（資料）責任に関する条文・審議（その25・現行刑法〜第二次大戦-24-）

前回（10/22）のつづきです。初回は6/7。改正治安維持法説明（案）です。

第五十八条
一、本条ハ予防拘禁ニ付セラレタル者ノ退所ニ関スル規定ナリ。予防拘禁ニ付セラレタル者ト雖モ、収容後全ク改悛シ再犯ヲ犯スノ危険消滅スルニ至リタルトキハ、予防拘禁ノ執行ヲ継続スルノ必要ナキヲ以テ、第五十五条ニ規定スル期間ノ満了ヲ待タズシテ之ヲ退所セシムベキコトハ保安処分タル性質上当然ニシテ、本法ニ於テハ、此ノ場合行政官庁ノ処分ヲ以テ之ヲ退所セシムルコトヲ得ベキモノトス。茲ニ所謂退所トハ残余ノ期間ニ対スル予防拘禁ノ執行ヲ免除スベキ命令ト之ガ釈放ヲ為ス事実行為トヲ併セ内容トスル行政処分ナリ。退所ノ処分ハ本人ノ自由ヲ恢復スル行為ナルヲ以テ之ヲ制約スルガ如キ手続ヲ規定スルノ要ナキモノノ如シト雖モ、半面其ノ処分ヲ誤ルニ於テハ治安上危険ナル者ヲ社会ニ放任スルコトトナリ、予防拘禁制度ヲ設ケタル趣旨ヲ没却スルノ結果ヲ生ズベキヲ以テ、慎重ヲ期スル要アリ。因ツテ行政官庁ガ退所ノ処分ヲ為スニハ、予メ予防拘禁委員会ノ意見ヲ求ムルヲ要スルモノト為シ、本条第二項ニ於テ之ヲ規定シタリ。
二、本条ノ行政官庁ハ予防拘禁所ノ長タラシムルヲ適当トスルヲ以テ第六十四条ニ基キテ発スル命令ニ於テ之ヲ規定スベキモノトス。而シテ、実際ノ運用ニ於テハ、司法大臣ニ稟議セシメ其ノ決裁ヲ俟チテ退所セシムル予定ナリ。
三、退所ハ裁判所ヲシテ之ヲ為サシムルコトヲ相当トストノ意見アリ得ベシ。然レドモ、本条ノ処分ハ予防拘禁ニ付スル場合ト異リ、本人ノ利益ノ為ノ処分ナルノミナラズ、刑事訴訟法ニ於テモ亦受刑者ノ仮出獄ニ付行政官庁ノ処分ニ依ルコトガ認メラレ（刑法第二十八条）、且其ノ実蹟ニ徴スルトキハ本条ノ如ク行政官庁ノ処分ニ委スルヲ適当トスベシ。