民法担保物権

前回(id:kokekokko:20120216)の続き。
【2】先取特権
(1)先取特権
*債権者が、債務者の財産から優先弁済を受ける権利。
先取特権は、法定担保物権。債権の種類によって、当然に発生する担保物権
*付従性、随伴性、不可分性などをもつ。これらの性質を契約で排除することはできない。
(2)一般の先取特権
*共益の費用、雇用関係などによって生じた債権。
*債権者は、債務者の総財産から、優先弁済を受けることができる。
先取特権は、登記なしでも、一般債権者に対抗できる。
(3)動産の先取特権
*不動産の賃貸借、旅館の宿泊などによって生じた債権。
*不動産の賃貸人は、賃料債権について、賃借人の動産から優先弁済を受けることができる。
*賃貸人が、債務者の所有物であると無過失で誤信したときは、先取特権即時取得する。
*目的物である動産が、所有権を取得した第三者に引き渡されると、先取特権は効力を失う。
*引渡しが占有改定であっても、先取特権は効力を失う。
(4)不動産の先取特権
*不動産の保存・工事・売買によって生じた債権。
*不動産の売主は、売却代金とその利息について、売却不動産から優先弁済を受けることができる。
先取特権の効力は、以下によって保存できる。
 +保存の先取特権は、保存行為の後ただちに登記する
 +工事の先取特権は、工事を始める前に予算額を登記する。
 +売買の先取特権は、契約と同時に登記する。
*保存・工事の先取特権は、登記により、先に設定されている抵当権に優先することができる。
先取特権の目的不動産の所有権を取得した者は、先取特権者に提供して承諾を得た金額を払い渡して(または供託)、先取特権を消滅させることができる。
(5)先取特権の優先
*一般の先取特権と特別の先取特権(動産・不動産)が競合する場合には、特別の先取特権が優先する。
*ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する。
*一般の先取特権は、登記をすることによって、その後に登記された特別の先取特権に優先する。
 
【3】質権
(1)質権
*債権者が、担保として受け取った物を留置する。
*被担保債権の弁済を間接強制し、弁済されないときは目的物を競売して優先弁済を受ける。
*質権は約定担保物権であり、当事者の契約によって発生する。
*質権者は、目的物に対して優先権を有する債権者(特別の先取特権を持つ者など)には、引渡しを拒絶できない。
*付従性、随伴性、不可分性、物上代位性がある。
(2)成立要件
*目的物の引渡しがないと、効力は生じない。
*占有改定は、引渡しに含まれない。設定者(債務者側)が質権者に代わって目的物をひきつづき占有することはできない。
*ただし、質権が成立した後で目的物が設定者に返されても、質権は存続する。
(3)効力
*質権者は、果実を収取して、自己の債権の弁済に充当することができる。
*まず利息に充当し、残りを元本に充当する。
*質権者は、債務者の一般財産からも、弁済を受けることができる。
*被担保債権は、元本・利息だけでなく、違約金・損害賠償、目的物の瑕疵による損害賠償なども担保する。
(4)動産質
*動産質は、目的物の占有が対抗要件。目的物を設定者に返すと、第三者に対抗できない。
*質権者は、占有回収の訴えによってのみ、占有回復できる。
*動産質は、即時取得できる。債権者が、善意・無過失で質権設定を受ければ、質権を取得する。
(5)不動産質
*不動産質は、登記が対抗要件。占有を失っても、第三者に対抗できる。
*ただし、質権効力発生の要件は、引渡し。
*不動産質は、目的物を使用収益することができる。
*管理費用を負担しなければならない。
*債権の利息を請求できない。
*存続期間は10年以内。更新はできる。
(6)権利質
*債権・株式などを目的とする質権。
*債権質は、合意によって効力を生じる。
*証書の交付が必要な債権は、その交付によって債権質の効力を生じる。
*指名債権の債権質は、その債務者への通知または承諾がなければ、対抗できない。
*債権質が設定されると、その債務者は、弁済することができない。
*債権質設定後に取得した債権による相殺も、質権者に対抗できない。
(7)債権質の効力
*債権質では、質権者が、債権を直接取り立てることができる。
*金銭債権では、質権者は、自己の債権額に相当する部分を取り立てることができる。
*質権の被担保債権の弁済期のみが未到来であるときは、質権者は、第三債務者に対し、弁済金額を供託するように請求できる。
*その場合に、質権は、供託金への請求権の上に存続する。