保護拘束

■ 定義
措置入院などの対象患者について、府県内に病院がないなどの理由でただちに入院させられない場合に、病院以外の場所で患者を拘束できる制度。
精神衛生法の制定当時には精神病院の数が十分でなかったので、やむをえない処置として規定された。昭和25年規定、昭和40年廃止。
 
保護義務者は、保護拘束を行う場合には保健所に届ける必要がある。
この保護拘束の制度は、精神病者監護法のもとでの私宅監置(いわゆる「座敷牢」)と類似しているが、私宅監置と異なり保護拘束は、期限を2カ月に限っている臨時的処置である。この2カ月の間に、病院へ収容する手続きをとらなければならない。
■ 参照資料

 【精神衛生法(昭和25年)】
43条1項 自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれのある精神障害者で入院を要するものがある場合において、直ちにその者を精神病院に収容することができないやむを得ない事情があるときは、精神障害者の保護義務者は、都道府県知事の許可を得て、精神病院に入院させるまでの間、精神病院以外の場所で保護拘束をすることができる。
44条1項 保護拘束の期間は、保護拘束を始めた日から起算して二箇月を超えることができない。
 2項 都道府県知事は、前項の期間内に、当該精神障害者で引き続き保護拘束の必要があるものについて国若しくは都道府県の設置した精神病院又は指定病院に収容する措置をとらなければならない。

 【第7回参議院 厚生委員会議録第25号(昭和25年4月5日)中原武夫法制局課長答弁】
遠隔の地にあつて直ちに病院へ収容することができない場合の臨時的措置として、知事の許可を条件とした保護拘束を認めたことでございまして、法案の四十三条から四十七条に亘る規定でございます。最初に自宅監置の制度を一切廃止するということを、この法案が建前にしておるということを御説明申上げましたが、精神病院が非常に離れた所にあるような場所、例えば八丈島のような所では直ちに病院へ収容する措置が取れません。そういう特殊なものに限つては、知事の許可を条件とした保護拘束という制度を認めます。これは自宅監置と違いまして、二ケ月の期間を限つてございます。その二ケ月の期間内に知事は必ず病院へ収容する措置をとるということを条件とした自宅における保護でございます。

 【同 草間弘司事務局専門員答弁】
これは精神障害者が他人を傷つけたり、又は自分を障害しないような設備を施すものでありまして、併し一方かり余り心身を成るべく拘束しないような方法を採らなければいけませんので、監視が相当に行き渡るような方法にしなければいかんと思います。大体家の一部分を区画しまして、そこに収容するとか、或いは又その家の一部がない場合には特別にそういうものを建てて、或いは外の方法を講じまして、患者を、余り心身を束縛させないようにして、而も他人を傷つけたり、自分を障害しないような方法でやつて行きたいと思います。

 【厚生事務次官通達 (昭和25年5月19日)発衛第118号】
精神衛生法の施行について
7 現に入院していない障害者に対する措置
(2) 法第43条並びに第44条に規定する保護拘束は、旧精神病者監護法の規定による所謂座敷牢を残置せしめようとする趣旨ではなく、やむを得ざる暫定的な措置であるので、なお拘束の必要が継続する場合は、知事は速やかにそれらの者を精神病院に収容する措置を講ずるとともに、保護拘束を行うものに対しては、その措置が暫定的なものであるとはいえ法第45条の規定による指導監督並びに法第46条の規定に基く監督を厳にすること。