精神医療に関する条文・審議(その46)

前回(id:kokekokko:20050614)のつづき。初回は2004/10/28。
宇都宮病院事件についての国会審議をアップします。
昭和59年に、精神病院内で入院患者が職員の暴行を受けて死亡するという事件が起こりました。これを発端にして、精神病院の閉鎖的な実 態が明らかになり、精神衛生法改正に向かう流れが大きくなりました。

予算委員会会議録第5号(101参昭和59年3月15日)
○委員長(西村尚治君) 次に、高杉廸忠君の総括質疑を行います。高杉君。

○高杉廸忠君 私は、社会保障の理念、目的など中曽根総理の社会保障、福祉に関する基本認識について、さらに昨日来各紙新聞報道によ ります医療法人報徳会宇都宮病院の事件などについてただしたいと存じます。
 まず、最近の政府の福祉に対する姿勢に一般国民は大変不安を抱いていると思います。新聞論調も福祉切り捨てと批判を強めております が、総理のお考えをまず伺います。


○高杉廸忠君 次に、障害者関係のことについて伺いたいと思います。
 国際障害者対策長期計画推進本部長であります総理に伺いたいと思うのです。国連の障害者権利宣言に照らしまして、我が国の精神障害 者の皆さんの人権、これは保障されているとお考えでしょうかどうか。

国務大臣中曽根康弘君) 保障すべく努力をしておりますが、必ずしもまだ十分な状態ではないと思います。

○高杉廸忠君 それではさらに伺いますが、一九八二年八月二十三日付のミセス・エリカの報告にかかわる国連小委員会報告書について、 日本政府は国連にどのような見解を表明し、またどのような資料を提出されたのか、伺います。

○政府委員(山田中正君) 今、先生御指摘ございました報告書、国連の人権委員会の差別防止・少数者保護小委員会の委員でございます ダエス委員がまとめられた報告と存じますが、その報告は昨年の九月、小委員会に提出されました。当時、我が国は小委員会のメンバーで ございませんでしたので、その審議には参加いたしておりませんが、この報告書は、ことしの夏に開かれます小委員会で実質審議が行われ る運びになっております。幸い我が国は同小委員会に先ほど選出されましたので、その審議に備えましてこれから我が方の見解をまとめる 予定でございます。
 なお、提出いたしました資料は、この報告を作成するに先立ちまして、昭和五十六年に国連から精神病者精神障害者に関する我が国の 法制、統計等についての照会がございまして、関係省庁で御提出いただきましたものをまとめて提出いたしております。

○高杉廸忠君 さて、きのうきょう、各紙新聞報道によりますと、栃木県宇都宮市の医療法人社団報徳会宇都宮病院で、二人の患者さんが リンチによって死亡したことを取り上げています。これは私どもの調査でも事実のようであります。この事件に関しまして、現在どのよう に対処していますか、それぞれの関係省庁に伺います。国税庁、警察関係、大蔵省あるいは厚生省、お願いをします。

○政府委員(金澤昭雄君) お答えいたします。
 お尋ねの事件でございますが、現在、栃木県警察におきましてごく最近事件を認知したわけでございますので、捜査は緒についたばかり でございます。したがいまして、現段階ではその全容を十分に把握をいたしておりません。ただ、昨晩、令状をとりまして捜索を行いまし た。その結果得られました資料を今後検討いたしますとともに、関係者からの事情聴取など含めまして事案の真相を十分に究明していきた いと、かように考えておるわけでございます。

○政府委員(大池眞澄君) 新聞等で報道されているような事実があるとしますと、まことに重大であると認識しまして、早速県の担当す る幹部に来省してもらいまして、それまでに判明しておる事実に関して報告を求めたところでございます。県でもまだ事実関係を十分把握 できている段階ではございませんでしたので、さらに徹底的に事実の関係の確認を指示したところでございます。県におきましては、医療 監視等を通じまして事案の究明を急いでいる最中でございます。

○政府委員(渡辺幸則君) 税の関係でございますが、私どもは従来から、医療保健業につきましてはこれを昭和五十年から引き続きまし て国税庁の重点業種ということで、問題のある個人、法人を調査いたしておるわけでございます。今回の事件につきましても新聞報道で申 告漏れ二億三千万円というふうな報道がなされておりますが、この種の所得の規模の大きな法人につきましては、従来からあらゆる資料を 総合いたしまして、また相当の事務職員を投入いたしまして、適正に課税をいたしておるわけでございます。

○高杉廸忠君 厚生省、どういうことが今までにわかりましたか。新聞にずっと書いてある、一々言うと大変だから。どういうことがわか っていますか、ちょっと詳しく教えてよ。

○政府委員(大池眞澄君) 県からの報告を受けた範囲について現在判明していることの主要な点を申し述べますと、この病院の医療の体 制につきまして、病床を上回る超過入院の事実が現段階で判明しております。また、これに配置すべき医療法に定める標準を下回って医師 、看護婦等が配置されているというような点も判明しておるわけでございます。
 それから新聞報道で述べられておりますような暴行に関しましては、報道されております死亡事例にほぼ相当するであろうという死亡者 がおることは確認しておるわけでございますが、その方に関する記録につきましては暴行の記録を認めていない、また検査部門に従事して いる職員は臨床検査技師によって行われておるというようなことが主要な所見であったわけでございます。なお継続して現在、調査を引き 続き実施しているところでございます。

○高杉廸忠君 この宇都宮のほかにも、大阪府の病院で患者さんのリンチ殺人事件があったと聞きますけれども、それはいつ、どんな病院 なんですか。

○政府委員(吉崎正義君) 大阪府における医療法人北錦会大和川病院におきまして、昭和四十四年と五十四年の二度にわたり、看護人が 集団で患者に暴行を加え死に至らしめたという事件がございました。同法人につきましては、大阪府は理事長及び管理者を変更するように 指導いたしまして、法人もこれに従っているところでございます。

○委員長(西村尚治君) もうちょっと大きい声で。

○政府委員(吉崎正義君) また、大阪府にある医療法人和光合栗岡病院におきまして、院長及び看護人二名が患者十数人に暴行を加え、 うち一名を死に至らしめた、こういう事件がございました。大阪府は管理者の変更を指示し、法人もこれに従っているところでございます 。

○高杉廸忠君 そこで厚生大臣に伺いますが、なぜこのような殺人事件が後を絶たないんでしょうね。なぜこのようなことの発生を未然に 防止できないんですか。

国務大臣渡部恒三君) 精神病院については、適正な医療が確保されるとともに、患者の人権が侵害されることのないよう、医療監視 等を通じ指導を行ってきたのでありますが、このようなことが起こって大変残念であります。今、政府委員から答弁いたしましたように、 一日も早く真相を突き詰めて、そして今後こういうことが起こらないように、できる限りのことを検討してまいりたいと存じます。

○高杉廸忠君 国家公安委員長、どうお考えですか。

国務大臣田川誠一君) なぜこういう事件がたくさん起こったかというのは、調査を見てみなければわかりませんが、これまでのこの 種の病院における発生した事件につきましては、犯罪の事実があったと認められる場合には厳正に対処をしてまいりました。
 この宇都宮の事件は、先ほど刑事局長から話がありましたように、昨日から調査をしておりますが、今後もこの種の事案につきましては 、犯罪に原因があるとすれば、厳正に対処をしてまいります。

○高杉廸忠君 それじゃさらに、公安委員長にお願いも含めてでありますけれども、この宇都宮病院の院長補佐という人は宇都宮の南署次 長を退職した人が院長補佐をやってますね。これでは真相究明に支障がないだろうかという心配があるんですが、どうですか、厳正にやっ てくれますか。

国務大臣田川誠一君) 警察にいた者がたとえ疑いのかかった病院に勤務しておりましても、そういうものには関係なく、警察は厳正 な態度で臨んでいくつもりでございます。

○高杉廸忠君 これは厚生大臣に、特に関連で確認をする意味も含めて申し上げますけれども、医療法人宇都宮病院の敷地が報徳産業グル ープにかかわる負債によって差し押さえられているんですね。これは医療法などに抵触すると思うんです。これが第一。
 それから第二は、石川病院長の使用人と見られる四人が――これは正確には三人かもしれませんが、精神病の患者さんだと思うんですね 。それからまた、関連の報徳冷凍冷蔵庫株式会社の労働力の大半というのがこれは患者さんだ、こういうふうになっているんですね。こう いう一日に労働可能な者に対して国庫から医療費を支出しているのも事実、その点に対しての厳正な処分。
 三つ目。生保の患者の日用品、その費用が石川病院長の指示によって設備費に流用されている疑いがある。こういうような点についても 厳正にきちっとしていただきたい。どうでしょう。

国務大臣渡部恒三君) 御指摘の土地の件でありますけれども、その具体的な事情の詳細は承知しておりませんが、医療法上は、医療 法人の病院の施設、土地等については、診療治療等病院の機能が確保されておる限り、それが差し押さえの対象となっても問題はない、こ ういうことでございます。
 その他御指摘のございました点、政府委員から詳細お答えさせますが、これから一日も早く真相を究明して、今先生御指摘のような点が あれば、二度とこのようなことが起こらないためにも、非常に大事なことでありますから、厳正な態度でこれに臨んでまいりたいと今決意 をいたしております。

○政府委員(持永和見君) 先生御指摘の生活保護の日用品費の問題につきましては、患者さんにお渡しした残りの未支出額の管理状況、 これが問題であろうかと思いますので、そういった点について早急に調査を指示をいたしておるところでございます。それによりまして厳 正な措置で臨みたいと思っております。
 また、生活保護関係の入院患者が多いわけでございますが、御指摘のございました報徳冷凍冷蔵庫の労働力の問題でございますけれども 、これにつきましても、生活保護は、医療扶助につきましては要否判定をいたしまして、それで入院の国庫補助を出しておるわけでござい まして、こういった問題についてもし不正があるとするならば、それはそれなりの厳正な措置をとりたいというふうに考えております。

○政府委員(大池眞澄君) 事実関係につきましては調査をすることといたしたいと思いますが、仮にこのようなケースにおきまして、医 療の目的の範囲を逸脱しておるとか、あるいは特に精神衛生法に基づく措置入院の患者さんでありまして、その措置を継続させる要件が消 滅しておるにもかかわらず、ただいま御指摘のような状況にあるということでございますと問題であろうかと思うわけでございます。その ような節は早速措置の解除等の所要の措置をとることになると思いますが、これから調査をすることといたします。

○高杉廸忠君 厚生大臣にさらにこれはお願いがあるんですがね。死亡だとか受傷をした患者さんのチェックを十五年ぐらいさかのぼって 厳正にやってもらいたいと思ってるんですが、どうでしょうか。

国務大臣渡部恒三君) 専門的なことでございますので、政府委員から答弁させます。

○政府委員(大池眞澄君) 今後の調査において、ただいま御指摘の点も含めて我々としては努力をいたします。

○高杉廸忠君 私どもの調査によっても明らかなんですけれども、新聞の報道のように、病院長みずからが回診の際にも常にゴルフのアイ アンを持って歩いて、大声でどなって、患者さんたちをゴルフのアイアンで殴りつける。まだ細かいことたくさんありますが、聞くにたえ ないような言動があって、こういう院内におけるリンチというのは日常茶飯事である、新聞に書かれているようなことが事実のようであり ます。こういうような無法とも言うべき現状でありますから、こういうものを徹底的に今後再び起きないように厳正に関係省庁でやってい ただきたいと思います。特に厚生省、それから関係省庁にお願いをしたいと思います。

国務大臣渡部恒三君) 今、先生からお話を聞いたり、また新聞等の報道を見ますと、これまことに私ども想像できないようないろん なことが行われているということでありますから、このようなことが真実であればこれは許されるはずのないことでありますので、できる だけ早く真相を究明して、こういうことに対しては厳重な態度で臨んでまいりたいと存じます。

国務大臣田川誠一君) 先ほど申し上げましたように、犯罪の要因がありますれば、厳正に対処をして取り締まってまいります。

○政府委員(渡辺幸則君) 国税庁といたしましても、税務に関する限りは、今後とも厳正な調査を続けたいと思っております。
 新聞記事の内容でございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、この法人につきまして二億三千万円の申告漏れということが報 道されておるわけでございます。私ども、これ個別の納税者に関することでございますので、詳細にわたって申し上げることを差し控えさ していただきたいと思うわけでございますが、公示されました所得額がございますので、まずそれを申し上げますと、医療法人報徳会の五 十六年度の公示所得金額は二億九千五百万円でございます。五十五年度二億五千九百万円、五十四年度三億九千九百万円でございます。
 なお、この調査状況でございますが、この公示の額の中に当初の申告以外のものとして追加申告をされたものがございます。この追加申 告というのは、大体ほとんどの場合が修正されていうことで公示されるわけでございますが、これの最近五年間の総計は三億八千八百万円 でございます。このような数字から、調査等の内容について御賢察をいただきたいと存ずるわけでございます。

○高杉廸忠君 次に、厚生大臣に確認なんですが、精神障害者の人たちの人権を擁護するための救援センター、これが必要だと考えますが 、どうですか。

国務大臣渡部恒三君) 先生御指摘のように、精神障害者の人権を擁護していくことは非常に大事なことであります。現行の精神衛生 法でも、措置入院患者等からの入院継続の必要性等の調査請求の制度があるので、これらの適正な運用を指導してまいります。
 今、御提案のありました救援センターについては、これは非常に貴重な御意見として今後検討をしてまいりたいと思います。

○高杉廸忠君 今回の事件は、患者さんの人権、それから身体生命の安全というきわめて基本的な問題であると思うんですね。そこで、こ の病院においても、例えば常駐監視体制というものをつくっていただいて、宇都宮病院をその管理下に置いてもらいたい。できれば早急に 、三カ月以内ぐらいにはその体制をつくっていただきたい、こう思うんですが、どうでしょうか。

○政府委員(大池眞澄君) 当該病院につきましては、先ほど御説明申し上げましたように、事実の究明ということがまず先決であろうか と存ずるわけでございまして、目下それに全力を注いでおるところでございます。したがいまして、せっかくの御提案でございますが、ま ず事実の解明ということを私どもとしては先決問題ということで御了解をお願い申し上げたいと思います。

○高杉廸忠君 今、行っているんでしょう。柳沢さんかなんか行っているんでしょう。

○政府委員(大池眞澄君) ただいま県の方に指示をいたしまして、県の医療監視精神衛生指導というようなチームで調査を実施している ところでございます。

○高杉廸忠君 大臣、お願いですから、大臣からひとつ。

国務大臣渡部恒三君) 今、政府委員から答弁がありましたように、何よりも今大事なことは真相を突き詰めるということであります ので、その真相を一日も早く突き詰めることによって、それから対策を講じてまいりたいと存じます。

○高杉廸忠君 さらに、厚生大臣にこの際ですから申し上げておきますけれども、今回の事件を顧みまして、むしろ現行法上の欠陥のあら われではないかなというふうに考えるんです。例えば、医療法にしても精神衛生法にしてもね。それはどういうふうにお考えになりますか 。

○政府委員(大池眞澄君) 現在の精神衛生法におきまして、措置入院等で入院しておるものにつきまして、入院者本人あるいは保護義務 者におきまして、それぞれ入院の継続の必要性につきまして調査を求めるというようなことが制度的にも確保されておるわけでございます し、そのために精神鑑定医等で対応するという仕組みでございます。また、入院措置に関しまして行政不服審査等の制度もあることは御承 知のとおりでございます。現行制度の枠組みの中で、先生の御指摘のような御趣旨、人権が十分に守られるようにという、その運用の面で 一層強力に取り組んでいくということが非常に重要なことではなかろうか、かように考えておるところでございます。

国務大臣渡部恒三君) ただいま政府委員から答弁したとおりでございます。

○高杉廸忠君 御承知のように、我が国の精神病床というのは民間が八五%で、開放率は二割程度でありますから、実に二十二万人もの人 が、精神病障害者の方々がかぎのかけられた状況下で自由を奪われているような状態の中なんですね。そういう状況の中でありますから、 リンチが発生し得る可能性というのは大きいと思うんです。明るみに出ました今回の事件、これはほんの氷山の一角だと思うんですね。こ ういう点を考慮して、これが表ざたになるこれまでにはかなりの時間がかかると思うんです。
 そこで、例えば暴行、傷害、殺人なんかに関して訴訟の時効の進行停止の措置、そういうこともあわせ考えて関係法規の改正をする必要 があるんじゃないかなというふうに思いますけれども、これはどういうふうにお考えになっていますか。厚生省と、それから関係省庁に。

○政府委員(筧栄一君) お答えいたします。
 ただいまの御質問、犯罪が精神病院等、ある程度社会から隔離された場所で行われた場合に発覚が極めて困難である、したがって公訴時 効について停止等の措置を講ずる必要はないかというお尋ねかと思います。確かに、そういう場所で行われました犯罪の発覚が極めて難し いことは一般的に言えるかと思います。また、そういう場所で行われた犯罪でありますだけに、なおさら何といいますか、早期に的確に検 挙し、適正な処罰を加えるということが強く要請されるかと思います。
 ただ、これを公訴時効の停止に絡めて考えてみますと、例えば犯罪の発覚が難しいというような条件はほかにもいろいろあるわけでござ いますし、それから公訴時効の停止という制度の趣旨が、やはり一定期間の経過によりまして公訴権を消滅させるという制度でございます ので、ただそういうような場所の条件ということをその中に取り入れるということは、制度の趣旨からもちょっと難しいのではないかと思 います。ただ、今申し上げましたように、そのような犯罪に対しましては、的確に早期に検挙され適正な処罰が加えられるということは強 く要請されるところでございますので、私どもといたしましても、その目的実現のためになお努力を続けてまいりたいと思います。

○高杉廸忠君 次に、法令により拘禁をしようとする場合には必ず国選弁護人などを選任するなどの法規の改正については、どういうふう にお考えになりますか。

国務大臣渡部恒三君) 精神衛生法においては、本人の意思に基づかない入院制度として措置入院と同意入院がありますが、いずれも 同法に本人の人権を保護するための所要の手続規定が置かれております。したがって、これらの規定が適正に運営されるように、なお指導 徹底を図ってまいりたいと存じます。

○高杉廸忠君 弁護人の関係だから法務省じゃないか、法務省

○政府委員(筧栄一君) お答えいたします。
 措置入院の際の国選弁護人という御趣旨かと思いますが、現在の国選弁護人の制度の趣旨から考えまして、措置入院という、いわば裁判 、司法制度とは関係がございませんので、そこまで広げるということはちょっと難しいのではないかと考えております。

○高杉廸忠君 じゃ、厚生省と検討してくれますね、精神衛生法やなんかの関係で。

○政府委員(筧栄一君) なお厚生省とも検討いたしたいと思います。

○高杉廸忠君 最後でありますが、三番目に、病院における患者の死亡に当たっては、その事由を問わず都道府県知事に対して届け出をす るような義務、これを厳正にしていただきたいと思うんですが、厚生大臣

○政府委員(大池眞澄君) 御提案の件でございますが、現行制度の適正な運用ということで対処さしていただきたいと考えております。 現在も、死亡しました場合に、措置入院患者の場合には措置解除のための届け出をすることになっておりますので、そういった形で事実上 把握できております。

○高杉廸忠君 まだまだたくさんの問題が残されていて、明らかにできませんでしたが、次回に譲るとして、ここで最後に総理から、特に 障害者対策推進本部の本部長であります総理ですから、拘禁されている精神病の患者さん方の人権が守られる、そして障害者の人たちの福 祉が増進する、こういうことに私は尽きると思います。したがって、これからは法令により拘禁下の人々の人権も総理としてはこれを守っ ていくという強い姿勢で私は臨んでいただきたいし、そうであってほしいと思うんです。
 最後に総理から、今までの論議を通じて、幾つかの提案をいたしました。早急にやっていただきたいし、事件の徹底究明もいただきたい 、こういうようなことも申し上げました。それらを含めて総理の所見をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

国務大臣中曽根康弘君) まず、基本といたしまして、福祉国家の建設というものは我々共通の理念でございまして、厳しい財政の中 にありましてもみんなで工夫をして、うまずたゆまずこの理念に向かって前進しなければならないと思います。
 それから第二に御指摘になりました将来的展望等につきましても、でき得る限り具体的資料に基づきましてその展望をつくり得るように 積極的に努力していく必要があるように思います。
 それから身体障害者の問題やあるいは婦人の平等の問題等につきましても、これは人権、自由という基本的観念に基づきまして、国際的 にも肩を並べ得るような機会均等、差別撤廃の処置を可及的速やかに推進する必要がございますし、障害者につきましては、その人格が基 本的には厳然と存在するのでありまして、たとえ身体的あるいは精神的な欠陥がある者につきましても、やはり人格としての取り扱いを入 念に行わなければならない。そういう点についてもし取り扱い上不備な点や考えの上において間違っている点があれば当局として厳重にそ れらを取り締まらせ、また是正する措置をやらなければならないと思っております。

○委員長(西村尚治君) 以上で高杉君の質疑は終了いたしました。(拍手)

法務委員会会議録第2号(101参昭和59年3月27日)

○寺田熊雄君 【略】精神病院が患者にリンチを加えるということは時々今までにも報道があるわけですね。これは私どもの知っている限 りでも過去に大分こういう事件がありましたね。粟岡病院事件、これは四十三年十二月に発生して、やはり患者が死んでおります。それか ら安田病院事件、これは四十四年七月に発生しておる。中村病院事件、これも四十六年八月。北全病院、四十八年二月。水口病院、四十八 年十二月。こういう精神病院のような、患者が外部とのコミュニケーションを断ち切られたような場所で看守にある者がやるというのは、 公務員が暴行、凌辱を加えるのと余り違いがないですね。それだけに非常にこれは悪質なんですよ。宇都宮病院事件というのを我々直接捜 査したわけではないが、報道機関による報道をいろいろ総合してみてもこれは大変な事件なんですが、これは少し刑事事件としても慎重に 扱っていただきたいと思うが、人権擁護局がこれは患者の人権を守るためによほど慎重に対応していただかないといかぬ。この点、刑事局 長と人権擁護局長に対応をお伺いしたいんですが。

○政府委員(筧栄一君) ただいまの宇都宮の報徳会事件につきましては、ただいま第一次捜査機関でございます警察当局が捜査を開始し たということでございますので、検察庁といたしましては警察と緊密な連絡をとって推移に応じて適宜適切に対処するものと考えておりま す。一般的に閉鎖されました精神病院等の中における犯罪につきましては、今先生御指摘のとおり厳正に対処すべきものと考えております 。

○政府委員(鈴木弘君) 人権擁護局からお答えいたします。
 本件につきましては、人権擁護機関といたしましても、栃木県当局から事情聴取するなどこれまでも鋭意情報収集に努めてまいってきた ところでございますが、今後とも情報収集に努め、適切に対応いたしまして、人権擁護上万遺憾なきを期したいと、このように考えており ます。

社会労働委員会会議録第4号(101衆昭和59年3月29日)
○河野(正)委員 総論的なことはその辺でとめておきまして、最後に一言だけ、具体的な問題でありますけれども、宇都宮の例のリンチ 事件、それから無資格診療、暴力事件、この問題について。
 これは、厚生省から精神衛生課長も現地に赴いて調査をされたようですね。ですからいろいろ調査の結果を見てということでしょうけれ ども、もう調査は一応は済んでおるわけですから、それらについての概況報告をひとつお願いしたい。

○大池政府委員 ただいま御指摘ございましたように、宇都宮病院で問題が提起をされまして、私ども厚生省としても、精神医療の重大性 にかんがみまして、早速、この病院の指揮監督に当たっております栃木県と連携をとり、確実調査に乗り出したところでございます。
 県におきまして、三月の十四日衛生環境部の方で十名ほどの立ち入り、これを皮切りにいたしまして、二十二日、二十三日、二十四日と 引き続き、衛生環境部と民生部のメンバーによりまして、それぞれ五十名、二十二名、四十名というような、ちょっと通常とは異なる大人 数で事実調査に乗り出したところでございます。それで厚生省におきましても、精神衛生課長を初めとしまして八名の関係局からの専門的 なスタッフが現地に参りまして、県のそのような調査状況につきまして具体的に実情を聴取し、またいろいろと状況についての意見交換も 行っておるところでございます。
 現在までに、患者の収容が許可病床を上回って収容されておった、その後逐次改善されまして総数では許可病床の範囲内におさまってお りますが、精神科の病床につきましてはなお超過収容というような状況が続いております。あるいは、現在収容しております患者数から医 療法上算定されます標準の医師、看護婦等それぞれの人数がございますけれども、それを非常に下回るような配置状況であるというような 事実関係については確認しておるところでございます。また、資格がない者が医療行為に従事しておった疑いというようなことがその事実 調査の中で出ておるわけでございますが、これは諸記録その他総合的になお子細に検討を行っているところでございます。
 なお、報道されておりますような問題点につきましては、私どもの医療監視という手法での範囲内で調べた限りでは、必ずしも事実を確 認できるような記録はまだ見出されておりませんが、この点につきましては、御案内のとおり捜査当局におきまして、現在別の角度から極 めて強力な捜査が展開されておるということでございますので、私どもの立場からもそれを強い関心を持って見守っておる、こういう状況 でございます。

○河野(正)委員 きょう警察庁も御出席いただいていると思いますが、現在までの状況をひとつ御報告願います。

○三上説明員 栃木県警察におきましては、今回の事案が発覚をいたしますと同時に、三月の十四日、それから三月の二十八日、二回にわ たりまして捜索を行いますとともに、昨年の四月二十四日に起きました患者の傷害致死事件容疑、それから昨年の十二月三十日に起きまし た傷害事件、その後翌日死亡した事件につきまして捜査をいたしておったわけでありますが、本日その関係者五人を逮捕いたしたところで ございます。

○河野(正)委員 大体の概況の報告はいただいておるわけですけれども、大臣、こういう事態が起こるまで、とにかくわずかな期間で起 こるはずはないのですね。ローマは一日にして成らずという言葉がございますが、今まで長い間そういう不法行為というものが積み重なっ て、たまたまリンチ事件とかなんとかいうような事件で爆発的に問題視された、こういうことだと思うのですよ。ですから、私は、これを やった宇都宮病院が悪いことはそのとおりですよ。これは後でもちょっと触れますけれども、やはり悪いやつは悪いやって厳罰に処しても らわなければならぬ。そうしませんとまじめにやっている者が迷惑する。本当にまじめにそういう医療業務をやっている開業医が多いわけ ですよ。これはほんの氷山の一角でしょう。そういった意味で私は、信賞必罰という言葉がございますが、やはり悪いやつは徹底的にやっ てもらう。
 ところが、今まで医療監視とか監査とか、これは年に一回はあるんですよ。その年に一回やらなければならぬことは一体どうしておった のか。それで、こういう事態が起こって初めてとやかく問題にするというのは、私は行政の怠慢だと思うのですよ。そういう点は今まで余 り予算委員会でも触れられておりませんが、これは行政の怠慢ですよ。もし、今まで医療監視をやった、あるいは監査をやった、そういう ことをやりながら今日のような事態が来たということについては、これは行政当局の方が当然反省をし責任を感じなければならぬというふ うに私は思います。その点どうでしょうか。

○渡部国務大臣 今回の宇都宮病院の事件、こういう医療機関を担当する厚生省としては、これが警察当局の手を煩わさなければならない というような事態になったことは大変残念なことであり、このようなことは全国の精神病院に起こってはならないことでありますから、今 回を大きな反省の機会として、心を新たにして、こういう不祥事が起こらないように、今後の精神病院の監視体制というものを強めてまい りたいと思います。

○河野(正)委員 せっかく警察庁がおいでになっていますから、やはり今度の暴行事件、リンチ事件といいますか、金属パイプの事件と いいますか、そういうものがリンチとして使われた、そしてまた、そのために死亡したのじゃないかというようなことで死体の司法解剖も 行われたというふうに聞いているわけですが、その辺はいかがですか。

○三上説明員 昨年の四月二十四日に発生いたしました傷害致死容疑で捜査をいたしております事案におきましては、使われたものが金属 パイプであったというような状況も出ておりますが、今後の捜査でさらにその点を明らかにいたしたいと考えております。
 それから、三月二十七日に昨年の十二月三十一日に死亡されました方の司法解剖を行ったわけでありますが、直接的な死因につきまして は、肝硬変によります食道静脈瘤の破裂によります失血死ということになっておりまして、今後、これらの傷害事案との関連というものに つきましても十分捜査をいたしてまいりたいと考えております。

○河野(正)委員 そこで、こういう事態が生じた今、行政当局としてどういう処置をなさるのか。要するに調べただけでは意味ないでし ょう。そしてまた日精協あたりも、我々は非常にまじめにやっているんだ、そういう不届き者が出てきた、これははっきりしてもらわぬと いかぬ、信賞必罰じゃございませんが、こう言っておるわけですから、そういう意味では、私はやはり他の良心的な諸君に対しても、この 問題に対する厚生省の処置というものは非常に大きな意義があると思うのですよ。どういう処置をなさろうとしているのですか。

○大池政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、現在、事実関係の確認、事実解明、原因の究明というような点を進めておるわけで ございますが、明らかになった点につきましては少なくとも早急に措置を講ずる必要があるという観点に立ちまして、とりあえず、先般現 地に派遣いたした者から県に対して、患者、家族等に対します相談窓口の機能を強化すること、これが一つでございます。それから第二は 、医療従事者の不足等の早期解消について病院に対して強く指導をすること、それから第三点としましては、入院患者に関しまして精神衛 生鑑定医によります実地審査を検討するように、このようなことを指示してきたところでございます。
 残余の問題につきましては、その事実の確認を踏まえまして、医療法あるいは精神衛生法に基づく必要な措置について検討する、かよう な段階でございます。
 なお、宇都宮病院以外の問題についての御設問もあったように解しますが、その点につきましては、やはり事実関係の確認を踏まえて適 切な措置について検討したいと思っております。

○河野(正)委員 こういった非常に重大な不祥事件が出てきた、それは一朝にして出てくるものではないと思うのですよ。それなら一体 、今まで医療監視とかあるいは措置入院患者については年に一回監査があるでしょう、そういう実情は一体どうなっているのか、その辺を ひとつ明らかにしてもらいたい。

○大池政府委員 御指摘のとおり、一般医療に求められます適正医療あるいは医の倫理という問題以上に、精神医療におきましては相当多 数の方が本人の自由意思によらない入院というようなことでございますので、人権擁護というような観点も含めまして、私どもとしては精 神病院の指導に対して特に力を注いでいるところでございます。
 基本的には、これまでにも数通の基本的な通知を都道府県に示しまして、また、毎年開催しております全国会議におきましても、精神病 院に対する指導の徹底ということは各都道府県に指示をしているところでございます。
 そして、先生から御指摘のございましたルーチンに行われております医療監視、あるいは精神病院に対する実地指導、これは密接に連係 する業務でございますので、大多数の県におきましては、医療監視のチームと精神衛生の担当者とが一緒になって、精神病院を年一回は訪 問しておる、こういうことでございます。そして、そこで見られた改善を要する事項につきましては、具体的にその都度、病院の管理者で ございます院長に対して指示を出してきておるところでございます。
 また、そのほかに、精神衛生法の観点から申しますと、措置入院患者につきましては定期的な病状報告ということを求めておりまして、 その病状報告によりまして必要と認めるときには実地審査というようなことで、年間合計一万件くらいの実地審査も行われてきているとこ ろでございます。

○河野(正)委員 私が言っているのは、今まで何にも事故がなかったのかと言っているわけですよ。突如として今度金属パイプでリンチ が行われた。そのときに初めてそういう実態というものが明らかになった。今までは一体どうしておったのか、それを聞いているのです。

○吉崎政府委員 医療監視についてでございますけれども、宇都宮病院に対しましては昨年の七月に実施をしております。御指摘もござい ましたように大体一年に一度やるのでございますが、このときにもやはり医師、看護婦の不足がございました。それで文書をもちまして指 導をいたし、当該病院もこれに対しまして文書をもって改善計画を提出しておったところでございます。これこれの計画で医師、看護婦を 雇うということでございましたけれども、現実の問題といたしましてはいまだに改善されておらないということで、極めて遺憾なことに存 じます。
 先ほど先生からもお話しがございましたけれども、本事案の全容の解明を待ちまして、厳正に対処をいたしたい考えでございます。

○河野(正)委員 あなた、そんなことでは話にならぬのですよ。
 それで、私は少し具体的にここで提起をしていきたいと思いますが、要するに今の宇都宮病院措置入院患者がおりますね。県が指定病 院として指定しておるわけでしょう。そういう事態があるなら、ここで全容を解明されないでも、公的医療機関の代替施設としてその宇都 宮病院を指定をしておるわけでしょう、その指定をほうっておく手はないでしょう。そんな病院に対してもし措置患者を入れるとするなら 、極端に言うと、国立病院も県立病院もそういう実態にあるのかということになりますよ。宇都宮病院に対して県が指定しておるというこ とは、公的医療機関の代替施設として指定しておるのですよ。国立病院や県立病院と同等の意義を持っておるわけでしょう。そしてもしこ れをこのまま放置しておくということは、国立病院でも県立病院でもそういうことがあり得るということですよ。その点どうでしょうか。

○大池政府委員 この病院につきまして現在まだ相当多数の患者さんが入院しておるわけです。その点につきましては全く御指摘のとおり でございますけれども、反面、それだけの人数でございまして、どこかほかの病院に移しかえるというような問題につきましては、現実の 実態上の処理の問題としては非常に困難な実情にございます。先般来数次にわたる実地指導、医療監視ということを通じまして、現在一応 の医療は確保されておるという判断にも立っておるわけでございまして、現状を直ちに移しかえるとかそういう段階ではないかと存ずるわ けでございます。

○河野(正)委員 それは一部に、人権保護の立場から全部を移せという議論があったことも承知しております。しかし、措置入院患者に ついては国立病院あるいは県立病院の代替施設として収容しているわけでしょう。その分については一体どういう措置をするのかというこ とを言っているのです。それができなければ国立病院だってそうだ、県立病院だってそうだということになるでしょう。だからそれは、人 権上問題があるので、九百名の患者を全部移しなさいという提訴が行われておるということも聞いております。それは一方におくとしても 、少なくとも県知事が指定をしたその部分については直ちに処理すべきじゃないかと言っているのですよ。

○大池政府委員 既に先般、私どもの方から派遣をいたした精神衛生課長を通じて、県に対して精神衛生法に基づく精神衛生鑑定医による 実地審査の検討を指示したわけでございますが、その中で当然に措置患者というものは優先的に配慮されるというふうに了解しております し、現在県ともいろいろと相談しておるところでございます。

○河野(正)委員 それが手ぬるいというのです。これだけの人権問題、社会が大きく取り上げておるのに、そういう気の抜けた話では手 ぬるいと私は言っているのです。ですから、そういうことでは、本当にまじめに医療業務に携わっておる他の病院が大迷惑です。だから、 悪いやつは悪いやつでてきばきと処理すべきだと思うのです。今の局長の答弁では全く手ぬるいですね。納得できない。
 私も、実は、三十八年の衛生法の改正があった、そのときに、そういう問題があってはならぬというので精神衛生鑑定医は十年にしなさ いという提案をしたのです。三年たったら適当に精神衛生鑑定医として委嘱できるわけでしょう。これは正直言って、こういう制度がある ために、精神衛生鑑定医というのはいろいろと金で左右されておるというような具体的な事例を私は知っているのですよ。だから、三十八 年の精神衛生法の改正のときに、少なくともこれは十年ぐらいにしたらどうですか、十年もすればなかなかごまかしがきかないですよ、こ う言った。三年だったら、ちょっと大学に籍を置いて、実際に実習も何もせぬのに、三年やりましたから鑑定医を委嘱します、こういうよ うに、金を持ち出せばできるというようなケースがあるわけなんですよ。だから私は、当時、鑑定医の資格というものは少なくとも十年ぐ らいは勉強しなくてはいかぬと言った。私はそういうことも今度の事件に大きく影響していると思いますよ。ですから、一説においては精 神衛生法の改正をしなさいという意見もあります。それは的を射たような意見もありますよ。ところが的を射ていないような意見もありま すね。ですけれども、鑑定医というのは今度の場合にも非常に大きな影響力を持っておると思います。本当に精神医学というものを勉強し ないで、どこかにちょっと籍を置いて三年になった、それでもうよろしいということで精神衛生鑑定医になる。しかもある程度の金を使っ てやっておるようなケースもあるでしょう。
 今あなたは、知らぬぞというような態度であるように秋は見受けますが、それだったら私ははっきり言いますよ。こういう事件があった ときには、実態というものを十分踏まえて対処するという姿勢がないと局長だめですよ。次から次に起こりますよ。精神衛生課としても数 少ない職員でしょう、なかなかそういう実態というものを把握するわけにいかぬと思うのですが、また再びこういう事件が起こらぬように 、日精協でも大迷惑だということで今までいろいろ議論をしておるようです。ですから、もう少し行政指導というものを的確にやれば今日 のような大問題というものは起こらなかったと思うのですよ。不幸な事態というものは起こらなかったと思うのですよ。今まであなたたち が、いいかげんと言えば悪いけれども、いいかげんな行政をつかさどってきた、それが今日こうした大きな問題を巻き起こしているわけで すよ。この問題については、もちろん宇都宮病院が悪いことはそのとおりですが、やはり行政上の指導についても非常に手ぬるい。これに ついてどうですか、大臣からひとつお答えください。

○渡部国務大臣 今、厚生省の担当の職員は全部私の部下でありますから、いいかげんな行政をやっておったとは思っておりません。ただ 、私は素人でありますし、先生はその方の専門家でございますが、いろいろ説明を聞いておりますと、精神病棟というのは大変難しい。普 通の病院ですと患者の意思で大体病院に入院されるわけでありますけれども、本人が入院することを望まなくても家族が病院に連れてきて お願いする場合もありますから、そういう意味で、身柄を拘束するというようなことは一番難しい問題ですが、ある程度物理的に入院患者 の身柄を拘束するような事態等も出てくるし、なかなか難しいものであることを私は勉強させていただいたのです。
 私も素人ですから、最初この問題が起こりましたときには、それなら栃木県知事と相談して指定病院の取り消しを行うとか、何か国民の 皆さん方にわかりやすい信賞必罰の方法というようなことも考えたのでありますけれども、家族の同意を得て現に九百人前後の方が入院し ておられるわけですから、この方を今どこにどうするという問題等具体的な問題もあります。しかも、今警察当局が捜査中で捜査がまだ終 わっておらないわけですから、捜査が終結することによってこの正邪というものがはっきりしてくるわけでございます。
 そこで当面は、人間の命は地球より重いという認識の上に立って私ども厚生行政を進めておるわけですから、今入院されておる九百人の 患者にこれ以上のことがあってはならないということで、患者の相談とかいろいろな方法で、とりあえずは今の入院しておられる患者の安 全ということの処置をとったわけでございますが、今後警察当局の捜査状況等を見きわめて、先生が期待されるような、国民の皆さん方に わかりやすい、すきっとした処置と対策を立てたいと考えておるところでございます。いましばし御猶予をいただきたいと思います。

○河野(正)委員 時間がありませんのでいま一つ。
 大臣、宇都宮病院全体の問題がありますね。それは恐らく、司直の手で今捜査しておるわけだから、それで全貌がわかってということで しょう。私が言っているのは、その中で、少なくとも県が指定をして、精神鑑定医が診断をして入れておる部分があるわけですね。これは 、宇都宮病院は私的医療機関でしょう、個人病院でしょう、医療法人であるかないかは別として。ところが精神衛生法の中で、これは長い 経過があるわけですが、とにかく国立病院でベッドが足らぬ、県立病院でベッドが足らぬ、そこで自傷他害のおそれがある患者は、精神鑑 定医が鑑定をして、そして指定をした病院のベッドに収容するという建前になっている。ですから、全体的な問題は九百は数が多いですか らなんですが、少なくとも県知事が命令入院をさせた分は公的医療機関の代替施設ですからね、そこは何とかならぬかと言うのです。大臣 おっしゃるように九百何ぼ、そういう全体を論ずるということを私は言っているわけじゃない。少なくとも県が指定をして、この部分は県 立病院のかわりですよ、この部分は国立病院のかわりですよ、これがあるわけでしょう。その分については何とかならぬかと言っているの です。それを言っているわけですからね。大臣、ちょっと見解の相違があるのですね。わかっただろうと思いますが、それについて、最後 にひとつ局長……。

○大池政府委員 先生の御指摘の趣旨は十分私どもも尊重して、先ほど申し上げました精神衛生鑑定医による実地審査に当たっては優先的 な配慮をいたしたいと思います。

○河野(正)委員 処置をするということですね。