精神医療に関する条文・審議(その52)

前回(id:kokekokko:20050701)のつづき。初回は2004/10/28(id:kokekokko:20041028)。
平成1年代の精神保健法精神保健福祉法の改正についてみてみます。このころになると、精神保健福祉法社会福祉法としての性格が強くなり、社会保障政策の流れに応じた法改正が多くなります。
改正経過は次のとおりです。
 
平成1年4月10日法律第22号〔国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律〕
平成5年6月18日法律第74号〔精神保健法等の一部を改正する法律〕
平成5年11月12日法律第89号〔行政手続法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律〕
平成6年6月29日法律第56号〔健康保険法等の一部を改正する法律〕
平成6年7月1日法律第84号〔地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律〕
平成7年5月19日法律第94号〔第五次改正〕
平成8年6月14日法律第82号〔厚生年金保険法等の一部を改正する法律〕
平成9年12月17日法律第124号〔介護保険法施行法〕
 
今回は平成元年法律第22号による改正をみてみます。4年前からの臨時行政調査会答申により、国の補助金の率については臨時的に引き下げてきました。今回の改正では、この補助率引き下げを恒常化することになりました。この点について、本来国家が負担すべき補助、特に生活保護費や義務教育費について、補助率引き下げを固定するのは福祉切捨てではないか、という批判があり、また、審議方法についても、野党の批判が多く出ました。
ここでは、生活保護などの厚生省関係の議論に絞って、アップしてみます。

国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案(平成元年閣法第6号)【18条と附則1〜3項】
精神保健法の一部改正)
第十八条 精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
 第三十条第二項中「十分の八」を「四分の三」に改める。
 
附則
(施行期日等)
1 この法律は、平成元年四月一日から施行する。
2 この法律(第十一条、第十二条及び第三十四条の規定を除く。)による改正後の法律の平成元年度及び平成二年度の特例に係る規定並びに平成元年度の特例に係る規定は、平成元年度及び平成二年度(平成元年度の特例に係るものにあっては、平成元年度。以下この項において同じ。)の予算に係る国の負担(当該国の負担に係る都道府県又は市町村の負担を含む。以下この項及び次項において同じ。)又は補助(昭和六十三年度以前の年度における事務又は事業の実施により平成元年度以降の年度に支出される国の負担及び昭和六十三年度以前の年度の国庫債務負担行為に基づき平成元年度以降の年度に支出すべきものとされた国の負担又は補助を除く。)並びに平成元年度及び平成二年度における事務又は事業の実施により平成三年度(平成元年度の特例に係るものにあっては、平成二年度。以下この項において同じ。)以降の年度に支出される国の負担、平成元年度及び平成二年度の国庫債務負担行為に基づき平成三年度以降の年度に支出すべきものとされる国の負担又は補助並びに平成元年度及び平成二年度の歳出予算に係る国の負担又は補助で平成三年度以降の年度に繰り越されるものについて適用し、昭和六十三年度以前の年度における事務又は事業の実施により平成元年度以降の年度に支出される国の負担、昭和六十三年度以前の年度の国庫債務負担行為に基づき平成元年度以降の年度に支出すべきものとされた国の負担又は補助及び昭和六十三年度以前の年度の歳出予算に係る国の負担又は補助で平成元年度以降の年度に繰り越されたものについては、なお従前の例による。
3 第十三条(義務教育費国庫負担法第二条の改正規定に限る。)、第十四条(公立養護学校整備特別措置法第五条の改正規定に限る。)及び第十六条から第二十八条までの規定による改正後の法律の規定は、平成元年度以降の年度の予算に係る国の負担又は補助(昭和六十三年度以前の年度における事務又は事業の実施により平成元年度以降の年度に支出される国の負担又は補助を除く。)について適用し、昭和六十三年度以前の年度における事務又は事業の実施により平成元年度以降の年度に支出される国の負担又は補助及び昭和六十三年度以前の年度の歳出予算に係る国の負担又は補助で平成元年度以降の年度に繰り越されたものについては、なお従前の例による。
 
理由
最近における財政状況及び累次の臨時行政調査会の答申等の趣旨を踏まえ、財政資金の効率的使用を図り、あわせて国及び地方の財政関係の安定化に資するため、国の負担金、補助金等に関する整理及び合理化並びに臨時特例等の措置を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

第114回衆議院 大蔵委員会会議録第7号(平成1年4月3日)
○村山国務大臣 ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
 平成元年度予算は、内需の持続的拡大に配意しつつ、財政改革を強力に推進することとして編成いたしました。歳出面においては、引き続き既存の制度、施策の見直しを行い、経費の節減合理化を図るとともに、限られた財源を重点的、効率的に配分するように努めたところであります。
 国の補助金等につきましては、累次の臨時行政調査会の答申等の趣旨を踏まえ、昭和六十一年度の国の補助金等の臨時特例等に関する法律により補助率等に係る暫定措置を講ずるなど、これまでもその整理合理化を推進してきたところであります。平成元年度予算の編成に当たりましては、これらの暫定措置の期間が昭和六十三年度末に終了することに伴い、改めて一体的、総合的な見直しを行い、補助率等につき所要の措置を定めることとし、また、厚生年金の国庫負担金の繰り入れ等につきましても、引き続き所要の特例措置を講ずることとしたところであります。
 本法律案は、以上申し述べましたように、昭和六十一年度の国の補助金等の臨時特例等に関する法律により措置が講じられてきた事項について、財政資金の効率的使用を図り、あわせて国及び地方の財政関係の安定化に資するため、所要の立法措置を定めるものであります。
 以下、この法律案の内容について申し上げます。
 第一に、昭和六十三年度まで暫定措置が講じられてきた事業に係る補助率等について、まず、生活保護、措置費等に係る補助率等を定める改正を行うこととし、さらに、義務教育費国庫負担金のうち共済長期給付、恩給等に係る補助率等の取り扱いを定めることとしております。【略】
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
○中村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
○中村委員長 これより質疑に入ります。【略】
○渡部(行)委員 本来なら法案提出者である大蔵大臣に御質問をするべきだと思いますけれども、きょうは厚生大臣が外交的重要会議があるということで、十二時十分前にはここを退席しなければならないそうでございますので、私もそれに合わせてまず厚生大臣からお伺いしたいと思います。厚生大臣は、私の質問中であっても時間が来たら勝手に帰って結構ですから、そのようにお願いします。
 そこで、まず第一点は、この提案されている法律案を見ると、厚生省関係の改正が十三本あるわけでございます。これはいずれも大変重要な内容を持つものばかりでございます。したがって、補助金の負担割合や補助率が政策目的達成の裏づけとして十分その役割を果たしてきたのかどうか、また、今後そういうことができるのかどうか。それを改正しなければならないという一つの内容、どのような変化がその条件の中に起きたのか、その辺の御説明をお願いします。
 考えてみると、これだけの膨大な法案を十分な審議もなしに一括大蔵にゆだねるということは、余りにも簡便主義に走って、非常に無責任な感じがするのですが、その点に対してお答えをお願いしたいと思います。
○小泉国務大臣 大蔵大臣の方があるいは適切ではないかと思いますが、御指名によりまして、私からも一言答弁をさせていただきます。
 今回の措置事項は、六十一年度の補助金特例法のすべての措置について、改めて一体的な、また総合的な見直しを行った結果によるものと私は理解しております。ですから、確かに社労関係で議論する問題もあると思いますが、内容を一括化して総合的に把握する上で、むしろ全体の上でこうして大蔵委員会で議論する方が総合的な全体を見渡した審議ができるのではないかと思って、このような一括法案審議になったものと思っております。
○渡部(行)委員 私が言わんとするのは、大蔵大臣は総合的に一括して出した張本人でありますけれども、厚生大臣として、これほど重要なものをなぜ任せたかということなんですよ。これはとても大蔵あたりに任せてはおけない、社会労働委員会でみっちり審議してから、そしてその補助金というものの役割というものについての評価をしてから考える、そのくらいのことは当然責任者としてあってしかるべきだと私は思うのです。
 それで第二番目には、今回の法改正によって、昭和五十九年度の補助率や負担割合と比べると国の負担が大幅に引き下げられたわけでございます。こうなると、逆に地方自治体等の負担が増大することになって、初めは三年間の暫定措置ということで、まあ何とか我慢しようと思っておったところが、今度はその大半がそのまま固定化されようというわけですから、これは国の地方自治体やその関係者に対するある種の裏切り行為ではないか、私はこういうふうに考えるわけでございます。
 このような問題について大臣はどのようにお考えなのか、お示し願いたいと思います。
○小泉国務大臣 確かに、五十九年度に比べますと、生活保護については十分の八が今回十分の七・五、いわゆる四分の三になった、また措置費についても二分の一になったということで、補助率に変動はありますが、そのかわりといいますか、それにかわるべき財源措置も国としてはたばこ税等措置しておりますので、実際に生活保護を受ける方等に対しては影響がないようにしているということで十分に配慮された。
 確かに三年前は、このような問題がどのように解決されるかというのが確定していなかったものですから、とりあえず暫定的にということで、その間推移を見よう。三年たっていろいろ検討した結果、十分の八から四分の三に変更するに何ら支障がないという判断をしたもので、今回、恒久化することに厚生省は応じたものであります。
○渡部(行)委員 支障がないというのはあなたの判断でしょうが、国民はそういう判断はしていないのです。そこが大事なんですよ。国民がどのようにこの法案を見詰めているのか、どのように解釈しているのか、そのことを知らないで一方的な判断で通されたのでは、それは政治とは言えないと私は思うのです。
 例えば、まあこれは後で議論しますけれども、今の麻薬患者のふえておる状態や、そういうものがどんどんと経費もかさんでいくにもかかわらず、そういうものもここの法案の中にちゃんと引き下げをやっている。実際に必要なのに、必要経費がかさんでおるにもかかわらずそれを引き下げていくというのは、全く時代に逆行することだと私は思うのです。
【略】
○篠沢政府委員 今回の法案あるいは補助率問題の取り扱いの決定全体の中におきまして麻薬取締法の問題が入っております。ただ、この麻薬取締法の一部改正でございますが、これは麻薬中毒患者の措置入院費用の問題でございます。
 これにつきましては、五十九年度以前の本則負担割合が十分の八でございましたが、昭和六十年度あるいは六十一年度から六十三年度、合計四年間の暫定期間の間は補助率十分の七でありましたものを、今回四分の三ということで恒久化をするものでございます。生活保護でございますとか、あるいはそのほか児童扶養手当の問題でございますとか特別児童扶養手当の問題でございますとかございますが、その一部のグループの中で、生活保護等と言っておりますけれども、これにつきましては、一般の補助率の中で最高の補助率体系として恒久化をいたしたいということで、四分の三に設定をしたものでございます。中身といたしましては、麻薬中毒患者の措置入院費用という部分に限られていることを御理解いただきたいと思います。
○渡部(行)委員 次に移りますが、生活保護に関する問題についてでございます。
 その第一点は、憲法二十五条で言う健康で文化的な最低限度の生活とは、現在の日本のレベル、つまり世界一の金持ち国と言われ経済大国などと言われていること、こういうことを考えながらヨーロッパの先進諸国と比べた場合、今の程度でこれが適当と思われるのかどうか、あるいは今後この生活保護基準の見直しを考えるのかどうか、その辺についてお伺いします。
○小林(功)政府委員 生活保護につきましては、生活に困窮される方に対しまして健康で文化的な生活を保障する、いわば最後のよりどころとなる非常に重要な制度でございますが、その中心をなします生活扶助基準でございます。
 これにつきましては、実は五十八年十二月に中央社会福祉審議会という機関の意見具申がございまして、そこでは、「一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達している」、こういう指摘があるわけでございます。その後もこの考え方に従いまして、我々、水準均衡方式と申しておりますが、一般の国民の生活実態との間の関係を維持するということで改善を年々行ってきておりますので、現在の水準は妥当なものである、このように考えております。
○渡部(行)委員 将来見直す必要はないのかということについて、あなた答弁漏れているよ。だから、今の水準では、国民との比較において妥当だろうと言っているだけであって、国際的にはどうなんだ。もっと真剣に聞いていなければだめだよ、いいかげんに聞いて答弁していたんでは。ちゃんと聞いたことに答えなさいよ。
○小林(功)政府委員 先ほど申し上げましたように、生活保護は最低生活の保障という非常に重要な制度でございます。
 したがって、その最低生活の水準の維持あるいは保障といった意味の見方、これは大変大事なことは当然でございますが、同時に、その財源というものは生活保護の場合にはすべて税金でございます。したがいまして、税を納める立場の方の納得もいただかなければならないという二つの問題を同時に調整しなければいかぬ。そういう意味で、先ほど申しましたように、一般の国民の生活水準、それと生活保護世帯あるいは生活保護を滴用すべき方々との均衡というものを保つのが現在でも妥当だと思うし、それから将来ともそれが妥当だ、こういうことを申し上げたわけであります。
 なお、諸外国の例を指摘されましたけれども、生活保護水準については、もともと国によって制度の仕組み、内容あるいはその国の物価水準等がまちまちでございますので、正確な意味で厳密に比較するのはなかなか困難でございますけれども、我々の承知する限りにおきましては、欧米先進諸国と比較しまして日本の場合の生活保護というのは決して遜色ないというふうに理解をしております。
○渡部(行)委員 時間がなくなりますが、とにかく、こういう場合の比較というのは、よって来る原因からさかのぼって云々する必要はないのですよ。日本でまんじゅう一つ食えば、ヨーロッパでもまんじゅう一つ食ってるから同じだと言えば、それでわかるのですよ。何も難しいことをぐだぐだ言わなくても、日本の受けている生活保護者の生活の状態とヨーロッパの生活の状態がこういう点で大体均衡している、そう言うなら話はわかるけれども、さっぱりわけのわからぬ答弁で困るわけです。
【略】

第114回衆議院 大蔵委員会会議録第8号(平成1年4月4日)
○中村委員長 この際、本案に対し、中西啓介君外四名から、自由民主党提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。中川昭一君。
 国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案に対する修正案
【略】
○中川(昭)委員 ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案に対する修正案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。
 御承知のとおり、この法律の施行期日は、原案では「平成元年四月一日」と定められておりますが、既にその期日を経過しておりますので、これを「公布の日」に改めることとするものであります。
 以上が本修正案の提案の趣旨及びその内容であります。
 何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
○中村委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
○中村委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。江口一雄君。
○江口委員 私は、自由民主党を代表して、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案及び同法律案に対する修正案に賛成の意見を述べるものであります。 御案内のとおり、現下の我が国財政は、本年度末の公債残高が百六十二兆円程度に達する見込みであり、これから生ずる国債の利払い費も歳出予算の約二割を占め、引き続き極めて厳しい状況となっております。
 今後急速に進展する人口の高齢化や国際社会における我が国の責任の増大等社会経済情勢の変化に財政が弾力的に対応していくためには、今のうちにその基盤とも言うべき財政の対応力を回復することが引き続き緊要な課題であります。したがって、平成二年度特例公債依存体質からの脱却及び公債依存度の引き下げという目標の達成に向けて、さらに歳出の徹底した見直し、合理化等に取り組むことが必要であると考える次第であります。
 政府は、平成元年度予算の編成に当たり、内需の持続的拡大に配意しつつ、財政改革を強力に推進するため、歳出面において引き続き既存の制度、施策の見直しを行うとともに、特に一般歳出の四割を超える補助金等の整理合理化に努力を払っているところであります。
 もちろん、補助金等の整理合理化は、行政領域の見直しをも伴うもので、極めて困難な側面を持っていることは十分承知しておりますが、しかしその困難性を有するがゆえに、その努力を放棄するわけにはまいらないのであります。
 私は、このような観点から、政府が緩むことなく歳出の徹底した見直し、合理化に取り組んだ証左として本法律案を極めて高く評価するところであります。
 本法律案における各措置は、累次の臨時行政調査会の答申等の趣旨を踏まえ、昭和六十三年度までの暫定措置が講じられてきた事業の補助率等について、改めて最近における財政状況、国と地方の機能分担、費用負担のあり方等を勘案しつつ一体的、総合的な見直しを行うこととしたものであります。【略】
 なお、施行期日を公布の日に改める修正案は、事の性質上当然の措置であると考えます。
 最後に、私は、政府が国民各位の理解と協力を得て行財政改革に引き続き積極的に取り組み、補助金等を含めた歳出全般にわたる節減合理化を一層推進し、限られた財源の中で財政資金の効率的使用が図られることを切望して、本案及び修正案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
○中村委員長 沢田広君。
○沢田委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま議題となりました補助金の整理、合理化、臨時特例等に関する法律及び同修正案について反対の討論を行います。
 以下、反対の主要点を申し上げ、理由といたします。
 一、政府固有の義務的経費を地方団体に転嫁する措置は許されない。
 一、地方自治体の立場、意見が十分反映されていない。
 一、補助金カット四十四法律は強引過ぎ、しかも民生の安定に不可欠な厚生、建設、農林、教育など十省庁に及ぶ整理合理化の名によるカットで
ある。
 一、カット分は財源的に考慮されているからといっても何ら保証が明らかでなく、不安の助長となり、地方自治体間のひずみや国民の福祉に十分配慮されたことにならない。
 一、中央集権化の強化となり、自治体や国民不信感の増幅を加速させている。
 一、補助率の切り下げは、特に生活保護、老人福祉の減額は弱い者いじめの最たるもので、その他災害、教育等を圧迫することも許されない。
 一、地方債の肥大化を招き、財政の硬直化を進め、財政危機の不安が大きい。
 一、リクルート疑惑を解明し、混乱している消費税を直ちに取りやめ、速やかに政治不信をなくすべきである。
 政府は、これらの実態に対応し、地方財政の健全化に努め、国と地方財政の均衡を速やかに図られることを期待します。
 最後に、事態収拾の困難な政治状況に追い込まれている今日、速やかに政治を主権者である国民の手に戻し、解散・総選挙を断行することを要求するものである、これは天の声、民の声、時の流れであります。
 以上、反対の討論といたします。(拍手)
○中村委員長 森田景一君。
○森田(景)委員 私は、公明党国民会議を代表して、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案、同修正案に対し、反対の討論を行うものであります。 反対の理由の第一は、補助金の一律カット法は、地方自治体の財政を大きく圧迫するものであり、実施すべきではないという我々の反対を押し切って成立させた暫定措置であり、一日も早く本則に復元して地方への負担のしわ寄せを解消しなければならないのに、ほとんどその措置がとられていないことであります。
 特に生活保護費等は本則十分の八の補助率を十分の七・五にカットしたまま恒久化しようとしたり、保育所、老人ホーム運営費など措置費も同様に十分の八を二分の一にカットしたまま恒久化しようとしていることは到底容認できるものではありません。
 反対の第二の理由は、補助金の整理合理化は、補助事業の全面的な見直しを前提に、統合メニュー化、統合化、零細補助金の整理、一般財源化を行うべきであるのに、その対応が不十分であるからであります。
【略】
 以上の理由により、本案並びに修正案に反対であることを表明して、討論を終わります。(拍手)
○中村委員長 安倍基雄君。
○安倍(基)委員 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案、同修正案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。
 反対の理由の第一は、本来地方自治体よりも国が主たる責任を負うべき社会保障的な経費について、国の負担率を引き下げようとしていることであります。
 従来、生活保護身体障害者福祉、老人福祉等について国の負担率が高いのは、こうした施策が本来地方自治体によってばらばらとなることが好ましくなく、国が主たる責任を持ち、バランスをとっていくという思想が根底にあるのであります。特に高齢化が急速に進むことが予想される現在、老人福祉問題は今後の重要な課題であります。今後、急速に伸びるであろうこうした経費を自治体に押しつけることは、富裕な自治体であればともかく、財政力のない自治体にとって大きな負担となり、地域間のアンバランスが拡大する結果となりましょう。これは長期的に福祉の大幅な後退となり、大きな問題であると言えます。
 第二の理由は、今回の補助金の見直しが、高率の補助金カットという率の面に重点があり、本来どの補助金が真に必要であり、あるいは必要でないかというスクラップ・アンド・ビルドという立場に立っていないことであります。
 補助金の中には、補助率は低くとも額の大きいものもあり、また、今回率のカットの行われるものは、今後ますます必要となる経費と考えられます。こうした補助金に対する基本的な検討が行われないまま、ただ高率であるがゆえにカットの対象となるという点、この法案は理念なき法案と言わざるを得ません。
 【略】
 以上の理由により、我々は本法案に反対せざるを得ません。
 最後に、それぞれの関係する委員会で慎重審議されるべきこの問題が、本委員会で一括論議され、十分の審議を経ないままに採決されることに遺憾の意を表して、私の反対討論を終わります。(拍手)
○中村委員長 正森成二君。
○正森委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案及び修正案に対し、反対討論を行います。
 【略】
 反対の第二の理由は、国民生活に重大な打撃を与えることであります。
 社会保障、福祉関係の補助率等の削減による影響額は、五年間に二兆三千六百億円余にも達します。生活保護世帯、身体障害児、母子家庭、老人等のいわゆる社会的弱者と、保育所、婦人保護施設、精神薄弱者援助施設等に多大の犠牲を強いることは明らかであります。「国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と明記した憲法と、これに基づいて築かれてきた各分野の制度、政策の原理原則を真っ向から踏みにじるものではありませんか。
 【略】
○中村委員長 これにて討論は終局いたしました。
○中村委員長 これより国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案について採決に入ります。
 まず、中西啓介君外四名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔養成者起立〕
○中村委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。
 次に、ただいま可決された修正部分を除く原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○中村委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
○中村委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中西啓介君外三名から、自由民主党日本社会党・護憲共同、公明党国民会議及び民社党・民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。森田景一君。
○森田(景)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。
    国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の次項について十分配慮すべきである。
 一 高齢化社会に対応し、行政需要の拡大に的確に応えるとともに、地方財政法第十条等の趣旨を踏まえ、今後とも国庫負担制度の基本を維持し、また、国の補助負担金の整理に当たっては、その事務事業の性格と国と地方間の財政秩序の維持を十分に勘案すること。
 二 社会保障、文教行政等、国民のナショナルミニマムに関する制度及び負担の変更については、地方公共団体をはじめ関係団体の意見を十分尊重すること。
   また、国と地方の行財政の再配分に係る国の施策の変更に当たっては、地方公共団体の一方的な財政負担増をもたらさぬよう特段の配慮を払うこと。
 【略】
 八 法律の改廃については、立法の趣旨と制定の経過を踏まえ国会審議のあり方について十分配慮すること。
以上であります。
 何とぞ御賛成を賜りますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)
○中村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○中村委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。村山大蔵大臣。
○村山国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえて配意してまいりたいと存じます。

第114回衆議院 本会議会議録第9号(平成1年4月4日)
○議長(原健三郎君) 国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。大蔵委員長中村正三郎君。
    〔中村正三郎君登壇〕
中村正三郎君 ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 この法律案は、最近における財政状況及び累次の臨時行政調査会の答申等の趣旨を踏まえ、財政資金の効率的使用を図り、あわせて、国及び地方の財政関係の安定化に資するため、国の負担金、補助金等に関する整理及び合理化並びに臨時特例等の措置を定めようとするもので、その主な内容を申し上げます。
 第一に、昭和六十三年度まで暫定措置が講じられてきた事業に係る補助率等について、まず、生活保護・措置費等に係る補助率等を定める改正を行うこととし、さらに義務教育費国庫負担金のうち共済長期給付等に関する補助率等の取り扱いに定めることとしております。【略】
 本案につきましては、四月三日村山大蔵大臣から提案理由の説明を聴取した後、直ちに質疑に入り、本日質疑を終了いたしましたところ、中西啓介君外四名から、自由民主党提案による施行期日を「公布の日」に改める修正案が提出されました。
 次いで、討論を行い、採決いたしました結果、本案は多数をもって修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(原健三郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。沢田広君。
    〔沢田広君登壇〕
○沢田広君 私は、日本社会党・護憲共同を代表し、ただいま議題となりましたいわゆる補助金の整理合理化特例に関する法律及び同修正案に反対の討論を行うものであります。(拍手)
 整理合理化の美名で国民の権利に属する分を減額することは許されるものではありません。まさに羊頭を掲げて狗肉を売るの非難は避けられないものであろうと思います。
 今回の提案は、四十七法案に及ぶものであります。この法案に反対する理由を申し述べます。
 第一は、政府が約束違反を続けておりますが、消費税ばかりでなく、当初八五年度限りとされ、地方団体に約束したのでありますが、それが八六年度からは三年間限りと延長し、八七年にカットの拡大となり、その恒久化を図り、その一部は再び暫定措置として延長することは、まさに約束違反であることは明らかであります。
 第二に、生活保護の補助の引き下げについては、八四年度の負担八〇%であったものが、八五年度から八八年まで七〇%となり、八九年度から七五%と、足して二で割ると言われる提案は、その政策の権威を傷つけるものであると存じます。たばこ税の一部が交付税となっておりますが、施策が生活保護である限り、福祉切り捨てと言われてもやむを得ないのではないでしょうか。
 第三に、大切な児童、老人、身体障害者、精神薄弱者などは二分の一の補助にカットされましたが、法が示すように、その原点は国の義務に該当するものであります。その責任の所在と財源の確保に十分対応する措置が必要であったのではないかと思います。
 【略】
 最後に、今日の混迷から脱却するためには、速やかに国民すなわち主権者にその審判をゆだね、政治の信頼を取り戻すことは緊急な課題であります。事の都合、党利党略にかかわることなく、直ちに解散・総選挙は、まさに天の声、民の声、時の流れでもあります。余断を許すことはできません。
 総理の決断を求めて、反対の討論といたします。(拍手)
○議長(原健三郎君) 金子一義君。
    〔金子一義君登壇〕
金子一義君 私は、自由民主党を代表して、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案に賛成の意見を述べるものであります。(拍手)
 周知のとおり、現下の我が国財政は、本年度末の公債残高が百六十二兆円程度に達する見込みであり、これから生ずる国債の利払い費も歳出予算の約二割を占め、引き続き極めて厳しい状況であります。今後急速に進展する人口の高齢化や国際社会における我が国の責任の増大等社会経済情勢の変化に財政が弾力的に対応していくためには、今のうちにその基盤とも言うべき財政の対応力を回復することが緊要な課題であることは言うまでもありません。したがって、平成二年度特例公債依存体質からの脱却という目標の達成に向けて、さらに歳出の徹底した見直し、合理化等に取り組むことが必要であります。
 政府は、平成元年度予算の編成に当たり、内需の持続的拡大に十分配慮する一方で、財政改革を推進するため、歳出面において、既存の制度、施策の見直しを行うとともに、特に一般歳出の四割を超える補助金等の整理合理化に引き続き努力を払っているところであります。もちろん、補助金等の整理合理化は、行政の見直しを伴うもので、極めて困難な側面を持っていることは十分承知しております。しかし、それがいかに困難であっても、その努力を放棄するわけにはいきません。
 私は、このような観点から、政府が緩むことなく歳出の徹底した見直し、合理化に取り組んだ証左として本法律案を極めて高く評価するものであります。(拍手)
 本法律案における各措置は、累次の臨時行政調査会の答申等の趣旨を踏まえ、昭和六十三年度までの暫定措置が講じられてきた事業の補助率等について、改めて最近における財政状況、国と地方の機能分担、費用負担のあり方等を十分に考慮しつつ一体的、総合的な見直しを行うこととしたものであります。
 【略】
○議長(原健三郎君) これにて討論は終局いたしました。
○議長(原健三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(原健三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。(拍手)

第114回参議院 本会議会議録第7号(平成1年3月27日)
国務大臣村山達雄君) ただいま議題となりました国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
 平成元年度予算は、内需の持続的拡大に配意しつつ、財政改革を強力に推進することとして編成いたしました。歳出面においては、引き続き既存の制度、施策の見直しを行い、経費の節減合理化を図るとともに、限られた財源を重点的、効率的に配分するように努めたところであります。
 国の補助金等につきましては、累次の臨時行政調査会の答申等の趣旨を踏まえ、昭和六十一年度の国の補助金等の臨時特例等に関する法律により補助率等に係る暫定措置を講ずるなど、これまでもその整理合理化を推進してきたところであります。平成元年度予算の編成に当たりましては、これらの暫定措置の期間が昭和六十三年度末に終了することに伴い、改めて一体的、総合的な見直しを行い、補助率等につき所要の措置を定めることとし、また、厚生年金の国庫負担金の繰り入れ等につきましても、引き続き所要の特例措置を講ずることとしたところであります。
 本法律案は、以上申し述べましたように、昭和六十一年度の国の補助金等の臨時特例等に関する法律により措置が講ぜられてきた事項について、財政資金の効率的使用を図り、あわせて国及び地方の財政関係の安定化に資するため、所要の立法措置を定めるものであります。
 以下、その大要を申し上げます。
 第一に、昭和六十三年度まで暫定措置が講ぜられてきた事業に係る補助率等について、まず、生活保護、措置費等に係る補助率等を定める改正を行うこととし、さらに、義務教育費国庫負担金のうち共済長期給付、恩給等に係る補助率等の取り扱いを定めることとしております。また、公共事業等につきましては、平成二年度までの暫定措置として、昭和六十三年度に適用されている補助率等を適用することとしております。【略】
 以上、国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
○副議長(瀬谷英行君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。渕上貞雄君。
   〔渕上貞雄君登壇、拍手〕
渕上貞雄君 【略】
 政府の約束違反は、消費税だけではなく、このいわゆる補助金カット法案もそうであります。当初は一九八五年度限りとされ、政府は地方公共団体とかたく約束したはずであります。それが八六年度からは三年間限りと延長され、八七年度にはさらにカットが拡大し、ようやく三年間が終わったら、国の負担金の多くはカットが恒久化され、負担金と補助金の一部は再び暫定措置として延長されるということは、明確な約束違反ではありませんか。竹下総理は消費税導入による逆進性の中和は福祉などにかかわる歳出の充実で行うと明名されてきましたが、生活保護を初めとする福祉や文教関係の国の負担金のカットの恒久化はその約束にも逆行するものではないですか。この点についても総理の明快な答弁を求めます。
 【略】
 さらに、具体的な問題についてお伺いをいたします。
 第一には、生活保護については、八四年度負担率八〇%であったものが八五年度から八八年度にあっては七〇%とされていましたが、八九年度からは七五%で恒久化されることとなりました。その財源措置として国のたばこ税の一部が地方交付税の対象税目に算入されたことは承知しておりますが、補助金というものと国庫負担金というものの性格が混同されているのではないでしょうか。どのように整理されて七五%という数字が出てきたのか、はっきりお示しを願いたいと存じます。
 第二に、児童福祉、老人福祉、身体障害者福祉、精神薄弱者福祉等の負担率については、八九年度以降は五〇%で恒久化されることとなりました。機関委任事務の整理合理化によって団体事務となったから復元は難しいという説明がなされております。もしそうであるなら、機関委任事務と団体委任事務、そして団体事務の確固たる定義、性格の違い、国と地方の普遍的な負担関係について自治大臣からお示しをいただきたいと存じます。
【略】
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
国務大臣竹下登君) お答えをいたします。
【略】
 次に、補助金カット法案の中身にお触れになりました。
 確かに私は、消費税導入に際しまして、いわば税体系全体の中、あるいは歳出面において中和をしなきゃならぬというようなことを申し上げてきたことは事実でございます。
 昭和六十三年度まで暫定措置が講じられてきました生活保護、措置費等に係る補助負担率につきましては、今回改めて最近における財政状況、国と地方の機能分担、費用負担のあり方、これらを勘案しながら、他の分野の補助負担率とあわせ一体的、総合的に検討を十分行いまして、たばこ税を地方交付税の対象とする地方財源措置を講じながら、その見直しを行ってきたところでございます。御指摘のあったこともその点でございます。
 この補助負担率の取り扱いは国と地方の費用負担に係る問題でありまして、また、所要の地方財源措置を講じておるところからいたしまして、社会保障制度や行政サービスの水準そのものに何らの影響を与えるものではありません。社会保障制度の運営に支障をもたらすものではありません。
 なお、消費税導入をも踏まえまして、真に手を差し伸べるべき方々に対する施策につきましては、既に議了いただきました六十三年度補正予算、これらにおきまして、いわゆる臨時福祉特別給付金を支給し、平成元年度予算におきましても、生活扶助基準の適切な引き上げを行いますほか、老人、障害者に対する在宅福祉施策の充実などにきめ細かな配慮を行ってまいります。
【略】
   〔国務大臣村山達雄君登壇、拍手〕
国務大臣村山達雄君) 【略】
 それから第二のお話は、生活保護費について、国の負担義務を整理して七五%にしたのはどういうわけかと、こういうことでございます。
 確かに生活保護の問題は、これは社会保障の一つの根幹をなすわけでございますが、これができたときから比べてみますと、今、社会保障の本流と申しますか、これは年金、医療費、福祉、これが大きな流れになっております。
 そういう意味で、相対的に社会保障費の中で占める――まあ昔は救貧、防貧という角度で取りしげられたわけでございますが、生活保護の相対的のウエートは少し下がっているということ、それからもう一つは、やはり先ほど申しましたこおに、国と地方の財政状況とか機能分担ということを考えていきましたときに、この辺でもうそろそろ交付税の処理をやってそしてピリオドを打つたらどうかということで、関係省庁の間で事務的に折衝の結果、そしてまた、編成のときに大臣折衛を経まして、まずこの辺であろうということに合意を見たところでございます。
【略】
   〔太田淳夫君登壇、拍手〕
○太田淳夫君 【略】
 政府は、従来一貫して、補助率の変更に当たっては事務の性格や国、地方自治体間の権限配分の検討が前提だと主張してきました。ところが、今回、生活保護費の補助率を引き下げ前の十分の八に復元することなく、十分の七・五で恒久化しようとしております。言うまでもなく、生活保護行政は国の社会福祉行政の根幹であり、国、地方間の権限配分を見直す余地は全くない事務であります。にもかかわらずこれを変更したのは政府の従来の主張に全く背反するものであります。また、恒久化に伴う自治体の負担増については恒久的な財源措置を講じたと言われておりますが、それは完全なものとはなっておりません。一体、この補助率の変更はどんな論理によるものでしょうか。論理抜きの補助率変更は財政に対する国民の信頼さえ失わせるものではないでしょうか、自治大臣厚生大臣の見解を伺いたい。
 【略】
 また、旧行革審の答申では、補助率のあり方について、負担を国と地方が等しく分かち合うべきものは二分の一、より国が多く負担すべきものは三分の二など具体的な指針を示したところでありますが、老人福祉法等の負担率を二分の一にするなど、本来国がより多く負担すべきものについて恒久的に地方への負担肩がわりを強要していることは、国の責任を放棄したものと指摘せざるを得ません。老人福祉法等にかかわるものも昭和五十九年度の水準に復帰すべきであると考えますが、自治、厚生両大臣の御所見を伺いたいのであります。
 【略】
   〔国務大臣坂野重信君登壇、拍手〕
国務大臣坂野重信君) 第一問は、生活保護の問題でございます。
 厚生大臣からまた詳しく御答弁があると思いますが、暫定補助率十分の七を引き上げまして四分の三で恒久化することにいたしましたけれども、地方団体の財政運営等については支障を来さないように地方交付税の対象税目の拡大等によって恒久財源を確保していく、そのように措置いたしたいと思っている次第でございます。
 老人福祉の問題も同様でございまして、厚生大臣から御説明、御答弁があると思いますが、これにつきましても、恒久化に伴う財源措置として地方交付税対象税目を拡大する等、地方公共団体の財政運営に支障を来さないように措置してまいりたいと思っております。
 【略】
   〔国務大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕
国務大臣小泉純一郎君) 初めに、生活保護の補助率変更についてでございますが、生活保護につきましては、戦後の制度創設時に比べ社会保障におけるその役割が相対的に変化していることや、国と地方の財政状況も変化していること、また生活保護制度についての国の責任にかんがみ、その補助率は一般の補助率の体系の中で最高水準に位置づけられる必要があること等の諸点を踏まえ、補助率の全体的な見直しの中で今回四分の三で恒久化を図ることとしたものです。
 なお、地方の行財政運営に支障が生じないよう所要の恒久財源措置を講じることとされており、生活保護の円滑な実施が確保されるものと考えております。
 次に、老人福祉法等の負担率の復元についてですが、補助率は、補助金問題検討会の報告にあるように、国として当該行政にかかわる関与の度合いやその実施を確保しようとする関心の強さ等を総合的に勘案して決められるべきものであります。社会福祉施設についても、昭和六十一年度において、入所措置事務を地方自治体の自主性、自律性を尊重し独自性を発揮させるという観点から見直し、団体委任事務化することに伴い、暫定的に二分の一としたところであります。
 今回の補助率の恒久化に当たっては、以上のような団体委任事務化及び最低基準の簡素化のための改正を踏まえ、改めて関係省庁間において、最近における財政状況、国と地方の機能分担、費用負担のあり方等を勘案しながら他の補助金と一体的、総合的に検討を行った結果として二分の一としたものであります。
 以上であります。(拍手)
 【略】
   〔吉井英勝君登壇、拍手〕
○吉井英勝君 【略】
 生活保護費についての国の補助金削減額は、八五年度から八九年度までの五年間で六千八百七十二億円に上っています。この影響は極めて深刻で、厚生省資料によっても、削減開始前の八四年度と八八年度を比べると、一カ月平均の被保護世帯数は九万四千百三十六世帯の減、被保護実人員では二十五万一千六百十三人もの減少となっております。これは、適正化の名によって窓口で保護申請を容易に受け付けない、病人や高齢者にも無理な就労の強制、民法上の扶養義務者でない人にまで扶養せよと強要したり、生保辞退を強要したりといった余りにも目に余る切り捨てが行われているからであることは明らかではありませんか。
 養護老人ホーム特別養護老人ホームヘの入所者は年々増加してきている一方で、国の老人保護措置費は十分の八から十分の七、そして十分の五へと削減され、一人当たりの措置費は一九八四年には千三百七十一円であったものが、八七年には九百三十六円へと激減しています。その結果、特別養護老人ホームにおける入所者からの徴収金は一カ月十六万円にも上っています。
 さらに、保育所運営も大変です。この十年間を見ると保育料国庫負担と父母負担の割合は完全に逆転し、父母負担は国の負担の実に倍以上になっています。一九七九年、国庫負担四八%、地方負担一二%、父母負担が四〇%でありました。ところが、十年後の八八年には、国二四%、父母五一%と逆転し、地方負担も二四%と倍増しています。この高い保育料と、入所基準を厳しくしたこと、保育内容を抑え込んできたことが、保育所入所を希望しながらベビーホテルなどにしか行けない子供をふやしてしまった。これが定員割れ問題を引き起こし、八四年から八七年の四カ年に百一カ所の保育所が廃止されるという事態を生み出したわけであります。
 総理並びに厚生大臣、これでもあなた方は国民生活に影響はないと強弁されるのですか。明確にしていただきたい。
【略】 
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
国務大臣竹下登君) 【略】
 生活保護等の補助率の変更は国と地方との費用負担の変更でありまして、国民に対する福祉水準を変更するものではない、まずこれが基本的な考え方でございます。今後とも生活保護の適正な実施や老人福祉、児童福祉等の推進に努めてまいるのは当然のことであります。
【略】
   〔小西博行君登壇、拍手〕
○小西博行君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま提案のありました国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律案について、竹下総理並びに大蔵大臣に質問を行うものであります。
 【略】
 政府はまた、生活保護等について、本来昭和五十九年水準の十分の八にすべきところを十分の七・五といたしております。
 御承知のとおり、憲法第二十五条には国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障しており、第二項にはそのための国の努力義務が規定されております。社会保障の根幹である生活保護については本来国がその全額を負担すべきではないかと思うのですが、総理の御所見を承りたいのであります。
 また、聞くところによれば、予算編成の過程において、十分の八を主張する自治省と十分の七を主張する大蔵省との綱引きの結果、妥協の産物として十分の七・五に落ちついたとのことであります。国の重要な施策である生活保護負担率の水準がこのような形で決められることがあってはならないと考えるのでありますが、大蔵大臣からその経緯を説明いただきたいのであります。
 【略】
   〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
国務大臣竹下登君) 【略】
 生活保護は国民の生存権保障の最後のよりどころである、これは基本的な考え方でございます。同時に、地方公共団体も、地域住民の福祉に責任を有する。その観点から費用の一部負担をしていただこうと。したがって、国がその費用の全額を賄うべきものであるとは限りません。昭和二十一年以来のいろいろな議論を読んでみましても、五割のこともございました、あるいは全額のこともございました。それらやはり総合的な判断に立って今次の補助率を決定いたしたものでございます。
 【略】

【次回へつづく】