精神医療に関する条文・審議(その37)

前回(id:kokekokko:20050527)のつづき。初回は2004/10/28。
精神衛生法の改正についての国会審議。今回は昭和59年法律第77号での改正をみてみます。
「健康保険法等の一部を改正する法律」によって、日雇労働者健康保険について規定されていた精神衛生法上の文言が変更されました。今回も、健康保険法制度じたいの議論は省略して、精神衛生法改正と関連する部分をアップさせます。

健康保険法等の一部を改正する法律案【附則第1条・第39条のみ掲載】
 
附則
(施行期日)
第一条 この法律は、昭和五十九年七月一日から施行する。【略】
 
精神衛生法及び結核予防法の一部改正)
第三十九条 次に掲げる法律の規定中「、日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)」を削る。
 一 精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)第三十二条の四第一項
 二 結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号)第三十七条第一項
 
理由
 医療保険制度の改革を図るため、一部負担金制度及び療養費制度の改正、日雇労働者健康保険の対象者に対する健康保険制度の適用、国民健康保険の被保険者である退職被保険者等に係る給付と負担の合理化、国民健康保険の国庫補助制度の合理化等の措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

本会議会議録第14号(101衆昭和59年4月3日)
○議長(福永健司君) この際、内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣渡部恒三君。
    〔国務大臣渡部恒三君登壇〕
国務大臣渡部恒三君) ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 我が国の医療費は、人口の急速な高齢化、疾病構造の変化、医学医術の高度化等により根強い増加傾向を示す一方、経済成長は鈍化し、今後医療費と国民の負担能力との間の乖離が拡大していくおそれがあります。
 また、厳しい国家財政の状況下で、国庫による各医療保険制度間の不均衡の調整機能を維持することが困難となってきております。このような状況に的確に対応し、本格的な高齢化社会に備え、中長期の観点に立った医療保険制度の改革を行うことは緊要の課題となっております。
 今回の改正は、このような情勢を踏まえ、医療保険の揺るぎない基盤づくりを進め、すべての国民が適正な負担で公平によい医療を受けることができるよう、医療費の適正化、保険給付の見直し、負担の公平化を三本の柱とした制度全般にわたる改革を目指したものであります。
 改正案の主要事項について、概略を御説明いたします。
【略】
 第四に、日雇労働者の健康保険の体系への取り入れに関する改正であります。
 日雇労働者健康保険制度を廃止し、日雇労働者を健康保険の日雇特例被保険者とするとともに、
その給付内容及び保険料については、就労の特性を考慮し、一般の被保険者と実質的に均衡のとれたものとなるよう定めております。
【略】
 なお、この法律の施行期日は本年七月一日からとしておりますが、退職者医療の拠出金等に関する重要事項について社会保険審議会の意見を聞くこと等については公布の日から、また、標準報酬等級の改定については本年十月一日からとしております。
 以上が、健康保険法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。よろしくお願いします。(拍手)

社会労働委員会会議録第6号(101衆昭和59年4月5日)
○渡部国務大臣 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 我が国の医療費は、人口の急速な高齢化、疾病構造の変化、医学医術の高度化等により、根強い増加傾向を示す一方、経済成長は鈍化し、今後、医療費と国民の負担能力との間の乖離が拡大していくおそれがあります。
 また、厳しい国家財政の状況下で、国庫による各医療保険制度間の不均衡の調整機能を維持することが困難となってきております。このような状況に的確に対応し、本格的な高齢化社会に備え、中長期の観点に立った医療保険制度の改革を行うことは緊要の課題となっております。
 今回の改正は、このような情勢を踏まえ、医療保険の揺るぎない基盤づくりを進め、すべての国民が適正な負担で公平によい医療を受けることができるよう、医療費の適正化、保険給付の見直し、負担の公平化を三本の柱とした制度全般にわたる改革を目指したものであります。
 改正案の主要事項について、概略を御説明いたします。
【略】
 第四に、日雇い労働者の健康保険の体系への取り入れに関する改正であります。
 日雇労働者健康保険制度を廃止し、日雇い労働者を健康保険の日雇特例被保険者とするとともに、その給付内容及び保険料については、就労の特性を考慮し、一般の被保険者と実質的に均衡のとれたものとなるよう定めております。
 また、国庫は、政府管掌健康保険の事業所の日雇特例被保険者に係る給付費等について一般の被保険者についてと同一の補助率により補助を行うこととしております。
 なお、廃止前の日雇労働者健康保険事業に係る累積収支不足については、借り入れをすることができることとし、その償還を一般会計からの繰り入れにより行うことができることとしております。
【略】
 なお、この法律の施行期日は、本年七月一日からとしておりますが、退職者医療の拠出金等に関する重要事項について社会保険審議会の意見を聴くこと等については公布の日から、また、標準報酬等級の改定については本年十月一日からとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
【略】

社会労働委員会会議録第24号(101衆昭和59年7月12日)
○河野(正)委員 もう時間がありませんので、余りこれでやりとりするわけにはまいりません。
 そこで最後に、今度の健保法改正の中で精神衛生法と関連する部分があるわけです。これは今まで全然論議されておりませんので、これだけはひとつ取り上げておきたいと思います。
 精神衛生法では第一条に、「この法律は、精神障害者等の医療及び保護を行い、」と書いてありますね。これはずっと精神鑑定のところでも出てくるわけですよ。ですから、精神障害者の場合は精神衛生法で、医療だけじゃありません、保護もあるのですよ、こういうふうに定めてあるわけですね。ところが、医療費の算定その他については一般の医療と同じであって、保護という部分が全然欠落しておるわけであります。その証拠には、例えば高額差額ベッドの問題等がございますね。これは厚生省の昨年七月の資料によりましても、五千円以上の高額ベッドはむしろふえておる。三人部屋以上は四十九年の保険局長通知で禁じられているにもかかわらず、いまだに一%前後残っておる。そういうような状況です。精神衛生法に基づいては、医療と保護、両面をやらなければならぬ。医療の問題は一般の保険並みですからそれで片づいている。ところが保護の部分は全然考慮されていない。ですから、その証拠を挙げると、例えば今一般の病院では差額ベッド料が許されているわけですね。ところが、局長も大臣も余り御存じなかろうけれども、精神病院には保護室というのがある。これは一人部屋なんです。そして手がかかるものですから、今はテレビを各部展ごとに設置をして、常に看視をする。ところがこれは別に差額ベッド料をいただくわけでも何でもない。これは保護の部分ですね。非常に手間がかかるし、金もかかる。だからなかなか保護室をつくらぬ。一番困っているのは行政なんですよ。とにかくどうにも手がつかぬ。警察がとにかく収容してもらいたいと言ってきても、収容する部屋がありません。保健所がそうですね。福祉事務所がそうです。町村役場がそうですね。行政が一番困っているのですよ。だから、精神衛生法に基づく保護の部分は当然御検討をいただかなければならぬのじゃなかろうかと思うのです。そして困っておるのは行政ですからね。家族も困りますよ。暴れてしょうがない、ところが収容するところがない。たらい回しですよ。それが、今申し上げますように、精神衛生法の精神というものか今までの保険医療の中で考慮されなかったということで、これはほとんど今まで論議されていませんから、この点だけはぜひこの際はっきり御見解を聞いて、善処していただきたい、こういうように思いますので、一言お願いいたします。
○渡部国務大臣 先生の御意見、大変貴重なものとお聞かせいただきましたので、今の先生の御意見等、今後の行政の中に十分反映するように努めてまいりたいと思います。
○河野(正)委員 大臣から今的確にお答えいただきましたから、保険局長から改めて聞く必要はないけれども、やはり作業するのはおたくですから、ひとつ局長も、今の精神衛生法に基づく保護の部分については当然考慮しなければならぬということを一言御確認願いたいと思います。
○吉村政府委員 先生の御指摘、まことにごもっともだと思います。それで、保護室に関する限りは基準看護の点数で対処する方法、それから今先生から差額徴収ということも御指摘がありましたか、差額徴収というのは患者の希望によってやる分野でございますので、保護室について差額徴収をするというのは余り適当でない、したがって保険の診療報酬の方で物事を考えていくべきではないか、こういうように考えて、そういう線に沿ってひとつ検討をさせていただきます。
【略】
○有馬委員長 この際、橋本龍太郎君外四名から、本案に対する修正案が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。橋本龍太郎君。
○橋本(龍)委員 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党・新自由国民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
【略】
 第八に、昭和五十九年七月一日から施行するとされていた部分の施行期日については、公布の日から起算して三カ月を超えない範囲内において政令で定める日からとすること等であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
○有馬委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 この際、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。渡部厚生大臣
○渡部国務大臣 健康保険法等の一部を改正する法律案に対する修正案については、政府としてはやむを得ないものと認めます。
○有馬委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に付します。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。野呂昭彦君。
○野呂委員 私は、自由民主党保新自由国民連合を代表して、ただいま議題となっております健康保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対して自由民主党・新自由国民連合が提出した修正案につきまして、修正案及び修正案を除く原案に賛成の意を表するものであります。
【略】
 このように、健康保険法等の一部を改正する法律案並びに自由民主党・新自由国民連合提出の修正案は、二十一世紀に備え、医療保険制度の確固たる基盤づくりを図るものであり、私どもといたしましては、この修正案及び修正部分を除く原案に賛意を表するものであります。
 これをもちまして、私の討論を終わります。(拍手)
○有馬委員長 池端清一君。
○池端委員 私は、政府提案の健康保険法等の一部を改正する法律案及び自由民主党・新自由国民連合提案の同法案に対する修正案のいずれにも反対する立場から、日本社会党・護憲共同を代表して、集約的に反対の意見を申し上げたいと思います。
【略】
 以上、私は、給付水準を引き上げつつ医療効果を高めるという医療保障の基本的な観点に立って、原案並びに修正案に反対する理由を申し上げました。
 どうか、政府・自由民主党におかれては、今国会も余すところ二十七日となりましたが、いま一度深く反省して、我々とともに本法案を廃案とする歴史的決断をするよう強く求めて、私の反対討論を終わる次第であります。(拍手)
○有馬委員長 橋本文彦君
○橋本(文)委員 私は、公明党国民会議を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案並びに修正案に対しまして、反対の立場から討論を行うものであります。
【略】
 以上、今回の健保改正案は、国民の福祉向上あるいは国民の健康と生命を守るに値しない法案であり、断じて賛成できるものではありません。
 したがって、政府原案、同修正案に対し、いずれも反対することを表明し、反対討論を終わります。(拍手)
○有馬委員長 塩田晋君。
○塩田委員 私は、民社党・国民連合を代表し、ただいま議題となっております健康保険法等の一部を改正する法律案について、修正案並びに修正部分を除く原案に対し、反対の討論を行うものであります。
【略】
 さらに、家庭医の制度化等プライマリーケアの充実を図り、病院経営の安定、ナーシングホームなど中間施設の整備、医療機関福祉施設との有機的連係など、いつでも、どこでも、だれもが最良の医療を受けられる体制の確立とあわせて、医薬分業の推進、技術重視の診療報酬体系の確立、不正請求や過剰請求の解消及びレセプト審査の充実など医療費のむだをなくするため、政府が全力を尽くして取り組んでいただきたいことを強調し、私の討論を終わります。(拍手)
○有馬委員長 田中美智子君。
○田中(美)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 私は、まず、本法案に対する採決が今行われようとしていることに強く抗議いたします。本法律案は、制度発足以来五十数年にわたって堅持されてきた、本人十割給付の大原則を崩すなど、国民生活にとってゆゆしき重大問題を含んだ法案です。それゆえに、本委員会での審議は、慎重の上にも慎重を期して行われなければならないものです。ところが、連合審査の与党単独議決、議事進行動議の提出など、異常事態の繰り返しによって、十分な審議も尽くされないまま採決しようとしているからです。
 次に、本法案に反対する理由です。
【略】
 以上が反対の主な理由であります。
 なお、修正案は、これまで述べた本法律案の基本的な問題には何ら触れられておらず、検討に値するものではありません。当然反対です。政府は、請願や地方議会決議に示された国民の反対の声に真摯に耳を傾け、本法案を撤回するよう要求して、私の反対討論を終わります。(拍手)
○有馬委員長 菅直人君。
○菅委員 私は、社会民主連合を代表して、政府提案の健康保険法等の一部を改正する法律案並びに自由民主党・新自由国民連合提出の修正案について、反対の立場から討論を行います。
【略】
 自民党提出の修正案では、六十一年度以降の二割自己負担導入は国会承認が必要とされたものの、根本的には撤回をされておらず、国保やサラリーマン家族の給付の引き上げは将来のこととされ、時期は相変わらず不明確のままであります。
【略】
 このように、今回の健保法改正案、そして自民党提出の修正案は、社会保障水準を切り下げるものであり、これを突破口にさらなる切り下げも心配され、医療保険制度の将来に大きな不安を覚えるものであり、断じて認めることはできません。
 以上のような理由から、政府原案にはもちろん、自民党・新自由国民連合提出の修正案にも強く反対であることを重ねて申し上げ、私の討論を終わります。(拍手)
○有馬委員長 これにて討論は終局いたしました。
○有馬委員長 これより健康保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、橋本龍太郎外四名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○有馬委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。
 次に、ただいま可決いたしました修正案の修正部分を除いた原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○有馬委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
○有馬委員長 この際、稲垣実男君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党国民会議民社党・国民連合及び社会民主連合五派共同提案に係る、本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。村山富市君。
○村山(富)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党国民会議民社党・国民連合及び社会民主連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    健康保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
 政府は、次の事項につき、適切な措置を講ずるよう努力すべきである。
【略】
以上であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
○有馬委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 稲垣実男君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○有馬委員長 起立多数。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。
 この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡部厚生大臣
○渡部国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。

本会議会議録第35号(101衆昭和59年7月13日)
○有馬元治君 ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、一部負担金制度及び療養費制度の改正、日雇労働者健康保険の対象者に対する健康保険制度の適用、国民健康保険の退職被保険者等に係る給付と負担の合理化及び国庫補助制度の合理化等の措置を講ずることにより医療保険制度の改革を図ろうとするもので、その主な内容は、
【略】
 第四に、日雇労働者健康保険制度を廃止し、日雇労働者を健康保険の日雇特例被保険者とするとともに、その給付内容及び保険料については、就労の特性を考慮し一般の被保険者と実質的に同様とすること、【略】等であります。
 本案は、去る四月三日の本会議において趣旨の説明が行われ、同日付託となり、四月五日に渡部厚生大臣から提案理由の説明を聴取し、四月十二日質疑に入り、五月九日には参考人から意見を聴取し、七月四日には公聴会を開き、また、大阪府に委員を派遣し現地において意見を聴取するとともに、七月九日には地方行政委員会、大蔵委員会、運輸委員会と連合審査会を行い、七月十二日には中曽根内閣総理大臣の出席を求め質疑を行うなど慎重かつ熱心な審査を行い、同日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、被用者保険本人の一部負担金、任意継続被保険者制度の特例、日雇特例被保険者についての療養の給付期間及び国民健康保険の被保険者の給付割合等について自由民主党・新自由国民連合より修正案が提出され、討論を行い、採決の結果、本案は自由民主党・新自由国民連合提出の修正案のとおり多数をもって修正議決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(福永健司君) 討論の通告があります。順次これを許します。池端清一君。
    〔池端清一君登壇〕
○池端清一君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案に対して、断固反対の立場から討論を行うものであります。(拍手)
 私は、今回の改正案が国民の命と健康そして暮らしを脅かし、受益者負担の名のもとに国としての社会保障の責任を放棄し、我が国社会保障の歴史に重大な汚点を残すものであって、断じて承服しがたいものであることをまずもって指摘せざるを得ないのであります。以下、順次反対の理由を明らかにしてまいりたいと思います。
【略】
 本改正案のこのような性格が顕著にあらわれているもう一つの例として、日雇労働者健康保険の問題がございます。すなわち、日雇労働者と一般の労働者との間で給付と負担の均衡を図るとしながらも、日雇健保の保険料は、政管健保の八・四%よりはるかに高い一一%にしようというのであります。政管健保加入労働者の賃金水準と比較して六割以下という低所得の日雇労働者の保険の方が逆に高い保険料率となるということは、一体どういうことでありましょうか。全く理解に苦しむところであります。ここにも本改正案の性格が端的にあらわれていると言っても決して言い過ぎではないと思うのであります。
【略】
 以上、私は、本改正案の幾つかの問題点を指摘し、本改正案に対する反対の態度を明らかにいたしました。今日多くの勤労国民は、依然として長引く不況のもとで、失業と倒産の苦しみを余儀なくされております。臨調行革路線のもとで社会保障は後退の一途をたどっております。我が国は世界一の長寿国にはなったものの、国民の七・九人に一人が病人であるとの厚生省調査でも明らかなように、国民の健康がむしばまれているのであります。
 中曽根総理初め政府・自由民主党の皆さん、民のかまどは決してにぎわってはおりません。塗炭の苦しみを余儀なくされているのであります。この現実のもとで、私は大砲よりもバターの道を選びます。医療のさたも金次第という世の中をつくらないために、私は断じて本改正案には賛成できないことを重ねて申し上げて、私の反対討論を終わるものであります。(拍手)
○議長(福永健司君) 稲垣実男君。
    〔稲垣実男君登壇〕
稲垣実男君 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表して、ただいま議題となっております健康保険法等の一部を改正する法律案及びこれに対して自由民主党・新自由国民連合が提出した修正案につきまして、修正案及び修正案を除く原案に賛成の意を表するものであります。(拍手)
【略】
 このように、健康保険法等の一部を改正する法律案並びに自由民主党・新自由国民連合提出の修正案は、二十一世紀に備え医療保険制度の揺るぎない基盤づくりを行うものであり、私どもといたしましては、この修正案及び修正部分を除く原案に賛意を表するものであります。
 これをもちまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
○議長(福永健司君) 水谷弘君。
    〔水谷弘君登壇〕
○水谷弘君 私は、公明党国民会議を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。(拍手)
【略】
 以上申し述べたとおり、今回の健保改正案は、国民の福祉向上あるいは国民の健康と命を守るに値しない法案であり、しかも長期重症患者ほど負担が重く、病床にあって不安と苦痛に耐え一日も早く健康な日々をと願っておられる患者とその家族に余りにも非情なものとなり、断じて賛成できるものではありません。したがって、政府原案並びに同修正案に対し、いずれも反対することを表明し、私の討論を終わります。(拍手)
○議長(福永健司君) 小川泰君。
    〔小川泰君登壇〕
○小川泰君 私は、民社党・国民連合を代表しまして、ただいま議題となっております健康保険法等の一部を改正する法律案について、反対の討論を行うものであります。(拍手)
【略】
 何はともあれ、本案は命にかかわる問題だけに、慎重に法案の取り扱いをも含めて再吟味されることを強く望みまして、私の討論を終わります。(拍手)
○議長(福永健司君) 辻第一君。
    〔辻第一君登壇〕
○辻第一君 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。(拍手)
【略】
 以上、反対の理由を明らかにしてまいりました。
 最後に、私は、何物にもかえがたい人間の命や健康を守る医療の切り捨てであるこの健保大改悪法案に怒りを込めて断固反対を表明するとともに、この健康保険制度の改悪を阻止するために、広範な国民と力を合わせ、引き続き全力を挙げて闘う日本共産党・革新共同のかたい決意を表明し、反対の討論を終わります。(拍手)
○議長(福永健司君) これにて討論は終局いたしました。
○議長(福永健司君) 採決いたします。
 この採決は記名投票をもって行います。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。――閉鎖。
    〔議場閉鎖〕
○議長(福永健司君) 氏名点呼を命じます。
    〔参事氏名を点呼〕
    〔各員投票〕
○議長(福永健司君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。――閉鎖。
    〔議場閉鎖〕
○議長(福永健司君) 投票を計算いたさせます。
    〔参事投票を計算〕
○議長(福永健司君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
    〔事務総長報告〕
 投票総数 四百七十六
  可とする者(白票)      二百五十五
    〔拍手〕
  否とする者(青票)      二百二十一
    〔拍手〕
○議長(福永健司君) 右の結果、本案は委員長報告のとおり決しました。(拍手)

本会議会議録第40号(101衆昭和59年8月7日)
○議長(福永健司君) 日程第一、健康保険法等の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。
○議長(福永健司君) 採決いたします。
 本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(福永健司君) 起立多数。よって、参議院の修正に同意するに決しました。

【20050715:参議院審議は、にわとりショコラへ移転しました。】

健康保険法等の一部を改正する法律(昭和59年8月14日法律第77号)【附則第1条・第40条のみ】
 
附則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。【略】
 
精神衛生法及び結核予防法の一部改正)
第四十条 次に掲げる法律の規定中「、日雇労働者健康保険法(昭和二十八年法律第二百七号)」を削る。
 一 精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)第三十二条の四第一項
 二 結核予防法(昭和二十六年法律第九十六号)第三十七条第一項
 
   内閣総理大臣  中曽根康弘
   大蔵大臣  竹下登
   文部大臣  森喜朗
   厚生大臣  渡部恒三
   農林水産大臣  山村新治郎
   労働大臣  坂本三十次
   自治大臣  田川誠一