伊藤真実務法律基礎講座 知的財産法 第2版

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伊藤真実務法律基礎講座 知的財産法 第2版

伊藤真実務法律基礎講座 知的財産法 第2版

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伊藤真氏が、なぜか知的財産法の入門書を書いています。よくこれだけ幅広く書けるものです。私など、一つの法律、それどころか刑法第38条3項という一つの条文すらいまだによく理解できていないというのに、著者のこのような手の広げっぷりは(皮肉でもなんでもなく)見事です。
この本では、特許法から独禁まで一冊でコンパクトにまとめられていて、「憲法民法、訴訟法はある程度理解できている者が知的財産法の大枠を理解する」という目的(はしがきあたりで書かれています)によく適っているかな、と思います。設例の立て方やその解決手順が、いかにも法律系入門書のそれらですから、慣れている読者にとっては平易で読みやすいです。初学者にいちおう説明しておくと、この手の設例では、結論だけ(請求の認否や犯罪の成否)を覚えてもダメで、結論への道筋(どの規定・要件を満たすのか、類似の事例と何が同じで何が違うのか)をしっかりと押さえる必要があり、とくに入門書に出てくる程度の事例なんていうのは典型事例なわけですから、道筋を一通り覚えることが大切です。
 
こうなると次に必要になるのは、入門書と専門書との間の橋渡しになるような本でしょうか。今のところ、伊藤塾では知財関係の資格をサポートしてはいないようですから、詳しいテキストが出る可能性はあまり高くなく、他の著者による入門書に当たることになります。この入門書では、保護対象や特許要件などの分野では記述が詳細なのですが、訂正審判や出願分割などについてはそれほど詳しくないので、まずはそのあたりを補う必要があります。
また、書籍では「実務」とうたっていますが、知財実務のレベルに耐えられるものかといえば、相当に苦しいところです。これについては、特許庁の説明会テキスト(http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/text_list.htm)の実務者向けテキストあたりが使えるでしょう。