立法論・CSSと技術的保護手段

DVDビデオの私的コピーは違法か? (松本直樹の米国特許法研究室さま)
http://homepage3.nifty.com/nmat/css.htm

アクセスコントロールだから、とする見解は、まず技術の現実の点で正確ではありません。スクランブルがアクセス自体にも障害となるとはいえ、CSSは本来的な意味でのアクセスコントロールではありません。メディアを持っている人は誰でも視聴できるのを当然とした、そういうスクランブルなのであり、Wowowスクランブルをかけている(こちらはもちろん本当にアクセスコントロール)のとは違います。趣旨としては、パソコン上でのコピーを出来なくするためのスクランブルであり、その意味では、むしろ著作権法で言う「技術的保護手段」たり得る物です。
 しかし、現行の著作権法では、「技術的保護手段」に何が当たるかを白紙で解釈にゆだねているわけではなく、厳密な定義が設けられています。この定義には、CSSは当たりそうにありません。そして、「技術的保護手段の回避」の定義についても、です。

私も前に(http://d.hatena.ne.jp/kokekokko/20040730#p1)書きましたが、CSSのような「複製制限を目的とした視聴制限」は技術的保護手段として考えてもいいと思います。ただ、条文の上でも、制定過程のうえでも、明確に除外されているCSS著作権法第2条の技術的保護手段とすることは困難であり、さらにこの規定が刑罰法規でもあることを考えると、犯罪構成要件要素の解釈としてはこのような類推は採ることはできません。
となると立法で解決することになるのですが、これもまた難しいです。私が前に書いたとおりなので、再掲してみます。

そこで考えられる方法は、(1)著作権のなかに視聴権を新設する方法、があります。ですが、だからといって安直に「著作者は、その著作物を視聴させる権利を専有する。」なんていう規定を盛り込むわけにはいきません。視聴権は所有権に当然付随するものだからです。あるいは、別の方法として(2)一定の視聴権を複製権とみなす方法があります。この場合は、どのような視聴権が複製権に準じるのかを明示する必要があります。ですが現行法上は、技術的保護手段に該当する技術は特定されていません。そのあたりから転換する必要が出てきます。

私的録音録画補償金の対象機器のように政令で技術を特定する、という線で落ち着くのでしょうか。