精神医療に関する条文・審議(その38)

前回(id:kokekokko:20050530)のつづき。初回は2004/10/28。
精神衛生法の改正についての国会審議。今回は昭和60年法律第37号での改正をみてみます。
「国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律」によって、国の補助金負担の割合が変更されました。この中で、国が50%を超える高率を負担している補助金について、昭和60年度は一律に10%カットするとされ、精神衛生法における国の負担にも適用されることとなりました。
これに対して、社会福祉制度(とくに生活保護)についてこのような削減をすることは福祉の後退ではないかという批判がなされました。また、法案が、諸々の補助について一括して削減するという方式を採ったために、それぞれの制度について委員会で個別に検討することができない点も指摘され、さらに、昭和60年度以後についても同様の削減が続くのではないかという懸念もありました。
非常にたくさんの議論がされていますがここでは省略して、法案の成否に絞ってみてみます。

国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案【第21条と附則第1項から第3項のみ掲載】
精神衛生法の一部改正)
第二十一条 精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
 附則第三項を次のように改める。
 3 第三十条第二項の規定の昭和六十年度における適用については、同項中「十分の八」とあるのは、「十分の七」とする。
 
附則
 (施行期日等)
1 この法律は、四月一日から施行する。
 
2 この法律による改正後の法律の規定(昭和六十年度の特例に係る規定を除く。)は、同年度以降の年度の予算に係る国の負担(当該国の負担に係る都道府県又は市町村の負担を含む。以下この項及び次項において同じ。)若しくは補助(昭和五十九年度以前の年度における事務又は事業の実施により昭和六十年度以降の年度に支出される国の負担又は補助及び昭和五十九年度以前の年度の国庫債務負担行為に基づき昭和六十年度以降の年度に支出すべきものとされた国の負担又は補助を除く。)又は交付金の交付について適用し、昭和五十九年度以前の年度における事務又は事業の実施により昭和六十年度以降の年度に支出される国の負担又は補助、昭和五十九年度以前の年度の国庫債務負担行為に基づき昭和六十年度以降の年度に支出すべきものとされた国の負担又は補助及び昭和五十九年度以前の年度の歳出予算に係る国の負担又は補助で昭和六十年度以降の年度に繰り越されたものについては、なお従前の例による。
 
3 この法律による改正後の法律の昭和六十年度の特例に係る規定は、同年度の予算に係る国の負担又は補助(昭和五十九年度以前の年度における事務又は事業の実施により昭和六十年度に支出される国の負担又は補助及び昭和五十九年度以前の年度の国庫債務負担行為に基づき昭和六十年度に支出すべきものとされた国の負担又は補助を除く。)並びに同年度における事務又は事業の実施により昭和六十一年度以降の年度に支出される国の負担又は補助、昭和六十年度の国庫債務負担行為に基づき昭和六十一年度以降の年度に支出すべきものとされる国の負担又は補助及び昭和六十年度の歳出予算に係る国の負担又は補助で昭和六十一年度以降の年度に繰り越されるものについて適用し、昭和五十九年度以前の年度における事務又は事業の実施により昭和六十年度に支出される国の負担又は補助、昭和五十九年度以前の年度の国庫債務負担行為に基づき昭和六十年度に支出すべきものとされた国の負担又は補助及び昭和五十九年度以前の年度の歳出予算に係る国の負担又は補助で昭和六十年度に繰り越されたものについては、なお従前の例による。

本会議会議録第15号(102衆昭和60年3月20日
○議長(坂田道太君) この際、内閣提出、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣竹下登君。
    〔国務大臣竹下登君登壇〕
国務大臣竹下登君) ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には極めて厳しいものがあります。このような中で、我が国経済、社会の柔軟性を維持し、今後の内外経済の変化に適応していくためには、財政の対応力の回復が最も急を要する政策課題であります。
 このため、政府は、昭和六十年度予算におきましては、引き続き財政改革を強力に推進するため、歳出面において、既存の制度、施策の見直しを行うなど、すべての分野にわたり経費の徹底した節減合理化に努め、その規模を厳に抑制したところであります。
 特に、補助金等につきましては、すべてこれを洗い直し、人件費補助等の見直し、高率補助率の引き下げ、その他廃止、合理化など徹底した整理合理化を積極的に進めました。なお、いわゆる行革関連特例法による特例措置については、所要の継続措置を講ぜざるを得ないのでありますが、現下の厳しい財政事情等にかんがみ、ぜひ御理解を賜りたいと存じます。
 本法律案は、以上申し述べましたうち、立法措置を要するものについて、国の財政収支の改善を図るとともに、財政資金の効率的使用を図るため、累次の臨時行政調査会の答申の趣旨を踏まえ、国の負担金、補助金等に関する整理及び合理化並びに臨時特例等の措置を定めるものであります。すなわち、本法律案は、国の負担金、補助金等に関し、地方公共団体一般財源による措置への振りかえ及び交付金措置への移行等を図る必要があるものについて所要の措置を講ずるとともに、いわゆる行革関連特例法の各特例措置についての昭和六十年度における所要の継続措置及び国の負担または補助の割合が二分の一を超える負担金、補助金等についての昭和六十年度における負担または補助の割合の引き下げ措置を定めております。なお、この引き下げ措置の対象となる地方公共団体に対しましては、その事務または事業の執行及び財政運営に支障を生ずることのないよう財政金融上の措置を講ずることといたしております。
 以上、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げましたが、政府といたしましては、今後ともさらに財政改革を推進するため、渾身の努力を重ねてまいる所存であります。(拍手〕

大蔵委員会会議録第11号(102衆昭和60年3月22日)
○竹下国務大臣 ただいま議題となりましたあへん特別会計法を廃止する法律案、関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
【略】
 次に、国の補助金等の整備及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案につきまして、御説明申し上げます。
 御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には極めて厳しいものがあります。
 このため、政府は、昭和六十年度予算におきましては、引き続き財政改革を強力に推進するため、歳出面において、既存の制度、施策の見直しを行うなど、すべての分野にわたり経費の徹底した節減合理化に努め、その規模を厳に抑制したところであります。
 特に、補助金等につきましては、すべてこれを洗い直し、人件費補助等の見直し、高率補助率の引き下げ、その他廃止、合理化など徹底した整理合理化を積極的に進めました。なお、いわゆる行革関連特例法による特例措置については、所要の継続措置を講ぜざるを得ないのでありますが、現下の厳しい財政事情等にかんがみ、ぜひ御理解を賜りたいと存じます。
 本法律案は、以上申し述べましたうち、立法措置を要するものについて、国の財政収支の改善を図るとともに、財政資金の効率的使用を図るため、累次の臨時行政調査会の答申の趣旨を踏まえ、国の負担金、補助金等に関する整理及び合理化並びに臨時特例等の措置を定めるものであります。
 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。
【略】
 第五に、国の負担または補助の割合が二分の一を超える負担金、補助金等を規定している四十法律について、昭和六十年度における当該負担または補助の割合の引き下げに係る措置を定めることとしております。なお、この引き下げの対象となる地方公共団体に対し、その事務または事業の執行及び財政運営に支障を生ずることのないよう財政金融上の措置を講ずることとしております。
 以上が、あへん特別会計法を廃止する法律案、関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案の提案理由及びその内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

大蔵委員会会議録第18号(102衆昭和60年4月12日)
○越智委員長 本案に対して堀之内久男君他三名より修正案が提出されております。
 この際、提出者より趣旨の説明を求めます。堀之内久男君。
 国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案に対する修正案
 【略】
○堀之内委員 ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案に対する修正案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。
 【略】
 第二は、施行期日に関するものであります。
 御承知のとおり、この法律の施行期日は、原案では、「昭和六十年四月一日」と定められておりますが、既にその期日を経過いたしておりますので、これを「公布の日」に改めるとともに、所要の経過措置等を定めようとするものであります。
 以上が、本修正案の提案の趣旨及びその内容であります。
 何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
○越智委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
○越智委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付します。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。熊谷弘君。
○熊谷委員 私は、自由民主党・新自由国民連合を代表し、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案及び同法律案に対する修正案に賛成の意見を述べるものであります。
 申し上げるまでもなく、現下の我が国財政は、まことに容易ならざる状況にあり、こうした状態が続けば、高齢化、国際化等、今後の我が国社会経済の変化に財政が適切に対応することがますます困難になるのみならず、後代の国民の負担が累増するという憂慮すべき事態に立ち至ることは明白であります。したがいまして、ここにおいて、さらに思い切った行財政改革に取り組まなければ、後世に重大な悔いを残すことになると考えざるを得ません。
 先般成立いたしました昭和六十年度予算においては、このような見地から、歳入歳出の両面にわたり徹底した見直しを行い、その結果、一般歳出を三年連続で対前年度減額とする等の努力により、公債発行額を一兆円減額することが可能となったのであります。
 特に、一般歳出の四割を超える補助金等については、これをすべて洗い直し、老人医療給付費等補助金の七百二億円の増加を初めとする、真にやむを得ない種々の増加要因を織り込んでも、なお、対前年度で千三百四十四億円の減額を達成いたしました。これは、前年度に対し、初めての二年連続の減額でありまして、特に高く評価されるべき点であると考えるものであります。
 本案は、まさにこのような六十年度における補助金等の整理合理化の中核をなす諸施策を措置するものであり、六十年度予算と一体不可分の重要な法案であります。行財政改革推進の重要性、そして現今の国の財政状況を考えますと、いずれの措置もまことに必要かつやむを得ないものと考える次第であります。
 本案の内容を見ますと、【略】第二は、高率補助率の引き下げであります。補助率は、それぞれの補助金等の創設時あるいはその後の経緯等により定められておりますが、高度成長期の財政状況のゆとりをも背景としつつ、相互に競い合い、次第に高められたこともあって、一般的に補助率が高目に維持されてきた傾向があるとの指摘も見られるところであります。したがいまして、補助率についても、社会経済情勢の変化等を踏まえつつ、絶えず見直しを行っていくことが重要であります。
 このような観点から、臨調答申等においても、補助率の総合的見直しの必要性が繰り返し強調されているところであり、現下の厳しい財政状況にかんがみ、高率補助率の引き下げを行うことはまことにやむを得ない措置であります。
 なお、本措置に関し、その地方財政に与える影響につきましては、別途地方財政の円滑な運営に支障が生ずることのないよう極めて適切な対策が講じられているところであります。
 【略】
 また、施行期日を公布の日に改める等の修正案につきましては、事の性質上当然の措置であると考えるものであります。
 最後に、私は、政府が行財政改革の推進に引き続き積極的に取り組み、補助金等を含めた歳出全般にわたる節減合理化を推進し、限られた財源事情の中で、財政資金の効率的活用にさらに努められるよう切に希望いたしまして、本案及び修正案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
○越智委員長 渋沢利久君。
○渋沢委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案に対し、反対の立場から討論を行います。
 今回の補助金一括法案で一律削減の対象となった国の支出金の大半は国庫負担金であり、国が政策的意図に基づいて奨励的、恩恵的に支出する国庫補助金とは明確に区別されるものであります。負担金とは、国と地方とに密接な関連を持つ事業について、共同責任の立場から国が義務的に負担しなければならない経費であります。したがって、地方財政法第十条、十一条は、各事業ごとに国と地方自治体の負担割合を厳格に定めているのであります。今回、いかに臨時措置とはいえ、国の財政上の都合だけで負担割合を一方的に変更するということは、まさに国の責務を放棄した暴挙と言わざるを得ません。
 しかも、社会保障制度を初め文教、農林、建設、運輸、地方自治など各方面にわたる制度を、その趣旨、目的、歴史的経過を踏まえて検討し、見直しを行った結果として負担率が引き下げられるということであるならばまだしも、何よりもまず金の削減が優先し、財政の帳じり合わせだけのために強行される負担率の一律削減は、まさに本末転倒、国の地方へのツケ回し、そしてまさに行革の名に値しない負担転嫁以外の何物でもないということを指摘しなければなりません。
 今回一律削減される補助負担金は、生活保護費一千五百十億円、児童保護費六百六十七億円、老人保護費三百二十二億円など、厚生省関係の合計二千五百五十億円が大半を占めているのであります。憲法第二十五条を指摘するまでもなく、社会保障、国民の福祉に対する国の責務というものは、そのときどきの政府の都合や財政事情によって左右されては断じてならないのであります。各種給付の水準そのものは、当面現行水準が維持されるといたしましても、負担率の地方への転嫁が、やがては地方負担の増大から現場窓口での受給削減につながり、社会保障制度全般の縮小、削減に結びついていくことは明らかであります。このことは、福祉国家の崩壊に通ずる道であると言っても言い過ぎではありません。地方に財政負担を与えぬ万全の措置をしたという言いようは、全くこれは事実に反するものであります。
 一律カット分五千八百億円のうち、交付税の特例加算一千億円、国が元利償還を確実に約束している二千億円を除いた地方起債分二千八百億円は、結局将来の負担として地方財政に重くのしかかってくるのであります。
 さらに、政府のさまざまな説明、言いわけにもかかわらず、今回の一年限りの暫定措置が、今後一年また一年と延長され、なし崩し的に負担率削減が恒久化されないという保障はどこにもないのであり、古くは一九五四年に一年限りの特例として立法化された補助金臨時法が、既に三十年間も延長されて、今回の法案でついに恒久化措置がとられようとしているのを見ても明らかなように、また、一九八一年の行革特例法がやはり本法案で一年延長されようとしているのを見ても明らかなように、政府特に大蔵省がその恒久化を策しているということは自明の理であります。
 行革特例法の一年延長による厚生年金事業への国庫負担金の繰り入れ四分の一カットの延長もまた大きな問題であります。
 総じて、今回の一括法案は、補助金制度の改革とは何らかかわりのない、ただの財政の帳じり合わせにすぎないのであります。補助金、負担金の整理合理化を進めるに当たっては、そのための前提条件として、まず各制度の内容の検討、国と地方の機能分担、役割分担の見直しが行われるのでなければなりません。国民の生活、福祉水準を充実向上させる方向で、また、地方自治体の自主性とその権限を拡大強化する方向でその改革はなされなければなりません。その際、交付税率の引き上げを初め、交付税総額の大幅な増額など、権限に見合った財源手当を行う必要があることも、言うまでもありません。
 最後に、今回の一括法案は、大蔵省、総理府、文部省、厚生省、農水省運輸省建設省自治省にまたがる五十九の法律、六十六項目を一つにくくって処理するという、まさに異例の法案であります。しかも、関係委員会との連合審査は行われましたものの、各省庁にわたる法案を本大蔵委員会のみで審議しようとした政府と自民党の姿勢も、これは議会史に汚点を残したものと言わなければならない問題であります。行政府の独走に対して追随するのではなしに、これに歯どめをかける勇気と見識の回復を求めながら、本法案に対して反対の意思表示をいたすものであります。
 同時にまた、突如としてここに提出されましたこの修正案について一言付言いたしまするならば、まさに国会運営の最も大きな責任を分かつ与党としてのこの無責任さそのものをあらわしたものであると言わざるを得ないのであります。(拍手)まさにこの修正案の提案の仕方そのことを含めて、その内容はもとより、これに対して反対の意思表示を行うものであります。
 政府は、本委員会において審議され、取り上げられましたさまざまな問題点に対しまして、今後襟を正して誠実に対応されんことを強く申し添えて、本案に対する反対討論を終わるものであります。(拍手)
○越智委員長 坂口力君。
○坂口委員 公明党国民会議を代表いたしまして、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案並びに同修正案の採決に当たりまして、反対の立場から討論を行います。
 三月二十二日より十一日間に及ぶ議論の中で鮮明にされましたことは、国と地方の役割と負担割合の将来が不明確のままに補助金の一律カットが提案されたことに対する政治責任であります。
 国の財政危機が看過しがたい状態に立ち至っていますことは一応理解のできるところでありますが、地方の仕事量を増加させたまま、今後の方針もなく補助金を一律にカットし、地方に押しつけることは、財政上の問題のみならず、地方の中央政府に対する政治不信を増大させる以外の何物ででもありません。
 しかも、一年限りと法案に明記しながら、審議の中では、総理、大蔵大臣ともに、六十一年度以降は白紙と答弁され、地方自治体から、このままでは永久化するのではないかという疑惑が起こっておりますことも当然と言わなければなりません。
  【略】
 次に、総理は答弁の中で、本法案は国と地方の負担の問題であり、住民の利益には直接関係はないと述べられました。しかし、参考人からは、財政難の道府県や市町村においては、文教、福祉を初め、公共事業量にも影響が出るとの発言もあり、補助金交付税化によって保健婦の設置が無視され、住民の健康が守れないという現場からの切迫した声も出ているのであります。
 この法案は、まさに直接住民の利益に影響するものであり、総理の発言は、地方自治体や国民生活の実態から遠いものであることをあえて指摘しなければなりません。
 【略】
 最後になりましたが、九省庁にわたり五十九法律に関係する内容を、先に予算案で金額を決定し、後に一括して法案化されたその手続に対しても、国会の責任遂行上の観点から強い反対を表現するものであります。
 先人の言葉に、「政悪ければ民をしてこうかつならしむ」とあります。この法案が、民をしてこうかつならしむることにならなければと、大きな危惧を抱きながら、反対討論を終わります。(拍手)
○越智委員長 安倍基雄君。
○安倍(基)委員 私は、民社党・国民連合を代表して、本法案及び修正案に対して、一括して反対の討論を行います。
 私は、国の財政が非常に困難な状況にあることを知っております。また、今回削減の対象となった補助金の中には、見直しを必要とする時期に来ているものもあることも事実であります。また、我が党としては、地方の行革に取り組まねばならぬと従来から主張してまいりました。しかし、我々は次の理由から、本法案は我々の意図するものとはほど遠いものであり、反対せざるを得ないと考えるものであります。
 第一の理由は、これが国の負担の地方への押しつけとなり、これ以上の負担増にたえられない自治体が数多く生じるのであります。これが、本法案が地方にツケを回したにすぎないと批判されるゆえんであります。
 第二の理由は、この一律カットが補助金のそれぞれの趣旨を考慮することなく行われたことであります。特に、国が本来負担すべき福祉、教育の分野についてカットが行われたことは、国民へのサービスの低下が懸念されるのみならず、国と地、方との信頼関係の上でも大きな問題を投げかけるものであるからであります。
 【略】
 以上をもって反対討論を終わります。(拍手)
○越智委員長 正森成二君。
○正森委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題となりましたいわゆる補助金一括カット法案及び自由民主党・新自由国民連合の修正案に対し、反対の討論を行います。
 まず最初に、広範多岐にわたる多数の法案を一括提出した問題であります。
 本法案のカット対象は、社会保障、文教、生活密着型公共事業関係が中心となっており、いずれもが長年にわたって血のにじむような国民の声と闘いを反映して築き上げられてきたもので、国会では、社労、文教、地行、建設委員会など八常任委員会と五特別委員会の所管にかかわるものであります。ところが、四年前の行革一括法を含め、何と七十五本もの多数の法律を、国の負担、補助金等の整理合理化という一点で一括提出し、あまつさえ修正案でさらに二本を追加し、七十七本もの法律を当大蔵委員会だけに押しつけたことは全く前代未聞であります。
 我が党が、国会の審議権を著しく制約したこのようなやり方に断固反対し、本一括法案の撤回と各法律ごとの再提出を主張してきたのは当然のことであります。
 次に、法案自体の持つ重大かつ深刻な問題についてであります。
 第一に、福祉、文教、地方財政に関する原理原則のじゅうりん、国の責任の放棄と国民生活への深刻な影響の問題であります。
 今回の措置では、民生関係削減額の九割以上、公共事業関係のほとんどが、本来国が進んで経費の全部または一部を負担しなければならない国庫負担金そのものなのであります。その一方的カットは、地方への負担転嫁を禁じた地方財政法の原則を平然と無視し、国の責任を放棄したものであります。特に、生活保護法や義務教育国庫負担法の原理原則をじゅうりんする補助金カットや一般財源化は重大であり、断じて容認できないものであります。
 政府は、口を開けば、国と地方との負担区分の調整で、国民には直接影響なしと述べておりますが、これはとんでもないうそであります。審議で明らかになったように、生活保護などでの非人道的な受給制限の強化、打ち切り数をケースワーカーが競争させられるという事態、保育料の値上げや保育所の閉鎖、老人ホーム入所料などの値上げ、教育条件悪化などの傾向が、本法案により、一層拍車がかかることは必至であります。
 そして、これら福祉、文教、生活密着型公共事業などについて、地方自治体の財政力の強弱によって、本来平等、同質であるべき住民への給付も、今後ますます落差が広がることも必至であります。
 第二に、政府の一年限りの措置という言い分が全く根拠のないことであります。
 昨年十二月の大蔵、厚生、自治三大臣が交わした覚書には、確かに「昭和六十年度における暫定措置」とあります。しかし、この覚書は社会保障に係る申し合わせであり、それ以外の大部分については何の約束もされておりません。むしろ審議で明らかになったように、大蔵省の「中期展望」で、投資部門について今年度の削減率のまま作成されていたことは、「一年限り」のうそを既に証明したものであります。
 さらに、その社会保障についても、「国と地方の間の役割分担・費用負担の見直し等とともに、」検討を進めて一年以内に結論を得るとしているだけで、見直しの結果、六十一年度以降もカットが恒常化する可能性は大いにあり、しかも、そのときは国からの財源措置は何らとられないことになりかねません。
 【略】
 最後に、以上重大な内容を持つ本法案は、政府の臨調行革路線の一環であり、軍拡、大企業擁護の政策によって生じた財政赤字のツケを、責任のない国民と地方自治体に一方的に転嫁し押しつけるもので、中曽根反動行革路線を一層新たな段階に押し上げようとするものにほかなりません。だからこそ、全国八割の自治体がこの法案に反対の決議を上げ、国民の怒りも高まっているのであります。
 日本共産党・革新共同は、このような臨調行革路線の新たな段階を画す本法案に断固反対し、行財政改革を国民本位の方向に根本的に転換するよう強く要求し、私の反対討論を終わります。(拍手)
○越智委員長 これにて討論は終局いたしました。
○越智委員長 これより国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案について採決に入ります。
 まず、堀之内久男君外三名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○越智委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○越智委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
○越智委員長 ただいま議決されました本案に対し、中川秀直君外三名より、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党国民会議民社党・国民連合四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 この際、提出者より趣旨の説明を求めます。上田卓三君。
○上田(卓)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、案文を朗読し、趣旨の説明にかえさせていただきます。
 各位の御賛同をお願い申し上げます。
    国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について十分配慮すべきである。
 一 今回の高率補助率の一律引下げ措置と行革関連特例法の延長措置は、一年間の暫定措置とすること。
【略】
 一 今回の各措置により、従来の行政水準とサービスが低下して国民生活に影響を及ぼさないよう万全を期すこと。特に社会保障及び教育の面において特段の配意をすること。
 一 地域振興と地域格差の是正を図るため、公共事業については、その長期計画の着実な進抄を図ること。
 以上。
○越智委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 お諮りいたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○越智委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣。
○竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。
 ありがとうございました。

本会議会議録第21号(102衆昭和60年4月16日)
○議長(坂田道太君) 日程第二、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。大蔵委員長越智伊平君。
越智伊平君 ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、国の財政収支の改善を図るとともに、財政資金の効率的使用を図るため、累次の臨時行政調査会の答申の趣旨を踏まえ、国の負担金、補助金等に関する整理及び合理化並びに臨時特例等の措置を定めようとするもので、その主な内容を申し上げますと、
 【略】
 第五に、地方公共団体に対する補助率が二分の一を超える補助金等を規定している四十法律について、昭和六十年度における当該補助金等の補助率の引き下げの措置を定めることとしております。
 なお、この引き下げの対象となる地方公共団体に対し、その事務または事業の執行及び財政運営に支障を生ずることのないよう財政金融上の措置を講ずることとしております。
 以上がこの法律案の概要であります。
 本案につきましては、去る三月二十二日竹下大蔵大臣から提案理由の説明を聴取し、二十七日から質疑に入り、以来、参考人から意見を聴取するとともに、四月五日には三重県及び岩手県に委員を派遣していわゆる地方公聴会を開催したほか、内閣委員会、地方行政委員会、文教委員会、社会労働委員会、農林委員会、運輸委員会、建設委員会との連合審査会を四回にわたり開会するなど慎重な審査を行いました。
 審査の過程におきましては、国と地方を通ずる行財政改革のあり方、地方公共団体への影響と地方財政対策の内容、国と地方の役割分担、費用負担の見直し、社会保障及び教育制度の意義と国の負担のあり方、暫定措置とされている高率補助率の一律削減等の来年度以降の取り扱い、補助金等の整理合理化の方策等各般の問題点にわたり熱心な論議が交わされましたが、その詳細は会議録によって御承知いただきます。
 かくて、去る四月十二日質疑を終了いたしましたところ、堀之内久男君外三名から、自由民主党・新自由国民連合提案による修正案が提出されました。
 修正案の要旨は、【略】施行期日を公布の日に改めるものであります。
 次いで、原案及び修正案を一括して討論に付しましたところ、自由民主党・新自由国民連合を代表して熊谷弘君からは賛成の旨の、日本社会党・護憲共同を代表して渋沢利久君、公明党国民会議を代表して坂口力君、民社党・国民連合を代表して安倍基雄君、日本共産党・革新共同を代表して正森成二君からは、それぞれ反対の旨の意見が述べられました。
 討論終局後、採決いたしました結果、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも多数をもって可決され、よって本案は修正議決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対しましては附帯決議が付されましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(坂田道太君) 討論の通告があります。これを許します。戸田菊雄君。
    〔戸田菊雄君登壇〕
○戸田菊雄君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、本法案に反対し、討論を行うものであります。
 第一の反対は、弱者切り捨ての措置だからであります。
 今回の国の負担、補助等の削減の対象は、もっぱら福祉、教育に置かれております。すなわち、高等学校の定時制教育及び通信教育振興法を改悪し、定時制通信教育手当国庫補助三分の一を廃止する、公立養護学校整備特別措置法の改悪で旅費の二分の一国庫負担を廃止する並びに教材費二分の一国庫負担を廃止、児童福祉法の改悪で児童相談所が行う相談、調査、判定及び指導に要する経費十分の八負担を廃止、身体障害者福祉法改悪で事務委託経費十分の五国庫負担の廃止、精神薄弱者福祉法改悪で相談負担経費十分の八国庫負担廃止等々であります。国費削減は、法律補助で八千四百二十億円、政令等で一千六十億円、計九千四百八十億円の削減となります。そして、その対象者はすべて弱者に対するものが大半を占めておるのであります。
 また、国庫補助金を廃止し一般財源化される国庫補助金は文部省、厚生省を初め五省庁にわたり、総額で四百二十三億円に上っております。このうち、文部省所管の義務教育費負担金の旅費分は二百十三億円、教材費分百二十九億円、計三百四十二億円で、一般財源化を初め文部省関係費だけで総額三百八十三億円になるのであります。三重県の地方公聴会保健婦さんは、一般財源化されると保健婦等の予算化はされなくなるのではないだろうか、こういう心配の言を言っておりました。地方自治体によっては、教職員旅費や学校配当の教材費が減額されるおそれ十分であります。
 公共事業費を除く国費削減の二千六百三十八億円のうち、二千五百五十二億円は厚生省の社会福祉関係費であります。その中でも、生活保護費は三百二十二億円、児童保護費六百六十九億円の削減となっております。殊に、生活保護法第一条は、国が生活に困窮するすべての国民に対してその最低限度の生活を保障すると明記されているとおり、一〇〇%国が負担すべきものであります。このように法を無視し、弱者切り捨ての政府の措置を容認するわけにはまいりません。
 【略】
 第四は、国会の審議権を軽視し、採決を奪うその不当性についてであります。
 国会は、言うまでもなく国権の最高機関であり、国民を直接代表する機関であります。憲法十三条。したがって、国会の意思決定手続は、できるだけ国民の意思を忠実に反映するように実質的な配慮がなされなければなりません。そのような配慮がなされることなく、ただ単に国会の意思イコール国民の意思という法的フィクションのみが押しつけられるならば、国民と国会は遊離し、議会制の危機は深まらざるを得ないということであります。国会の運営の問題が今日特に重視されるゆえんは、まさにここにあるわけであります。殊に、委員会制度は、実質的には議員活動の中心であり主役であります。現代国家においては、議院の審議すべき案件は件数も極めて多く、質も高度の専門的知識を要求するようになってきております。五十九案件と六十六項目、八委員会に関係する性格を異にする法案を一括して大蔵委員会で審議しろというのは、まさに審議権を軽視し、採決を奪い、議会制民主主義を破壊する憲法無視の暴挙と言わざるを得ません。強く反省を求めるものであります。
 最後に、生活保護費等は早期に補正予算を組んで現行法で支払うようにすること、また、補助金のあり方については、殊に人為的、恩恵的に交付する予算補助等については抜本的に改善すべきであることを申し添えて、私の討論を終わります。(拍手)
○議長(坂田道太君) これにて討論は終局いたしました。
○議長(坂田道太君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(坂田道太君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。

【20050715:参議院審議は、にわとりショコラへ移転しました。】

国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律(昭和60年5月18日法律第37号)【第21条と附則第1項から第3項のみ掲載】
精神衛生法の一部改正)
第二十一条 精神衛生法(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
 附則第三項を次のように改める。
 3 第三十条第二項の規定の昭和六十年度における適用については、同項中「十分の八」とあるのは、「十分の七」とする。
 
附則
 (施行期日等)
1 この法律は、公布の日から施行する。
 
2 この法律による改正後の法律の規定(昭和六十年度の特例に係る規定を除く。)は、同年度以降の年度の予算に係る国の負担(当該国の負担に係る都道府県又は市町村の負担を含む。以下この項及び次項において同じ。)若しくは補助(昭和五十九年度以前の年度における事務又は事業の実施により昭和六十年度以降の年度に支出される国の負担又は補助及び昭和五十九年度以前の年度の国庫債務負担行為に基づき昭和六十年度以降の年度に支出すべきものとされた国の負担又は補助を除く。)又は交付金の交付について適用し、昭和五十九年度以前の年度における事務又は事業の実施により昭和六十年度以降の年度に支出される国の負担又は補助、昭和五十九年度以前の年度の国庫債務負担行為に基づき昭和六十年度以降の年度に支出すべきものとされた国の負担又は補助及び昭和五十九年度以前の年度の歳出予算に係る国の負担又は補助で昭和六十年度以降の年度に繰り越されたものについては、なお従前の例による。
 
3 この法律による改正後の法律の昭和六十年度の特例に係る規定は、同年度の予算に係る国の負担又は補助(昭和五十九年度以前の年度における事務又は事業の実施により昭和六十年度に支出される国の負担又は補助及び昭和五十九年度以前の年度の国庫債務負担行為に基づき昭和六十年度に支出すべきものとされた国の負担又は補助を除く。)並びに同年度における事務又は事業の実施により昭和六十一年度以降の年度に支出される国の負担又は補助、昭和六十年度の国庫債務負担行為に基づき昭和六十一年度以降の年度に支出すべきものとされる国の負担又は補助及び昭和六十年度の歳出予算に係る国の負担又は補助で昭和六十一年度以降の年度に繰り越されるものについて適用し、昭和五十九年度以前の年度における事務又は事業の実施により昭和六十年度に支出される国の負担又は補助、昭和五十九年度以前の年度の国庫債務負担行為に基づき昭和六十年度に支出すべきものとされた国の負担又は補助及び昭和五十九年度以前の年度の歳出予算に係る国の負担又は補助で昭和六十年度に繰り越されたものについては、なお従前の例による。