タイムライン

おそらく観た人の評価が分かれる作品でしょう。そして私は好きです。
 
現代のハイテク企業が時間・空間移動の方法を偶然見つけます。でもって、遺跡発掘調査の一味が、自分たちが発掘している遺跡が使われていた時代(中世フランス)にタイムワープ、そこでは歴史に残る戦闘が繰り広げられていて、主人公一味は冒険に巻きこまれる。というわけでこの作品は、おおまかに、SF的要素とアクションファンタジー的要素とに分けることができます。
SFのほうはよかったと思います。ただ、伏線は重いです。序盤は何が何だかわからないまま伏線だけが進みます。しかしそのあたりの出だしの鈍さにガマンできれば、あとはスムーズに進むことができるので、けっこう楽しめます。
 
いっぽうのアクション編はイマイチでした。まず、実在の固有名詞が出ているので、イメージが崩れます。現代アメリカ人が中世フランスに行って違和感がないというのが、不自然です。でもって、主人公たち全員の戦闘力が低いので、みんな基本的に逃げ回ってばかりです。ハラハラ感があっていいのですが、やっぱり一人くらいは頼もしい肉体派キャラを置いてほしいところです。そういう人物がいないということで観る側の共感を呼びたかったのかもしれませんが、私には多少もどかしかったです。
それと、おいしそうなキャラがいるのに使いきれていないというのも気になりました。たとえばイギリス軍についている元社員。彼をうまく使えば、この物語が単なる善対悪の戦いではない絶妙な絵巻になる可能性がありました。そうなれば、ロード・オブ・ザ・リングでもできなかった人間ドラマが描けたかもしれなかったのです。しかし残念なことに元社員は、悪の会社の悪の一員という単純な位置づけに終わってしまいました。そのおかげで、フランス軍が正義の軍隊ということになってしまって、やっぱりイメージが崩れました。
 
主人公一味が、歴史を変えようとする人間と歴史を守ろうとする人間とに分かれ(そのためだったら「遺跡発掘チーム」という設定も活きてきます)、それぞれの思惑と苦悩がにじみ出るような話だったら、もっと説得力があったでしょう。そしてそのためには、捕虜の女には生き延びてほしくなかったところです。
結局、ハイテク企業=裏で悪を働き儲ける組織、という固定観念を捨てれば(多少シナリオが複雑にはなりますが)、もっともっと味のある作品になったような気がします。