に基づく処遇とすることが提言されておりますけれども、この閉鎖処遇の定義と内容についてはどのような方向で検討をしていくお考えなのか、伺いたいと思います。
○今田説明員 大臣のお答えの前に若干御説明申し上げますが、御指摘のように、任意入院の患者さんが基本的に開放処遇を受けるということはやはり大事なことだということを基本に思っております。それと同時に、開放処遇とは一体どういうことをもって言うのかということも実は問われることになりまして、開放処遇の基準については、少なくともこの施行に当たりますまでにはきちっとした定義を明確なものとして検討した結果をお示しする必要があろうかというふうに思います。
 いずれにしても、今回の改正が、少なくとも任意入院をしていらっしゃる方は開放の中で、しかも、任意入院であってもやむを得ず拘束することがある場合には、それを担保できる、例えばカルテの記載等も含めたある担保する仕組みあるいは指定医のかかわり、いろいろなものをそこに付与することによって、むやみに人権上の侵害が起こらないような、そういう配慮をしなければならないというふうには考えております。
○宮下国務大臣 任意入院患者につきましては原則として開放処遇を行うべきであるというのは、御指摘のとおり当然であろうかと存じます。
 しかし、今委員の御指摘のように、衛生審議会における審議の結論も示されまして、例外的に閉鎖処遇を行うこともあり得る旨の記述がございますが、私どもとしては、これらの閉鎖処遇を行うに際しての基準につきましては、隔離などと同様な行動制限の一種として位置づけまして、一定の要件、手続を明確化することによって不当な処遇がなされないようにして、人権に配慮してまいりたいと思います。
○青山(二)委員 人権の尊重ということで、これは大切な問題だと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 今回、患者の人権尊重の観点から問題の多かった仮入院制度が廃止されたということは当然でございますけれども、医療保護入院につきましては、本人の同意に基づかない強制入院の一種であることを考えますと、その運用は限定的になされるべきであると考えております。
 改正案には、任意入院が行われる状態にないと判定された者と規定いたしておりまして、本人の判断能力が不十分である場合に限ることとされ、医療保護入院の要件が明確になったとしておりますけれども、この規定でその要件が明確になったと言えるのでしょうか。医療保護入院の対象者について入院の客観的な判断基準をどのように考えるのか、お伺いしたいわけでございます。また、それを具体的に示すべきであるとも考えておりますが、いかがでしょうか。
○今田説明員 先ほどの御質問にもございましたけれども、この医療保護入院の要件につきまして、従来は医療及び保護のために入院が必要な者、このように規定をされておりまして、概念上は同意能力がある精神障害者も含み得る、そのような規定になっておりました。
 今回は、この医療保護入院が同意に基づかない強制入院の一形態だということから考えまして、任意入院を行う状態にないと指定医が判定したということを新たな要件に加えることによって、同意能力の有無によって任意入院との間の区別が明らかになるということから、結果として不適切な医療保護入院が行われなくなるということを期待しているわけであります。
 この判断につきましては、症状等もございまして、一律な基準が適切につくれるというたぐいのものかということになりますとなかなか難しいとは思いますが、先ほども御答弁申し上げましたけれども、それをどのように運用すべきなのかという一つの運用の仕組みみたいなものについては、やはり検討しなければならないというふうに思っております。
 そのような形で、いずれにしてもこの医療保護入院が適切に運営されますように努力はしていきたいと考えております。
○青山(二)委員 それでは、先ほど大和川病院の事例が質問の中で出ておりましたけれども、昨年は新潟県の国立療養所の犀潟病院の精神病棟に入院していた患者が拘束中に窒息死したこともありまして、不当な患者の処遇の実態が明らかになり、精神医療のあり方に大きな波紋を呼んでいるわけでございます。犀潟病院は、入院患者の社会復帰に力を入れまして、患者の家族との勉強会を開くなど良心的な病院として知られていただけに、このような問題があったことは、精神医療のあり方に重要な影響を与えるものとして大いに反省しなければならない点ではなかろうかと思います。
 このような密室性が高い精神病院のあり方に対しまして情報公開を求める声が強まっているのも、やはり人権侵害の発生が後を絶たない現状があるからにほかなりません。これにつきましては、公衆衛生審議会の意見書でも早急に検討すべきであると指摘をされております。医療法上の情報公開を含めて検討すべきことは当然ですけれども、ここでは、精神医療に関する情報公開についてどうあるべきかにつきまして、大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
○宮下国務大臣 今御指摘のように、公衆衛生審議会の意見具申でも情報公開の推進について御意見をいただいておりますが、この公開の問題は医療提供体制全体の問題でもございます。私どもとしては、今医療法の見直し、医療提供体制の見直しの中で、カルテ開示とかインフォームド・コンセントとか、いろいろな情報開示の問題につきまして検討を進めておりますので、その一環として、またあるいは精神医療の場合の特殊性をも加味しながら、そうした情報公開の方途について結論を得たいと思っております。
○青山(二)委員 それでは、質のよい精神医療におきましては、やはり精神病院の経営の安定も必要であると考えております。人権侵害事件が後を絶たない背景には、精神病院の入院医療費が一般病院の半分以下という事実に象徴される安上がりの医療政策もあるとの指摘もございます。
 これは、精神病院では医師や看護婦の定数が一般病院よりも少なくてもよいとする医療法上の特例がありまして、看護基準に応じて支払われる今の診療報酬の仕組みでは、こうした少ない職員配置に見合うように、精神科医療に対する健康保険の診療報酬は低く設定をされております。
 現在の診療報酬体系では、精神医療の特殊性や必要とするマンパワーの時間や期間などが十分に考慮されてはおりません。たとえスタッフがグループ活動やあるいは相談事業などを行った場合も、医療点数の対象になっていないものが多く見られております。このような診療報酬に結びつかない治療時間や、時間が長くなる思春期患者やパーソナリティー障害の患者さんの治療を行えば行うほど赤字になるということもございまして、精神科専門技術料の評価も低いということが指摘されているわけでございます。
 質のよい医療を提供するためには、精神科医療の診療報酬体系を適正なものに見直すとともに、医師や看護婦等の拡充に向けて早急に改善すべきであると思いますけれども、今後の対応について伺います。
○宮下国務大臣 精神科特例の話も今までの議論で出ております。医師あるいは看護婦の配置基準の問題、それから技術料の評価の問題等、一般的に医療問題として今検討中でございまして、薬価差益に基づく社会保険医療でなくて、技術尊重の医療体系にしたいというのが私どもの基本的な考え方でございまして、これは中医協で議論されてまいりますが、今御指摘のような精神医療に携わる先生方の技術評価あるいは医療関係者の評価というものも適切にその中で位置づけられるように、今後の検討課題の中で結論を出していきたい、このように思っております。
○青山(二)委員 それでは、最後の質問になりますけれども、精神医療審査会について伺いたいと思います。
 患者の人権擁護機関として都道府県には精神医療審査会が設置をされておりまして、患者はここに処遇改善や退院などを訴えることができることになっております。
 しかし、現状は、措置入院の措置を行う都道府県等の監督部局がその事務を担っております。審査会の事務局が病院と関係が深い自治体の担当部局にあるために、患者が審査会に電話をしましても、事務局からすぐに病院にその事実が知らされまして問題なしと判断されていたというなれ合いがあったことや、人権擁護機関としての機能を十分果たしていなかったことが新聞報道などで指摘をされております。これも先ほどいろいろと質疑が行われておりましたけれども、こういう実態がございます。
 さらに、国連で採択されました精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスの改善のための諸原則におきましても、退院請求や不服審査に関する審査は独立した公正な機関で行うことが求められておりまして、精神障害者の人権にかかわる審査を行う審査会の機能強化のためには審査会の独立性を高めることが重要であると考えます。
 今回、審査会委員の上限の撤廃とその権限の強化によって審査会の責任はさらに重くなっているわけですけれども、その委員の構成についても、PSW、いわゆる精神保健福祉士などの専門職を加えるなど、より充実したものにしていくべきであると考えております。そして、患者さんの人権を保障するためには、独立した第三者機関として審査会は機能していくべきであると考えております。今後の審査会のあり方について大臣の御見解を伺いたいと思います。
○宮下国務大臣 今回お願いしております改正におきまして、精神医療審査会の独立性を高めるというのは人権擁護の点から主要なポイントと考えております。
 そして、その独立性を確保するために、委員の数を、十五人以内というのを、これを五人単位で、この制限を取っ払うことによって実情に合わせたい。それからまた、審査会の独自の調査権限として、従来の意見聴取権限に加えまして、患者本人の同意を得た上での診察権限、診療録等の帳簿書類の提出命令及び関係者に出頭を命じて審問する権限を付与するというようなことどもも行うようにいたしております。また、今質問にもございましたように、審査会の事務を、専門性を有します、県の担当課から独立した職務執行が期待できる精神保健福祉センターにおいて実施すること、このようないろいろの諸措置を講じまして精神医療衛生の独立性が確保されまして、入院中の精神障害者の適正な処遇の確保と人権の擁護が図られるものと考えております。
○青山(二)委員 時間が参りましたので、この審査会に関しましてはぜひとも第三者機関をきちっと設置していただきたい、このことを要望いたしまして質問を終わらせていただきます。大変ありがとうございました。
【次回へつづく】