民法担保物権
前回(id:kokekokko:20120220)の続き。
【4】抵当権
(1)抵当権
*設定者が、目的物を占有しつづけ、使用収益することができる。
*登記による公示が必要。抵当権の目的物は、公示可能な不動産・地上権・永小作権。
*抵当権は約定担保物権であり、当事者の契約によって発生する。
*抵当権は、付従性、随伴性、不可分性、物上代位性があり、優先弁済権を有する。
*債務者を異にする数個の債権を担保するために、1個の抵当権を設定することはできる。
(2)付従性
*被担保債権が無効であるときは、抵当権は効力を生じない。
*被担保債権の額を減少させる和解をしたときは、抵当権の効力は当然に減縮する。
*抵当権設定の時点で現に被担保債権が存在している必要はない。将来発生する再建のために抵当権を設定することは、できる。
(3)物上代位性
*目的物が滅失しても、抵当権は、別の物の上に存続することができる。
*目的物が賃貸された場合には、賃料に物上代位できる。
*ただし、転貸賃料には物上代位できない。
(4)優先順位
*1個の目的物に複数の抵当権を設定することは、できる。
*優先順位は、登記の順序による。
*順位を変更することはできる。登記によって、順位変更の効力が生じる。
*利害関係人がいる場合には、変更の承諾を得る必要がある。
(5)付加一体物
*抵当権の目的不動産については、その付加一体物にも、抵当権の効力は及ぶ。
*無権限の者が他人の土地に植えた樹木は、土地に附合する付加一体物である。
*しかし、権原に基づいて樹木を植えて、その物が独自性を維持している場合には、土地に附合せず、所有権は元の所有者にある。
(6)従物
*従物は、独立性を維持しているために、付加一体物とはならない。しかし、主物の処分の効果は、従物に及ぶ。
*抵当権設定当時に存在した従物については、抵当権の効力が及ぶ。
*抵当権設定後に生じた従物については、抵当権の効力が及ばない。
*土地の従物の例は、庭石。建物の従物の例は、地下タンク。
*借地権は、建物の従たる権利であり、従物として扱われる。
(7)果実
*果実は、従物と異なり、抵当権の効力は及ばない。
*ただし、被担保債権に不履行があったときは、抵当権はその後に生じた果実にも及ぶ。
(8)抵当権の侵害
*抵当権について認められる物権的請求権は、担保価値減少に対する妨害排除請求権。
*優先弁済権の行使が困難になるときは、抵当不動産の不法占拠者の排除を請求できる。
*抵当権の目的物である山林の上にある立木が、通常の用法を超えて無断伐採された場合には、抵当権者は、搬出禁止を請求できる。
*債務者が抵当目的物を滅失・毀損したときは、抵当権者はただちに抵当権を実行できる。
*第三者が抵当目的物を滅失・毀損して担保価値を失ったときは、抵当権者は不法行為に基づく損害賠償を請求できる。
(9)共同抵当
*1つの債権の担保のために、複数の不動産に抵当権を設定すること。
*同時配当は、複数の不動産を同時に競売すること。このとき、後順位抵当権者の公平を図る。
*同時配当では、被担保債権は不動産価額に応じて割り付けられる。共同抵当権者は、その額の範囲内で優先弁済を受ける。
*ただし、目的物の一方が物上保証人の不動産であるときは、割付を行わずまず債務者の不動産を弁済に当てる。
(10)共同抵当の異時配当
*異時配当は、複数の不動産を順に競売すること。
*異時配当では、同時配当と同様の結果になるように調整する。
*共同抵当権者は、債権の全額について、競売不動産から優先弁済を受ける。
*競売された不動産の後順位抵当権者は、同時配当と同様の結果になるように、他方目的物の抵当権者に代位できる。
*目的物の一方が物上保証人の不動産であるときは、債務者の不動産の後順位抵当権者は、代位できない。
*物上保証人の不動産が先に競売されたときは、物上保証人は、全弁済額について債務者の不動産上の抵当権に代位できる。