イギリスの精神保健法

前回(id:kokekokko:20050705)のつづき。
(1)日本での紹介文献
イギリスの精神保健法についての日本での紹介は多くある。さしあたり「ジュリスト増刊 精神医療と心神喪失者等医療観察法」(有斐閣)所収の論文から芋づる式にあたっていくとよいだろう。
・「刑事司法と精神医療過程との交錯――イギリス精神保健法改正議論から何を学ぶか――」柑本美和(法と精神医療18号75ページ以下)
近時のイギリスの法改正の基調は、重度人格障害者への処遇の厳重化である。筆者は、「刑罰によって満たされない保安的欲求を精神医療に求めようとすることは妥当ではない」(84ページ)との立場から、この基調に対してやや批判的に検討を加える。コミュニティ・ケアとその行き詰まりを紹介しつつ、この原因は法制度の不備ではなくむしろ資金や人的資源等の不足によるものだとしている。
・「精神医療と犯罪者処遇」川本哲郎(成文堂)
論文集。第二編に、イギリスの精神障害犯罪者処遇に関する論考がある。保安病院(病棟)の現状に関する紹介や、2000年に公開された政府白書についての検討がなされている。
・「イギリス刑法における責任能力の改正議論」三宅孝之(島大法学48巻4号1ページ以下)
スコットランドの近時の状況について、法律委員会のリポートを中心に紹介されている。スコットランドでは2003年に精神保健法が改正され、続いて刑事法における責任能力についての検討へと議論が進行している。
 
(2)改正議論に関するネット上の資料-その1
上述の2000年白書は、保健省によって公開されている
保健省からは、精神保健法改正案の概要もアップされている。
また、DSPD(Dangerous People with Severe Personality Disorder)からはReview of treatments for severe personality disorderなどが公開されている。