精神医療に関する条文・審議(その80)

前回(id:kokekokko:20051024)のつづき。初回は2004/10/28。
前回につづいて、平成10年9月28日法律第110号についてみてみます。
【前回のつづき】

第143回衆議院 本会議会議録第10号(平成10年9月10日)
○議長(伊藤宗一郎君) 日程第二、精神薄弱の用語の整理のための関係法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。厚生委員長木村義雄君。
    〔木村義雄君登壇〕
木村義雄君 ただいま議題となりました精神薄弱の用語の整理のための関係法律の一部を改正する法律案につきまして、厚生委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、障害者に対する国民の理解を深め、もって障害者の福祉の向上に資するため、精神薄弱者福祉法等における精神薄弱という用語を知的障害という用語に改めようとするものであります。
 本案は、第百四十二回国会の参議院提出に係るもので、本院において継続審査となっておりましたが、昨日の委員会において参議院国民福祉委員長から提案理由の説明を聴取した後、質疑を終了し、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(伊藤宗一郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

第143回参議院 国民福祉委員会会議録第3号(平成10年9月17日)
○委員長(尾辻秀久君) 精神薄弱の用語の整理のための関係法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本法律案は、第百四十二回国会におきまして、本委員会提出の法律案として本会議に上程し、全会一致で衆議院へ提出したものであります。
 衆議院では、継続審査に付された後、今国会、厚生委員会における審査を経て、全会一致で本院に送付されました。
 ここで、去る九月九日、衆議院厚生委員会において行われました審査の概要を簡潔に御報告いたします。
 まず、提出者として参議院国民福祉委員会の委員長である私から提案理由の説明を行いました。
 その後、提出者である私並びに厚生大臣、厚生省及び文部省の事務当局に対し質疑が行われましたが、その主なものは、法律案の提出に至る経緯、「精神薄弱」の用語を見直す必要性、「知的障害」という用語に改めた理由、障害者に対する施策を全般的に推進し充実させる必要性等についてでありました。
 これらの質疑に対して、次のような答弁が行われました。
 精神薄弱という用語については、知的側面における障害の用語であるにもかかわらず、精神、人格全般を否定するかのような響きがあり、また障害者に対する差別や偏見を助長するおそれもあるため、用語の見直しが必要であるということが関係者の長年の要望であったこと、知的障害という用語については、このような知的機能の障害をあらわす言葉として適切であるという意見が関係団体等においてほぼ一致しており、広く一般にも普及定着していること、障害者施策を推進するためには、用語の見直しだけでなく、施策全般の見直しを行うことが必要であり、ノーマライゼーションの理念の実現に向けてさらに一層の努力が必要であること等であります。
 以上、衆議院厚生委員会における主な議論を御紹介いたしました。
 衆議院の審議においてこのような御指摘を受けたことを踏まえ、法律案の提出者であります本委員会といたしましても、障害者施策を一層充実させるためにさらに努力する必要があるものと考えます。「精神薄弱」を「知的障害」に改めようとする本法律案をそのための第一歩と位置づけることとし、改めて委員各位の御理解と御賛同を賜りたいと存じます。
 この際、お諮りいたします。
 本法律案は、先国会、本委員会から提出した法律案でありますので、趣旨説明の聴取はこれを省略し、質疑、討論の申し出もございませんので、直ちに採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(尾辻秀久君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより直ちに採決に入ります。
 精神薄弱の用語の整理のための関係法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(尾辻秀久君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。

第143回参議院 本会議会議録第9号(平成10年9月18日)
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
 日程第一 精神薄弱の用語の整理のための関係法律の一部を改正する法律案(第百四十二回国会本院提出、第百四十三回国会衆議院送付)を議題といたします。
 まず、委員長の報告を求めます。国民福祉委員長尾辻秀久君。
   〔尾辻秀久君登壇、拍手〕
尾辻秀久君 ただいま議題となりました法律案につきまして、委員会における審査の経過と結果を御報告いたします。
 本法律案は、「精神薄弱」という用語については、知的側面における障害の用語であるにもかかわらず、精神・人格全般を否定するかのような響きがあり、また、障害者に対する差別や偏見を助長するおそれもあるため見直しが必要であるという関係者の長年の強い要望を受けたものであります。その内容は、現在、精神薄弱者福祉法、障害者基本法等三十二の法律において使用されている「精神薄弱」という用語を、障害の状態を価値中立的に表現することができ、また、社会的に広く使われている「知的障害」という用語に改めようとするものであります。
 本法律案は、第百四十二回国会において本委員会から提出され、衆議院において継続審査となっていたものであります。
 委員会におきましては、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
 本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います。
   〔投票開始〕
○議長(斎藤十朗君) 間もなく投票を終了いたします。──これにて投票を終了いたします。
   〔投票終了〕
○議長(斎藤十朗君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数         二百二十三
  賛成           二百二十三
  反対               〇
 よって、本案は全会一致をもって可決されました。(拍手)

精神薄弱の用語の整理のための関係法律の一部を改正する法律(平成10年法律第110号)【第四条、附則】
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部改正)
第四条 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)の一部を次のように改正する。
  第五条中「精神薄弱」を「知的障害」に改める。
  第四十五条第一項中「精神薄弱者」を「知的障害者」に改める。
 
 附則
 この法律は、平成十一年四月一日から施行する。