精神医療に関する条文・審議(その3)

前回(id:kokekokko:20041029)のつづき。
国会提出時の精神衛生法案です。成立した精神衛生法と内容はほぼ同じで、句読点の打ち方などが異なる程度です。というわけで、会議録での表記があきらかに誤記であると思われるときでも、そのまま掲載することにしました。

精神衛生法案(昭和25年参法第3号)【法と差異がある条文のみ掲載】

  第二章 施設
第四条 【第1項略】
2 都道府県が精神病院を設置し、又はその施設を増築し若しくは改築しようとするときは省令の定めるところにより、設備、構造その他設置計画の概要について厚生大臣の承認を受けなければならない。
【第3項略】
第七条 【第1項略】
2 精神衛生相談所は、精神衛生に関する相談及び指導を行い、又精神衛生に関する知識の普及を図る施設とする。
第八条 国は、都道府県又は指定市が前条の施設を設置したときは、その設置及び運営に要する経費に対して政令の定めるところにより、その二分の一を補助する。
 
  第三章 精神衛生審議会
第十五条 精神衛生審議会は、厚生大臣の諮問に答える外、精神障害に関する原因の除去、精神障害者の診察及び治療の方法の改善、精神障害者発生の予防措置その他精神衛生に関して関係大臣に意見を具申する。
 
  第五章 医療及び保護
第二十三条 【第1項・第2項略】
3 虚偽の事実を具して第一項の申請をした者は、六ヶ月以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。
第二十四条 警察官又は警察吏員は、警察官等職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)第三条の規定により精神障害者又はその疑ある者を保護した場合においては、直ちに、もよりの保健所長に通報しなければならない。
【第2項略】
第二十六条 矯正保護施設(拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院及び少年保護鑑別所をいう。以下同じ。)の長は、精神障害者又はその疑のある収容者を釈放、退院又は退所させようとするときは、あらかじめ、左の事項を本人の(帰住地がない場合は当該矯正保護施設の所在地)の都道府県知事に通報しなければならない。
【第1号以下略】
第二十七条 都道府県知事は、前四条の規定により申請又は通報のあつた者について調査の上必要があると認めるときは、精神衛生鑑定医をして診察させなければならない。
【第2項・第3項略】
4 前項の規定につてその者の居住する場所へ立ち入る場合には、精神衛生鑑定医及び当該吏員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があるときはこれを呈示しなければならない。
【第5項略】
第二十八条 【第1項略】
2 後見人、親権を行う者、配偶者その他現に本人の保護の任に当つている者は、前条第一項のの診察に立ち会うことができる。
第二十九条 【第1項略】
2 前項の場合において都道府県知事がその者を入院させるには、二人以上の精神衛生鑑定医の診察を経て、その者が精神障害者であり且つ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めることについて、各精神衛生鑑定医の診察の結果が一致した場合でなければならない。
【第3項・第4項略】
第三十九条 精神病院の長は、入院中又は仮入院中の者で自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれのあるものが無断で退去しその行方が不明になつたときは、所轄の警察署長に左事項を通知してその探索を求めることができる。
【第1号以下略】
第三十三条【条文の位置は第43条だが会議録では「第三十三条」と表記されている】
【第1項以下略】
第四十六条 【第1項・第2項略】
3 第一項の規定に違反した者は五万円以下の罰金に処し、第二項の規定に違反した者は五千円以下の科料に処する。
 
  附則
【第1項・第2項略】
3 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
 第五条中第二十七号を次のように改める。
 二十七 都道府県が精神病院を設置し、増築し、改築し、若しくはその設置を延期しようとする場合又は都道府県知事が精神衛生法(昭和 年法律第 号)の指定病院を指定しようとする場合にこれを承認すること。
【後略】
【第4項略】
5 家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)の一部を次のように改正する。
  第九条第一項甲類第十九号中「、監置等」を削る。

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衆議院での審議です。立法の趣旨などが明確に打ち出されています。

厚生委員会議録第22号(7衆昭和25年04月05日)
○松永委員長代理 次に精神衛生法案を議題として審査に入ります。まず提案者より提案理由の説明をしていただくことにいたします。中山壽彦君。

○中山参議院議員 提案理由の御説明を申し上げます。
 現在精神衛生に関する法律といたしましては、精神病者監護法と精神病院法の二つがございます。精神病者監護法は明治三十三年の制定にかかるものであり、また精神病院法は大正六年につくられたものであります。前者につきましては制定されましてから五十一年間、後者につきましては制定後三十三年間、その間いまだ一回も改正を見ずして今日に至つているのであります。当時の精神病者の推定数は十万ないし二十万と言われておりましたが、今日においてはその数六十四万人に及び、なお今回の法案で精神障害者として対象といたしました精神薄弱者及び精神病質者を加えますと、実に三百二四万人ないし四百万人の多きに及ぶことになるのであります。かく精神衛生の面における治療及び保護対象が増加いたし、また精神医学もその間に急速の進歩をいたして来たにもかかわらず、これを規律する法律はいまだに明治年間の衣を着たままであります。
 精神病者監護法はもつぱら精神病者の不法監禁を防止することを主たる内容とするものでありまして、題名は監護法でありますが、実質は精神病者の監置法ともいうべきものであります。すなわち精神病者を監置できる者を保護義務者に限つたことがそのねらいでありましていわゆる座敷牢の制度を特定の者について合法化したものとも言えるのであります。しかし座敷牢制度の制限だけでは精神病者は救われないことも明らかであり、それから十七年後に制定された精神病院法は、精神病院を府県に設置し、犯罪傾向のある精神病者、身寄りのない精神病者をまず収容することにいたしたのであります。
 この二つの法律によつてまかなわれて来た精神衛生行政の現状を見まするに、現在全国における公立及びこれに代用される精神病院のベット数は二万床を持つにすぎません。欧米における施設は人口二百人ないし五百今に対して一つの率でベットを整備いたしております。わが国の現状は人口四千人に対して一つの率でありますから、これを国際水準に比べますと、いまだその十分の一を満たすにすぎないのであります。このペット数の不足から、現在病院に収容することができず、座敷牢にある者の数は二千六百七十一人に達しておる実情であります。健全な社会の発展のためには、身体に対する衛生と並んで、精神衛生が不可欠であることは申すまでもございません。それは車の両輪ともいうべきものでございます。
 ここに提案しようといたしまする精神衛生法案は、この立遅れ、取残されて来た精神衛生行政の車を一刻も早く前進させまして、心身ともに健康なバランスのとれた国民社会が達成されることを願つたものであります。
 法案の大要について申し上げますと、第一に、この法案は、いやしくも正常な社会生活を破壊する危険のある精神障害者全般をその対象としてつかむことといたしました。従来の狭義の精神病者だけでなく、精神薄弱者及び精神病質者をも加えたのであります。第二に、従来の座敷牢による私宅監置の制度を廃止して、長期にわたつて自由を拘束する必要のある精神障害者は、精神病院または精神病室に収容することを原則といたしました。これがために精神病院の設置を都道府県の責任とし、また入院を要する者で経済的能力のない者については、都道府県において入院措置を講ずることとし、国家はこれらの費用の二分の一を補助することといたしました。
 第三に、医療及び保護の必要な精神障害者については、警察官、検察官、刑務所その他の矯正保護施設の長のように、職務上精神障害者を取扱うことの多い者には通報義務を負わせるほか、一般人はたれでも知事に医療保護の申請ができることにして、その医療保護が必要であるにかかわらず与えられざる者なきを期して、国民のすべて協力する態勢をつくりたいと考えたのであります。
 第四に、人権躁躙の措置を防止するため、精神病院への収容にあたつては、真の病気域外の理由が介入しないように注意いたしました。すなわち精神衛生鑑定医の制度を新たに設け、その二人以上の鑑定の一致あることを病院収容の条件といたしたのであります。
 第五に、自宅において療養する精神障害者に対して巡回指導の方法を講ずるほか、精神衛生相談所を設けまして、誤つた療養による弊害を防止するとともに、さらに進んで精神衛生に関する知識の普及に一般の努力を払うことといたしました。
 第六に、精神衛生行政の推進と一層の改善をはかるため、精神衛生審議会を厚生省の付属機関として設置し、関係行政庁及び専門家の協力によつてこの法律の施行の万全を期することといたしました。
 以上が精神衛生法案に盛られた内容の大要でございます。何とぞ慎重御書議の上御可決あらんことをお願いいたします。

○松永委員長代理 本案に対しまして御質疑はございませんか――別に御質疑もないようでありますから、次に医療法の一部を改正する法律案を議題にいたします。
【略】

厚生委員会議録第23号(7衆昭和25年04月07日)
○松永委員長代理 【中略】
 精神衛生法案を議題といたします。本日はまず参議院法制局第一部中原第一課長より、前回聴取いたしました提案理由の説明の補足説明を聴取することといたします。中原説明員。

○中原参議院法制局参事 逐条的に法案の内容について御説明申し上げます。
 この法案では現在行われております精神病者監護法と、精神病院法と幾分の関連はございますが、大部分の規定が新しい規正でございます。関連のある部分については、現在の法律との比較対象もあわせて申し上げることにいたします。
 第一章は総則でございますが、現在の精神病者の監護法は精神病者を監置するということだけを規定いたしております。不法監禁を防止するという観点からのみ精神病者監護法というものができ上つております。精神病院法は精神病院を設置するということだけが規定されております。この法案におきましてはそういう個別的な観点でなくて、精神障害者の医療、保護、さらに進んでの予防までもあわせて総合的に行うという立場をとることにいたしております。それが第一条にこの法律の目的として規定されております。そういう観点から国及び地方公共団体は医療施設を整備することによつて、また教育施設のうち精神障害者に対する特殊学級というものを整備することによつて、またある程度治療を終えたものに対しては、社会へ復帰するために必要な適応性を強化して行くという施設も整備することによつて、精神障害者の社会性に対する適応性を高めるように努力するとともに、一般の国民に対しましては精神衛生に関する知識の普及向上をはかつて、でき得れば予防面にまで力を注がなければならないということが第二条に規定されております。
 第三条におきましてはこの法案が対象といたします精神障害者の範囲を規定してあります。従来は精神病者、しかもその精神病者のうち社会生活に極度に弊害を及ぼすものだけを取上げておりましたが、この法案におきましてはいやしくも正常な社会生活の発展の上に少しでも障害になるような精神上の障害を持つものは全部対象といたしまして、精神病者のほかに精神薄弱者、精神病質者も加えたのであります。これによりまして精神障害者は三百三十万から四百万と推定されております。そういう三百三十万ないし四百万人の精神障害者のうちで、病院に収容して療養を必要としなければならない者の推定は、各国が整備しております精神病院におけるベット数の基準から推測いたしますと、十万ないし二十万かと考えられます。それに対しまして現在の精神病院のベット数は二万床くらいしかございません。ことに都道府県立の精神病院は十箇所しかない状態であります。そういう状態を改善して、少くとも入院加療を要するものは精神病院なり、精神病室へ収容して行くためには、もう少し本気で精神病院の設置を考えなければならぬという立場から、第二章の四条及び五条、六条におきましては収容施設のうち、精神病院に関する規定を置いてあります。この精神病院につきましては、現在の精神病院法の立場をそのまま踏襲いたしたのでございます。ただ違います点は、「都道府県は、精神病院を設置しなければならない。」といたしまして、従来のように、主務大臣の設置命令があつたときにだけ都道府県は設置できるのだという、あいまいな態度をさらに一段と進めて、義務制にまでいたしたのであります。
 第五条にございます指定病院は、現在代用病院と言われているものと実体は同じであります。その設置に対しましては、国が二分の一を補助することといたしております。
 それから七条から十二条にわたりましては、精神衛生相談所に関する規定でありますが、精神病院へ収容すべき精神障害者以外の精神障害者につきましては、あるいは自宅療養をする場合に何らかの指導が必要であり、相談に応ずる機関が必要なのであります。そういう役割を一面において果すと同時に、保健所が行つております衛生行政と表裏一体をなしまして、啓蒙運動、さらに予防運動にまで乗り出して行こうという仕事を内容といたしまする精神衛生相談所を、都道府県と、保健所を設置する市が設置するということにいたしたのであります。これに対しましては同じく国庫が二分の一を補助することにいたしております。
 第三章の精神衛生審議会は、先ほど申し上げましたように、精神衛生行政の面は非常に立ち遅れておりますので、これを強力に推進して行くためには、もう少し専門家が中心になつた推進機関が必要であるという見地から、専門家と関係行政庁とが一体になりました審議会を設けることといたしたのであります。これが第三章の規定であります。
 第四章は、精神衛生鑑定医の設置に関する規定でございます。精神障害者は、正しい自己の判断ができない場合が非常に多いのでありまして、そういう虚に乗じて、ややもすれば不法監禁が行われる傾向がございます。それを防止するためには、いやしくも長期にわたつて身体の自由を拘束する原因を、精神障害という病気だけに限る必要があります。その判定を精神衛生鑑定医がやるということにいたしたのであります。その精神衛生鑑定医は「精神障害の診断又は治療に関し少くとも三年以上の経験がある」ということを条件といたしております。
 第五章は、医療及び保護に関する条項でございますが、この第五章は大きくわけまして次のような項目にわかれます。第一は、精神障害者と決定された春の保護義務者はだれであるかということ。それから第二は、医療及び保護を必要としている精神障害者を、いかに国民全体が漏れなくつかむような体制をつくるかということ。それから第三には、精神障害者のうち非常に悪い者は、これは本人の意思に反しても、また保護義務者の意思に反しても、知事の決定によつて、ある程度意に反する入院処置を講ずる必要があるというために、知事による入院処置に関する条項がございます。それほどひどくないけれども、ただ自宅に置きつぱなしにしておくとあぶないという精神障害者につきましては、指定した医師が巡回指導をするということにいたしております。一般にただ自宅で療養すればいい、あるいは自宅に置いておけばいいという精神障害者に対しましては、先ほど申し上げました精神衛生相談所が活動して行くという考え方をとつております。最後にどうしてもやむを得ない事情によつて、ただちに精神病院へ収容することが不可能な場合があります。それはたとえば八丈島のようなところで、入院処置を要する精神障害者を発見いたしましても、ただちに病院へ収容することができないことが多いのであります。そういう場合の臨時的な措置としまして、二箇月の期間を限る保健拘束という制度が最後に設けられております。
 ただいま申し上げました条項を条文によつて御説明いたしますと、保護義務者に関します規定は二十条から二十二条でございます。これは精神病者監護法がとつておりました態度をそのまま踏襲いたしております。精神障害者の保護義務者には後見人、配偶者、親権を行う者、扶養義務者のうち家庭裁判所が選任した者が当ることになつております。二十三条から二十六条までは、先ほど申し上げました国民全体が協力して、精神障害者に対する医療及び保護が欠けることのないようにするための綱を張る規定でございます。二十三条は、国民はだれでも知事に対して精神衛生鑑定医の診察を経て、必要な保護を求めることができるということを規定いたしております。その中で警察宮とか、検察官とか、拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院、少年保護鑑別所の長は、職務上精神障害者を扱うことが非常に多いので、これらの人々に対しましては、必ず知事へ通報してもらいたいという通報義を課することといたしました。そういうような通報がありました場合には、知事は精神衛生鑑定医を向けまして、その者がどうしても入院を必要とするかどうかの鑑定をいたします。そうして入院を必要とする決定がありました場合には、二十九条によりまして、本人及び保護義務者の同意がなくても、精神病院へ収容することができるということにいたしたのであります。ただこの場合には、必ず二人以上の精神衛生鑑定医の診察の結果が、両方とも入院を必要とするのであるということに意見が一致した場合に限るという条件をつけて、それ以外の理由によつて収容措置が行われないように警戒をいたしました。その費用は都道府県負担といたしまして、国が三分の一を補助することといたしてあります。
 三十三条、三十四条は、これは知事が介入するのでなくて、保護義務者が精神病院の長に対して、本人は反対であるけれども、何とか入れてもらいたいというような場合の規定を特に置いたのでございます。これは本人の意思に反するという意味から、特に規定を設けました。三十四条に仮入院という条項がございますが、精神障害の鑑定診断をい失しますには、ある程度長期の経過を見なければならないことがありますので、三週間を限つて仮入院をさせるということにいたしたのであります。ただ病院長と保護義務者とのとりきめだけで入院措置、あるいは仮入院措置が行われました場合には、必ず都道府県知事に届出て、都道府県知事は精神衛生鑑定医に診察をさせまして、その場合も二人以上の意見が入院を継続するということに一致しなければ、退院を命ずるということにいたしたのであります。これらは非常に厳格な制限を設けましたのは、精神病者監護法がとつておりました不法監禁を防止するという精神だけをここに踏襲したのであります。
 四十二条の観察保護という規定が、先ほど申しました巡回指導をして行く規定でございます。これはケース・ワーカーの制度を本格的にではございませんが、ここに取入れたのでございます。
 四十三条以下に保護拘束の規定がございます。保護拘束は二箇月の期間を限つて、ある程度保護義務者が自由の拘束をする場合であります。従来の精神病者監護法によります私宅監置という制度は、座敷牢を設けまして、恒久的にいつまでも精神病者を監置するという制度でありましたが、観察保護は臨時的なものであり、しかも期間を二箇月と限定されたものであります。二箇月の間に保護拘束をされておる精神障害者は、知事が必ず入院措置をとらなければならないということにいたしてあります。
 五十条に刑または保護処分の執行との関係を念のために規託しておきました。刑務所その他の矯正保護施設に収容する処分と、二十九条にあります知事が精神病院へ入院する処分とが競合いたしました場合には、刑または保護処分の執行が先立つことを第一項で明記してあります。第二項では、矯正保護施設に収容中の者については、この精神衛生法による措置はやらないのだということを明らかにしたのであります。ただ犯罪傾向のある精神障害者が、未だなおらずして社会へ送り出されることは困りますので、そういう者については、刑務所の門を出たとたんに知事が引継げるように、二十六条の通報に関する規定と、二十七条の精神衛生鑑定医が鑑定に出かけて行くことができるという規定だけを生かしておいたのであります。
 以上がこの法案の内容でございます。

○松永委員長代理 本案に対する質疑の通告があります。これを許します。青柳委員。

○青柳委員 簡単に二、三承りたいと思います。まず第一には、この法案によりますと、精神病院または精神病室の増設、またはその運営に関し、または精神衛生鑑定医の設置について、または巡回指導の方法を講ずるために、または精神衛生相談所を設けるために、また精神衛生審議会を設けるために、相当な予算が要ると思うのでありますが、この予算の裏づけについて承りたいと思います。

○中原参議院法制局参事 予算は、一千万円の予算の範囲内でまかなうことにいたしております。

○青柳委員 ベットの増設にいたしましても、また鑑定医の診察にいたしましても、また病院に収容される人の入院のために必要な費用の二分の一も国庫が助成するということになつておりますが、一千万円ではあまりに少いと思うのですが、その問題につきまして、何かお考えがあるのじやないかと思いますが……

○中原参議院法制局参事 今の予算の点は、桁が違つたのかしれませんが、予算書を向うに置いて参りましたので、後ほど調べて御返事いたします。

○青柳委員 次に承りたいのは、二十七条を今御説明があつたのですが、前四条の規定によつて、申請または通報のあつた者について、調査上必要があると認めたときは、鑑定医をして診察させる、こうあるのですが、調査上必要のない場合があり得るのであるかどうか、その点を承りたい。

○中原参議院法制局参事 これは二十三条で、だれでも保護の申請ができるということを規定しているのでございます。ただ虚偽の事実を申請した者だけは、罰則にかけるということにしてありますので、保健所長を通じて参りますから、保健所長が一応見まして、精神衛生鑑定を受けなくてもいいような場合もあり得るのではないかということを予想いたしたのでございます。

○青柳委員 そういたしますと、保健所で見て、もう鑑定の必要がないという人もあり得る。明らかに精神病者である。いわゆる精神障害者であるということが明らかになる人があるから、そういう者は除いて、それ以外の者を鑑定医の診察を受けさせる。こういう御趣旨であるといたしますと、二十九条に、今の二十七条を追いかけまして、都道府県知事が病院に入院させるための規定があるのであります。この二十九条を追いかけて次の三十条で、そういうふうにして都道府県知事が入院させた精神障害者の入院に要する経費は、都道府県の負担とするということでありますが、申請があつて鑑定医の診察をやらなかつた人については、入院費用を都道府県が負担しないということに相なると思うのでありますが、その点についてお伺いいたしたいと思います。

○中原参議院法制局参事 ただいまの御質問は、精神衛生鑑定医が診療をしなかつた者が、入院した場合はどうなるかということでございますが、その場合には、保護義務者が病院長と話合いで入院した場合には本人、あるいは保護義務者が負担をすることになります。

○青柳委員 そういたしますと、精神衛生鑑定医をして診察をさせる必要のないほど、明確な精神障害者については診察をさせない。その者については都道府県が入院費を出さないということに相なるわけでありますか。

○中原参議院法制局参事 知事が入院をさせる精神障害者は、ほうつておきますと、自分のからだを傷つけたり、他人に害を及ぼし、強度に社会生活を破壊するおそれのある者だけでございます。それ以外の者については、この二十九条による措置は行われないのであります。従いましてただいま御質問がありましたように、危害を及ぼさないようなものが入院した場合には、都道府県は費用を負担することはないのであります。

○青柳委員 くどいようでありますが、危害を及ぼすような者こそ、保健所で精神障害者であるということがはつきりするのであります。従つて鑑定医の診察を要しないということになるのでありますが、そういう者に対して都道府県は負担をしないことになるように、この法文の解釈上思えるのでありますが、その点はいかがでございましようか。

○中原参議院法制局参事 先ほど保健所長が判断してと申しましたのは、申講があつたものが、精神障害者ではないことが明らかであるような場合を判断してという意味で申し上げたのでありまして、ただいま御質問がありましたような者につきましては、これは必ず精神衛生、鑑定医が調査に参ることになるのであります。

○青柳委員 先ほど私がお尋ねしたと同じお尋ねをすることになるのでありますが、精神障害者の中には、糟神衛生鑑定医をして診察させるものと、その必要のないものと二種類があつて、診察を必要とするもののみについて、都道府県の負担があるというふうに法文解釈がなるのでありますが、その点をもう一ぺん伺いたい。

○中原参議院法制局参事 二十三条の法文をちよつとごらんいただきますと、「精神障害者又はその疑のある者を知つた者」とあります。その疑いがあるという、この認はは非常に広いのでございまして、この場合には、医学上の知識があれば精神障害者でないということがわかるけれども、一般のものにはわからないようなものが含まれております。そういう場合だけが除外されるということを先ほど私は申し上げたのでございますが、そういう点で御了解を願いたいと思います。

○青柳委員 もう一ぺん伺いますが、私の申し上げるのは第二十七条をごらんになりますと「都道府県知事は、前四条の規定により申請又は通報のあつた者について調査の上必要があると認めるときは、精神衛生鑑定医をして診察をさせなければならない。」とあります。それで二十九条は第二十七条を追いかけております。すなわち前条の規定に基いてやつたものは、費用の負担を都道府県知事がやるということになつておりますが、初めに返つてみると、診察を受けなかつたものは落ちておる。診察を受けなかつたものについては都道府県の負担がないということになる。従つて国から二分の一の負担がないということになりますが、そのように解釈してよろしゆうございましようか。

○中原参議院法制局参事 二十七条で「調査の上必要があると認めるとき」と書きましたのは、これは調査上必要があるときでなくて調査の上必要があるときは診察をさせる。その調査をするときには、保健所長の意見というものが一応入るわけでございます。

○青柳委員 私が間違つておるのかと思いますが、精神衛鑑定医をして診察さしたものだけについて、都道府県知事の負担があるのですか。こういうことが私のお尋ねの根本なのです。逆に言いますと精神衛生鑑定医をして、二十七条に基いて診察をさせなかつたものについて、都道府県の負担がない。これはおかしいではないかと思うのです。

○中原参議院法制局参事 三十条で都道府県の負担にいたしましたのは、本人、保護義務者両方の意思に反して、知事が、言葉は悪いのですが、半ば強制的に収容する場合でございます。

○青柳委員 そういたしますと、私の読み方が悪かつたと思うのですが、第二十九条の条文は、本人及び関係者の同意がなくとも、そういうものだけに限り、知事が強制的に入所さしたものについてのみ都道府県が負担をし、国がその三分の二を負担をする、こういうことですか。――わかりました。
 そういたしますとこの条文と、生活保護法との関係、もちろん生活に困つておる人は生活保護法で診療を受けると思いますが、都道府県知事が強制的に入所さしたものについて、都道府県の負担、これを裏づけといたしまして国庫の負担がございますが、その負担と生活保護法とはどちらが優先するものと思いますか。

○中原参議院法制局参事 二十九条による措置が行われました場合は、精神衛生法が優先いたします。

○青柳委員 そういたしますと、精神衛生法でもつて半分の国庫負担は予算の中から出されておる。残りの半分の足らない分については、生活保護法によつて支弁して行く。こういうふうなお考えでございますか。

○中原参議院法制局参事 生活保護法の適用を受けておるものについては、ただいま御質問がありましたような、精神衛生法との競合がないのではないかと考えております。と申しますのは、生活保護を受けておるものについては、大体において保護義務者に相当するものがあるのでございます。これは今度の改正法によりまして、必ずあることになりますが、その場合には保護義務者が必ず同意をいたすであろう。こういうふうに考えまして、競合はないと考えたのであります。

○青柳委員 生活保護法の医療扶助は世帯単位に支給されます。その世帯の構成員が病気で困つておりますときには、世帯主を通じて医療扶助が渡るものと思つております。大体世帯主を保護者と見まして、貧乏をしておる人にはこの精神衛生法による二分の一の金だけしかやれないのだ、こういうのではおかしいのです。それではその世帯は困るのであります。そこでこれはやはりどうしても医療扶助でもつて救わなければならないと思うのでありますが、重ねてお尋ねいたします。

○中原参議院法制局参事 三十条によります負担関係が起きますのは、本人の意思にも保護者義務者の意思にも反して、強制的に知事が入れた場合だけでありまして、ただいまお尋ねになりました生活保護法の対象になつているようなものにつきましては、そういう知事の強制的な措置で入るまでもなく、精神病院の長との打合せによつて、自発的にこれは保護義務者の同意によりまして、三十三条による入院の方がほとんど全部を占めるのではないかと思います。従いまして二十九条による措置が行われる必要はないというふうに考えております。

○青柳委員 ここに生活に困つておる人を擁しておる世帯がありまして、その世帯の一員が精神病である。そしてその保護者や本人なんかの同意がないのに知事の命令でもつて入院させ、国からは半分の入院費しか来ないという場合に、残りの費用は何で負担されて行くとお考えでありますか。

○中原参議院法制局参事 どうも私頭が悪いので、ただいま御質問になられたような事例は起きないような気がするのですが……

○青柳委員 とても生活に困つておる人の家族の一員が、知事から強制的に精神病院に入院せしめられた。お金は入院に要する費用の半分しか国から来ない。あとの半分をまかなうことはできない。そうしたら病院に入らないで、生活保護法を受けるという事例が起つて来るのではないかと思うのでございます。

○中原参議院法制局参事 御質問の点よく了解いたしました。その保護を受けておる者に行きます費用は、三十条の一項によりまして全額を負担いたします。ただ国と都道府県との関係におきましてだけは、二分の一と十分の八との差が出て参ります。

○青柳委員 わかりました。全額都道府県が出し、半分を国が出す、こういう御意図でございますね。都道府県の負担につきましては、相当御研究になつたでありましようか。この法律でもつて強制するというお考えであろうと存じますが、都道府県に半分の負担をさせるということは、他の法令などと比較して見まして、非常に径庭が多いのであります。その点いかようにお考えになりましようか。

○中原参議院法制局参事 ただいま御指摘の通り、生活保護と同じように十分の八を補助すべきであると考えたのでございますが、二十五年度の予算がある程度固まりましたときに、これが並行して進みましたので、今年度はどうしても二分の一にして、従前の規定をそのまま踏襲いたしませんと、事実上動かないということになるのでございます。

○青柳委員 私は生活保護法の審議にあたりまして、この委員会で御当局との質疑応答をいろいろ承つておりますと、生活保護法にはまだ相当余裕があるというふうに聞いております。そういたしますならば、この問題は貧乏な人については全面的に生活保護法によつて行つてもいいのではないか。そういう際には国の負担が二分の一から十分の八に、都道府県十分の一、市町村十分の一というふうに相なるのであります。従いましてこのためにただいまもお話を承りますと、予算は非常に少な過ぎますが、それは多いとしましても、予算に困つておられるのでありましてできるだけ国の他の制度の方にたよつた方が賢明ではなかろうか。その方が一般のこういう場合の保護の制度とマッチをいたす。そういう意見を持つておりますが、御意見を伺わしていただきたいと思います。

○中原参議院法制局参事 先ほど例に出しましたような場合に、二十九条による措置でなくて、保護義務者が同意をして精神病院に引取つてもらうという措置にかえますならば、生活保護法による医療扶助で行けるようになるわけでございます。

○青柳委員 問題をかえまして、もう一つだけ承りたいと思います。それはこの四十八条の二項によりますと、いわゆる私宅監置は、本法律施行後一年間だけしか許されないことに相なるのであります。しかも現在の病床は二万に足らないのであります。先ほどお話を承りますと、十万ないし二十万の病床がいるということでございましたが、一年間に私宅監置を廃除するだけの自信があられるかどうかという点について、承りたいと思います。

○中原参議院法制局参事 二十五年一月末現在における私宅監置の患者数は、全国で二千六百七十一名ございます。公立病院、すなわち都道府県立の病院と、それに代用せられております精神病院のペットは、一万四千であります。一月末現在で在院しておりますのは一万一千四百人でございまして、差引きいたしますと二千六百が、公立及び代用精神病院のベットに余裕がございます。このほかに八十の私立の精神病院がございます。この法案の五条にもございますように、指定病院という制度は、私立の精神病院を指定いたしまして、都道府県立精神病院にかえることができるようにいたしております。ただいまのような措置を考えますならば、二千六百七十一名の現在の私宅監置の患者は一応収容できる予定でございます。

○青柳委員 現在の私宅監置の人員はどのくらいでありましようか。

○中原参議院法制局参事 二千六百七十一名であります。

○青柳委員 そういたしますと、現在私宅監置者だけは収容余力の中へいわばすつぽり入る、こういうお考えでありますか。そういたしますと、今度の法律の改正によりまして、従前の制度と違つて、ひとり精神病者のみならず精神薄弱者及び精神病質者もこれに含むということに相なるのであります。従いまして非常に数がふえたと思うのでございますが、そういう精神薄弱者及び精神病質者については、入院するものがなくていいというふうなお考えでございましようか。

○中原参議院法制局参事 この法案をつくります際に、アメリカにおけるカリフォルニア州精神衛生法それからその運用を参照いたしたのでありますが、あちらでは精神病者、それから精神薄弱者、精神病質者、それからアルコール中毒者、麻薬中毒者、変態不良少年、そういうものはそれぞれ別個の施設に入れておるのであります。それでそういう形を一応理想といたしまして、この法案はスタートしておりますが現実の設備がそういうふうにできておりませんので、ただいま御指摘になりましたようなおそれが幾分残るかと存じます。それは今後施設を充実することによつて、できるだけそういう穴ができないように努力しよう、こういうつもりでございます。

○青柳委員 精神障害者を収容するための病院について、いろいろ増床計画をお持ちではないかと思うのですが、もしお持ちであれば承りたいと思います。何年ぐらいの間に、どういうようにしようということをお考えになつておるかどうかという点、もし考えられておられをすならば承りたいと思います。

○中原参議院法制局参事 その点は予算とも関連いたしますし、実施面でございますので、厚生省の公衆衛生局の予防課が担当いたしております。予防課ではこの法案をつくりますときに、一応の計画があることは承知いたしておりますが、はつきりした数字をただいま記憶しておりませんので、後ほどお答えいたします。

○久下政府委員 医療機関の整備につきましては、医務局が各局と連絡いたしまして、ただいま総合的な計画をつくつておるのでございます。精神病院につきましては、あるいは若干数字が違うかもしれませんが、大体四万床ほど五箇年計画で増床したいという案を持つております。もちろんこれはただいまのお話のように、予算の関係もございますので、今後の問題ではございますが、一応そういう計画を立てて進んでおります。

○青柳委員 一応私の質問は終ります。

苅田委員 精神衛生鑑定医についてお尋ねいたしたいのでありますが、これは専門の精神病の医者で、三年以上臨床の経験のある人ということになつておるわけなんですか。

○中原参議院法制局参事 三年以上臨床の経験がある者に限るということになつております。

苅田委員 それは専門なんですか。

○中原参議院法制局参事 もちろん専門でございます。

苅田委員 私は精神衛生鑑定医というのは、今度は非情に大きな力を持つて来ると思うのです。つまり本人も承知しない――本人は精神病者ですからはつきりわからないとしても、また保護者たちが反対しても、強制的にこの人たちが、これは病人だから入れなければいけないと言えば連れて行くということになるのですが、これらの医者の意見がもしも悪用されれば、明らかに不法監禁とか人権蹂躪とかいうことに相なるわけなので、精神衛生鑑定医というのをどういうふうにして選ぶかというのが問題だと思うのです。この点はどういうことになるのですか。

○草間参議院専門員 精神衛生方面を専攻した人が相当おりますけれども、その中から、むろん学識、人格いろいろの方面から検討いたしまして、厚生大臣において選考するということになつております。

苅田委員 そうしますと、府県とか市町村とかいうときに、そういう医者は厚生大臣の名前で任命されるということになるわけですか。

○草間参議院専門員 そういうことになります。

苅田委員 それは府県単位で任命されるわけですか。

○草間参議院専門員 さようでございます。

○中原参議院法制局参事 ただいま御心配のありました精神衛生鑑定医の職権濫用を防止止する意味で、十八条の三項に「精神衛生鑑定医は、前項の職務の執行に関しては法令により公務に従事する職員とみなす。」といたしました。これは刑法の贖職罪の適用を考えたわけでございます。もし職権を濫用しまして入院措置をとらしたような場合には、贖職罪にかかるかと存じます。

苅田委員 その場合に厚生大臣が任命した精神衛生鑑定医の選択に対して、こちらから不服とかそういうようなものは言えないのですか。そういう人ではいけないということは言えないわけなんですか。これは各府県でそういう人がきまつてしまえば、そういう人のおめがねにかなえば、どうしても精神病者ということになるのですか。

○中原参議院法制局参事 ただいまの御質問にありました不服申立ての道はありませんが、そのために、知事の監督のもとで仕事をしておりますけれども、厚生大臣が任命するということで慎重だけは期したのでございます。精神衛生鑑定医が不当に入院させるという判定をいたしました場合には、人身保護法で救済の道があるわけでございます。

苅田委員 それをもう少し具体的に説明していただきたいと思います。

○中原参議院法制局参事 ちよつと調べましてから申し上げます。

○大石(武)委員 ただいまの苅田委員の質問に関連して私もその問題についてもう少しお尋ねしたいと思うのであります。精神病者の鑑定ということは非常にむずかしいことだろうと思いますわれわれがよく昔読んだストリンドベルヒのもので、父親と妻とが子供の教育についてけんかをして意見がわかれたために、妻が自分の意見をあくまでも通そうと思つて、夫を精神病者ということにして入院させてしまつたというような記憶があります。また最近――去年か一昨年参りましたアメリカ映画でも、「三十四丁目の奇蹟」というような傑作の映画もあつたようですが、あの場合にもサンタクロースを名乗つた老人をむりむりに気狂い病院に入れてしまうというようなこともあります。とにかく精神病者を正しく鑑定して判断して収容するということは、非常にむずかしいことだろうと私は考えております。たとえば今お聞きしますと、精神衛生鑑定医というものが県で二人いる。その人が鑑定してきまれば強制的に入院させられるということになるのですね。そうした場合に、もし不幸にしてその鑑定、その診断が誤つた場合においては、どういう方法によつてこれを救い出すことができるか。

○中原参議院法制局参事 三十二条に訴願の規定が置いてございますが、それは二十九条の規定による入院措置については、六十日以内に厚生大臣に対して訴願をすることができるという道をこの法律では開いてあります。そのほかに人身保護法が働きます点は、ただいま第一部長が知つておりますので第一部長から申し上げます。

○今枝参議院法制局第一部長 ただいまの人身保護法の適用関係、詳細は省略しまして大体の筋道を申しますと、その拘束に不服のある者から裁判所へ申し入れますと、裁判所では拘束者を呼び出しまして、その拘束の当否を検討いたしました上で、必要なる場合には釈放の命令を出して釈放する。こういう手続なのでございます。

○大石(武)委員 拘束者というのはひつばつた人ですか。

○今枝参議院法制局第一部長 現に拘束しておる者であります。

苅田委員 病人でしよう。その場合は。

○大石(武)委員 病人じやなくて医者の方でしよう。

○今枝参議院法制局第一部長 現に拘束しておる者でありますから、病院です。

○大石(武)委員 それだけではどうも足りないようですな。もう一ぺん訴願した場合に、どういうふうになるだろうかという先の詳細な経過をお聞きしたいと思うのですが。

○中原参議院法制局参事 現在の訴願方法は一応書面審査で、厚生省に設置されました訴願委員会で書面審査で裁決をするということになつております。

○大石(武)委員 そうすると今のただ書面審査であつては、専門の精神鑑定医が診断して入院した場合に、おそらく相当の鑑定医が来るのではあろうと思うが、その診断した鑑定医の審査が間違えばそのまま入院が決定することは火を見るよりも明らかな話であります。従つてそのような方法であつては、ちつとも訴願の意味はなさないと思う。もう少しよくいろいろな法律案にありますように、こういう場合にもう一段の全国的な広い見地に立つ精神鑑定医の訴願を受付けるような、そういう鑑定の審査会でもつくる。そういう方法でもあつたらより親切に、より間違いであるとかあるいは不正というものが防げるであろうと考えるのでありますが、そういうお考えはお持ちではございませんでしようか。

○中原参議院法制局参事 ただいま訴願のときに書面審査と申し上げましたが、それは権威のある精神衛生医の意見を聞くようなことまでも排除する意味で申し上げたのではございませんので、そういう特殊な事件につきまして訴願がありました場合には、訴願、審査委員会では最も権威のある精神衛生医を呼んで、鑑定をしてもらうという措置は当然講ずることになるのであります。

○松永委員長代理 他に御発言はございませんか。
【以下略】