精神医療に関する条文・審議(その24)

ライシャワー事件についての審議は、量が多いので後回しにします。
前回(id:kokekokko:20050419)のつづき。法案審議は1/24(id:kokekokko:20050124)のつづき、初回は2004/10/28です。
昭和40年代に行われた精神衛生法の改正をみてみます。改正は昭和40年法律第139号「精神衛生法の一部を改正する法律」の1つのみです。昭和25年の法制定以来、何度か法改正はされてきましたが、この昭和40年の改正は制定以来初めての大改正です。
ライシャワー事件を受けての改正なので、申請通報制度に関連する規定が改正されています。そのほかには保護拘束の廃止、通院医療費公費負担制度の導入など、いくつかの改正点があります。
数度に分けてアップしていきます。

精神衛生法の一部を改正する法律案
 精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
 
 目次を次のように改める。
目次
 第一章 総則(第一条―第三条)
 第二章 施設(第四条―第十二条)
 第三章 精神衛生審議会及び精神衛生診査協議会(第十三条―第十七条)
 第四章 精神衛生鑑定医(第十八条・第十九条)
 第五章 医療及び保護(第二十条―第五十一条)
 附則
 
 第四条第一項中「、厚生大臣の承認を得て」を削り、同条第二項から第四項までを削る。
 
 第五条第二項及び第三項を削る。
 
 第七条を次のように改める。
 (精神衛生センター)
第七条 都道府県は、精神衛生の向上を図るため、精神衛生センターを設置することができる。
2 精神衛生センターは、精神衛生に関する知識の普及を図り、精神衛生に関する調査研究を行ない、並びに精神衛生に関する相談及び指導のうち複雑又は困難なものを行なう施設とする。
 
 第八条中「又は指定市」を削る。
 
 第十一条の見出しを「(指定の取消し)」に改め、同条中「厚生大臣」を「都道府県知事」に、「その指定の承認」を「その指定」に改める。
 
 第十二条中「精神衛生相談所」を「精神衛生センター」に改める。
 
 「第三章 精神衛生審議会」を「第三章 精神衛生審議会及び精神衛生診査協議会」に改める。
 
 第十三条の見出しを「(精神衛生審議会)」に改める。
 
 第十四条の見出しを「(委員及び臨時委員)」に改め、同条に次の一項を加える。
4 委員及び臨時委員は、非常勤とする。
 
 第十六条の次に次の二条を加える。
 (地方精神衛生審議会)
第十六条の二 都道府県知事の諮問に応じ、第三十二条第三項の申請に関する必要な事項を審議させるため、都道府県に精神衛生審診査協議会を置く。
 (委員)
第十六条の三 精神衛生審診査協議会の委員は、五人とする。
2 委員は、精神障害者の医療に関する事業に従事する者及び関係行政機関の職員のうちから、都道府県知事が任命する。
3 委員(関係行政機関の職員のうちから任命された委員を除く。)の任期は、二年とする。
4 委員は、非常勤とする。
 
 第十七条の見出しを「(厚生省令又は条例への委任)」に改め、同条中「省令」を「厚生省令」に改め、同条に次の一項を加える。
2 精神衛生診査協議会の運営に関し必要な事項は、条例で定める。
 
 第二十三条第二項第二号中「現在場所」の下に「、居住地」を加える。
 
 第二十四条を次のように改める。
 (警察官の通報)
第二十四条 警察官は、職務を執行するに当たり、異常な挙動その他周囲の事情から判断して、精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認められる者を発見したときは、直ちに、その旨を、もよりの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければならない。
 
 第二十五条中「精神障害のある被疑者について」を「精神障害者又はその疑いのある被疑者又は被告人について、」に改め、「又は精神障害のある被告人について」を削り、「確定したとき」の下に「、その他特に必要があると認めたとき」を加える。
 
 第二十五条の次に次の一条を加える。
 (保護観察所の長の通報)
第二十五条の二 保護観察所の長は、保護観察に付されている者が精神障害者又はその疑いのある者であることを知つたときは、すみやかに、その旨を都道府県知事に通報しなければならない。
 
 第二十六条の次に次の一条を加える。
 (精神病院の管理者の届出)
第二十六条の二 精神病院(精神病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む。以下同じ。)の管理者は、入院中の精神障害者であつて、第二十九条第一項の要件に該当すると認められるものから退院の申出があつたときは、直ちに、その旨を、もよりの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。
 
 第二十七条第一項中「前四条の規定により申請又は通報」を「前六条の規定による申請、通報又は届出」に改める。
 
 第二十七条第五項中「第一項」の下に「又は第二項」を加え、「第三項」を「第四項」に改め、同項を同条第六項とし、同条第四項を同条第五項とし、同条第三項中「前二項」を「前三項」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項中「前項」を「前二項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 都道府県知事は、入院させなければ精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあることが明らかである者については、前六条の規定による申請、通報又は届出がない場合においても、精神衛生鑑定医をして診察をさせることができる。
 
 第二十九条第一項中「、本人及び関係者の同意がなくても」及び「(精神病院以外の病院に設けられている精神病室を含む。以下同じ。)」を削り、同条第三項中「長」を「管理者」に改め、「第一項」の下に「又は次条第一項」を加え、同条第四項中「精神病院法」の下に「(大正八年法律第二十五号)」を加える。
 
 第二十九条の三中「第二十九条」の下に「第一項及び第二十九条の二第一項」を加え、同条を第二十九条の七とする。
 
 第二十九条の二第一項中「前条」を「第二十九条第一項及び第二十九条の二第一項」に改め、同条を第二十九条の六とする。
 
 第二十九条の次に次の四条を加える。
第二十九条の二 都道府県知事は、前条第一項の要件に該当すると認められる精神障害者又はその疑いのある者について、急速を要し、前三条の規定による手続をとることができない場合において、精神衛生鑑定医をして診察をさせた結果、その者が精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人を害するおそれが著しいと認めたときは、その者を前条第一項に規定する精神病院又は指定病院に入院させることができる。
2 都道府県知事は、前項の措置をとつたときは、すみやかに、その者につき、前条第一項の規定による入院措置をとるかどうかを決定しなければならない。
3 第一項の規定による入院の期間は、四十八時間をこえることができない。
4 第二十七条第四項から第六項までの規定は第一項の規定による診察について、前条第三項の規定は第一項の規定により入院する者の収容について準用する。
第二十九条の三 第二十九条第一項に規定する精神病院又は指定病院の管理者は、前条第一項の規定により入院した者について、都道府県知事から、第二十九条第一項の規定による入院措置をとらない旨の通知を受けたとき、又は前条第三項の期間内に第二十九条第一項の規定による入院措置をとる旨の通知がないときは、直ちに、その者を退院させなければならない。
 (入院措置の解除)
第二十九条の四 都道府県知事は、第二十九条第一項の規定により入院した者(以下「措置入院者」という。)が、入院を継続しなくてもその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがないと認められるに至つたときは、直ちに、その者を退院させなければならない。この場合においては、都道府県知事は、あらかじめ、その者を収容している精神病院又は指定病院の管理者の意見を聞くものとする。
第二十九条の五 措置入院者を収容している精神病院又は指定病院の管理者は、措置入院者が、入院を継続しなくてもその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがないと認められるに至つたときは、直ちに、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
2 都道府県知事は、必要があると認めるときは、措置入院者を収容している精神病院若しくは指定病院の管理者に対し、措置入院者の症状に関する報告を求め、又は精神衛生鑑定医をして措置入院者を診察させることができる。
3 措置入院者又はその保護義務者は、都道府県知事に対し、入院を継続しなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあるかどうかの調査を行なうことを求めることができる。
 
 第三十条第一項及び第三十一条中「第二十九条」の下に「第一項及び第二十九条の二第一項」を加える。
 
 第三十二条を次のように改める。
 (一般患者に対する医療)
第三十二条 都道府県は、精神障害の適正な医療を普及するため、精神障害者が健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十三条第三項各号に掲げる病院若しくは診療所又は薬局その他政令で定める病院若しくは診療所又は薬局(その開設者が、診療報酬の請求及び支払に関し次条に規定する方式によらない旨を都道府県知事に申し出たものを除く。)で病院又は診療所へ収容しないで行なわれる精神障害の医療を受ける場合において、その医療に必要な費用の二分の一を負担することができる。
2 前項の医療に必要な費用の額は、健康保険の療養に要する費用の額の算定方法の例によつて算定する。
3 第一項の規定による費用の負担は、当該精神障害者又はその保護義務者の申請によつて行なうものとし、その申請は、精神障害者の居住地を管轄する保健所長を経て、都道府県知事に対してしなければならない。
4 都道府県知事は、前項の申請に対して決定をするには、精神衛生診査協議会の意見を聞かなければならない。
5 第三項の申請があつてから六月を経過したときは、当該申請に基づく費用の負担は、打ち切られるものとする。
6 戦傷病者特別援護法(昭和三十八年法律第百六十八号)の規定によつて医療を受けることができる者については、第一項の規定は、適用しない。
 
 第三十二条の次に次の三条を加える。
 (費用の請求、審査及び支払)
第三十二条の二 前条第一項の病院若しくは診療所又は薬局は、同項の規定により都道府県が負担する費用を、都道府県に請求するものとする。
2 都道府県は、前項の費用を当該病院若しくは診療所又は薬局に支払わなければならない。
3 都道府県は、第一項の請求についての審査及び前項の費用の支払に関する事務を、社会保険診療報酬支払基金その他政令で定める者に委託することができる。
 (費用の支弁及び負担)
第三十二条の三 国は、都道府県が第三十二条第一項の規定により負担する費用を支弁したときは、当該都道府県に対し、政令で定めるところにより、その二分の一を補助する。
 (他の法律による医療に関する給付との調整)
第三十二条の四 第三十二条第一項の規定により費用の負担を受ける精神障害者が、健康保険法、日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)、公共企業体職員等共済組合法(昭和三十一年法律第百三十四号)、地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)又は私立学校教職員共済組合法(昭和二十八年法律第二百四十五号)の規定による被保険者、労働者、組合員又は被扶養者である場合においては、保険者又は共済組合は、これらの法律の規定によつてすべき給付のうち、その医療に要する費用の二分の一をこえる部分については、給付をすることを要しない。
2 第三十二条第一項の規定により費用の負担を受ける精神障害者が、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)の規定による医療扶助を受けることができる者であるときは、その医療に要する費用は、都道府県が同項の規定によりその二分の一を負担し、その残部につき同法の適用があるものとする。
 
 第三十三条及び第三十四条中「長」を「管理者」に改める。
 
 第三十六条第一項中「長」を「管理者」に改め、同項第五号中「又は仮入院」を削る。
 
 第三十七条第一項中「前条の届出があつた場合において調査の上」及び「又は仮入院を」を削り、「長」を「管理者」に改める。
 
 第三十八条中「長」を「管理者」に改め、「又は仮入院中」を削る。
 
 第三十九条中「長」を「管理者」に改め、「又は仮入院中」を削り、「求めることができる」を「求めなければならない」に改め、同条に次の一項を加える。
2 警察官は、前項の探索を求められた者を発見したときは、直ちに、その旨を当該精神病院の管理者に通知しなければならない。この場合において、警察官は、当該精神病院の管理者がその者を引き取るまでの間、二十四時間を限り、その者を、警察署、病院、救護施設等の精神障害者を保護するのに適当な場所に、保護することができる。
 
 第四十条の見出しを「(仮退院)」に改め、同条第一項を削り、同条第二項中「前項の病院長」を「第二十九条第一項に規定する精神病院又は指定病院の管理者」に、「入院中の精神障害者」を「措置入院者」に改め、同項を同条とする。
 
 第四十一条中「前条の規定により退院又は仮退院する者」を「第二十九条の三若しくは第二十九条の四の規定により退院する者又は前条の規定により仮退院する者」に、「精神病院の長」を「精神病院又は指定病院の管理者」に改める。
 
 第四十三条を削る。
 
 第四十二条中「都道府県知事は」を「保健所長は」に改め、「第二十七条」の下に「又は第二十九条の二第一項」を、「第二十九条」の下に「第一項及び第二十九条の二第一項」を加え、「、及び第四十条の規定による退院者」を「第二十九条の三又は第二十九条の四の規定により退院した者」に改め、「続いているもの」の下に「その他精神障害者であつて必要があると認めるもの」を加え、「当該吏員」を「前条第一項の職員」に改め、「又は都道府県知事」の下に「若しくは保健所を設置する市の長」を、「医師をして」の下に「、精神衛生に関する相談に応じさせ、及び」を加え、同条を第四十三条とし、第四十一条の次に次の一条を加える。
 (精神衛生に関する業務に従事する職員)
第四十二条 都道府県及び保健所を設置する市は、保健所に、精神衛生に関する相談に応じ、及び精神障害者を訪問して必要な指導を行なうための職員を置くことができる。
2 前項の職員は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学において社会福祉に関する科目を修めて卒業した者であつて、精神衛生に関する知識及び経験を有するものその他政令で定める資格を有する者のうちから、都道府県知事又は保健所を設置する市の長が任命する。
 
 第四十四条から第四十七条までを次のように改める。
第四十四条から第四十七条まで 削除
 
 第四十八条第一項中「第四十三条の規定による保護拘束を行う場合の外は」を「精神障害者は」に、「精神障害者を収容してはならない」を「収容してはならない」に改め、同条第二項を削る。
 
 第五十条の見出しを「(刑事事件に関する手続等との関係)」に改め、同条第一項中「刑又は」を「精神障害者又はその疑いのある者について、刑事事件若しくは少年の保護事件の処理に関する法令の規定による手続を行ない、又は刑若しくは補導処分若しくは」に、「精神障害者又はその疑いのある者」を「これらの者」に改め、同条第二項中「第二十六条」を「第二十五条、第二十六条」に改め、同条の次に次の一条を加える。
 
 (秘密の保持)
第五十条の二 精神衛生鑑定医、精神病院の管理者、精神衛生診査協議会の委員、第四十三条の規定により都道府県知事若しくは保健所を設置する市の長が指定した医師又はこれらの職にあつた者が、この法律の規定に基づく職務の執行に関して知り得た人の秘密を漏らしたときは、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
2 精神病院の職員又はその職にあつた者が、この法律の規定に基づく精神病院の管理者の職務の執行を補助するに際して知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同じである。
 
 附則
 (施行期日)
1 この法律は、昭和四十年四月一日から施行する。ただし、この法律による改正後の第三十二条から第三十二条の四まで規定は、昭和四十年十月一日から施行する。
 
 (厚生省設置法の一部改正)
2 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
  第五条第二十六号を次のように改める。
  二十六 削除
  第五条第二十七号を削り、同条第二十七号の二中「精神衛生法」の下に「(昭和二十五年法律第百二十三号)」を加え、同号を同条第二十七号とする。
 
 (保健所法の一部改正)
3 保健所法(昭和二十二年法律第百一号)の一部を次のように改正する。
  第二条第九号の次に次の一号を加える。
  九の二 精神衛生に関する事項
 
 (社会保険診療報酬支払基金法の一部改正)
4 社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)の一部を次のように改正する。
  第十三条第二項中「精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)第二十九条の三」を「精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)第二十九条の七若しくは第三十二条の二第三項」に改める。
 
理由
精神衛生の向上を図るため、都道府県は、精神衛生に関する相談、指導等の業務を行う施設として精神衛生センターを設けることができることとして、精神障害者の医療及び保護のための申請、通報、入院措置等に関する手続を整備し、精神障害者に対する訪問指導を充実し、並びに精神障害の適正な医療を普及するため精神障害者の通院による医療に要する費用について公費負担の制度を設ける等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

本会議会議録第19号(48衆昭和40年3月18日)
 精神衛生法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び母子保健法案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(船田中君) 議院運営委員会の決定により、内閣提出、精神衛生法の一部を改正する法律案、及び母子保健法案の趣旨の説明を求めます。厚生大臣神田博君。
  〔国務大臣神田博君登壇〕

国務大臣(神田博君) 精神衛生法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 精神衛生施策は、近年とみにその重要性を加えてまいったのでありますが、最近における向精神薬の開発等精神医学の格段の発達とも相まって、必ずしも現行精神衛生法は新しい事態に即応し得なくなってまいったのであります。したがいまして、政府といたしましても、精神障害者に関する発生予防から社会復帰までの一貫した施策をその内容とする法改正をかねがね準備中のところ、その機運が熟してまいったため、今回精神衛生法の一部改正を行なおうとするものであります。
 改正の第一点は、都道府県が精神衛生センターを設置することができることとした点であります。従前、都道府県等は、精神衛生に関する相談指導等を行なうための施設として、主として保健所に精神衛生相談所を併設していたのでありますが、この程度のものでは、とうてい現下の精神衛生施策の進展に即応するものとはいえませんので、今回これを廃止し、別に新たに都道府県における精神衛生に関する総合的技術センターたる精神衛生センターを設けて、知識の普及、調査研究を行なうとともに、保健所が行なう精神障害者に関する訪問指導について技術援助を行なおうとするものであります。
 改正の第二点は、警察官、検察官等の精神障害者に関する申請通報制度を整備することにより、精神障害者の実態を把握し、都道府県知事が行なう入院措置に遺漏なからしめるとともに、その医療保護に万全を期することとした点であります。
 改正の第三点は、新たに緊急の場合における措置入院制度を設けた点であります。精神障害者は、その疾病の特質上、間々自傷他害の著しい症状を呈することがあり、社会公安上及び本人の医療保護のためゆゆしい問題を生じますので、都道府県知事は、精神衛生鑑定医の診察を経た上で、四十八時間を限り、これを緊急入院させ得ることとしたのであります。
 改正の第四点は、向精神薬の著しい開発等精神医学の発達により、精神障害の程度のいかんによっては必ずしも入院治療を要せず、かえって通院による医療を施すことがきわめて効果的となった事情にかんがみ、精神障害者につき、新たにその通院に要する医療費の二分の一を公費負担することとした点であります。
 改正の第五点は、在宅精神障害者に関する訪問指導体制の充実をはかった点であります。そもそも在宅精神障害者の把握とその指導体制の整備は、精神衛生施策の展開をはかる上できわめて緊要なことでありまして、第四点の通院医療費の公費負担制度の新設と表裏一体の関係にあり、今回の法改正の主要点をなすものであります。この見地から、新たに保健所の業務として、地域における精神障害者の訪問指導等を加え、また、保健所にもっぱら精神衛生に関する相談、指導等に当たる職員を配属し、その実をあげることとしたのであります。
 改正の第六点は、最近における施設の整備状況等にかんがみ、従来認められていた精神障害者の私宅監置制度たる保護拘束制度を廃止し、それらの患者はすべて精神病院に収容することとして、その医療保護に遺憾なきを期することとしたのであります。
 以上をもって、この法律案の趣旨の説明を終わります。
【略】

○議長(船田中君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。河野正君。
  〔河野正君登壇〕

○河野正君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました精神衛生法の一部改正に対して、総理はじめ厚生大臣、その他関係各大臣に対し、若干の質疑を行ない、あわせて国民の疑問や不安に対し、率直に解明せられんことを要望するものであります。(拍手)
 今日、佐藤内閣の最大の政治課題は、所得倍増計画の後半期におけるひずみ是正の施策をいかに具体化するかということにあったと思うのであります。しかるに、さきに編成されました四十年度予算を見ても明らかなように、その特徴は、第一に、ひずみ拡大予算であり、第二に、社会保障を独立採算のワク内に押し込もうとする事業化予算であったのであります。特に、急テンポの経済成長下における国民生活の立ちおくれを防ぐ方策は、まず憲法第二十五条の、いわゆる健康にして、文化的な生活を確立することでなければならぬのであります。しかるに、佐藤内閣は、いたずらに社会開発、人間尊重の新語をまき散らす、ひずみ拡大内閣に終始いたしたのであります。
 すなわち、具体的なその一つのあらわれは、国民の健康を守る国民医療はだんだんと軽視され、いまや健康保険法の改悪等、人命尊重の基本である医療保障は、まさに崩壊の危機に立たされておるのであります。したがって、国民は、佐藤総理の社会開発、人間尊重の政策に、だんだん疑問を抱くに至っていると思うのであります。国民医療や医療保障の後退という現実に、総理は一体矛盾を感じられないのかどうか。
 さらに、いま提案せられました精神障害者対策につきましては、すでに御承知のごとく、一昨年のライシャワー刺傷事件以来、近くは、名古屋の猟銃乱射、東海道線の列車爆破未遂事件等、いずれも精神病患者の犯罪であることが明らかとなりまして、いわゆる野放し精神病患者対策は、が然重要視されるに至ったのであります。かりに、昭和三十八年における厚生省の調査を見ても明らかなように、広い意味での精神障害者の数は、実に百二十四万人の多きに達しているのであります。しかし、それら患者に対する施設は、全国に約九百カ所、十三万六千ベッドで、定員をこえて収容しながら、野放し精神障害者は、なお八十万人をこえているのであります。政府の無策にいまさら驚き入りますとともに、その抜本的な対策は焦眉の急となっているのであります。
 ここに、私は、政府のその無定見ぶりを国民にかわって強く責めますると同時に、厚生大臣に、その抜本的な対策についての御見解を伺いたいと思うのであります。
 また、その対策の万全を期するためには、困難な危険性の判断や、人権問題等、精神障害者の特殊性から、各界の衆知を集め、かつ慎重を期することがきわめて必要であると思うのであります。その意味で、各界の英知を集めた精神衛生審議会の意見はきわめて貴重なものであります。ところが、本改正案におきましては、その精神衛生審議会の貴重な意見がことごとく無視され、また、はなはだしきに至りましては、総理の諮問機関である社会保障制度審議会の意見のごときは全く一顧だに与えられておらぬのであります。この事実は、政府の誠意が疑われるのみならず、明らかに法違反の行為だと私どもは断ぜざるを得ないのであります。(拍手)さきには、医療費問題をめぐり、中央医療協議会の答申を尊重しなかったために、国民医療の混乱を招いたことは、御承知のとおりであります。このような諮問機関、審議会の貴重な意見や答申に対し、政府、特に総理がどのような責任を感じておられるのか、この際特にお尋ねを申し上げておきたいと思うのであります。
 さらに具体的な点について論じてまいりたいと思います。
 すなわち、われわれの承知する範囲においても、さきにも申し述べましたように、精神障害者の収容施設の不足は実に目に余るものがあります。たとえば、三重県では一万九千人の推計患者のうち八千五百人が要入院患者といっておりますのに、収容施設のほうは二十病院でベッドはわずか三千二百九十ベッドにすぎないのであります。また、愛知県では、要入院患者の推計が一万六千六百人に対しまして、ベッド数は実にその四割という寒々しい実情であります。したがって、その解決には大幅な財政措置がきわめて緊要であると思うのであります。
 いま一つは、法第二十九条による都道府県知事の入院措置による経費が義務的なものであることは、法第三十条によって明らかであります。しかるに、政府は法を全く無視し、具体的にワクを示し、実質的に補助金の圧縮を行なうという暴挙をあえて行なっているのであります。したがって、そのために各都道府県におきましては患者入院費の支払いに事欠いている現状であります。たとえば、群馬県のごときは新規の強制収容を中止し、また、すでに収容中の患者三百四十人まで無理に退院させるという非常措置に出ておるのであります。このように、精神鑑定医が重症患者であると鑑定いたしましても入院させることができませんし、また、危険な患者が無理やり退院させられるなど、それが予算の都合というごときは、われわれの全く許すことのできない重大問題であります。(拍手)人命軽視もはなはだしいといわなければならぬのであります。法第三十条は、その法文の上からも明らかに義務的なものと考えるのでありますが、この点、大蔵大臣の率直な御意見を承りたいと思うのであります。
 財政に次いで第二の問題点は、いわゆる患者の人権問題であります。特に昨年は、患者の通報制度の改革案が発表されまするや、たちまち重大な人権問題として学界その他世論の激しい反撃をこうむったのであります。このことはいまだ耳新しい問題であります。しかるに、今回の改正案を見てまいりましても、警察官からの通報に対しその職務執行の範囲が拡大されているのであります。精神障害者の犯罪防止は、治安の上からももちろん重要であります。しかし、さればといって、患者の人権もまたきわめて重要であります。今回の警察官の職務執行権の拡大は、患者の人権を侵すようなことにならないのかどうか、人権擁護の立場から、この点は国家公安委員長に対しまして、お尋ねを申し上げておきたいと思うのであります。
 また、犯罪防止と刑法との関係でありますが、戦前の刑法では、拘束の点でややもいたしますると行き過ぎのきらいがあったと思うのであります。さきに法務大臣も新聞で談話を発表されておったようでございますが、今日精神障害者の犯罪防止に対していかなる御見解を持っておられますか。この点はひとつ法務大臣に率直な意見を承っておきたいと思います。
 いま一点、犯罪防止の上で重大な点は、いわゆる精神障害者と正常な人間との間のボーダーライン層の問題であります。特にこのボーダーライン層の劣等感、孤独感といった異常心理の状態が、案外多くの問題をかかえていると思うのであります。東京工大の宮城教授のごときは、日本には異常心理学の伝統がない、かように喝破せられておるのであります。したがって、今日まで一部で盲点といわれてまいりましたこの分野の検討は、治安の上からも、学問の上からも、きわめて重要な点であろうと考えるのであります。この異常心理の問題につきましては、厚生大臣のほうからひとつ御見解を承っておきたいと思うのでございます。
 最後に承っておきたいと思います点は、適正医療についてであります。今回の改正案によりますと、精神障害者の適正な医療の普及のため、通院医療にも六カ月に限り国がその二分の一の負担を行なうというものであります。しかし、現在でも仮退院の制度がございますし、しかも、それらに対しましてはすでに全額負担が実施せられておるのであります。したがって、今度のいわゆる適正医療こそは全く見せかけの適正医療であって、逆行の制度なりとわれわれはいわなければならないのであります。(拍手)特に重視しなければならぬ点は、今回あらためて都道府県の知事に対し、入院措置の解除の権限が付与せられておる点であります。すなわち、これらの改正や新しい権限は、直ちに経費削減と結びつく可能性が存するがゆえに、私どもはこの問題を非常に重要視するのであります。すなわち、この適正医療は、患者や家族、保護者にきわめて大きな影響を及ぼす重大問題というべきであります。この点は厚生大臣の率直な御見解を承っておきたいと思います。
 以上、数点の問題を取り上げ、お答えを願うものでありますが、これを一言にして要約いたしますと、本改正案は、野放し精神病対策という美名に隠れ、あるいは精神病患者の犯罪防止という社会的要求に便乗して行なった、精神病安上がり政策なりと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)したがって、私は国民にかわり、それぞれ関係各大臣から誠意あるお答えをいただくことを切に要望いたしまして、私の数点にわたります質問を終わらんとするものであります。(拍手)

○議長(船田中君) 内閣総理大臣の答弁は適当な機会に願うことといたします。
  〔国務大臣神田博君登壇〕

国務大臣(神田博君) 河野議員の第一点は、精神衛生に関する抜本的対策いかんというような趣旨にお聞きいたしました。精神衛生対策は、近来とみにその重要性を加えてまいっております。最近における向精神薬の開発等精神医学の発達により、今後は、精神障害の早期発見、早期治療、社会復帰の促進等について重点的な施策を講じてまいりたい、かように考えております。
 第二は、異常心理に対する行政的態度いかんというような意味に承りました。異常心理につきましては、医学と心理学の境界領域にありまして、それぞれ独自の研究が進められているので、学問上の成果につきましては、そのつど行政面に反映させていきたい。具体的には、異常性格者あるいは精神病質者といわれる人たちについて、自傷他害のおそれがあれば措置入院させ、そのおそれがないものであれば、一般的な精神衛生対策の一環として適切な指導をとってまいりたい、かように考えております。
 なおまた、通院医療費の公費負担制度は、措置費の節減をはかることを考えているのではないかというような意味のように承りましたが、御承知のように、通院医療については、最近における向精神薬の飛躍的開発等精神医学の発達によりまして通院医療の比重が高まったため、精神障害の早期治療、社会復帰の促進をはかるため実施しようとするものであります。
 措置解除を法律に規定したのは、人権保障の立場から、いわゆる措置症状がなくなった場合にはすみやかに措置解除すべきことを規定しただけでございまして、通院医療を行なって措置費の節減をはかる、こういう趣旨ではございません。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
  〔国務大臣田中角栄君登壇〕

国務大臣田中角栄君) 精神衛生対策の予算が不足であるということでございます。しかし、政府は、精神障害者対策の強化ということに対しては、四十年度予算編成にあたりましても最重点施策としてこれを取り上げたわけでございます。
 一挙に施設を整備できないということにつきましては、財政上の理由だけではなく、御承知のとおり、人的、物的な設備の問題もございますので、財政の許す限りにおいて努力をいたしておるわけでございます。四十年度の予算を見ていただけばおわかりになるとおり、三十九年度に対しまして二二・八%増しの百六十四億円を計上しておる次第でございます。
 第二の問題は、精神衛生法第三十条による問題でございます。新聞に報道せられた群馬県の事件を指摘せられて、国が補助をいたさないために入院患者を強制的に限院させるような事例があるということでございますが、本件につきましては、御指摘のとおり、予算の査定にあたりましては、実情に合った見積もりを行なっておるわけでございますが、実施の過程においていろいろ問題が起こることは間々あることでございます。しかし、御指摘のように、精算補助でございますので、本件に関しましては、国の法律の規定に従いまして不足額を精算して補助をするというたてまえになっておりますし、国もそのように法律義務を果たしておりますので、過程において予算がある意味において不足をするということはございますが、一時地方財政で立てかえをする等によってまかない得るものでございまして、最終的には法律の規定に従って精算補助をすることは御指摘のとおりでございます。(拍手)
  〔国務大臣高橋等君登壇〕

国務大臣(高橋等君) 精神障害者により残忍な犯罪があとを断たないことは、まことに遺憾にたえないところであります。その犯罪を未然に防止するためにいろいろと苦心をいたしておりますが、このことは単に治安当局に限らず、各関係機関、国民各層の協力により、保安上危険な精神障害者の早期発見、隔離、医療等の一貫した総合的施策が必要であります。今回の精神衛生法の改正はこの趣旨に沿ったものと考えます。
 法務省におきましても、精神障害者対策を刑事政策上の重点目標の一つとして取り上げ、検察庁において、専門家による精神障害者の早期発見と事件処理の適正を期しており、また、矯正保護機関においても、精神障害者の隔離と治療の徹底について積極的な施策を講じつつあります。
 また、精神病者の強制隔離の場合に、人権を擁護いたしまするために、現在の法制審議会におきまして、犯罪性精神障害者に対しまする保安制度の法制化について検討を行なっておる次第でございます。(拍手)
  〔国務大臣吉武恵市君登壇〕

国務大臣吉武恵市君) お答えいたします。
 このたびの精神衛生法の改正によって、警察官の職務執行にあたって権限が拡大されたが、行き過ぎのようなことはないかという御趣旨の御質問でございます。
 今回の改正の第一点は、自傷他害のおそれのある精神障害者を発見した場合に、直ちに保健所等に通報する義務を課したのが一つでございます。もう一つは、精神病院に入院中の自傷他害のおそれのある患者が無断で退去した所在不明の場合に、精神病院の長から探索を求められました際に、警察官がこれを発見しました際、管理者にこれを通報し、引き取りが行なわれるまで二十四時間これを保護するという趣旨のものでございまして、いずれもその必要に応じての改正でございます。したがいまして、本件の施行にあたりましては、専門医等の意見を十分聞きまして、指導に遺憾なきを期する所存でございます。(拍手)

社会労働委員会会議録第4号(48衆昭和40年3月4日)
○戸澤政府委員 それでは、お手元に配付してございます主要事項調べの資料によりまして、ごく簡単に厚生省の来年度の予算の内容につきまして御説明いたしたいと思います。
【略】
 それでは、以下おもな事項をあげてありますが、新規事項を中心にごく簡単に注釈を加えてまいります。
 まず四ページをごらん願いたいと思いますが、四ページの番号二番の精神衛生対策費のところの(2)通院医療費補助金、二億一千五百万円ほど新規に組まれてございます。これは精神衛生法の改正に含まれるものでございますが、従来入院治療に重点を置かれておりましたのを、在宅患者の早期治療と適正医療を徹底するという趣旨で、外来通院患者に対しまして公費負担をいたそうというものでございます。二分の一公費負担でございまして、それに対して国が二分の一補助する、あと二分の一を県が補助する、したがって、医療費全体の四分の一を国が持つというかっこうになります。
 次は、五ページの右の上に書いてございますが、やはり精神衛生対策の一環といたしまして、保健所の医療社会事業従事者とかその他の職員を増員しまして、予防相談事業に対処するというようなことを考えております。
【略】
 以上、非常に簡単でございましたが、また御質問によってお答えいたしたいと思います。

社会労働委員会会議録第11号(48衆昭和40年3月25日)
○松澤委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の精神衛生法の一部を改正する法律案及び母子保健法案の両案を議題といたします。

○松澤委員長 提案理由の説明を聴取いたします。厚生大臣神田博君。

○神田国務大臣 ただいま議題となりました精神衛生法の一部を改生する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
 精神衛生施策は、近年とみにその重要性を加えてまいったのでありますが、最近における向精神薬の開発等精神医学の格段の発達とも相まって、必ずしも現行精神衛生法は新しい事態に即応し得なくなってまいったのであります。したがいまして、政府といたしましても、精神障害者に関する発生予防から社会復帰までの一貫した施策をその内容とする法改正をかねがね準備中のところ、その機運が熟してまいったため、今回精神衛生法の一部を行なおうとするものであります。
 改正の第一点は、都道府県が精神衛生センターを設置することができることとした点であります。従前、都道府県等は、精神衛生に関する相談指導等を行なうための施設として、主として保健所に精神衛生相談所を併設していたのでありますが、この程度のものでは、とうてい現下の精神衛生施策の進展に即応するものとはいえませんので、今回、これを廃止し、別に新たに都道府県における精神衛生に関する綜合的技術センターたる精神衛生センターを設けて、知識の普及、調査研究を行なうとともに、保健所が行なう精神障害者に関する訪問指導について技術援助を行なおうとするものであります。
 改正の第二点は、警察官、検察官等の精神障害者に関する申請通報制度を整備することにより、精神障害者の実態を把握し、都道府県知事が行なう入院措置に遺漏ならしめるとともに、その医療保護に万全を期することとした点であります。
 改正の第三点は新たに緊急の場合における措置入院制度を設けた点であります。精神障害者は、その疾病の特質上、間々自傷他害の著しい症状を呈することがあり、社会公安上及び本人の医療保護のためゆゆしい問題を生じますので、都道府県知事は精神衛生鑑定医の診察を経た上で、四十八時間を限り、これを緊急入院させ得ることとしたのであります。
 改正の第四点は、向精神薬の著しい開発等精神医学の発達により、精神障害の程度のいかんによっては必ずしも入院治療を要せず、かえって通院による医療を施すことがきわめて効果的となった事情にかんがみ、精神障害者につき、新たに、その通院に要する医療費の二分の一を公費負担することとした点であります。
 改正の第五点は、在宅精神障害者に関する訪問指導体制の充実をはかった点であります。そもそも在宅精神障害者の把握とその指導体制の整備は、精神衛生施策の展開をはかる上できわめて緊要なことでありまして、第四点の通院医療費の公費負担制度の新設と表裏一体の関係にあり、今回の法改正の主要点をなすものであります。この見地から新たに、保健所の業務として地域における精神障害者の訪問指導等を加え、また、保健所にもっぱら精神衛生に関する相談、指導等に当たる職員を配属し、その実をあげることとしたのであります。
 改正の第六点は、最近における施設の整備状況等にかんがみ、従来認められていた精神障害者の私宅監置制度たる保護拘束制度を廃止し、それらの患者はすべて精神病院に収容することとしてその医療保護に遺憾なきを期することとしたのであります。
 以上がこの法律案を提出いたしました理由及び改正の要点でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
 【略】