ジュリスト増刊 精神医療と心神喪失者等医療観察法

4/5で紹介した雑誌です。確かにかなり良い本なのですが、総論的・入門的な文章がないので、心神喪失者処遇の問題についてはじめて取り組もうとする方などは、何から手をつけていいのかわからないかもしれません。
おおまかに言えば、それぞれの章の最初にある論文が、総論的にまとまっています。最初に読むときには、立法の経緯(白木功)、精神保健福祉法心神喪失者等医療観察法(町野朔)、触法精神障害者の危険性をめぐって(五十嵐禎人)、責任能力制度と精神医療の強制(林美月子)、精神医療における自由と強制(1)(丸山英二)あたりからとりかかるといいと思います。以下目次。
I 心神喪失者等医療観察法

立法の経緯 白木功
審判手続を中心に 白木功
医療を中心に 三好圭
保護観察所の役割について 蛯原正敏
II 司法と精神医療
1 触法精神障害者――問題の広がりと深層 中谷陽二
2 刑事施設における精神医療 黒田治
3 人格障害に罹患した犯罪者の処遇 ――イギリス国内裁判所・欧州人権裁判所の判決を手がかりに 柑本美和
4 精神保健福祉法心神喪失者等医療観察法 ――保安処分から精神医療へ 町野朔
5 責任能力の概念 ――医療から 西山詮
6 責任能力の概念 ――法律から 岩井宣子
7 責任能力の概念と精神医療のあり方 山上皓
8 司法的判断と医療的判断 前田雅英
9 触法精神障害者の危険性をめぐって ――刑事司法と精神科医療の果たすべき役割 五十嵐禎人
10 被害者ケアから見た触法精神障害者の問題 ――心理学的視点からの検討 小西聖子
III強制入院と強制治療
1 強制治療システムとその正当化根拠 ――アメリカの憲法判例を中心に 権藤田誠
2 責任能力制度と精神医療の強制 林美月子
3 警察・検察と措置入院 ――批判の整理と解決の方向性 近藤和哉
4 強制治療システムのこれから 川本哲郎
5 触法精神障害者と検察官の訴追裁量権 ――心神喪失者等医療観察法における検察官の役割を中心として 加藤久雄
IV処遇
1 精神医療における自由と強制(1) 丸山英二
2 精神医療における自由と強制(2) 斎藤正彦
3 精神病院の処遇 浅井邦彦
4 心神喪失者等医療観察法における「医療を受ける義務」 東雪見
5 心神喪失者等医療観察法における社会内処遇 柑本美和
6 地域精神医療 ――カリフォルニア州CONREPの試み 本間玲子
7 触法精神障害者と処遇困難患者の問題 ――刑事政策と精神科医療のはざまで 高柳功
8 措置入院制度の運用と処遇困難患者問題 武井満
9 心神喪失者等医療観察法施行後の規制薬物乱用者に対する処遇 平井慎二
10 精神障害者による他害事故と損害賠償責任 辻伸行
11 精神障害者の保護者 池原毅和
Vこれからの日本の精神医療を考える
1 わが国の精神科医療の歴史 ――精神保健法成立まで 風祭元
2 現状と問題点 仙波恒雄
3 日本の精神医療の今後の課題 ――台湾の精神医療と比較して 林憲
4 今後の展望と課題 ――日本と韓国との比較 趙晟容
5 刑法改正問題と精神医療 浅田和茂
6 精神医療へのアクセス ――移送問題について 山本輝之
7 精神保健福祉施策の現状と課題 三好圭
8 司法精神看護の役割と課題 羽山由美子
9 心神喪失者等医療観察法」における社会復帰・地域支援制度の諸問題 ――英国との比較を通して 三沢孝夫
10 国際人権原則と心神喪失者等医療観察法 ―― 審判手続を中心として 永野貫太郎
11 マスコミから見た精神医療 南砂
資料編
  心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律 <全条文>
資料1 心神喪失者・心神耗弱者の罪名別処理結果
資料2 資料2 心神喪失者・心神耗弱者の他害行為時の治療状況調べ (平成8〜12年)
資料3 責任無能力等の状態で犯罪に当たる行為をした者の入院処遇に関する外国法制
資料4 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律の概要
資料5 審判手続の概要(検察官の申立て)
資料6 審判手続の概要(入院患者に係るもの)
資料7 審判手続の概要(通院患者に係るもの)
資料8 心神喪失者等医療観察制度における処遇の流れ
資料9 地域社会内処遇の実施体制についてのイメージ