精神医療に関する条文・審議(その35)

前回(id:kokekokko:20050524)のつづき。初回は2004/10/28。
昭和57年法律第80号(老人保健法)での精神衛生法改正をみてみます。老人保健法自体の審議内容は省略しますが、精神衛生法32条の4での 「他の法律による医療に関する給付との調整」の対象に、老人保健法の医療給付が加えられました。

老人保健法案【附則の第1条・第33条】
 附則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。【略】
 
精神衛生法の一部改正)
第三十三条 精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
  第三十二条の四第一項中「又は共済組合」を「若しくは共済組合又は市町村(特別区を含む。)」に改め、「これらの法律」の下に「 又は老人保健法(昭和五十六年法律第 号)」を加え、「こえる」を「超える」に改める。

社会労働委員会会議録第1号(95衆昭和56年10月15日)
○村山国務大臣 第九十五回国会における社会労働委員会の御審議に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。
 わが国の社会保障は、国民の努力と要望を背景に、西欧諸国に比して遜色のない水準に達し、国民生活の向上に重要な役割りを果たして きておりますが、今日、経済の安定成長のもとでの急速な人口構成の高齢化に直面し、新たな時代に対応する体制の整備が急がれておりま す。
 先般の臨時行政調査会の「行財政改革に関する第一次答申」におきましても、活力ある福祉社会を実現するため、行財政改革の急務であ ることが指摘され、社会保障制度の改革につきましても種々の指摘がなされたところであります。
 国民一人一人の生活の安定を図るとともに、社会的、経済的に弱い立場にある人々の生活を守り、社会的公正を確保するという重要な責 務を有する厚生大臣として、私は、このような時期こそ、二十一世紀への展望のもとに、長期的観点に立って社会保障制度の効率化を進め 、温かい人間味あふれた活力のある福祉社会の基礎となるわが国独自の効率的な社会保障体系の構築が必要であるものと考えております。
 また、さきの五十七年度予算の概算要求に当たりましては、ゼロシーリングという厳しい枠の中でも、老人対策、障害者対策など真に必 要な施策については、引き続き改善を行い所要予算額の確保を図るとともに、臨時行政調査会第一次答申をも踏まえ、全施策について見直 しを行い、必要な合理化、適正化の措置を講ずることとしたところでございます。
 次に、今国会に提案されております厚生省関係の主要課題について申し述べます。
 第一に、老人保健医療対策であります。
 本格的な高齢化社会の到来を控え、国民の老後における健康の保持と適切な医療を確保するため、疾病の予防や健康づくりを含む総合的 な保健対策を推進するとともに、その費用については国民皆が公平に負担するという制度の確立が急務となっております。
 このような観点から、老人保健制度の基本的なあり方については、数年にわたり慎重な検討を続けてまいりましたが、先般社会保障制度 審議会等の御意見もいただき、ようやく成案を得、本年五月老人保健法案としてさきの第九十四回国会に提出し、今国会においても引き続 き御審議を煩わすこととなった次第であります。
 【略】
 以上申し述べましたことが今国会における中心的課題でありますが、厚生行政にはこのほか、医療保険制度を初め、年金、社会福祉、健 康など各般にわたり、国民一人一人の生活に直結したいっときもゆるがせにできない課題が山積しております。
 私は、皆さんの御支援、御鞭撻を得ながら、このような厚生行政の推進に全力を挙げて取り組み、国民福祉の着実な向上を図ってまいる 所存であります。
 何とぞよろしくお願い申し上げます。
○山下委員長 第九十四回国会内閣提出、老人保健法案を議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。村山厚生大臣
○村山国務大臣 ただいま議題となりました老人保健法案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 現在、わが国は諸外国に例を見ない速さで人口の高齢化が進んでおります。このような本格的な高齢化社会の到来に対応し、人間尊重の 精神を堅持し、社会的公正を確保しつつ、効率的に機能し得る社会保障制度の確立と既存制度の見直しが喫緊の課題となっております。
 わが国の老人保健医療対策は、昭和四十八年以来、医療保険制度及び老人福祉法による老人医療費公費負担制度を柱として推進されてま いりましたが、その後年々老人医療費は増高を続け、一方、対策が全体として医療費の保障に偏り、予防から機能訓練に至る保健サービス の一貫性に欠けていること、医療保険各制度間、特に被用者保険と国民健康保険の間に老人の加入率の差により老人医療費の負担に著しい 不均衡があるなどの問題が指摘されるに至り、制度の基本的見直しについての要請が高まってまいりました。
 政府といたしましては、このような要請にこたえて、長期的な展望に立って制度の基本的あり方について数年にわたり鋭意検討を続けて まいりましたが、このたび疾病の予防や健康づくりを含む総合的な老人保健対策を推進するための制度を新たに創設することとし、この法 律案をさきの第九十四回国会に提出し、今国会において引き続き御審議を煩わすこととした次第であります。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一は、この法律の目的及び基本的理念であります。
 この法律は、国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、疾病の予防、治療、機能訓練等の保健事業を総合的に実施 し、国民保健の向上と老人福祉の増進を図ることを目的とするものであります。また国民は、自助と連帯の精神に基づき、みずから健康の 保持増進に努めるとともに、老人の医療費を公平に負担すること、年齢、心身の状況等に応じ、適切な保健サービスを受ける機会を与えら れることを基本的理念としております。
 【略】
 第六に、関係法律の改正であります。この法律の施行に伴い、老人福祉法の一部を改正して、老人医療費の支給に関する規定等を整理す るほか、医療保険各法においては、七十歳以上の加入者について療養の給付等を行わないこととする等の改正を行うこととしております。
 最後に、この法律の施行期日でありますが、老人保健審議会に関する規定は公布の日から三月を、保健事業の実施等に関する規定は諸般 の準備が必要でありますので公布の日から一年六カ月を、それぞれ超えない範囲内で政令で定める日とし、できる限り速やかに施行するこ ととしております。
 以上がこの法律案を提案する理由及びその内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます 。
○山下委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

本会議会議録第7号(95衆昭和56年10月15日)
○議長(福田一君) この際、第九十四回国会、内閣提出、老人保健法案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣村山達雄君。
    〔国務大臣村山達雄君登壇〕
国務大臣村山達雄君) 老人保健法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 現在、わが国は、諸外国に例を見ない速さで人口の高齢化が進んでおります。このような本格的な高齢化社会の到来に対応し、人間尊重 の精神を堅持し、社会的公正を確保しつつ、効率的に機能し得る社会保障制度の確立と既存制度の見直しが喫緊の課題となっております。
 わが国の老人保健医療対策は、昭和四十八年以来、医療保険制度及び老人福祉法による老人医療費公費負担制度を柱として推進されてま いりましたが、その後年々、老人医療費は増高を続け、一方、対策が全体として医療費の保障に偏り、予防から機能訓練に至る保健サービ スの一貫性に欠けていること。医療保険各制度間、特に被用者保険と国民健康保険の間に、老人の加入率の差により老人医療費の負担に著 しい不均衡があるなどの問題が指摘されるに至り、制度の基本的見直しについての要請が高まってまいりました。
 政府といたしましては、このような要請にこたえて、長期的な展望に立って制度の基本的あり方について数年にわたり鋭意検討を続けて まいりましたが、このたび、疾病の予防や健康づくりを含む総合的な老人保健対策を推進するための制度を新たに創設することとし、この 法律案をさきの第九十四回国会に提出し、今国会において引き続き御審議を煩わすこととした次第であります。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一は、この法律の目的及び基本的理念であります。
 まず、この法律は、国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、疾病の予防、治療、機能訓練等の保健事業を総合的 に実施し、国民保健の向上と老人福祉の増進を図ることを目的とするものであります。
 また、国民は、自助と連帯の精神に基づき、みずから健康の保持増進に努めるとともに、老人の医療費を公平に負担すること、年齢、心 身の状況等に応じ、適切な保健サービスを受ける機会を与えられることを基本的理念としております。
 【略】
 第六に、関係法律の改正であります。
 この法律の施行に伴い、老人福祉法の一部を改正して、老人医療費の支給に関する規定等を整理するほか、医療保険各法においては、七 十歳以上の加入者について療養の給付等を行わないこととする等の改正を行うこととしております。
 最後に、この法律の施行期日でありますが、老人保健審議会に関する規定は、公布の日から三月を、保健事業の実施等に関する規定は、 諸般の準備が必要でありますので、公布の日から一年六月を、それぞれ超えない範囲内で政令で定める日とし、できる限り速やかに施行す ることとしております。
 以上がこの法律案の趣旨でございます。(拍手)

社会労働委員会会議録第5号(95衆昭和56年11月12日)
○山下委員長 この際、戸沢政方君外二名から、自由民主党公明党国民会議及び民社党・国民連合三派共同提案に係る修正案が委員長 の手元に提出されおります。
 提出者より趣旨の説明を求めます。戸沢政方君。
 
 修正案【精神衛生法関連の部分のみ掲載】
附則第三十九条を附則第四十条とし、附則第三十一条から附則第三十八条までを一条ずつ繰り下げる。
 
○戸沢委員 ただいま議題となりました老人保健法案に対する修正案につきまして、自由民主党公明党国民会議及び民社党・国民連合 を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、第一に、老人保健審議会は、保険者の拠出金等に関する重要事項を調査審議するものとすることであります。
 【略】
 その他所要の修正を行うこととしております。
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○山下委員長 以上で修正案の趣旨説明は終わりました。
 この際、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。村山厚生大臣
○村山国務大臣 政府としては賛成しがたいが、院議として決定される以上、やむを得ないものと考えます。
○山下委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付します。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。古賀誠君。
○古賀委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております老人保健法案及びこれに対して自由民主党公明党国民会議民社党・国民連合が共同で提出した修正案につきまして、修正案及び修正案を除く原案に賛成の意を表するものであります。
 本格的な高齢化社会の到来を控え、予防から治療、リハビリテーション等に至る総合的な老人保健対策の確立が急務となっております。
 政府原案は、このような要請にこたえて、壮年期からの疾病の予防や健康管理を推進することにより健康な老人づくりを目指すとともに 、今後とも増加する老人医療費の負担の公平を図るものであり、その趣旨については評価できるものの、主として次のような諸点について 所要の修正を行うことにより、さらに内容の改善が図られるものと考えます。
 【略】
 以上の修正は、本委員会審議を通じ、最善の努力を尽くした上での結果であり、これによってさらに本法案の目的の達成と円滑な実施に 資するものと考えるものであります。
 このように、老人保健法案並びに自由民主党、公田党・国民会議民社党・国民連合提出の修正案は、老人保健対策の画期的な推進と老 人福祉の一層の増進を図るもりであり、私どもとしては、この修正案及び修正部分を除く原案に賛意を表するものであります。
 これをもちまして、私の討論を終わります。(拍手)
○山下委員長 栂野泰二君。
○栂野委員 私は、日本社会党を代表し、ただいま討論に付されました老人保健法案の原案及び修正案について、そのいずれにも反対する 立場から、以下その理由を簡潔に申し述べたいと思います。
 わが党は、去る十月十五日の本会議における厚生大臣の趣旨説明以来今日に至るまで、本法案が果たしてその立法趣旨にかなう内容を備 えているかどうかについて、審議を尽くそうと努めてまいりました。
 本法案第一条に掲げる「国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図る」という目的を達成するためには、どうしても欠くこ とのできない幾つかの条件が必要であります。それはまず第一に、国民を薬づけ、検査づけにし、とめどもなく医療費を増大させているば かりでなく、脱税の温床にさえなっている点数出来商払い方式を見直すことであり、第二に、市町村に対し、新制度の実施主体にふさわし い権限を持たせ、マンパワーの充実や諸施設の整備に必要な財源を確保すること、第三に、老人が貧富の差別なく必要にして十分な保健医 療サービスを受けられるように、この際、保険外負担を解消し、新たな窓口負担を設けるようなことをしないことなどであります。
 こうした見地から本委員会における審議を振り返ってみますと、政府原案はこれらの必要条件を欠き、また、政府答弁においてもこれら を補うべき何物も見出し得なかったと言っても決して過言ではありません。
 【略】
 以上要するに、本法案は、一面、国民の求める健康な老人づくりの制度創設を装ってはいるものの、それはあくまで表看板だけのことで あり、真のねらいは、行政改革の一環として、この際、老人医療費の国庫負担軽減を図り、そのしわ寄せを老人本人と被用者保険、地方自 治体の負担増に転嫁しようとするところにあると断ぜざるを得ません。まさに羊頭を掲げて狗肉を売るのたぐいで、かかる政府原案にはも とよりのこと、基本的にその延長線上にある修正案にもわが党は最後まで反対することを申し上げ、討論を終わります。(拍手)
○山下委員長 平石磨作太郎君。
○平石委員 私は、公明党国民会議を代表して、老人保健法案審議の終局に当たり、賛成の立場から討論を行います。
 急速に進展する高齢化社会を前に、若干の曲折はありましたものの今後の老人医療の進むべき方途が策定されたことは、施策の大きな前 進であると考えるものであります。特に従来から指摘されていた医療と保健との一貫性について曲がりなりにも包括的医療のベースが築か れたことは、これを大きく評価するものであります。
 もとより本法案は完全無欠ではありません。施策のメリットの多くは今後の運用にかかっております。法の運営と行政の推移を厳しく監 視するとともに、政府に対し改善へのさらなる努力を強く要求するものであります。
 あわせて、本法案は他の現行保険制度と無関係ではなく、現在抱えているところの制度間格差や不均衡を放置しておいて本法案の実効は 期しがたいのであります。また、本法案は政府公約における医療保険制度改革に連動しゆくものであり、できるだけ早い機会において保険 制度全体の抜本的改革に着手されることを望むものであります。
 【略】
 以上の観点から、以下本法案に賛成する理由を簡潔に申し述べます。
 【略】以上のことから、政府提案の老人保健法案について、修正案に賛成し、右修正部分を除く原案について賛成し、討論を終わります 。(拍手)
○山下委員長 米沢隆君。
○米沢委員 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま終局審議を迎えました老人保健法案につきまして、修正案並びに修正を除く原 案に対し、賛成の立場で討論を行います。
 御承知のとおり、今回提案されました老人保健法の政府原案は、その目的と基本的理念に示されておりますように、国民の自助と連帯の 精神に基づき、国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、ややもすると治療の保障に偏重しておる現行制度を改め、 予防から治療、機能訓練に至る一貫した各種保健事業を総合的に行うとともに、それに必要な費用は国民が公平に負担することを大きな目 的としており、その趣旨につきましては高く評価できるのであります。
 しかし、政府原案には多くの問題がありました。
【略】
 第二の問題は、一部負担の導入の問題であります。
 現行の老人医療費公費負担制度は、所得制限はありますものの患者負担はなしという制度でありますが、これに今回新たに患者の一部負 担を導入するという問題は、財政上のこととはいえ、事柄上大きな論争を巻き起こしたことは当然であります。
 元来、理屈からいえば、受診が必要であるかどうかを医学を知らない老人に判断させて自制を求めることはかなりむちゃな話ではありま すが、たとえば老人が病院に殺到して、病院、診療所の正常な診療が阻害されたり、病院のベッドが慢性疾患の御老人たちに占拠されて、 緊急重症患者の収容に支障が生じるなどの数多くの事例を考慮いたしましたときに、また保険制度がまさしく健常者によって支えられてい るという事実を考えれば、個々の不満は数多く残るにいたしましても、私どもは無理のない範囲での適正な受益者負担はある程度受忍する ことが、健全なる医療保険制度の発展にはやむを得ざる処置ではないかと理解を示さざるを得ません。
 しかし、その金額の多寡、低所得者層への配慮は当然あってしかるべきであって、私どもはこのような観点から、外来、入院とも一部負 担の額を提案の二分の一にすること、また入院については一部負担徴収期間を四カ月から一カ月に改めること、低所得者については一部負 担を免除する措置を講ずること、そして特に、現行の健保法上でも問題があるわけでありますが、総合病院等において診療科目ごとに一部 負担を課されることは高齢者にとって過重な負担になることにかんがみ、その是正を求めるなどの修正要求を行い、その実現方に努力をい たしましたが、結局、外来時一部負担を五百円から四百円に、入院時一部負担の徴収期間を四カ月から二カ月に縮減、低所得者に対しては 減免措置を講ずる等の修正を果たすことができました。この際私どもは、不十分ではありますが、まずは一歩前進と評価し、内心じくじた るものを残しつつ妥協せざるを得ません。参議院段階での再修正を期待いたしたいと思います。
 ただ、総合病院等の診療科目別一部負担徴収の非は、政府におかれて早急に前向きに御検討され、その善処方を強く要請するものであり ます。
 【略】
 私は、本制度の円滑な運営のため行政が果たすべき責務を誠実に実行されんことを強く要求し、賛成の討論を終わります。(拍手)
○山下委員長 小沢和秋君。
○小沢(和)委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました老人保健法案に対して反対の討論を行います。
 御承知のように、現行の老人医療費無料化制度は、一九七〇年代に全国のお年寄りや住民の強い要求と運動によって、革新自治体を中心 に燎原の火のように広がり、七三年一月、ようやく国の制度として実施されました。
 この医療費無料化制度の発足は、健康に不安を持つ全国のお年滞りに大きな再びと安堵をもって迎えられたのであります。
 それを制度発足後わずか八年で、軍事費や大企業優遇の補助金などをふやすために、国家財政の赤字と再建を口実に、臨調答申に沿って 本制度の改悪を行うことは断じて許すことができません。
【略】
 第三は、保健事業についてであります。
 本法案が新たに保健事業を行おうとする点はわが党がかねてより主張していたわけでありますが、本委員会の審議を通じて明らかになっ たように、保健事業の円滑な実施には政府案でも八千名の要員の確保が必要であるにかかわらず、その見通しや具体的保証がありません。 最低限必要な要員や施設が整わなければ保健事業がその実効を上げ得ないことは明らかであります。
 わが党は、このような本法案の十分な審議のため、参考人の招致のほかに、公聴会や連合審査会の開催を要求してきましたが、拒否され ました。また、質疑者が残っているにもかかわらず質疑を打ち切るなど、非民主的な委員会の運営も容認するわけにはいきません。
 修正案につきましては、以上述べた理由から、この法案の本質を何ら変えるものではなく、賛成しがたいものであります。
 日本共産党は、老人医療費の無料化制度を後退させる本法案の撤回を要求するとともに、お年寄りが安心して医療が受けられ、病気の予 防が十分に行われる制度の確立を目指して奮闘することを表明し、討論を終わります。
○山下委員長 これにて討論は終局いたしました。
○山下委員長 老人保健法案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、戸沢政方君外二名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○山下委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。
 次に、ただいま可決いたしました修正案の修正部分を除いて、原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○山下委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
○山下委員長 この際、湯川宏君外五名から、自由民主党日本社会党公明党国民会議民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連合 及び柿澤弘治君共同提案に係る本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。湯川宏君。
○湯川委員 私は、自由民主党日本社会党公明党国民会議民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連合及び柿澤弘治君を代表いた しまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
   老人保健法案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について、速やかに適切な措置を講ずるよう配慮すべきである。
【略】
 十 痴呆を主とした老人の精神障害に対応するため、精神病床その他の施設の整備を行うとともに、老人精神障害対策に関する専門的な 調査研究を進める等総合的な対策を講ずること。
 十一 退職者医療制度についての検討を急ぐこと。
 十二 老人の保健医療と密接な関連を有する年金、福祉サービス、雇用、住宅等に係る老人福祉対策の一層の充実を図ること。
 十三 本格的な高齢化社会の到来に対応し、老人問題に関する総合的な研究体制の整備について検討すること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○山下委員長 以上で趣旨説明は終わりました。
 採決いたします。
 湯川宏君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○山下委員長 起立多数。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。
【略】
○山下委員長 この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。村山厚生大臣
○村山国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存でございま す。

本会議会議録第10号(95衆昭和56年11月13日)
山下徳夫君 ただいま議題となりました老人保健法案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、本格的な高齢化社会に対応して、老後における健康の保持を図るため、医療に加えて疾病の予防や健康づくりを含む総合的な老 人保健対策を推進する制度を創設するとともに、これに必要な費用の公平な負担を図ろうとするもので、その主な内容は、
 第一に、本案の基本理念は、国民は、自助と連帯の精神に基づき、みずから健康の保持増進に努め、老人の医療費を公平に負担すること 及び年齢、心身の状況等に応じ、老後における健康の保持を図るための適切な保健サービスを受ける機会を与えられることとすること、
【略】
 第十に、この法律の施行に伴い、老人福祉法の老人医療費の支給に関する規定等を整理するほか、医療保険各法において、七十歳以上の 加入者の療養の給付等を行わないこととする等、関係法一律について所要の改正を行うものであります。
 本案は、第九十四回国会に提出され、継続審査となっておりましたが、昨日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、老人保健 審議会の権限、診療方針及び診療報酬の諮問機関、医療の取扱機関、医療の対象者の範囲、一部負担金、保険者拠出金の調整のための案分 率、保険者拠出金に対する国の補助率等について、自由民主党公明党国民会議及び民社党・国民連合三党共同の修正案が提出され、討 論を行い、採決の結果、本案は三党共同提案の修正案のとおり多数をもって修正議決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(福田一君) 討論の通告があります。これを許します。森井忠良君。
    〔森井忠良君登壇〕
森井忠良君 こんなばかなことがまかり通るでしょうか。議院内閣制のもとで、政府・自民党が提案した法案を、事もあろうに、与党自 民党が率先して修正し、改悪するというあり得べからざることが行われたその老人保健法案について、私は、日本社会党を代表して、反対 と抗議の討論を行うものでございます。(拍手)
【略】
 以上、反対と抗議の理由を申し述べ、私の討論を終わります。(拍手)
○議長(福田一君) これにて討論は終局いたしました。
○議長(福田一君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(福田一君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。(拍手)

社会労働委員会会議録第12号(96衆昭和57年8月9日)
○唐沢委員長 内閣提出、参議院送付、老人保健法案を議題といたします。
 本案は、第九十四回国会、本院に提出されまして、第九十五回国会において修正議決の上参議院に送付したものを、参議院において継続 審査に付し、このほど修正議決の上、本院に送付されたものであります。
 したがいまして、参議院の修正部分を除いてその趣旨の説明を省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○唐沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 それでは、参議院における修正部分につきまして趣旨の説明を聴取いたします。参議院社会労動委員会における修正案の提出者、参議院 議員遠藤政夫君。
○遠藤(政)参議院議員 ただいま議題となりました老人保健法案に対する参議院の修正部分につきまして、その内容を御説明申し上げま す。【略】
 以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○唐沢委員長 これにて趣旨説明は終わりました。
○唐沢委員長 日本共産党から討論の申し出がありますが、理事会の申し合わせにより討論は行わないことといたしておりますので、さよ う御了承願うこととし、直ちに採決に入ります。
 老人保健法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○唐沢委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
○唐沢委員長 この際、大石千八君外五名から、自由民主党日本社会党公明党国民会議民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連 合及び柿澤弘治君共同提案に係る本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。大石千八君。
○大石委員 私は、自由民主党日本社会党公明党国民会議民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連合及び柿澤弘治君を代表いた しまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    老人保健法案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について、速やかに適切な措置を講ずるよう配慮すべきである。
【略】
 十一 痴呆を主とした老人の精神障害に対応するため、精神病床その他の施設の整備を行うとともに、老人精神障害対策に関する専門的 な調査研究を進める等総合的な対策を講ずること。
 十二 多数の原爆被爆者を抱えているため新たに相当の医療費負担が発生する地方公共団体については、政府はその負担について従前の 実績を踏まえ、今後とも別途適切かつ十分な財政措置を講ずると。
 十三 退職者医療制度についての検討を急ぐこと。
 十四 老人の保健医療と密接な関連を有する年金、福祉サービス、雇用、住宅等に係る老人福祉対策の一層の充実を図ること。
 十五 本格的な高齢化社会の到来に対応し、老人問題に関する総合的な研究体制の整備について検討すること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○唐沢委員長 以上で趣旨説明は終わりました。
 採決いたします。
 大石千八君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○唐沢委員長 起立多数。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。
【略】
○唐沢委員長 この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森下厚生大臣
○森下国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきまして、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力いたす所存であります。

本会議会議録第32号(96衆昭和57年8月10日)
○議長(福田一君) 委員長の報告及び趣旨弁明を求めます。社会労働委員長唐沢俊二郎君。
    〔唐沢俊二郎君登壇〕
唐沢俊二郎君 ただいま議題となりました老人保健法案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます とともに、毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案について、趣旨弁明を申し上げます。
 まず、老人保健法案について申し上げます。
 本案は、さきの第九十五回国会に本院において修正議決され、参議院において継続審査となっていたものでありますが、今国会に至り、 参議院において修正議決の上、去る八月四日本院に送付され、翌五日本委員会に付託されたものであります。
 本案は、本格的な高齢化社会に対応して、老後における健康の保持を図るため、医療に加えて疾病の予防や健康づくりを含む総合的な老 人保健対策を推進する制度を創設するとともに、これに必要な費用の公平な負担を図ろうとするもので、その主な内容は、
 第一に、本案の基本理念は、国民は、自助と連帯の精神に基づき、自ら健康の保持増進に努め、老人の医療費を公平に負担すること及び 年齢、心身の状況等に応じ、老後における健康の保持を図るための適切な保健サービスを受ける機会を与えられることとすること、
【略】
 第七に、老人保健審議会、社会保険診療報酬支払基金等に関する規定を整備するほか、関係法律について所要の改正を行うこと等であり ます。
 以上のうち、次年度以降の加入者按分率、被用者保険本人の入院時一部負担金等については参議院で修正されたものであります。
 本案は、昨日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、多数をもって参議院送付案のとおり可決すべきものと議決した次第でありま す。
 なお、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。
【略】
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
○議長(福田一君) これより採決に入ります。
 まず、日程第二につき採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(福田一君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

【20050715:参議院審議は、にわとりショコラへ移転しました。】

老人保健法(昭和57年8月17日法律第80号)【附則の第1条・第33条】
 附則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。【略】

精神衛生法の一部改正)
第三十三条 精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
  第三十二条の四第一項中「又は共済組合」を「若しくは共済組合又は市町村(特別区を含む。)」に改め、「これらの法律」の下に「又は老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)」を加え、「こえる」を「超える」に改める。
   内閣総理大臣  鈴木善幸
   大蔵大臣  渡辺美智雄
   文部大臣  小川平二
   厚生大臣  森下元晴
   運輸大臣  小阪徳三郎
   郵政大臣  箕輪登
   労働大臣  初村滝一郎
   自治大臣  世耕政隆