精神医療に関する条文・審議(その62)

前回(id:kokekokko:20051006)のつづき。初回は2004/10/28。
平成5年改正の審議のつづきです。

第126回参議院 厚生委員会会議録第12号(平成5年6月8日)
【前回のつづき】
○木庭健太郎君 精神保健法の質疑をさせていただきます。午前中からさまざまな問題点が指摘され、少しは重複する部分もございますが、なるべく避けながらお答えをいただきたいと思っております。
 精神保健法は、前回改正のときに人権擁護と社会復帰施設という大きな二つの柱で改正をいたされました。今回、さらにそれに加えて社会復帰施設から地域社会へと法の精神としてより広げていこう、こういう基本的な考え方、あり方については私も賛成でございます。
 ただ、午前中から質疑になっているように、それこそ社会復帰施設から地域社会へと私も叫びたいんですけれども、社会復帰というのが厚生省御自身も認めていらっしゃるようになかなか進んでいない現状がある。その理由についてもお聞きしようと思いましたけれども、もう午前中から同じことを繰り返されております。運営費の問題と地域理解の問題だと、運営費の問題は今回法改正をする、その中で進んでいくんじゃないかと、あと地域の理解についても今後復帰促進センターのようなものもつくりながら広げていこうというようなお考えのようでございます。ただ、私も五年間を振り返って本当に感じるのは、やはり社会復帰施設というのが一向に進まなかったことに関しては非常に寂しい思いをするし、これは厚生省に対してやり方がまだ私はあったような気がしてならないわけでございます。
 確かに、局長がおっしゃったように、こういう問題については今後進めるに当たっても地方自治体の自主性を尊重する、これは大事な視点だと私も思っております。ただ、そうはいうものの、地方自治体の自主性を尊重しながらも実際に今どういう現状になっているかというと、各県の数字を調べましたけれども、都道府県のうち全部がそろっているのは十七都道府県です。逆に、全くこの社会復帰施設というものがない県が七県もございます。
 私は本岡委員と違いまして別の資料、これは昨年の東京都地方精神保健審議会答申でございますけれども、これを見ると、患者数、精神病院に入院されている方が約三十五万人、うち三割、十万人は社会の受け皿さえ整備されれば退院が可能だというふうな指摘も実際にあるわけでございます。これを比較するともう余りに激し過ぎる。自主性を尊重しながらも、今社会復帰施設の三施設が全くないという県もある。そりゃ自主性を尊重されるのは結構ですけれども、全くないというこの事実を前にしたときに自主性尊重だけでいいのか、そのことを強く申し上げたいし、こういう県に対して厚生省としてどうお取り組みになる決意があるのか、まず冒頭にそれを伺いたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 社会復帰施設をまだ全くつくっていないという県が七県あるというふうに承知をしておりますが、私どもも、今回の改正を機会にして、特に全く未設置の県については強力に働きかけをして設置の促進を指導というか、指導について強力にやってまいりたいというふうに思っています。
○木庭健太郎君 私も、地方自治地方主権という問題は取り組んでいかなくちゃいけないと思うけれども、その一方でやっぱりそういう視点を持っていかないと、足りないから現状では地域偏在なんだという言い方もされますけれども、それとはちょっと違う部分があると思うし、その点は厚生省に特に取り組んでいただきたいことの一つであります。
 それと、今回グループホームの法制化というのをなさるとお聞きしております。法制化は非常にいいことだと思うんですけれども、またこれについて補助規定を設けることも決めていらっしゃるというふうに聞いておるんですが、そういうことについての意義づけ、どういうふうな効果があると判断されているのか。私は、この問題も前々からずっと同じことが指摘されておりますけれども、特にグループホームなんかはより受け入れ地域の理解という問題が伴ってくると思うんです。そういうものも含めてこの新しい施策をどんなふうにやられようとしているのか、これについてもお伺いしておきたいと思います。
○政府委員(谷修一君) グループホームについて、今最後におっしゃいましたように、地域の住民というか周りの方の理解を得るということはやはり一番重要だと私どもももちろん認識をしています。
 今回、グループホームを法定化することによりまして都道府県知事の関与による適正な運営あるいは運営主体が明確化されるということがあるわけでございますし、また補助規定を設けることによりまして国、地方公共団体の支援によって円滑な事業実施体制が確保される、そういうことを法律に書くことによって明確にするという効果があると考えております。こういうことを通じて、このグループホーム事業というものをさらに伸ばしていく、そういうきっかけにしたいということで今回法制化に踏み切ったわけでございます。
○木庭健太郎君 地域の理解という問題で、今回厚生省が目玉にしているのが精神障害者社会復帰促進センターという問題だと思います。午前中も質疑があっておりまして、これは指定法人として全国精神障害者家族会連合会全家連を、これだとおっしゃいませんけれども、これをひとつ想定しながらということになっている。
 私は表を見せていただいたんですけれども、この全家連は全国組織でございます。役員が二十一名で、職員十八名ぐらいの全国組織ということになっている。ここに今から何をさせなくちゃいけないかというと、職員の研修、これは社会復帰制度ですね、それから国民の理解を得るための広報活動、中でも地域の理解をやりなさい、処遇ノウハウの研究開発もやりなさい、何でもかんでもやりなさいみたいな形になっている。今までの家族会がやってきた業務に加わるものが非常に大き過ぎるんではないだろうかということを私はちょっと心配するのでありまして、中でも全国だけじゃなくてそれぞれ地方自治体との対応みたいな問題も出てくるわけでございます。
 そういう意味で、この組織のマンパワーとの問題でいったら、一体これうまくいくんだろうかという危惧をいたしておるんですけれども、そういう人的な手当てができるのかこの辺どうお考えになっているかをまず聞かせていただきたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 精神障害者社会復帰促進センターは、今回の法律において、精神障害者の社会復帰の促進を図るための訓練あるいは指導等に関する研究開発等の業務を行うことができると認められる民法法人を厚生大臣が指定をするということになっているわけでございます。
 先ほど先生お触れになりましたように、センターとして指定する法人につきましては、業務内容から、精神障害者やその家族を取り巻く状況を十分に理解をした法人が適当であるというふうに考えておりまして、もちろん具体的にどの法人を指定するかということは今後検討していく課題でございますけれども、現時点で一応全国精神障害者家族会連合会を想定はいたしておりますが、最終的な判断は、この法人が先ほど申しました研究開発等の業務を適正かつ確実に行うことができるかということを十分に精査をした上で決めていくということでございます。
 その中には当然、繰り返しになりますが、今の業務の実施体制等を十分に審査するということで考えているわけでございますが、具体的にお話のございました業務それから家族会との関係につきましては、今御指摘のあったようなことも含めて全体を審査してその上で最終的な判断をする、そういうことを考えているわけでございます。
○木庭健太郎君 この法案そのものを見ると、結局業務を投げるわけですよね、お願いしますと。やってくださいという形になるわけですけれども、ただ法案そのものを見ると、これは財政的な支援というのは特段出てこないわけです。業務の上でやりなさい、どうにかあなたのところでできるでしょうと、こう投げるだけで、私はなかなか難しい面もあるし、そうなれば今度はやるだけの裏づけみたいなものについてどう考えるのか。
 今確かに、全家連と想定しちゃいけないと、はっきり決まっていないんだとおっしゃるので、そう詰めることはできないのかもしれませんけれども、財政的にもこれどうやってやっていけるのかという問題も残ってくると思うんです。財政基盤なりそういうやるところが手当てをどれくらいしてもらえるのか、どういう形でやり得るのか、特にお金の面というのは心配な面も出てくるでしょうし、その点についてどう考えていらっしゃるのかをさらに聞かせてください。
○政府委員(谷修一君) 社会復帰促進センターに関する財政上の支援ということでございますが、これは、指定される法人の財政能力なり事業内容といいますか、そういうものを勘案して検討するということでございますから、同様な他の指定法人制度との規定の均衡ということを考慮して、この法文の中には財政上の支援に関する規定というのは盛り込まれていないわけでございます。
 しかし、具体的に国が民法法人に事業をやってもらうということで指定をするわけでございますから、具体的な事業との関係において予算をどうするかということは、今後私どもが予算との関係で検討をしていかなければいけないことだというふうに考えています。
○木庭健太郎君 ぜひそれは検討していただかないと、実際にさあ始まった、何もなしというんじゃこれはできないだろうと思いますし、その辺の御検討は願いたいと思っております。
 そして、社会復帰施設の問題で言えば、国の施設が進まない一方で何がふえたかというと、実は小規模作業所という問題でございます。共同作業所の全国連絡会の調査結果を見させていただきました。一九九二年度の小規模作業所の設置状況は、身体障害、精神薄弱が二千二百五十三カ所、精神障害が七百十四カ所で、計二千九百六十七カ所というふうになっているわけでございます。一方、これは精神障害者の適所授産施設は四年間で三十二カ所、圧倒的に小規模作業所というのがふえ続けている。ある意味では、今やもうこれがそういう社会復帰施設の補完――補完というよりはこっちが主役になりつつあるんじゃないかとさえ私は思っておるんですけれども、厚生省に、なぜ小規模作業所だけがふえ続けるのか、なぜこれだけ多くなったのかという理由についてお聞かせを願いたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 法定の社会復帰施設の数が少ないから小規模作業所がふえてきたという御指摘も確かに一部にあると思いますが、むしろ身近な社会復帰の促進のための施設として、地域における小規模作業所に対するニーズというのが高いということもかなり大きな理由なんではないかというふうに私たちは考えています。したがって、今後の精神障害者の社会復帰対策を考えていく上では、もちろん先ほど来お話のあるような社会復帰施設というのは重要でございますが、それとあわせてやっぱり小規模作業所というのも非常に重要なんだというふうに認識をしております。
 このことは、今先生お触れになりました他の障害者の例においても、これは先ほど来言っているように精神障害者の場合には社会復帰施設はまだいろんな理由があって、先ほど来おしかりをいただいていますが、ふえていないわけですが、身体障害者あるいは精薄の場合には社会復帰施設というのはかなり整ってはきておりますが、それでもなおかつやはり小規模作業所というのが数もふえているということは、先ほど私が申し上げたようなことも理由としてあるんではないかというふうに考えております。
○木庭健太郎君 私は、小規模作業所というとすぐ法定外が何のかんのという話になって、なかなか施策の面、今から少しは御指摘もしたいと思うんですけれども、厚生省としても小規模作業所の問題、もうどうしようもないというか、必要不可欠な問題になっているという視点を持っていらっしゃると思います。だから、これ授産施設制度のあり方検討委員会提言、平成四年七月三十日、これは社会局、児童家庭局、保健医療局、三局長の私的懇談会ですか、この中でもわざわざ小規模作業所への対応という問題もお取り上げになって、取り組みも少し出されている。
 この中で指摘されている一つは、今後小規模作業所をどうすればいいかという問題について、やり方として、一つは法定外というだけじゃなくて、例えば授産施設の分場制度の拡充をしていったらどうだろうかとか、デイサービス事業の活用等によったり、こんなやり方によって一定の要件を満たす小規模作業所については法定施設化を促進するというような項目まで挙げられた。私は、これが一つできていくなら非常にいいことだろうと思っておりますけれども、この提言に基づいて小規模作業所が実際に法定施設化という問題についてどんどん進んでいるのかどうか、実情を御報告いただきたいと思います。
○政府委員(谷修一君) これはたしか昨年の七月にこういったような意見の取りまとめがありまして、私どもその報告を受けて、小規模作業所の実態等について、主として先ほどお話のありました家族会等を中心にしたデータ、あるいは実態についてお話を伺ったわけでございますが、現実の問題としては、今までのところ法定施設への転換と申しますかそういうことはまだ進んでおりません。
○木庭健太郎君 進んでいないと簡単に片づけられては困るので、進むためにこう例えば具体的に自分たちで書いたわけでしょう、授産施設の分場制度の拡充とかデイサービス事業の活用等、法定化へ向かって何か検討されたんでしょう。検討されなければ全く何か言葉だけ飾って期待だけ持たせて、はい進んでいませんじゃ、これは困るんじゃないでしょうか。
○政府委員(谷修一君) 失礼しました。言葉がちょっと途中で足りませんで。
 昨年七月にこの報告を受けて、まず実態を把握するというようなことから、その実態の把握に努めたわけでございますが、今までのところまだなかなかこの分場制度というものの導入については、現在まだ検討しておりますが、先ほどちょっと申しましたように、今の段階で具体的にそういうことに進んでいるというところまではまだいっていないということでございます。
 私どもとしては、他の障害者の施設でやっておられるような分場制度というものは、やはり将来的には考えていくべき課題だという認識は持っております。
○木庭健太郎君 やっぱり法定施設になるためにはいろんな要件がありまして、なかなか難しいことも承知をしております。いろんなやり方があると思うし、さまざまな角度から検討していただいてこの小規模作業所というのをきちんと位置づけて、その中でどうするかという問題に本格的に取り組まないと、社会復帰施設の一環だぐらいのとらえ方をしていかないと私はいけないんじゃないかなと思っておるわけでございます。
 それこそ地方自治体では、地方の自主性でこういうところに対してさまざまな援助を行っているところが実際にございます。かえって、国が授産施設に出す補助金よりももっと大きなものをこの小規模作業所に出しているような都道府県も実際にはあるわけでございまして、そういう意味では、国だけがこれについては非常に冷たいけれども、地方自治体についてはやらざるを得ないような現状になっているのも事実なんです。私がこういう問題で御提言をしたいものの一つとして、既に地方自治体がそういう問題について取り組んでおりますが、小規模作業所をやるときの大きな問題は土地の取得、施設を建てるときの問題でございます。かえって、この土地の取得の問題とかいろんなことになる場合は、法定施設よりも小規模作業所の設置を政策上優先課題に掲げているようなところもございまして、そういう意味では、公有地とか公共建設物の提供とか貸与の促進とかいろんな形、これは建設費設置者負担分の補助とかいろんなやり方はあると思うんです。
 法定施設へ移行をするためには、そういう特に施設をどう確保するかという問題について、地方自治体は優先で取り組んでおるんですけれども、一つは、国としてそういう地方自治体に対して誘導策みたいな形を講じる必要があるんじゃなかろうかと感じるんですけれども、まずこの点を伺っておきたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 小規模作業所について、地方公共団体からの土地の提供あるいは貸与ということが現実に相当見られるというふうに私どもも承知をしています。やはりこのことは、小規模作業所が安定した経営を進めていくという上では大変意味のあることだというふうに考えているわけでございまして、そういう意味で、将来、小規模作業所が新たに規模を拡大して法定施設になっていく、そういう要件を満たしていくためにもこういったような便宜が地方公共団体から図られるということは、有益と申しますか意味のあることだというふうに考えております。
 さらに、平成五年度からは、都道府県が単独事業として行う小規模作業所への補助に対して交付税措置が講ぜられたというようなことがございます。そういうようなことを通じて、やはり地方公共団体小規模作業所への支援というものの充実が図られているということがあろうかと思います。
 それから、先ほど、この前の御質問でちょっとお答えをしなかったんですが、小規模作業所から法定施設に格上げをされたものはないというふうに申し上げたんですが、それはそのとおりなんでございますが、現在できるかどうかを調査しているわけでございますが、約十カ所程度が何とか実現が図られるのではないかというような結果になっておりますので、先ほどの答弁を補足させていただきます。
○木庭健太郎君 もう一つはこれは金の面でございます。
 今、小規模作業所というのは年間九十万円の補助金でございますけれども、もう当然年間運営費には十分の一ぐらいですか、それぐらいの程度に
しかならない。大体、小規模作業所の年間平均運営費というのが八百五十六万円、九百万円近いというふうに聞いております。ある意味では、これを補助するために逆に言えば地方自治体が補助金制度というものをどんどん拡充させていっている。私は、この問題について一つは国庫補助金制度みたいなものをそろそろ確立する、検討に入っていい時期だろうと思っているんです。確立したとしても、物すごい額にどんとなるかというと、実際には地方自治体がもう既にやっているわけで、補助の割合の問題になってくると思うんです。その辺まで検討を始めていい時期に来ているだろう。
 ある意味では、今、小規模作業所の問題については、地方自治体は一生懸命やっている、関係の方たちはもちろん自分たちの問題だから一生懸命やっている。どこが一体この小規模作業所について冷たいのかと言われたら、どうしても国だというふうなことになりがちなんじゃなかろうかと思うんです。そういう意味では、国庫補助金制度みたいな形の問題についてもそろそろ、もう小規模作業所は始まって二十年近くたちますけれども、検討の時期に入っているんだろうと私は思っておりますが、この点についても御意見を伺っておきたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 先ほど先生もお触れになりましたように、現在の小規模作業所については精神障害者の関係については家族会を通じて補助をしているわけでございます。今後とも、必要な予算の獲得ということには努めてまいりたいというふうに考えておりますが、小規模作業所については他の障害者との均衡というようなものが従来から現実にはあって、そういう中での予算の補助ということでございますが、いずれにしても予算の確保ということについては努力をしてまいりたいと思っています。
○木庭健太郎君 大臣にお聞きします。
 今、局長は精神障害者小規模作業所の問題をいろいろ言っていただきました。実質的に小規模作業所というのは、精神障害者だけじゃなくて精薄の方たちも、さまざまな方たちがいろんな形で広げ、大臣がおっしゃる地域社会の中でどう本当にこういうハンディを持つ人たちをきちんと社会復帰、自立の道を開くかという重要な位置を占めてきてしまった、関係者の人々の努力によってだんだん広がっていった、それをある意味じゃ地方自治体は認め出してきたというのが今の現状だと思っております。
 そういう意味で、この小規模作業所の問題というのは単に精神障害者だけの部分じゃなくて、全体像としてやはりきちんと位置づけを見直し、これからの小規模作業所の問題にどう取り組むかというのを考えていく時期だろうと思っているんですけれども、ここは大臣の見解を聞いておきたいと思います。
国務大臣丹羽雄哉君) 先ほどから小規模作業所につきまして御議論を賜っておるわけでございますが、御案内のように、各地域で親の会の努力やあるいは地域住民の皆さん方の理解や協力によって支えられて小規模作業所というのは大変普及してまいっております。この精神障害者の社会復帰を促進するための対策の中で大変私は重要な役割を果たしておるものと考えておるわけでございます。この小規模作業所に対しましては、先ほどから委員も御指摘のように、昭和六十二年からその運営費に対する補助を開始いたしておりまして、その充実に努めておるわけでございます。また、本年からは各県の運営費の助成に対する交付税措置を行ったところでございます。
 いずれにいたしましても、この小規模作業所のいわゆる社会復帰施設の補完的役割と申しますか、そのものと申しますか、大変大きな役割を果たしておるわけでございますので、地方公共団体の理解を得ながらこの一層の充実に努めていく決意でございます。
○木庭健太郎君 もう一つ、社会復帰という面では、先ほど本岡委員も御指摘がありましたけれども、一体どういうふうな形で国がこれを整備しようとしているのかという姿が見えないという点は、私もこれは大きな問題だと思うんです。
 何年計画がということは別にして、やっぱり長期計画というものがこういう問題には必要ではないかと思っております。例えば、今回からショートステイの問題についても精神障害者では新設をするわけでございます。福祉工場という問題も今回から取り組む、グループホームも本格的に取り組み出す、新たなものが次々に出てくる。一体、何をどうしてくれるのか、どこで何を担当してくれるのか、その最終的な姿は何になるのか。その一方で、今大臣から決意もしていただきました小規模作業所という問題がどんどんふえている。障害者の方たちにとって非常に見えにくい現状があると私は思っているのでございます。
 先ほど局長は、これは精薄の人たちと違って、ある意味じゃ精神障害者は新しい、始まったばかり、五年前から本格的に取り組んだばかりだ、歴史も違うと、そういうことをおっしゃいました。私は、歴史が違うからこそ、今ようやく始まったからこそ、新たな視点できちんと長期計画が立て得ると思うんです。ある意味じゃ既存のものがないわけです、なかなかそろっていないわけです。本当に一歩を踏み出したところだからこそ、全体バランスを見ながら最終的にはこうなんだ、こういう形まで持っていきたいということを立てやすいのが、逆に言えば精神障害者の方の社会復帰施設の問題だと私は思っておるんです。
 そういう意味では、先ほど明確なお答えがないんですけれども、この長期計画への取り組みというのは、是が非でも検討をしていただく、特に精神障害者の場合は始まったばかりだからこそやる必要があると考えておるんですけれども、御見解を聞きたいです。
国務大臣丹羽雄哉君) この小規模作業所であるとかグループホーム化であるとか、さらに福祉工場であるとか、いろいろな各地域での自発的な動きに対して私どもが御支援を申し上げるという段階でございまして、今の段階において私どもがとやかくこういう問題に介入するよりは、この芽をしっかりと育てていくことがまさに社会復帰に役に立つんではないか。そういう中において、ある一定の期間を経て、こういう社会復帰的な役割を担うものの最もふさわしい形がどういうものかということが、いわゆる姿というものがおのずとあらわれてくるんではないか。
 私は、そういう意味において、むしろ今の期間におきましては、里の親の会であるとか地域住民の皆さん方であるとか、そういうものを御支援するという中において一定の期間が経ました後、今委員が御指摘のような問題についても本格的に検討を始めたい、こういう考え方に立つものでございます。
○木庭健太郎君 大臣の意見も非常にもっともだと思うんですけれども、一方で、先ほどから本岡委員も指摘された、私も指摘したいのは、三十数万人いるうち、その二割から三割は受け皿さえあれば退院が可能だという、現実にそういう問題があるわけでございます。
 そういうことを進める一方で、ではこの人たちは一体どうすればいいんだという問題が出てくる。国としてやっぱりこういう方向を目指すべきだ、受け皿として、方向性としては大体こういうことだというものが出てこなければ、結局、今度の法の精神が地域社会ですかそういうものというのは出てこないんじゃないですか。地域社会ということを掲げられるのなら、余計にそういうものについて、やはり私は早期にきちんとそういう施策を積み重ねる一方でつくっていかなければ、これは見えてこないんじゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
国務大臣丹羽雄哉君) 基本的には、先ほどから申し上げておりますように、今回の改正の位置づけの中でも社会復帰施設から地域社会へと、こういうことをうたっておるわけでございますが、社会復帰施設が必ずしも十分でないということを私ども残念ながら率直に申し上げておるわけでございます。
 この社会復帰施設につきましても、先ほど各局長の方からも御答弁を申し上げましたように、まだ未設置の県等につきましては強力に指導して解消を図っていくとか、こういうことを進めていく、さらに、グループホームの法文化によっていわゆる地域生活援助事業というものを進めていく、こういうことが基本的な私どもの施策であります。その一方で、小規模作業所のような動きというものが大変盛んに目立ってきておることも事実でありますので、こういうような芽も大切に育てていきたい、こういうような認識に立つものであります。
○木庭健太郎君 私も長期計画については要望します。
 おっしゃるように、さまざまなことをするというのは結構なんですけれども、次々にいろんなものを、新しいものだけやられても受ける側はわからないんですよ。今度はこっちに流れるのか、今度こっちに流れるのか、では小規模作業所はいつの間にかつぶされるのか、一体どうなんだというようなことが見えてこないんです。その意味では、何年までに確実に授産施設を幾つつくる、何個だ、何個だという確定数字は出てこないと思いますが、方向としては、こういうものを大体二割程度の整備なんだ、三割程度の整備なんだという形で、大枠で形としては全体像を描いていくんだというものはきちんとやるべきだろうと思うんですけれども、さらにもう一回聞きましょうか、大臣。
国務大臣丹羽雄哉君) 先ほどから申し上げておるわけでございまして、その必要性においてはもう全く委員と一致しておるわけでございますけれども、私どもは、あくまでも地方公共団体の自主性、自律性というものを尊重すべきだ、こういうような立場に立つわけでありまして、余り上から押しつけるようなことが果たして現状にマッチするかどうか、果たしてこういうことが真の意味での社会復帰の施設に役立つかどうかということで実は大変今模索をしておるというのが現実でございますが、委員の御指摘のことも十分に今後検討してまいりたい、このように考えているような次第であります。
○木庭健太郎君 私は、本岡委員のように突っ込みが鋭くないものですから、この辺で引き下がらせていただきまして、あと幾つかわからない点もまだ残しておるんでお聞きしていきたいと思うんです。
 一つは、資格の問題でございますけれども、今回の改正で栄養士、医薬品製造のためのケシ栽培、調理師、製菓衛生師、診療放射線技師の五つについては、絶対的欠格事由から相対的欠格事由に改められて取得の道が開かれるようになったわけでございます。ただ、この五つを見ていると、なぜかすべて厚生省関係のものだけが今回認められるようになった。国家資格というのは今三十種類ぐらいあるんですか、なぜ厚生省関係だけしかできなかったのか。
 やっぱり他省庁の壁を乗り越えるのは難しかったと、そういうことなのか。どういう検討をいただいて、他省庁にどういう働きかけをいただいて、特に今回の場合、一番本当は注目されたのは自動車の運転免許ですよね、これはいろいろ論議があると思うんですけれども、この問題についても実際に働きかけてみて、どういうふうな検討をなされたのかその辺をきちんと教えていただかないと、結局これは自分の省内の問題しかできないんだなということになってしまう。これではいけないと思うんで、その辺についての理由をお聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(谷修一君) この資格制限の見直しについては、やはり関係する方の理解というかそういうものが欠かせないわけでありますので、今回、厚生省関係におきましても関係者との調整ができた資格から改正を行うということで、御承知のように理容師、美容師については見送ったわけでございます。他省庁の所管する法律に基づく資格につきましても、もちろんこの審議会の意見をいただいた後に関係各省庁に検討をお願いいたしました。しかしながら、それぞれの省庁におきます検討の結果、特に時間的な問題も率直に申し上げてあって、今回改正には至らなかったものでございます。
 もちろん、他省庁が所管をする法律でございますので、その資格制限の緩和ということについては基本的にはそれぞれのお役所で考えていただくということが原則でございますが、私どもとしては今回の精神保健法の改正に当たって、先ほど言いましたように各省に検討はお願いをいたしました。今後、引き続き御検討いただくことになると思いますが、私どもとしても必要な協力はしていきたいと思っております。
○木庭健太郎君 厚生省が積極的に働きかけないと、こういうものはなかなか難しいと思います。あえて言いませんけれども、いや、厚生省から具体的に聞いていなかったよというようなことを言う省庁も実際には前回ちょっとございました。ですから、この点本当にしっかり言っていただいて、検討をするならする、その上で現在こういう状況だというのを厚生省の方で掌握しておいていただきたいんです。最終的には権限は向こうにあるわけですからやるわけですけれども、知らないと言われたんじゃ私も腹が立ちましたので、その辺はきちんとお取り組みをいただきたいと思っております。
 労働省、来ていただいたので一問だけお聞きします。
 やっぱり地域社会へという流れをつくる上で一番大事なのは、少しでも多くの就労の機会を提供することだと思っております。そのためにぜひ、現在身体障害者雇用促進法の対象に精神障害者はなっておりませんが、精神障害者も例えば精神薄弱者と同様に改正をしていけば、企業に雇用することを義務づけるということですけれども、そうした場合、実雇用率の算定に同様にカウントしていただければ、企業の対応というのも少しは変わり就労の機会を広げる一つの手だてにはなるんじゃないかなと思います。確かに法改正を伴う大変な問題でございますけれども、しかし地域社会へという流れの中ではそういう検討をぜひいただきたいと思うんですが、労働省にはこの一問だけお伺いしたいと思います。
○説明員(北浦正行君) お答えいたします。
 先生御指摘のありましたように、精神障害者の雇用の問題は、社会一般も含めて、特に企業の側の理解を得ることが大変重要な問題であることは私どもも重々承知をしているわけでございます。
 御指摘の障害者の雇用に関します雇用率制度につきましては、現在精神障害者については対象になっておらないわけでございます。その理由といたしましては、精神障害者の場合、御案内でございますが、職業の適性であるとか能力であるとか、あるいは医学的な管理の問題であるとか、こういったような問題も含めまして企業の中におきます雇用管理のあり方というものがまだ十分に明確になっておらないというのが現状でございます。私ども、こういった点につきましての今いろいろ研究を鋭意重ねているわけでございますが、研究を重ねれば重ねるほど難しい問題がまだ山積をしているという状況でございます。
 それからまた、こういう雇用率制度にのせていく場合にはやはり客観的な形で障害というのが見えるような形でないといけないわけでございますが、精神障害の場合には職場という新しい環境に入ることでまた症状が変わってくる、こういったような問題もございまして、非常に障害が安定しないというようなこともございます。そういったような雇い入れ後の状況なども、絶えず継続的にフォローしていく体制もまず整えていくことが重要だと思っております。
 それから、御案内のようなやはりプライバシーの問題もありまして、こういったものを一歩一歩片づけながら検討していくことが重要であろうと考えておりまして、現段階では雇用率制度の対象にはしておらないわけでございます。しかしながら、精神障害者の雇用を促進するのはこの雇用率制度だけが手段ではございません。
 そういった意味で、昨年障害者雇用促進法の改正をした際に私ども、精神障害者の方でも、精神分裂症などの方で症状が安定している方につきましてはむしろ助成金の制度の対象ということで雇い入れを助成する、こういったような形で雇用促進の努力を重ねているわけでございます。そういったことで今後とも努力をしてまいりたいと思っております。
○木庭健太郎君 次は、大臣おっしゃいましたが、保護義務者は保護者に変えた、これは非常に大きなことで、名前についてはもうそのとおりだと思います。基本的精神がまずそこにあるということだろうと思うんです。ただ、名前は変わったんですけれども中身ということになったらどうなんだろうかというのは、私たち非常に不安を持つわけでございます。
 例えば、家族の負担軽減のために保健、医療、福祉の分野で総合的な支援施策を充実強化するというようなことを言われているわけでございますけれども、これは法文を見る限りこの支援施策とは何かというと相談制度しか読み取れない。一体、じゃ保健の分野で家族の負担軽減というのは何をやってくれるのか、医療の分野で何をやってくれるのか福祉の分野で何をやってくれるのかというのが見えないわけです。あるのは、相談事業はやりますとなっているわけです。
 この総合的な支援施策というのは、それぞれ具体的に相談事業のほかに何かお考えになっているのか。それがあってこそ初めて負担軽減ができると思うんですけれども、その点を伺いたい。
○政府委員(谷修一君) 保護義務者の問題については、今回の改正においては制度はやはり代替するものがないということから残すべきだという審議会の御意見もございました。保護義務者の制度は残すことといたしたわけでございますが、先ほど先生お触れになりましたように、名称については現時点で義務ということをそれほど強調する必要がないということで保護者というふうに改めたわけでございます。
 それで、負担軽減をということで、具体的には入院措置が解除された精神障害者を引き取る保護者への支援ということで、精神病院や社会福祉施設に対し相談や援助が求められるよう保護者の権利規定と申しますかこれを整備した。それから、精神障害者と同居する保護者を保健所が行います訪問指導の対象としたということが今回の改正の中の主な部分でございます。
○木庭健太郎君 結局、相談事業を中心ということですね。例えば、引き取った場合の具体的な財政的支援であってみたり、医療関係の別の面の支援であったり、福祉の面でホームヘルパーさんが来るとかなんとかそういう支援をするとか、何か具体的な支援というのがないと。相談業務と訪問してやるその二つだということでよろしいんですか。
○政府委員(谷修一君) いわゆる精神障害者に対する訪問活動というのは従来からやっていたわけでございますが、今回の場合には保護者を訪問指導の対象とするということを新たに書き加えたということでございます。ただ、今おっしゃるような何か経済的な面での支援ということは現在は考えておりません。
○木庭健太郎君 私は本当に負担軽減ということを考えるならば、例えば今度ショートステイも始められるんでしょうけれども、一たん家族が引き取るわけですがいろんな問題が起きる。そんなときに、そういうことを取り組むとかさまざまなやり方があるだろうと思うんですが、相談していくうちにいろんな解決策を見出していただいてその中から出るというお考えなんでしょうけれども、私はこの大層な、厚生省によれば、保健、医療、福祉の分野で負担軽減のために総合的な支援施策を行うと言われている割には何か中身が極めて乏しいような気がしてなりません。
 さらに、先ほど、かわる人がいないということで義務の規定の問題は今のところ変えようがないということですけれども、五年後見直し規定ということが衆議院でつきました。例えば、仮退院者の引き取り義務その他いろいろな問題がございますけれども、公的義務者との関係の問題についても、これは今後の検討の最重要課題であるという認識を持ちつつ今回は見送ったというふうに認識しておいていいのかどうかその点を伺っておきたいと思うんです。
○政府委員(谷修一君) 今回、法律を改正するに当たりまして、そのもとになりました公衆衛生審議会の議論におきましても、保護義務者制度をどういうふうにするのか、どう考えるのかというのは大変長時間にわたって議論がされたわけでございますが、先ほど申しましたように、精神保健法において他に保護者にかわる制度がないということから、保護者制度というものは残すことにしたわけでございます。
 ただ、この公衆衛生審議会の中の意見においても、今後ともこの保護義務者制度のあり方について検討を行っていくということが指摘をされております。そういう意味合いにおいて、私どもは、関係の家族団体の御意見等も伺いながら、この問題については必要な制度の改善について研究を進めていく所存でございます。
○木庭健太郎君 今度は痴呆性老人の問題でお聞きしておきたいんですけれども、痴呆性老人の問題につきましては私もいろいろな相談を受けることが多うございます。一つは、一体痴呆性老人の方たちがどういうところにどうきちんと措置されるのかという問題でございます。
 今、家族の中でそういう人が出てきた場合どういう対応になるかというと、例えば病院に相談に行くと、内科で相談すると老人病院と、内科そのままになる。ちゃんときちんと保健所あたりを通して相談すると、いやこれは老人ホームに入れましょうと。精神病院へ直接行かれた方は、もちろん精神障害があればそちらの方に行かれる。どちらかというとある意味で、家族がわからない、相談に行く、相談に行った先がそのままその人の行き先になってしまうようなところが私はあるように感じておるんですが、何かいかにも対応がばらばらのように感じるんですけれども、この点とういうふうにお取り組みになっていらっしゃるのか。痴呆性老人の方たちがその症状にふさわしい施設に入っているかどうかという問題については現在極めて疑問だと思っておるんですけれども、その点について見解を伺いたいと思います。
国務大臣丹羽雄哉君) 痴呆性老人の方は現在百万人ほどおります。西暦二〇〇〇年までには百五十万人になることが見込まれておるということで、大変大きな社会問題となっています。このため、ゴールドプランにおきましては、御承知のように寝たきり老人ともあわせまして、いわゆる在宅三本柱として、ホームヘルパーさんを十万人確保する、さらにショートステイ五万床、デイサービスを中学校区に一カ所ずつで一万カ所確保する。またさらに施設面におきましては、特別養護老人ホームを二十四万床、老人保健施設二十八万床、こういうような計画を打ち立てておるわけでございます。痴呆性老人に対する在宅、施設面でのサービスをこういったようなゴールドプランの中でまず確保したい、これがまず第一点でございます。
 さらに、老人性痴呆疾患センターにおける相談体制の整備、痴呆性老人専用病棟の整備など総合的な対策を推進いたしております。これも大変大きな社会問題で大変深刻な問題でございますけれども、私どもは、今後とも保健、医療、福祉を通じた施策の充実を図る中においてこの痴呆性老人対策について取り組んでいく決意でございます。
○木庭健太郎君 最近、精神病院については、人権擁護という視点で、ある意味では人権ということを視野に入れながらそういうことをきちんとやっていくということがだんだん定着をいたしてまいりました。しかし、老人性痴呆症の問題で言うならば、例えばこの方たちが老健施設であってみたり特別養護老人ホームに入る。ここではこの人たちについてどう扱うかということで、かつてよく批判された精神病院のように、扱うのが大変だから体を縛っておくとかかぎをかけて外に出さないとか、そんな問題が逆にそういう施設に出てきているというようなことをお聞きしております。
 こういう問題について、厚生省として実態はどうなのかということについてきちんとお調べになったことがあるのか、あるならばどういう状況かということについてお聞かせを願いたいと思います。
○政府委員(横尾和子君) 特別養護老人ホームについて、特に御指摘の点に着目した調査というものは行っておりません。しかしながら、おっしゃるようなことが特別養護老人ホームの入所者について行われるということはあってはならないというふうに考えておりまして、特に本年度におきましては社会福祉法人・施設に対する指導監査の主眼事項に入所者処遇の確保ということを取り上げまして、その中で個々の入所者について個別の処遇方針を確立しているかどうか、そして痴呆性老人につきましては、痴呆性老人の処遇対策が確立しているか、問題行動についての処遇方針が医師等の専門的なアドバイスを得て策定されその実践に努めているかあるいは問題行動等のある入所者について危険防止対策は確立しているか、こういう点を具体的に挙げまして、各都道府県が施設の指導に当たる際の主眼事項としてチェックをするように指示しているところでございます。
○木庭健太郎君 きちんと実施されたら私また聞きますから、ぜひそういう問題がないようにしていただきたいと思う。
 もう一つ、私が痴呆性老人を見たときによくわからなかったのは、要するにそれぞれ法律も違いますね。精神障害があれば精神保健法で処理されるし、慢性の身体的疾患みたいな話になると老人病院に行くし、それから老人性痴呆疾患治療病棟、これは精神保健法で規定されたのがあるし、老人性痴呆疾患療養病棟になるとこれは老人保健法。そして今度は特別養護老人ホーム、寝たきりの状態で常時の介護になると老人福祉法になる。法律だけでもこれについてさまざまありまして、対応もそれぞれの病院で違ってくる。
 先ほど、大臣も決意でおっしゃっていただいたんですけれども、いわゆる家族にとってみればどこであろうとある意味ではきちんとやれるところが一番いいわけであって、その辺についてひとつ、どこに行けばきちんとわかるのかというのをもう少し明確化する必要があるのではないだろうか。法律を全部一緒くたにするというわけにはなかなかいかない問題ですから、痴呆性老人を抱えた家族がいる、せめてその家族にはきちんとわかるという制度をより一層確立していただきたいと思っているんですけれども、この点について伺いたいと思います。
○政府委員(横尾和子君) 医療的な面でのいわゆる鑑別診断ということになりますと、痴呆疾患センターが専門の医療機関としてその任に当たるということになると思いますが、先ほど来先生御指摘の、具体的に家族が困ったときにどういうふうに考えたらいいのかという点で、現実には専門の医療機関に行く前にさまざまな悩みを持っておられるというのが実情であろうというふうに思っております。実際問題、私どもが現場の関係者の方々とお話をしておりますときにも、医療的な鑑別診断とは別に介護や福祉的なサービスを提供する場面においてもどこへお世話をすることが最適なのかということの、言ってみれば考え方の整理がなかなかできにくいというような御指摘が多々ございました。
 そこで、現在私どもが取り組んでおりますのが、かっていわゆる寝たきり老人と言われる方々について寝たきり度の判定基準というのを設けまして、一応のニーズのランクづけをしてそれに対するしかるべきサービスはこうであるということがお示しできるようにした、この方式を使えないかというような気持ちで今痴呆性老人の日常生活自立度の判定基準というものを委員会を設けて作成の試みをしております。でき得れば七月か八月ぐらいまでにこういうものをつくりまして、極めて高度な専門医療機関以外の場でとりあえずの介護度と必要なサービスの振り分けができるような仕組みをつくってみたいと思っております。そういたしますと、高齢者の場合ですと在宅介護支援センターあるいはデイサービスセンターの職員が一時的な判断ができて、とりあえずの御相談に乗り得るのではないか、そういう展望で臨んでいるところでございます。
○木庭健太郎君 それともう一つ、例えば一般病院、老人病院、各種施設に入院、入所されている人たちの問題なんですが、例えばこういう人たちに対して、時期は何年に一遍あるのかどうかわかりませんけれども、やはり専門の精神科医師による診断というものがきちんと行えるようなことを義務づけていくことが、ある意味ではそういう人たちをきちんと処遇する一つのやり方ではないだろうかというふうに私は感じておるんです。
 ただ、この際本当に難しいなと思うのは、最初の論議に返ってしまうんですけれども、例えば自分の親が痴呆性になったら精神病院に入れられた、嫌だ、こういう意識がいまだに事実あります。精神科医に見せること自体をためらうような傾向も事実ございます。そういう意味では、本当に社会のそういう人たちにかかわる人たちに対する理解も要るんですけれども、一つは方法としてやはりそういう入所なり入院している方たちに対して精神科医、専門医がきちんと判断する場というものをつくっていく、それには家族の理解が物すごく背後に必要なんですが、そういうものをやらないとある意味では適切な処遇というのができないんじゃないかなという気もいたしておるんですけれども、この点についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
○政府委員(横尾和子君) 痴呆性老人の方々を現実に非常に適切に世話をしておられる施設を拝見いたしますと、恐らく精神科領域での鑑別診断をすればかなり痴呆の程度は重いという方であっても、特別養護老人ホームの処遇のありようによってそのことが日常生活の上では問題を生じないような処遇の仕方をしていらっしゃるということもあるのではないかということを実感しております。その意味で、医学的な診断ということと処遇の場がどこが適切かというのとは、両方見ながら一番いい場を探していくということになるのではないかというふうに思っております。
 その意味で、私どもは、先生おっしゃるように精神科医への診断を義務づけるというよりは、それぞれの特別養護老人ホームがそれぞれ医師、看護婦を置くことが義務づけられておりまして、ある意味で医学的な判断プラスその施設での介護の言ってみれば懐度合いの深さも含めて見ながら、ホームドクター的に入所者を見ておられるということを考えますと、一律な義務づけよりも既に置かれている職員配置の活用という形で対応することが可能なのではないかというふうに思っております。
 そうは申しましても、これから特別養護老人ホームの入所者の中における痴呆性老人の割合というのは間違いなくふえていくと思いますから、もう少し適切な処遇を進める上での工夫ができないかは検討させていただきたいと存じます。
○木庭健太郎君 まだいろんなことを聞きたかったんですけれども、もう時間がありませんので、午前中から論議になっていた医療の面における対策について最後に大臣の決意を聞きたいと思っております。
 それは、看護体制の問題であり、チーム医療とおっしゃいましたけれどもそういう体制の問題であり、また官民で格差のある問題であり、さまざまな問題、もちろん病院の赤字経営の問題も含めていろんな問題を医療面で私は抱えていると思っております。インフォームド・コンセントの問題についても、これから検討会が始まるわけですけれども、例えばこの場合だって精神科の場合は一般医療と違ってさまざまに難しい面があると思います。そういう意味では、別途の検討も必要だろう、さまざまに医療面でも取り組まなければいけない問題を抱えていると思います。
 また、診療報酬の改定、間もなくありますけれども、そういった際もこれは一般病院も含めて言えることですが、特に今精神病院が置かれた、先ほどの人不足の問題やいろんな点で指摘がありましたが、そういう問題に対することについて私たちもより一層充実をしていただきたい。先ほどあった三十三年通知の問題についてもいろいろ言いたいんですけれども、ともかく医療体制充実という問題について大臣として取り組む決意を最後にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
国務大臣丹羽雄哉君) 国民に良質で適切な医療を提供していくためには、精神病院を含めた医療経営の健全化、安定化が大変重要だと考えております。このため、精神病院を含めた民間病院の経営の状況について正確に把握することが大変必要であります。その収支状況や経営に影響を与える患者の数であるとか、人件費、借入金などについても早急に調査すべくその準備を今進めております。これは予算委員会公明党の書記長からも御指摘を賜ったわけでございますが、八月をめどにこの調査結果をまとめる予定でございますし、この結果に基づきまして経営健全化全般について検討を行っていきたいと思っております。
 また、診療報酬でございますけれども、現在実施いたしております医療経済実態調査、この中での結果やあるいは中医協の議論を踏まえまして、いずれにいたしましても良質な医療経営、良質な精神医療というものが確保され、健全な民間病院経営あるいは精神病院の経営が確保されるように適切に対処していきたい、このように考えているような次第でございます。
 それから最後に、インフォームド・コンセントの問題でありますけれども、これは私どもは精神障害者にかかわるインフォームド・コンセントというのは人権を配慮する上において大変重要な問題であると考えておるわけでございます。それと同時に、医師と患者の信頼関係を支える大変大きな問題でございまして、近くこの検討会を発足させることになっておるわけでございまして、私どもは今年中にも一つの方向性をこの検討会において出させていただければ大変ありがたいな、このように考えています。
 いずれにいたしましても、今医療経営のあり方というものが非常に厳しく問われておるわけでございますけれども、概して我が国の医療というものは世界の中で冠たる医療サービス制度、そして医療保険制度というものも、こう言っては何でございますが、アメリカのクリントン政権下ではいまだにまとまらないということで非常に苦戦をいたしておるわけでございますけれども、その点我が国におきましてはおかげさまで、いろいろな問題点は含んでおるわけでございますけれども、要するに保険証を持っていけばきちんと一割から三割の医療サービスを受けることができる、七十歳以上のお年寄りは毎月千円で何回でも受けられるということで、国民との間に大変な信頼関係というものが私は確立されておるんではないか、このように考えておるわけでございます。このことを大切にしながら、これからもひとつ医療サービスあるいは医療保険の充実のために当たっていく決意でございます。
○勝木健司君 まず最初に、精神保健対策に関しまして丹羽厚生大臣の基本的認識をお伺いしたいというふうに思います。
 WHO憲章では、健康とは身体的にも精神的にもまた社会的にも完全によい状態を意味するものであって、ただ単に病気や虚弱でないというだけではない、こういうふうにうたわれておるのは御承知のとおりであります。しかしながら、現代のように社会的環境が急激に変化する中で、著しい不適応状態に陥ることなく精神の健康を維持し、また向上させていくことは大変難しいことであって容易なことではないわけでありますが、国として広く一般国民の精神的健康の保持増進を図っていく必要があるわけであります。そこで、厚生大臣にこの精神保健対策に対する基本的認識というのをまずお伺いしておきたいと思います。
国務大臣丹羽雄哉君) 委員が御指摘のことは、いわゆる全般的な国民的な精神保健対策、こういうことで御理解をしてよろしゅうございますでしょうか。ストレス社会と言われます現代において、国民の精神的健康の保持向上を図るということは大変これからますます重要になってくるのではないか、このように考えておるわけでございます。
 このため、保健所や精神保健センターにおいていろいろな相談事業をこれまで実施してきておるわけでございますけれども、ことしは精神保健全国大会、こういうようなものを通じまして、いわゆるストレス社会と言われる中において国民の精神的な健康の保持、こういうことを重点とした知識の普及に今後とも努めていきたい、このように考えているような次第であります。また、当然のことながら労働省など他省庁とも十分に協力をいたしまして、地域や職場における精神保健の啓発や相談員の相談事業の推進、こういうこともこれから進めていきたいと思っております。
 いずれにいたしましても、大変こういうような時代でございますので、本当に肉体的ないわゆる障害、病気、こういうこともさることながら、心の病というような問題につきましても厚生省としては積極的にこれから取り組んでいかなければならない、このように考えておるような次第でございます。
○勝木健司君 昭和六十二年の精神衛生法の改正におきまして、精神障害者の社会復帰施設が初めて法定化をされた、そして精神障害者の社会復帰の促進を図るための貴重な第一歩が踏み出されたことは記憶に新しいところであります。しかし、その後の五年間の経過を振り返って考えますと、今日なお精神障害者に対する社会的偏見の存在あるいは他の障害者の福祉対策と比べて経験の蓄積が少ないこと等によって、いまだ社会復帰施設等の整備が十分に進んでいないのが現状ではないかと思います。
 そこでお尋ねをいたしますが、この精神保健法施行後五年間たった今、国民の精神保健の向上、また精神障害者の人権に配慮した適正な医療及び保護の確保、また社会復帰の促進といった精神保健の基本理念というものが果たして我が国に根づいたとお考えなのかどうか、厚生省の認識をお伺いいたしたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 前回の法改正において、国民の精神的健康の保持向上、あるいは精神障害者の人権に配慮した適正な精神医療の確保及び精神障害者の社会復帰の促進といったようなことを主な柱として改正が図られたわけでございますが、国民の精神的健康の保持ということにつきましては、ただいま大臣からも申し上げましたように、保健所や精神保健センターを中心にした広い意味での心の健康づくりといったようなことに取り組んできたところでございます。
 また、精神医療対策におきましては、前回の改正が主として入院医療制度の改正ということでございましたので、特に精神医療審査会の制度、あるいは任意入院制度、また精神保健指定医等の制度を医療現場において導入したわけでございますが、これは私どもは現在においては医療現場において着実に定着をしてきているというふうに認識をしておりますし、また強制入院であります措置入院あるいは医療保護入院が減少する反面、本人の自由意思に基づく任意入院が増加をしてきているということからも、おおむね適正な精神医療が確保されてきているというふうに考えております。
 一方、社会復帰対策につきましては本委員会でも再三御指摘がございましたように、社会復帰施設の整備ということについては残念ながらまだ必ずしも整備が進んでいないということを率直に認めざるを得ない現状でございますが、今後の社会復帰対策の充実ということが最も重要な課題の一つだというふうに考えております。
○勝木健司君 精神障害者に対する社会的偏見というのがまだぬぐい去られておらないんじゃないかということで、精神障害者の社会復帰あるいは社会参加を取り巻く状況は必ずしも十分ではないということを認められておるわけであります。
 これからも、国民の理解を得るための啓発広報活動の充実は当然図られていかなければならないと考えております。また、多くの地域住民の理解と協力によって精神障害者の社会復帰の一層の促進が図られることを強く望むものでありますけれども、この精神障害者の社会復帰対策についての国民の理解を得るための啓発広報活動の状況は一体どうなっておるのかということ、また社会復帰施設の整備状況についても同僚議員からありまして、まだ未設置の県もあるじゃないかということで、社会復帰施設が地域偏在しておる現状、地域偏在しないようにどのように対応が今後なされようとしておるのか、その対応策についてもお伺いをしたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 精神障害者に関する国民の理解を得るための啓発活動でございますが、今まで国及び地方公共団体におきまして精神保健全国大会を開催しますとか、あるいは先ほど申しましたが、保健所、精神保健センターにおきます精神保健に関する知識の普及というようなものを実施してきておりますし、今後ともこういったようなことは続けていくつもりでございます。また、本年の八月には我が国において初めて世界精神保健連盟の世界会議が開催をされることになっておりまして、厚生省におきましても平成五年度の予算でこの世界会議のために三千万円の予算を補助することにいたしております。こういったようなことを通じまして、精神保健対策あるいは精神障害者の問題についての正しい知識の普及というものを引き続き図っていきたいというふうに思っています。
 社会復帰施設の地域偏在のことをおっしゃいましたが、これは地域偏在と言うべきなのかそれは確かにそうでございますが、やはり全体としてまだ足りないというふうに我々は認識をすべきだろうというふうに思っております。そういう意味で、先ほど来御議論がございましたような、従来ありました社会復帰施設についての設置者の運営費の負担の解消ということを平成五年度から実施ができることになりましたので、そういうことを通じまして社会復帰施設の整備の促進ということを図ってまいりたいと思いますし、特に社会復帰施設が未設置県といわれるようなところがあるわけでございますが、そういうところには強力な指導をしてまいりたいというふうに考えております。
○勝木健司君 この精神障害者の社会復帰の受け皿については、国においても幅広く多様なメニューを当然用意していくことが、地域の自治、地域の創意工夫に基づいた対策の推進を支援していくという意味からも重要であると考えるわけであります。
 そこでこのたび、精神病院から社会復帰施設へという従来からの流れに加えまして、社会復帰施設から地域社会へという新たな流れを形成していくことが必要ということでありますけれども、重要なことは、今後の具体的な施策をいかに進めるかということが重要になってくるんじゃないかというふうに思います。
 本年の三月にも政府の障害者対策本部によって策定されました「障害者対策に関する新長期計画」におきましても、障害者が障害を持たない者と同等に生活をし活動する社会を目指す、いわゆるノーマライゼーションの理念のもとに、単に啓発を行うだけでなく行動に結びつくように配慮することの必要性というのがうたわれておるわけであります。
   〔委員長退席、理事菅野寿君着席〕
 精神障害者が地域社会で生活するというこの新たな流れを形成するために、厚生省は一体具体的にどのような施策を展開していくのかお伺いをしたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 今回の法改正におきましては、今先生がお触れになりましたように、社会復帰施設から地域社会へという新しい流れを形成したいということでございます。
 これに関連いたしまして、具体的には精神障害者の地域における日常生活を援助する事業として地域生活援助事業、いわゆるグループホームを法定化いたしたことがございます。それから、医療施設や社会復帰施設等が精神障害者の社会復帰の促進を図るために、地域に即した創意と工夫を行ない、また地域住民の理解と協力を得るよう努めることとする協力規定というものを新たにこの法律の中に盛り込みました。また、厚生大臣の指定法人として新たに精神障害者社会復帰促進センターを設けることにいたしたこと、具体的に今回の法律に即して申し上げれば以上のようなことかと思いますが、これらの規定を踏まえ、また従来から進めております諸施策をあわせて今後の精神障害者の地域社会での受け入れということに努めていきたいというふうに思っております。
○勝木健司君 次に、地域精神保健対策についてお伺いいたしますが、この精神障害者の社会復帰を促進するためには、地域の実情に応じた適切かつきめ細かな対応を図っていくことが当然必要になってくるわけでありますが、このために保健所や精神保健センター、医療機関、福祉事務所、社会復帰施設等が相互に連携したネットワークを構築することが望まれてくるわけであります。さらに、その核となってコーディネーターの役割を果たすために、保健所または精神保健センターに専門職員を配置する必要があると考えるわけでありますが、この厚生省の考え方をお伺いしたい。
 さらに加えましてお伺いしたいのは、在宅の精神障害者がいつでもどこでも安心してかかれる地域の医療機関が大変少ないわけでありますが、疾病と障害が共存していることを十分認識して、いつでもどこでも安心して援助が受けられる体制の整備というものが急務であろうというふうに思うわけでありますが、この点についても取り組み方についてお示しをいただきたいと思います。
○政府委員(谷修一君) まず一つは、社会復帰施設等におきます精神障害者の支援あるいは処遇等のノウハウの確立というようなことについてお話がございましたけれども、やはり精神障害者の社会復帰につきましては、他の障害者の福祉対策あるいは社会復帰対策と比べまして非常に歴史が浅いということもございまして、そういう意味で社会復帰施設等におきます訓練ですとかあるいは指導等の処遇のノウハウが確立をされていないというふうに考えております。
   〔理事菅野寿君退席、委員長着席〕
 そういう意味で、研究開発あるいはその成果の普及というものをやるために、具体的には、やはり従来やっておりました国立研究機関、国立精神・神経センターですとかそういったようなところの研究、あるいは地方公共団体の特に精神保健センターにおける研究を充実させていくということが一つあろうかと思いますし、また先ほどもちょっと申しました精神障害者社会復帰促進センターというものにおきまして、特に社会復帰施設等の訓練あるいは指導等の処遇のノウハウの研究開発ということをやってまいりたいというふうに思っております。
 それから、精神保健対策におきますコーディネーターあるいは専門職員の問題でございますが、これにつきまして私どもは、この精神障害者の社会復帰の促進を図るために医療施設とか社会復帰施設の相互連携ということが必要であるということから、先ほどもちょっと触れましたが、総則において関係機関等の相互連携規定というものを設けることにいたしたわけでございます。具体的には、やはり保健所等におきます精神保健相談員が中心になって相互に連携を図っていくということが現実的ではないかということで、それ以外に新たにコーディネーターという今お触れになりましたような職員を配置するということは現時点では考えていないわけでございます。
 それから、在宅の精神障害者の医療を受ける体制でございますが、これは通院医療がだんだんふえてきたということもございまして、精神科デイケアというものが特に診療所を中心にして普及をしてきております。現在、全国で二百四十六カ所の精神科の外来において精神科デイケアというものが行われているわけでございます。
 また、いわゆる急性期の対応という意味におきましては応急入院制度というものが設けられておりますが、この応急入院制度につきましては今後さらに指定病院の増加ということについて各都道府県を指導してまいりたいというふうに考えております。
○勝木健司君 次にお伺いしたいのは、この政府の「障害者対策に関する新長期計画」におきましてノーマライゼーションを推進していこうということで、障害者自身が基本的人権を持つ一人の人間として主体性、自立性を確保していこう、そして社会活動に積極的に参加していくことを期待するとともに、その能力が十分発揮できるような施策の推進に努めることがうたわれておるわけであります。
 そういう意味からも、精神障害を理由とする各種の資格制限が障害者の社会参加を不当に阻む障害要因とならないように、必要な見直しについて検討を行っていくことが必要であるということで、今回もこの精神障害者の社会復帰、社会参加を促進させるために各種資格制限等の見直しをすることとしておるわけでありますが、今回この見直しを見送ったものについては今後どのように対応をされていくのか、見解をお伺いしたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 今回、資格の見直しを見送ったものは、厚生省関係では理容師と美容師でございます。これにつきましては、関係者の間の理解といいますか意見の調整ができなかったということで見送ることにいたしたわけでございますが、今後関係者の意見を十分踏まえながら引き続き検討していきたいというふうに思っております。
 なお、他省庁の関係につきましても、今回の改正には間に合わなかったわけでございますが、基本的には他省庁が所管の法律でございますので、他省庁において検討をされるべきでございますが、私どもも今回の改正をするに当たりましては、各省に文書でもって連絡をし検討をお願いしたわけでございまして、引き続き御検討をいただきたいというふうに思っております。
○勝木健司君 次に、精神障害者の定義についてお伺いをいたします。
 今回の改正案を見てみますと、精神障害者の定義から「精神病者」の用語が消えておるわけであります。この定義規定の見直しは、精神障害者の概念の明確化と用語の適正化を図るもので、対象範囲の変更を伴うものでないという説明がありましたが、この改正で果たして従来言われておりました疾患、病態の範囲が不明確であるとか、あるいは誤解を招くおそれがあるということは全くなくなるのかどうかお伺いをしたい。
 また、今回の改正の中で精神障害者に関する資格制限の見直しが行われておるわけでありますが、精神保健法の定義を「精神疾患を有する者」としたのに対しまして、資格法の欠格条項改正部分を「精神病者」または「精神病」として残しているのはどうしてかということで、この精神保健法に合わせて「精神疾患を有する者」としなかった理由について教えていただきたい。
 あわせて、今回の精神障害者の定義規定の変更によって、医療現場において混乱が生じることのないように十分周知徹底を図るべきではないかと思いますが、この辺についての取り組みの方針についてもお伺いをしておきたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 精神障害者の定義の問題は、前回の改正の際からのいわゆる三つの宿題の一つでございました。精神保健法におきましては、従来から精神に障害のある者を包括的にとらえて精神障害者として精神保健法に基づく施策の対象にしてきたわけでございますが、現行のいわゆる従来の定義規定というものが、医学上の用語との整合性が図られなくなってきたということが指摘をされておりました。特に、今日における医学上の用語に合わせて「精神疾患」という用語を用いることによって範囲を明確化するとともに、現場において誤解のないようにするようにしたものでございまして、今回の改正によりまして従来の定義規定の対象範囲を何ら変更するものではないわけですけれども、このことについて一般の国民の方を含めて誤解が生じることがないように法律において必要な疾患名を例示することにしたものでございます。
 身分法、資格との関係で申しますと、従来精神病の概念というのは、後天的に発生した精神の異常を包括的にあらわしていたわけでございますが、近年の医学界の考え方としては、心因性精神障害等を除いたものを医学的に精神病というような形に言うようになってきたというふうに承知しています。資格制限との関係で申しますと、心因性精神障害等については、今日医学的には各種の資格について相対的にはもちろん、絶対的にも資格の取得を制限すべき必要性はなくなったものだというふうに考えられております。そこで、各資格法におきましては、心因性精神障害等を資格制限の対象疾病から外すことにいたしたわけでございますが、ただ用語については、医学上の用語の意義の変化というものを踏まえて、従来どおり「精神病」とすることにしたわけでございます。
 ただ、これはいずれにしても、各法ごとの対応なり解釈、あるいはそれぞれの身分法が持っている意味ということに対応して判断をされるべきだというふうに考えております。いずれにいたしましても、定義規定の変更というものが、今後医療現場において混乱することのないよう、この法律改正後、法の施行までの間に、改正の趣旨を地方公共団体はもちろん、関係団体についても十分に周知徹底をいたしまして、現場において混乱がないように努めてまいるつもりでございます。
○勝木健司君 次に、保護者制度についてお尋ねをいたします。
 今回の改正で「保護義務者」の用語が「保護者」と変わったわけでありますが、これも当然実質的には何ら変わっていないと考えますが、念のためにお尋ねをいたしておきたいと思います。
 全国精神障害者家族会連合会の調査でも、精神障害者を抱える家族の多くが、半数以上が六十歳以上の保護者、いわゆる保護者が高齢化しておる。また、世帯の年収が三百万円以下というのが約四割ということで低収入である。年齢的にも経済的にも生活上の多くの困難を抱えておるわけであります。この点につきましては、本年三月の公衆衛生審議会の報告書においても指摘をされておるところでありますが、今回の改正において、保護者は保健、医療、福祉の各分野において必要な援助を受けることができることといたしておるわけでありますが、これによっても、精神障害者を抱える家族における保護者の問題は決して解決されたわけではなかろうというふうに思います。
 今回の法改正において、保護者の負担軽減のために具体的にはどのような措置を講じたのかということ、そして今後ともこの制度の改善に向けて保護者制度のあり方について検討すべきであろうというふうに思うわけでありますが、今後の取り組み方についても見解を賜りたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 今回、「保護義務者」の名称について「保護者」と名称を変えたわけでございますが、従来の保護義務者の役割というものに変更があるわけではございません。
 今回の改正におきましては、保護者に対する支援規定として、入院措置が解除された精神障害者を引き取る保護者に対する支援として、精神病院あるいは社会復帰施設に対して相談や援助が保護者から求められるような規定を設けました。また、精神障害者と同居する保護者等を、保健所の訪問指導の対象として法律上明記をいたしました。また、現在精神保健法においては、保護者となるべき者が存在しない場合、あるいはその役割を果たせない場合には、市町村長が公的保護者となるということにされているわけでございます。今後、市町村の担当職員の資質の向上を図るという観点から研修等を実施することにいたしております。
 なお、先生お話しございましたように、保護義務者制度あるいは保護者制度のあり方については、公衆衛生審議会の意見にもございますように、この制度の改善ということについて私どもとしても研究をしてまいる所存でございます。
○勝木健司君 次に、入退院時の手続についてお伺いをいたします。
 現在、措置、医療保護を目的として入院する場合に、精神保健指定医の診察が当然必要となっておるわけであります。そこで、患者が入院する病院の精神保健指定医の診察でもよいこととなっておるわけでありますが、他の病院の医師とした方がより客観的な判断が行われるのではないかという考え方もあるわけでありますが、これについての厚生省の見解をお聞きしたい。
 また、措置入院患者のうち、保護者の引き取り拒否、家族の崩壊等により、専ら保護目的をもって入院させている例があるのではないかということで、あるとすれば、そのようなケースは本来福祉施設で対応すべきではないのかと考えるわけでありますが、そのようなケースが実態としてあるのか。あるならば、どのような対応をされておるのかあわせて教えていただきたいと思います。
○政府委員(谷修一君) 御承知のように、現在、措置入院あるいは医療保護入院におきましては指定医が診断をするということになっております。
 措置入院に関しましては、診断に当たっては、二名の指定医のうち少なくとも一名は入院先の病院以外の指定医が診断に当たるように指導をいたしております。ただ、この指定医の診断というものが厚生省の示します基準に従って医学的な判断をすることでございますので、私ども本質的には所属は関係ないんではないかというふうに思っております。いずれにしても、措置入院に関してはそういったような指導を行っているということでございまして、今後とも、指定医の資質の向上ということを図るために研修を充実させていくということをやっていきたいと思っています。
 それからもう一点、措置入院患者のうち保護者が引き取らないといったようなことで保護を目的にして入院をさせている例があるかということでございますが、私どもその実態については把握はしておりません。ただ、措置入院制度というのが自傷他害のおそれのある精神障害者を本人の意思にかかわりなく精神病院に入院させるという制度でございますから、自傷他害のおそれがなくなった場合には別の入院形態に移していくということもあり得るわけでございます。実際、そういうようなことがあるかどうか実は余り把握はしておりませんけれども、例えば医療保護入院に変わっていくというようなこともあり得るわけでありまして、そういう意味で措置入院患者についてそういうことは余りないのではないかというふうに考えております。
【次回へつづく】