精神医療に関する条文・審議(その68)
前回(id:kokekokko:20051012)のつづき。初回は2004/10/28。
平成7年法律第94号(精神保健法の一部を改正する法律)による精神保健法改正をみてみます。
多くの条文が対象となっている大規模な改正です。この改正で名称が「精神保健法」から「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(精神保健福祉法)へと変わりました。さきに障害者基本法が公布されており、今改正では精神医療の分野でもそれに対応しようとした改正内容になっています。その影響を受けて、精神保健法は社会福祉法の性質が更に濃くなりました。また、費用負担に関しては、公費負担優先制度から、保険給付優先制度へと変更されています。
精神保健法の一部を改正する法律案【全文】
精神保健法(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
題名を次のように改める。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
目次中「第三条」を「第五条」に、「施設及び事業(第四条―第十二条)」を「精神保健福祉センター(第六条―第八条)」に、「地方精神保健審議会及び精神医療審査会(第十三条―第十七条の五)」を「地方精神保健福祉審議会及び精神医療審査会(第九条―第十七条)」に、「
第四章 精神保健指定医(第十八条―第十九条の五)
第五章 医療及び保護(第二十条―第五十一条)
」
を
「
第四章 精神保健指定医及び精神病院
第一節 精神保健指定医(十八条―第十九条の六)
第二節 精神病院(第十九条の七―第十九条の十)
第五章 医療及び保護
第一節 保護者(第二十条―第二十二条の二)
第二節 任意入院(第二十二条の三・第二十二条の四)
第三節 指定医の診察及び措置入院(第二十三条―第三十一条)
第四節 通院医療(第三十二条―第三十二条の四)
第五節 医療保護入院等(第三十三条―第三十五条)
第六節 精神病院における処遇等(第三十六条―第四十条)
第七節 雑則(第四十一条―第四十四条)
第六章 保健及び福祉
第一節 精神障害者保健福祉手帳(第四十五条・第四十五条の二)
第二節 相談指導等(第四十六条―第四十九条)
第三節 施設及び事業(第五十条―第五十一条)
」
に、「第五章の二」を「第七章」に、「第六章」を「第九章」に改める。
第一条中「を促進し」を「の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行い」に改める。
第二条中「充実する」の下に「等精神障害者等の医療及び保護並びに保健及び福祉に関する施策を総合的に実施する」を加え、「社会生活に適応する」を「社会復帰をし、自立と社会経済活動への参加をする」に改める。
第四条から第六条の二までを削り、第一章中第三条を第五条とする。
第二条の三の見出し中「社会復帰」の下に「、自立及び社会参加」を加え、同条第一項中「地域生活援助事業」の下に「若しくは社会適応訓練事業」を、「促進」の下に「及び自立と社会経済活動への参加の促進」を加え、同条第二項中「地域生活援助事業」の下に「又は社会適応訓練事業」を、「促進」の下に「及び自立と社会経済活動への参加の促進」を加え、同条を第四条とする。
第二条の二中「克服し、社会復帰」を「克服して社会復帰をし、自立と社会経済活動への参加」に改め、同条を第三条とする。
「第二章 施設及び事業」を「第二章 精神保健福祉センター」に改める。
第七条の見出しを「(精神保健福祉センター)」に改め、同条第一項中「向上」の下に「及び精神障害者の福祉の増進」を加え、「精神保健センター」を「精神保健福祉センター」に改め、同条第二項中「精神保健センター」を「精神保健福祉センター」に、「に関する知識の普及を図り、精神保健に関する調査研究を行い、並びに精神保健に関する」を「及び精神障害者の福祉に関し、知識の普及を図り、調査研究を行い、並びに」に改め、第二章中同条を第六条とする。
第八条を第七条とし、第九条から第十一条までを削る。
第十二条中「都道府県の設置する精神病院及び精神保健センター」を「精神保健福祉センター」に改め、同条を第八条とする。
「第三章 地方精神保健審議会及び精神医療審査会」を「第三章 地方精神保健福祉審議会及び精神医療審査会」に改める。
第十三条の見出しを「(地方精神保健福祉審議会)」に改め、同条第一項中「精神保健に」を「精神保健及び精神障害者の福祉に」に、「地方精神保健審議会」を「地方精神保健福祉審議会」に改め、同条第二項中「地方精神保健審議会」を「地方精神保健福祉審議会」に、「精神保健に」を「精神保健及び精神障害者の福祉に」に改め、同条第三項中「地方精神保健審議会」を「地方精神保健福祉審議会」に改め、「第三十二条第三項」の下に「及び第四十五条第一項」を加え、第三章中同条を第九条とする。
第十四条第一項中「地方精神保健審議会」を「地方精神保健福祉審議会」に、「十五人」を「二十人」に改め、同条第二項中「地方精神保健審議会」を「地方精神保健福祉審議会」に改め、同条第三項中「精神保健」の下に「又は精神障害者の福祉」を、「促進」の下に「又はその自立と社会経済活動への参加の促進」を加え、同条を第十条とする。
第十五条及び第十六条を削る。
第十七条中「地方精神保健審議会」を「地方精神保健福祉審議会」に改め、同条を第十一条とする。
第十七条の二を第十二条とし、第十七条の三を第十三条とし、第十七条の四を第十四条とし、第十七条の五を第十五条とし、同条の次に次の二条を加える。
第十六条及び第十七条 削除
「第四章 精神保健指定医」を
「
第四章 精神保健指定医及び精神病院
第一節 精神保健指定医
」
に改める。
第十九条中「五年ごとに」を「五の年度(毎年四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下この条において同じ。)ごとに厚生大臣が定める年度において」に改め、同条に次の一項を加える。
2 前条第一項の規定による指定は、当該指定を受けた者が前項に規定する研修を受けなかつたときは、当該研修を受けるべき年度の終了の日にその効力を失う。ただし、当該研修を受けなかつたことにつき厚生省令で定めるやむを得ない理由が存すると厚生大臣が認めたときは、この限りでない。
第十九条の三中「第十九条」を「第十九条第一項」に改める。
第十九条の五中「第十九条」を「第十九条第一項」に改め、第四章中同条を第十九条の六とする。
第十九条の四第一項中「第二十二条の三第三項」を「第二十二条の四第三項」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(指定医の必置)
第十九条の五 第二十九条第一項、第二十九条の二第一項、第三十三条第一項若しくは第二項、第三十三条の四第一項又は第三十四条の規定により精神障害者を入院させている精神病院(精神病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む。第十九条の十を除き、以下同じ。)の管理者は、厚生省令で定めるところにより、その精神病院に常時勤務する指定医を置かなければならない。
第四章に次の一節を加える。
第二節 精神病院
(都道府県立精神病院)
第十九条の七 都道府県は、精神病院を設置しなければならない。ただし、次条の規定による指定病院がある場合においては、その設置を延期することができる。
(指定病院)
第十九条の八 都道府県知事は、国及び都道府県以外の者が設置した精神病院であつて厚生大臣の定める基準に適合するものの全部又は一部を、その設置者の同意を得て、都道府県が設置する精神病院に代わる施設(以下「指定病院」という。)として指定することができる。
(指定の取消し)
第十九条の九 都道府県知事は、指定病院が、前条の基準に適合しなくなつたとき、又はその運営方法がその目的遂行のために不適当であると認めたときは、その指定を取り消すことができる。
2 都道府県知事は、前項の規定によりその指定を取り消そうとするときは、あらかじめ、地方精神保健福祉審議会の意見を聴かなければならない。
(国の補助)
第十九条の十 国は、都道府県が設置する精神病院及び精神病院以外の病院に設ける精神病室の設置及び運営に要する経費(第三十条第一項の規定により都道府県が負担する費用を除く。次項において同じ。)に対し、政令の定めるところにより、その二分の一を補助する。
2 国は、営利を目的としない法人が設置する精神病院及び精神病院以外の病院に設ける精神病室の設置及び運営に要する経費に対し、政令の定めるところにより、その二分の一以内を補助することができる。
第五章中第二十条の前に次の節名を付する。
第一節 保護者
第二十二条の三中「(精神病院以外の病院で精神病室が設けられているものを含む。以下同じ。)」を削り、同条の前に次の節名を付する。
第二節 任意入院
第二十三条の前に次の節名を付する。
第三節 指定医の診察及び措置入院
第二十九条第四項中「第五条」を「第十九条の八」に、「収容しなければ」を「入院させなければ」に改め、同条第五項を削る。
第二十九条の二第四項中「収容」を「入院」に改める。
第二十九条の四第一項及び第二十九条の五中「収容して」を「入院させて」に改める。
第三十条の見出し中「支弁及び」を削り、同条第一項中「の支弁とする」を「が負担する」に改め、同条第二項中「前項の規定により都道府県が支弁した経費に対し」を「都道府県が前項の規定により負担する費用を支弁したときは」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(他の法律による医療に関する給付との調整)
第三十条の二 前条第一項の規定により費用の負担を受ける精神障害者が、健康保険法(大正十一年法律第七十号)、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)、国家公務員等共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号。他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)、地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)又は老人保健法(昭和五十七年法律第八十号)の規定により医療に関する給付を受けることができる者であるときは、都道府県は、その限度において、同項の規定による負担をすることを要しない。
第三十二条の見出しを「(通院医療)」に改め、同条第一項中「(大正十一年法律第七十号)」を削り、「収容しない」を「入院しない」に、「二分の一」を「百分の九十五に相当する額」に改め、同条第六項を同条第七項とし、同条第五項中「六月」を「二年」に改め、同項を同条第六項とし、同条第四項中「前項」を「第三項」に、「地方精神保健審議会」を「地方精神保健福祉審議会」に改め、同項に次のただし書を加え、同項を同条第五項とする。
ただし、当該申請に係る精神障害者が精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているときは、この限りでない。
第三十二条第三項の次に次の一項を加える。
4 前項の申請は、厚生省令で定める医師の診断書を添えて行わなければならない。ただし、当該申請に係る精神障害者が精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているときは、この限りでない。
第三十二条の前に次の節名を付する。
第四節 通院医療
第三十二条の四を次のように改める。
第三十二条の四 第三十条の二の規定は、第三十二条第一項の規定による都道府県の負担について準用する。
第三十三条の前に次の節名を付する。
第五節 医療保護入院等
第三十三条の三ただし書中「ただし」の下に「、当該入院措置を採つた日から四週間を経過する日までの間であつて」を加える。
第三十三条の五中「第十一条第二項」を「第十九条の九第二項」に改める。
第三十六条の前に次の節名を付する。
第六節 精神病院における処遇等
第三十八条の二第一項中「収容して」を「入院させて」に改める。
第四十一条の前に次の節名を付する。
第七節 雑則
第四十二条から第四十八条までを削り、第四十九条を第四十二条とし、第五十条を第四十三条とする。
第五十一条中「から前条まで」を「、第二十条から前条まで及び第四十七条第一項」に、「これらの規定」を「第二十四条、第二十七条第二項、第二十八条の二第一項、第二十九条第一項及び第二項、第二十九条の二第一項、第二十九条の四、第二十九条の五、第三十二条第一項並びに第三十八条」に、「「精神障害者」とあるのは「覚せい剤の慢性中毒者」」を「第四十七条第一項中「精神保健及び精神障害者の福祉」とあるのは「精神保健」」に改め、同条を第四十四条とする。
第五十二条中「第五十一条」を「第四十四条」に改める。
第五十三条第一項中「地方精神保健審議会」を「地方精神保健福祉審議会」に、「第四十三条(第五十一条」を「第四十七条第一項(第四十四条」に、「都道府県知事若しくは保健所を設置する市若しくは特別区の長」を「都道府県知事等」に改める。
第五十四条、第五十五条及び第五十七条中「第五十一条」を「第四十四条」に改める。
第六章を第九章とする。
第五十一条の四中「精神障害者地域生活援助事業」の下に「又は精神障害者社会適応訓練事業」を加える。
第五章の二を第七章とする。
第五章の次に次の一章を加える。
第六章 保健及び福祉
第一節 精神障害者保健福祉手帳
(精神障害者保健福祉手帳)
第四十五条 精神障害者(精神薄弱者を除く。以下この章及び次章において同じ。)は、厚生省令で定める書類を添えて、その居住地(居住地を有しないときは、その現在地)の都道府県知事に精神障害者保健福祉手帳の交付を申請することができる。
2 都道府県知事は、前項の申請に基づいて審査し、申請者が政令で定める精神障害の状態にあると認めたときは、申請者に精神障害者保健福祉手帳を交付しなければならない。
3 前項の規定による審査の結果、申請者が同項の政令で定める精神障害の状態にないと認めたときは、都道府県知事は、理由を付して、その旨を申請者に通知しなければならない。
4 都道府県知事は、第一項の申請に対して決定をするには、地方精神保健福祉審議会の意見を聴かなければならない。ただし、申請者が精神障害を支給事由とする年金たる給付で厚生省令で定めるものを受けているときは、この限りでない。
5 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者は、厚生省令で定めるところにより、二年ごとに、第二項の政令で定める精神障害の状態にあることについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
6 第三項及び第四項の規定は、前項の認定について準用する。
7 前各項に定めるもののほか、精神障害者保健福祉手帳に関し必要な事項は、政令で定める。
(精神障害者保健福祉手帳の返還等)
第四十五条の二 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者は、前条第二項の政令で定める精神障害の状態がなくなつたときは、速やかに精神障害者保健福祉手帳を都道府県に返還しなければならない。
2 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者は、精神障害者保健福祉手帳を譲渡し、又は貸与してはならない。
第二節 相談指導等
(正しい知識の普及)
第四十六条 都道府県及び市町村は、精神障害についての正しい知識の普及のための広報活動等を通じて、精神障害者の社会復帰及びその自立と社会経済活動への参加に対する地域住民の関心と理解を深めるように努めなければならない。
(相談指導等)
第四十七条 都道府県、保健所を設置する市又は特別区(以下「都道府県等」という。)は、必要に応じて、次条第一項に規定する精神保健福祉相談員その他の職員又は都道府県知事若しくは保健所を設置する市若しくは特別区の長(以下「都道府県知事等」という。)が指定した医師をして、精神保健及び精神障害者の福祉に関し、精神障害者及びその家族等からの相談に応じさせ、及びこれらの者を指導させなければならない。
2 都道府県等は、必要に応じて、医療を必要とする精神障害者に対し、その精神障害の状態に応じた適切な医療施設を紹介しなければならない。
3 精神保健福祉センター及び保健所は、精神障害者の福祉に関する相談及び指導を行うに当たつては、福祉事務所(社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める福祉に関する事務所をいう。)その他の関係行政機関との連携を図るように努めなければならない。
4 市町村(保健所を設置する市及び特別区を除く。)は、第一項及び第二項の規定により都道府県が行う精神障害者に関する事務に必要な協力をするとともに、必要に応じて、精神保健及び精神障害者の福祉に関し、精神障害者及びその家族等からの相談に応じ、及びこれらの者を指導するように努めなければならない。
(精神保健福祉相談員)
第四十八条 都道府県等は、精神保健福祉センター及び保健所に、精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談に応じ、並びに精神障害者及びその家族等を訪問して必要な指導を行うための職員(次項において「精神保健福祉相談員」という。)を置くことができる。
2 精神保健福祉相談員は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学において社会福祉に関する科目を修めて卒業した者であつて、精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識及び経験を有するものその他政令で定める資格を有する者のうちから、都道府県知事等が任命する。
(施設及び事業の利用の調整等)
第四十九条 保健所長は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた精神障害者から求めがあつたときは、その精神障害の状態、社会復帰の促進及び自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な指導及び訓練その他の援助の内容等を勘案し、当該精神障害者が最も適切な精神障害者社会復帰施設又は精神障害者地域生活援助事業若しくは精神障害者社会適応訓練事業(以下この条において「精神障害者地域生活援助事業等」という。)の利用ができるよう、当該精神障害者の精神障害者社会復帰施設又は精神障害者地域生活援助事業等の利用について、相談に応じ、並びにあつせん及び調整を行うとともに、必要に応じて、精神障害者社会復帰施設の設置者又は精神障害者地域生活援助事業等を行う者に対し、当該精神障害者の利用の要請を行うものとする。
2 精神障害者社会復帰施設の設置者又は精神障害者地域生活援助事業等を行う者は、前項のあつせん、調整及び要請に対し、できる限り協力しなければならない。
第三節 施設及び事業
(精神障害者社会復帰施設の設置)
第五十条 都道府県は、精神障害者の社会復帰の促進及び自立と社会経済活動への参加の促進を図るため、精神障害者社会復帰施設を設置することができる。
2 市町村、社会福祉法人その他の者は、精神障害者の社会復帰の促進及び自立と社会経済活動への参加の促進を図るため、社会福祉事業法の定めるところにより、精神障害者社会復帰施設を設置することができる。
(精神障害者社会復帰施設の種類)
第五十条の二 精神障害者社会復帰施設の種類は、次のとおりとする。
一 精神障害者生活訓練施設
二 精神障害者授産施設
三 精神障害者福祉ホーム
四 精神障害者福祉工場
2 精神障害者生活訓練施設は、精神障害のため家庭において日常生活を営むのに支障がある精神障害者が日常生活に適応することができるように、低額な料金で、居室その他の設備を利用させ、必要な訓練及び指導を行うことにより、その者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設とする。
3 精神障害者授産施設は、雇用されることが困難な精神障害者が自活することできるように、低額な料金で、必要な訓練を行い、及び職業を与えることにより、その者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設とする。
4 精神障害者福祉ホームは、現に住居を求めている精神障害者に対し、低額な料金で、居室その他の設備を利用させるとともに、日常生活に必要な便宜を供与することにより、その者の社会復帰の促進及び自立の促進を図ることを目的とする施設とする。
5 精神障害者福祉工場は、通常の事業所に雇用されることが困難な精神障害者を雇用し、及び社会生活への適応のために必要な指導を行うことにより、その者の社会復帰の促進及び社会経済活動への参加の促進を図ることを目的とする施設とする。
(精神障害者地域生活援助事業)
第五十条の三 都道府県は、精神障害者の社会復帰の促進及び自立の促進を図るため、精神障害者地域生活援助事業(地域において共同生活を営むのに支障のない精神障害者につき、これらの者が共同生活を営むべき住居において食事の提供、相談その他の日常生活上の援助を行う事業をいう。以下同じ。)を行うことができる。
2 市町村、社会福祉法人その他の者は、精神障害者の社会復帰の促進及び自立の促進を図るため、社会福祉事業法の定めるところにより、精神障害者地域生活援助事業を行うことができる。
(精神障害者社会適応訓練事業)
第五十条の四 都道府県は、精神障害者の社会復帰の促進及び社会経済活動への参加の促進を図るため、精神障害者社会適応訓練事業(通常の事業所に雇用されることが困難な精神障害者を精神障害者の社会経済活動への参加の促進に熱意のある者に委託して、職業を与えるとともに、社会生活への適応のために必要な訓練を行う事業をいう。以下同じ。)を行うことができる。
(国又は都道府県の補助)
第五十一条 都道府県は、精神障害者社会復帰施設の設置者又は精神障害者地域生活援助事業を行う者に対し、次に掲げる費用の一部を補助することができる。
一 精神障害者社会復帰施設の設置及び運営に要する費用
二 精神障害者地域生活援助事業に要する費用
2 国は、予算の範囲内において、都道府県に対し、次に掲げる費用の一部を補助することができる。
一 都道府県が設置する精神障害者社会復帰施設の設置及び運営に要する費用
二 都道府県が行う精神障害者地域生活援助事業及び精神障害者社会適応訓練事業に要する費用
三 前項の規定による補助に要した費用
附則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成七年七月一日から施行する。ただし、第十九条の改正規定及び同条に一項を加える改正規定並びに第十九条の四の次に一条を加える改正規定は、平成八年四月一日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行の際現に改正前の第五条の規定による指定を受けている精神病院(精神病院以外の病院に設けられている精神病室を含む。)についての改正後の第十九条の九第一項の規定の適用については、平成七年七月一日から平成八年三月三十一日までの間は、同項中「指定病院が、前条の基準に適合しなくなつたとき、又はその」とあるのは、「指定病院の」とする。
第三条 前条に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
(麻薬及び向精神薬取締法の一部改正)
第四条 麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)の一部を次のように改正する。
第五十八条の七中「精神保健法」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改める。
第五十八条の十八を第五十八条の十九とし、第五十八条の十七を第五十八条の十八とし、第五十八条の十六の次に次の一条を加える。
(都道府県の負担)
第五十八条の十七 第五十八条の八第一項の規定により都道府県知事が入院させた麻薬中毒者の入院に要する費用は、都道府県が負担する。
2 前項の規定による都道府県の負担については、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三十条の二の規定を準用する。
第五十九条第三号を次のように改める。
三 第五十八条の十七第一項の規定により負担する費用
第五十九条第五号中「第五十八条の十七第一項」を「第五十八条の十八第一項」に改める。
第七十条第二十一号中「第五十八条の十八」を「第五十八条の十九」に改める。
(地方財政法の一部改正)
第五条 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。
第十条第六号中「精神保健」の下に「及び精神障害者の福祉」を加える。
(医療法の一部改正)
第六条 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)の一部を次のように改正する。
第四十二条第四号中「精神保健法」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に、「第十条に」を「第五十条の二に」に、「第十条の二」を「第五十条の三」に改める。
(社会福祉事業法の一部改正)
第七条 社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。
第二条第三項第三号の三中「精神保健法」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改める。
第六条第二項中「児童福祉」の下に「及び精神障害者福祉」を加える。
(放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部改正)
第八条 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号)を次のように改正する。
第三十一条第一項中「精神保健法」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に、「第三条」を「第五条」に改める。
(沖縄振興開発特別措置法の一部改正)
第九条 沖縄振興開発特別措置法(昭和四十六年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。
別表精神病院の項中「精神保健法」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に、「第六条及び第六条の二」を「第十九条の十」に改める。
(消費税法の一部改正)
第十条 消費税法(昭和六十三年法律第百八号)の一部を次のように改正する。
別表第一第六号ハ中「精神保健法」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改め、同表第七号イ中「精神保健法第十条第一項第二号」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五十条の二第一項第二号」に改め、「精神障害者授産施設」の下に「及び同項第四号に規定する精神障害者福祉工場」を加える。
(社会保険診療報酬支払基金法等の一部改正)
第十一条 次に掲げる法律の規定中「精神保健法」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改める。
一 社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)第十三条第二項
二 優生保護法(昭和二十三年法律第百五十六号)第十二条及び第十四条第三項
三 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第七十二条の十四第一項及び第七十二条の十七第一項
四 出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第五条第一項第二号
五 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)第二十六条第二項第三号
六 船員の雇用の促進に関する特別措置法(昭和五十二年法律第九十六号)第十五条第六項
七 地方公務員の育児休業等に関する法律(平成三年法律第百十号)附則第五条第一項第三号
八 国民健康保険法等の一部を改正する法律(平成七年法律第五十三号)第一条のうち、第百十六条の二の改正規定
(精神保健法等の一部を改正する法律の一部改正)
第十二条 精神保健法等の一部を改正する法律(平成五年法律第七十四号)の一部を次のように改正する。
第一条のうち、精神保健法の目次の改正規定及び第五章の次に二章を加える改正規定中「第五章の三」を「第八章」に改める。
附則第一条中「第五章の三」を「第八章」に改める。
附則第六条のうち、第二百五十二条の十九第一項第十一号の次に一号を加える改正規定中「精神保健」の下に「及び精神障害者の福祉」を加える。
(厚生省設置法の一部改正)
第十三条 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第六条第十二号中「精神保健法」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改める。
第七条第三項中「重要事項(」の下に、「精神障害者の福祉に関する事項を含み、」を加える。
理由
近時の精神障害者の福祉及び精神医療をめぐる状況を勘案し、精神障害者の社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進を図るとともに、適正な精神医療の確保を図るため、精神障害者保健福祉手帳、精神障害者の福祉に関する相談指導、精神障害者福祉ホーム及び精神障害者福祉工場その他の精神障害者の福祉に関する事項、精神保健指定医制度の充実等に関する事項その他の事項に関して所要の措置を講ずるとともに、医療保険制度の充実等にかんがみ、精神障害者等に係る公費負担医療の公費優先の仕組みを保健優先の仕組みに改める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
第132回衆議院 厚生委員会会議録第8号(平成7年4月19日)
○岩垂委員長 内閣提出、精神保健法の一部を改正する法律案及び結核予防法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
順次趣旨の説明を聴取いたします。井出厚生大臣。
○井出国務大臣 ただいま議題となりました二法案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
まず、精神保健法の一部を改正する法律案について申し上げます。
精神保健の施策につきましては、これまで、昭和六十二年及び平成五年の法律改正等により、精神障害者の人権に配意した適正な精神医療の確保や、社会復帰の促進を図るための所要の措置を講じてまいりましたが、平成五年十二月に障害者基本法が成立し、精神障害者が基本法の対象として明確に位置づけられたこと等を踏まえ、これまでの保健医療対策に加え、福祉施策の充実を図ることが求められております。
また、昨年七月には地域保健法が成立し、国、都道府県及び市町村の役割分担を初め、地域保健対策の枠組みの見直しが行われており、地域精神保健の施策の一層の充実が求められております。
こうした状況を踏まえ、今般、精神障害者の福祉施策や地域精神保健の施策の充実を図るとともに、適正な精神医療の確保を図るための所要の措置を講じ、あわせて、医療保険制度の充実等の諸状況の変化を踏まえ、精神医療に係る公費負担医療を保険優先の仕組みに改めることとし、この法律案を提出した次第であります。
以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
第一は、精神障害者の保健福祉施策の充実であります。まず、この法律の題名を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改めるとともに、目的や責務規定等に「自立と社会参加の促進」という福祉の理念を盛り込むこととしております。
また、新たに精神障害者保健福祉手帳制度を創設するとともに、精神障害についての正しい知識の普及、精神障害者及びその家族等に対する相談指導など、地域精神保健福祉施策の規定を整備し、あわせて市町村の役割を位置づけることとしております。さらに、福祉ホーム、福祉工場等の社会復帰施設や、社会適応訓練事業などを法定化することにより、これまでの社会復帰の促進のための訓練に加え、自立や社会参加の促進を図るための援助を推進していくこととしております。
第二に、適正な精神医療の確保等のための措置であります。精神保健指定医の五年ごとの研修の受講促進の措置を講ずるとともに、医療保護入院等を行う精神病院には常勤の指定医を置かなければならないこととし、また、医療保護入院の際の告知義務の徹底、通院医療の公費負担の認定期間の延長等を行うこととしております。
第三に、措置入院及び通院医療に要する費用について、その全部または一部について公費により負担し、公費負担がなされない部分について社会保険各法等による医療給付として行ういわゆる「公費優先」の仕組みを、社会保険各法等による医療給付の自己負担分について公費により負担するいわゆる「保険優先」の仕組みに改めることとしております。
なお、この法律の施行期日は、一部を除き、平成七年七月一日からとしております。
以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。
【略】
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○岩垂委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
第132回衆議院 厚生委員会会議録第9号(平成7年4月26日)
○岩垂委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、精神保健法の一部を改正する法律案及び結核予防法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
これより質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤静雄君。
○佐藤(静)委員 自由連合の佐藤静雄です。私は、きょうは精神医療の分野における特に看護婦さんの問題を取り上げてみたいと思っているのであります。
精神病院においては、ドクターと看護婦さん、ナースの場合には大体同じような仕事をしていると言えば語弊がありますけれども、普通の医療とはちょっと違うわけですね。人と人とのいろいろな交わり、人と人との関係、そんな中から治療をしていくということでありますけれども、普通看護婦さんが病院でやる、注射を打つだとかそういうものは大体二割か三割、あとはいろいろな人間関係の中においての治療をしていくということだと思うのです。
そこで、精神病院で働くナースと一般病院で働くナースは、随分その面では専門化しないとなかなか難しいと思うのでありますけれども、そのような一般教育のほかに、勤めてからナースの講習会だとかそんなものをしながら、精神病院で働くナースの皆さんが専門化していくというようなことは過去にずっとしてきているのでありましょうか。
○谷(修)政府委員 看護婦の教育課程、これは全体に共通でございますけれども、専門基礎科目の一つとして精神保健という科目が講義として四十五時間行われております。
また一方、今先生お話のございましたような看護婦等を対象といたしました研修でございますが、これは日本看護協会の実施をいたします研修、それから精神科看護技術協会、これは主として精神医療機関で働いておられる看護婦さんを中心にいたしました幾つかのセミナーあるいは研修会等が実施をされておりまして、そういう意味で精神医療に携わる看護婦さんの資質の向上ということが図られていると考えております。
なお、昨年の十二月にまとめられました少子・高齢社会看護問題検討会の報告におきましては、今後の看護の基礎教育のカリキュラムを見直すということの一環として、精神医療の看護分野の強化ということの必要性が指摘をされております。そういう意味で、養成所のカリキュラムということにつきましては、この精神医療の強化という観点からも検討してまいりたいと考えております。
○佐藤(静)委員 僕は先ほどからナースと言っていますけれども、看護婦さんと准看護婦さんがいるわけであります。それは、准看の場合にもそういう講習の機会などは普通の正看と同じように与えられているのですか。
○谷(修)政府委員 今申し上げました看護協会等の研修につきましては、准看、正看あわせて対象といたしております。
一方、厚生省が補助事業として行っています研修のうち准看護婦が参加するというものにつきましては、看護職員のリフレッシュ研修会及び看護力再開発講習会といったようなことを行っているところでございます。
○佐藤(静)委員 どちらかといいますと、一般病院に比べまして正看と准看の比率が、精神病院の方は准看の方が多いのですね。一般の病院ですと五対五ぐらいなのに、精神病院というと七対三で七ぐらいが准看なんですね。
私の聞くところによりますと、そういう講習会なども、准看の方々には平等に与えられているようであるけれども与えられていないという面があるように思います。ですから、今おっしゃったように、だんだんナースを専門化させなくてはならない。そのときに、これからの教育はカリキュラムを変えたりなんかしてできるわけでありますけれども、実際働いている方々が本当に専門化していくという意味では、特に准看の方々が非常に多いわけでありますから、そういう方々にも本当に十分に講習の機会などが与えられるように、一層ひとつ努力していただきたい、そう思います。
そのように、今申し上げましたとおり、正看、准看という問題があったりなんかして、日本では看護婦の一本化ということが非常におくれてきているわけですね。今もこのようにして准看制度があるなんというのは、日本と中国くらいしかない。あとはみんな一本化されてきている、そういう状態があるわけでありますけれども、一本化されていないということから、准看の皆さんが長い間非常に悩み、そしていろいろな運動を今まで展開してきているわけであります。
議論に入る前に、保助看法の正看、准看の役割をひとつ、五条、六条、ちょっと読み上げてください。
○谷(修)政府委員 保健婦助産婦看護婦法におきまして、第五条で「看護婦の定義」というのがございます。「この法律において、「看護婦」とは、厚生大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助をなすことを業とする女子をいう。」第六条に「准看護婦の定義」というのがございます。「この法律において、「准看護婦」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護婦の指示を受けて、前条に」つまり第五条に「規定することをなすことを業とする女子をいう。」という形で法令上は整理をされております。
○佐藤(静)委員 今読み上げてもらったように、准看というのは、「医師、歯科医師又は看護婦の指示を受けて働くことになっているわけですね。これは、看護婦の指示を受けて働くというだけだったら大して今まで問題でなかったような気が私はしているのです。業務上、正看と准看というものがいつも分かれて仕事をしている、自分の仕事はこれだという分野が決まっているということならば、このように大きな問題にはならなかったような気がしているのです。
ところが、教育レベルも違う、いろいろ違うのに、養成機関も全然違うのに、その人たちが同じ業務をさせられている、病院では何にも変わらない。しかし、正看、准看という区別だけはつけられて、差別はつけられる。そこに、医師または歯科医師が指示をするという。それは、教育レベルとかそういうことは全く抜きに、医師が指示をすれば同じことをやってもいいんだ。
そんなような一つの法律の成り立ち、抜け穴といいますか、都合のいい法律ができて、それによってずっと来たために、こういう准看、正看という問題がずっと尾を引いて今まで来ている、そう私は思っているのです。
これを見ても、准看制度というのは戦後の看護婦不足を補うためのものであった、四十数年間この問題がずっと尾を引いてきたということが言えるわけでありますけれども、高度な現在の医療に合わない制度になってしまっていると思うのですけれども、どうですか、考え方は。
○谷(修)政府委員 今申し上げましたように、保助看法においては、第五条、第六条によって、准看につきましては、先生お触れになりましたように、医師、歯科医師、看護婦の指示を受けて業務を行うという意味におきましては、医師等の指示を受けて行うかどうかという点を除けば、現行の保助看法では業務の内容は区別はされていないわけでございます。
先ほど来お触れになっておられますように、准看の制度ということにつきましてはいろいろな御意見があるわけでございまして、そういう御意見も踏まえながら、私どもとしては、昨年まとめられました少子・高齢社会看護問題検討会の報告書におきましても二通りの意見が出されているわけでございますけれども、いずれにいたしましても、今後、その実態を調査をするといったようなことをまず始めていきたいというふうに考えております。
○佐藤(静)委員 看護問題検討会の去年の十二月の報告書、今、二つの意見があると言われましたけれども、その二つの意見はどういう意見だったのですか、少し詳しく説明してください。
○谷(修)政府委員 准看護婦の問題について、昨年の少子・高齢社会看護問題検討会におきましては、准看護婦の養成を停止をすべきであるという意見と、制度の改善を図りつつ継続すべきであるという意見がございました。
養成を停止すべきであるという主要なものといたしましては、高度医療及び高齢社会の保健医療に対応するため、看護職員の資質の向上を図っていく必要があるのではないか。それから、一方、女性の高校進学率の上昇ということによりまして、准看護婦制度の成立した時代とは社会背景が変化をしてきて、制度が時代に合わなくなっているのではないかという御意見でございました。
一方、養成を存続するべきであるという意見としては、もちろんそれは、先ほど触れましたように、制度の改善を図りつつということが含まれておりますけれども、看護職員の需給見通しの中においても准看護婦が位置づけられているということ、それから、看護業務というものが、看護婦それから准看護婦、看護補助者の三者によって全体として行っていくことが効率的なのではないかといったような二通りの御意見があったと承知しております。
○佐藤(静)委員 今の御意見、もう少し足りない面もあると私は思っているのですけれども、どうも、病院側といいますか、医師会側といいますか、そういう意見がいつもずっと勢力を占めていて、実際、今非常に、准看護婦の制度をなくしてほしい、看護婦制度というものを一本化してほしい、今の高度な医療に耐え得るようにもっと専門化してほしい、そういうような、要するにそれは患者側に立った希望ですね。そういうのが患者側に立った希望です。どうも私は、お医者さんの側に立ったそういうような看護婦さんに対する扱い、それがやはりこの意見の中に大きく出てしまっているのではないかと思うのです。我々は今、患者側に立って、どういうふうにしたらいいのかということを考えなくちゃならない。そのことが今厚生省としても一番考えなくちゃならぬ問題だと私は思っているのです。
それで、そういう意見の中に、では、法律的には正看と准看は全く違う役割が与えられているわけですけれども、その役割に返すという意見は出ないのですか。法律にのっとって、正看はこういう仕事をさせよう、准看はこういう仕事をさせようと。法律にのっとってしようという、もとに戻るというそういう意見は出ないものなんですか。
○谷(修)政府委員 現在までの意見は、先ほど申したような大きく二つに分かれているわけでございますが、一方、一番先に申しましたように、カリキュラムの内容を少し検討したらどうかという御意見もございます。ただ、今先生がおっしゃられたような意味での、看護婦と准看の業務の内容を分けていくということについては、専門家の中ではいろいろ御意見があろうかと思いますが、私どもの先般まとめていただいたその検討会の中では意見は出ておりません。
○佐藤(静)委員 要するに、そういう意見が法律にのっとってやろうという意見にならないぐらいにもう今一緒のものになってしまっているのですね。今さらそういうことを言ってももう始まらない。要するに、正看、准看というのは、全く区別なしの状態で病院でなされている。まさか医者は、正看であるか准看であるかということを分けて仕事を指示しているわけでも何でもないわけですよ。
ですから、一本化しなくちゃならぬということは、そこからずっと生まれてきているのですね。しかし、四十四年たって、昨年の報告書を見ても、全く変わらないような報告書になっている。
局長、さっき、これから検討を始めると言いましたけれども、どういうことを検討を始めるのですか。
○谷(修)政府委員 先ほどの報告書においては、これらの問題につきまして、現在准看護婦免許を持っておられる方の将来、あるいは、今後の看護職員全体の需給状況等を勘案しながら、准看護婦学校、養成所の実態の全体的な把握を行う。それからさらに、その結果を得て、関係者の中で改めて検討し、結論を得るべきであるというふうな御意見でございまして、私どもといたしましてはこの報告を踏まえて、今後、一つはカリキュラム等の内容の検討、それから准看護婦の問題につきましては、平成七年度におきまして、まず実態調査を実施をいたしたいというふうに考えております。
○佐藤(静)委員 その実態調査はどういう実態調査をするのですか。ちょっとそれを聞かせてください。
○谷(修)政府委員 まず、准看護婦の養成所についてその実態、教育の内容ですとか、どういうカリキュラムでやっているかといったようなことについて実態を把握してまいりたい、調査をしてまいりたいということでございます。
【次回へつづく】