心神喪失者等医療観察法の条文・審議(その21)

前回(id:kokekokko:20060113)のつづき。
連合審査会第3号での審議です。与党・野党の両側からの議員の質疑に対して、法務大臣などが答弁するという形で進行しました。
政府側答弁は、従来の政府の主張の繰り返しとなっています。
【西川委員質疑】

第154回衆議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第3号(平成14年7月12日)
○園田委員長 これより法務委員会厚生労働委員会連合審査会を開会いたします。
 内閣提出、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、平岡秀夫君外五名提出、裁判所法の一部を改正する法律案及び検察庁法の一部を改正する法律案並びに水島広子君外五名提出、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川京子君。
○西川(京)委員 おはようございます。自由民主党の西川でございます。本日はよろしくお願い申し上げます。
 昨日、法務委員長、厚生労働委員長うちそろいまして、私たち総勢何名でしたか、松沢病院そして成増病院の方の視察をしてまいりました。大変暑い中でしたけれども、現場の医師たちの率直な御意見もお伺いいたしまして、大変考えるところが多々ございました。そのことも踏まえまして、きょう質問させていただきたいと思います。
 昨晩遅くテレビのニュースを見ておりましたら、先日の池田小事件の宅間被告の法廷でのやりとりの報道がなされておりまして、改めて当時の事件を思い出しました。ちょうど今この委員会の審議の中で、報道のあり方、あるいはその本人の法廷における態度その他を見ながら、私も、やりきれない思い、そして今の日本の精神風土というのでしょうか、それの抱えている、ある意味では大変暗い部分を象徴するような事件だったという思いがありまして、改めて今回のこの法案提出の意味を考えさせられました。
 もう一度、私は、今回この法案が出された意味、背景、それをきちんとやはり押さえておく必要があると思います。やはり、今の措置入院制度、現行の制度の中で、精神医療現場だけに余りに過重な負担をかけていたのではないか、あるいは退院した後の地域社会の受け入れ体制、そういうものがやはり不備ではなかったのか、そういうさまざまな思い、そしてまたもう一つには犯罪被害者の家族の思い、そういう社会的な、国民の今の触法精神障害者の事件に対する素朴な疑問、そういうものに総合的にこたえて、やはりここで新しい法案提出が必要ではないかという中での今回の法案の提出だったと思うんですが、そこの点につきまして、ちょっと質問の順序が逆になるかもしれませんが、法務大臣に、今回の法案の提出をしたねらい、目的をもう一度ここで御答弁いただければありがたいと思います。よろしくお願いします。
○森山国務大臣 心神喪失等の状況で重大な他害行為が行われるという事案は、被害者に深刻な被害が生ずるだけではなくて、精神障害を有する者がその病状のために加害者となるという点でも極めて不幸な事態であるというふうに思います。このような者につきましては、必要な医療を確保いたしまして、不幸な事態が繰り返されないようにすることによりその社会復帰を図るということが肝要であるというふうに考えておりまして、このような者の処遇については、精神医療界を含め国民各層から、適切な施策が必要であるとの意見がございましたところでございます。
 そこで、法務省におきましては、厚生労働省と共同で、このような者に対する適切な処遇を確保するために、その処遇を決定するための手続を定めるなど、新たな処遇制度を整備することにいたしたものでございます。
○西川(京)委員 ありがとうございます。
 実は、この法案の提出に当たりまして、私たちもここ何十時間とさまざまな審議をして時間を費やしてきたわけでございます。そして、連合審査、きょうのこの場もそうでございますけれども、大勢の参考人の先生方にも来ていただいて多くの意見をちょうだいいたしました。
 その中で、この法案審議の、その入り口の前段階といたしまして、池原参考人から、この法案は、犯罪事実あるいは責任能力、再犯の可能性、いずれの認定についても憲法上の適正な手続を経ていない、ですからこの法案自体を提出することが憲法違反に当たるというような、そういう批判の御意見もいただきました。
 私は、きのう実際の病院を視察してまいりまして、現場の先生方から、この法案はぜひ通してほしい、そういう意見を両方の病院長さんからいただきました。そういう中で、ぜひ私も通すべきと思っておりますが、憲法違反ではないかというような意見も参考人からいただいたので、この批判に対して法務当局の御所見をぜひ聞かせていただきたいと思います。
○古田政府参考人 まず大前提として御理解いただきたいことは、この法律案による処遇制度は、刑罰というような制裁を加える、そういうものではないという点でございます。
 先ほど大臣からも申し上げましたとおり、この法律案は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った方につきまして、不起訴処分となり、あるいは無罪などの裁判が確定した場合に、治療が必要なときに継続的かつ適切な医療を行い、またそのような医療を確保するために必要な観察等を行う、そのことによりまして社会復帰を促進するという制度でございます。
 この制度によります処遇は、その対象となる人が一定の犯罪行為に当たる行為をしたということで直ちに行われるものではございませんで、広く医療が必要な人たちの中から、この制度による医療を行うという範囲を限定するために、ある一定の行為を行ったということを前提としているものでございます。
 したがいまして、裁判所といたしましては、そういう審判の対象としてこの処遇をする、そういう範囲に含まれる人かどうかということを考えなければいけない。そこで、特に不起訴になった場合につきまして、検察官の事実認定に本人がそういう事実はないというようなことを言うなど疑問が生ずる場合に、その対象者であるということを確認するために事実の調べなどを行う、そういう性質のものでございます。
 こういうふうな制度の目的あるいは対象行為を行ったことを要件としている趣旨、こういうことから申し上げまして、対象行為を行ったかどうかという確認手続を含めまして、この制度によります処遇の要否、内容の決定の手続は、刑を言い渡すための刑事訴訟手続と同じでなければならないという理由は全くないわけでございまして、裁判所が適切な処遇を速やかに決定し、医療が必要と判断される人たちに対してはできる限り早くこの制度による医療を行うということが特に重要である、こういうことでございますので、人に非難を加えるという刑事訴訟手続よりは、柔軟で、かつさまざまな資料に基づいた適切な処遇が決定される、そういうふうな審判手続ということで構成することが一番適当であるというふうに考えたものでございます。
 少し長くなりますけれども、そのために……(西川(京)委員「済みません、時間が余りありませんので、短くお願いします」と呼ぶ)はい、済みません。
 この制度におきましては、ただいま申し上げたような観点からつくられたものでして、それが憲法三十一条以下の趣旨に反するものとは到底考えられないものでございます。
 実際にも、権利保障のために、意見の陳述権だけではなくて、資料の提出権その他さまざまな権利を実際に認めているわけでございまして、裁判所に対していろいろな事実の取り調べの申し立てもできる、こういうふうな仕組みで、現在の法律で申し上げますと、少年法の手続とかなり類似しているところがございますが、少年法の手続が憲法に違反するというふうなことは考えられておりませんで、そういう意味で、ただいま御指摘のあった批判というのは当たらないと考えております。
○西川(京)委員 大変細かくお答えいただきまして、ありがとうございます。
 あくまでも、そういう司法手続に沿わない、心神喪失でそれを問うのは無理だという状況の中での判断だということ、あくまでも患者自身のためを思ってする、その本来の趣旨が違うということで、私もこの批判は当たらないと思いました。
 そしてもう一つ、ちょっと細かいことで気になったことなんですが、刑事責任能力を問う場合のまず最初の関門として簡易鑑定というものがございますけれども、この簡易鑑定の各地検における精神障害者と認定される人の数というのが、大変各地検によってばらつきがあります。そのことが大変私気になりましたけれども、これはやはり、全国的に一つの、本当にマニュアルどおりにそれと照らし合わせてというのはおかしいと思いますが、ある程度の統一の基準というのは必要ではないのかなという思いがありますが、いかがでしょうか。簡単にお願いします。
○古田政府参考人 いわゆる簡易鑑定の問題につきましては、事件全体の割合で見ますと、精神障害という診断がされた方たちで不起訴になっている人の割合というのは、おおむね〇・二%台を中心といたしまして、そう大きなばらつきはないわけでございますので、検察庁全体の起訴、不起訴ということで申し上げれば、そう大きなばらつきはないものと考えられます。
 ただ、簡易鑑定の中で、診断されている中で精神障害と判断された人たちの数、あるいは起訴、不起訴の割合というのが違っている部分も実際問題としてあるわけでございますが、一つは、絶対数が必ずしも多くないので、個別の事情によって非常に影響されている面もあるのではないか。あるいは、簡単に申し上げますと、例えば診断のつけ方で、非常に重篤な場合にだけ診断をつけるというふうなお考えの先生もいらっしゃる可能性もある。そういうふうないろいろなことが影響しているものと思います。
 ただ、いずれにいたしましても、検察庁全体の処理として見た場合にはそれほど大きな差はないということでございまして、そういう意味では、検察庁の判断といたしましては、おおむね、ある基準と言うと必ずしも適当ではございませんけれども、犯罪の内容や精神科のお医者さんの意見を考慮して一定の割合に落ちついているものと考えております。
○西川(京)委員 個々のお医者様のレベルによっての差もかなりあるでしょうし、ある意味で、やはり何らかのそういう一つの統一の基準の策定というのは私は必要ではないのかなという思いを持ちました。
 そして、それとともに、もうこれは質問は申し上げませんが、鑑定人のお医者様の扱う数、これが物すごく各県で差がありまして、大阪、神戸に至っては、お一人の方が年間百件以上の件数を扱うということで、二日に一度、ある一人の人に対する審理時間が三十分なんてケースもあるらしいのですが、こういうことに関してはぜひ一度御一考願いたいというお願い、要望にさせていただきますが、よろしくお願い申し上げます。
 次の質問に移りたいと思いますが、今回のこの法案の三つの大きな柱がありますが、その柱の中の大事な一つである、入院から地域に患者さんが退院されて出ていく、ノーマライゼーションの実行、これが今回のこの法案の一番の課題だと思います。その中で、保護観察所がある程度キーステーションになると思うんですが、その地域に患者さんが帰られて、その後のフォローというところで精神保健観察官、これを一つ想定するわけですが、大体、この精神保健観察官という立場がどういうもので、どの程度の人数の配置を予定していらっしゃるのか、できましたらお答えをお願いしたいと思います。
○横田政府参考人 お答えいたします。
 政府案におきましては、保護観察所に新たに精神保健観察官を置いて、その者に精神保健観察等を行わせるということでございます。この精神保健観察官につきましては、精神保健福祉士などの有資格者、この制度で必要とされる精神保健あるいは精神障害者福祉等について専門的な知識や経験を有する者、そういった者を精神保健観察官として配置したいと考えております。
 御存じのように、現在の法制下におきましては、保護観察所は犯罪者処遇に携わるそういう機関でございます。したがいまして、精神保健あるいは精神障害者福祉等、この新しい制度が要求するようなそういう専門的な知識あるいは経験を有する職員というものはほとんどいないのが実情でございます。したがいまして、そういう状況でございますので、現在の行財政改革のもとで、定員を取り巻く情勢というのは大変厳しいわけでございますけれども、本制度を担う精神保健観察官の必要な人員の確保、これは不可欠と考えておりますので、それの確保にできるだけ努力したいというふうに考えております。
○西川(京)委員 御説明は大変よくわかるんですが、具体的に、実は結局どの程度の数を想定していらっしゃるのか。例えば、刑事事件の方の保護司などという地域のいろいろな足がたくさんあるわけですけれども、この精神保健観察官という立場はそういうものを実際には持っていないという思いがありますが、本当に患者さんがちゃんと通院しているのか、薬を飲んでいるのか、家族と同じようにきめ細かくフォローしてあげるには、かなりのある程度の数が必要かと思いますが、そういう具体的な数はお願いできませんか。
○横田政府参考人 お答えいたします。
 御質問にございましたように、犯罪者処遇の保護観察におきましては、これは保護司さんとの共同ということで現在行われているわけで、保護司さんの力があずかって大きいわけでございます。しかしながら、保護観察官同様に保護司さんもまた、この新しい制度で要求されるような精神保健あるいは精神障害者福祉等についての専門的な知識あるいは経験を有する方はいらっしゃらないのが実情で、そもそも保護司制度もまた、新しい制度のようなそういう処遇にかかわるということを予定しているものではございません。したがいまして、この新しい制度におきましては、精神保健観察官が専ら、いわゆる地域内処遇といいますか、それを担当することになるわけです。
 どのくらいの人数が必要なのかというお尋ねでございますけれども、人数につきましては、考える上ではいろいろな要因が絡んで、なかなか確定的な数というのは出しにくいことは確かに正直なところあるんですけれども、この法案が成立した場合には地域内処遇を担当する、そういう事務を担当する当局といたしましての考え方を若干申し述べたいというふうに思っています。
 まず、このような人員を考える上で一番ポイントとなりますのは、やはり事件の数といいますか、対象者の数が基本になると思われるんですね。その対象者の数がどの程度まず見込まれるかということでございますけれども、これは、これまでの統計数字などから推定いたしますと、年間三百数十人から四百人程度が新たな制度の対象者になるだろうというふうに考えております。その中には、裁判所の入院命令によりまして最初から入院する者もございましょうし、また初めから通院をすることもありましょうし、もちろん中にはそういった処遇対象にならない者もあるということでありますけれども、いずれにしましても、通院命令を受けた者は社会内処遇の対象になりますし、それから、入院した者もいずれは通院という形になって、これまた精神保健観察の対象になるということであります。これが数年間にわたって続くというふうに考えられますので、そうしますと、数年のうちにはこの対象者数は千数百人に上るのではないかというふうに考えております。
 そうしますと、このような対象者の方々の処遇ということになりますと、一つには、先ほど申し上げましたように、これにつきましては保護司さんの手はかりないで精神保健観察官が直接に担当するということになることがございます。
 それからもう一つは、犯罪者処遇の場合ですと、この対象者に保護観察所に来てもらう、あるいは保護司さんのところに出向いてもらうということがございますけれども、恐らく本制度の対象となる方たちは、むしろ精神保健観察官が本人のいる場所に赴いて、そしていろいろ、様子を見守ったりあるいは必要な指導をしたりということが必要になろうと思いますし、また、時には複数の者が行く必要があろうということも考えられます。また、地域の問題、例えば離島に住んでいる、そこに通院機関があるというようなことも、地域的な問題もあろうかと思います。いろいろな状況がありますし、それから、本人の病状とか、それから、まだ観察が始まったばかりか、もう終わりかけのころかとかといったようなこともございますし、とにかくさまざまな要因があります。
 そういうようなことを種々あれこれ考えますと、これは現時点での一つの考え方として御了解いただきたいんですが、おおむね、一人の精神保健観察官当たりの担当できる件数といいますのは五名ないし十名ぐらいの幅ではないか。この幅が大きいと言われるかもしれませんが、これはやはりケース・バイ・ケース、個々の状況によるということだということで御理解いただきたい。もう一つは、精神保健観察官は関係機関との連携ということがございますが、これもまた、連携がどの程度いくかということも大きく影響しますので、そういったことも踏まえますと、幅がございますけれども、そのくらいとお考えいただければというふうに現時点では思っています。
 そのほかに、精神保健観察官は種々仕事がございますので、そのあたりも考えてまた検討してまいります。
○西川(京)委員 ありがとうございました。
 これから発足する制度でありますから、なかなか具体的な形というのが見えにくい中で、ある程度のきちんとした人数を確保して、ぜひ整備をお願いしたいと思います。
 そしてもう一つ、今回のこの法案の柱の一つであります、現場の、病院の中での整備ということですが、昨日、松沢病院に行ってまいりまして、現場のお医者様たちから聞いた御意見といたしまして、再犯のおそれがあるという判断、あるいは退院をさせるときの時期の判断、そういうものが医師だけに任されているのは大変負担が重い、そういう意味で、今回の法律をぜひ通していただいて、きちんと司法と一緒に両輪となってこの判断が協力関係で行われていくことを私たちは願っていますという御意見をいただきました。
 正直申し上げまして、施設が大変古くて、これはやはりそういう施設の整備、その他のことも大事なんですが、今回の、現実に患者さんたちを請け負う側の過重な負担、普通の精神障害者の方の治療が妨げられる、今後の治療というのは、どちらにとっても、触法精神障害者の治療自体も専門的なことができないし、大変混乱している、そういうお話がありました。この点に関して、厚生省の方の見解、いかがでしょうか。できましたら短くお願いいたします。
○坂口国務大臣 今御指摘をいただきましたとおり、現在、心神喪失等の状況で重大な他害行為を行った者に対します治療に関しましては、今お話ありましたように、一般の精神障害者と同様のスタッフですとか施設のもとで処遇するということは、専門的な治療が困難になるというようなこともございまして、危惧されているところでございます。
 そうした意味で、今回、特別な施設、専門的な施設をつくることにしたわけでありますけれども、その中で、具体的には医師及び臨床心理技術者による精神療法を頻繁に行う、あるいは作業療法などを通じました社会復帰に向けた訓練を綿密に行う、そして患者の行動観察を念入りに行い、いわゆるおそれの評価を行う、こうしたことを中心に精力的に行わなければならないというふうに考えております。
○西川(京)委員 ありがとうございました。
 私も、触法精神障害者の方の治療に関しても、やはりどうしても再犯を繰り返す例が多いということを現実に松沢病院の院長さんがおっしゃっておりましたけれども、そういう中で、その患者さん自身の将来のためにも、専門的な医療、触法精神障害者に対する、より濃い精神医療というのが個別に行われた方が効果的なような気がいたします。
 そういう中で、現実にこの法案が通って、では受け入れようとしたときに何が一番必要なのかということで、やはり何といっても今の設備ではまず無理だろうということ、そしてマンパワーが完璧に不足している、司法精神医学などを勉強した専門家が不足しているのではないか、そういう御意見もいただきました。正直、時間がありませんので、これはもう御答弁いただきませんけれども、ぜひこの充実を図っていただきたい、そういう思いでおります。
 実はきょう、民主党の方の案にも御質問をお願いしていたんですが、大変時間が迫ってまいりまして、もう一問にさせていただきますが、よろしくお願いいたします。
 今回の民主党さんの方の案では、問題点が、一つは、地域に帰った後のフォローというのがないように思うんですね。それと、司法判断を含めた、入退院、再犯のおそれというのを精神科医だけに、お医者様だけに任せているということで、何ら今のお医者様の過重な負担というのが変わっていないように思うんですが、そのあたりを含めての御答弁をお願いしたいと思います。
○水島議員 お答え申し上げます。
 まず最初の点の、地域に戻った後の体制が何もないのではないかということでございますけれども、こちらにつきましては私たちも非常に重点を置いているところでございまして、そもそも、現行の精神保健福祉法におきましても社会復帰の支援についてさまざまな規定がされているわけでございますけれども、これを十分に機能させ、ひいては精神障害者の方の社会復帰につなげるためには、精神保健福祉に関する業務を行う各職種間のチームワークが重要であると考えております。
 そこで、民主党案におきましては、退院後の継続的な治療の確保を含めた全体的な社会復帰支援体制の強化を図るため、医師、精神保健福祉士保健師、看護師、作業療法士その他精神障害者の保健及び福祉に関する業務を行う者の相互の連携が図られるよう、職種間の協力体制を整備すべき義務を都道府県等に努力義務として課しております。
 また、必要な退院後の治療継続、社会復帰の支援について実効性ある措置が講じられるよう、精神保健福祉改善十カ年戦略を策定し、市町村による地域生活支援体制を強化すること等を考えております。
 そもそも、退院後の治療の継続が必要なのは、何も重大な他害行為を行った人だけではございません。地域におけるサポート体制の整備というのは、私たちがかねてから訴えてきたことでございます。また、医療刑務所出所者を治療につなげていく体制も粗末なものでございます。
 これらの点は、今回の政府案には全く盛り込まれていない点でございまして、そのような問題意識をお持ちの西川委員には、ぜひ率先して民主党案実現のための御協力をいただきたいとお願い申し上げます。
 そして、もう一方の、医師のみの過重な負担というような点でございますけれども、そもそも私たちは、適正な鑑定に基づいていることを前提とした措置入院制度の改善を今回の法改正で提案しておりますので、重大な他害行為を行った者の処遇という点を切り取って論じている政府案とは立場を異にしているものでございますので、適切なお答えができるかどうかわかりませんけれども、どのような治療が適応となるかという判断は、これは医学的な判断でございまして、精神科の医師だけではなく各科の医師が日々行っている仕事でございます。その負担が重いといえば重いのかもしれませんが、やはり人の命や人生を扱う医師でございますので、責任の重い仕事をさせていただいているのだと思っております。
 ただ、現状を考えますと、例えば措置診察のときの情報の乏しさや慌ただしさ、また、精神科特例がとられてきたために人員配置が低いわけですので、患者さんに一人一人の医師が十分な時間をかけてリスクアセスメントができないという、これは病棟の人員配置の問題がございます。また、退院させても、地域に住居も仕事もないというようなのが現状でございますので、確かに、そんな状況の中で退院の決定を下すということは、かなり負担として重いものがございます。
 これらの点を改善したいということで、今回、私たちは、法改正事項、また精神保健福祉改善十カ年戦略を提案させていただいているところでございますので、こちらについてもぜひ応援していただければと思います。
○西川(京)委員 ありがとうございました。賛成するのはちょっとちゅうちょいたしますけれども、御趣旨はよく参考にさせていただきたいと思います。
 今の御意見の中で私は感じるんですが、今回のこういうさまざまな事件を繰り返し起こす精神障害の方と、一般の本当の精神障害者に対するそのことが、大変いわゆる社会の人たちの偏見や誤解を招いているということもあると思うんですね。ですから、事実認定はあったとしても、罪を憎んで人を憎まずという精神から、あくまでも精神医療の世界で解決していくというのが民主党案だと思うんですが、私個人としては、やはり国の責任というのが、では、そういう中で果たして司法の判断というのが全然入らないでいいのか、そこのところはちょっと疑問に思っているところでございます。
 そういう意味を含めまして、精神障害者に対する医療の充実や社会復帰に対しての地域の受け入れ体制の整備ということは一番大事なことでございますし、国民への精神医療に対する啓蒙、皆さんの意識の向上ということ、それが一番の大事なことではありますが、それともう一つ、やはり社会の安全を守るという観点からも一つの考え方はあっていいのではないかと思います。
 そういう意味で、最後に法務大臣に一言お願いして、私の質問を終わりたいと思います。
○森山国務大臣 最初に申し上げましたように、この法律の目的は、あくまでもその対象者の社会復帰ということが最終目的でございます。
 しかし、治療を継続的に続け、また観察も十分行って、健全な社会人として復帰していただくということによりまして、社会の多くの人々もまた安心して一緒に暮らしていくことができるという意味で、その目的を果たすことができるのではないかというふうに思っております。
○西川(京)委員 ありがとうございました。
 犯罪被害者の方の家族の思いもあります。そういう総合的な見地から、この問題を国民みんなで考えていきたいと思います。きょうは、ありがとうございました。

【金田委員質疑】

第154回衆議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第3号(同)
○園田委員長 次に、金田誠一君。
○金田(誠)委員 民主党金田誠一でございます。おはようございます。
 本題に入る前に、厚生労働大臣にお伺いをしたいと思います。昨日の参議院で指摘をされました、宮路副大臣のいわゆる口きき疑惑の件でございます。
 本委員会は法務主体の委員会でございますから今審議がこのように行われているわけでございますけれども、厚生労働ということになりますとこういう状態にはなり得ない問題だ、きちっとけじめをつけていただかなければ国民の信頼をかち得ることにはならない、こう考えております。
 この件について、厚生労働大臣の明快な御所見をまずお伺いしたいと思います。
○坂口国務大臣 昨日の参議院におきます厚生労働委員会におきまして、突然の御質問でございまして、私もその場所で初めてお聞きをしたわけでございますが、宮路副大臣のそのときの答弁によりますと、後援者のお一人から医学部の入試に関連をいたしましてぜひひとつ結果を知りたいという電話があって、そして、それに対しまして秘書さんがそれに電話をされた、そして、結果をそれじゃ知ったので、結果は新聞で知った、こういうことでございました。
 それ以上のお話はなかったわけでございますが、お話を聞いておりまして、御本人が言わんとしておみえになるところは、それは、お聞きはしましたけれども、そのことはいわゆる裏口入学といったものとは全然違うことだ、別次元のことだということをおっしゃっているというふうに思いました。
 それで、そうしたことを今後どうするのかということでございますが、やはり私は宮路副大臣からもう少しその辺の事情を詳しく御説明になる必要があるのではないかというふうに昨日感じたわけでございます。そういうことが許されるのかどうかわかりませんけれども、これは委員長や委員会にもお願いをいたしまして、宮路副大臣から直接その間の事情をもう少し詳しく御説明をさせていただく時間を与えていただくことができればというふうに考えている次第でございます。
○金田(誠)委員 御本人が一番よく御存じのことだと思います。大臣からも、きちんとその辺の事実関係を調査していただいて、そう時間のかかる話ではないと思いますから、それに基づいてしかるべく対処をしていただきたいと強く申し上げておきたいと思います。
 それでは、本題に入らせていただきます。
 本法案は、心神喪失状態等で重大な他害行為を行った者に対し、その医療に名をかりて隔離と監視を行うというものであろうと思います。少なくとも、そういう傾向が極めて強い法案であると理解をいたしております。
 過去においても、同様の法律が存在をいたしました。伝染病予防法、エイズ予防法あるいはらい予防法でございますが、これらは現在すべて廃止をされている法律でございます。
 とりわけ、坂口厚生労働大臣におかれましては、ハンセン病問題の最終解決、これに大変な御尽力をいただいたわけでございます。にもかかわらず、法務省厚生労働省の共管で本法案が提出をされているということは、極めて残念でなりません。せっかくここまで我が国が到達してきたこのような法体系、すべて克服をしてきたと思うわけでございますが、その歴史を逆に回すに等しい、残念でならないわけでございます。
 とりわけ、厚生労働大臣は、大変な実績を上げていただいたにもかかわらず、なぜこのような法案を提案されるのか、明快なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 心神喪失等の状態で重大な他害行為が行われる事案につきましては、被害者に深刻な被害が生ずるだけではなくて、精神障害を有する人自身にも、その病状のために加害者となる点におきまして極めて不幸な事態だというふうに思います。
 本法案におきましては、こうした者に対しまして継続的かつ適切な医療の実施を確保することによって、その病状の改善及びそれに伴う同様の行為の再発の防止を図ります。もって本人の社会復帰を促進するものでございます。今御指摘をいただきましたように、医療に名をかりた隔離と監視を行うことを目的とするものではございません。
 本法案におきましては、原則として六カ月ごとに裁判所が入院継続の要否を確認することにいたしておりますし、また、いわゆる指定入院医療機関の管理者は、入院患者に対しまして、その時点の病状を考慮して常に入院継続の要否を判断いたしまして、四十九条の一項にも書いてございますが、入院をさせて医療を行わなければ心神喪失または心神耗弱の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあると認めることができなくなった場合には、直ちに裁判所に対しまして退院の許可の申し立てをしなければならないこととしておりますし、あわせて、入院患者側からも裁判所に対しまして退院の許可の申し立てをすることができることとしているところでございます。
 これらのことをその法律の中にも盛り込みまして、退院をしていただいて、一刻も早く地域社会においてもとの状況に戻っていただけるような努力を社会全体でしていくということが大事だというふうに思っている次第でございます。
    〔園田委員長退席、森委員長着席〕
○金田(誠)委員 大臣、この間、ハンセン病問題あるいはヤコブ病問題で大変な御尽力をいただいた。内閣の中でも、大臣、相当無理を通してきたというふうにお見受けをいたしております。そういう形で無理を通したんだから今回また無理を言うこともできないということが背景にあるのかなということも推測をいたしておりますが、この問題は、二つ無理を言ったんだから三つ目は言えないという話ではないだろう、こういうものだと思います。せっかくここまで到達してきた我が国のこうした進歩、それを逆戻りさせることがあってはならないと思うわけでございます。
 今御答弁でいろいろ説明がありました。しかし、それは結果的に言葉のあやではないんですか。結果としては言葉のあやに終わることになるんではないでしょうか。重大な犯罪を犯したというか、そういう行為を行った精神障害の方々は年間約四百名でございますよね。その中で再犯を犯すかもしれないという方を明確に特定などできるわけがない、そして絶対起こさないなんということも言えるわけがない。勢い、ほとんど、四百名近い方が何らかの措置をとられることになるんじゃないですか。
 しかし、実際、再犯率という数字にはいろいろな見方もあるようでございますが、先般の参考人招致の中では、全家連の役員の方が再犯率六・六%という数字をおっしゃっておられました。四百人の六・六%だとすれば二十七人弱でございます。この二十七人が特定できれば、しかし特定できても特別な措置はとるべきでないという議論も一方にはあります、それはそれとして議論させていただくことにして、仮に二十七人特定できたとして、これからの法律の運用で二十七人の方々が何らかの措置をとられるという運用がされますか。
 実際、四百人に近い方々が措置をとられるとすれば、三百七十人という方は必要もないのに入院をさせられた、何らかの措置をとられた、こうなるとすれば、らい予防法とどこが違うのか。らい予防法とどこが違うのか。ぜひひとつ、とりわけ厚生労働大臣にはお考えをいただきたい、こう思うわけでございます。
 そのことを申し上げて各論に入らせていただきますが、今申し上げました七月九日の参考人招致の中で、全家連の池原常務理事、この方は弁護士さんのようでございますが、この方の話によれば、重大犯罪を犯した精神障害者で重大犯罪の前科前歴のある者は六・六%にすぎませんという資料を配付しておられます。これは、資料の出どころは平成十三年版犯罪白書ということになっております。さらに、その資料の中では、精神障害者の重大犯罪の再犯率は六・六%、こう述べておられます。
 政府参考人に伺いますが、この全家連の池原常務理事の指摘、精神障害者の重大犯罪の犯罪率は六・六%、これについて確認をしていただきたいと思います。
○古田政府参考人 ただいま御引用の数字は、これは平成八年から平成十二年までの五年間の殺人事件、殺人の既遂及び未遂について、検察庁精神障害のため心神喪失または心神耗弱と認められる、あるいはその疑いがある、そういう人たち、それから、裁判所で心神喪失を理由に無罪となりあるいは心神耗弱の認定がされた人、その合計七百二名についての十年間の前科または前歴を調査したものでございまして、あくまで殺人事件に限っている数字でございますので、殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ、それらを網羅しての中での数字ではないということでございます。
 ですから、あの池原参考人の御指摘は、あくまで殺人事件に関するものだけということで御理解いただきたいと思います。
○金田(誠)委員 殺人に限っては重大犯罪の再犯率は六・六%である。再犯率は六・六%、殺人に限っては、じゃ、こういう理解でよろしいということですね。
○古田政府参考人 厳密に申し上げますと、再犯率というのを仮に極めて正確にデータによって把握しようといたしますれば、率直に申し上げまして、治療等が行われない状態でどうなるかということを考えないとわからないわけでございますが、そういうことは不可能でありますので、そういう意味での再犯率というのは、おのずと正確には把握できないものであるということを御理解いただきたいと思います。
 ただ、いわゆる殺人その他の重大犯、他害行為、これに当たる行為をした人で心神喪失あるいは心神耗弱、その疑いがある人も含めまして、そういう方で過去十年間にやはり同様の重大な他害行為をしているという人の割合がどのくらいあるかということになりますと、私どもの把握しているデータでは約一一・七%程度というふうに考えております。
○金田(誠)委員 今の一一・七%の根拠、委員長、恐らく書いたものがあるんでしょうけれども、データ、計算式、これの提出をお願いしたいと思います。
○森委員長 理事会において協議いたします。
 古田刑事局長、もう一度答弁願います。
○古田政府参考人 資料と申しますか、私どもの方でこれまで一応把握している数字で、対象者がトータル二千三十七名、五年間であるわけでございますが、そのうち二百四十名、そういうことで一一・七%ということでございます。
○金田(誠)委員 だから、その二百何人が、どういう重大犯罪なのか、何年から何年までの数字なのか、こんなような紙にして出していただきたい。理事会で諮って、委員会として提出させてください。
○森委員長 理事会で協議いたします。
○金田(誠)委員 委員長、よろしくお願いをしたいと思います。
 そこで、一一・七%なる数字が最初から出りゃ質問しなくてもいいわけなんですけれども、この資料、今回の法案の資料ですね、いただいているわけでございますが、この四ページ、「重大な他害行為を行った者の前科等調べ」というのがありまして、総数二千三十七人、この数字はここに載っているのですが、前科前歴ありが五百六十八となっているんですよ。
 何で五百六十八という数字出したんですか。今の数字ですと、二百何ぼと言いませんでしたか。それで一一・七だというんですよ。二千三十七に対して五百六十八ですと、二五%ぐらいになるんじゃないですか。ここには、重大犯罪でないものまで入った数字を出している。ところが、今回の法律は、重大犯罪を犯した者について措置をとるという法律を出しているわけですから、資料として不適切じゃないですか。あたかも再犯率が高いように見せかけようという意図のもとにこの資料が出されている。極めて遺憾だ。何を考えているのか。最初からきちんとしたものを出しなさい。
 一言コメントしてくださいよ。問題ですよ、これ。
○古田政府参考人 一言、御理解をいただきたいので申し上げたいのですが、この法案の目的は、重大な他害行為をするに至った方たちにつきまして再犯率が高いからとか、そういうことでお願いをしているわけではございませんで、そういう方たちについて、やはり適切な処遇を決めるシステム、そしてそれに従って処遇をする、そういうことがぜひ必要である、そういう観点から御提案申し上げているわけでございます。
 ここで前科前歴を持つ方がどれだけいらっしゃるかという資料を提出いたしましたのは、重大犯罪を実際に行った方、その中で、過去問題行動を起こしている方がどれだけいるかというような観点というのもひとつ非常に重要なことから、そういう資料を提出させていただいたというものでございます。
○金田(誠)委員 この五百六十八という数字も、不必要な数字ではないかもしれませんね。参考として必要な数字かもしれません。二千三十七のうち前科前歴あり五百六十八と。しかし、もっと必要な数字は、五百六十八のうち、今回の法律の対象になる重大な前科前歴がどういう形なのか、そっちの方がより大切じゃないですか。それをネグっておいて、五百六十八だけを出す。こういう物の考え方が不純だということを指摘しておきたいと思います。
 厚生労働大臣も、ひとつ法務省のやり方についてよく御認識をいただきたいと思うところでございます。
 さて、精神障害者の重大犯罪の再犯率、今一一・七%と。後でこの内訳がどういうことなのか出していただきますけれども、とりあえずこの数字をもとにして話をさせていただけば、法案の第四十二条による入院等の決定は、検察官による申し立てがなされたうちの一一・七%程度になる、当然。四百人のうちの一一・七%程度になる。多少の前後はあったとしても、四百人の一割ちょっと、四、五十人、この程度の方がこの法律によって入院等の措置がとられる。こういう運用がされるという理解でいいかどうか確認をさせてください。
○下村大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。
 本法律案第四十二条の入院等の決定は、個々の処遇事件に応じて、第三十七条第一項に規定する鑑定を基礎としまして、同条第三項の意見及び対象者の生活環境を考慮して、裁判官及び精神保健審判員の意見の一致したところにより決定されるものでございますので、検察官による申し立てがなされたもののうちで入院決定等がなされる割合について、現時点におきまして確定的なことを述べるのは非常に困難なことでございます。
○金田(誠)委員 私は、何も確定的なことを言ってくれと言っているわけじゃないんですよ。この法律を通す際に、どの程度の方々が法律によって措置がとられるのか、それもわからずに賛否を決めろなんてことはできるわけがない。したがって、大まかに、何も確定的なことを言えなんてことは申し上げているわけでないわけですから、物の考え方として、重大犯罪を犯した方の再犯率が一一・七だとすれば、何らかの措置をとられる方もこれに前後した数字になるんでしょうねということを確認していただきたいと言っているんですよ。こんなこと確認できませんか。
○古田政府参考人 ただいま御指摘の数値は、あくまでそういう問題行動を現にするに至った方のいわば割合でございます。これはもう委員当然御案内のとおりでございますが、その間再犯を起こさない、あるいは問題行動に再び至らなかった方、こういう方は、医療管理とかそういうことがしっかりできているために幸いそういうことにならないで済んでおられるという方ももちろん含まれているわけでございますから、ただいま委員御指摘のような数値がこの対象の数を考える上でのメルクマールになるというふうなものではないと考えております。
○金田(誠)委員 それじゃ、どういうことが想定されているんですか。四百だとすれば、ほとんど四百人が何らかの措置をとられるということなんですか。そうなんですか、違うんですか。
 ちょっと待ってください。約四百人の方が毎年対象になると。この法律というのは、そのうちのどの程度の方を対象にしてつくろうとしている法律なんですか。あんた方が出す法律なんだから。
 厚生労働大臣法務大臣それぞれ、どの程度だという数字を、何%でもいいですよ、お二人からそれぞれ答えてください。――大臣に聞いているんですよ。
○古田政府参考人 心神喪失または心神耗弱と認められる者あるいはその疑いがある人、この数値が四百前後ということでございます。したがいまして、その対象となり得る数というのはその範囲にとどまる。そのうちの何%ぐらいまでが実際にそうなるかということにつきましては、これは個別のいろいろな判断がございますので明確な数字を申し上げるということは大変困難でございますが、いずれにせよ、その範囲であるということでございます。
○金田(誠)委員 最後の一言がちょっとやじと重なって聞き取れなかったんですが、恐らく、きちんとした数字を言ったんではないだろうなというふうに推測して質問をさせていただきますが、提出をする方として無責任じゃないですか。
 例えば、この五年間で五百六十八名、前科前歴あり。そのうちの重大犯罪の方は、さっきおっしゃった二百何人ですよ。平成十二年度に限れば百三人。恐らく、そのうちの重大犯罪の方は半分もいないんじゃないですか。
 そういう方々が実際どういう処遇をされていて、どうなっているのかという実態調査ぐらい、任意に御協力いただく中から、この法律を提出するに当たって、毎年、四百人程度の対象者の方のうちどの程度がどういう処遇をとられるのか、明確に説明できるようになってから法律なんというのは提案するべきでしょうが。その辺の提出者の統一見解を求めたいと思います。これはだれが統一見解を出すんですか。
 先ほど来、何回も質問しても、数字は一向に明らかにされない。五〇%とも言わなければ、一一・七%も言わない。四百人近いということもおっしゃらない。雲をつかむような話で、これ以上審議できませんよ。政府統一見解を求めたいと思います。
○古田政府参考人 ただいまの委員の御指摘の中に、この二千三十七人の方の処分後の状況がどうなっているかというふうな点がございましたが、その点について申し上げますと、入院となった方が千六百五十一人。そのうち、措置入院が千三百五十四、その他の入院が二百九十七。入院されなかった方は二百九十、通院治療が四十五、その他五十三、どういう措置がとられたかわからないものが九十六ということになっております。
    〔森委員長退席、園田委員長着席〕
○金田(誠)委員 委員長、私の質問に答えさせてください。内閣に統一見解を求めているんですよ。
○坂口国務大臣 これは法務でお答えをいただくべきことかもしれませんし、そして、その人数等につきましては、これは法務省がお出しをいただいている人数でございまして、再犯のおそれが何割あるのかということの数字というのは私もつまびらかに存じておりませんが、多分、再犯を起こされた人の中には、治療を継続して受けている人もいるし、治療を行わなかった、途中で中断をした人もいるのであろうというふうに思います。
 したがいまして、治療を受けていてもなおかつ再犯を起こすおそれのある人がどれだけかということは、現在のこの数字だけでは明確でないというふうに私は思います。
 したがいまして、それらのことを考慮に入れて考えますと、一一%前後という数字が、これまで治療を受けた上での数字なのか、それとも治療を受けなかったために起こったものなのかといったことをもう少し精査しないとわからないというふうに思っております。
○金田(誠)委員 毎年四百人ぐらいの方が対象になる。この法律ができたとすればそういう方々がどのような比率で処遇を受けることが想定をされているのか、これについての御答弁がないわけでございます。
 委員長に要請を申し上げますが、ぜひひとつ理事会で御協議をいただいて、政府としてどの程度、どういうことを想定した法律なのかというきちんとした統一見解を出していただきたいと強く要望して、質問を終わります。
○園田委員長 ただいまの御要望に対しては、理事会で検討させていただきます。

【日野委員質疑】

第154回衆議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第3号(同)
○園田委員長 【つづき】次に、日野市朗君。
○日野委員 何か今拝見していると、法務大臣から手が挙がっていたようでございますね。私も、今金田委員が質問したことについては非常に強い関心を持っておりますので、法務大臣から今おっしゃりたいことを言っていただいた方がいいと思うんです。実はきょう、三十分しか時間がありませんので、きょうは主として法務大臣以外のところからお話を伺って、法務大臣からは、後日ゆっくりと時間をかけていろいろな重大な問題点を伺いたいと思いますが、今手を挙げておられたので、何をおっしゃりたかったのか。
○森山国務大臣 御指名、ありがとうございました。
 法案の第三十三条にもございますように、従来該当するはずであった人々の中から、ここにございますように、「精神障害のために再び対象行為を行うおそれが明らかにないと認める場合を除き、」というふうにもなってございますし、新しい手続といいましょうか手順を決めるための法律でございますので、その中からこのような方々を除いた数がどのぐらいになるかということは、今のところはっきり申し上げられないというのが正直なところでございます。
 また、この法律の目的といいましょうか、対象が何人いるからとか、あるいは多いから、少ないからということでこのような法案を御提案申し上げているわけではございません。少なくてもそのような方が存在するということについて、それに着目いたしまして、手続の必要性を考えて提案させていただいたのであるということを申し上げたいと思ったのでございます。
○日野委員 今の御答弁は、この次の大臣に対する質問に関連して、非常にいい入り口になるなと思いながら伺いました。
 それで、きょうはまず厚生労働大臣にお話を伺いたいと思います。
 まず、この手続を見ますと、再犯のおそれというのがやはりこれはキーワードでございますね。検察官が申し立てをする場合は、これは非常に厳密にやっています。再犯のおそれがないことが明らかであるときを除いてはこの手続をしなくちゃいかぬわけですね。非常に厳しい要件がそこにはあります。そこから後は裁判所での手続、こういうことになっていくわけでありまして、そこでもやはり再犯のおそれというのは大きなキーワードになっています。
 そこで、厚生労働大臣が前の委員会でも、一生懸命、再犯のおそれを判定することは可能だということをおっしゃっておられるんですね。もう少し突っ込んで私から聞かせていただきます。
 そこで、よくドイツでの見聞についてお話しになりました。ドイツでどのような見聞をなさったのか、どのくらいの時間、留学なさったのか、それともちょっと行って向こうの学者さんとお話しになったのか、どのような場でそのような話があったのか、そんなところに絞ってちょっとお聞かせください。非常に重大なことだと思うんですね。やはり、お医者さんである大臣がそういう結論めいたお話をなさる、この国会でなさるということは大事なことだと思うので、ちょっとテストをさせていただきます。
○坂口国務大臣 今年の一月十五日からでございますが、数日間でございましたけれどもドイツにお邪魔させていただいて、そして病院等にお邪魔をさせていただいていろいろお伺いをした。また、病院だけではなくて、行政官の皆さん方、それから法律家の皆さん方、そうした皆さん方にもお話を伺うということをしてきたわけでございます。
 そうした中で、それをお聞きしましたからそれだけをうのみにしてということではないわけでございますが、その皆さん方の大体一致した意見としましては、医学というのは統計学によって成り立っているわけでありますから、再犯のおそれというものは、それは予測し得るという立場で皆さん方がその業務に携わっておみえになるということでございます。そうした御意見を拝聴してきたということでございます。
○日野委員 そうすると、病院なんかは電話でお医者さんとお話しになった、こういうことのようでありますし、行政官の中にも、精神医学というのですか、これについての見識をお持ちの方もおいでになっただろうと思うし、法律家も、そういういろいろな経験を持った方とお話しになったんだろうと伺っておきましょう。そういうふうに伺っておきます。大臣はお医者さんでございますから、私も、そういう方として評価しながら、この方がおっしゃることだったらまあまあ大丈夫なんだろうな、こう考えながら今お話を伺っております。
 ただ、残念なことに、日本の専門家では、再犯のおそれということについて、それを認定できるかどうかということについて、できないとおっしゃる方もおられるわけですね。(発言する者あり)圧倒的という声もありますが、どうも、圧倒的とまで言えるかどうかは別として、再犯のおそれが認定できない、認められないという方の方が多いように私は思います。少なくとも言えることは、そのことについては自信がない、その自信のなさというのがはっきり読み取れるような感じがするわけでございます。
 それから、この間参考人質疑もありましたが、その中で、お医者さんだけに責任を負わせるのは酷ではないか、その責任を一緒に担ってくれる人がだれか欲しいんだ、そこで裁判官という声が出てくるというような話が出ていまして、私は、これはお医者さんの世界でも非常に自信がないんだなというような思いを抱かざるを得なかった。こういう私の思いについて、大臣、いかがでしょうか。
 というのは、これは司法の手続に乗って、対象者というのですか、結局触法で出てきている方々ですね、行為を犯した方々、そういう方々を拘束していくわけですね。それもかなり長い期間の拘束になるかもしれない。そういうことになりますと不利益を課することになりますから、これは非常に厳しい認定が必要になってくるんだろうなと私は思うのでございます。
 御承知のとおり、裁判の手続では灰色は白でございまして、こういう世界の中で、そういう自信のないお医者さんたちが専門家としてこの裁判にかかわっていくことはいかがなものかと私は思っているのですが、それに対して、坂口大臣、ひとつお考えを述べていただけませんか。――大臣にまず聞いてください。
○坂口国務大臣 日本の国の中におきまして、この触法関係のことを研究しておみえになります方、あるいはまたこの道を専門的におやりになっている皆さん方が今まで少なかったことは、私も率直にそのとおりだと思っております。その点が欧米と申しますか、ヨーロッパ諸国と日本との違いだろうというふうに思います。日本におきましては、その方面が非常におくれていたという言い方がいいのか、その方面の研究が少なかったというふうに言った方がいいのかもしれませんけれども、そこは私も率直にそう思っております。
 それだけに、この分野の研究を重ねていただかなければなりませんし、そして、この方面における研究を重ねていただいて、重大な犯罪を再び犯すことのないような体制をつくり上げていかなければならないんだろうと思っております。
 そうした意味から、これから精神医学を研究しておみえになります先生方におきましては、十分に御研究をいただきたいと思いますが、現在でも既にそちらの方のことを専門的におやりになっている皆さん方がお見えでございますし、先日、参考人にお見えいただいた御意見も、御意見は相半ばしたというふうにお聞きをいたしておりますけれども、現実問題といたしましては、そうしたことを熱心におやりになっている方とそうでない方との間の差というのは当然のことながらあるのであろうというふうに思っております。
○高原政府参考人 現行の措置入院制度におきましても、精神保健指定医自傷他害のおそれの判定を行っているところでありまして、この自傷他害のおそれと本制度の再び対象行為を行うおそれは、その判断過程や判断方法などの基本的な部分は異ならないというふうに考えております。
 我が国におきます措置診察の経験が豊富な精神保健指定医は相当数ございます。これらの医師を対象として司法精神医学的な研修を行いまして、再び対象行為を行うおそれの予測等につきまして可能となるよう考えております。
○日野委員 今、自傷他害のおそれの判断とそう違わないとおっしゃったんですが、それにさらにつけ加わるものがあるわけですね。触法行為を犯しましたよと、さらにいろいろな環境の調査までデータとしてつけ加わるわけですね。これは医学の世界、お医者さんの世界で非常にやりやすい状況がさらに整ってきたのであって、何もここに司法的な判断のようなものがつけ加わる必要はないんじゃないかなと私は思うのですね。
 私は、この手のことはあくまでも行政でおやりになるべきことですよ、厚生労働省の誇りをかけておやりなさいよ、お医者さんたちの誇りをかけておやりなさいよ、人手を借りなくたっていいではないですか、人の体、精神、それを診るのはお医者さん、あなた方ですよ、自分たちの仕事を誇りを持っておやりなさい、こう言いたいんですが、いかがでしょうか、大臣。
○坂口国務大臣 誇りを持っておやりをいただかなければならないのはそのとおりというふうに思いますけれども、重大な犯罪を犯した心神喪失者といったような場合におきましては、ただ医学の世界だけの範囲では物を考えられないということもあるわけでありますから、医学の専門家がそのことを決定いたしますと同時に、やはり裁判官としての立場から全体的な、総合的な立場でまた御判断をいただくということも必要になってくるのではないかというふうに思います。
○日野委員 皆さんからお話を伺うと、この法律の目的はあくまでもそういう触法行為を犯した人の治療であります、その人たちが社会に復帰できるようにやることが目的でございます、こうおっしゃっていながら、そこで裁判官が出てきちゃうので、やはりこれは違うでしょう、治安を一つの大きな目的にしているんでしょう、そうじゃありませんか、こう言いたくなっちゃうわけですね。
 そこは、この場では、私、きょうは余り時間がありませんので、ここで押し問答をやっている時間的余裕がありませんから次に移りますが、これは後で法務省とはゆっくり時間をかけて論議したいというふうに思います。
 ただ、これは、そういう目的の点、それらなんかでもいろいろ問題があるということは指摘をしておきながら、ちょっと教えてもらいたいんです。
 審判員になるお医者さん、この人材はどこから選んでくるんですか。公立病院のようなところの勤務医さんですか。それとも、一般の病院からも選ぶんですか。そういう人材はどこから確保してくるのか。それから、名簿で何人ぐらい出されるおつもりなのか。そういう人たちが裁判の場に立つとなれば研修をしなくちゃいかぬと思いますが、その研修はどこが、どのようにやるおつもりなのか。
○高原政府参考人 審判員は、精神保健判定医として名簿に登載された方から選ばれるわけでございます。
 この精神保健判定医でございますが、この方はまず原則として、精神保健指定医であることが必要でございます。精神保健指定医は、五年以上診断または治療に従事した経験があること、そのうちの三年間以上は精神障害の診断または治療に従事した経験がありまして、さらに一定の種類の精神障害の診断または治療に従事した経験がある方で研修を修了した方ということにつきまして、審査を経て指定することになっております。この精神保健指定医の資格におきまして、いわゆる自傷他害の判定が現在行われておるわけでございます。
 次に、審判員が選任されます精神保健判定医でございますが、このための条件といたしましては、先ほど述べました、自傷他害のおそれの判定を行っております精神保健指定医としての臨床経験年数が一定年数以上であること、そして措置診察、つまり自傷他害のおそれの判断でございますが、この診断に一定件数以上従事したことがあること、さらに司法精神医学に関する研修を受講したこと等を資格要件とすることを検討しております。
 数についてのお尋ねがございました。本制度における審判は、全国の各地方裁判所で行われるものであるところ、一人の精神保健判定医が担当し得る事件数はさまざまであると考えられることなどを考慮いたしますと、もちろんこれは確定的なことを申し上げるわけではございませんが、例えば全体で三百名程度の精神保健判定医は必要不可欠であり、確保することが必要であると考えておりまして、このような専門家の質と量を向上させるために、厚生労働省としても取り組んでおるということでございます。
○日野委員 いや、そんな常識的なことを聞いているんじゃないので、公立の病院あたりから引っ張ってくるのか民間から引っ張ってくるのかなんということを私も聞いたけれども、全然答えていないですな。それから、研修をどうするんだ、だれがやるんだなんという話も全然答えていないです。私が聞かないことばかりべらべらしゃべっているんですな。それでは困るので、本当によく質問を聞いて。私、これは質問取りでも言っていることだからね。
○高原政府参考人 失礼いたしました。
 精神保健指定医が、現在、属人的な資格ということで勤務先を特に特定しておりませんことから、判定医についても同様のことを考えております。
○日野委員 まだ余り検討していない、こういうことですな。この国会の論議等を考慮して徐々に決めていく、こういうことですか。
○高原政府参考人 何人必要かというところにつきましては今後の動向を見据える必要があるかと思いますが、基本的な、どういうところから選任するか、つまり、これは属人的なものであるということ、それから、どういう要件を考えているかというふうなものは、ほぼ先ほどお答え申し上げた点でございます。
○日野委員 では、次に、最高裁に伺います。
 最高裁としては全く新しい経験をするわけでございますね。今まで裁判所の組織の中で裁判、つまりいろいろな判定行為をやる場合は、これは裁判官がやるわけですな、原則として。そして、それ以外の、例えば調停委員の人だとか司法委員の人だとかいろいろあるけれども、それは裁判官の後ろにきちんとついていて機能してきたわけですが、さて、今度は全く別個の精神保健審判員なる方々が裁判をやりに入ってこられるわけですね。さあ、これに対して司法行政はどのように機能するんでしょう。司法行政の範囲におさまり切るんですか。
○大野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 この法律案によりますれば、精神保健審判員の任命それから解任は、いずれも行政部門である地方裁判所が行うというふうにされております。また、その職務に対しては手当等が支給されることとなっております。
 司法行政におきましては、裁判所の運営を行うために、今申し上げたような職員の任命、免職、監督、報酬支給、給与の支給等、それらが司法行政のうちの具体的な一部になっております。
 したがいまして、今申し上げましたように、精神保健審判員につきましても、これらの点については司法行政の監督権が及ぶというふうに考えております。
○日野委員 この審判員の方々の取り扱いですが、これはやはり裁判官と同じように職務上独立した方々であるわけですね。いかがでしょうか。どのようにお考えになりますか。
○大野最高裁判所長官代理者 この法律案の九条一項は、「精神保健審判員は、独立してその職権を行う。」ということとされておりますので、裁判官と同様に、裁判という判断の過程におきましての事柄につきましては独立して権限を行使するということになろうかと思います。
○日野委員 今まで司法行政と裁判官の独立ということでいろいろな問題点が起きたケースが何件かございましたね、例えば特に任命だとかいろいろなことで問題が起きているんですが、どうなんでしょう、これは、新しい審判員という独立して職務を行う方が出てきて、最高裁として司法行政権がきちんと行使できる、スムーズに行使できるというふうにお考えになりますか。
○大野最高裁判所長官代理者 行政権が及ぶ範囲は先ほど申し上げたようなところでありまして、ですから、任免あるいは給与、手当等に関しましてもちろん及ぶわけですし、その配置等についても行政権は及ぶわけです。したがいまして、その範囲での事柄について適切な司法行政を施すということになると思いますが、判定医として、審判員として裁判、処遇等に当たりますその判断をする過程においては行政権の行使は及ばない。ですから、その点におきましては裁判官と同じような立場に立つということになろうかと思います。
○日野委員 私は、特に審判員の解任の場合、ここについてはいろいろ問題が出てくるんじゃなかろうかなと思うんですね。特に、合議体は、二人で合議体を構成するわけですな。これは、意見が合わぬ、こういう場合なんかはどうなっちゃうのかね。非常にそこは心配になりますし、特に解任の場合、おれは嫌だよ、解任に応じないよと言われてしまったらこれはどうなるか、そこらの心配をしているんですが、いかがでしょう。
○大野最高裁判所長官代理者 解任の問題は司法行政上の問題ということになりますが、今議員おっしゃるように、裁判官と判断過程の中で意見が一致しないというようなところの問題として解任の問題が生ずるかといえば、それはそうではなくて、結局意見が一致しなければ、今回の要件判断のところでの意見が一致しないということになっていくんだろう。ですから、それは裁判の結果の方につながっていくかとは思いますが、そのこと自体で解任といった問題に結びつくことはないのではないだろうかというふうに思っております。
○日野委員 ちょっとそこは二つの問題を並列的に出してしまって恐縮していますが、一つはやはり解任の問題とか、それから合議の問題について。
 私は、今の裁判所の合議というのは三人以上ですわな、そこでいろいろ話し合いが行われて、それで成り立っているというところがあると思う。しかし二人だと、しかも片っ方は裁判官、片っ方はお医者さん、それぞれ分野が違うわけですよね。ここで、おれはこうだ、こっちはこうだということになっちゃうと、これはなかなか収拾がつかないことになりやしないか。私は、これは司法的な機関としての合議で結論を得るということは非常に難しいんじゃないか、そういう心配をしているんです。それは結果の問題だ、こうおっしゃったんだが、その結果が出ないなんということはよくあり得るわけですね。大体、審判書に対しては一体だれが署名するんですか、どっちが先に署名するんですか。そういう問題も出てきますわな。
 これは通告していなかったので、後でこの点についても伺わせていただきますが、そういう細かい非常に面倒なことを裁判所としては今度は抱え込むので、私は、この問題は司法には本当はなじまない、こんなことは行政でやってくれよというのが裁判所の本音じゃないのか、こう思うんですが、イエスかノーかと聞いたらちょっと酷かもしれませんが、どうお考えになっていますか。
○大野最高裁判所長官代理者 議員御質問の点、これは立法政策の問題にかかわってくることでございますので、私どもとしては意見は差し控えさせていただきたいというふうに思います。
○日野委員 私、この間の参考人質疑でも、実に大事な問題についての大事な発言を聞きました。お医者さんの世界ではどうやら、やばいという言葉はここ国会で使っちゃいかぬかな、こういう大変なことは全部裁判官に任せてしまえというようなことが言われているらしいですわな。裁判官にしてはこれはたまったものじゃない。自分たちがさっぱりわからない精神医学の問題、それについて責任を負わされるんじゃこれはたまったものじゃないという意向が恐らく強いのではないかというふうに思います。
 今、最高裁の方からは、それは立法政策の問題だとおっしゃった。確かにそのとおりです。しかし、立法政策として、私はこの問題を司法の問題として扱うんじゃなくて、やはりあくまで厚生労働省の誇りをかけて、お医者さんたちの誇りをかけて、この問題は我々が引き受けるよということを言うべきじゃないか、こう思うんですが、再度、厚生労働大臣、どうですか。
○坂口国務大臣 先ほどもお答えを申し上げたところでございます。
 ドイツに参りましたときに、そのことも実は質問をいたしました。これはドイツの話でございます。医師の意見と裁判官の意見とが合わなかったらそこはどうするんですかということを聞きました。ドイツの場合には、そのときに最終決断は裁判官がするということになっているんだそうでございます。
 しかし、日本の場合にはそうではなくて、先日もこの議論をしていたわけでございますが、意見が合わなければ軽い方の意見を採用するということになっている。例えば、入院をもっとさせるべきだという意見と、地域に返して地域での監視をするという、どちらを選ぶかといったことになったときには監視をする、こういうことにする、こういうことだそうでございます。
○日野委員 いずれにしても私は、この法案は撤回して、民主党が言うように、やはり、行政の手で触法の方々、こういう人たちのこれからの医療的ケア、それをきちんとやるべきだと思います。その方が、国家の治安を守る、国の治安を守るという点でも多いに裨益するところがあるだろう、こう思います。
 私の意見を述べて、終わります。