心神喪失者等医療観察法の条文・審議(その20)

前回(id:kokekokko:20060112)のつづき。
ひきつづき、連合審査会の審議です。参考人に対しての質疑がなされました。
【土肥委員質疑】

第154回衆議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第2号(同)
○園田委員長 次に、土肥隆一君。
○土肥委員 きょうは四人の先生方、大切な時間を割いていただきまして、ありがとうございます。心からお礼申し上げます。
 私も、多少、素人ではございますけれども、精神医療、精神病の患者さんあるいは病院などとのおつき合いがございまして、例えば大阪の大和川病院の問題で、非常な劣悪な治療が行われているということで、私も何度も国会でも取り上げて、ついに廃院になってしまったというので驚いているわけでございますけれども、そういう経験からいろいろなことを学びました。
 まず、患者さんは、みずから病を持っているわけですから、自分がどういう取り扱われ方をするのか、だれを信用していいのか、だれに頼ったらいいのかということが一番大事だというふうに思うのであります。
 中島先生がレポートの中でお示ししておられますように、逮捕されて、そして恐らく警察に連れて行かれて、二、三日間は留置されて、それから検察庁と出会って、不起訴にするか無罪にするかというようなことを判定して、それで終わったかと思えば、検察官の方へ回って、申し立てが行われて、そして裁判が行われて、その間に鑑定入院が行われたり、そしてやっと新法に基づく入院になるわけですね。これはある種の患者さんのたらい回しじゃないか。むしろ、心神喪失状態で犯した犯罪にどうすぐに対応したらいいのかということが大事であって、そしてなるべく早く精神科の先生に、あるいは主治医といってもいいでしょうか、出会って、そこから事の本質は何なのかということを考えていくべきだと思うのであります。
 しかし、今回この法律を見ますと、従来ありました措置入院の方がはるかに患者さんにとっては幸せだというふうに思いますが、中島先生の御感想をお聞きしたいと思います。
○中島参考人 委員御指摘のとおりで、たらい回しという表現はまさに当たっているというふうに思います。鑑定入院の問題もありますけれども、それは先ほど述べましたけれども、指定入院医療機関は、全国にそう数多くつくられるわけではありません。全国に二つとか三つとか、多くなってきてもそれほどの数じゃない数になります。
 そうすると、どうしても自宅から遠いところへ入院させられるということになる可能性が非常に高いわけですね。そうすると、そこでの狭い意味での入院医療はできます。でも、それはあくまでも狭い意味です。入院医療というのは、入院で完結するわけではありません。退院する環境をどうやってつくっていくか、それによって初めてできるものです。そういったものが非常になおざりになるというのが今回の新法案の非常に大きな問題です。
 措置入院に関しては、現行では、いろいろな形で、不幸な形で措置入院になるんだけれども、措置入院で医療に入って、それでうまくいっている人たちが実際数多くおられることも、確かにおっしゃられるように事実です。
 ただし、措置入院にも私は多くの問題があると思っています。これは先ほども申し述べましたとおり、実態調査をぜひ緊急に行う必要があるというふうに思っています。私も、その一端ですが、今行っている最中であります。
○土肥委員 今度の医療及び観察等に関する法律案というのは、こういうややこしい手続をぐるぐる経ながら、やっと何か落ちつくところに落ちつくというような感じ。第一、裁判所で精神科の先生と裁判官がいるわけでありますけれども、裁判所というだけで異様な雰囲気ですよね。
 どうなんでしょうか。心神喪失とか心神耗弱状態というのは、自分が犯しました犯罪というか傷害というか、そういうものを認識しているのでしょうか。山上先生、ちょっとお願いします。
○山上参考人 認識している場合もありますし、自分が妄想的なものに支配されて、その意味を理解できない場合もございます。ただ、病気が回復していけば自分がやったことの意味はわかります。
 欧米の司法精神医療の施設では、そういう自分の失敗を反省して、そういう事件を繰り返さないようなところまでの治療がされますけれども、日本ではそういう対応がほとんどできないのが実情だというふうに感じます。
○土肥委員 いろいろなケースがあるということでございますけれども、そもそも、心神喪失とか耗弱とかいうのは、その犯罪の責任を負えない、負うことができないという前提に立っているんだと思うんですね。そういう前提に立って不起訴ないしは無罪というようなことが出て、それをもう一遍裁判所に持ち込んで、もう一遍審理をし直す。
 私は、自覚がないから心神喪失心神耗弱、そういう人を引き回して、そして判定とか裁判とかというのが一体成り立つのか、そういう素人なりの疑問を持つのでございますが、これは、伊藤先生、お願いします。
○伊藤参考人 先ほど私が言いましたように、精神鑑定なり責任能力の判定なりを迅速にきちっとやることがまず第一だと思います。その後で、もし心神喪失ということで精神科的な治療を行わなきゃならないのであれば、措置入院
 ただ、現在の措置入院の制度にも大きな問題があります。十分な治療ができる体制が整っているとは言えませんけれども、そこのところをきちっとして、人権も守りながら、きちっとした治療、しかも、途中で投げ出すような治療でなくて、最後まで医療の中で完結できる治療をしていく、そういうシステムが今一番大事だと思います。
 そういう意味では、迅速な治療ということを、もしその人の責任能力なしというふうにされたのであれば、それをどう保障するかが大事だと思います。
○土肥委員 もう一つ理解しかねるのでありますけれども、心神耗弱、心神喪失状態で犯した罪が、徐々に、自分がやったんだな、悪いことをしたなというふうに思い返して、傷害を起こしたその事実がよみがえってくるんでしょうか。何かその場にいて、その時間に自分は刃物を振り回したんだというようなことが現実としてわかってくるんでしょうか。中島先生、お願いします。
○中島参考人 これは種々の問題がありまして、認識に関しては、いわゆる責任能力に関しても議論がありまして、例えばメンズレアであるとか、責任能力論に関するいろいろな議論がありまして、いわゆる認識がある、ないということが責任能力のメルクマールであるという議論もあるんですけれども、今の日本の多くの判例ないし学者の立場はそうではなくて、いわゆる生物学的要素と心理学的要素ということで、そのときに善悪を判断する能力があったか否か、あるいは、その判断に基づいてその行動を制御する能力があったか否かということで判定を行うというのが現代の慣例というふうになっております。
 それで、そういうもとで言いますと、もとから自覚がある場合もあります。そして、その中で、悪いことを行ったということじゃなくて、自分は正しいことを行った、そのように考えておられる方、例えば妄想に基づいて行われている、あるいは被害妄想なんかに基づいてそういう行為を行われておられる方はそういう方が多いですね。そういう方々の中で、例えばいろいろな働きかけの中でそういったことが認識できてくるというような方々もおられます。
 それから、意識障害のもとでいろいろな触法行為を犯す方もおられます。私も鑑定例でありましたけれども、そういう方々はやはり記憶が戻らない。これは実際に、ある意味では脳の病気、本当の病気がそのとき急性期に起こって、そのときの記憶が全く残っていない。いろいろな形で喚起しようとしてもそれが戻ってこないということもありますので、そういう場合にはまた別な問題で、御本人がその認識をつくっていく作業の中で非常に苦しい思いをされるというような方もおられます。
○土肥委員 もう一つわかりませんので、また時間をほかに見て、いろいろなドクターに聞いてみたいと思います。
 日精協の仙波参考人にお尋ねいたします。
 新法は非常に喜ばしいことだ、指定入院医療機関、つまり国公立病院において専門的治療を行うことがあるからいいんだ、そういうふうにおっしゃっておりまして、この指定入院医療機関を高く評価しておられますが、この日本の精神病あるいは精神病院の最大の母体である日精協が、何か一般精神病院をなさって、専門的なあるいは高度の治療はしてこなかったということになるんでしょうか。私は、日精協に対してもそれは非常に失礼な話じゃないかと。
 もし国公立でそういう病院ができるといったら、どういうふうに違うんでしょうか。精神病院としてどう違うかをお知らせいただきたい。
○仙波参考人 お答えいたします。
 日精協は、触法の問題の約七割の患者さんを実際に我々の会員で引き受けている団体であります。
 そこで、我々が今回新法に対して賛成するのは、現在の措置入院でそれを受けているんですが、その治療についてこういう現象が起こるんです。例えば、触法を犯した人がいますね、それが我々の病院に来るという場合、同じ病棟にうつ病の人が入るわけですよね。そうすると、私たちがまずするのは、その人がこういう事件を起こしたについては言わないわけですね。結局、無名化してその問題について対応するということになります。
 本人は、意識する意識しないの問題がありましたけれども、訴えるわけですね、自分はこういうことがあったんだけれども、病院でいいだろうかと。それらについても医師が対応する。しかしながら、その問題はもう責任能力なしなんだからと説得するというふうなことで、我々が専門的に、司法的な観点から持つ精神療法的な取り組みに取り組むことはなかなか難しくなります。だから、別にして、それから専門的な治療をやはり行うということがあります。
 専門的な治療は何かというと、その事件に関して、ヒア・アンド・ナウ、そういう場でどうするかということも含めて精神療法をやる。他の諸外国ではそれをグループ療法でやっていますね、触法において。そういうことですから、それができないからということであります。
 それから、そういうことはやはり国の責任でやるべきではないのかという立場が一つあります。国の費用で、国の責任で十分な施設をつくってやるべきであろうというふうに考えておりますから、提案に賛成するわけでございます。
○土肥委員 今のお話は、わかるのはわかるのでありますけれども、患者さんの七割を担う民間の精神病院が、極端に言えば、ちょっと言葉は悪いですけれども、ややこしいというか過大な責任を負わされるような患者さんは国で引き取ってくれ、そして、民間精神病院は一般的な精神病の患者さんのお世話をしますよというふうに聞こえるんですね。
 もし、人員がもっと必要だとか、設備がもっと必要だとか、あるいはもっと金をかけろというんだったら、厚生労働省みずから今回の、心神喪失状態で犯された、いろいろな重大な事故を起こした人のケアができるような措置をすれば、先生のところでもそれはできるんじゃないでしょうか。いかがですか。
○仙波参考人 現在の制度の中で、確かに措置入院においてもそれだけの箱組みができておりません。その中で、今受けているわけですよね。
 だから、スタッフ、構造、その他のものをつくらなくちゃいけませんね。つくらなければいけないということは同感でございます。日精協にそういう施設が、金がたくさん来ればですね。それは現実的ではないんですね、今。そう人数が来るわけでございませんので、入院中の一%の人たちがぱらぱらと入ってくるわけですから。
 だから、私たちとしては、司法のこういうものについては国の責任ではないんだろうか、それは譲れない点であります。だから、国立病院でその施設をつくってというふうに主張するわけでございます。
○土肥委員 もう時間が来ましたので終わらなきゃいけませんが、私は、これは天につばするようなもので、政府がこんな法案を出してきて、国公立で立派な精神病院をつくりますよ、民間の皆さんは安らかに病院経営をしてくださいというふうに聞こえて、要するに、政府の怠慢がこういう法案を生み出している。そういう中からいうと、これは本末転倒だと思うんですよ。今、私どもがやるべきは、措置入院もいっぱい問題があるとそれぞれの先生がおっしゃいました、だったら、それを徹底的に見直す。
 そして、国公立が特にすぐれた研究者がいるんですか。皆さん、ドクターとしてそれぞれの診療もしていらっしゃる。だけれども、国公立でつくったら、立派な先生がいて、立派な治療結果が出て、どんどん社会復帰ができるなんて到底思えない。恐らく、社会復帰なんていったら民間に丸投げしますよ、また。社会復帰施設を国立で持つなんということは考えられません。すると、民間の病院に投げる。
 言ってみれば、そういう責任逃れ、丸投げの法案じゃないかということを申し上げまして、多少腹に据えかねるお気持ちもわかりますけれども、お許しいただきまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

【福島委員質疑】

第154回衆議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第2号(同)
○園田委員長 次に、福島豊君。
○福島委員 本日は、参考人の先生方には、大変に御苦労さまでございます。
 まず初めに、私は、司法精神医療の確立ということが必要だ、この点を確認する必要があるんだろうと思っております。
 先ほどからるる御指摘ありますように、一般の精神障害者の方の犯罪を犯す率というのは普通の人に比べて決して高くない、むしろ低い、こういうことはよく認識をする必要がありますし、そして、精神障害と犯罪が直ちに結びつくわけではない、そういう偏見というものをこの社会の中から払拭する必要があるというふうに思っております。しかしながら、その中でなおかつ、あえて司法と精神医療というものが結びつく必要性がある、この事実というものからも目を背けてはならないということなんだろうと思っております。
 まず初めに山上先生にお尋ねしたいんですが、先生のお示しいただきました図でございますけれども、精神障害者の方の中には触法行為を重ねる人がいる、その中で特に重大犯罪の反復者の方もおられる、そこのところを強調しておられるわけでございます。
 司法と精神医療というものが結びつく必要があるというのは、まさにこういった反復される方がおられる、そういうグループというものが存在するということは否定ができないという認識に立って御主張しておられるのではないかというふうに思うわけでございますが、この点について再度御説明いただければと思います。
    〔園田委員長退席、森委員長着席〕
○山上参考人 お答えいたします。
 図に示しましたけれども、一般の社会の中で何度も事件を繰り返してきた人でも、精神障害者というのは人口の一%程度に生じますから、そういう事件を何度も繰り返してきた人も同じように発病することがあるわけです。
 しかし、今、私たちが調査をして、精神障害者であって最もそういう事件を繰り返す人たちというのは、もう病気になる前から事件を繰り返していて、刑務所などで発病した人たちなんです。そういう人たちは、病気の一時的な症状は病院で対応できますけれども、事件を繰り返さないというところまで病院が対応できるはずもないので、すぐに退院させてしまったり、あるいは事故を起こして強制退院になったり、そういう問題が起きているわけです。
 こういう特に難しい人たちにきちっと対応する司法精神医療施設というのは、どこの国でも、欧米諸国は皆持っているものですけれども、日本だけはその対応がずっとおくれてしまったために、そういう一部の何度も繰り返す人たちをそのままにしているという状況があるわけです。
○福島委員 この質問については中島参考人にもお尋ねしたいわけですが、要するに、諸外国には司法精神医療という領域が厳然として存在するわけです。ということは、そこにニーズがあるということだと私は思います。
 かつて保安処分の議論になったように、精神障害者の方に広く偏見を押しつけるような、そしてまた投網をかけて隔離をするというような考え方で行われてはならないことはもちろんのことでございますけれども、今山上参考人からお話ございましたように、そういうニーズがあればこそ、諸外国にはそうした領域が存在するのではないかと私は思うわけです。
 ですから、日本だけ精神医療の領域でそれがすべて解決できるのだというふうに御主張されるのか、その点について御説明いただきたいと思います。
○中島参考人 私は、司法精神医療の必要性に関して否定するつもりは全くありません。ただ、どういう司法と精神医療の関連を持った領域が必要なんだろうかということに関しては、非常に議論が必要であるというふうに思っています。
 反復者の問題に関しては、いわゆる精神障害者じゃなくてもおられるわけですね。かなりおられます。私が在籍しておりました、横浜刑務所というところで医務官をしておりましたわけですけれども、そこは本当に反復者だらけといいますか、反復者が多数おられる。これはこれでまた、一つの非常に独立した問題をつくっております。精神医療だけの問題ではありません。
 それで、反復される方の事例を山上先生は挙げておられるわけですけれども、これも私の以前の論文で批判したんですけれども、この事象自体は、あるところでその人が精神科医療の方に入ってしまうと、その後は同種の犯罪を繰り返す限りずっと医療の方に投げられるということがいろいろな形で行われてくるんですね。同じような精神障害を持っている方でも、刑務所へ入っている人だとずっと刑務所へ入り続けるということがあって、例えば、私も横浜刑務所で多数診ましたけれども、非常に重篤精神障害の方も多数おられました。
 このあたりは、一つは鑑定の問題です。入り口のところの、日本で最も多いのは起訴前の簡易鑑定ですけれども、その簡易鑑定をもうちょっと適正に行う、簡易鑑定で判定し切れないものはもっと本鑑定に流していく、例えばこれも一つの医療ですね。
 そして、刑務所の中でもっとやるべき医療がたくさんあります。欧米諸国ではもっと、種々システムはありますけれども、いろいろな形で刑務所の中での医療も行われるようになっています。日本はそのあたりも貧困ですね。
 そういったところの調査が必要ですし、改善が必要です。そういった意味での司法精神医療はぜひ必要だと私は思っております。
○福島委員 先生の御主張されておることと今回の新法の考え方と非常に距離があるという話では恐らくないんだろうと思います。それは、両者が関与するということが必要だということを先生も御主張しておられるんだと思います。
 ただ、先ほど中島参考人から御指摘ありましたように、鑑定している期間の治療はどうするんだ、そしてまた、今おっしゃられましたように、矯正施設の中で治療というものがきちっと行われていないではないかと。特に後者の問題というものについては、適切な対応が私も必要だと思っております。前段の話については、この新法の中身にも絡んでくる話でございますので、この点について、山上参考人から、どのように御認識かお聞きしたいと思います。
○山上参考人 鑑定期間あるいは決定が下されるまでの期間の医療に関しては、新法ではまだ不明瞭であります。まず責任能力に関する鑑定があって、その上で入院の必要性があるかどうかという判定がされるわけですけれども、恐らく、従来の責任能力に関する判定のときには治療が余り積極的に関与することはなかったのですけれども、既に一たんそういう病気の診断などがついて審判にさせる場合には、医療を並行してやることも可能ではないかというふうに感じております。
○福島委員 わかりました。今後の議論の中で、その点についても深めてまいりたいというふうに思っております。
 そして、仙波参考人にお尋ねをしたいんですが、先ほども土肥委員の方から御指摘がございましたが、一般の精神医療の底上げというもので対応ができるんではないかという指摘がるるあったわけでございます。その点については、参考人から御指摘といいますか、御意見がありました。再度、その点についてのお考えをお示しいただきたいというふうに思います。
○仙波参考人 精神医療の底上げは、もちろんのどから手が出るように私たちも切望しているところでございます。
 しかしながら、精神医療のフィールドの中に、触法の患者さんの一群のものについては、これは私たちが今までどうやっても、措置でやっても、この三十年の間、苦しみ苦しみ出した結論なんでございますが、新しくやはりこれは立ち上げていただいて、それから精神医療の底上げの整理が初めてできるというふうに私たちは位置づけております。そういうことで、この法律の立ち上げは、底上げのためにも、整理のためにも、国民のためにいい影響を及ぼすためにも、ぜひ必要ではないかと思います。
 精神医療はもうどんどん今広がっておりまして、老人から、メンタルヘルスとか、どんどん広がって、機能分化が必要なんですね。精神医療の中に、もう既に出現しておりますが、ストレスケア病棟、これは非常に患者さんが入りやすいといいますし、恐らく睡眠に関する専門病棟とか、そういうことも含めてどんどん機能分化していかなくちゃいけない。そういう意味では、これは差別をするんじゃなくて、機能分化の上でやはりそれを別建てにする。
 それで、先ほど申しましたように、触法の問題については国が責任を持ってやるべきだという主張は曲げられないと私は思っております。
○福島委員 最後の御指摘でございますが、国がやるべきであるというのは、まさに大切な点だろうというふうに思います。山上参考人の資料にございますように、司法精神医療の領域のスタッフの密度というものは、一般の精神医療と比べてはるかに高い。そういう濃密な医療というものを民間が担えというのかという御指摘ではないかというふうに私は思っております。
 そういう意味で、そうした濃密な医療というものが必要であるのであれば、まさにそうした領域こそ公が担うべき、国が担うべき分野ではないか。決してそれは民間の医療機関というものをおとしめるということではなくて、役割を分担することなんだというふうに私も思っております。
 この点については山上参考人にもお聞きをしたいわけでございますけれども、諸外国によりましてもさまざまな水準があるわけでございます。我が国において新たにこうした専門の治療施設を設けるといった場合に、どういう水準を目指すべきなのかということについて御意見をお聞きしたいと思います。
○山上参考人 国によってかなり違いますけれども、ヨーロッパではイギリスが恐らくモデルとなって、そこに近づくような、オランダとか、そういうかなり共通したレベルに達するように、司法精神医学の学会を、あるいは一緒に研修会などを持って努力しておりますので、それに近いものができていくだろうと思います。
 法体系は違いますけれども、ドイツでも、治療のレベルではイギリスにそれほど劣らないだけのものを、州によって違いますけれども、持っております。日本もそういうものをできるだけ目指すことが望ましいと思います。
 ただ、先ほど図で示しましたように、日本の精神医療は、三十三万床のベッドを持って、地域の支えがまだ足りませんから、まず構造が違うわけですけれども、司法精神医療が確立されれば、むしろ多くの病院の開放化を促して、また社会復帰もしやすくなるように、一般のベッドを減らす効果もあるんじゃないかというふうに私は思います。
○福島委員 伊藤参考人にお聞きしたいんですが、法案が成立しても社会復帰が進むわけではないのではないかと。これは、法案を成立させた後にどのような医療の体制をつくっていくのか、ここのところがまさに大切なところだと思っております。
 そしてまた、不幸なことに法を犯してしまった精神疾患の患者さんも適切に治療が行われるということが、再犯の予防ということが書いてありますけれども、最も大切なのは適切に治療が行われるということだろうと私は思っております。
 そういう意味で、専門的な治療施設も大切でございますけれども、もっと大切なことは、退院された後にどういうふうにして治療を継続していくのか。その地域による支えということだと思います。
 それは、単に医療だけの問題ではなくて、生活を支えていくということも非常に必要でございます。住む空間も必要でございます。人間関係も必要でございましょう。そういうものをどういうふうにして我が国で築き上げていくのか。ここのところが欠けてしまえば、新法ができたとしても、社会にとって結果としてよかったということにならないのではないかと思ってしまうわけです。
 この点について、我が国の体制というのはまだまだ足りないところがあると思いますが、伊藤参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
○伊藤参考人 私も、地域医療がまだまだ不十分である、そのとおりに思っております。
 その理由としては、先ほど言いましたように、多くの方が長い間精神病院に入院していますので、地域の中の一員として認知されてこなかったわけです。ですから、まずは、長い間入院している方、社会資源が整えば退院できる方を大勢地域に迎え入れる、そういうシステムをつくることが非常に大事だと思います。
 それで、この法案との関係でいえば、もしこの法案が通って、重大な犯罪を犯してしまったような方だけが別枠で治療されるようなことになってしまうことが、地域医療を進めるのに役に立つどころか、私はむしろ、精神障害者の方はああいうことも起こして別の施設に入れなきゃならないんだというような、そういうことの方が世間の人には先に伝わって、そういう先入観が入っちゃうんじゃないかと。やはり、どんな重大な事件を起こしても、本当に病気で起こした方であれば地域で支えていけるんだよ、そういうことをやっていくことが本当に精神障害者の方の社会参加が進むんじゃないか、そういうふうに思っております。
 そして、現在、随分地域でいろいろな社会資源ができて、かなり重度な精神科の病気を持っている方でも地域で受け入れられるシステムが少しずつできてはきています。そういうものをまずどんどん伸ばすということが私どもに課せられた責任だというふうに思っております。
○福島委員 参考人とは、入り口の部分と出口の部分でちょっと意見が違うんですが、いずれにしましても、当初の段階で司法と医療がきちっと連係するということで適切な処遇を決める。そして、それは決して隔離ということでもないし、またレッテルを張るということでもなくて、適切な医療というものが行われて、そして地域に戻ってくることができる、そういうシームレスの体制というものを築き上げていくことが大切だというように私ども思っておりますので、この審議を通してよりよいものができるように努力をしてまいりたいと思います。
 ありがとうございました。

【佐藤委員質疑】

第154回衆議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第2号(同)
○森委員長 次に、佐藤公治君。
○佐藤(公)委員 自由党佐藤公治でございます。
 本日、お忙しい中、このような時間をいただきましたことを心より感謝を申し上げたいと思います。
 また、時間がないものですから、失礼がございましたらお許しを願えればありがたいとも思います。
 つきましては、私がきょう午前中から参考人の方々のお話を聞かせていただいている中で最も強く感じたこと、また頭の中で整理したことというのは、皆さんの思いというか考えの中で、何を一番優先にした考えを持って御発言をしているのかということになると思います。そこの部分が、最終的な賛成だ、反対だということに結論づけられているのかなという気がすごくする部分があります。
 これは、私の解釈が間違っていたらまた御指摘願えればありがたいと思いますけれども、山上先生のお話を聞き、またほかの方々のお話を聞き、すべて言っていることというのはみんな似たこと、同じような思いがあると思います。例えば、司法精神医学・医療の確立とか、精神医療の現場、人的資源の育成確保、また施設というものの増強、整備、改善、こういうことは皆さんが同じように思われていることだと思います。でも、何でかみ合わないのか。私自身思うことは、一番の優先順位が何かということに尽きるのかなという気がする。
 その中で山上参考人がおっしゃられていたのは、そういう医療現場もよくわかっている、これも変えていかなきゃいけない、でも一番優先しなきゃいけないのは、国民の安心と安全ということを考えた場合には、この緊急性、救急性、また危険性から考えれば、いち早くこれをやらなくてはいけないという視点なのかなと。
 また、中島参考人がおっしゃられていることも私もよくわかる気がいたします。しかし、その最優先というのは、やはり障害者の方々の人道的、人権的、そして、一人でも間違いがあっちゃいけない、こういう部分の優先的なことなのかなということから、仙波参考人、伊藤参考人も同じような仕組みの中でお話をされているのかなと。
 その優先順位ということからすると、賛成派、反対派、大変申しわけございません、山上参考人、仙波参考人、仙波参考人は一歩前進ということで三角から丸ということに考えさせていただけると、賛成と反対というのがはっきり分かれてくると思います。
 そこで、山上参考人、私が今こういうふうにお話しさせていただいた中で、やはり国民の安心と安全ということを第一優先に考える、そして、中島参考人がおっしゃられることも十分おわかりになっていると思います。そこら辺の優先順位に関していかがでしょうか。
○山上参考人 私、今言われたことはかなり当たっているところがあると思います。私が一番強く感じておりますのは、本来なら防止できるはずのものが今の日本では防止できなくて犠牲者が生まれているということで、そこをきちっと司法精神医療を確立して、欧米諸国がやっているのになぜ日本ができないのかというのが第一にあります。
 私は精神障害者の人権の問題も非常に大切だと思っていますけれども、今の現状というのはそういうバランスが余りにも崩れていて、例えば精神病院でも毎年十人以上の方が事故に遭って死亡しちゃうわけですけれども、そういう状況をやはり改善していかなければならないんですが、加害者の側になる方の人権だけが強調されているように私は感じるので、やはりそういうバランスがきちんととれなければ国民の納得は得られないんじゃないか、私はそう感じます。
○佐藤(公)委員 中島参考人にお尋ねしたいと思いますけれども、おっしゃられたことは僕はすごくよくわかるつもりでおります。しかし、では、山上参考人がおっしゃられている、まさに国民の安心とか安全、そして被害者の立場ということを考えたときに、果たして中島参考人が今までおっしゃられていたことがそのまますべて通るのかなという気もする部分もあります。
 おっしゃられることはわからないでもないんですけれども、中島参考人にお尋ねしたいんですけれども、国民のまさに安全や安心、そして被害者の立場を考えた場合にどう思われるのか。いかがでしょうか。
○中島参考人 私の立場に関して、障害者の人権を重視する立場として御紹介いただいて、そうかなと思うところもあるんですが、私としては、基本的には適切な治療を最優先するというふうに考えております。
 そして、私も別に国民の安心や安全はどうでもいいというふうに思っているわけではなくて、事件を起こすこと自体も、障害者、病気の患者さんにとっては非常に不幸なことでもありますし、そういった面で考えても、事件をできる限り防いでいくということは、これは私も日常医療の場面でも基本的に行っていることでありますし、ただ、それで逆に、その人をむしろ過剰に拘禁していないかとか、あるいは薬の投与が多過ぎないかとか、そういったことは日々、問われれば私も非常に困ってしまうというような状況にあります。
 そして、私が申し上げたかったのは、この法案ができても、それによって国民の安心や安全が図られるというデータは全く存在しないということですね。これは先ほど伊藤先生からお話がありましたとおり、重大事件等の再犯というのは非常に少ない、数としては初犯が多いという問題があります。
 それと、被害者の問題というのは、これは非常にやはり切実な問題です。私も、山上先生ほどではありませんけれども、被害者の方々と接する機会、精神障害者によるいろいろな行為の被害者の方々を含めて、被害者の方々と接する機会が少数ですけれどもありました。実際、被害者の方々も思いはそれぞれ多様です。一様ではありません。ただ、そういう方々が非常に声を上げづらい状況にあるということは山上先生御指摘のとおりだというふうに私は思っております。そういう方々に対しても、本当に必要なものは何なのかということをきちんと議論していくということがやはり大事であるというふうに考えております。そういう中での国民の安心、安全ということになるだろうと思います。
 そして、先ほど私が申し上げましたとおり、例えば、精神病院から退院していくときに非常に困難を強いられる。このあたりは、やはり国民の方々のいろいろな、例えば怖いという認識を、それをそのままこちらのものとして受け取るのではなくて、そこに対して働きかけていく。こういうことが必要なんだということを申し上げていきながら、そして議論していきながら、あるいは問題が起こるときにはそれはきちんと対処していく。そういう中でこの問題というのは少しずつ解決されていく問題であるというふうに理解しております。
○佐藤(公)委員 済みません、仙波参考人、伊藤参考人にもお聞きしたいんですけれども、ちょっと申しわけございません、次の質問に移らせていただきたいんです。
 中島参考人にもう一つお尋ねをさせていただければありがたいんですが、山上参考人のこちらの新聞記事の中の、まさに、「反対論の主張のように「完全な判定」が法規定の前提とされるのなら、自傷他害行為の予測に基づく措置入院や、判断能力の推理に基づく責任能力規定など、精神障害に関する現行法規の多くがその存在根拠を失うことになる」、ここの部分というのがすごく僕は大事な部分として挙げられると思います。
 先ほど中島参考人の大変にわかりやすい可能性、判定の説明がありました。こんなにはっきり判定を明確に説明された方というのは私は今までなかったように思います。これだけの判定のことを中島参考人は説明されたわけでございますし、また、措置入院とか鑑定ということに関しても早急に見直すべきだということも御指摘されておりました。
 そういうことからすると、判定ができない、できづらい、わからないという部分、また今話したような部分、こういう部分で、私は医療に携わっているわけじゃない、司法関係のプロでもございません、単純に素人が見て非常にわかりにくい部分があるんですけれども、その辺のあたり、中島参考人、いかが整理し、説明をしていただくことができるんでしょうか。
○中島参考人 いわゆる措置入院自傷他害のおそれと、この新法に基づく再び対象行為を行うおそれの問題に関しては、先ほど私が申し述べましたとおり、これはまず時間の問題がとにかく非常に大きな問題としてあります。
 精神科医は、現在の症状に関してはかなりの部分が、多くの人たちが一致して意見を述べることができると思います。措置入院に関しても、措置入院の適否に関してはその場で二人の精神鑑定医、精神保健指定医が鑑定することになっておりますが、その一致率は非常に高いというふうに考えております。それは、その場でのその人の措置入院が必要かどうかということに関しては比較的できている。
 ただ、これも一人もミスがないかといえば、私はそうは思っておりません。私も措置鑑定をやっておりましたけれども、その場で判定に迷ったことももちろんありますし、例えば、いろいろな状況の中で措置入院にせざるを得ない、そういうようなこともありまして、それで措置入院というふうにした場合もあります。
 そして、それが長期になりますとさらに問題が拡大していきます。その場での急性の精神症状があるなしに関しては一致しない率は非常に低いというふうに考えますけれども、長期にわたって、特に二十年以上の措置入院の場合に、こういうような方々に関しては非常に大きな問題が生じている可能性が高い。このあたりに関して調査が必要であるということは先ほど申し述べたとおりです。
○佐藤(公)委員 こうしていろいろと参考人の皆さん方の本当に貴重な意見を聞かせていただいている中、まさにこれは二つの問題点とも、わかりやすく言うと山上参考人の考え方、本当に一人でも国民の方々の危険がないように安全な形をつくるべきだ、それが責務だ、また、中島さん、伊藤参考人の皆さん方のように、一人でも障害者の方々に差別があってはいけない、間違ってあってはいけない、こういう思いの両方とも僕は正しいと思うんですね。これをどうして並行してきちっとした両立ができるような社会にできないのか、これが一番の問題なのかなという気がいたします。
 そういう部分で私が思うことは、まさにこの国における社会保障制度、福祉、そして国のあるべき姿というのが明確にならない。場当たり的にやってきた政治家の責任というものは非常に僕は重いと思っております。やはりそういうものを真正面で議論をしていかない、逃げてきちゃったというのが実情なのかなと思いますが、伊藤参考人、いかがでしょうか。
    〔森委員長退席、園田委員長着席〕
○伊藤参考人 確かに、いろいろな問題を私たちが抱えながら、それをきちっと現状分析して、どういう政策を国がとるべきか、そういうことにつながらなかったという意味では、私ども精神科医の責任も非常に大きいと思っております。
 この新法案に関しても、そういう総合的な観点からきちっと洗い直して、そしてその中で本当に必要なのかどうか位置づけていただきたい。もう少し現状分析、そして長いスパンを持って、精神障害の問題にどう取り組んでいくか。私は、十分時間を尽くして検討した、そういうふうにはどうしても思えないのです。
 そういう意味では、今からきちっといろいろな調査をし、現状分析をし、この法案、拙速につくるんじゃなくて、慎重な討議を皆さんでやっていただきたいというのが願いです。
○佐藤(公)委員 もう最後になると思いますけれども、仙波参考人にお尋ねさせていただければありがたいと思いますが、お話の中で一歩前進というようなこと。これは午前中にもあった話なんですけれども、私が思うことは、一歩前進というのは、もしかしたら十年後十歩後退ということもあり得るのかな。つまり、一歩前進は、やはり一歩一歩前進し続けていることがいい法律になっていくのかなという気がしますけれども、この先、先ほどからもいろいろな御説明がございましたけれども、今後これをこういうことでやっていく、考えていくに際して、一番大事な継続してやっていかなくてはいけないことは一つ何かといったらば何でしょうか。
○仙波参考人 やはり司法のこの問題は、日本は今まで司法精神医学の領域がなかったわけですから、司法から医療との間に領域がぱかっとあいているような感じなんですね。それはぜひ国の責任でやってもらいたい。だから、立ち上げることこそまずやることなんですね。
 それから、この法律を見ますと、新しい制度があれば、例えば、私たちが裁判官と同じに判定の立場に立つと、我々はどういうふうに判定するのかから、一々私たちがもう一度吟味していくような仕事がいっぱいあるわけですね。そういう意味では、非常に宿題の多い法律ではないかと思います。
 そういう意味では、いわば未熟児とは言わないけれども、それで生まれたようなことで、それをずっと成人に育てるまでに私たちは多くのことをしなくちゃいけない。それには医師も大きな責任を負いますし、成長には司法側も国も大きな責任を負うもので、これはふたをあけてみたら後退であるとは私は決して思いません。精神医療に対してよい影響を与えるものだと私は信じておるところでございます。よろしくお願いします。
○佐藤(公)委員 もう終わりますが、私が思うことは、思いは皆さん一緒なのかなということが改めてわかったかな。法律ができることによって全体の底上げをする、全体の底上げをして環境をつくってから法律をつくる、どっちが先かということになっているのかなという気がいたします。でも、本日は、本当にありがたい御意見、ありがとうございました。
 以上で終わります。ありがとうございました。

【瀬古委員質疑】

第154回衆議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第2号(同)
○園田委員長 次に、瀬古由起子君。
○瀬古委員 日本共産党瀬古由起子でございます。
 きょうは、参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。
 私は、今回提案されている法律で、触法の心神喪失者に対する医療がこの法律によって向上していくのか、そして、どんな医療が行われるのかということが大変大事だというふうに思っております。そこで、山上参考人と伊藤参考人に最初にお伺いしたいと思うんです。
 まず最初に、伊藤参考人の方からも御指摘があったわけですけれども、簡易鑑定の問題を含めて、実際には、検察官が不起訴処分などを決定する際の精神鑑定というものが極めて不十分である。逮捕されてから捜査中に治療がほとんど行われていない。留置場や拘置所に閉じ込められて、病状が一層進んでしまう。そして、結果としては安易な精神鑑定のみで不起訴処分にされるとか、事実上の強制収容であります措置命令で精神病院に収容されてしまう。
 こういう法案に触れられていない検察段階での精神鑑定や治療の継続の問題というのは、私はもっとここは重視しなきゃならない問題じゃないかと思うんですが、その点、山上参考人と伊藤参考人からお伺いしたいと思います。
○山上参考人 今の簡易鑑定の現状にはいろいろな問題があることは事実だというふうに思います。それが、この今回の新しい制度のもとでは鑑定の内容も公開される形になっていくと思いますので、今の簡易鑑定の問題というのは、不起訴事例ですから記録が一切公開されないというところがあるので、こういうシステムが進めば改善されていく余地はあるだろうというふうに感じます。
 また、鑑定も重要でありますけれども、やはり鑑定した後の治療システムの問題がより重要でありまして、鑑定が幾ら正確にされたところで、大変難しい人たちの治療がきちっと対応できるようなシステムがなければ、また今までと同じようなことが繰り返されることになりますので、治療システムの構築が非常に重要であろうというように思います。
 それから、治療継続の問題は、特に触法精神障害者の場合には重要であると思います。私の調査したものの中でも、退院すると直ちにどこかへ住居を変えていなくなってしまうという人たちもたくさんおりましたけれども、やはり社会復帰のときに慎重な準備をして治療を継続すればかなり再犯を防げる可能性のあるものですから、治療をきちんと継続して、安心して社会生活が送れるだけの体制をする。今回の法律の中では、保護観察所あるいは精神保健観察官が中心になってその役割を果たしていくことになっておりますので、これは従来とはかなり違ったしっかりしたものになるんじゃないかというふうに期待しているところです。
○伊藤参考人 今回の法律が運用されるようになりましても鑑定の問題は残ると思います。それはなぜかといいますと、合議体で判定されるように対象者として申し立てされてきたときは、既に鑑定が終わっているんです。その鑑定は従来どおりの精神鑑定とか、不起訴にするかどうかという問題は従来のシステムの中で行われていって、その後このシステムに入ってくるわけです。
 したがって、その前の段階が改善されてなければ、今の問題は最後まで残ってくるわけです。合議体で審判することは、先に行われた鑑定が正しかったかどうかとか、責任能力があるのかどうかということはもう既に終わってからの、この後、再犯のおそれがあって入院命令あるいは通院命令を下すかどうかという判定をする期間ですので、今議員が指摘された問題はこのまま残ることになります。
○瀬古委員 では、その後の治療の問題なんですけれども、今回の法律の政府案では、現行の診療方針とか診療報酬にない治療が行える、厚い治療が行えるんだというお話もございました。
 それで、ここは仙波参考人とそして中島参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、特別な手厚い医療をここでやることで、これはどなたも認めていただけると思うんですが、今の日本の精神医療は大変ひどい状況にある、これを引き上げる、全体を引き上げることになるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
○中島参考人 まず、この指定入院医療機関あるいは指定通院医療機関の中で手厚い医療が行われるかどうかに関しては、少なくとも法案には規定がありませんので、それがどう保障されるかというのが一つ疑問であるというふうに考えております。
 そして、手厚い医療が必要なのは、何もいわゆるこの対象行為を行った人たちだけではありません。いわゆる合併症の問題ですね、精神障害者で体の病気も持たれる方がおります。これらの方々には本当に手厚い医療が必要です。それから、思春期の問題。思春期の方々には本当に手厚い医療が必要です。私は県立病院に勤めていたときに、その必要性を非常に県に働きかけたり、あるいは実態調査をして論文を書いたりということを行いましたけれども、なかなかそれは実現しないというような実態があります。
 そして、実際に、いわゆる触法行為、殺人であるとか、今回対象とされている方々も、それで不起訴になってという方々が対象になっているわけですけれども、その方々も本当に種々いろいろな問題を非常に持っておられます。手厚い医療が必要なのは確かにそういう方ですけれども、御説明ありましたように、入院でかなり綿密な精神療法を行っていくことが適応な方もおられれば、むしろ社会復帰の方向、なるべくうちから近くのところに入院して、そこからいかに社会生活をサポートしていくかということを、入院の初期の時期からサポートしていくような体制が必要な方もおられます。いろいろな方々がおられます。そういう中での手厚い医療ということになると思います。だから、この法案で規定されている手厚い医療が、この対象とされているすべての方にプラスであるというふうに私は考えません。
○仙波参考人 すべてのセクションにおいて手厚い看護は必要なんですね。手厚い人員が必要なんです。今、精神医療がひどいひどいと言われましたけれども、特例の問題も、第四次医療法改正から、現在では、一般科は看護が三対一でございますね。四対一、三対一をとっている病院は、日精協配下でもう七〇%に達しています。どんどん医療の質を上げるために、それは努力しているところでございます。御理解いただきたいと思います。
 それから、さて触法をやった場合に濃厚な医療とは何かということは、我々も大きな課題なんですね。少なくとも、私の体験では、司法精神医学的な、あるいは事件に関することは話題さえもしない、置いておかれるような状況が現在一緒のところなんですね。
 それから、やはり、事件が何で起こったのか、そのとき心理状態はどうなのか、またそういう同じ状態になった場合にどういうふうにあなたは防ぐのかというような心理的な療法は、これは諸外国でもやっているわけですね。そういうことを問われることなく退院していったらどうなるんでしょうか。また同じような状態のときに再犯が起こる可能性は起こってきます。
 再犯率は少ないといっても、なぜかというと、その間に血みどろな医療がかかわっているからです。医療が全く放棄してしまえばもっともっと再犯率は高くなるので、それは医療者はそういうことをさせません。そういうことにかかわった末に、やはり手から漏れたというか、条件が許されないときに再犯が起こるということもありますし、もう一つは、本人の性格の問題とか、攻撃性の問題とか、コントロールの問題とか、そういうやや特徴的なことに対応する治療も必要ではないか。それらを含めて濃厚な治療となるんではないかなというふうに私は思っております。
 以上であります。
○瀬古委員 私も、実は民間の精神病院にソーシャルワーカーとして勤めておりましたので、民間の病院がどういう努力をなさっているかということも十分知っているつもりです。
 しかし、日本の精神医療の制度の中で、やはり診療報酬の低い、実態に合わない中で、そして、御存じのように、日本は海外と違って、もう圧倒的に入院している患者さんが多い。そして、社会復帰施設もまともに配置されていない中で、実際には病院の関係者も大変苦労されているわけですね。これを一気にやはり引き上げなきゃならないというふうに、私はもう本当に切実に思っています。そういう点でもお互いにいろいろ今努力をしなきゃならないなと私も思っています。
 そこで、今回の特定の医療機関で治療を受けた患者さんが外に出てくる、退院するという場合に、地域におけるケアの問題ですけれども、これもこの法案では保護観察所ということになっているんですが、これは実際にはもうとてもやれる状態でないというのは、現場の関係者からも切実な声が上がってきております。
 私も、先日、委員会で取り上げたんですが、社会復帰施設も、じゃ、どれだけあるかというと、全国調べてみますと、全国の市町村に社会復帰施設が一つでもあるというのが一割しかないんですね。大半はもうそういう社会復帰の施設がないまま特定医療機関から退院する患者さんが出されて、その後も、一対一なり濃厚な追跡の治療を受けてもらうということになるかもしれませんが、実際には、やはり、いろいろな社会復帰の施設、地域との連携、通院治療、そういう中で患者さんたちが社会復帰していく、そういうプロセスが大変重要だというふうに思うんですね。
 その点、結局、そういう社会資源やケアする体制が全体的に引き上がっていない中にこういう触法の精神障害者が外に出た場合には、やはりそこで確保できないという場合、またもとどおり再入院という形になってしまわないかということを私は大変心配しています。
 その点で、山上参考人と伊藤参考人に、ぜひ、実際には今の社会復帰の施設などの状況とあわせてどういうふうに考えたらいいのか、お聞かせいただきたいと思います。
○山上参考人 おっしゃるとおりの状況があるわけですけれども、触法精神障害者の場合には、今、そういう受け皿もないところで、ほとんど何の制限もなしに退院して、そしてまた事件を起こしている人が一部にいることは、先ほどのレジュメでも紹介したとおりでございます。
 今回は、少なくとも、その後、退院の準備をし、そこでお世話をして、その監督する人がいるわけですから、そういう再発をしたり再犯しないで済むように、あるいはちゃんとその生活が成り立つようにというお世話をする責任のある人がいるわけですので、これが一つそのきっかけになって、イギリスなんかそうですけれども、司法精神医療の患者のための専門のホステル、グループホームをつくったりとか、そういうことをされていますけれども、そういうものができていくきっかけになるんじゃないかと思います。
 今までのように、何もそういうアフターケアのきちっとしたシステムがない状況よりは改善されるでしょうし、それが一つのモデルとなって、日本の一般の精神医療にも波及できる可能性があるんじゃないだろうかと私は思います。
○伊藤参考人 保護観察所の中に専門のそういう精神保健福祉士を置いてアフターケアを行うということですが、私は、現状ではうまくいかないと思っています。
 二つの問題があります。
 一つは、やはりその患者さんが地域の中で再発せずに安定して生活できるという条件としては、専ら支えるという視点。再犯のおそれがあるんじゃなかろうかとか、また事故を起こすんじゃなかろうか、専らそういう視点で患者さんにかかわっていくということでは信頼関係もできませんし、そして、精神保健観察に当たる方も恐らく、自分で自信がなくなったら、どうも心配だからといって申し立てする、今通院の命令が下って入院でない医療を受けている方に関しても、自信がなくなって入院の医療に持っていってしまうんじゃなかろうか、そういう心配をしております。そういう意味で一つの問題です。
 もう一つは、保護観察所の置かれている場所の数とか、それから精神保健にかかわる方の人数の問題というのは、今明らかになっておりませんけれども、できるだけもともと生活していたところで支えていくというのが原則です。全然違うところでこういう観察に置かれてもうまくいかないと思います。できるだけ従来住んでいた地域で支えていくということにならないと思います。
 そういう意味では、地域ケアを充実するということをまずやらないで、こういう通院のシステムをつくってもうまく動かないんじゃないかというふうに心配しております。
○瀬古委員 時間が参りました。
 参考人の皆さん、どうもありがとうございました。皆さんの御意見を十分参考にしながら、本当に慎重な審議をぜひ続けてまいりたいと思います。きょうはありがとうございました。

【中川委員質疑】

第154回衆議院 法務委員会厚生労働委員会連合審査会会議録第2号(同)
○園田委員長 次に、中川智子君。
○中川(智)委員 社会民主党市民連合中川智子でございます。きょうは、本当にお忙しい中、ありがとうございました。
 私は、ずっとハンセン病問題、いわゆるハンセン病国家賠償訴訟の原告の方々とともに闘ってまいりました。そして、あのときに、一つの大きな教訓として、隔離政策がいかに人権を侵害するか、そしてまた、ハンセン病の療養所もらい予防法も治療の名のもとに隔離をし、そして、いわゆる隔離政策をとったことによって、社会復帰を非常な困難に陥れたと同時に、国民とそして怖い存在だとして隔離された人々との間に埋めがたい溝をつくってしまったということを、私はハンセン病問題で痛感いたしました。
 今回もまた、この新法は、きっちりした治療をするんだということにおいての法の枠組みの中でつくられようとしているわけですが、私は、やはりこれが新たな差別法にならないか、隔離された後、きっちりした治療をされながらも、再犯の予測というものが一つの大きなハードルになって、長い間のその方の人生被害を生んでしまうのではないかということをとても心配しております。
 そのような思いの上で質問をさせていただきたいと思いますが、山上参考人、中島参考人に伺いたいんですが、これが新たな差別法にならないか、隔離政策が、幾ら治療のもとであっても、地域に生きていく、人として社会で生きることを阻害するものにならないかという私の不安に対してのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○山上参考人 運用のされ方とか整備のされ方によっては、そういう危険性がないわけではありません。でも、そういうことをしないように、欧米の司法精神医療が目指しているような、社会復帰まで責任持って推進していくようなものにするのが私の願いでございます。
 そういう長期的な隔離というのは今の措置入院制度のもとでも起きていて、それはむしろ今以上に、やみの中で、五年、十年と入院を続けている人たちもいるわけでございます。それが、より公開された審判の場でチェックされながらされるんですから、より人権が尊重されるような形のシステムができていくでしょうし、あと、それを隔離を増強させるものにしないためというのは、私たちが、医療にかかわる人が努力するべきことであります。
○中島参考人 新たな差別法であるということは、全く御指摘のとおりだと思います。二つの意味で新たな差別法であるというふうに考えております。
 一つは、地域の中での問題ですね。
 これは、私先ほど申し述べました退院のときに非常に大きな困難を強いられることになります。指定入院医療機関上がりであるという形でやはり地域の方からとらえられるということは当然あり得ることですし、そういう方で、不動産屋さんやあるいは大家さんがアパートを貸してくれるでしょうか。そういう問題があります。
 それからもう一つ、医療の中での差別であるというふうに考えております。
 私は、こういう問題で議論をすること自体、非常に苦しい思いをいつもするんですけれども、例えば殺人を犯した人、私の患者さんに数名おられました、そういう方々も私の患者さんなんです。もちろん治療法に関しては、これは個別、いろいろありますから、その人に応じた治療法をしていきます。これは別に、触法行為をした、しないということにかかわりありません。殺人を犯しているからといって、特別な治療をするということではありません。それぞれ皆さんに特別な治療を私はしているつもりです。私の能力の範囲と時間的拘束もありますから、その中でですけれども。
 ところが、この法律は、そういう人々をあえて全部取り上げて、別の処遇を行うということになります。そういう人たちが何らかの形で、この法案の制度から別のところへ出てきて、例えば普通の病院に再入院してきたときに、その中で患者さん同士の差別が生まれないかとか、そういったことだって当然考えなければならないと思います。
 私は、二重の意味で差別法だと思っております。
○中川(智)委員 ありがとうございます。
 続いて、伊藤参考人に伺いたいんですが、再犯予測というのは、私は神様だってできないだろうと思っております。ましてや生身の人が、〇・〇〇何%あっても、やはりそれはわからないわけですから。そこで、一個の人間に対してそのような予測をすること自体が、非常に矛盾を生み、また悲劇を生むものだと思っているんです。
 ここに医師と裁判官の合議ということがございますが、私は、やはり弁護士というか司法の関与というのを、特にその事件なり経過を見てきた弁護士の関与というのが必要だというふうに思いますが、退院時の医師と裁判官での部分に対して、足りないというふうなお考えはありませんでしょうか。伊藤参考人に。
○伊藤参考人 今回の合議体での審判に当たって、一応付添人がつくことになっておりますけれども、その付添人の役割というのは、弁護人の役割とは違いまして、反対尋問をするとかそういうことではありませんので、御本人の再犯のおそれに対する判定に対して誤りがあった場合に、それを正す機能を十分に備えているかどうかということは、ちょっとこの法案の中では疑問があるんじゃないか、そういうふうに思っております。
 それからもう一つは、先ほどから、自傷他害のときに精神科医は判定しているんじゃないかということがありました。既に中島参考人がその違いを述べてくれましたけれども、私はもう一つ、違う法律の体系の中で医師の判断を求められるというのは大きな違いがあるわけです。
 私どもがやっているのは、精神保健福祉法の中で、あくまでも本人の医療とか保健という中で自傷他害のおそれを判断しているわけです。今度は違う法律の中で行われるわけです。したがって、同じ精神科医でも違った状況の中で判定にかかわってきます。そこでは、当然、再犯のおそれがないかどうかというときに、絶対に再犯のおそれがないとは言い切れないという立場をとらざるを得なくなると思います。この法律がそういう法律だからです。
 そういう意味では、自傷他害のおそれを私たちが判定をしているからといって、だからこっちの判定をしても大丈夫じゃないかというのは、私は、そうじゃないというふうに申し上げておきたいと思います。
○中川(智)委員 わかりました。
 続きまして、もう一度中島参考人に。先ほど簡易鑑定の問題に関して瀬古さんが質問をいたしました、山上参考人と伊藤参考人でしたが、この簡易鑑定が適正に行われているかどうか。
 これに対して私は、法務省の方も、実態調査すら、この間、単年度で出したばかりで、それさえもきっちりつかめていない状況の中で、これをこのままに置いてやっていくということに大変懸念をいたしておりますが、中島参考人、この簡易鑑定についてもう少し教えていただきたいんです。
○中島参考人 簡易鑑定に関しては、非常に大きな問題が幾つかあるだろうと思っていますが、簡易鑑定すらなされずに不起訴になっている事例も非常に多数ある、しかも、いわゆる重大犯罪の中でも多数あるということをまず指摘しておきたいと思います。
 それは法務省の資料でも、私は日本精神神経学会の代表として、精神科七者懇談会のワーキングチームの調査チームの中心的なメンバーとしてこの調査に当たりましたけれども、その中でも非常に、簡易精神鑑定すら行われずに不起訴になっているという事例が多数あるということがあります。
 それからあと、簡易鑑定の内容に関しても非常に大きな問題があるというふうに考えておりますが、ただ、簡易鑑定の内容にはアクセスできないんですね、我々は。検討が非常にし切れないという問題があって、それで、我々は例えば病院にいて、簡易鑑定を受けた後で病院に入院してきた方々を漏れ聞いたりとか、そういう形でやるということになります。
 そして、このあたりの問題を実態調査しようとしても、法務省がデータを出してくれないという問題があります。その七者懇談会の方でデータを出してくれという話を出したんですが、幾つかの重要なデータをあえて出さないという形で回答が来てしまいました。それで、毎日新聞社で公開された、各都道府県別の簡易鑑定の実態を調べたものが掲載されたものがありますので、それをもとに私ども検討したことがありますけれども、都道府県ごとのばらつきが非常に大きいという問題があります。これの背景がどこにあるのかということを調査しなければならないんですが、そこも調査できないというありさまです。
○中川(智)委員 続いて、仙波参考人にお伺いしたいんですが、きょうのこの資料の中で、現行制度には多くの問題があり、年々不備が目立ち、医療の対応だけではもはや限界だというふうにお述べになっていらっしゃいまして、先ほども、一生懸命今医療はやっているんだけれども、新たな枠組みとして今回の法律は賛成するというお立場を述べられました。
 報道によりますと、関係団体の賛否は、日弁連から日本看護協会、全法務省労組、国立医療労組、ほとんどの団体が今回の法案に対しては反対で、賛成しているところは日精協とそして日本医師会のみ。私は、やはりもうちょっと本音で、反対に、今のところでこういうところをきっちりしてくれたらばこんな新たな法律は要らないでちゃんとした医療はできるんですが、いろいろその辺の事情があって賛成するんだと、もうちょっと本音で賛成の理由を教えてください。
○仙波参考人 本音で言えということなんですが、現在、精神医療はいっぱい問題を抱えているんですね。しかしながら、私たちが長年このことに取り組んでいまして、国立関係でやる医療の仕事は、触法関係をきっちりやること以外はないんじゃないか。急性期なんかも民間で実はできるんです、金さえあれば。そういうことで、これだけはやってもらいたい。これを整理することによって、こちらの方も整理を進める。今、開放化が進み、医療改革をやるには、やはり触法の問題が大きなネックになっておりますし、これをまず第一段階で打ち上げてほしい。そういうことです。
 他の団体がみんな反対しているのにと言うんですが、私にとっては、本当に真剣にこのことを議論してくれたんだろうかというふうな感じさえあります。一生懸命検討していた団体ももちろんあるんですが、単に予測ができないからこれは反対だと。それで、いろいろな問い合わせをいたしました。そうしたら、他の団体が言っているので、それにみんなよっているというところもありますし、私は、必ずしも団体の数によって成否が決まるものでもないと思っています。そういうふうに思っておりますので、よろしく。
○中川(智)委員 単に予測ができないからということで反対ということでは決してございません、いろいろな方にお話を伺いましたが。今のが本音でしたら、お金の問題もかなり重いですねということを実感いたしました。
 先ほど、中島参考人、横浜の刑務所での医療ということに携わっていらっしゃったというお話がございましたが、刑務所内での医療体制、山上参考人のお話の中でも、やはり刑務所の中で発症する、それが連動していくということが深刻だというふうなお話がございましたが、私も、刑務所の中でのいわゆる精神医療の面で、もっとこの辺をきっちりすべきだと。現実のお話を伺いたいと思います。
 山上参考人に最後に、中島参考人の後に。
 今回のこの法案は、いわゆる池田小学校、私の本当に近所の小学校なんですが、池田小学校事件がきっかけになったと考えているんですが、法案をつくる方々は以前からこの問題はあったというふうにおっしゃいますが、今回の容疑者は今回の法案の対象者にはならないということが委員会ではっきりしました。この人格障害の問題に対して、一言コメントをいただきたいと思います。
○中島参考人 矯正施設内の医療のことに関しては参考文献で挙げまして、「いわゆる「触法精神障害者」問題はどこへ行くのか」という本と「拘置所・一般刑務所における精神科医療」という論文の中で詳細を述べさせていただいております。
 時間が短いので端的に幾つかの点に関して申し述べますけれども、本当に必要な人に対して医療が行われていないという問題があります。御本人が医療を求めても、刑務所の職員の方々が、熱心な方々も結構おられるんですけれども、精神医学的な知識が全く教育されていないという実情のもとで精神症状を見逃していくということが間々あります。御本人たちが希望される場合もそうですけれども、希望されていなくて、例えば規則違反を犯して保護房へ入るというような形の中で精神症状が発覚して、それを私がたまたま、何らかの形でたまたま診ることによって発見するというような事態が非常に多くあります。
 そして、先ほど出所のときのことを私は申し述べました。出所のときに多少のケアがあれば、例えば、紹介状が一通あれば、あるいは薬が数日分あれば、あるいはフラッシュバックに関する知識がきちんと教育されていれば、出所直後の再犯が防げるという事例は多数あります。
 そういったことが全くケアされていない。これは、もちろん国民の方々にとっても、あるいはいろいろな方々にとっても不利益でありますけれども、その再犯を犯す方々にとっても非常に不利益なことであるというふうに考えております。
○山上参考人 人格障害の問題、大阪の事件に関しては、本人が不起訴処分を受けて、そして措置入院をし医療を受けているけれども、ほとんどそれが本人の行動の矯正につながらないで、何度も問題を起こしながらだんだん追い詰められていってという経過を見るときには、やはりこういう司法精神医療がかかわっていれば対応できたのではないかというふうに私は考えます。
 それから、診断の問題に関しては、まだ裁判中でありますので確たることは言えませんけれども、もし人格障害があったとしても、日本の精神医療の現場では、その人格障害の上に妄想反応を起こしたり家庭内暴力を起こしたり、いろいろなことで医療にかかってきます。そういうときに、医療で対応していながら大きな事件になったときは、人格障害だから精神医療の対応でないという言い方は、本当はいいやり方じゃないだろうと思います。もっと早い段階できちんとした対応がされていれば防げる可能性というのは幾らでもあったのではないかというふうに私は思います。
○中川(智)委員 どうもありがとうございました。
○園田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の方々、本日は貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。両委員会を代表して心から御礼を申し上げます。
 本日は、これにて散会いたします。