精神医療に関する条文・審議(その60)

前回(id:kokekokko:20050722)のつづき。初回は2004/10/28。
平成5年改正の審議のつづきです。

第126回参議院 厚生委員会会議録第12号(平成5年6月8日)
○委員長(細谷昭雄君) 精神保健法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。丹羽厚生大臣
国務大臣丹羽雄哉君) ただいま議題となりました精神保健法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 精神保健対策につきましては、昭和六十二年の精神衛生法の改正後、さまざまな改善が見られるところでありますが、今日なお、精神障害者等の社会復帰の一層の促進を図るとともに、精神障害者の人権に配意しつつその適正な医療及び保護を実施することが重要な課題となっております。
 こうした状況を踏まえ、今般、精神保健法その他の関係法律を見直すこととし、この法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、精神障害者に対し、地域において共回生活を営むための援助を行う地域生活援助事業を法定化し、あわせて社会福祉事業として位置づけることとしております。
 第二に、厚生大臣が指定する法人に、精神障害者の社会復帰の促進を図るための訓練指導等に関する研究開発等を行わせることとしております。
 第三に、仮入院の期間の限度を一週間に短縮することとしております。
 以上のほか、大都市の特例の創設、精神障害者に係る資格制限の見直し等を行うこととしております。
 なお、この法律の施行期日は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において、政令で定める日としておりますが、大都市の特例に係る事項は平成八年四月一日としております。
 以上がこの法律案の提案の理由及びその内容の概要でありますが、この法律案につきましては衆議院において修正が行われたところであります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○委員長(細谷昭雄君) 次に、本案の衆議院における修正部分について、衆議院厚生委員長浦野烋興君から説明を聴取いたします。浦野君。
衆議院議員(浦野烋興君) 精神保健法等の一部を改正する法律案に対する衆議院の修正部分について、その内容を御説明申し上げます。
 修正の要旨は、政府は、この法律の施行後五年を目途として、新法の規定の施行の状況及び精神保健を取り巻く環境の変化を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。
 以上であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(細谷昭雄君) 以上で趣旨説明の聴取及び修正部分の説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ります。
 本日はこれにて散会いたします。

第126回参議院 厚生委員会会議録第13号(平成5年6月10日)
○委員長(細谷昭雄君) 精神保健法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○今井澄君 おはようございます。
 今般提出されております精神保健法改正案につきまして質問をさせていただきたいと思います。
 この精神保健法は、昭和五十九年に報道をされました宇都宮病院事件など大変な人権侵害の事件あるいは殺人にも匹敵するような事件、さらに昭和六十年には国際法律家委員会等のNGOの合同調査団が日本に来るという、そういう経緯の中で精神衛生法から精神保健法への抜本的な改正がなされてきたという経緯があると思いますし、そういう過程で昭和六十一年には公衆衛生審議会精神衛生部会の方から中間メモというのが出されて、この法案が成立したと思います。その中には、昭和六十二年時点での法律改正で十分対処し切れないということも既にわかっていて、五年後の見直しということが附則で規定されていたわけです。
 最初に、大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、そういった経過で改正された精神保健法のもとでの精神保健あるいは精神医療行政がこの五年間にどういうふうに前進したのか、あるいはどの点で不十分であったのか、また不十分であった点があるとすればそれはどこに原因があるのか、それがまた今回の改正で前向きに進むという保証はどういうふうに考えられているのか、そういう点をお聞きいたしたいと思います。
 特に、まず一番目の問題としては、その発端の宇都宮病院事件などに関係するわけですが、入院患者の人権擁護、あるいはさらに、そういう人権擁護の観点から開放処遇ということの重要性というのがこの間指摘されてきたと思いますが、その点についてはどうなのかということ。
 それから二番目には、社会復帰の促進、推進ということがうたわれてきたわけですが、その辺ではどういう前進があったのか、あるいは不十分さが残っているのか。また、社会復帰という場合は家族への支援の問題もあるわけですので、この点。
 それから三番目には、これは施設内医療あるいは社会復帰を含めてですが、精神医療を充実するためには精神科ソーシャルワーカーとか心理療法技術者等の養成あるいはそのための資格制度の整備が必要であるということが既に出されているわけですが、その点についてどうなのか。
 具体的には、この三つの点に触れながらこの五年間の経緯、評価についてお尋ねをいたしたいと思います。
国務大臣丹羽雄哉君) 前回の改正では、精神病院から社会復帰施設へという観点から、いわゆる入院制度の見直しや社会復帰施設の創設を行いました。この五年間で、人権に配慮した精神医療の確保を推し進めてきたところであり、開かれた医療現場に向けて着実に私は前進をしてきておる、このようにまず考えております。
 今回の改正におきましては、これをさらに一歩進め、今度はいわゆる改正の位置づけといたしまして、社会復帰施設から地域社会へ、こういうことでございますけれども、特に社会復帰施設の運営費の設置者負担の解消、グループホームの法定化などの措置を講ずることにいたしております。また、精神科ソーシャルワーカーの国家資格化につきましては、当事者間の話し合いを進め、その実現に努力してまいりたいと思っております。
 残されております課題といたしましては、今お話ししたことにも通ずるものでございますけれども、やはり社会復帰施設というものがなかなか地
域の皆さん方の御理解というものを必ずしも十分に得られにくいような環境にある。それから、先ほど法改正の中で申し上げましたいわゆる運営費の設置者負担の問題、こういうものがネックとなっておりまして、私どもが予定しておりました以上にややもするとちょっとおくれておるというのが厳粛なる事実ではないか、これをさらに進めていく必要があるのではないか。
 それから、保護者義務制度でございますけれども、今度はいわゆる義務という名前を削りました。これは大変大きな意味があるのではないかと思っております。この問題につきましても、いわゆる家族団体の方々と十分にこれから連絡を密にしながら、十分に協議いたしながら保護者制度のあり方について検討を加えていく必要があるのではないか、このように考えております。
 いずれにいたしましても、病院、施設、地域社会を通じ人権に配慮した精神保健が確保されるよう努力していく考え方に立つものでございます。
○今井澄君 確かに、今大臣がお答えになりましたように、入院患者の人権擁護という点では私もかなりの前進をしてきたのではないかというふうに考えるわけですが、しかし、いまだに宇都宮病院事件に近いような事件が散見されるのは非常に残念なことだと思います。
 私も、同僚の参議院議員からついこの四月に相談を受けました。その方の知り合いの二十歳の青年がある病院に入院したと。そうしたところが、大変怖い思いをして退院をしたくなった。なかなか電話もかけさせてもらえなかったんですが、やっと家族と連絡がとれて、私の方へ相談が来ましたので、私は早速――大阪の大和川病院という、かつてから何回も問題を起こしている病院のようですが、大阪府の精神医療人権センターに連絡をとりまして、早速家族同道で行って退院をさせた。言ってみれば救出をしたというふうなことがあったわけです。
 聞いてみますと、どうも宇都宮病院事件のときとは違いまして、暴力的あるいは恐怖支配といいますか患者をおとなしくさせるのは、病院職員の直接の手によるのではなくて、入院している患者の中の牢名主みたいなのが患者の支配をしていたということのようであります。
 そういう病院では、例えば面会制限、これはその病院の面会の写真なんですけれども、「面会日のお知らせ 月曜日から土曜日 十三時半から十五時まで ただし日曜日、祭日は面会できませんので御了承ください。」。これは法的にはどうなのかわかりませんが、やっぱり面会ということになりますと、家族中心にできるだけ日曜、祭日の面会を図るというのは病院側として当然今日本じゅうで行われていることだと思うんです。もちろん、日曜、祭日には病院の職員配置も少なくなるという病院側が手薄になることもございますが、こういう点、一体厚生省としてはこういうことで本当に趣旨が守られているとお考えなのかどうか。
 また、この病院もそうですが、厚生省の調査によりますとたしか電話の設置率が八八%、まだ一二%の精神病院で電話が設置されてないところがあるということです。一体これは放置しておいていいのかどうか。また、その電話もナースステーションの中に置いてあったり、看護婦の目の届く範囲に置いてあって、どうもなかなか電話をかけにくいというふうな状況がある。それから、電話は今テレホンカードという便利なものができているわけですが、十円玉を一つの病棟には毎日五十個とか数を決めて配置して、患者には一個とか二個しか渡さないというふうなこともやっているようでありますが、そういう一般的なことを含め、特にこの大和川病院のことについては厚生省としてもお聞き及びかどうか。
 そして、大和川病院でもう一つ、暴力支配の仲なんですけれども、実は二月に、すぐ近くの病院に大和川病院から救急患者が運ばれて一週間そこそこで死亡したわけです。これは肺炎という名前で運び込まれたわけですが、肋骨骨折や頭蓋骨骨折があったということで死亡した。明らかに大和川病院の内部で暴力事件があったことは間違いないというふうに言われておりまして、家族が告訴をして今裁判が始まりつつある段階だと思いますが、その辺厚生省としてはどうお考えでしょうか。お願いいたします。
○政府委員(谷修一君) まず、御指摘の大阪府大和川病院の事件につきましては、現在大阪府が調査をしております。
 それからまた、今お触れになりました死亡された方の問題につきましては、警察の方が既に捜査をしているというようなことでございますので、具体的な事実関係についてはそれらの調査結果を得た上で私どもとしては判断をしたいと思いますが、この問題については、今先生お触れになりましたような精神病院における問題ということで、私どもも重大な関心を持っているところでございます。
 そのことに関連いたしまして、お話がございました面会の問題あるいは電話の問題については、精神病院の入院患者が外部の者と面会をするということにつきましては、患者と家族あるいは地域社会との接触を保つということによりまして医療上も非常に意味があることだと思いますし、また患者の人権擁護の観点からも重要な意義を持っていると考えております。したがいまして、原則として自由に行われる必要があるということが基本的な原則だと思っております。
 また、電話につきましては、患者の医療あるいは保護に欠くことができない限度での制限が行われることはあるにしても、それは医療上の合理的な理由がある場合に限って行われるべきであるということが原則でございまして、そういう意味で電話機の設置あるいはその設置の場所等につきましても患者が自由に利用できる場所に設置される必要があるということで従来から指導しているところでございます。
 また、今おっしゃいました具体的な話としては、テレホンカードというものが普及をしているわけでございますから、従来のようなコインを使ってやるということではなくて、テレホンカードによる電話の設置が望ましいというふうに考えておりまして、そういう意味で電話の設置につきましても引き続き、まだ若干設置をされていないところがあるということでございますので、設置についての指導は徹底をしてまいりたいと思います。
 それからまた、面会時間の問題につきましても、やはり病院の事情等いろいろな場合があるにしても、外部の方が面会しやすい時間をできるだけ設定をすることが望ましいというふうに考えております。
○今井澄君 電話の問題につきましても、私も現場でいろいろあれしておりまして、躁うつ病躁状態の患者さんが病院がら電話をかけまくって困るということもあるわけですから、医療上必要ないろいろなものがあるにしても、古い考え方でのそういうことについてはさらに御指導をお願いしたいと思います。
 面会の件につきまして一つちょっとお願いしたいことがあるんですが、患者の依頼人である弁護士が面会する際に、弁護士にだれかついていくと、弁護士だけだと限って面会させない病院がまだ幾つも多くあるわけですが、特に、例えば耳の不自由な方の場合には手話通訳がどうしても必要になるわけです。あと、外国人の場合はやはり通訳をするような人も必要になる。今の厚生省の通知等によりますと、弁護士以外は一切病院側の権限で断ることができるというふうになっているようですが、その点、必要な同行者について認めることはお考えになっていないでしょうか。
○政府委員(谷修一君) 患者の代理人である弁護士さんが行く場合、もちろんこれは病院側として断る理由は何もないわけでございますが、どういう方が一緒に行かれるかというそういう個別のケースだろうと思いますけれども、できるだけ患者の人権を擁護するという観点から弾力的な運用を図ってまいりたいと考えております。
○今井澄君 その点は、ぜひそういうことができるように、具体的な例示などを挙げながら通知を出していただければありがたいと思います。
 さて、先ほどの入院患者に対する処遇の問題ですが、いわゆる閉鎖病棟が何もいけないというわけではなくて、閉鎖も必要なわけなんですけれども、実際問題として、現在約三十五万人の入院患者中既に六〇%以上が任意入院という状況になってきているわけです。そういう中で、開放処遇というのがどんどん進められなければならないと思いますが、厚生省の昨年の御発表によりますと、開放率はまだ五八%と聞いておりますし、任意入院患者の五五%がまだ閉鎖病棟で処遇を受けていると聞いております。この点については好ましくないことだと思いますが、厚生省の考え方と今後の方針についてお聞きしたいと思います。また、そういう閉鎖処遇がなぜ任意入院患者の半分以上で行われているのかという理由についてもお聞きいたします。
○政府委員(谷修一君) 現在、精神病院の病棟のうち、二十四時間出入り口に施錠をしている病棟というのは、平成四年六月現在で、先生お触れになりましたように五八%というふうに承知をしております。任意入院の患者については、みずからの同意による入院であるということにかんがみまして、原則として開放病棟での処遇が望ましいという旨を通知等によって明らかにし、そういう方向での指導をしているわけでございますが、一般的に入院患者の処遇というものはその症状に応じてなされるべきであるという考え方から、一律に開放的な環境ですべて処遇することが適当ではないというふうに考えているわけでございます。今後とも、精神病院における開放的な処遇ということにつきましては、今申し上げたような趣旨で開放的な処遇とするように指導をしてまいりたいというふうに思っております。
 一方、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、精神医療の特殊性ということから、入院患者を外部から隔離する必要があるということも事実でございます。そういう意味で、一律に開放病棟を減らしていくのかどうか、それから仮にそういったような施錠された病棟であっても、個々の症状の程度に応じて外出等柔軟な対応をするというようなことも従来から指導しているところでございまして、そういう観点から、今回の法改正に合わせまして改めてこの開放処遇の趣旨を明らかにしてまいりたいと考えております。
○今井澄君 開放処遇が進まないことの理由の一つに、やはり経済的な背景があるのではないかというふうに私は考えるわけですが、それは、療養環境を改善していくことについての十分な施策、経済的な裏打ち、あるいは診療報酬の面でやられてこなかったという点が一つと、もう一つ根本的に大きいのは、職員の配置、特に看護婦の配置を十分にすることがこの間保障されてこなかったという点にも大きな原因があるのではないかというふうに考えております。
 一般病院においては、既に御承知のとおり基本看護が患者四人に対し一人でありますが、精神病院の場合はこれが六人に対して一人ですね。一番最低のその他三種という看護基準、要するに基準とは言いがたいものですが、これが一般病院の場合で患者五人に対して看護職員一人未満、五対一未満という基準になっていますが、精神病院の場合には七対一未満と一般病院に比べて低いところに設定されている。これは、もちろん精神医療の特徴もありますが、しかし一面で見れば、職員の十分な配置というものがないと、治療の問題もそうですが処遇も十分できないのではないか、そういうことも考えられるわけです。
 その点、さきの精神保健法が改正された国会、第百九国会の参議院社会労働委員会の附帯決議の第四項において、「今回の改正の趣旨、今後の精神医療のあり方を踏まえ、診療報酬の面等において適切な配慮を行っていくこと。」、こういう附帯決議があるわけですが、この点については厚生省としてはどのような努力をされ、どういうふうに成果が上がっているとお考えでしょうか。
○政府委員(古川貞二郎君) 良質な医療を提供していくということは大変大事なことでございますし、そのためには医業経営が安定していく、そのことがよりよい患者サービスにつながっていく、こういうことで大変大事な問題だと私どもは認識しているわけでございます。
 今、看護婦さんの配置の問題もございましたが、診療報酬の改定に当たりましては、私どもは、従来から精神医療の専門性等にかんがみましていろいろ必要な措置を講じたところでございますが、昨年の四月の改定におきましては、医学的な判断のもとで患者の病状に応じまして患者の早期退院とかあるいは社会復帰を促進する、そして患者さんの福祉の向上を図る、こういうふうな観点から、通院精神療法とかあるいは精神医療の専門性を評価するというようなことで対応したほかに、お尋ねの良質な看護サービスの安定的効率的供給というような観点から看護料の大幅な引き上げを行うなどの措置を講じたところでございます。
 具体的に申し上げますと、通院精神療法の引き上げとか入院精神療法の引き上げ、あるいは精神科デイケアの引き上げ、結核・精神符二類看護料の引き上げ、結核・精神符一類看護(II)の新設等の措置を講じたところでございまして、今後とも私どもは、患者の早期の退院とか社会復帰の促進とかあるいは医業経営の安定というようなことの観点から、現在、六月実施中でございます医療経済実態調査等の結果を踏まえまして、中医協の御議論を踏まえて対応していきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
○今井澄君 精神医療と身体医療、同じ身体医療でもまたまた老人医療、救急医療、いろいろありますので一概には言えませんけれども、精神病院における職員配置の低さという問題、例えば医師について見れば一般病院は百床当たり十人を超えているわけですが、精神病院では非常勤を含めて一・八人とか、看護職員も半分以下というこういう状況。これは、もちろん医師の科による偏り、不足とか、看護婦不足、この辺の問題も一方にあるわけですが、やはり経済的な問題、病院経営上の問題というのが非常に大きいと思います。
 今厚生省の方から努力をされているという御答弁があったわけですが、しかしなお精神病院の経営というのは非常に困難であって、職員を十分抱えられないという現状があるのではないかと思います。
 去る六月二日の衆議院厚生委員会において、網岡委員の質問に対して古川保険局長は、中医協の経済実態調査では百床当たりの収支差額が一般病院では十六万二千円プラスになっている、それに対して精神病院では八十万五千円プラスになっていると答弁されたと思うんです。この答弁を拝見いたしますと、精神病院の方が一般病院よりもずっと経営状態はいいんだということになると思うんですが、これは病院全部ひっくるめるとそういう数字が出ているのは確かでありますけれども、この答弁は大変誤解を与えるんではないか。
 というのは、精神病院には法人病院、個人病院が大変多いわけです。法人病院、個人病院は赤字にならない努力をせざるを得ないわけで、何とか総体としてこういう結果が出ている。だけれども、一般病院には公立病院、国立病院という大変赤字でやっている病院が多いんで、平均すれば一般病院の方が収支差額はこれより少なく出てくると思うんです。
 そこで、誤解を解くためにも保険局長の方から、法人病院については一般病院と精神病院で百床当たりどうなのか、個人病院ではどうなのか、あるいは公立病院ではどうなのか。その三つ、数字を挙げてお答えをいただきたいと思います。
○政府委員(古川貞二郎君) 御指摘ございましたように、去る六月二日の衆議院の厚生委員会におきましては、一般病院と精神病院の医業収支比較に際しまして個人立とか法人立とかあるいは公立というふうなことを区分しませんで、一般病院総数と精神病院総数の医業収支比較を御答弁申し上げたわけでございます。
 そこで、お尋ねの経営主体別の収支状況について申し上げますと、これは平成三年の中医協、医療経済実態調査によりますが、一カ月の百床当たりの収支状況を見ますと、まず個人の経営する一般病院で申し上げますと、医業収入は六千百六十六万三千円でございます。これに対しまして医業支出は五千五百三十四万三千円ということで、六百三十二万円の医業収益となっております。
 これに対しまして、個人の経営されます精神病院につきましては、医業収入が二千八百六万三千円ということでございまして、これに対しまして二千四百三十万五千円の医業支出がございまして、医業収益は三百七十五万八千円ということになってございます。これを医業収益率で比較いたしますと、一般病院が一〇・三%、これに対しまして精神病院が一三・四%というふうになってございます。
 今は個人でございましたが、医療法人の経営する一般病院につきましては、医業収入は六千三百五十四万円に対しまして、医業支出は六千百四十一万七千円ということで、二百十二万三千円の医業収益がございました。
 これに対しまして、医療法人の経営されます精神病院につきましては、二千七百七十四万六千円の医業収入に対しまして、二千六百六十三万円の医業支出がございまして、医業収益は百十一万六千円ということになってございます。これを医業収益率で比較いたしますと、一般病院が三・三%に対しまして、精神病院は四・〇%、こういうふうになってございます。
 同じく公立の一般病院でございますが、医業収入は九千九万円ということに対しまして、医業支出は九千四百九十五万四千円ということで、医業収支は四百八十六万四千円の赤字となってございます。
 これに対しまして、公立の精神病院では、三千八十四万二千円の医業収入に対しまして、四千百二十六万五千円の医業支出がございまして、医業赤字額は一千四十二万三千円というふうになってございます。これを医業収益率で比較いたしますと、一般病院はマイナス五・四%に対しまして、精神病院はマイナス三三・八%というふうな状況になってございます。
○今井澄君 ですから、今の御報告でおわかりのように、一般病院と精神病院とを比べてみますと、法人病院では二百十二万と百十一万、精神病院の方が収支差額は少ない。ほかも全部同じようなことになると思います。収支率でいうと多少いいと、そういうことで、やはり精神病院がこういう状況の中で職員の配置を控えながらやらざるを得ないという現実があると思います。特に今のお話のように、公立の精神病院、これは数は多くはないわけですが、何と百ベッド当たり一千四十二万円もの赤字が出ざるを得ない、出ているという現在の公立精神病院の運営状況、収支比率がマイナス三三・八%、こういうものも、それぞれ事情はあるでしょうが、改善の方向をぜひお願いしたいというふうに考えます。
 そういう状況の中で職員の充足ということが必要なわけですが、特に精神病院における医療の質の向上、それから社会復帰施策の推進、そしてまた今回保護義務者制度が保護者制度というふうに一定の方向は出ておりますが、しかしまだ根本的に改善されていない。こういうものを改善する上でも、こういう精神医療に係る専門家の養成が非常に大事だと思います。その点について、臨床心理技術者及び精神科ソーシャルワーカーの国家資格制度について厚生省としてはどのようなスケジュールあるいは見通しで進めようとしておられるのか、お答えをいただきたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 精神科ソーシャルワーカーにつきましては、この法案を作成するに当たりましてもとになりました公衆衛生審議会の意見書の中でも、やはり精神医療について今後チーム医療というものをやっていかなければいけないということの一環として、それに関連したマンパワーと申しますか専門職の一つとして、臨床心理技術者それから精神科ソーシャルワーカーの国家資格制度の創設が必要であるという御意見をいただいているところでございます。
 これらの資格のあり方あるいは資格の問題につきましては、現在関係者の間での意見調整をしているということでございまして、私どもとしては、この関係者の間での合意が整えば国家資格というものの創設に向けて努力をしてまいりたいというふうに考えております。
○今井澄君 その点について一つ確認しておきたいと思いますのは、関係者というのは、精神科ソーシャルワークをやっておられる関係者あるいは関係団体というふうに理解しますが、それでよろしいのかということ。
 もう一つ、関係者という場合に、医療ソーシャルワーカーの資格問題が大分この間混沌としていると思います。かつては、医療ソーシャルワーカーの資格制度と関連して精神科ソーシャルワーカーの資格制度を考えていたようですが、現在の状況では、MSWの資格制度とは切り離してPSWの資格制度をお考えになっているというふうに確認してよろしいでしょうか。
○政府委員(寺松尚君) 先生の前半の御質問でございますけれども、いわゆる医療関係者、それぞれ団体等がございますので、その辺の意見が中心になってその辺の意見の集約あるいは調整をお願いしておるわけでございます。
 それから、今のメディカルソーシャルワーカーの問題でございますけれども、メディカルソーシャルワーカーの定義の中で、それぞれソーシャルワーカーといいましょうか、その辺との関係で、一方は医療関係職種だというふうにおっしゃる、片方は、いや、広く福祉関係職種で医療も含むと、あるいは医療はむしろ含まないというふうないろんな御意見がございまして、まだ一致になっておりません。そこら辺を私どもぜび調整をお願いしたい、このように言っておりまして、その辺がまとまればやってまいりたい、このように考えております。
○今井澄君 次の質問に移りますが、今回の改正法案の第五十一条の二に、精神障害者社会復帰促進センターというのを全国を通じて一個に限り民法法人を指定する。そして、そこを通じて今後社会復帰促進の事業をやっていくということになっているわけですが、ここで想定している全国を通じて一個に限る民法法人というのは、全国精神障害者家族会連合会、いわゆる全家連と考えてよろしいでしょうか。
○政府委員(谷修一君) 精神障害者社会復帰促進センターにつきましては、今おっしゃいましたように厚生大臣が全国一つの法人を指定するということになっております。これにつきましては、やはりこのセンターの業務あるいは期待される事業というようなことから、精神障害者のことについて十分理解をいただき、また家族との関係についての事業あるいは精神障害者全体についての福祉関係の事業、そういうようなことについて十分御理解をいただける団体であり、かつ実施主体でありますセンターの内容、経営なりあるいは管理、そういったような問題について十分能力がある団体を指定することを考えておりまして、現時点でまだ正式な意味ではどこということは決めておりませんが、今お話のございました団体については、その候補の一つとして想定はいたしております。
○今井澄君 やはり精神医療あるいは社会復帰の問題では、家族が非常に重要な役割を果たすし、また負担も大きいと思います。当事者である家族の方々をそういう精神保健医療施策の中に取り入れていく、役割を一緒に担ってもらうというのは非常に大事なことだからいいことだろうと思いますが、ただ、ここの点で若干の懸念がありますので、御質問をしたいと思います。
 一つは、そういうふうにして社会復帰の広報とかそういう活動だけではなく、研究研修事業もやっていっていただく、その民法法人にやっていただくのはよろしいんですが、そうしますと一つの懸念は、国立の各種の研究センター等があるわけですが、こういうところに対する力がそがれはしないか、民法法人にお任せをすることによってもっと国の研究研修、そういう事業も一方でさらに一層強化をする必要があるのではないかと思うので、この辺で力がそがれるのではないかという懸念を一つ持っております。
 それからもう一つの問題は、日本精神病院協会を初め、これまで専門家の団体が大変な努力をしてきているわけですが、ここで民法法人一つに限るということで、各種のそういった関係団体の自主的、自発的あるいは専門的な活動が何か阻害されていくというか、低く見られていくおそれはないだろうかということが二つ目。
 それから三番目には、法にもきちっとプライバシー保護のことが規定されているから大丈夫だと思うんですが、やはり長年にわたって専門職種の方々が精神科の患者さんのプライバシーの問題は非常に大事だということで取り組んできたわけです。家族の方であればまず問題ないと思いますが、一部には、新たにこういうところで研究研修などをやってデータを集めて調査をするということになって、プライバシーが漏れるおそれはないだろうかというふうな懸念も専門家の間では表明されております。
 この三つの懸念についてお答えをいただきたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 精神障害者の社会復帰に関する研究については、国、具体的には厚生省としても、これまで国立の研究機関、国立の精神。神経センターですとか、あるいは具体的な問題としては、例えばアルコールの問題については国立の久里浜病院というようなところで、精神科デイケアの実施の方法ですとかあるいは家族へのカウンセリングの実施方法ですとか、アルコール依存者の社会援助対策といったようなことについて、それぞれ個別のテーマを設けて研究をしてきたところでございます。
 今、先生お触れになりました社会復帰センターができたからといって、そのような国としての研究機能というものを縮小するとかそういうようなことは全く考えておりません。むしろ、社会復帰センターを設けることによりまして、これらの機関との連携も図りながら研究の充実に努めてまいりたいと思います。また、この社会復帰センターにつきまして、決して他の団体との関係において、他の団体の役割を排除するとかそういうことは全く考えておりませんし、またそういうことがあってはならないというふうに認識をしております。
 また、プライバシーの問題につきましては、先ほど申しましたように、この社会復帰センターにおきましては、精神障害者の社会復帰の促進を図るための訓練あるいは指導等に関する研究開発を行うことを予定しているわけでございますが、その過程においていろんな情報は収集をしなければいけない。しかしながら、センターが収集する情報については、基本的には特定の個人が識別されない情報に限られるものというふうに理解をしております。
 ただ、センターが長期間にわたって研究を続けていく間に蓄積された情報については、外部に漏れることがないよう慎重に取り扱う必要があるということから、法律上、センターの職員等に秘密保持義務を課すとともに、特定情報管理規程の作成を義務づけることにいたしております。
 いずれにいたしましても、社会復帰センターの情報の管理等がプライバシーに配慮して適切に行われるよう指導、監督には十分努めてまいりたいと考えております。
○今井澄君 終わります。
○日下部禧代子君 去る三月二日及び三月二十六日の厚生委員会におきまして、私は精神保健法の改正問題について取り上げさせていただきました。三月二十六日の本委員会におきまして、精神保健法が昭和六十二年に改正されましたときの法附則に基づく見直し作業について、いつ国会に見直し法案が出されるのかということをお伺いしましたところ、運休明け、遅くとも五月じゅうに国会に提出されるというお話でございました。その御答弁のとおりに、予定どおりに出していただきまして、お約束守っていただきましてありがとうございました。まずお礼を申し上げます。
 ところで、今回の改正は、精神障害者の社会復帰の促進を図ると同時に、その適正な医療及び保護を実施するために、精神障害者地域生活援助事業、精神障害者社会復帰促進センターなどに関する事項、仮入院に関する事項を改善するということでございます。
 しかしながら、医療中心主義あるいはまた社会復帰施設から地域社会へというスローガンは立派ではございますが、なかなか中身が追いついていない実態、あるいは主役である障害者自身のインフォームド・コンセントということがまだ確立されていない、あるいはまた身体障害、精神薄弱とばらばらに行われる障害者行政など、問題点はかなりあるように思います。特に精神障害者問題というのは、私は日本社会の文化の程度をはかるメルクマールというふうにも思っております。そういう観点から私は、社会復帰、地域生活の問題あるいは人材確保を中心にして質問させていただきたいと思います。
 まず、最初に大臣にお伺いいたします。
 今申し上げましたように、精神障害者に対する対応というのは、どの社会におきましてもその社会の文化の程度をはかるものだというふうに私は存じておりますが、特に社会復帰の問題について、現状と課題をどのように認識なさっておりますでしょうか。今回の法改正でどのくらい進むことになるのか、そしてまた残された課題は何なのか、その点につきまして大臣の御見解をまず伺いたいと存じます。
国務大臣丹羽雄哉君) 前回の改正では、精神病院から社会復帰施設へという観点から、任意入院制度の導入、さらに精神医療審査会制度の設置などいわゆる入院制度の見直しを行いました。さらに、社会復帰施設の創設を行い、この五年間、人権に配慮した精神医療の確保を推し進めてきたところであります。
 今回の改正におきましては、これをさらに一歩進めまして、社会復帰施設から地域社会へと、こういう新しい流れをつくるために社会復帰施設の運営費の設置者負担の解消、グループホームの法定化などの措置を講じております。
 残された今後の課題でございますけれども、公衆衛生審議会等でも指摘されておるわけでございますが、精神障害者に対するインフォームド・コンセントの問題、さらに、先ほどから御質疑を賜っております臨床心理技術者などに対する国家制度化の問題、さらに保護義務者制度のあり方、こういった問題が今後の課題だと認識いたしているような次第であります。
○日下部禧代子君 三月の公衆衛生審議会の意見書のうち、今回の法律改正で実施されるもの、その後の政令、省令等で改正されるもの、残るものに分けてお答えをいただきたいと存じます。
○政府委員(谷修一君) 今回の法改正におきまして法案に盛り込んだ事項は、すべて公衆衛生審議会の意見書を踏まえたものでございますが、審議会の意見書のうち法律改正に係るものにつきましては、今大臣からもお話ございましたとおりでございますが、一つは、仮入院制度の問題、法定施設外収容禁止規定の削除の問題、生活援助事業、いわゆるグループホームを法定化するということ、精神障害者の社会復帰に関する調査研究を行うためのセンターを指定するということ、資格制限の緩和と申しますか、栄養士あるいは調理師等についての資格制限を従来の絶対的欠格事由から相対的な欠格事由に改めるという問題、それから地方の精神保健審議会において精神障害者の社会復帰の観点を含めた審議を行うということから、社会復帰に経験のある方を委員として加えるといったようなこと、また、精神障害者の社会復帰の促進等を図るために医療施設、社会復帰施設、行政機関等の連携体制ということについての規定を盛り込むといったようなことでございます。
 それから、前回改正時からの宿題となっておりました課題につきましては、一つは、大都市特例の問題について今回の法律に盛り込んだということ、それから精神障害者の定義を法律事項としてこの意見書の中から法律の改正として取り上げております。
 なお、保護義務者制度につきましては、先ほど大臣もお答えをされましたように、名称について義務ということを現在の時点であえて強調する必要がないということから、保護者というふうに改めることにしたところでございます。
 なお、今先生お触れになりました運用等の問題でございますが、幾つか申し上げますと、一つは、入院等の告知文書についてでございますが、今後、法律改正後、改めて運用によってやってまいりたいと思っておりますのは、外国語による告知文書を作成する、外国人の入院患者に対する告知を円滑に行うということが一点。精神医療審査会につきましては、それぞれの地方の実態に合わせて合議体の活用を促進するということ、それから精神医療審査会の審査結果についてできる限り理由を付記するとともに、可能な限り参考意見を付すといったようなことを今後運用としてやってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○日下部禧代子君 大臣もお触れになりましたけれども、インフォームド・コンセントの問題は、これは外国人に対しては行うということでございますか。
○政府委員(谷修一君) 失礼しました。
 残された課題ということについて申し上げなかったんですが、残された課題としては、先ほどちょっと触れましたが、保護義務者制度については今後改めて引き続き検討するということ、先ほど大臣もお触れになりましたが、臨床心理技術者等の資格化の問題、それからインフォームド・コンセントについても研究をするということになっております。
 今私が申し上げました外国人に対する入院の告知の問題は、インフォームド・コンセント、入院の際の告知を外国人についてもわかりやすいと申しますか、その人のわかる言葉でやるということが国連原則にたしか書かれていると思いますので、そういう趣旨から外国語の告知文書といいますかそういうものを作成をしていきたい、そういうことでございます。
○日下部禧代子君 その他、例えば任意入院の拡大とか施設運営の利用者負担の軽減、あるいは小規模作業所への援助の拡大、先ほど今井さんもお触れになりましたが、国家資格などについてはどういうことになりますでしょうか。
○政府委員(谷修一君) 社会復帰施設の運営費に係る設置者負担につきましては、平成五年度の予算編成におきまして地方交付税によって手当てをするということによりまして解消が図られたわけでございまして、今後この趣旨をさらに徹底をしていきたいと考えております。
 それから、小規模作業所の問題につきましては、六十二年から新しい補助制度をつくったわけですが、小規模作業所の数が非常にふえてきているということから、この予算の獲得ということには引き続き努力をしていく所存でございます。
 あと、任意入院の問題でございますが、これは精神医療におきまして任意入院制度というのが基本だという認識を持っておりますので、開放処遇ということとあわせて任意入院制度の運用が適切に行われるよう指導してまいりたいと思います。ただ、精神医療の場合には、やはり精神医療の特殊性と申しますか、そういうことから何らかの形で制限をする、あるいは本人の同意がなくても入院させる、してもらうといいますか、そういう制度も必要でございますので、そういうこととあわせて入院制度の適切な運用ということは引き続き指導してまいりたいと思っております。
○日下部禧代子君 もう一つ御質問を申し上げております。今井さんもお触れになりましたけれども、国家資格の問題、従事職員の国家資格などについては。
○政府委員(寺松尚君) 今先生の御質問の件、精神病院に関係いたします関係職種はいろいろ御承知のようにございますが、その中で資格制度がないものが御指摘のようにございます。その辺につきましては、それぞれ検討会をつくりまして、臨床心理技術者なんかの場合には検討会をつくってその業務指針だとかどの程度配置するかというような御議論もしていただくことになっておりますが、要は関係団体間の意見がまとまっていただくことがこういう職種をやっていきます場合に非常に大事なことでございまして、その辺の調整に時間がかかっております。それぞれの御主張がいろいろございまして、それらがうまくなかなかいかないというのがおくれておるところでございます。私どもも何とかその辺の意見をまとめていただきたい、こういうふうなことを強くやっていくつもりでございます。
○日下部禧代子君 次に、社会復帰施設についてお伺いいたします。
 特に、社会復帰ということが強調されるようになりますと、これは世界的な流れでございますが、社会復帰の受け皿というものがなければ社会復帰ということはただ単にスローガンに終わってしまうわけでございます。大変な重要なことだと思います。
 その社会復帰施設でございますが、種類別あるいは都道府県別の設置状況というものを見ますと、例えば平成五年度で、援護寮が四十九カ所、福祉ホームが六十七カ所、適所授産所が五十四カ所、そして新しくできました入所授産施設が全国で二カ所でございますね。この数字を見ておりますと、例えば援護寮未設置の県が十九県ですか、それから福祉ホームは未設置県が十六、適所授産所は十八未設置県がございます。そして、新しくできた入所授産施設というのは設置されている県がたった二カ所、二つの県だけだということになります。まず、これはまだ量的にも少ないというふうに私はこの数字を理解いたしましたし、そしてまた地域偏在というのがかなりあるようにも思います。
 それから三点目には、この施設の設置主体というのは医療法人立のものが非常に多いと私は理解しているわけでございますが、社会復帰施設の整備状況を厚生省はどのように評価なさっているのでございましょうか。
○政府委員(谷修一君) 社会復帰施設の種類別の箇所数は今先生がお触れになったとおりでございます。
 社会復帰施設につきましては、前回の法改正時に初めて法律において規定をされたわけでございまして、この五年間、私どもとしてもこの整備促進というのが非常に重要な課題だということで進めてきたつもりでございますが、現実の問題としてまだまだ量的に不足をしているということは率直に認めざるを得ない事実だと思っております。
 その原因は幾つかあると思いますが、やはり一つは、先ほどもちょっと申し上げましたが、従来、他の障害者の社会復帰施設にはなかった運営費についての四分の一の自己負担、設置者負担というのがあったということが非常に大きなネックだったというふうに思います。それから、やはり精神障害者に対する国民の理解と申しますか、あるいは地域の理解というのがまだ必ずしも十分でないといったようなことによって必ずしも整備が進んでこなかったというふうに私どもは考えております。
 運営費についての設置者負担については、先ほど申しましたように平成五年度から地方交付税によって措置をしていただきまして、その負担が解消されたということでございますので、今後、こういったようなことをばねにして社会復帰施設の整備が促進をされるというふうに期待をいたしております。また、精神障害者の社会復帰の促進に向けては国民の理解と協力ということがどうしても必要でございますので、そういったような面においてさらに御理解をいただくよう努めてまいりたいと思っております。
 なお、地域偏在のことをお触れになりましたが、これは率直に申し上げて、地域偏在というよりはまだ絶対的な数が不足をしているということでございますので、偏在をしているとかしていないということ以前の問題だというふうに、まことに残念なことでございますが、私はそういう認識をいたしております。
 なお、医療法人が多いということでございますが、精神障害者の社会復帰施設というものが精神障害者の医療との兼ね合いにおいて、医療と密接に関係している部分があるというようなことから、医療法人が設置をする場合が比較的今までは多いんではないかというふうに考えております。
○日下部禧代子君 その点に関しまして、治療を受け終わって病院から出て社会復帰をするというそういう意識がなかなか持ちにくいんじゃないでしょうか。まだ自分は病院の中にいるんだ、まだ治療を受けているんだという意識、そういったものがずっとつながるということは、自分が社会に戻ってきたという意識をかなり薄めていくものになるんじゃないかなという気がいたしますけれども、その点どのようにお考えでいらっしゃいますか。
○政府委員(谷修一君) あるいは、患者さんといいますか障害者の方の意識としてそういうことがあるかもしれません。その辺は個別の問題でございまして一概に言えないと思いますが、もちろん、私どもとしては医療法人だけがやるということを想定しているわけではございませんので、当然、他の障害者の施設と同じように社会福祉法人におかれましてもこの分野にぜひこれから大いに参入をしていただきたいということは期待をいたしております。
○日下部禧代子君 そのための方策は何か考えていらっしゃいますか。
○政府委員(谷修一君) 先ほど申しましたような他の障害者には見られなかった運営費の設置者負担というのは解消されたわけでございますし、それとあわせて、先ほど申しましたように、精神障害者の社会復帰についての国民の理解なり関係者の理解というものを得られるよう、今回の改正に合わせまして改めて趣旨の徹底ということはやってまいりたいと思っております。
○日下部禧代子君 今、局長もお認めになりましたように絶対数が少ないということでございますが、設置が非常に進まないというのは、やっぱり国庫補助が少ないということも非常に大きな原因ではないかと思うんです。
 施設整備費につきまして、今御答弁がございましたように、相当の改善はございますが、他の障害関係施設と比べると、例えば基準面積が狭いとか整備単価が低いというふうな疑問もまだ残るわけでございます。また、運営費につきましても、例えば適所授産にいたしますと、一人当たりの補助単価が引き上げられたとはいいますが月約七万円強、身体障害者の十一万円、あるいは精神薄弱者の十二万円と比べるとかなり低いように思うわけでございますが、今私が指摘いたしました数字でよろしゅうございますでしょうかちょっと御確認いただきたいと存じます。
○政府委員(谷修一君) 今おっしゃいましたのは運営費だったと思いますが、施設事務費について申しますと、身体障害者の更生施設が定員一人当たり約七十万円、それから精薄の入院施設について二百十万円、精神障害者援護寮について百十万円と承知をしております。
 今お触れになったのと違う……
○日下部禧代子君 ちょっと違うんです。例えば適所授産ということで私が申し上げたわけでございますが、私が申し上げたいのは、やはり身体障害者あるいは精神薄弱者に比べると精神障害者の場合低いのではないかということをお尋ねしているわけでございます。
 その例といたしまして、適所授産の場合、一人当たりの補助単価が月約七万円強、身体障害者の場合の約十一万円、精神薄弱者の場合の十二万円と比べると低いのではないかということを私申し上げたわけでございますが、いかがでございましょうか。
○政府委員(谷修一君) まず、社会復帰施設につきましては、施設整備費につきましては補助率あるいは補助額の算定に当たっての基準の単価というものは、精神障害者の社会復帰施設と他の社会復帰施設ともに同一でございます。ただ、運営費について、もちろん補助率は同一でございますが、定員一人当たりの事務費につきましては、それぞれの施設を利用する障害者の個々の特性と申しますか、それに応じて職員の配置の数が異なっているというようなことから、施設ごとに異なる状況になっております。
 ただ、いずれにいたしましても、精神障害者の社会復帰施設の運営が適切に行われるよう必要な予算の確保ということは私ども努めてまいりたいと考えております。
○日下部禧代子君 それでは、精神障害者の場合の施設整備・運営費について、他の社会福祉施設とはどういうところが違いがあるのか、その違いを御説明いただきたいと存じます。
○政府委員(谷修一君) 基本的な考え方は、今申したように施設整備費については補助率とか基準単価と申しますかそういうものは他の障害者の施設と精神障害者の施設は同じでございます。運営費については、結局職員の配置の数というものがそれぞれの施設によりまして、障害者の特性と申しますかそういうことから変わっておりますので、それによって施設ごとに今お触れになりましたような形で違うものになっているということでございます。
○日下部禧代子君 その運営費につきましては、四分の一の設置者の自己負担がなくなったということでよろしゅうございますね。
○政府委員(谷修一君) 平成五年度からそのようなことでございます。
○日下部禧代子君 確かにそれは非常に前進だと思いますが、他の社会福祉施設のように、あるいはまた措置費並みに引き上げるということはできないんでしょうか。また、これは補助金というのではなくて、いわゆる国庫負担というふうな形にはできないものでございましょうか。
○政府委員(谷修一君) 精神障害者の社会復帰施設は、いわゆる措置という考え方ではなくてあくまでも利用施設という形で運営をいたしておりますので、今お触れになりましたいわゆる措置施設というか措置費で対応するということは考えておりません。
 ただ、先ほど来触れておりますように、基本的な補助の考え方と申しますか、施設当たりの補助率とかそういうことについては他の障害者施設と考え方は同じにやっているつもりでございます。
○日下部禧代子君 今申し上げました最後の御質問は、いわゆる補助をするというんじゃなくて全面的に国庫負担とはならないかということを伺っているわけです。
○政府委員(谷修一君) この制度、社会復帰施設の運営というものは、地方自治体立の場合には地方自治体、あるいは医療法人、社会福祉法人が実施主体であるということをあくまでも基本にいたしておりますので、国が国庫によって国の事業としてこれを行うということは現在考えていないところでございます。
○日下部禧代子君 大臣にお伺いいたしますけれども、今局長もお認めになりましたように、量的にまだまだ絶対数が不足であるということでございますが、このような社会復帰施設の整備状況が悪いというのは、根本的な対策を立てていないからじゃないかと思うわけでございます。高齢者の場合にはゴールドプランというふうな施設整備年次計画がございますが、このようないわゆる施設整備年次計画を策定するお考えは全くございませんでしょうか。
国務大臣丹羽雄哉君) 先ほどから、障害者の社会復帰の促進を図る上で社会復帰施設の重要性というものについて御指摘を賜っておるわけでございます。
 私どもといたしましては、地方公共団体がそれそれの地域の実情に応じて適切に推進する必要がある、こういうような観点に立ちまして、これまでは地域における社会復帰対策のあり方につきましては、いわゆる二次医療圏ごとに作成する地域保健医療計画において盛り込むよう各都道府県を指導してきたところであります。
 今回の法改正を契機にいたしまして、地域の実情に応じたきめの細かな社会復帰の整備が一層推進されるように指導してまいりたいと思っておりますが、先生の御指摘の年次計画につきましては、率直に申し上げまして、まだまだ量的にも質的にもいろいろな面で検討課題はありますけれども、今後の検討課題にさせていただきたいと思っております。
○日下部禧代子君 やはりその計画というのは、ただ理念だけではなくて、福祉、医療、保健、社会参加というふうなことも含んだ具体的な実施の場面における計画が必要なのではないかということを強調させていただきます。
 次に、病院から社会に復帰した場合に、社会で活躍するためには職場の確保が重要なことだろうと思うわけでございます。そこで、精神障害者の社会復帰を図るための施策、事業といたしまして、通院患者リハビリテーション事業というのがございますが、その実態はどのようになっておりますでしょうか。今どのくらいの方が利用なさっているのか、今後の見通しについてもお尋ねしたいと存じます。
○政府委員(谷修一君) 通院患者リハビリテーション事業でございますが、御承知のように、これは症状が回復して病院に通院をしている精神障害者を一定期間事業所に通わせて社会適応訓練を行いまして、精神疾患の再発の防止あるいは社会的な自立を促進するということを目的といたしておりまして、いわゆる医学的なリハビリテーションの一環として行われているわけでございます。
 それで、これにつきましては、平成三年度でございますが、千四百六十四の事業所に御理解をいただきまして、約二千五百人の方を対象として事業を実施していただいているところでございます。
○日下部禧代子君 いろいろと評価の仕方がございますが、二千五百人という対象の数は、これは多いとは言えないと思います。利用者が非常に少ないということはどういうところに起因しているのか。それからまた、これは受け入れ体制、事業主の問題もあると思うんですが、事業主に対する委託費は協力奨励金ということで一人当たり一日二千円ということでよろしゅうございますか。この二千円という奨励金を増額することはお考えの中にございませんでしょうか。それも含めてお尋ね申し上げます。
○政府委員(谷修一君) 通院患者リハビリテーション事業につきましては、昭和六十二年度は事業所が四百七十カ所でございましたけれども、年々増加をいたしまして、先ほど申しましたのは平成三年度の数でございますが、平成五年度の予算では二千百カ所の事業所を予定いたしております。
 この問題につきましては、事業所の方の、企業の方の御理解が得られないとなかなかできませんので、今後とも関係の方々の御理解を得るように努めてまいりたいと思っておりますし、先ほど申しましたようなことで、一応事業としてはある程度順調に伸びてきていると私どもは考えております。
 なお、予算の問題につきましては、今後適正に予算が確保されるように努力をしてまいる所存でございます。
○日下部禧代子君 二千円というのは、大体今後ともこの程度で据え置きでございますか。いわゆる事業主に対する奨励金でございます。
○政府委員(谷修一君) これは、他の障害者の事業との並び等を勘案しながら必要な予算の確保はやってまいりたいと思っております。
○日下部禧代子君 それでは、次に労働省にお伺いいたします。
 精神障害者の雇用につきましては、障害者雇用促進法の上ではどのようになっておりますでしょうか。特に、法定雇用率の算定対象というのは、最初は身体障害者のみで、次に六十三年に精神薄弱者も入ったわけでございますが、今、精神障害者の場合は法定雇用率の算定対象になっていますか。
○説明員(北浦正行君) 障害者雇用促進法におきましては、私ども、障害者の種類については特別の限定はいたしませんで、障害のある方で長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な方、その中で働くことができる方につきましては、障害者ということで対処しているわけでございます。
 その中で、精神障害者の対策も講じているわけでございますが、具体的な施策といたしましては、全体的に職業指導あるいは職業紹介、職業訓練などのそういった職業リハビリテーションの措置については法律上の対象となります障害者がすべて受けられる形になっているわけでございます。
 御指摘のございました雇用率制度の問題でございます。雇用率制度につきましては、現段階といたしましては精神薄弱者の方については適用があるわけでございまして、それ以外の精神障害の方は適用の対象になっていない、このような状況になっております。
 ただ、精神薄弱者あるいはそれ以外の精神障害者の方も含めまして、いわゆる助成金制度、納付金制度に基づきます種々の雇用促進のための助成金がございますが、こういったものの対象にはすべてするようにしたわけでございます。特にこの点につきましては、昨年、障害者雇用促進法を改正いたしまして、とりわけ精神薄弱者の雇用率制度適用については他の身体障害者と同様の取り扱いにすること、また、ただいま申し上げましたような広く精神障害者全体につきまして助成金の対象としていく。この場合、精神障害者のうちのいわゆる精神障害が回復をした方々、精神分裂症、躁うつ病てんかんにかかっている方で症状が安定し、就労が可能になった、こういった方々についてはそういった助成金の対象にする、こういった改正を昨年行ったわけでございます。
 御指摘の障害者の雇用率制度の適用につきまして、精神障害者については現段階では適用の対象になっておりません。これにつきましては、私ども、精神障害者の方全体を見まして、医学的な管理も含めまして企業の中での雇用管理のあり方等について必ずしもまだ明確になっていない、あるいはその後その障害が必ずしも安定しない中で、雇い入れ後において障害の状況を継続的に把握していく、雇用率制度でございますからやはり継続した状態が必要でございます。そういったような体制の問題あるいはプライバシーの問題、いろいろ難しい問題がございまして、現段階では雇用率制度の適用の対象になっていない状況でございます。
○日下部禧代子君 御説明ありがとうございました。
 それでは、次に運輸省にお伺いいたします。
 精神障害者の社会参加を促進するために、運賃割引などの措置を図るおつもりはございませんでしょうか。これは薄弱者の場合には運賃割引の制度があると聞いておりますけれども、この点いかがでございますか。
○説明員(浅井廣志君) お答え申し上げます。
 ただいま先生から御指摘をいただきましたとおり、身体障害者の方々それから精神薄弱者の方々に対しましては、JRを初めといたしまして公共交通機関の運賃割引制度がございます。
 この制度の考え方でございますが、これらの方々が日常生活あるいは社会参加のために公共交通機関を御利用いただく際に、身体障害等のために基本的には常時介護者による付き添いを必要とするということがございます。そういたしますと、お二人分の運賃ということで大変過重な負担になるわけでございます。このような点を勘案いたしまして割引制度が実施されているところでございます。
 一方、ただいま御指摘をいただきました精神薄弱者以外の精神障害の方々につきましては、大変病種病態がさまざまであるというふうに私ども考えております。それから、現在実施されております、ただいま御説明いたしました運賃割引制度でございますが、割引による減収分につきましては一般的に他の利用者の負担によって賄うということで実施されているわけでございまして、こういったような公共政策のための費用をほかの利用者の方々に御負担いただくことについてはおのずから一定の限界があるのではないか、このように考えております。
 したがいまして、精神障害者の方々に対する運賃割引の問題につきましては、厚生省を初めとするさまざまな社会福祉政策との関係でございますとか、交通事業者の経営状況等を考慮いたしまして慎重に検討してまいるべき問題ではないか、このように考えております。
○日下部禧代子君 今、利用者の負担とおっしゃいましたけれども、これは行政も含めてでございますが、企業のお立場そのものを象徴的にあらわすことにもなるのではないかと思います。企業の方の責任ということでこの問題に対処することについてどうお考えでいらっしゃいますか。
○説明員(浅井廣志君) これまで身体障害者の方々それから精神薄弱者の方々に対する割引は、先ほど御説明をいたしましたが、非常に公共的な政策という観点で、もちろん各事業者の意見も徴しますけれども、いろいろな交通機関を御利用になるわけでございますので、そういう意味で各交通事業者と私どもよく相談をしながら検討していくべき問題ではないかこのように思っております。
○日下部禧代子君 それは、利用者が負担するということだけではなくて、いわゆる企業の責任という観点からも、障害を持った方たちに対して企業がどういう姿勢を持っているのか、そういうことにもつながってくると思いますので、その点の御指導のほどをよろしくお願いいたします。労働省それから運輸省の方、ありがとうございました。
 次に、文部省にお伺いいたします。
 精神障害者に対する正しい理解を普及する、あるいはまた精神障害者の社会復帰を促進する、そういった意味で、やはり学校教育の場においてもそういった偏見、差別を取り除くための努力というのは大変必要なのではないかと思うわけでございます。その点につきまして、学校教育の中で、特にこの精神障害者問題についての取り組みというのはどのようになっておりますでしょうか、お伺いいたします。
○説明員(河上恭雄君) 御指摘のように、一般の児童生徒を初め、社会の障害者に対する正しい理解と認識を深めるということは大変重要なことと思っております。
 学校教育で何をどのように教えるかということは、学習指導要領というのがございまして、そこで大体基準が定められておるわけでございますが、この指導要領が改訂になりまして、昨年度から小学校、今年度から中学校で実施に移されているわけでございます。その大きな改訂の方針の一つに、豊かな心を持ち、たくましく生きる人間の育成を図るということが掲げられております。他人を思いやる心や感謝の心、あるいは公共のために尽くす心、こういうものを育てることなどを重視しまして、社会の変化に適切に対応する観点から内容の改善を図っているわけでございます。
 そのような基本的な方針のもとに、具体的に申しますと、小中高等学校の道徳あるいは特別活動、こういう時間がございますが、そういう時間に人間愛の精神でございますとか福祉の心あるいは社会奉仕の精神、こういったものの育成を図っております。あるいはまた、社会科とか家庭科という教科の時間で社会福祉についての理解を深める指導を行っているわけです。
 例えば、特別活動の時間は、最近では非常に奉仕的な活動、体験的な活動というものが取り入れられておりまして、精神薄弱者の更生施設を訪問して交流するとか、そういった活動が行われております。また、教科書などを見ますと、障害者の社会参加でございますとか福祉の問題というものが具体的に取り上げられております。それから、一般の児童生徒により正しい理解と認識を深めさせるために、心身障害児理解推進校という形で全国の小中学校を指定しまして、障害者理解の指導のあり方について研究をしていただくというような活動も行っております。
 そういういろんな活動を通しまして、精神障害者を含めました障害者の問題について理解を深めているわけでございます。
 以上でございます。
○日下部禧代子君 ありがとうございました。
 それでは、厚生大臣にお伺いいたします。
 これまでの論議の中でも、やはり施設が絶対的に数が量的にまだ不足であるということで、これはその一つの原因といたしまして、地域社会における差別、偏見、そういった問題があるというふうに局長もおっしゃっておりましたが、このように日本の社会の非常に根深い精神障害者に対する差別観、偏見ということに関しまして、どのようにこれを取り除いていくべきか大臣としてどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
国務大臣丹羽雄哉君) 先ほどから御答弁を申し上げておるわけでございますが、精神保健対策のうちで社会復帰対策というのは最重要項目の一つである、このようにまず認識をいたしておるような次第でございます。
 先ほど来委員からも御指摘を賜っているわけでございますけれども、社会復帰施設というものがなかなか思うように進まないということもこれもまた紛れもない事実でございますが、その原因といたしましては、これまで運営費の四分の一をいわゆる設置者が負担をしていたとか、それから今御指摘を賜りましたいわゆる地域社会におきます理解というものがなかなか得られない、こういうようなさまざまな要因があると思っておりますけれども、先ほどから申し上げておりましたように、本年度からは施設の運営費の設置者負担が解消されることになるわけでございます。
 さらに、今回の法改正におきましては、精神障害者の社会復帰を一層促進するために、精神障害者地域生活援助事業、いわゆるグループホームでございますが、これを法定化いたしまして補助規定を設けるとともに、社会福祉事業として位置づける、さらに精神障害者の社会復帰の促進についてのさまざまな啓発広報や訓練、指導に関する研究開発を行う民法法人を精神障害者社会復帰促進センターとして指定することができる、こういうような法改正を行ったわけであります。
 率直に申し上げて、先生から御指摘を賜っておりますように、なかなか思うようには進まないわけでございますし、またこの社会復帰の問題というのはある意味においてその国の文化水準を指すものではないかと、こういうような御指摘も先ほどから賜っておるわけでございますけれども、私どもはそういった御指摘を謙虚に受けとめながら、いずれにいたしましても、今後国民の皆さん方の理解と協力を得ながら社会復帰施設の充実のために一層努力していく決意でございます。
【次回へつづく】