精神医療に関する条文・審議(その47)

前回(id:kokekokko:20050620)のつづき。初回は2004/10/28。
宇都宮病院事件についての国会審議。

予算委員会会議録第11号(101参昭和59年3月26日)
○高杉廸忠君 私は、社会保障、福祉の一環として、宇都宮病院問題に絞って質問をいたしたいと思います。
 去る十五日の総括質問の際、医療法人社団報徳会宇都宮病院での事件について、徹底的究明、厳正な措置、そして諸要請を行いましたが、まずその御報告をそれぞれよりいただきたいと存じます。なお、限られた時間であります。貴重な時間でありますので、お答えは簡潔に、詳細につきましては中間報告書として至急御提出をいただきたいことをあわせましてお願いをいたします。

国務大臣田川誠一君) 警察といたしましては、栃木県警察におきまして三月十四日、傷害致死容疑で報徳会宇都宮病院に対する捜査、差し押さえを実施するなど所要の捜査を行っているほかに、同病院における各種事案の解明に努めている、このように承知をしております。

国務大臣渡部恒三君) 栃木県において、衛生環境部と民生部の合同調査班による立入調査を三月二十二日、二十三日、二十四日の三日間実施をいたしまして、なお調査結果については現在取りまとめ中であります。
 なお、先生からも強い御要望ございました、本日二十六日現地に厚生省の職員を派遣しておりまして、今後とも事案の早期究明に努力していきたいと思っております。公衆衛生局の精神衛生課長、医務局の指導助成課長、社会局の保護課長等を中心にしまして、いま派遣しておるところでございます。

国務大臣住栄作君) 報徳会宇都宮病院の人権侵犯の観点からでございますけれども、宇都宮法務局に各種の情報その他十分注意をして対処するようにという指示をいたしております。

○政府委員(冨尾一郎君) 宇都宮病院の調査の結果につきましては、個別事案の内容にわたることでございますので、御答弁を差し控えさしていただきたいと思います。

○高杉廸忠君 特に田川自治大臣公安委員長に伺いたいと思うんですが、先日私は、宇都宮の南署の元次長がこの病院の要職にあることについて申し上げました。今日までの進捗状況から見まして、なお懸念を抱いているんです。これはその後の各種報道を見ても明らかであります。
 特に週刊文春三月二十九日号の三十一ページに「政・警・医のトライアングル」と題した記事に詳細に掲載されているわけであります。今後とも厳正な措置をお願いいたしたいと存じますが、大臣どうでございましょう。

国務大臣田川誠一君) 私も今御指摘の雑誌の記事を読みました。これだけ読みますと、余り信頼できる記事ではない、私はこれは無責任な談話だと思うんですね。言っていることがですよ、言っていることが無責任な談話だと思います。
 御指摘のように、警察にいた者がこの病院にいて重要な役目についているということは前回もお聞きをいたしました。警察の出身者がこういうような地位についていなくてもいても、これは警察としては厳正に対処してまいってきているつもりでございますし、これからもやってまいります。御承知のように、たくさんの警察官の中には若くして退職する者がありまして、いろんな職業についております。かつて警察にいたから警察が手心を加えるというような事実があるとすれば、これはもう犯罪の捜査ができなくなってしまいます。そういう意味で、こういうかつて在職した者が病院におりましても、これは厳正に今後もやっていくことを重ねてここで申し上げます。

○委員長(西村尚治君) ちょっと厚生大臣から再答弁あるそうですから。

国務大臣渡部恒三君) 大変失礼しました。先ほどの派遣職員、ちょっと間違っておりましたので、訂正させていただきます。
 公衆衛生局精神衛生課長、医務局企画官、医務局指導助成課医療監視専門官、社会局保護課課長補佐、社会局監査指導課生活保護監査官、以上でございます。

○高杉廸忠君 先日の質問の際、この病院でのリンチ殺人事件については、二件疑いがあると申し上げましたが、その後の私どもの調査では、次の二件もまたその疑いがあることが浮上してまいりました。
 その一つは、昭和五十三年十二月、東二病棟で、午後二時ごろ、患者さんが看護人数名から殴る、けるの暴行を受けてその夜死亡したとのことであります。しかも最後まで医師はあらわれなかった。次に、昭和五十四年一月、やはり同じ病棟で患者さんが同じ看護人らに、これまた殴る、けるの暴行を受けて死亡したとのことであります。この際も医師はいなかったようであります。また、この二件のほか、脱院した患者さんを自動車で追いかけて、その車ではね飛ばしたとのことであります。
 この際、関係省庁においては早急に、厳正に、徹底的な究明調査をしていただきたい。お願いするわけでありますが、大臣、いかがでしょう。

○政府委員(金澤昭雄君) 昨年発生をいたしました二件につきまして現在捜査をやっております。その過程でいろいろと話はございますけれども、ただいま現在のところは、前回もお答えしました二つの件について鋭意捜査を進めておる、こういう状況でございますが、今後いろいろありましたら、その段階でこれは見過ごすことなく捜査をやっていきたいというふうに思います。

国務大臣田川誠一君) いま刑事局長が言いましたとおり、今後も厳正に捜査をやり、犯罪の事実があれば摘発をしてまいります。

○高杉廸忠君 石川文之進病院長の直接的暴力行為については先日申し上げましたけれども、その後新たな事実が次々と判明しているわけであります。どうも院長は暴力行為の常習者であると断ぜざるを得ない状況にあります。
 例えば、昭和五十三年十一月中ごろ、回診の際、院長に反抗的であるとの理由から、数十人近い患者の面前で、長さ一メートル、直径数センチの角材で、逃げ回る患者をめった打ちにして、となりながら看護人が患者を押さえつけたところを、さらに殴る、ける。頭から血だらけにしたり、また、閉鎖病棟から開放病棟に移してほしいと訴えた患者に対して、院長としてはあるまじき言動でとなり、ゴルフのクラブで頭部を殴りつけたとされていますが、これは昭和五十三年十二月のことのようであります。さらに、昭和五十五年十一月十五日ごろ、西病棟一階の独房内において、正座をさせた患者の右頭部にゴルフクラブを振りおろして殴打する暴行を加え、全治十日間を要する頭部外傷を負わせたとのことであります。しかも、病院側はこれを一切治療をしないで放置していたようであります。
 そこで厚生大臣に伺うんですが、一体こうした暴力常習者とも言われる人に医師免許を与え、一千人近い患者の生殺与奪の権を与えている国がどこにあるかと聞きたいんです。即刻院長の医師免許の停止、剥奪をちゅうちょなく図るべきであると考えますけれども、いかがでしょうか。
 また、このような院長の姿勢が全職員に影響を与え、残酷な暴力病院をつくり上げているところに問題があると考えます。したがって、この病院の患者さんたちを直ちに厚生大臣など信頼のおける人たちの手にゆだねて、早急にしかも厳正な措置をとるべきだと考えますけれども、厚生大臣、どのようにお考えになりますか。

国務大臣渡部恒三君) それぞれ専門的な問題でありますので、政府委員から答弁させます。

○政府委員(吉崎正義君) 医師免許の取り消しについてでございますけれども、罰金以上の刑に処せられた者などにつきまして、医道審議会に諮りました上で処分を行うこととされておるところでございます。
 本件につきましても、事実関係が明確になりました段階におきまして所要の手続を踏みまして厳正に対処してまいりたい所存でございます。

○高杉廸忠君 厚生大臣に厳正にやっていただきたいということを要請しておきます。
 今申し上げましたような暴力、残酷とも言うべきこの病院に現在収容されている患者さんの人身保護請求、これを去る三月十九日東京高等裁判所になさいました。これに関して、東京高裁第二特別部では、三月二十一日、請求者であります戸塚悦朗弁護士他二名に対して補正命令を出して、命令書到達の日から三日以内に人身保護規則第七条三号及び五号の事由を明らかにして、以上各号についての疎明方法を提供することを求めています。
 そこで、これも大臣からお答えをいただきたいと思うんですが、厚生大臣、このために戸塚弁護士ら三名が宇都宮病院に出向いて院長に面会を求めましたが、これが拒否されました。県衛生部は所管外のことと病院に対して何らの指導もしなかったとのことであります。これは厚生省がその必要を認めずに適切な措置を講じなかったことにも原因があると考えますけれども、大臣、これは憲法三十四条、あるいは人身保護法第二十六条、こういう救済を妨げる行為になると考えますが、厚生大臣、どうでしょう。

○政府委員(大池眞澄君) ただいま御指摘のございました人身保護法に基づく請求の件につきましては、私どもの方は新聞報道を通じて承っておるという状況でございます。すなわち、例えば閉鎖病棟入院中の五百三十九名全員を退院させよというような内容を含んだ請求であるというふうに報道を通じて承知しているところでございます。そのようなことでございまして、これはあくまで一般的なお答えになるわけでございますけれども、直接私どもが必要と考えるとか考えないとか、そういうことが原因になっているというふうには考えられない案件かと思います。

○高杉廸忠君 厚生大臣、特にお願いしておきますけれども、今申し上げました弁護士さんらはこの二十八日に再度また宇都宮病院に赴いて、それで患者さん方とのいろいろな個々の面接や調査、こういうことを行う、こういう予定をしています。ですから、前回行ったようにシャットアウトされるんじゃなくて、円滑にその人たちが行かれるように、しかも患者さん方の一人一人の意思確認を含めて会うわけですから、円滑にいくようなことでしかるべき措置を講じていただきたい。せっかく今調査に何人か行っておられるんですから、現地への連絡も十分とっていただきたい。こうお願いするわけですが、大臣いかがでしょう。

○政府委員(大池眞澄君) 先ほど触れましたように、閉鎖病棟の患者さん全員を退院させよというような内容の請求でございまして、弁護士の方が直接患者さんに会って退院の希望の有無を問うといったことは、患者さん方の間でいたずらな不安と混乱を招くおそれもあるやに思う次第でございます。したがいまして、ただいまの御提案につきまして、厚生省が病院の管理者に対して指導するというような立場にないと、かように考えておるところでございます。

○高杉廸忠君 大臣ね、私は指導をしてくれとか言っているんじゃないんですよ。弁護士が行くんだから患者さんたちに円滑に会えるようなことぐらいの指導といいますか、連絡は大臣にしていただきたいと思うんですよ。その後患者さん方がお一人お一人依頼するかどうか、これは自由ですし、患者さん方の意思ですから、そこまで私どもは指導しろとは言っていないんです。とにかく面会ができるように、窓口にはそういうことで円滑にいくように大臣の方から連絡ぐらいはしてほしいと、こう言っているんですよ、混乱がないようにするために。どうですか。

国務大臣渡部恒三君) これは私の聞いておるところでは、患者をお預けした家族の方が面会を要請する場合、これは拒む理由は全くございませんし、また患者の家族の皆さんが心配して弁護士等を差し向ける場合、これも患者との面会を特殊の例外を除いて拒む理由は全くないものと承知しております。

○高杉廸忠君 それでは、その辺はお願いを申し上げまして次に移ります。
 この病院における暴力行為、リンチの実態については、去る十五日以降各種の報道がなされていますけれども、その大部分は私どもの調査と符合しているんです。そこで、緊急措置として、第一に医療法人社団報徳会宇都宮病院の理事及び役員、管理者などの即刻退陣の措置をとること、第二に石川文之進の医師免許の停止と取り消し、第三に同病院の患者を直ちに厚生大臣など信頼の置ける者の手にゆだねて、例えば先日提案をいたしました緊急調査監督委員会とか、あるいは厚生大臣自身の手で監督、そういう指導ができるようなことを自身でおやりになっていただいて結構でありますから、この三つの点を私は緊急措置としてぜひやっていただきたい。そのところで、入院の患者さん方の必要の有無の判定だとか、あるいは安心できる病院などへの転送とか、あるいは今申し上げました所要の措置をぜひ緊急にとっていただきたい。この三つをお願いしておきますが、いかがでしょう。

国務大臣渡部恒三君) 今何よりも大事なことは真相を正確に把握することでありまして、そのために、先ほど先生に御報告申し上げたように、厚生省からもしかるべき責任ある者を実地の調査に差し向けたわけでありますが、当然これらの者が調査結果を持って帰ってくると思います。そこで真相がわかってくると思いますので、そこで今、先生の御心配のような問題等がありますれば、これは患者の保護のために善処をしていくことは当然のことだろうと考えております。

○高杉廸忠君 今申し上げました三つの事項についてはぜひ緊急措置としておとりをいただきたい。これを再度御要請申し上げておきます。
 最後になりますが、去る十五日の質問以降、実にたくさんの方々からお手紙やお電話をいただきまして、この機会にこの方々にお礼を申し上げますけれども、さてその方々のお話を要約いたしますと、何と宇都宮病院よりももっとひどいところがある。こういう御指摘もありまして、本当に私も驚いているわけなんです。そこで私は、宇都宮病院の事件というのは、まあ言うならば氷山の一角にすぎない、こう考えざるを得ません。これは法令により拘禁をされている人々の現状を一日も早く改善しなければならない警鐘であるとも思います。
 そこで厚生大臣、私ども内容についてこれから具体的に提案をいたしますから、これを受けていただいて早急に協議をしていただいて、全国の精神病院における患者さん方の人権状況初め治療の状況など総点検を実施していただきたい。これを考えているわけですけれども、これをひとつ実施していただきたい。そしてまた、今までにも私どもは総括質問以来何回にわたってか幾つかの提案もいたしました。このものを含めまして、今後とも厳正な措置と徹底的な究明、これらについての厚生大臣の御決意とそして所見を伺い、さらに公安委員長の御決意も伺い、私の質問を終わりたいと思います。

国務大臣渡部恒三君) まず、今回の事案について早期にその問題点を究明して、先生御心配のようなことはあってはならないことでありますから、そのためには何をなせばよいかということを討議してまいります。
 こういう問題を踏まえまして、精神病院において適正な医療保護が確保されるとともに、患者の人権が保護、保障されるように、患者の適正な取り扱いに関する指導の徹底、第二番目には、精神衛生鑑定医による実地診査の励行、第三番目には、医療法に基づく医療監視の強化等の処置を講じてまいりたいと思います。

国務大臣田川誠一君) 犯罪の事実がありますれば、厳しい姿勢でこれに厳正に対処してまいるつもりでございます。

予算委員会会議録第15号(101参昭和59年4月2日)
○高杉廸忠君 時間もなくなりましたが、最後に宇都宮病院事件についてお伺いをいたしたいと思います。
 その後の捜査並びに調査状況についてどうなってますか。厚生省、それから警察関係、国税庁関係、まずそれぞれに伺います。

○政府委員(大池眞澄君) 栃木県と密接な連携をとりながら調査を続行しているわけでございますが、既に県におきまして三月十四日、二十二日、二十三日、二十四日の四日間立入調査を実施しております。また、厚生省におきましても、二十六日及び二十七日現地に職員を派遣いたしまして、県の調査結果を聴取し、いろいろと情報交換をしておるところでございます。
 現在までに判明しております主要な点につきましては、医師数、看護婦数の不足、それから病室外に患者を収容しておること、次に無資格者によるエックス線照射の疑いでございます。なお、患者預かり金のずさんな会計処理についても指摘をされておるところでございます。さらに、栃木県におきまして継続調査を行っておる状況でございます。
 このような所見にかんがみまして、患者、家族に対します相談窓口の機能を強化すること、それから患者の転退院の促進、医療従事者の補充等病院側の改善措置を促す強力な指導を行っておるところでございます。また、県に対しまして入院患者に対する実地審査の実施を指示しておるところでございます。

○政府委員(金澤昭雄君) 警察側の捜査状況でございますが、栃木県警察におきましては、去年の四月と十二月に発生をしました事件につきまして現在捜査を行っておるわけでありますが、三月の十四日と二十八日の二回にわたりまして捜索、差し押さえを実施いたしました。引き続きまして二十九日に、四月に発生をしました事件につきましては傷害致死容疑、十二月に発生をいたしました事件につきましては傷害容疑ということで関係被疑者五名を逮捕いたしまして、現在捜査中でございます。事件は宇都宮地検の方に送致をいたしております。あわせまして、そのほか無資格診療につきましても現在捜査中でございます。

○政府委員(渡辺幸則君) 国税当局といたしましては、既にお尋ねの宇都宮病院につきましては調査を実施済みでございまして、その結果、過去の所得につきましても把握をいたしておるわけでございます。過去の五年間におきまして当初の申告以外のものとして追加申告をされましたもの、これはおおむね修正申告ということで調査の結果等を反映いたすわけでございますが、その合計が三億八千八百万円に達しておるわけでございます。

○高杉廸忠君 この事件によって逮捕者が出たことはまことに不幸なことなんです。しかし、今回の人たちは、最初に私どもが指摘した二件のリンチ殺人の疑いの関係者のみではなくて、そのほかにも疑いがあると思うんですが、今後も厳正に対処する、こういうことであろうと思いますが、公安委員長、再三御答弁いただいていますが、厳正にひとつ徹底糾明も含めてお願いをしたいと思うんです。

国務大臣田川誠一君) ただいま警察庁の金澤刑事局長が述べたように、この宇都宮病院につきましては厳正に対処をしてまいっておるつもりでございます。また、今後につきましても、犯罪容疑があればこの種のことについては徹底的に厳正に取り締まってまいる、このような方針で臨んでいるつもりでございます。

○高杉廸忠君 調査を願った死亡者あるいは受傷者あるいは暴行を受けた者、事情聴取をした者、それから宇都宮地検の本件の担当検察官、検察事務官、そのうち専念している人、これはどのような数になるのですか、伺います。

○政府委員(金澤昭雄君) 事情聴取しました関係者の数等につきましてはちょっと今手持ち資料ございませんので、数についてはまだ後刻御報告したいと思います。
 あと、検察庁側につきましては、法務省の方からお願いしたいと思います。

○政府委員(筧榮一君) お答え申し上げます。
 本件につきましては、被疑者五名、三月三十日に地検で送致を受けまして、翌日勾留請求をして、現在勾留して取り調べ中でございます。なお、そのほかに宇都宮地検としては、宇都宮地検に対します直接の告訴事件、告発事件が合計二件ございます。それらをあわせまして現在宇都宮地検で捜査中でございますが、何人が専従しているか私も詳細存じておりませんが、宇都宮地検としては事件の重大性にかんがみ、現時点で可能な限りの人員を投入して迅速かつ適正な事実の解明に当たるものと考えております。

○高杉廸忠君 前回も申し上げましたが、松本院長補佐、この方は元南署の次長をしていたんですね。この人はこう言っているんですね。告発を受けても部下が警察にいるから怖くないよ、こんな発言までしていると聞いているんです。したがって、厳正、公正を期するためには、東京地検で扱うか、十分な応援を出して宇都宮地検に特捜班を編成するなど、こういうことしかないのじゃないかと考えるんです。いかがですか。

○政府委員(金澤昭雄君) 前職員がこの病院に勤務しておることは事実でございますが、警察といたしましては、ただいまもお答えいたしましたように全力を尽くして事案の解明に当たっておるところでございますし、今後もそのつもりでやってまいりたいと思います。警察で捜査は十分にできるというふうに確信をいたしておるわけでございます。

○政府委員(筧榮一君) お答えいたします。
 東京地検でというお話もございましたが、宇都宮地検におきましても厳正に本件の捜査に当たっておるところでございまして、宇都宮地検の捜査を見守りたいと思います。
 なお、事案が進展いたしまして宇都宮地検で人員等で不十分であるというような事態が万一発生いたしますれば、それに相応いたしまして他の検察庁から人員を派遣するなり相応の捜査体制をしいて厳正に対処いたしたいと考えております。

○高杉廸忠君 院長及び看護人に対する告訴が次次と起こされているような状況なんです。医療も保護もない現状の中で、厚生大臣ね、大臣が県知事と十分協議をしていただいて、県知事に緊急調査監督委員会などをつくっていただいて、宇都宮病院の所在地で結構でありますから、そういう人たちの患者さんの身柄を預かる、こういうようなことも考えていいのじゃないかと思うんです。大臣、どうでしょう。

○政府委員(大池眞澄君) 既に栃木県におきましては、関係部門を挙げまして特別なチームを組みましてこの問題に対処している最中でございます。調査はもとよりでございますが、判明する問題点に即応いたしまして必要な改善の指導監督に当たっているところでございます。したがいまして、ただいま御指摘のような問題につきましては、その機能を県において発揮しつつある状況にあるということで御理解を賜りたいと思います。
 なお、先ほども答弁で申し上げましたように、相談窓口の機能強化あるいは転退院の促進、精神鑑定による実地審査の実施等、国としても県にこれを指示いたしまして、県で現在これを進めている最中でございます。このようなことを通じまして、入院中の患者さんの処遇には万全を期してまいりたいと、かように考えているわけでございます。

○高杉廸忠君 昨日のロンドンで発行されておりますサンデータイムスに、我が国の宇都宮病院リンチ殺人事件は六件と報じられたと聞いているんです。日本の警察、検察は全貌解明を迫られていると思うんですが、全力を挙げてほしい、こう思います。公安委員長、それから厚生大臣、特にお願いをしたいと思うんですが、いかがですか。

国務大臣渡部恒三君) 今、政府委員からその経過、今後の対策について答弁をさせていただきましたが、先生から幾たびか御心配をちょうだいしているように、精神障害者という特殊の立場にある患者の皆さん方の人権保護という極めて我々に与えられた重大な問題でございますから、入院しておられる患者の皆さん方のまず安全、それから今後こういうような御心配を起こさないようにということで全力を尽くして対処してまいりたいと思います。

国務大臣田川誠一君) 警察といたしましては、犯罪容疑があれば厳正に対処をしてまいります。御懸念されているようなことは絶対にございませんことをここで申し添えておきます。

○高杉廸忠君 最後になります。

○委員長(西村尚治君) 時間になりましたから、簡潔に願います。

○高杉廸忠君 宇都宮病院人権侵害事件というのは国際的にも恥辱であると考えるんです。そのためにも、我が国はダエス報告に対して賛意を表していくべきだと考えます。今回の事件にかんがみましてつくづく感じましたことは、精神障害者の救援センター、こういうものを必ず設立して、いろんな事情で病院にも家にも帰れない、こういう方々ですから、私たちは多くの方々のこういう期待、そういうものにこたえなければならぬと思うんです。これだけは、ぜひひとつ厚生大臣、実施をしていただきたい、こう思いますが、最後に御所見を伺って質問を終わります。

国務大臣渡部恒三君) ダエス報告書の勧告は、国連人権委員会差別防止・少数者保護小委員会において本年の夏具体的取り扱いが審議されると聞いております。先月末、外務省より検討の依頼がありましたので、現在、厚生省において検討中であります。ダエス報告書の勧告は、精神障害者の人権を保護し、適正な医療を行うための必要な処置について提言したものであって、我が国においては精神衛生法により基本的にはこの勧告の趣旨が実施されているものと考えておりますが、なおこれはよく勉強をいたしまして、今、先生御心配のようなことのないように、また世界から日本が笑われるようなことのないようにこの問題に対して一生懸命頑張ってまいりたいと思います。

○高杉廸忠君 救援センター。

国務大臣渡部恒三君) それも頑張ってまいります。