HTMLブラッシュアップ(3)物理装飾要素・属性を使う場面

・FONT要素のFACE(フォント名指定)属性
 FONT要素は、HTML4.0以降において、非推奨要素とされた要素である。FONTの役目は、文字サイズ、文字色、フォント名(明朝体とかゴシックとかの字体であると考えていただきたい)の指定である。これらの指定にはなるべくスタイルシートを用いよ、とされている。
 ところが、フォント名については、スタイルシートでは十分に対応できないのである。
 ある要素・属性が「非推奨要素」とされるためには、必ず他の要素・属性やスタイルシートで代用されている必要がある。そうでないと、制作者は非推奨要素を使用するか、その表現方法を放棄するしかない。文法を忠実に守ってそれで表現方法が制限されるというなら本末転倒である。

 で、FONT要素のFACE属性の代わりになるスタイルシートは、「font-family」プロパティである。ところが、これをスタイルシートで使用するとやや困難な問題が起こる。ネスケ4.Xでは日本語フォントをスタイルシートで使用すると、スタイルシートが全面的に無効になってしまうのである。これでは日本語フォントの指定を躊躇してしまう。かといって、英文フォントを日本語の文字に指定するのは理屈が通らない。フォントに対応する文字がないから空白になるはずである(IEではこの場合、指定されたフォントに類似したもので代用表示される)。
 一方、FONT要素のFACE属性では、ネスケでもIEと大差なくきちんと表示されるのである。
 そうなると、ブラウザ間の性能差(これは「font-family」プロパティに固有の問題ではなく、スタイルシート全般に言えることだが)を解消するために、FONT要素を使用するのもやむを得ないといえる。

 ・背景色(BODY要素のbgcolor属性)
 構造さえしっかりしていれば(つまり、ちゃんと文章が読めれば)、色はどうでもよい、と考えている制作者はそう多くはないであろう。たいていは、文字色や背景色について、いろいろ試しながら検討しているのである。
 ところが、色については、文字色、背景色、ボーダー色など、すべて「非推奨要素(属性)」とされた。色は、表現に関する部分であるからHTMLでは記述しない、とされたのである。

 ところで、インライン要素やブロックレベル要素については、その「意味」(「強調」であるとか「見出し」であるとか)についてはHTMLで記述される。では、その文書自体の、サイトにおける「意味」はどうやって記述するのであろうか。「章」や「項目」や「もくじ」や「最初の文書」であることなど、文書自体の性質・意味というのは、HTMLではLINKタグを使って指定される。ところが、Lynxなどを除いた一般的なブラウザでは、LINKタグを使った指定は反映されない。もくじだからといって大きい文字で表記されるわけではなく、項目だからといって青い背景で表示されるわけでもない。LINKタグは何ら表現に関与しないのである。
 しかし、サイトを作る側としては、文書の「性質」「テーマ」ごとに表示方法を統一しておきたいというのは自然な考え方であろう。で、ページの中の各部分にHTMLの記述で意味を持たせることが許されるのなら、同様に、ページ自体にHTMLによって意味をもたせることも許されていいであろう。

 そのための手段として、背景色をHTMLで指定するのは、代替手段がない以上仕方ない。つまり、そのページの性質であるとかサイト全体に対する位置付け、あるいはサイト全体の性質に関する情報というのは、BODY要素で表現するのが最も早いのである。
 また、表の中身が例示部分や図示部分であることを示す場合、そこが単なる段落ではないことを示すために背景色で区別させるというのも、同様であろう。
 ただ、色を使って表現や区別をするというのは、ウェブサイトでは歓迎されていない、ということにも注意しなければならない。

 ・改行(BR要素)
 改行要素の使用法については明白である。文字どおり、改行である。
 ここで言いたいのは、改行要素も、CENTER要素と同様、「意味」をもたずにブラウザ上の表現効果だけを物理的に持たせる要素である、ということである。
 つまり、このタグも、「非推奨要素」とされうる性質の要素ということである。この点については、明記している参考書は少ないが、改行はレイアウト目的なのである。内容の意味が改行の前後で変化するというのであれば、ブロックレベル要素を使用すると自然に発生する改行を使うべきなのである。

 ただ、レイアウト目的の改行については、BR要素と完全に同様に表現するような方法がないので、スタイルシートを使用するわけにもいかない。であるから、この要素についても、使用していくのはやむをえないのである。

 こうしてみてみると、物理装飾要素でも「代替手段がない場合」や「意味を持たせたい場合」には、使用できるということになろう。