精神医療に関する条文・審議(その59)

前回(id:kokekokko:20050721)のつづき。初回は2004/10/28。
平成5年改正の審議のつづき。

第126回衆議院 厚生委員会会議録第15号(平成5年6月4日)
【前回のつづき】
○外口委員 国の責任において積極的に進めていかれるということで、ぜひともその点を強調し、求めて、次の質問に移りたいと思います。
 この五年間の法定内社会復帰施設の整備状況を見ますと、援護寮四十六カ所、福祉ホーム六十四カ所、適所授産施設四十九カ所にとどまっています。これは全国です。一方、小規模作業所は既に六百カ所を超えており、精神障害者の社会復帰を事実上背負っていると言っても過言ではありません。それにもかかわらず、政府はこの小規模作業所に対し、その半分以下の二百九十四カ所に対してのみ、わずか年額一律九十万円の補助を行っているにすぎません。しかも家族会が運営しているものに限定されています。都道府県レベルで補助金が出せる根拠をつくるなど、国としての措置を講ずべきではないでしょうか。
 小規模作業所のほとんどがわずかな給料で働く人々の献身的な熱意で支えられ、しかも赤字を抱えながらも懸命に取り組んでいる実態があります。このような状況を当たり前のものとせず、行政の責任において支援策を講じていくことが必要だと考えます。授産施設と作業所の補助金の大幅な差など、現場で取り組んでいる者が直面している矛盾、課題は山積みでございます。今後どのような支援の方向を考えているのでしょうか。責任を持ってお答えください。
○谷政府委員 小規模作業所に対しましては、昭和六十二年度からその運営費に対する補助を実施してきたところでございますが、本年度におきまして、先ほど先生お触れになりましたように、二百九十四カ所の作業所に対する補助を行うことにしているわけでございます。こういったような小規模作業所に対する適正な運営を確保するため、今後とも支援の充実、予算の確保ということには努めてまいる所存でございます。
○外口委員 不満足な答弁ですが、次の点でもまた同時に答弁を求めますので、時間の関係上、進めさせていただきます。
 先ほどの福祉ホーム、たった六十四カ所と申し上げましたが、共同住居としての福祉ホームは、補助金の基準額が全くといってよいほど低い、住居提供に伴う生活支援サービスや相談、一時宿泊などへの公的な助成は認められていない、法人以外は国からの補助金がないなど極めて厳しい運営を強いられ、多くは赤字運営になっています。このような状態の中で、一九九二年でわずかに先ほど申し上げましたように六十四カ所です。なぜ福祉ホームはこのような状態に置かれたままにあるのでしょうか。援護寮との補助金の金額の差は何なのでしょうか。また、今後はどのように改善を図っていくおつもりなのでしょうか。
 また、社会復帰を推進するためには、そのための場としての住居の確保は重大な問題です。例えば精神薄弱児においては、北海道で地方自治法の例外許可という形で、公営住宅におけるグループホームの試みが行われていると聞き及んでおります。厚生省として、例えばこのような形で公営住宅を優先的に障害者が利用できるように働きかけるなど、建設省も含めた政府全体での対応を行っていくべきと考えますが、こういうことに関してどのような方向性、お考えをお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
○谷政府委員 先ほどお触れになりました社会復帰施設の整備の促進を図るために、施設運営費に対する補助基準額の引き上げ等につきまして毎年やってきているわけでございますが、今後ともそういった必要な予算の確保ということには努めてまいりたいと思います。
 また、グループホームにつきましては、今後適正に事業が運営できますよう、同様に運営費の確保ということには努めてまいりたいと考えております。
 一方、公営住宅の問題につきましては、これは建設省の方の所管かと存じますが、こういったようなことについては、必要に応じて関係省庁に働きかけをしていきたいと思っております。
○外口委員 グループホームが今回の法改正においては精神障害者地域生活援助事業として位置づけられましたが、先ほど明らかにした福祉ホームと同じような困難な状況に陥らないようにするための施策を積極的に打ち出していってほしいということを要望いたしまして、次に移らせていただきます。
 すなわち、社会復帰施策を担うヒューマンパワー、このことは最も切実な問題であります。政府はこれらのヒューマンパワーについてどのような方策を考えておられるのか。とりわけ精神障害者の社会復帰、社会参加を促進するためには、さまざまな立場、職能の人がチームを組んで、幾重もの支えの体制を生み出してかかわっていくことが必要であります。そのためには、またさまざまな支援のメニューを一人一人の人に見合って組み合わせて、適切なサービスを提供していけるようなコーディネーターの役割を担う人が必要です。
 そのような担い手として、保健婦あるいは看護婦、中には看護職の男性のより積極的な活用をも含めておりますが、またソーシャルワーカー心理療法士、作業療法士など、経験を積んだ専門家が当たっていくことが極めて望ましいと考えます。また、これらの担い手が十分に力量を発揮できる条件整備や労働環境整備など、国としてのバックアップ体制が必要であるにもかかわらず、これまで極めて貧弱な状態のままに置かれております。そして、一部の人々の熱意にのみ依拠せざるを得ない現実を生み出しています。この点に関してどのように対応しようとしているのでしょうか。
 特に職員配置基準において、政府は特例で一般科より低い基準を規定しています。精神障害者にとってヒューマンパワーは、身体障害者にとっての車いすやつえや眼鏡などなどにも相当するものであります。人と人とのかかわり合い、支えが、対人関係の障害、悩みを持つ人にとっては最も重要ないやしの手だてであることは言うまでもありません。そうしたヒューマンパワーを最も必要とする領域において、より少ない配置基準を行っているというこの矛盾、この政府の姿勢について見解をお伺いいたします。
○谷政府委員 社会復帰施設におきます職員配置につきましては、精神障害者の社会復帰のための訓練、指導、それぞれの内容等を踏まえて設定しているわけでございます。現在直ちにこれを変えるというのはなかなか難しいわけでございますけれども、今後とも、実情を踏まえながら適切に設定するように配意をしていきたいと考えております。
 また、先生今御指摘のございました、いわゆるチームによって対応していく、いろいろな職種の人がそれに関係をしていくということは、今後そういった社会復帰の促進をしていくという上では大切なことだというふうに私どもも考えております。それで、今具体的にお挙げになりましたソーシャルワーカーですとか心理技術者の問題につきましては、やはり国家資格を設けていかなければいけないというふうに考えておりますが、この問題につきましては、御案内のように、現在関係者の間で意見の調整をやっている段階でございます。そういう結果がまとまれば、私どもはそれに対応して適切な措置をやっていくというつもりでございますので、御理解を賜りたいと思います。
○寺松政府委員 今先生の御質問の中に、例示という形だったと思いますけれども、精神病院におきます医療法上の職員のことについてもちょっと触れられました。そこで、私どもの基本的な考え方を申し上げたいと思うわけでございます。
 先般の国会でも御答弁申し上げましたが、精神病の多くが慢性疾患でありまして、症状の急変が少ないようなことから、精神病院の医師とか看護婦等の配置基準は、一般病院よりも緩和されているというのが実情でございます。そこで、精神病院にかかわります人員配置基準というものにつきましては一先ほども何度か申し上げております医療施設機能の体系化を図っていく必要があるというようなことの中で、医療関係者の連携の問題も含めまして、医療従事者の役割分担というもののあり方、あるいは今後の看護職員等を初めとします医療関係者の需給の状況、そういうふうなものをも勘案しながら、精神医療の今後のあり方も含めて、先ほど保健医療局長の方から答弁ございましたけれども、そのようないろいろな検討も含めて引き続き私どもも検討を加え、その結果に基づきまして必要な措置を講じてまいりたい、このように思っております。
○外口委員 特に特例措置の廃止をしていく方向を求めて、次の質問に移ります。
 次は、精神医療審査会です。精神障害者の人権を保障するという立場から、精神医療審査会の機能の充実についての見解を伺います。
 昨年の国連による精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則も、自由権的諸権利、社会権的諸権利などを定めた世界人権宣言の各条項を基本としております。したがって、精神障害者もハンディキャップを負いながら社会の中で暮らしている市民の一人であり、そのための市民としての人権がきちんと保障されてしかるべきであることは、何度繰り返しても繰り返し足らないところでございます。
 しかし、六月二日の同僚議員からの質問にあった大和川病院問題のような悲しい事件は、いまだなお後を絶っておりません。この事件から見ても、積極的にアプローチしていかないと実態を把握することが極めて困難な対象であり、領域となっているということが現在の精神医療の実態であります。各都道府県に設置されている精神医療審査会のあり方がここでも問われたと言ってよいと思います。
 精神医療審査会は、人権擁護の観点に立って、入院患者の入院継続の要否、または入院中の患者からの不服申し立てについて判断する機関であるはずですが、この障害者の人権擁護のための極めて重要な機関が、これまでほとんど機能してこなかった現実に大変憤りを覚えます。そしてまた、構成メンバーに保健婦ソーシャルワーカーなどの社会復帰活動に精通している者を加えること、そしてまた事務局体制を確立し、第三者機関としての機能をより高めるための施策が必要と考えます。これまでの反省を踏まえて、今後の取り組みをお聞かせください。
○谷政府委員 精神医療審査会の役割については、先生が今お触れになったとおりでございますが、この精神医療審査会におきます退院請求あるいは処遇改善請求等の審査につきましては、各都道府県において、月に一回から三回程度の審査を行っているというふうに聞いております。そういう意味で、私どもとしても、この審査を迅速に実施するということを指導いたしているところでございます。
 なお、この審査会の独立性ということにつきましては、この審査会の役割は、先ほどもお触れになりましたような、みずからの意思によらない入院患者のすべてについて及び入院患者からの退院請求等のすべてについて審査を行うため、行政上の裁量の余地がないのではないか、また、都道府県知事が審査会の審査結果に基づいて一定の措置をとらなければならないというふうにされていることからいっても、私どもは、制度的には独立した機関であるというふうに考えております。
 なお、この精神医療審査会の構成の問題についてお触れいただいたわけでございますが、精神病院に入院している精神障害者の入院の必要性、あるいは先ほども申しましたような処遇の問題を審査するということで、御承知のように、この構成につきましては、現在そういったような内容から、精神保健指定医あるいは法律の関係者、その他の学識経験者というふうにしているわけでございまして、この構成を直ちに変えるということについては、私どもとしては現在考えていないところでございます。
○外口委員 この点に関しては、時間の都合上、今後の委員の質問にゆだねまして、次に移らせていただきます。
 時間の都合上、二点だけお伺いして、最後に大臣の決意を伺わせていただきます。
 精神障害者の差別を象徴し、また、社会参加のネックとなっているものに資格制限と利用制限があります。今回の改正で、栄養士、診療放射線技師、調理師などにおいては資格制限や利用制限が外されました。しかし、精神障害者に対する欠格事由はまだまだ多く残されています。これに対して今後外していく努力を続けていくことを求めます。
 そして、もう一つ大事なことはインフォームド・コンセントの問題でございます。医療において人権を擁護していく際に基本的となることは、医療サービスの受け手と担い手との信頼関係をはぐくみ、医療の担い手、受け手が自分の状態や必要な診療、治療、看護についてわかるように説明を受け、互いに理解をし、協力して治癒を目指していくということです。そうした意味で、昨年の医療法の改正の際、このいわゆるインフォームド・コンセントの概念が導入され、規定されました。このことは精神医療においてはより重要な点であると考えますので、この点についての取り組みをもお聞かせいただきたいと思います。
○谷政府委員 資格制限の見直しにつきましては、これにかかわります関係者の理解というものが欠かせないということから、今回、関係者の間の調整がつきましたものから手をつけさせていただいたわけでございますが、今回見送ることにいたしたものにつきましても、今後、関係者の意見を十分に踏まえながら検討をしていくつもりでございます。
○寺松政府委員 先生の御質問の中に精神障害者に対しますインフォームド・コンセントのお話がございましたので、私の方からお答えを申し上げたいと思います。
 先生と認識は同じくいたしておりまして、精神障害者にかかわりますインフォームド・コンセントにつきましては、患者と医師あるいはそのほかの医療関係者という方々との信頼関係の確立ということにも役立ちますとともに、精神障害者の人権に配慮した精神医療を確保する上でも重要な課題だ、このように認識いたしております。
 このインフォームド・コンセントにつきましては、特に精神疾患については、疾病の種類や状況等によっては、病名、病状、治療指針等の説明等が非常に難しい場合もあるわけでございまして、現場の医療に混乱を来すことのないように進めていく必要があるものだと考えております。したがいまして、先ほど先生の御指摘にございました昨年の医療法改正のときに入りました検討規定にもございますように、今後関係者の意見も十分踏まえまして適正な対応をしてまいりたい、このように考えております。
○外口委員 ただいま御答弁されたことをより積極的に実現していかれることを望みまして、最後に大臣に御決意をお伺いしたいと思います。
 現在の法体系は、精神障害者身体障害者、あるいはまた保健、医療、福祉というふうに、それらが縦割りのままに行われることによって、障害別の分断、生活支援の視点の欠如、総合的なサービス提供の欠如などが極めて大きな問題となっております。そうした意味において、今後すべての障害者を対象とした総合的な施策を展開していくために、障害者総合福祉法あるいはまた生活支援法などの法整備が目指されるべきと考えます。私は、ここにそのような提案をいたしたいと思いますが、この件に関し大臣の御決意をお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。
○丹羽国務大臣 まず、参議院の本会議に出席いたしておりまして、遅参してまいりましたことをおわびを申し上げる次第でございます。
 ただいまの外口先生の御質問でございますが、障害者に対する基本的な理念や施策の方針につきましては、心身障害者対策基本法で規定をいたしております。これを受けまして、それぞれの障害の特性に応じて法律が定められております。いずれにいたしましても、これらの法律を通じて手厚い医療や福祉の具体的な施策を推進いたしております。
 昨年、国連障害者の十年が終了いたしまして、ことしから新たな行動計画に基づいて、基本的、総合的な施策の推進を図ることにいたしております。御指摘の趣旨も十分に踏まえまして、いずれにしても、障害者の自立と参加が実現できますように全力を尽くす決意でございます。
○浦野委員長 池端清一君。
○池端委員 ただいま大臣からも御答弁ありましたように、ことしは国連障害者の十年を経て、今後新たな十年を迎える最初の年であります。また、ことしからアジア太平洋障害者の十年とすることが定められており、障害者問題全般についての施策の一層の推進が図られることになっているのであります。
 この十年間を振り返ってみますと、世界各国においてノーマライゼーションリハビリテーション、この理念のもとに、完全参加と平等の目標に向けて積極的な取り組みが行われてまいりました。精神保健の分野におきましても、一昨年十二月、一九九一年十二月の国連総会において、精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則、いわゆる国連原則が採択をされました。精神障害者の人権の擁護と、自立の向上のための各国の共通のガイドラインが決定をされました。このように、国際社会における取り組みは大きな前進を見せているのであります。
 一方、翻って我が国においてはどうかというと、前回、一九八七年の精神衛生法の改正により、任意入院制度の導入や社会復帰施設の法定化などにより、精神障害者の人権に配慮した施策が講ぜられることになっておるのでありますが、しかし、いろいろ質疑にありましたように、国際的な視点から見ますると、残念ながら依然として多くの立ちおくれがあるということを国の内外から指摘されていることは、御案内のとおりであります。先ほどの同僚外口議員の質疑でも明らかにされましたように、社会復帰施設の整備は極めて低調でございます。社会復帰対策はなお立ちおくれているのでありますし、精神病院等における不祥事もいまだ後を絶っていないのであります。
 私は、今回の改正は一歩前進であると評価するものでございますが、なお幾多改善を要する問題もある、今後とも日常不断にこの制度全般の見直しが必要である、こういうふうに考えるものであります。そういう観点から、時間の関係もございますので、若干の問題に絞って厚生大臣に御質問をいたしたいと思います。
 まずその第一は、精神障害者の定義の問題についてであります。
 精神障害者の定義につきましては、国際的な疾病分類に準拠したものであることを関係者に十分周知徹底するとともに、引き続きこの定義規定については、精神障害者の人権と福祉を重視する見地から検討を行うべきものである、このように考えますが、大臣の所信を承りたいと思います。
○丹羽国務大臣 改正後の精神障害者の定義につきましては、国際疾病分類に準拠しているものでございますが、改正法が施行されるまでの間に、その趣旨を関係者に対し十分に周知徹底してまいりたいと考えております。
 また、定義規定につきましては、今後とも幅広い観点から引き続き検討をしてまいりたい考えに立つものでございます。
○池端委員 二番目は保護者制度のあり方についてであります。
 精神障害者を抱える家族に対する支援体制をより充実するとともに、今後とも公的後見人を含めて保護者制度のあり方について検討を進めるべきである、このように考えますが、この点についての所信も承りたいと思います。
○丹羽国務大臣 精神障害者を抱える家族に対しましては、その負担を軽減するよう、今後とも引き続き支援体制を充実してまいりたいと考えております。
 また、保護者制度のあり方につきましては、公衆衛生審議会の意見書においても引き続き検討することとされております。関係家族団体の意見などを伺いながら、必要な制度の改善について研究を進めてまいりたいと考えております。
○池端委員 第三点は精神障害者社会復帰対策についてであります。
 これが立ちおくれておることは先ほども指摘したところでございますが、精神障害者の社会復帰を推進するため、社会復帰施設、地域生活援助事業、小規模作業所等に対する支援の充実を図ることが急務である、緊急の課題である、このように考えますが、これに対する大臣の決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
○丹羽国務大臣 精神障害者の社会復帰の促進を進めていくことは、今後とも大変重要な課題とまず認識をいたしております。
 このため、引き続き社会復帰施設、地域生活援助事業や小規模作業所などに対する支援の充実を図ってまいりたいと考えております。特に社会復帰施設のまだ設置されておりません未設置県に対しましては、その設置について強く求めていきたいと考えております。
○池端委員 第四にチーム医療と資格制度についてお尋ねをいたします。
 精神保健におけるチーム医療を確立するために、精神科ソーシャルワーカ−及び臨床心理技術者の国家資格制度を可及的速やかに創設すべきであると考えます。実はこの問題は、五年前の改正の際も、附帯決議でこの委員会の意思が表明されたところでありますけれども、いまだそれが実現しておりません。この資格制度の創設について速やかに行うべきであると考えますが、これについても大臣の所信を承りたいと思います。
○丹羽国務大臣 精神科ソーシャルワーカー及び臨床心理技術者の資格制度についてでございますが、当事者間の理解を得る必要があることでございます。現在それぞれ当事者間の意見調整を行っております。
 今後、その結果を踏まえまして、具体的な国家資格制度の創設について速やかに検討を行ってまいりたいと考えております。
○池端委員 最後に、精神保健法の見直しの問題についてであります。
 先ほども触れましたように、今回の改正は一歩前進である、このように私は評価するにやぶさかではございませんが、我が国の精神保健行政が国際的に見ても立ちおくれている現状にかんがみ、継続的な見直しが必要である、このように考えるものであります。法律の施行後五年を目途にして、法律の施行状況や精神保健を取り巻く環境の変化を踏まえて、必要な見直しを行うべきである、このように私は考えますが、これについての大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○丹羽国務大臣 精神保健対策につきましては、前回の改正で精神病院から社会復帰施設へ、こういう流れに加えまして、今回の改正で社会復帰施設から地域社会への流れを形成し、精神障害者の社会復帰の一層の促進を図るとともに、精神医療の分野におきましても、精神障害者の人権に配慮し、よりよい環境において質の高い医療を提供していくことを目指しております。
 このような立場から、今後とも精神障害者対策の一層の充実を図っていかなければならない、こう考えているものでございます。
 このため、今回の法案の施行後五年を目途といたしまして、改正後の精神保健法の規定の施行状況、さらに精神保健を取り巻く環境の変化を勘案しながら検討を行い、その結果、必要があると認められる場合には、改正後の精神保健法の規定について検討を加えまして、その結果に基づいて所要の措置を講ずることといたしたいと考えております。
○池端委員 終わります。ありがとうございました。
○浦野委員長 吉井光照君。
○吉井(光)委員 きょうで二日目の審議となりまして、質問、それから論点も大体煮詰まってきたわけでございまして、重複するところも多々あろうかと思いますが、お許しを願いたいと思います。
 まず、差別、偏見の解消についてでございます。
 今後の精神保健対策の進むべき道は、確かに社会復帰施設から地域社会への参加でございます。その受け皿づくりはまだまだ不十分でございますが、国・地方を通じまして行政に残された課題は山積をしているわけでございます。したがって、今後も適切な対応が必要であることは言うまでもないわけでございますが、その一方で、精神障害者に対するいわれなき差別、そして偏見がさまざまな政策のネックになっていることも、これまた事実と言わざるを得ません。
 それだけに、この問題解決のためには、同じ社会に生きるところの私たちが、精神障害者との共生について真剣に考えていかなければならない段階に来ていると思います。政府も同様の見解だと思いますが、差別、偏見を解消するためにはどのようにすればいいのか、まず大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○丹羽国務大臣 精神障害者の社会復帰を促進する上で、ただいま委員御指摘のような精神障害者に対する差別や偏見を解消していくためには、国民の皆さん方の理解と協力を得ることが不可欠である、まずこのように認識をいたしておるような次第でございます。
 こういう観点に立ちまして、これまで国や地方公共団体におきまして精神保健全国大会の開催を行ったり、あるいは保健所、精神保健センターにおいて精神保健に関する知識の普及、こういうような取り組みを行ってきております。また、本年の八月には、精神保健の知識の普及を目指す世界精神保健連盟の世界会議が我が国において開催されることになっております。
 さらに、今回の法律の改正におきましては、精神障害者の社会復帰促進のために啓発広報活動を行う精神障害者社会復帰促進センター厚生大臣が指定できることといたしております。
 いずれにいたしましても、これらの施策を通じまして国民の皆さん方の差別や偏見が解消するよう、今後とも国民の皆さん方の理解を一層深めていく努力をしていく決意でございます。
○吉井(光)委員 次は、国家資格取得の制限緩和でございます。
 今回の改正案では、精神障害者の社会参加に道を開くために、現行約三十種に及ぶところの資格制限のある各種免許のうち、栄養士、それから調理師を初め四項目については、軽度の障害者であるならば国家資格取得を認めるようにしているわけでございますが、注目された自動車の運転免許、それから理容師、こうした二十六種について今後どのようにされるおつもりなのか。
 精神疾患については、最近の医薬品の開発等によりまして、健常者に近いような生活ができるようになったわけです。軽度の者については、今回と同じくやはり国家資格取得可能な方向へ進めていかなければならないと思うのですが、今回の四種以外を除けばこうした資格の取得というのはもう無理なのか、もう実際できないのかどうか、こういった点のいわゆる方向性についてお聞かせを願いたいと思います。
○谷政府委員 この資格制限の見直しについては、関係する関係者の理解というものがないとなかなか実施をするには難しいというのが実態でございます。そういう意味では、今回は関係方面との意見調整がつきました診療放射線技師、栄養士、調理師、製菓衛生師並びにケシの栽培の許可、この五つについて、資格制限を従来の絶対的な欠格事由からいわゆる相対的な欠格事由というものに改めたわけでございます。
 まず一つ御指摘にございました厚生省関係で申しますと、理容師、美容師の問題につきましては、今回関係者間の意見の調整が調わなかったというようなこともありまして、改正を見送ることとしたわけでございますが、この取り扱いにつきましては、関係者の今後の意見の調整というものを十分に踏まえながら、引き続き検討をしてまいりたいというふうに思っております。
 また、具体的な例示として挙げられました運転免許その他、他省庁が所管する法律に基づく資格の問題でございますが、これにつきましては、今回の法改正に当たりまして私ども厚生省といたしましては関係省庁に検討をお願いをしてまいりましたけれども、率直に申し上げて、時間的な問題等もございまして、今回の改正には至らなかったということでございます。これら他省庁所管の資格の問題につきましては、基本的にはそれぞれの省庁において検討をされるべきものだというふうに理解をしておりますけれども、厚生省といたしましても、この問題について今後必要に応じ協力をしてまいりたいというふうに考えております。
○吉井(光)委員 次は、自傷他害防止の監督義務についてお尋ねをしたいわけです。
 今回の見直しで保護義務者の名称が保護者に改められることになったわけですが、これは核家族化やまた患者家族の高齢化、それから低収入、こういったことから、いわゆる保護義務者の負担が年々重くなってきていることが従来から指摘をされておりまして、その負担軽減の意味からであろう、このように思うわけでございます。そのかわり、家族にかわる公的保護義務者として国及び地方の役割を重視していこう、こういうものであろうと思います。
 であるならば、通常、社会生活を送っている患者が他人に傷害等を与えた場合、民法上の賠償責任が保護義務者に生じることがあるわけですが、この個人の義務を軽減するためにも、やはり民法上の賠償という面につきましてもある程度補償をしていくべきではないか、このように思います。確かに被害者救済制度といったような制度もあるわけですが、この法の適用というものも非常に厳しい適用になっておるわけです。こういった点についていかがでしょうか。
○谷政府委員 この保護義務者の制度につきましては、今お触れになりましたように、今回の改正においては、保護義務者が負っております義務と申しますか、そういうものには行政上の命令あるいは罰則規定がないということから、その義務の側面を強調すべき理由がないというようなことから保護者に改めたわけでございます。
 また、幾つかの保護者に対する支援規定というものを設けたわけでございますが、この保護義務者制度と申しますのは、御承知のように、精神障害者の持っております特殊な状況と申しますか、特に医療あるいは保護に当たることができる者が身近にいなければいけない、そういう精神障害者の医療を確保するあるいは保護をするという公衆衛生上の観点から設けられたものでございまして、今お話しのございましたいわゆる無能力者の不法行為の責任の所在をどこに求めるかといったような問題につきましては、民法上の問題として、民法の運用等によって対応すべき課題であるというふうに私どもは認識をしております。
○吉井(光)委員 次は、時間もございませんが、精神障害者の所得保障についてです。
 社会参加の大きな柱は、言うまでもなく雇用それから就労でございます。この雇用の安定確保については、やはり生活基盤を支える大事な基本であるわけです。ところが、例えば作業所で週五日働いて月四千円から五千円程度、これはいわゆる技術を身につけるということでこのような金額になっているわけですが、それはそれとして、運よく一般企業に就職できても、病気にはいろいろと波がございます。したがって会社を休んだりする。また、精神障害者とわかってしまうと、ただでさえ安い賃金というものがさらに安くなって、最後にはやめざるを得なくなってくる、こういうケースもございます。また、今の複合不況、世間で言われておるところのこうした不況も非常に長期化をしておるわけですが、いわゆる不況風に真っ先にさらされるのもこうした精神障害者などの弱い人たちでございます。集中力や根気がない、また単純作業が中心となりがちで、職種も当然限定されてしまう面があるわけでございますが、大切なことは、こうした人たちがきちっと社会参加できるためには、自力で社会生活ができるだけのきちっとした所得保障的な観点、こうしたものが私は必要ではないかと思うのです。そういった意味で、これは労働省、それから厚生省にお尋ねをしたいと思います。
○谷政府委員 精神障害者が通常の人と申しますか、普通の人と変わらない生活が送れるように、その社会復帰を促進するということにつきましては、厚生省といたしましては、これまでも精神障害者授産施設等社会復帰施設を整備し、そこにおきまして必要な訓練とか指導を行ってきたところでございまして、今回の法改正におきましても、社会復帰を促進をするという観点から、新たにグループホームの事業を法定化をするということを盛り込んでおるわけでございます。
 そういう立場に立って、今後とも、精神障害者の社会復帰を促進するための必要な施策を充実させていきたいと思っております。
○坂本説明員 労働省におきましては、精神障害者のうち働くことを希望される方に対しましては、できるだけきめ細かな援助を行ってきておるところでございます。
 一つは、公共職業安定所におきまして、それぞれの方の能力、適性に応じまして適当な雇用の場につくことができるような相談をさせていただいております。また、厚生省の方で実施をしておられる社会復帰のための施策が大変充実してきておられますので、それにあわせまして、労働省の方でも雇用促進措置を強化いたしております。
 具体的には、昨年障害者の雇用の促進等に関する法律を改正いたしまして、精神障害者の方につきましても納付金制度に基づく助成金を支給することにいたしました。また、雇用に当たりまして、特定求職者雇用開発助成金を新たに支給することとしたところでございます。また、地域の障害者職業センターにおきまして、職域開発援助事業という新たな職業リハビリテーションを昨年度より実施いたしております。これは、障害者の特性に応じましてマン・ツー・マンで、具体的な事業所の場をお借りして、雇用につくためのリハビリテーションを実施するものでございます。また、本年度からは、各地の公共職業安定所の方に精神障害者の職業相談員を配置いたしたところでございます。
 このような施策とあわせまして、精神障害者の雇用に当たりまして、医療や福祉機関との連携を含めて、その就業の条件整備のあり方につきまして現在調査研究を行っております。この成果を踏まえまして、必要な条件整備について施策を講じてまいりたいと考えております。今後とも、精神障害者の雇用の促進に向けて努力をしてまいりたいと考えております。
○吉井(光)委員 時間が参りましたが、最後に、これも先ほども質問に出たわけでございますが、作業所の改善でございます。
 今回の改正の中心でもあります社会復帰の促進が今後の精神保健対策のかなめとなるわけでございますが、中でも社会復帰施設の充実ということが非常に重要となってまいります。三十五万人の入院患者の二割に当たる七万人、この七万人の方々はその施設がありさえすれば退院可能だ、このように言われているわけですが、そうなりますと、社会復帰施設の不足が障害者の社会参加をいかに阻害しているかということがわかるわけでございます。平均入院日数が五百日近く、それから五年程度はざらでございます。五年以上の入院は二%というイギリスのデータと比べましても、余りにも格差があるわけでございます。
 今回の精神障害者地域生活援助事業、いわゆるグループホーム、これはその意味で社会参加の政策として私も高く評価しているわけでございますが、居室面積は一人用七・四平米、それから二人用が九・九、できればこれをもう少し広い居住空間とすべきではないか、このようにも思います。また世話人の給料も、聞くところによりますと年間二百八十万円、これは高いか安いかいろいろと議論が分かれるところかもしれませんが、年間二百八十万円というのは非常に寂しい気がいたします。
 もう一つ必要なのが作業所の改善でありますが、現在作業所は全国で約六百カ所を超しているわけでございます。しかし、国の補助は、十人以上が週四回以上働くことが条件になっているために、対象は二百五十二カ所にとどまっております。額も年間九十万円とわずかでございます。結局、一作業所二百万円、市町村が百万円、県が百万円の自治体の援助に頼るところが大でございます。作業所が近くにもない、また、あっても非常に環境がよくない、バラックのような薄暗い建物でいろいろな作業が行われているわけでございますが、これはもう健全な職場環境とは遠くかけ離れているわけでございます。また、最近は立ち退きを言われても行き先が全然見つからない、また相談相手もない、こういった実態もあるわけでございまして、政府が社会参加、地域参加を真剣に考えるのであるならば、やはり国の援助の拡大を思い切ってすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○谷政府委員 精神障害者の社会復帰を促進するために、社会復帰施設あるいは地域生活援助事業、小規模作業所に対する支援の充実を図っていくということは、大変重要なことだというふうに認識をしております。
 先生今幾つか例としてお挙げいただきましたけれども、確かに社会復帰施設については、まだまだこれから大いに力を入れていかなければいけないというのは私どもが基本的に持っている認識でございますし、また、先般来申し上げておりますように、平成五年度から、従来なかった設置者の運営費に対する自己負担、設置者負担の解消ということも図ったわけでございまして、そういうことを含めて、今後とも必要な予算の確保ということには努めてまいりたいと思いますし、また、先ほど大臣からの御答弁にもございましたように、社会復帰施設の未設置県というものの解消ということにも、改めて強く取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○吉井(光)委員 終わります。
○浦野委員長 児玉健次君。
○児玉委員 精神障害者の社会復帰を進めようとする場合に、まず仲間、それから住まい、仕事を保障することが三本の柱だ。そういう意味で、社会復帰施設の重要性というのは非常に高いと思います。五年前のこの法の審議のときも、私はこの問題について触れました。
 最初に端的に伺うのですが、ちょうど今同僚議員の御質問もありましたけれども、昨年六月三十日段階の入院者数は三十四万六千九百三十人、この中で、もし社会復帰施設や家庭等の受け皿が整っているとすれば何人ぐらいが退院できるか、その可能性について厚生省の考えを聞きたいと思います。
○谷政府委員 現在の入院患者に対してどれぐらいが社会復帰の可能性があるかということでございますが、現時点においての調査結果というのは私ども持っておりません。
 それで、大分古いデータでございますが、昭和五十八年にやりました実態調査の結果によりますと、これは七千九百人余の入院患者について調査をした結果でございますが、その当時、条件が整えば退院の可能性があるとされた者が約二二%ということでございます。
○児玉委員 二二%として七万六千人強ですね。そして、今局長がおっしゃった精神衛生実態調査、一九八三年のもの、全国精神障害者家族会連合会の滝沢武久氏が厚生省の広報誌である「厚生」の中で述べていらっしゃるのを援用すれば、十万ないし二十万という見方もあります。
 そこでお伺いしたいのですが、現在社会復帰施設の定員はどのくらいか、援護寮、福祉ホーム、授産施設それぞれについて、箇所数とあわせて示していただきたいと思います。あわせて福祉工場について当面どのような計画をお持ちなのか、以上お答え願います。
○谷政府委員 社会復帰施設の箇所数でございますが、平成四年度の数字でちょっと申し上げさせていただきます。
 援護寮につきましては、施設数が四十六、定員が約九百二十名、精神障害者福祉ホームにつきましては、施設数が六十四、定員が約六百四十名、精神障害者授産施設につきましては、施設数が五十一、定員約一千名となっておりまして、これらの定員を合計しますと約二千五百六十名ということになっております。なお、福祉工場につきましては、平成五年度からその整備について予算を計上いたしまして、今後この整備を進めていくということにいたしております。
○児玉委員 定員が約二千五百六十名。それで小規模作業所は、一昨日の御答弁の中で全国約六百カ所、聞いてみますと大体十人ないし二十人、十五人として約九千人。それらをプラスしても、この社会復帰施設で懸命に苦労なさっている方々の数は一万人を幾らか上回る程度でしかない。これは大臣にもよく聞いていただきたいし、大臣のお考えも伺いたいのですが、いまだにこの程度にとどまっている。なぜ施設の整備が進まないのか、原因はどこにあると厚生省はお考えでしょうか。
○谷政府委員 精神障害者の社会復帰施設につきましては、五年前、前回の法改正において初めて法律に規定をされ、そのときからスタートしたということでございまして、歴史的に申せば、まだ五年しかたってないわけでございます。先ほど来の御質疑にもございましたが、私どもとしても、この整備が非常に重要な課題であるということを認識をする一方、非常に不足をしているということを基本的に認識をしております。
 その原因ということでございますが、やはり幾つかあると思います。私どもが一つ考えなければいけないのは、今まで他の障害者の社会復帰施設にはなかった運営費についての設置者の自己負担というのがあった。これは非常に大きな隆路であったと思います。それから、これも再三申し上げているところでございますが、何といっても精神障害者に対する国民の理解あるいは地域の理解というのが現実にはなかなか進んでいない。いざ施設をつくろうと思うと、そこの場でなかなかうまくいかない場合があるというような話も具体の例として伺っているところでございます。そういうようなことが一つの問題としてあったというふうに思っております。
 おかげさまでこの設置者負担につきましては、平成五年度におきまして地方交付税によって手当てをしていただきまして、運営費の負担というのが解消されたわけでございますので、私どもとしては、この問題については、これを契機としてさらに積極的な設置の促進ということを進めてまいりたいと思いますし、もう一つの国民の理解あるいは地域の理解ということについては、これも広く精神障害者の問題を正しく理解をしていただく、あるいはそのための知識の普及なり啓発活動を積極的に進めていくということをやっていく所存でございます。
○児玉委員 今のお答えの中で、私はこういうふうに言いたいと思うのですね。援護寮や福祉ホーム、授産施設、それぞれ今社会が求めているものについて厚生省は探り当てていらっしゃると思うのです。それから福祉工場については、この後どうなっていくか注目しています。ぜひ厚生省の手厚い援助をお願いしたいと思うのです。
 それでもなおかつ十万人を超えると私などは思っている、受け皿さえあれば退院できる方々をしっかりと支える施設をつくっていく場合に、国と都道府県は社会復帰施設の整備目標をこの際設定する必要があるのじゃないか。内容の問題はともあれ、厚生省としてはゴールドプラン、十カ年計画というのを出して、そこで施設についても目標を設定したという経験をお持ちです。この分野においても国、都道府県が整備目標を定めてはどうか。そして、その整備目標に向けて年次的に到達していくプログラムをつくる、これが今非常に求められていると思うのですが、いかがでしょうか。
○谷政府委員 社会復帰施設の整備につきましては、私ども基本的には、地方公共団体がそれぞれの地域の実情に応じて適切に推進をする、設置をしていくということが基本だろうというふうに考えておりまして、そういう意味で、国において一律に計画を作成するということではなくて、地方公共団体における自主性あるいは自立性を尊重しつつ進めていきたいと考えております。
 また、これも先ほど来申し上げていることでございますが、いわゆる二次医療圏ごとにつくります地域保健医療計画の中には、この精神障害者に対する社会復帰対策というものも盛り込むように指導をしておりますので、こういうことも含めて、地域の実情に応じたきめ細かい社会復帰施設の整備というものが推進されますよう、地方自治体を指導していきたいと思っております。
○児玉委員 全国のすべての市区町村に、福祉工場を含めて四つの施設を設置してほしいという強い声がありますね。それで、皆さん方が高齢者の対策でとられた手法というのをこの分野でもとる必要があるだろう。そういう意味で、私は目標の設定と年次的なそこへの到達努力を検討していただきたいと思うのですが、どうですか。
○谷政府委員 国として社会復帰施設の整備計画を作成するということにつきましては、先ほど来御指摘がありますように、また私もお答えを申し上げておりますように、まず何といっても全体が余りにも不足をしているということがございます。そういう意味で、今後都道府県など地方公共団体の対応ぶりあるいは意見なども幅広く伺いながら、今後の検討課題とさせていただきたいと思います。
○児玉委員 次に、仕事の確保、保障の問題です。
 一つ私は好ましい実例を申し上げたいのです。北海道の名寄市、ここに精神障害者の社会復帰施設であるみどり丘授産所というのがあります。援護寮に十名が入っており、適所者が三十二名です。平常の場合、ハチみつの瓶詰だとか木工などの作業をやっています。不況のもとで仕事が少なくなっているし、単価がどんどん厳しくなっている。
 そういう中で、名寄市社会福祉協議会などとも相談されてのことなんですが、除雪について市がこのみどり丘授産所の独居老人に委託をして、指導員が一名と適所の方五名がトラックに乗って巡回して、除雪、排雪をしている、こういう例があります。
 そして、それがなかなか好評であるというので、最近、市内にある大きな公園、十二万平米あります、そして池があります、この公園の管理を授産所に委託をしたのですね。常時三人ないし四人の人がこの授産所の職員と一緒に草刈り、清掃、池の安全管理からハチの巣の撤去まで行って、名寄市としても一定の金額を予算の中に盛り込んでいます。現状はどうかと聞いたら、満足している、よくやってもらっている、こういうふうに言うのです。そして授産所の方の評価を聞いたら、本格的な就職への移行期の障害者にとって非常にありがたい機会だと言われるのですね。こういった実例は北海道の各地にありますし、全国にもあります。
 そこで、私は、今度の改正案の第二条の三、社会復帰施設と地方自治体、国との相互連携を進めていくという立場から、今述べた名寄市のようなケースを、言ってみれば厚生省がイニシアチブをとって、とりあえず国の直轄事業の分野だとかそういったところで同様の道を開いていく、この点で厚生省の努力をお願いしたいのですが、大臣、いかがでしょう。
○丹羽国務大臣 精神障害者の社会復帰の促進を支援するために、授産施設などにおいて、景気などの波を受けないで毎日の仕事を確保するということは、大変重要なことだと認識をいたしております。
 このため、ただいま先生からも御指摘がございましたように、今回の法改正に当たりましては、新たに国、地方公共団体、さらに社会復帰施設の設置者などが精神障害者の社会復帰のために「相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。」こういうような努力規定を明記しておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、今後障害者の方々が仕事を確保できますように、地方公共団体を適切に指導していく決意でございます。
○児玉委員 終わります。
○浦野委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。
○浦野委員長 この際、本案に対し、持永和見君外四名から修正案が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。持永和見君。
 
 精神保健法等の一部を改正する法律案に対する修正案
 精神保健法等の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
 附則第一条ただし書中「附則第五条」を「附則第六条」に改める。
 附則第七条を附則第八条とし、附則第三条から第六条までを一条ずつ繰り下げ、附則第二条の前の見出しを削り、同条中「第一条の規定による改正後の精神保健法」を「新法」に改め、同条を附則第三条とし、同条の前に見出しとして(経過措置)を付する。
 附則第一条の次に次の一条を加える。
 (検討)
第二条 政府は、この法律の施行後五年を目途として、第一条の規定による改正後の精神保健法(以下この条及び次条において「新法」という。)の規定の施行の状況及び精神保健を取り巻く環境の変化を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
 
○持永委員 ただいま議題となりました精神保健法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、私は、自由民主党日本社会党・護憲民主連合、公明党国民会議日本共産党及び民社党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、政府は、この法律の施行後五年を目途として、改正後の精神保健法の施行の状況及び精神保健を取り巻く環境の変化を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。
 以上であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
○浦野委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
○浦野委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、持永和見君外四名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○浦野委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。
 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○浦野委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
○浦野委員長 この際、本案に対し、持永和見君外四名から、自由民主党日本社会党・護憲民主連合、公明党国民会議日本共産党及び民社党の五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。網岡雄君。
○網岡委員 私は、自由民主党日本社会党・護憲民主連合、公明党国民会議日本共産党及び民社党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    精神保健法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、精神障害者ノーマライゼーションを推進する見地から、次の事項につき、適切な措置を講ずるべきである。
 一 精神障害者の定義については、国際的な疾病分類に準拠したものであることを周知徹底するとともに引き続き検討を行うこと。
 二 精神障害者を抱える保護者に対する支援体制を充実するとともに、今後とも公的後見人を含めて保護者制度の在り方について検討すること。
 三 精神障害者の社会復帰を推進するため、社会復帰施設、地域生活援助事業、小規模作業所等に対する支援の充実を図ること。
 四 精神保健におけるチーム医療を確立するため、精神科ソーシャルワーカー及び臨床心理技術者の国家資格制度の創設について検討するとともに精神保健を担う職員の確保に努めること。
 五 精神障害者に関する各種資格制限及び利用制限について今後とも引き続き検討すること。
 六 社会保険診療報酬の改定に当たっては、精神障害者の社会復帰を促進するという観点や精神病院等の経営実態等を踏まえ、必要に応じ、所要の措置を講じ、その経営の安定等が図られるよう努めること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○浦野委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 持永和見君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○浦野委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。
 この際、丹羽厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。丹羽厚生大臣
○丹羽国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。

第126回衆議院 本会議会議録第31号(平成5年6月4日)
○浦野烋興君 ただいま議題となりました精神保健法等の一部を改正する法律案について、厚生委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、精神障害者の社会復帰の一層の促進を図るとともに、その人権に配慮しつつ適正な医療及び保護を実施するため、精神障害者地域生活援助事業、精神障害者社会復帰促進センター、仮入院等に関して所要の措置を講じようとするものであり、その主な内容は、
 第一に、医療施設の設置者等は、精神障害者等の社会復帰の促進を図るため、地域住民等の理解と協力を得るように努めること、
 第二に、精神障害者の定義を「精神分裂病、中毒性精神病、精神薄弱、精神病質その他の精神疾患を有する者」とすること、
 第三に、都道府県、市町村、社会福祉法人等は、精神障害者地域生活援助事業を行うことができること、
 第四に、保護義務者の名称を「保護者」に改めるとともに、仮入院の期間の限度を一週間とすること、
 第五に、厚生大臣は、精神障害者の社会復帰の促進を図るための訓練等の研究開発等を行う民法法人を、精神障害者社会復帰促進センターとして指定することができること、
 第六に、指定都市においては、都道府県が処理することとされている事務等を処理するものとすること、
 第七に、栄養士、調理師、製菓衛生師等の免許等について、精神障害者であることを相対的欠格事由等とすること等であります。
 本案は、五月二十五日付託となり、同月二十六日の委員会において丹羽厚生大臣から提案理由の説明を聴取し、本日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、自由民主党日本社会党・護憲民主連合、公明党国民会議日本共産党及び民社党より、本法の施行後五年を目途として検討を行う等の修正案が提出され、採決の結果、本案は五派共同提出の修正案のとおり全会一致をもって修正議決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告を申し上げます。(拍手)
○議長(櫻内義雄君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(櫻内義雄君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。