立法論・通院医療費公費負担

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厚生省公衆衛生局長通知「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律32条に規定する精神障害者通院医療費公費負担の事務取扱いについて」規定されている制度。

と書かれていますが、制度を規定しているといえるのは、通達よりもむしろ法律(法第32条)でしょう。
法第32条については、以前かんたんにふれました(http://d.hatena.ne.jp/kokekokko/20041116#p3)。
 
さて、この公費負担制度について最近、厚生労働省では改正にむけて検討がなされています。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/10/s1025-5c.html
ここで争点になるところは「福祉サービスに係る応益的な負担の導入」という部分(つまり、治療費用のうち、いままで公費で負担していた部分の一部を本人負担とすること)です。つまり、応益負担では低所得者に厳しい制度になるわけです。この点について、弱者切り捨てではないかという批判が多く寄せられました。
そのためか厚労省は、また見直し案を公表しました(12/14)。所得に応じて本人負担率を変えるというわけです。
 
障害に係る公費負担医療の利用者負担の見直し
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/s1214-7c.html
 
公費負担制度が導入されたのは40年前の昭和40年で、負担率が現在のものになったのが平成7年です。そもそも、精神病に限って通院費用が95%公費負担になるというのは、実は一般には少し理解されにくいことでもあります。議事録にも、障害者みずからの、以下の発言があります。

第18回社会保障審議会障害者部会議事録(2004年10月12日)
○広田委員
 皇室の雅子様適応障害で、皇后様も失語症になられたわけだから、領域がない。自衛隊の方にもお会いしましたけど、メンタルヘルスだと。神奈川県警もメンタルヘルスだと。あっちに行ってもこっちに行ってもメンタルヘルスという世の中で、ある意味では、精神の病も一般的な病気になってきたわけですから、精神の病気を特別扱いされたくないということで、通院費も一般の医療費でいいんじゃないかというふうに言っている人たちもいます。一方では、患者会などで活動している仲間たちは現状を望んでいると思います。私なんか、ある意味では、治らないんだったら、逆に難病にしてくれと、極論ですが思っていますけど、そういうことをわかりやすく説明していただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。

個人的には公費負担制度の現状維持が望ましいと考えています。ですが「一定以上の所得がある者については病状の重いケースを優先的に支援する」という考え方も、わからないわけでもありません。このあたりは福祉政策の問題です。
 
ただ気になる点は、厚生労働省の説明で、上のほうにある図では「中間層」「30万円以上」以外の層は「継続的に給付可能」と書いていますが、しかし下の表をよく読むと、「モデル1 精神通院:うつ病 月1回の受診と継続的な服薬 月額医療費約1万円」のケースでは、結局「低所得」の層でも、利用者負担率は10%になっています。経過措置の対象にもなっていないようです。つまり、月1回の通院で1万円かかる程度のうつは「重度かつ継続」の対象たる「躁うつ病(狭義)」には該当しない、というのでしょう。