不正アクセス禁止法についての雑考

一部学説があちこちで紹介されていますが、おそらく論者は「電子計算機の利用とは有体物としての電子計算機の利用を指すべきだ」と言っているのではなく、「そうなってはならないけれど、文言からはそうなってしまう」と言っているのでしょう。
もしも「不正アクセス禁止法の文言からは、電子計算機の利用とは有体物としての電子計算機の利用を指すことになるので、個々の情報処理を指すのではない」なんていう判決が仮に出れば、論者もそれを、「情報セキュリティの観点からは不当な判決だ」と評するでしょう。たぶんですが。

規制対象とすべき「不正アクセス」行為を考えるならば、それはサーバ等のコンピュータに対するアクセス行為を問題とするのではなく、サーバ等の保有するデータに対するアクセスを問題とすべきである。(「不正アクセス」対策法制の意義)

 
また、高木浩光@茨城県つくば市 の日記さんも、立法・行政による解決を提案しています。「立法者の意図を推定してみた」ところ、結局「明確に定義されてはいない」から、「行政による明確化を」としています。私も、このあたりに落ち着くのかなと思います。

この犯罪は法定犯なのであるから、ズバリ線引きをしていってもかまわないのではなかろうか。つまり、裁判所の判断を待つのではなしに、何かしらの相談をもって案を示し、パブリックコメントを活用するなどして、具体的にどれが該当行為で、どれが該当しない行為であるのかの例示を、どんどん政府から公示していくなどしてもよいのではないだろうか。