精神医療に関する条文・審議(その57)

前回(id:kokekokko:20050718)のつづき。初回は2004/10/28。
平成5年改正の審議のつづき。

第126回衆議院 厚生委員会会議録第14号(平成5年6月2日)
【前回のつづき】
○五島委員 いま一つ、この法律の改定の中で、仮入院期間の短縮、施設外収容の禁止規定の削除というものが出されております。私もこの改定に対しては、完全に改善であるということで全面的に賛成するものであるわけでございます。
 しかし、同時に、措置入院に関しましては、措置決定後やはり精神医療審査会で一カ月程度で再審査を行うべきでないか。そのことによって不要な措置入院というものを減らすことができるのではないか。
 また、任意入院の拡大、それから開放処遇を原則とする医療の確立、そういうふうなこともあわせて、精神医療審査会等の役割がそちらの方向に向いていくように具体的に進めていく必要があるのじゃないかというふうに考えるわけでございますが、厚生省はそのための具体的な施策というのをお持ちかどうか、お伺いしたいと思います。
○谷政府委員 現在の精神医療審査会は、御承知のように、医療保護入院の入院時の審査、それから措置入院者あるいは医療保護入院者の定期病状報告の審査、それから精神病院に入院している者からの退院請求あるいは処遇改善についての審査を行っているわけでございます。
 特に、今おっしゃった措置入院決定後一カ月ぐらいの間に審査を行ったらどうかということでございますが、入院直後から退院請求等が可能であるといったようなこともございますし、また入院する施設が指定病院に限定されているというようなことから、これに加えて、現在の段階で入院後非常に短期間の間にさらに審査会による審査を行うということは、私どもの考えでは必要ないのではないかというふうに考えております。
○五島委員 ほかの医療の場と違いまして、正直言って、精神科の指定病院というものが本当に今日の精神科医療の方向の先端を走っているかどうかということに非常に疑問があるから、こういう質問をするわけでございまして、そういう意味では、先ほどの大和川病院だって指定病院のはずなんです。
 指定病院であろうとなかろうと、今日、急性症状を発症した精神障害の患者さんが一カ月も治療した場合には、過半数が改善されているというのは常識のはずです。そういう意味では、不必要な措置の期間というものを少しでも減らしていく、またさらには開放処遇の拡大というふうなことに進めていく、そういうことが必要だろうと思うのですね。むしろ指定医療機関なんかについても、そうした面での開放病棟がどの程度ふえてきているのかといったようなことを基準として、本来は指定の問題も考えられるべきではないかというふうに考えるわけでございます。
 いま一つお伺いしたいのは、精神障害の急性期の対応というのが極めて重要になる。この急性期の対応がおくれてしまって、結果としては長期入院になったり、あるいは数々の社会問題を起こしたりするということはもう御案内のとおりでございます。そういう意味では、精神科の外来、精神科の救急外来制度というふうなものを総合病院あるいは精神科病院というふうなところできちっと整備させていくべきだというふうに考えるわけですが、どのようにお考えでしょう。
○寺松政府委員 今先生の御質問は、精神科といえば長期慢性型というような一般的なことの場合が多いのかもしれませんが、急性期の場合にどう対応するのかというようなお話でございます。
 今先生も御指摘の中で、総合病院というものに精神科とかあるいは神経科とか、そういうふうな科目あるいはそういう病室を持つというようなことの御提言があったわけでございます。
 これも先生御承知かと思いますけれども、現在総合病院というのは千百ちょっとございますが、その中で大体四割ちょっとぐらいが既に精神科とかそういうふうなものを持っております。私ども、急性期も含めまして、そういう形で対応していくということは望ましいことではないかと思うわけでございますけれども、また地域の医療のニーズ等をいろいろ考えてみますと、例えば総合病院の横に精神科の病院があるというふうに、病院が全然別々でも、連係を十分とればそれぞれ対応していけるでありましょうし、また神経あるいは精神の診療所であっても、病診連係というような形でも対応していけるのではないかと思います。
 しかし、先ほど申し上げましたように、総合病院の中にそういうふうなものを置くということが、より効率的にうまくやれるというのも先生の御提言のとおりだと存じますので、私ども、そのようなことにつきましてはいろいろと指導をしていきたいと考えております。
○五島委員 総合病院すべてに精神科を設置するかどうか、そこまで私は言っているわけではございません。また、総合病院であっても、精神科の病床は持っているけれども精神科の外来は極めて小規模である、積極的でないというところが多うございます。まして精神科医療の中において、いわゆる救急外来というイメージというのがまだまだ不十分だ。
 だけれども、実態的な中身をごらんになっておわかりになりますように、今日、精神科であるからそれは慢性疾患を意味するのだ、精神科の患者さんは慢性長期の入院治療を必要とするのだ、これは非常に古い時代の話でございまして、むしろ昔のそういう医療がうまくいかなかったときの陳旧化した患者さん、そういうふうな患者さんたちの問題をどうするかというのが今後の問題である。
 今の現状の患者の状態からいうならば、いかに急性期に対して的確な治療をするか、そして、早期に治療して早期に社会復帰させるか。そのことが可能であり、そのことが患者さんにとってよりよい結果をもたらすということが証明されてきている状態になっているわけですね。したがって、医療のシステムにつきましても、そうした現在の医学の状況に対応した形で整備していくべきではないか。
 そういう意味では救急医療の問題。救急医療といった場合に、精神科の救急というのはどなたも余り本気になって取り上げておられないのですが、極めて重要な問題だ。そうした精神科の救急の問題をやっていくとするならば、当然それに伴ってのマンパワーの問題やあるいは医療費の問題等々の問題が生まれてくるというふうに考えるわけですが、その点について救急医療の体制をとうお考えか、お伺いします。
○谷政府委員 精神障害者の場合に、精神症状が非常に短期間の間に急変をする、あるいは悪化をするという場合があるわけでございますが、その場合において、もちろん精神保健指定医によります専門家の診断がなされるということが必要だと思います。
 精神医療におきます急性期の対応というのは、現在は、制度的には応急入院制度というものが設けられて、その応急入院のための指定病院の指定ということを各県に促進方をお願いしているわけでございます。
 一方、今先生がおっしゃった意味での精神科の救急医療ということにつきましては、受け入れ医療機関の確保ということが一つございますけれども、急性期を過ぎた後、今度は医療をどういうふうにするのかということが、いろいろ専門家の意見を聞きますと、なかなか難しいというか、制度的にあるいは考え方としてまだ整理ができていないということがあるというふうに理解をしております。
 いずれにしても、今おっしゃったような意味での精神科の救急外来というものは、今後必要になってくるというふうに私どもも考えておりますので、具体的にどういう仕組みを考えたらいいのか、研究をしていきたいというふうに考えております。
○五島委員 いま一つ重要な問題ですが、現場においては現状では大変困難だ、あるいは非常に困難性が高いということでなかなか進まない問題として、インフォームド・コンセントの問題がございます。
 国連原則に基づいてもやはりインフォームド・コンセントの確立というのが必要であるわけですが、精神科医療の中におけるインフォームド・コンセントというものを具体的にどのように確立していくのか。それが確立していくとするならば、先ほど土肥議員の指摘されたような事件というものも恐らく起こらなくなるだろうと思うわけですが、現実にはこれがインフォームド・コンセントになっていない。
 先ほどの事例で「入院に際してのお知らせ」という形での署名をとる。これは何もせずにほうり込んで、そしてバットで殴るというふうな状態よりは少しは外見上は繕ったように見えますが、こういう文書を患者さんに渡して、サインを書かすということがインフォームド・コンセントであるはずがございません。そういう意味では、一体精神科医療の中におけるインフォームド・コンセントというのは具体的にどのような形でつくっていくべきだというふうにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
○谷政府委員 精神科医療におけるインフォームド・コンセントあるいは精神障害者に対するインフォームド・コンセント、これは国連原則の中にもうたわれていることでございます。今回の法案を作成するに当たりまして御審議をいただいた公衆衛生審議会の意見書の中でも、今後の検討課題の一つとして、このインフォームド・コンセントについての検討というのが最後に掲げられたわけでございます。
 基本的には、精神障害者の人権に配慮した適正な精神医療を行っていく上で、インフォームド・コンセントというものの考え方は非常に重要だというふうに認識はしておりますし、また精神障害者の問題に限らず、一般的に医療において、このインフォームド・コンセントの考え方というのが医者と患者の信頼関係を支える一つの重要な柱であるということから、非常に大切な事項だということは認識をしているわけでございます。
 ただ、精神疾患の場合に、疾病の種類とかあるいはその方の置かれている状況によっては、病名とか病状あるいは治療方針等の説明が非常に難しい場合があるわけでございますし、またこの病気の特殊性からいって、どこまでコンセントがなされるのかというようなことがあろうかと思います。私どもとしては、この精神医療におけるインフォームド・コンセントのやり方といいますかあり方ということについては、今後いろいろな方の御意見を伺って、少し検討しなければならない課題だというふうに思っております。
○五島委員 この精神科領域におけるインフォームド・コンセントの問題につきましては、もちろん厚生省もぜひ積極的に対応していただきたいわけでございますが、何よりも医療界の中においてこれをどのように確立していくかという議論も必要かと存じます。そういう意味では、学会等に対しても、このインフォームド・コンセントについてどのように確立していくかということについて、ぜひ厚生省の側からも働きかけていただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。
 あわせまして、今回、施設外収容禁止の削除というのができたわけでございますが、この施設外収容の禁止条項によって、数々の患者に対する差別的な犠牲が生まれてまいりました。先ほどの事例もそうなんですね。バットで、要するに暴力によってけがをさせられて、それで亡くなったということであれば、これはもう明らかに犯罪行為でございますが、精神科の病院が言っておりますように、入院患者さんが肺炎になった、肺炎になったものを死ぬような状態まで対応できずに救急病院に送致したということ自身も、私は医療機関としては大変問題であろうというふうに思います。
 かつて、宮崎の県立病院において精神障害患者さんの急性腎不全に対する腎透析の拒否事件というのがございまして、お亡くなりになったことは御案内のとおりでございます。精神科の患者であるからということでもって、理解が悪いということで必要な腎透析をやらない、緊急透析もやらないということで亡くなったわけです。
 同時に、さらに翻って考えますと、そのケースの場合はかなり重症の糖尿病であった。入院したり通院したりするのを繰り返している患者さんで、精神障害以外にそういうお亡くなりになるまでの重症の糖尿病があった。その糖尿病のコントロールがきちっとできていたのかどうか。もしできていたとしたら、急に急性腎不全の状態になるまで精神科の病院に置いておくということもないのではないかと思われるわけですね。
 そういう意味では、多くの場合に、精神科領域におきましては、一人の人間として持っている当然の権利である全体的な健康のチェック、全体的な疾病のコントロールということがほとんどされずに、精神障害の領域だけに限られてコントロールされる。結果としては、医療機関の中にいるあるいは医療機関にかかっているために、今日の社会でいえば、一般に元気で働いておられるあるいは生活しておられる市民の方々ほどは全身の健康の管理ができない、医療機関にかかっているがゆえに、医療機関に入っているがゆえに全身的な健康のチェックや管理ができない、そういうふうなことがこの精神科の医療の中には非常に多く見られます。
 こういうふうなものを具体的に変えていかないと、全身的な疾病管理あるいは治療の能力を持たない医療機関の中で数年にわたって、場合によっては十年を超えるような形でもって患者は閉じ込められ、そして投薬その他の医療行為が繰り返されて、それによる障害も予想される状況というのは非常に私は問題があるだろうというふうに思います。
 そういう意味では、この施設外収容禁止の削除だけでなくて、医療機関の当然の責務としてのそうした全身的な疾病、健康のチェックというふうな問題について、精神科領域においてどう考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
○谷政府委員 今回、旧法の四十八条にございます施設外収容禁止規定を廃止することといたしたわけでございます。
 これは、御案内のように非常に古い法律制度を引き継いで、いわゆる精神障害者を自宅において拘束するというようなことを禁止する規定として設けられていたものでございますが、やはり今日的な状況において、そういうことを条文として載せておく必要はないのではないかという考え方から削除したものでございます。
 一方、今先生お触れになりましたように、この条項があるがゆえに、合併症のため緊急の医療を要する精神障害者が、精神病院以外の病院において治療をするということが困難な場合がしばしばあったというようなこともございました。これはもちろん一部の全くの誤解でございますが、そういったようなこともございまして、これを削除するということにしたわけでございます。
 それと関連するというわけではございませんが、今お触れになりましたように、合併症を有する精神障害者の治療をどうするかという問題は、その問題とは別の問題として、あるいは若干関係する問題としてあるという認識は持っております。
 基本的には、今お触れになりましたような腎透析というような問題につきましても、できれば精神病院においてこれに対応できる体制をつくるということが最も望ましいものではございますけれども、ただ、医療技術が高度化してくるということに伴って、すべてを精神病院の中で行うということは現実的には難しいということであろうと思います。
 そういう意味合いにおきましては、私ども、今後この合併症の問題については、地域の中での連係体制といいますか連係システムというものをつくっていく必要がある。それで、具体的にどういうふうにするのかということで、既に研究班をつくって検討していただいておりまして、その結果を得て、地域におきまして計画的にそういう体制が整備できるというような形で都道府県に対する指導をしていきたい、このように考えております。
○五島委員 この問題は精神科領域だけに要求してもだめな問題なんですね。私も具体的なケースとして経験しておりますが、近くのある公立病院にかかっておられた肝臓がんの末期の患者さん、その患者さんが末期状態の中で神経症状を起こされた。そのことを理由にしてそこの病院から強制的に退院させられた。そして、その病院の玄関の前でうろうろしておられた。それで、その患者さんを見知った方が私どものところへ連れてこられたという経過もございました。
 言いかえれば、医療の中において、正直言って精神障害者に対して一般病院が受け入れたいと思っていない。治療が必要であったとしても、それは精神病院に任せてしまって、お互いに見て見ぬふりをしているというのが、現状として、率直に言ってなかったとは言えないと私は思うのです。そういう意味では、医療全体の中において、精神障害者の医療というもの、生命のとうとさというものに差がないのだということをきちっとさせていくしかないのだろうというふうに思います。
 そういう意味では、今連係の問題を出しておられましたけれども、精神科の医療というものがもっともっと開放化されて、その中に専門的技術を有する精神科以外の医師が対診の形で自由に入っていけるというふうなシステムに変わっていかない限りは、なかなかこの問題は解決しないのではないか。そういう意味では、精神科、精神科病院のより一層の開放化というものがやはり求められるのではないかなというふうに思います。
 そういうふうに考えてまいりますと、精神科医療に関しては、先ほども申しましたように、一般的には新規発症であった場合には七割くらいの患者さんが一月以内で改善される。そして、あるケースはかなり長期化する。そして、それぞれの患者さんに対しては、非常に多くの向精神薬を中心とした薬物の使用もあり、全身的な健康のチェックも必要だということになってきますと、医療法の世界あるいは診療報酬の世界の中で、精神科医療だけが人員の配置その他が別扱いされることに現実的な区別というのはないのではないか。急性期と慢性期という形で精神科の医療についても整備をしていきながら、同時に精神科医療に対する診療報酬を大幅に改善すべきではないかというふうに考えるわけですが、いかがでしょうか。
○寺松政府委員 それでは、精神病院の職員の配置の問題にお触れになりましたので、私の方から先に申し上げたいと思います。
 これは先生御承知のように、精神病院につきましては、職員の配置のあり方について特例を設けておるわけでございます。これにつきましては、これをつくりましたころ、精神病の多くというのは大体慢性疾患でありまして、病状の急変が少ないというようなことから、精神病院の医師、看護婦等の配置人員というものにつきましては、一般病院よりも緩和されているというようなことであったと承知しております。
 そこで、今先生御指摘のように、精神病患者さんの場合もいろいろ病態が最近変わってきておりますし、高齢化が進みますと、いろいろな他の疾患をもあわせ持つというようなことも起こってまいります。いろいろなことがございます。
 私ども、これから医療施設機能の体系化を図っていこうとしておるわけでございますが、その中で、そういうふうな患者さんの病態、あるいは医療従事者間の役割分担のあり方、あるいは看護職員等の需給の状況というようなものも勘案しながら、精神医療の今後のあり方も含めまして検討を加え、また必要な場合にはそれなりの対応をしたい、このように考えております。
○五島委員 精神科医療の特殊性ということをおっしゃっておられるわけなんですが、特殊性の重視は必要でございますが、特殊性ということでもって現実に患者さんの病状の改善がおくれたり、あるいは社会復帰がおくれるということがあってはならないわけでございまして、精神科医療についても、その機能を見直すべき時期に来ているというふうに私は申し上げておきたいと思います。
 また、特殊性ということで申し上げるならば、日本の精神医療体制というのは、より質の高いものに変わっていかなければなりません。そのためには、例えば精神科医療に特殊な形で必要な心理療法士あるいはPSWといったような人々が参加するチーム医療が形成されないといけないというふうに考えるわけでございます。
 ところが、臨床の場においては心理療法士やPSWの役割は極めて大きいわけでございますが、まだ厚生省の方ではこれらについて具体的な資格というものをきちっとつくっておられない。これについて、やはり早急に心理療法士あるいはPSWを公的な資格として認め、チーム医療の重要な一員として精神科医療の中に位置づけていくべきだというふうに考えるわけでございますが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
○谷政府委員 精神科医療におきますチーム医療の重要性については、いろいろなところから指摘をされ、私どもも非常に重要だというふうに思っております。その中におきます臨床心理技術者とPSW、精神科ソーシャルワーカーの資格化の問題でございますが、いずれも関係者の間の意見調整をやっている段階でございます。
 ただ、臨床心理技術者につきましては、既に検討会を設けまして、カリキュラムをどうするのかとか、どういうような業務にするのかというようなかなり具体的な議論の段階に来ておりますので、そういったような議論が終わり、関係者の合意が得られれば、その結果を待って私どもとしては適切な対応をしていきたいと思っております。
○五島委員 精神障害者は社会の構成員の一員であって、その障害によって差別を受けたり人権が侵されてはならない、こんなことはもうだれもが当たり前のこととして認めているわけでございます。しかしながら、現実は、障害、病気を持った人と、それからその治療を提供する人という輪の中において、よほどきちっとしたシステムに支えられないと、こうした関係の中においては、最も基本的な命の問題においての差別が生じるということは、やはり指摘しておかなければならないと思います。
 先ほどの土肥委員の質問に対する大臣の御答弁もございましたが、そのような甚だしいといいますか、非常にひどい事例が今の日本でたくさんあってはたまらないわけでございます。しかし、一九九二年の厚生省の調査でも、現在なお閉鎖病棟が五八%を占めている。また、任意入院であるにもかかわらず閉鎖病棟に入れられている患者さんが五五%もいる。一部にはまだ通信、面会の自由も守られていないところが十数%ある。これはすべて厚生省のデータでございます。こうした精神障害者を取り巻く医療の環境というのは非常におくれているということがあるわけでございます。
 今回の改定によりまして、我が国の精神医療と精神障害者に対する福祉が一定の前進をすることは私も確信いたします。そして、それを願っているわけでございますが、なおこのような現状を見る場合、こうした数々の問題がこの法律の改定だけで本当に一掃されるだろうかと考えると、到底そうは考えられないもっともっと多くの問題があるというふうに考えます。そういう意味では、やはりこの改定ではまだ不十分であって、早期の見直しが絶対に必要だというふうにも考えます。
 こうした問題につきまして大臣の御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
○丹羽国務大臣 今回の改正は、前回の法改正の際の五年後の見直し規定などを踏まえまして、精神障害者の社会復帰の促進と適正な医療、保護を確保するために行うものであります。
 私どもといたしましては、特に今回は社会復帰施設から地域社会へ、こういうような位置づけをいたしまして、いわゆるグループホームの法定化などを含めまして十分に検討を加え、関係審議会の御意見を賜った上で提出させていただいているものでありまして、現時点におきましては、政府としては必要な内容はすべて盛り込まれているものと考えております。
 この精神保健法という法律は常に社会的にも大きな問題として注目されております。見直すべきところがあれば、当然のことながら時代のニーズに合わせて検討していかなければならない、このように考えているような次第でございます。
○五島委員 終わります。
○浦野委員長 遠藤和良君。
○遠藤(和)委員 まず、平成五年三月十七日に公衆衛生審議会が「今後における精神保健対策について」という意見をまとめております。この意見の中にいろいろな貴重な提言があるわけですが、これが今回の法改正の中にすべて盛り込まれている、このように理解していいのでしょうか、この点を聞きたいと思います。
○谷政府委員 今回の改正に当たりましては、今先生お触れになりました公衆衛生審議会の意見をもとにして私ども作業をしたつもりでございますが、この意見書の中に盛られました内容につきまして、特に法律によって対処すべきことについては、基本的には今提案をさせていただいております法案の中に盛り込んだつもりでございます。
 また、意見書の中で法律の改正以外の形で対応する必要があるものについては、今後運用面等において対応をしてまいりたい、このように考えております。
○遠藤(和)委員 私は、法律の中に十分に反映されていないのではないかという懸念を持っております。
 具体的な話をします。「当面講ずるべき改善措置等について」という項目がありますが、その中の「医療対策」のアのところでございます。
  精神病院において、開放処遇を適当とする者については、開放処遇とすること。この場合、「開放処遇」の概念を明確化すること。
と第一項目に書いてあるわけです。現在も精神病院の実態は、いわゆる鉄格子のある閉鎖病棟あるいは病室等はたくさんあるわけですけれども、この開放処遇というものが明確化されているのかどうか、あるいはどういう実態になっているのか、ここについて答弁を求めたいと思います。
○谷政府委員 前回、五年前の改正の際に、任意入院患者については原則として開放処遇とするというような考え方が打ち出されているわけでございますが、この開放処遇の概念と申しますか、どういう形のものを開放処遇というふうに考えるのか、あるいはそういう一つの考え方を示すべきではないかというのがこの公衆衛生審議会の意見書の中での概念の明確化ということだというふうに私ども理解をしておりまして、この開放処遇の概念というものを統一をするといいますか、考え方をまとめるということは、これからできるだけ早く作業をしていきたいというふうに思っております。
 ただ、開放処遇の問題につきましては、先生御承知のように、精神病院におきましては、精神医療の特殊性ということから、入院患者を外部と隔離をするという必要がある場合があるわけでございまして、この場合においてもできる限り開放的な雰囲気で処遇をすることが適当であるというふうには考えておりますが、いずれにいたしましても、今お触れになりました開放処遇というものの考え方を、改めて私どもなりにまとめて示さなければいけないというふうに認識をしております。
○遠藤(和)委員 これは先ほども出ましたけれども、厚生省の調査とお伺いしているのですが、一九九二年で、鉄格子のあるいわゆる閉鎖病棟が五八%だ、それから任意入院患者でも閉鎖病棟に入所している人が五五%いる、あるいは閉鎖病棟で公衆電話が設置されているのは八八%である、こういうことでございまして、この実態は開放処遇という精神からいって随分不十分ではないかと思うのでございます。
 特に、今お話がありました、少なくとも任意で入院した患者さんには開放処遇とすることが大切でございまして、これを義務づける、こういうふうな法律改正は考えなかったのかどうか、ここを聞きたいと思います。
○谷政府委員 任意入院の患者については、みずからの同意によって入院をしたという患者さんでございますので、そういうことにかんがみますと、開放病棟での処遇が望ましいということは、前回の法改正の際から指導はしてきているわけでございます。ただ、入院患者の処遇というのは、やはりその方の症状に応じてなされるべきであるということから、一律に任意入院患者すべてを開放処遇とするということについては、医療上必ずしも適切ではないのではないかというのが一方においての御意見としてあるわけでございます。
 そういう意味合いにおきまして、原則的には開放的な処遇ということを私どもは言っておりますけれども、任意入院患者についてすべて開放とするということを法律上位置づけることは、なかなか困難だというのが私どもの考え方でございます。
○遠藤(和)委員 その開放処遇としない根拠というのは、例えば医療法施行規則でいえば第十六条第一項の六と七、これを念頭にしておっしゃっているのじゃないかと思いますね。ちょっと読んでみます。
  精神病室、伝染病室及び結核病室には、病院又は診療所の他の部分及び外部に対して危害防止又は伝染予防のためにしや断その他必要な方法を講ずること。
あるいは七のところは
  精神病室の設備については、保護のために必要な方法を講ずること。
これがいわゆる閉鎖病棟とする根拠ではないかと思うのです。
 その一方で、昭和四十年の八月五日に厚生省の医務・公衆衛生局長の連名通知でこういう通知をしておりますね。
   精神病室の構造設備について最近における精神医学の発達により精神科医療の内容も相当変化してきている状況に鑑み、精神障害者であっても、自傷他害のおそれがなく開放的な医療を行なうことが適当と認められる者のみを収容することを目的とする精神病院又は精神病棟においては、精神病室の鉄格子等によるしや断設備を必置のものとして取扱う必要はないと考えられる
これは、片一方では必要なものだと言っていながら片一方では必要でない、こういう認識なんですけれども、ここがどちらでもいいというふうな根拠になるのではないかなということを心配するわけでございます。この医療法施行規則並びに通知、これをもっと具体的に、こういう場合はこうであって、こういう場合はこうであるというふうに立て分けて、整理して通知をすることが必要ではないかと思うのですが、どうでしょう。
○谷政府委員 先ほど先生もお触れになりました開放処遇の概念の明確化ということに関連して、開放処遇というのはいかなるものであるか、どういうものであるかということを具体的に少し整理をしなければならないと思っておりますので、それとの関連において、今御指摘の問題については改めて検討してみたいと思っております。
○遠藤(和)委員 もう一つ言いますと、いわゆる老人性痴呆疾患治療病棟施設整備基準というのがあるのですね。これは昭和六十三年七月五日に通知している厚生省保健医療局長通知ですが、この中には「窓には、いわゆる鉄格子を設置しないこと。」このように通知しておりますね。
 したがって、今お話がありましたけれども、各地域によっても、開放病棟が主流のところと従来の形の閉鎖病棟が主流のところと随分地域の格差があるのではないか。医療の基準で分けていない、そういうところが多いように見るわけでして、ぜひ整理をして、全国的な基準というものを通知してもらいたいということを重ねて私は要求しておきます。
○谷政府委員 先ほど来お話しをいただいております開放処遇の問題につきましては、開放処遇というものがどういうものであるかというその考え方をまとめなければいけないと思っておりますので、今おっしゃいましたことも含めて、どのように対応すればいいのか検討をいたしたいと思います。
○遠藤(和)委員 同じくこの公衆衛生審議会の意見書の中に、同じ項目のカでございますけれども、ここには
  精神病院においては、必要に応じ、入院時等の告知文書の写しを保護義務者等にも提示すること。また、外国語による告知文書を作成し、外国人の入院患者に対する告知を円滑に行うこと。
このように書いているのですけれども、これも法案の中には見えてこないところでございます。外国人のことまで考えると言っているのですが、日本人についても入院時の告知が十分守られていない、そういうケースがあるということを散見するわけですけれども、これはどのような指導をしているのですか。
○谷政府委員 入院時等におきます告知の問題につきましては、先ほど土肥先生の御質問の中にも触れられていたわけでございます。前回の法改正後、この告知の問題については、私どもとしては、都道府県あるいは関係団体、病院団体等を通じまして現場の医療機関に十分周知徹底を図ってきたつもりでございますが、今後とも、今回の法律改正を契機として、改めてそういう指導はしていきたいというふうに思っております。
 もう一方、外国人に対する告知の問題でございますが、これは御案内のように、国連原則の中でもその人のわかる言葉で告知をしろという、ちょっと表現は正確ではないかもしれませんが、たしか項目がございまして、それを受けて、やはり外国語の告知ということをやらなければいけないのではないかということでございまして、外国人の保護義務者あるいは外国人への告知書の提示ということにつきましては、この法の施行に合わせまして現場において実施し得るよう、適切な対応をしていきたいというふうに考えております。
○遠藤(和)委員 それから、前回の法改正のときに積み残しになったいわゆる三つの課題ですね。これについても、いわゆる大都市特例の話だとか精神障害者の定義という問題はこの法律の中に見えてくるわけですけれども、保護義務者制度については、名前は保護者というふうに変わるわけですけれども、この制度を今後どういうふうにしていくのかということについては、またさらに検討するというふうな話になるのでしょうか。ここのところはどのように扱っておりますか。
○谷政府委員 まず、保護義務者につきましては、今回、保護者という形で名称の変更をするということでございます。このことにつきましては、私どもとしては、やはり現行の精神保健制度の中での保護義務者の役割ということにかんがみまして、単なる名称の変更ということではございますが、非常に意味のあることだというふうに考えているわけでございます。
 ただ、保護義務者制度そのものにつきましては、この報告書の中でも触れられておりますように、保護義務者にかわるべき制度がないということから、やはり存続をすべきであるという御意見でございますが、一方において、今後あり方については検討を行っていくということにされているわけでございます。そういう意味合いにおきまして、私どもとしては、関係の家族団体等の御意見を伺いながら、どのような改善ができるのかということについて検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
○遠藤(和)委員 ちょっと先ほどの関連ですけれども、いわゆる閉鎖病棟で公衆電話がついているのが八八%だという話をしましたね。これは密室で何をされているかわからないという患者の家族からの不安があると思うのです。ですから、少なくとも公衆電話をつけるぐらいはきちっと行政指導ができるのではないかと思うのですけれども、そこはどうですか。
○谷政府委員 公衆電話の設置、今おっしゃいますようにたしか八八%、八九%だったというふうに記憶をしておりますが、私どもとしては、非常に重要な問題でございますので、今後とも公衆電話の設置が促進されるよう、関係医療団体を通じて指導をしていきたいと思っております。
○遠藤(和)委員 大臣、今ちょっと私の思いつくところだけ述べてまいったのですけれども、先ほども話がありましたが、五年後ぐらいをめどにして、この施行状況をよく見ながら、さらに問題点があれば見直しを検討するということが大事ではないかと思うのです。その辺のお気持ちをお聞きしたいと思います。
○丹羽国務大臣 ただいま三つの積み残しの案件につきましてお尋ねがございまして、局長の方から御答弁を申し上げさせていただいたわけでございますが、保護義務者制度につきましても、現実問題として、訓示規定の中において義務者という名称が削除されたということは大変重いものがある。しかも、保健、医療、福祉の各分野に今度は支援規定を創設をしておる、こういうことでございますし、また、懸案でございました大都市特例というものを平成八年度から実施をする、こういうことでございまして、私どもといたしましては、現時点におきましては最善のものをつくらせていただいた、こういう考え方に立つものでございます。
 この精神保健法というものは、御案内のように五年前に大幅な改正をいたしまして、いわゆる位置づけといたしまして、精神病院から社会復帰施設へ、その中で障害者社会復帰施設の法定化、こういうものをうたってきたわけでございますけれども、まだまだ実際問題として、現実には社会復帰施設というものが十分に整備されておらないのも事実であります。
 こういう点を考えながら、いずれにいたしましても、私どもは、何年ということではありませんけれども、当然のことながら、時代のニーズに合って検討すべきものがあれば検討しなければならない、このように考えているような次第でございます。
○遠藤(和)委員 特に、精神障害者を持っていらっしゃる家族の皆さんが高齢化しておりまして、その方々が精神障害者の面倒を見ていく、保護していく、こういうことを義務づけるというのは大変過酷なところがあるわけですね。したがって、この制度を今後どうしていくか、あるいは家族にかわる社会的な支援体制をどのように整備していくか、こういうことは大変重要な課題であると思います。
 したがいまして、これは私どももできれば各党協議して、法律の修正を要求したいと思いますけれども、五年後に見直しをいたしまして、さらにきめの細かな施策が展開できるようにしたい、このように考えているところであります。
 それから、ちょっと中身に入りますけれども、これは健政局長でしょうか。要するに、精神病院におけるチーム医療のことについて、この意見書の中にもあるのですが、いわゆるお医者さんとか看護婦さん、作業療法士の人だとか臨床心理技術者、あるいは精神科のソーシャルワーカー等のマンパワーの充実を図ることが大事なわけですけれども、そういうことを念頭に置いて、政策的な誘導あるいは人員配置基準等の中にそれを盛り込んでいくということが大事じゃないかと思うのですね。
 今、一般病床から比べても精神科の病棟というのは人員配置基準が薄くなっているわけですから、少なくとも一般病室並みに引き上げていく、こういうことは大事な問題ではないかと思いますが、これはどう考えておりますか。
○寺松政府委員 今先生の言われました中で、チームで医療に当たるということにつきましては、私ども、法律の改正があることに、それぞれの職種の身分法等につきまして、その中にチーム医療のといいますか連携規定を入れていきつつございます。したがいまして、そのようなことで今後も引き続き機会あるごとに考えてまいりたいと思います。
 もう一つの御質問は、精神病院におきます人員配置というものにつきまして、一般の病院に比べて薄いのではないかというようなお話がございます。一応それにつきましては、この人員配置の標準というものをつくりましたころのことでございますけれども、精神病というものが多くは慢性病だ、慢性疾患である、そして病状の急変が少ないのではないかというようなこともございましたのでしょう、人の数が少なくなっております。
 私どもは、この人員配置につきましては、実態的には、精神病院におきましても患者の病状に応じまして傾斜配置、重装備しておるところもございますし、いろいろでございますが、それなりに施設の方で対応されておるというふうに承知しておるわけでございます。
 今後の人員配置につきましてどのように進めていくかということでございますが、私ども、良質な医療を適切に効率的に提供するというようなことから考えましても、医療施設機能の体系化を図っていく、こういうことにしておるわけでございまして、それは医療法の改正等で進めていっておるわけでございます。その中で、医療従事者間の役割分担のあり方、あるいは先ほどもちょっと申し上げましたが、精神疾患の病態と申しましょうか患者の病態、あるいは看護職員等の需給状況というようなものを十分考えながら、精神医療の今後のあり方を含めまして検討をいたしてまいりたい、このように考えております。
○遠藤(和)委員 先日も当委員会で精神病院並びに援護寮ですか、視察をいたしてきたのですが、そのときに関係者からも、やはり経営実態が大変苦しいという話がありました。聞くところによりますと、中医協でこの六月から医療経済実態調査を開始するということですけれども、こういう結果に基づいて精神病院並びに関連の施設等の診療報酬の改定を検討するということでしょうか。
○古川政府委員 医療経済実態調査については、今実施をしているところでございます。
 中医協におきましては、診療報酬改定の必要性を判断する上で医業経営の実態の把握が必要であるというようなことから、従来から、医療経済実態調査の調査年の十二月を目途に暫定的に医療経済実態調査の速報値を取りまとめまして、中医協における御審議に供しているということで、今回もそうなろうかと思うのです。
 そこで、お尋ねの診療報酬の改定に反映するのかどうかというような話でございますが、この改定の要否とかあるいは改定内容につきましては、そういった医療経済実態調査等によりまして医業経営の実態などを十分に把握した上で、中医協の御審議を踏まえて適切に対応していく、こういうことになるわけでございますので、現在、六月に行う実施の結果を十二月といいましょうか、速報値で中医協の御審議に供して、その結果で対応する、こういうことになります。
○遠藤(和)委員 医療機関の経営が非常に逼迫化しておるという話は精神病院に限らないわけでございまして、特に我が党の市川書記長がことしの予算委員会でも取り上げたわけですけれども、一般の民間開業医の皆さんの経営状態が大変悪い、こういう状態ですから、これに対して早急に実態調査を行うべきだ、こういうふうな話をいたしまして、その予算委員会の席上で丹羽厚生大臣が調査をいたしますと約束をされたわけでございますが、この実態調査は始まりましたか。どうでしょうか。
○寺松政府委員 今先生の御質問は、おっしゃるとおり、予算委員会におきまして市川書記長から厚生大臣に対しまして御質問があったわけでございますが、私どもそれを受けまして準備を進めてまいりました。
 これを調査することにつきましては、御承知のように、今民間病院の経営が悪化しておるということが盛んに言われておりまして、民間の病院というものが日本の医療の中で大きなシェアを占めておりまして、非常に重要な役割を果たしておるわけでございますので、その民間の医療機関の経営の健全化というものは非常に大事でございます。
 したがいまして、私ども、この実態を早急に把握しなきゃならぬということで、緊急調査をやるということで、先ほどの医療経済実態調査とは別に今準備を進めております。協力をいただきます医療関係団体の御了解もほぼいただきましたので、六月の初めと申しますか、もうここ近日中に印刷をし、調査票を配付いたしたい、このように考えております。
 そこで、今先生の御指摘の中にございました精神病院というものにつきましても、その調査の対象といたしまして緊急に調査をいたしたいと思っておりまして、私どものあれでは八月をめどにおよその概要でも把握したい、このように考えておるわけでございます。
○遠藤(和)委員 調査対象は五百カ所と聞いていますが、日本全国ですか。
○寺松政府委員 当初四百ぐらいと思ったのでございますが、精神病院等も含めてということもございまして、六百ぐらいの予定にいたしております。
○遠藤(和)委員 そうしますと、いわゆる診療所を除いて民間の開業医、病院六百カ所を八月ごろまでに調査を完了するということでございますが、調査というものはそれが生かされなくては意味がないわけでございまして、その結果が判明いたしました後、まさに来年度診療報酬の改定があるわけでございますから、それに反映されなければ意味がないのではないか、このように考えるわけでございます。
 先ほどの中医協の医療経済実態調査もありますけれども、これと同じように、実態緊急調査も来年度の診療報酬改定の参考として厚生省は考えておるということでよろしいのでしょうか。
○丹羽国務大臣 まず、公明党の市川書記長から、予算委員会におきまして民間の医療機関の経営危機の問題が指摘されました。そこで私が御答弁を申し上げさせていただいたわけでございますが、いろいろな理由が考えられるのではないか。
 例えば、薬の流通改善に伴いまして薬価の差益が極めて低下、縮小しているといった問題であるとか、看護婦さんなどを中心として人件費が高騰しているのではないかとか、さらにまた考えられる問題といたしましては、どこの病院においても高額医療機器をどんどん購入するような傾向が出てきておるとか、さらに、総合病院化がどんどん進められていく中において、十分にそれに対応できるだけの経営感覚というものが欠如していたのではないかとか、いろいろなことが出てくるかもしれません。
 そういう点は私ども白紙の状態に置いて、いずれにいたしましても、どこに一番今の医療危機の問題があるのかという観点に立ちまして、ただいま健政局長から御答弁を申し上げましたように八月ごろまでにまとめたい、こういう考え方に立つわけでございます。
 診療報酬の改定につきましては、これまで毎年六月、もう既に実施をいたしておりますけれども、中医協の実施する医療経済実態調査の結果や中医協の御議論を踏まえまして適切に対処していくという、これまでの考え方に立つわけでございます。
 基本的には、今回もそういったことで、もし仮に来年の四月に診療報酬の改定が行われる場合には、中医協が実施しております医療経済実態調査を参考にしながら御議論をお願いすることになると思いますけれども、夏ごろまでにまとめ上げる病院経営の緊急状況調査の結果につきましても、当然のことながら中医協の方に提出して参考にしていただきたい、このように考えているような次第であります。
○遠藤(和)委員 大変明確にわかりました。ありがとうございました。
 次に、この診療報酬の各論的な話でございますので、保険局長にお伺いしたいのですけれども、昭和六十一年に集団精神療法が診療報酬上評価されるようになって以来、大変効果を上げているという声を聞いております。現在、通院患者だけに集団精神療法が認められているのですけれども、これを今後入院患者に対しても拡大するべきであると考えるのですが、この点に対してどういうふうな見解を持っておりますか。
○古川政府委員 御指摘の集団精神療法と申しますのは、集団内の対人関係の相互作用を用いまして自己洞察を深めるとか、あるいは社会適応技術の習得、対人関係の学習等をもたらすことによりまして病状の改善を図っていく治療法でございまして、精神科医及び臨床心理技術者等がグループごとに一定の治療計画に基づいて行う療法でございます。御指摘のように、現在は通院患者に対して認められているということでございます。
 入院患者につきましては、一般的には通院患者よりも重度の方々が多いというようなこと、それから、入院患者に対しましては精神科医が一対一で精神療法を行うことが適当な場合が多いというようなことが考えられることから、これは入院精神療法の診療報酬を算定できるような仕掛けになっているところでございます。
 いずれにいたしましても、この精神療法に関する診療報酬上の評価という問題につきましては、御指摘がございましたような問題を含めまして、関係学会の御意見、それから中医協の御議論を踏まえまして、次回改定の際に適切に対応してまいりたいと考えている次第でございます。
○遠藤(和)委員 別の問題ですけれども、最近自閉症の子供さんが大変ふえている。そのお母さん方からいろいろ悩みを私は相談されることが多いのですけれども、この自閉症に対する対策が大変おくれているような気持ちがするわけです。
 先日も厚生省に聞きましたら、この施設は医療関係で全国に五カ所、福祉関係では全国に三カ所ということでして、私どもの四国には一つも施設がない状態なんですね。これは自閉症児の数のふえ方に対して対応が余りにもお粗末ではないのか、もっと全国的にこうした施設をネットワークするべきであると考えておりますが、この点についてはどう考えておりますか。
○丹羽国務大臣 自閉症というのは私もちょっとよくわからないのでございますが、原因が不明で、これといった治療法がまだ確立されておらないということで、自閉症の子供さんをお持ちの御家庭の方々の御苦労は並み並みならぬものがある、このように私どもは真剣に受けとめておるような次第であります。
 自閉症児などに対する施設、これには今医療型の施設と福祉型の施設が全部で七カ所ほどございますが、いずれにいたしましても、確かに今先生の方から御指摘を賜りましたように、これらの問題につきましてさらに施設の充実強化を図るとともに、ショートステイ事業やホームヘルプ事業など、いわゆる在宅対策を今後進めていく決意でございます。
○遠藤(和)委員 この自閉症児の方もさることながら、この方々が成人した後、自閉症者になるわけですけれども、こうなるとますます施設がないのですね。社会福祉施設だとか作業所だとか、そういうネットワークもいろいろつくってあげなければいけないのですね。今は精神薄弱者援護施設で対応している形をとっているのですけれども、今後自閉症に対する研究などもやらなければいけないし、生涯にわたるいろいろな施策も展開していかなければならないのではないか。大変困っている方が多いわけでございまして、これに対する対策をさらに強めていただきたい。重ねて答弁を求めまして、質問を終わりたいと思います。
○清水(康)政府委員 自閉症児の問題につきましては、先ほど大臣から御答弁があったとおりでございますけれども、御指摘のとおり、次第に成人をして、者の方々の対策が兄よりも重要になってきておりまして、一般的に言いますと、多くの方々が精神薄弱という障害を伴っておりますので、精神薄弱者の援護施設で対応しているわけでございます。
 現在は主として成人をした自閉症者を入所させている施設が全国で三十一ございますけれども、これらの方々の大部分が入りまして、全国自閉症者施設連絡協議会といったようなものを設けまして、いろいろ研修やら施設の実態の調査やら運営上の問題についての情報交換、協議といったようなことも行っておりますので、私どもは、それらの施設連絡協議会の方々の御意見などもよくお聞きをしながら、今後とも自閉症者の処遇の向上ということに努めてまいりたいと思います。
 また、施設入所だけではなくて、ショートステイとかホームヘルプサービスとか、そういった在宅対策も講じておりますし、また、研究につきましても、従来から児童家庭局の方に心身障害研究という費目がございまして、その一環としまして、例えば最近では強度行動障害児(者)の処遇に関する研究といったようなことで、自閉症の問題も含めていろいろ研究もしておりますので、これからも施設対策、在宅対策ともに両にらみをしながら自閉症者の福祉向上のために努力してまいりたい、こう思っております。
○遠藤(和)委員 終わります。
○浦野委員長 草川昭三君。
○草川委員 草川です。
 まず、我が国の精神病院の総数の中で、民間病院及び国立病院の割合がどうなっているのか、お尋ねします。
○谷政府委員 単科の精神病院は、平成四年の六月現在でございますが、全体で千四十八施設、このうち国または地方公共団体が設置主体のものが五十一施設、その他の設置主体のものが九百九十七施設、約九五%でございます。
○草川委員 民間の精神病院における基準看護の適用状況はどうなっているのか、お尋ねします。
○古川政府委員 直近の厚生省統計情報部の医療施設静態調査によりますと、平成二年十月現在、精神病棟を持っている民間病院の数は千三百三十三でございまして、そのうち基準看護の承認を受けている病院の数は六百九十九となってございまして、全体に占める割合は五二・四%でございます。
○草川委員 基準看護の体系の中にもいろいろあるわけでありまして、それぞれの格差があります。本来はこれはもっと細かくお伺いをすればいいのですが、きょうは時間がございません。民間病院の基準看護が非常に少ない。今五二%とおっしゃいましたが、全体的な動向からいえば非常に低いのではないかと私は思います。
 そこで、いろいろと聞いてみますと、当然のことながら、看護婦さんが集まらないというのが一番大きな理由のようであります。看護婦さんをもっとたくさん集めればいいわけでありますけれども、集めるためにはそれぞれの条件をよくしなければ集まりません。今看護婦さんの多くは国公立志向になっているわけであります。その方が条件がいいわけでありますから、当然であります。そうすると、民間の精神病院の場合は非常にそういう意味では条件が悪いわけでございまして、なかなか基準看護がとり得ない。
 私は、ひとつこの際、精神病院の看護料を改めるということが基本的に大切だと思うのですが、その点はどうでしょう。
○古川政府委員 御指摘のように、民間精神病院で基準看護の承認を希望いたしましても、看護婦さん等の確保が非常に困難であるといったことから、基準看護の承認を受けることができない病院があるということの御指摘があることも承知いたしているわけでございます。
 私どもといたしましては、看護職員の確保というものは大変重要な問題であるというふうに考えておりまして、そのためのいろいろな対策を講じてきたところでございますが、平成四年四月の診療報酬改定におきましても、看護料を大幅に引き上げるとともに、看護婦と准看護婦の比率の緩和とか、承認申請に係るいわゆる実績期間というものを短縮するというようなこと等を通じまして、基準看護の承認を受けやすくする、こういった措置を講じているところでございます。さらに、こうした改定の趣旨につきましては医療関係者に周知を図っており、基準看護の適正な評価とその普及に努めている、こういう状況でございます。
 なお、看護料の問題を含めまして、現在中医協に設置された診療報酬基本問題小委員会、ここにおきまして診療報酬に関する多岐にわたる基本的な諸問題について御議論をいただいているところでございまして、また精神病院の看護料の改定につきましても、中医協の御議論あるいは医療経済実態調査の結果を踏まえて対応してまいりたい、かようなことで考えておる次第でございます。
○草川委員 基準看護をとってないところの精神病院の一カ月当たりの保険収入というのは二十二、三万円と私ども聞いているわけであります。これでは精神病院自身の経営が非常に不安定でございますので、ぜひ看護料を改める方向に持っていっていただきたいと思います。
 同時に、入院時医学管理料の逓減制という問題があるわけです。前回の診療報酬の改定のときにかなり精神病院協会は抵抗したようでございますけれども、結局押し切られたようであります。すなわち、一年半たてば管理料が下がるわけです。精神病の患者が一年半で治癒をするという前提ならば、一年半の入院で逓減をして、それぞれの社会復帰を果たしてもらうという一つの考え方は理解できますけれども、現実の問題としてなかなかそうはまいりません。
 どうしても長期入院にならざるを得ないわけでありまして、ならば、一年半たちますと管理料が下がる、二割近く下がるということになると、どうしても病院経営は苦しくなるわけです。でございますから、不完全なまま退院を強要するという場面だってあるわけですね。非常にトラブルがあるわけです。
 今回の法改正は、それをまた別の立場から受け入れるということでは我々も理解をいたしますけれども、私は精神病院における管理料の逓減制は見直さなければならないと思うのですが、その点どうでしょう。
○古川政府委員 診療報酬の改定につきましては、まず基本的なことでございますが、医業経営の実態等を踏まえまして、全体として精神病院を含む医療機関の経営の安定が図られるようにこれを行っているというようなことでございます。
 そこで、御指摘の入院時医学管理料の逓減制という問題でございますが、これは昨年四月の診療報酬の改定におきまして、これまで一年を超える入院患者に対しまして一律百二十九点の入院時医学管理料というふうに決めておりましたものを、平均在院日数が減少傾向にあるなどの実情も踏まえ、さらにきめ細かく評価をするということにいたしまして、従来一年以上ということで一年を超えるものを一律にしておりましたのを、一年六カ月を超える特に長期の入院患者に対する区分を新たに設けまして、その入院時医学管理料を百十九点としたわけでございます。
 この点の御指摘であるわけでございますけれども、これは先ほど申し上げたような実情を踏まえまして、患者さん方の早期の退院、それから社会復帰を促進するというような趣旨を踏まえまして、入院早期の重点的評価、つまり、入院されたばかりの方々に対しては重点的に非常に評価したわけでございますが、そういった入院早期の重点的評価と、特に長期入院の方々の入院の適正化というようなことを踏まえまして行ったわけでございまして、私どもとしては適切な評価ではなかろうかと考えているわけでございます。
 いずれにいたしましても、看護料を初めといたしまして入院関連の診療報酬を引き上げたほかに、通院精神療法とか精神デイケア、そういった精神医療の専門性を評価するなど、病院の経営安定の確保に全体として私ども十分配慮してきたことを御理解を賜りたいと思うわけでございます。
○草川委員 私は、精神病院の現場の実態というのを御存じないという反論をしたいと思います。
 時間がございませんので次へ行きますけれども、措置入院患者の国公立病院及び民間病院それぞれの受け入れ状況はどうなっているのか、お尋ねしたいと思います。
○谷政府委員 昨年の六月末現在で申し上げますと、措置入院患者全体の数は八千四百四十六人でございます。このうち国及び都道府県が設置主体である精神病院への入院者が四百三十二人、これら以外の設置主体の精神病院への入院者が、全体の九五%に当たります八千十三人となっております。
○草川委員 今の答弁を聞いていただいておわかりのとおり、措置入院患者の受け入れは、国公立てはなくて民間が主体になっているわけですよ。それから、救急患者の搬送等についても、現実には国公立は受け入れていません。そこで、やむを得ず地域の精神病院協会の会長の病院なんかが受け入れているのですよ。もう満床ですよ。国公立の方が基準看護を受けていますから、明らかに条件がいいわけですよ。そういうところがもっと措置を必要とするところの入院患者の受け入れを拡大すべきだと思うのです。だから民間にしわが寄っておるという言い方になるわけです。そういう意味で、私は厚生省の基本的な考え方を見直して、精神病院の現状というのを把握していただきたい、こういうように思います。
 ちなみに、精神病院における保護室の利用状況はどうなっていますか。
○谷政府委員 やはり昨年の六月末現在でございますが、保護室の全体の数が一万七百六十六室でございます。このうち保護室に隔離されている者の総数が六千四百八十九人というふうに承知しております。このうち、先ほどと同様に国及び都道府県が設置主体である精神病院への入院者が六百五十八人、約一〇%、これ以外の精神病院への入院者が九〇%、五千八百三十一人と承知しております。
○草川委員 これも今の答弁にありますように、民間が非常に難しい患者を受けておるという一つの数字だと思うのです。でございますから、私どもは、国公立が基準看護をとり、また看護婦さんもそこに比較的就職しやすい、一方、民間はその逆、そして難しい患者を受けざるを得ない、この現状に対してもっと目を向けるべきだということを強く主張したいわけです。
 精神病院の格子をなくして強化ガラスで代替をする、これはもうかなり前から言われておるわけです。強化ガラスというのはかなり高いわけでありますが、私は、精神病院に強化ガラスを採用することによって患者に快適な環境を与えるべきではないか、そのために補助制度を設けるべきではないかと思うのです。どのようなお考えか、お伺いをしたいと思います。
○谷政府委員 今お話ございますように、従来の鉄格子にかえて強化ガラスを用いることがだんだん多くなってきているというようなお話も伺っております。現在、国においては強化ガラスの設置のみを対象とする補助は行っていないわけでございますけれども、老人性の痴呆疾患ですとかアルコール等の専門病棟の整備がなされる場合には、施設整備に対する補助は行っております。その中で強化ガラス等の設置に係る費用も補助の対象にはいたしておるところでございます。
○草川委員 ぜひ一般の病院の改築にも補助を採用して、これを進めていただきたい、こういうように思います。
 自治省にも来ていただいておりますからお伺いをいたしますが、公立病院にはさまざまな公費負担がなされています。民間病院も同様の取り扱いを希望しているわけです。ところで、公費負担の基準というものが地方公営企業法のどういうところでどのような条件で負担がなされているのか、その基準をこの際明らかにしていただきたいと思います。
○板倉説明員 公立病院は、地域医療の確保、医療水準の維持向上、また、民間医療機関の進出が期待できないようないわゆる不採算分野の医療の提供など種々の役割を果たしております。
 このような役割にかんがみまして、地方公営企業法の第十七条の二及び同法の施行令では、公立病院の経費のうち、その性質上経営に伴う収入をもって充てることが適当でないもの、例えば救急医療を確保するための経費ですとか保健衛生行政事務に係る経費ですとか、これらが該当いたしますが、そういうもの、さらには、能率的な経営を行ってもなおその経営に伴う収入をもって充てることが客観的に困難であると認められるもの、例えば僻地医療や高度医療に係る不採算経費など、こういうものが該当いたします。これらにつきましては一般会計などが負担をするということといたしております。
 さらに、災害の復旧やその他特別の理由により必要がある場合には、同法の第十七条の三によりまして一般会計などから補助できるということにされております。
 以上であります。
○草川委員 きょうは時間がないので言いませんけれども、各都道府県によっては、救急医療を確保するための空床補てんだとか基準看護の確保に関する経費だとか、いろいろな経費が出るわけです。これはそれでいいのです。自治体病院は赤字ですから、そういうことをやっていただいてもいいのですけれども、民間にはそのような補てんがどこにもないわけですから、その点はしかと考えていただきたい。これは厚生省に物を申し上げておきたいと思うのです。
 それから、少し視点を変えますけれども、医療保険審議会の小委員会報告が先々週でございますか、まとめられました。その中で、現在現金給付となっている分娩費について、現物給付をすることについて検討すべきではないかという趣旨が述べられています。厚生省は、今後この分娩費の取り扱いの検討に当たっては、専門家の団体である日本母性保護医協会、いわゆる日母の意見を十分に聞いて対応をしていただきたい。これは私からも強く要望しておきたいと思うのですが、その点どうでしょうか。
   〔委員長退席、山口(俊一委員長代理着席〕
○古川政府委員 先日の医療保険審議会の小委員会報告は、公的医療保険の役割及び保険給付の範囲、内容を中心にいたしまして、これまでの検討内容の整理を行いまして医療保険審議会に報告されたものでございまして、その中で分娩費の問題も取り上げられていることはおっしゃるとおりでございます。医療保険審議会におきましては、この小委員会報告を踏まえまして、今後幅広い観点から御検討をいただく予定となってございます。
 厚生省といたしましては、医療保険審議会の検討状況等を踏まえながら適切に対処してまいりたい、かように考えております。
○草川委員 ぜひ関係の方々の意見を十分聞いて対応していただきたいということを特に要望しておきます。
 時間が来ましたので、最後に厚生大臣にお伺いをするわけですが、昭和六十二年の前回の精神衛生法の改正に際しまして、衆議院の附帯決議に「今後の精神医療のあり方を踏まえ、診療報酬の面等において適切な配慮を行っていくこと。」ということが盛り込まれているわけです。しかし、残念ながら、この精神病院の経営というのは非常に今苦しいわけでございます。
 先ほども大臣答弁をされましたけれども、民間の精神病院が我が国の精神科医療において大きな役割を果たしているということは十分お認めだと思います。この精神科の医療費が非常に低い。国公立病院との格差も拡大をしている。こうした実態を踏まえて民間の精神病院の経営を改善すべきではないか、こんなように思いますし、それから関係の諸団体からも、特に公私の格差ということが指摘をされているわけであります。その点について大臣の答弁をいただきまして、私の質問を終わりたい、こういうように思います。
○丹羽国務大臣 先生御指摘のように、我が国の精神医療におきましては、これは病床数でございますが、病床数でいきますると九〇%を民間の医療機関が担っておる、こういうことで、民間の精神病院の果たしている役割は大変大きなものがある、まずこのように考えているような次第でございます。
 それから、先ほどから国公立病院の問題が提起されておるわけでございますけれども、国公立病院におきましては、アルコール中毒であるとか、あるいは薬物中毒であるとか、てんかんであるとか、政策医療分野を中心にして、それぞれこれもまた地域におきまして御貢献を賜っておるわけでございます。いずれにいたしましても、民間病院と国公立病院がそれぞれの特性を生かしながら、精神医療を担っていただくということが何よりも大切である、このように考えております。
 問題は、病院の経営の確保でございますが、これまでも診療報酬の改定などを通じて適切な措置を講じてきております。最近、先ほども御答弁を申し上げたわけでございますけれども、人件費や材料費が大変上昇いたしておる。こういう中で精神病院も含めまして大変民間病院が厳しい、こういう声を私ども十分に聞いておるわけでございます。そこで、先ほど来御答弁を申し上げておりますように、精神病院を含めて民間病院の経営状況について緊急に調査を行い、その結果を参考として、経営の健全化対策全般について検討を行っていきたいと考えております。
 また、診療報酬の面でございますけれども、ただいま実施いたしております医療経済実態調査の結果を踏まえまして、十分に中医協で御議論をしていただきまして、いずれにいたしましても、民間の精神病院の役割というものを十分に考えながら、良質な医療が確保されるようにひとつ努力していく決意でございますので、御理解を賜りたいと思っております。
○草川委員 時間が来たので終わりますが、実は精神科七者懇談会というのがあります。これは学会から病院から自治体病院協議会等も含めたものですが、それが最後に現在の日本の精神科医療の窮状の最大の理由の一つが、精神科医療費の貧困にある。この医療費を他科なみに、抜本的に増額することが、精神科医療改善のため不可欠
だということを言っておるわけです。この要望書がすべてをあらわしておると思うので、ぜひ十分配慮をされて今後の対応をしていただきたい。
 以上申し上げまして、終わりたいと思います。
【次回へつづく】